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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167858
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】モータの動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 27/118 20060101AFI20241127BHJP
   F16D 11/00 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
F16D27/118
F16D11/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113828
(22)【出願日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】112118861
(32)【優先日】2023-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523263717
【氏名又は名称】達詳科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ ▲晧▼倫
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲暁▼▲瑜▼
【テーマコード(参考)】
3J056
【Fターム(参考)】
3J056AA02
3J056AA62
3J056BB11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ホイルハブとモータとの接続または切り離しを適切に行うことができる、モータの動力伝達装置を提供する。
【解決手段】モータの動力伝達装置であって、ハブシェル10と、ハブシャフト20と、モータと、動力伝達アセンブリとを含み、動力伝達アセンブリは、モータに接続されると共にモータの駆動によって回転する伝動ホイルと、ハブシェル10を回転駆動可能にハブシェル10に結合される出力プレートギアと、磁気吸引力を有すると共に出力プレートギアとモータとの間に配置されるブラケットと、磁気で吸引可能な磁性材料で製作され、ブラケットと出力プレートギアとの間に移動可能に配置されるクラッチギアと、ブラケットとクラッチギアとの間に移動可能に配置されると共に、クラッチギアと接離可能に接続される押圧プレートと、ブラケットと押圧プレートとの間に配置される弾性部材を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの動力伝達装置であって、ハブシェルと、ハブシャフトと、モータと、動力伝達アセンブリとを含み、
前記ハブシャフトは、前記ハブシェルの相対する両側面を貫通するように設置され、該ハブシャフトの延在方向を第1方向と定義し、
前記モータは、前記ハブシャフトに接続されると共に前記ハブシェル内に配置され、該モータの回転駆動方向を第1回転方向と定義し、
前記動力伝達アセンブリは、前記ハブシェル内に配置されると共に、該ハブシェル及びモータに接続され、また、伝動ホイルと、出力プレートギアと、ブラケットと、クラッチギアと、押圧プレートと、弾性部材とを備え、
該伝動ホイルは、前記モータに接続されると共に、該モータの駆動によって第1回転方向に回転し、また、該伝動ホイル上には、第1環状歯列を有し、
該出力プレートギアは、前記ハブシェルを回転駆動可能に該ハブシェルに結合され、また、該出力プレートギアには、連続して形成される複数の第1噛合部を有し、該複数の第1噛合部は、該出力プレートギアの回転中心を囲繞するように該出力プレートギアのモータを向く側面に形成され、
該ブラケットは、磁気吸引力を有すると共に該出力プレートギアとモータとの間に配置され、また、該ブラケットには、該出力プレートギアを向く第1押圧面、及び該第1押圧面上に形成される第1摺動案内部を有し、
該クラッチギアは、磁気で吸引可能な磁性材料で製作され、前記第1方向に沿って該ブラケットと出力プレートギアとの間に移動可能に配置されており、また、該クラッチギアには、第2環状歯列と、連続して形成される複数の第2噛合部と、第1係合部とを有し、該第2環状歯列は、前記第1環状歯列と噛み合うように接続され、前記伝動ホイルからの回転駆動力を受け、該複数の第2噛合部は、該クラッチギアにおける出力プレートギアを向く側面に形成され、前記複数の第1噛合部と選択的に噛み合い、該第1係合部は、該クラッチギアにおける出力プレートギアから離れる側面に形成され、
該押圧プレートは、該ブラケットの第1押圧面とクラッチギアとの間で該第1方向に沿って移動可能に配置されると共に、該クラッチギアと接離可能に接続され、また、該押圧プレートには、第2係合部及び第2摺動案内部を有し、該第2係合部は、該押圧プレートにおけるクラッチギアを向く側面に形成されると共に、該クラッチギアの第1係合部と選択的に係止されることができ、該第1係合部と第2係合部とが係止されると、該クラッチギアが該押圧プレートを回動駆動し、該第2摺動案内部は、該ブラケットの第1摺動案内部に摺動可能に当接しており、該第1摺動案内部に当接するように摺動すると、該押圧プレートが該出力プレートギアに向かって移動し、
該弾性部材は、該ブラケット及び該押圧プレートにおけるクラッチギアを向く側面に付勢力を加えることを特徴とするモータの動力伝達装置。
【請求項2】
前記各第1噛合部と各第2噛合部は、噛合可能な鋸歯状の爪歯車であることを特徴とする請求項1に記載のモータの動力伝達装置。
【請求項3】
前記各第1噛合部は、連結されている第1歯部と第2歯部とを有し、該第1歯部及び第2歯部は共に、前記モータに向かって突出するように形成され、前記第1回転方向と反対する回転方向の接線方向に傾斜することを特徴とする請求項2に記載のモータの動力伝達装置。
【請求項4】
前記第1摺動案内部には、前記押圧プレートに向かって傾斜する傾斜当接面を有し、
前記第2摺動案内部には、前記傾斜当接面に摺動可能に当接する当接突起を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータの動力伝達装置。
【請求項5】
前記第1係合部は、前記クラッチギアにおける押圧プレートを向く側面に突出するように形成され、前記第2係合部は、前記押圧プレートにおけるクラッチギアを向く側面に突出するように形成され、該第1係合部は、前記第1回転方向に沿って該第2係合部に当接するように係止されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータの動力伝達装置。
【請求項6】
前記ブラケットは、前記クラッチギアと押圧プレートとの間に配置される第1磁気部材を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータの動力伝達装置。
【請求項7】
前記ブラケットは、前記第1押圧面と対向する第2押圧面を有し、前記弾性部材は、該第2押圧面と押圧プレートとの間に付勢力を与えるように配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータの動力伝達装置。
【請求項8】
前記第1環状歯列は、前記伝動ホイルの外周面に形成され、前記第2環状歯列は、前記クラッチギアの内周面に形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータの動力伝達装置。
【請求項9】
前記第1環状歯列は、前記伝動ホイルの内周面に形成され、前記第2環状歯列は、前記クラッチギアの外周面に形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータの動力伝達装置。
【請求項10】
前記押圧プレートは、磁気で吸引可能な磁性材料で製作され、前記モータの動力伝達装置は、前記ブラケット上に設置され、該押圧プレートを磁気吸引するための第2磁気部材を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータの動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関し、特に、モータの動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
完全に人力で漕ぐ従来の自転車の他にも、利用者の体力を節約できる電動アシスト自転車がある。こういった電動アシスト自転車は、搭載された電動モータを通じて、車輪に動力を供給することで、自転車の走行を補助する。電動アシスト自転車に搭載される電動モータの多くは、自転車のホイルハブに設置されるハブモータ(Hub motor)であり、ハブモータは、自転車の走行速度や利用者のペタリング状態を検知しながら、ハブモータの回転速度を制御して、車輪に適切な補助動力を提供する。
【0003】
しかしながら、法律により電動アシスト自転車の最高走行速度が規制されており、そのため、ハブモータの回転速度には上限がある。もし自転車が下り坂を走ったり、利用者が強く漕いだりする場合には、ハブモータの回転速度が上限に達すると電源が切断される。この状態では、ハブモータと自転車のホイルハブはまだ連結されたままであるので、逆にホイルハブがハブモータを回転させることになり、その結果、ハブモータは、ホイルハブに余分な抵抗を与えることになり、運動エネルギーが無駄に消費されてしまった。
【0004】
故に、上述した問題をいかに改善するかが、現在の業界においての課題であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、ホイルハブとモータとの接続または切り離しを適切に行うことができる、モータの動力伝達装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、モータの動力伝達装置を提案したものであり、当該モータの動力伝達装置は、ハブシェルと、ハブシャフトと、モータと、動力伝達アセンブリとを含み、
前記ハブシャフトは、前記ハブシェルの相対する両側面を貫通するように設置され、該ハブシャフトの延在方向を第1方向と定義し、
前記モータは、前記ハブシャフトに接続されると共に前記ハブシェル内に配置され、該モータの回転駆動方向を第1回転方向と定義し、
前記動力伝達アセンブリは、前記ハブシェル内に配置されると共に、該ハブシェル及びモータに接続され、また、伝動ホイルと、出力プレートギアと、ブラケットと、クラッチギアと、押圧プレートと、弾性部材とを備え、
該伝動ホイルは、前記モータに接続されると共に、該モータの駆動によって第1回転方向に回転し、また、該伝動ホイル上には、第1環状歯列を有し、
該出力プレートギアは、前記ハブシェルを回転駆動可能に該ハブシェルに結合され、また、該出力プレートギアには、連続して形成される複数の第1噛合部を有し、該複数の第1噛合部は、該出力プレートギアの回転中心を囲繞するように該出力プレートギアのモータを向く側面に形成され、
該ブラケットは、磁気吸引力を有すると共に該出力プレートギアとモータとの間に配置され、また、該ブラケットには、該出力プレートギアを向く第1押圧面、及び該第1押圧面上に形成される第1摺動案内部を有し、
該クラッチギアは、磁気で吸引可能な磁性材料で製作され、前記第1方向に沿って該ブラケットと出力プレートギアとの間に移動可能に配置されており、また、該クラッチギアには、第2環状歯列と、連続して形成される複数の第2噛合部と、第1係合部とを有し、該第2環状歯列は、前記第1環状歯列と噛み合うように接続され、前記伝動ホイルからの回転駆動力を受け、該複数の第2噛合部は、該クラッチギアにおける出力プレートギアを向く側面に形成され、前記複数の第1噛合部と選択的に噛み合い、該第1係合部は、該クラッチギアにおける出力プレートギアから離れる側面に形成され、
該押圧プレートは、該ブラケットの第1押圧面とクラッチギアとの間で該第1方向に沿って移動可能に配置されると共に、該クラッチギアと接離可能に接続され、また、該押圧プレートには、第2係合部及び第2摺動案内部を有し、該第2係合部は、該押圧プレートにおけるクラッチギアを向く側面に形成されると共に、該クラッチギアの第1係合部と選択的に係止されることができ、該第1係合部と第2係合部とが係止されると、該クラッチギアが該押圧プレートを回動駆動し、該第2摺動案内部は、該ブラケットの第1摺動案内部に摺動可能に当接しており、該第1摺動案内部に当接するように摺動すると、該押圧プレートが該出力プレートギアに向かって移動し、
該弾性部材は、該ブラケット及び該押圧プレートにおけるクラッチギアを向く側面に付勢力を加えることを特徴とする。
【0007】
前記各第1噛合部と各第2噛合部は、噛合可能な鋸歯状の爪歯車であることを特徴とする。
【0008】
前記各第1噛合部は、連結されている第1歯部と第2歯部とを有し、該第1歯部及び第2歯部は共に、前記モータに向かって突出するように形成され、前記第1回転方向と反対する回転方向の接線方向に傾斜することを特徴とする。
【0009】
前記第1摺動案内部には、前記押圧プレートに向かって傾斜する傾斜当接面を有し、前記第2摺動案内部には、前記傾斜当接面に摺動可能に当接する当接突起を有することを特徴とする。
【0010】
前記第1係合部は、前記クラッチギアにおける押圧プレートを向く側面に突出するように形成され、前記第2係合部は、前記押圧プレートにおけるクラッチギアを向く側面に突出するように形成され、該第1係合部は、前記第1回転方向に沿って該第2係合部に当接するように係止されることを特徴とする。
【0011】
前記ブラケットは、前記クラッチギアと押圧プレートとの間に配置される第1磁気部材を備えることを特徴とする。
【0012】
前記ブラケットは、前記第1押圧面と対向する第2押圧面を有し、前記弾性部材は、該第2押圧面と押圧プレートとの間に付勢力を与えるように配置されることを特徴とする。
【0013】
前記第1環状歯列は、前記伝動ホイルの外周面に形成され、前記第2環状歯列は、前記クラッチギアの内周面に形成されることを特徴とする。
【0014】
または、前記第1環状歯列は、前記伝動ホイルの内周面に形成され、前記第2環状歯列は、前記クラッチギアの外周面に形成されることを特徴とする。
【0015】
前記押圧プレートは、磁気で吸引可能な磁性材料で製作され、前記モータの動力伝達装置は、前記ブラケット上に設置され、該押圧プレートを磁気吸引するための第2磁気部材を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上述したように、本発明に係るモータの動力伝達装置の優れたところは、モータが動力の出力を停止すると、クラッチギアが出力プレートギアから切り離され、これにより、モータによるハブシェルの回転抵抗を回避することができる。一方、モータが駆動力を出力し始めると、押圧プレートがクラッチギアを押し動かすことによって、クラッチギアが出力プレートギアと噛み合うように結合され、これにより、モータからの回転駆動力が車輪に伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1好適な実施形態の斜視図である。
図2】本発明の第1好適な実施形態の分解斜視図である。
図3】本発明の第1好適な実施形態の他の角度から見た分解斜視図である。
図4】本発明の第1好適な実施形態における動力伝達アセンブリを示す斜視図である。
図5】本発明の第1好適な実施形態における動力伝達アセンブリを示す側面図である。
図6】本発明の第1好適な実施形態において、動力伝達アセンブリの作動状態を示す側面視断面模式図である。
図7】本発明の第1好適な実施形態において、動力伝達アセンブリの作動状態を示す側面視断面模式図である。
図8】本発明の第1好適な実施形態において、動力伝達アセンブリの作動状態を示す側面視断面模式図である。
図9図6の局部拡大図である。
図10図7の局部拡大図である。
図11図8の局部拡大図である。
図12】本発明の第1好適な実施形態において、第1噛合部と第2噛合部との噛合状態を示す局部拡大も模式図である。
図13】本発明の第2好適な実施形態における動力伝達アセンブリを示す側面視図であり、そのうち、伝動ホイルを破線で示している。
図14】本発明の第2好適な実施形態における動力伝達アセンブリを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図4は、本発明に係るモータの動力伝達装置を示したものであり、当該モータの動力伝達装置は、ハブシェル10、ハブシャフト20、モータ30、動力伝達アセンブリ40及び第2磁気部材50を含む。
【0019】
前記ハブシャフト20は、前記ハブシェル10の相対する両側面を貫通するように設置されており、該ハブシャフト20の延在方向は第1方向D1として定義される。前記モータ30は、前記ハブシャフト20に接続されると共に、前記ハブシェル10内に配置されており、該モータ30の回転駆動方向は第1回転方向R1と定義される。
【0020】
図2図5及び図12に示すように、前記動力伝達アセンブリ40は、前記ハブシェル10及びモータ30と接続されるように、該ハブシェル10の内部に配置されている。本好適な実施形態では、前記ハブシャフト20は、前記動力伝達アセンブリ40を挿通するように設置されており、互いに対して回転可能に組み立てられるが、ハブシャフト20と動力伝達アセンブリ40との組み立て方はこれに限定されたものではない。該動力伝達アセンブリ40は、伝動ホイル41、出力プレートギア42、ブラケット43、クラッチギア44、押圧プレート45及び弾性部材46を備える。以下では、それらの構成要素について説明する。
【0021】
前記伝動ホイル41は、前記モータ30に接続されると共に、該モータ30の駆動によって前記第1回転方向R1に回転する。また、該伝動ホイル41上には、第1環状歯列411が形成されている。具体的に述べると、本発明の第1好適な実施形態では、該第1環状歯列411は、該伝動ホイル41の外周面上に形成されているが、該第1環状歯列411の形成位置はそれに限定されたものではない。
【0022】
前記出力プレートギア42は、前記ハブシェル10を回転駆動可能に該ハブシェル10に結合される。本好適な実施形態におけるハブシェル10上には、前記出力プレートギア42の外形に対応する結合凹部11を有し、該出力プレートギア42は、該結合凹部11内に嵌まるように当該ハブシェル10と結合されるが、これに限定されたことではなく、他の実施形態では、出力プレートギア42は、ハブシェル10に螺合されていてもよい。また、前記出力プレートギア42には、連続して形成される複数の第1噛合部421を有し、該複数の第1噛合部421は、該出力プレートギア42の回転中心を囲繞するように、該出力プレートギア42のモータ30を向く側面上に形成される。
【0023】
前記複数の第1噛合部421について詳しく説明する。該各第1噛合部421は、鋸歯状の爪歯車であって、それぞれが、第1歯部4211及び第2歯部4212を有する。前記第1歯部4211と第2歯部4212は共に、前記モータ30に向かって突出するように形成されると共に、前記第1回転方向R1と反対する回転方向の接線方向に傾斜している。具体的に述べると、前記第1噛合部421は、前記出力プレートギア42の表面から前記モータ30に向かって突出するように形成され、図12に示すように、前記第1歯部4211及び第2歯部4212は、前記第1方向D1に対して、前記第1回転方向R1と反対する回転方向の接線方向に沿って傾斜している。
【0024】
前記ブラケット43は、磁気吸引力を有すると共に前記出力プレートギア42とモータ30との間に配置されている。本好適な実施形態におけるブラケット43は、底板部431、支持部432及び第1磁気部材433を備え、該底板部431は、前記出力プレートギア42を向く第1押圧面4311と、第1摺動案内部4312とを有する。具体的に述べると、前記第1押圧面4311は、前記ブラケット43の底板部431における出力プレートギア42を向く側面であり、前記第1摺動案内部4312は、該第1押圧面4311上に形成されている。
【0025】
さらに詳しく説明すると、前記第1摺動案内部4312には、前記押圧プレート45に向かって傾斜する傾斜当接面4313を有する。具体的に述べると、該傾斜当接面4313は、該押圧プレート45に向かうように、前記第1回転方向R1と反対する方向に向かって傾斜している。本好適な実施形態における第1摺動案内部4312は、前記第1押圧面4311上に凹むように形成された凹溝であり、前記傾斜当接面4313は、該凹溝の一方の側面であるが、他の実施形態では、第1摺動案内部は、第1押圧面4311上に突出形成される突起構造体であってもよい。
【0026】
前記支持部432は、前記底板部431の出力プレートギア42側の側面に接続されると共に、前記クラッチギア44と押圧プレート45とを囲むように延在形成され、また、該支持部432には、第2押圧面4321を有する。前記第1磁気部材433は前記支持部432上に設置され、これにより、前記ブラケット43が磁気吸引力を得る。前記第2押圧面4321と第1押圧面4311とは、互いに離間し且つ対向しており、このように、該第2押圧面4321と第1押圧面4311との間に凹溝が形成される。具体的に述べると、本好適な実施形態における第2押圧面4321は、前記支持部432の第1押圧面4311を向く側面のうちの一つである。
【0027】
前記クラッチギア44は、前記第1方向D1に沿って前記ブラケット43と出力プレートギア42との間に移動可能に配置されると共に、磁気で吸引可能な磁性材料で製作され、このように、該ブラケット43の磁気吸引力によって吸引されることができる。また、該クラッチギア44上には、第2環状歯列441と、複数の第2噛合部442と、第1係合部443とを備える。具体的に述べると、本好適な実施形態におけるクラッチギア44は、内周面を有し、該第2環状歯列441は当該内周面上に形成されるが、これに限定されたものではない。該第2環状歯列441は、前記第1環状歯列411と噛み合うように設置され、前記伝動ホイル41からの駆動力を受けて前記クラッチギア44に伝達する。
【0028】
前記複数の第2噛合部442は、前記クラッチギア44の出力プレートギア42を向く側面に連続して形成され、該各第2噛合部442は、前記各第1噛合部421と噛合可能な鋸歯状の爪歯車である。尚、該第2噛合部442と第1噛合部421とは選択的に噛み合わせることができ、該第1、第2噛合部421、442が噛み合うと、前記クラッチギア44と出力プレートギア42とが接合されるようになる。前記第1係合部443は、前記クラッチギア44の出力プレートギア42から離れる側面に形成される。具体的に述べると、該第1係合部443は、前記クラッチギア44の押圧プレート45を向く側面に突出するように形成される。
【0029】
本好適な実施形態では、前記押圧プレート45は、磁気で吸引可能な磁性材料で製作されることが好ましいが、これに限定されたものではなく、他の実施形態では、押圧プレートが磁気で吸引することのできない材料で製作されても構わない。また、本好適な実施形態における押圧プレート45は、前記ブラケット43の第1押圧面4311と前記クラッチギア44との間に、前記第1方向D1に沿って移動可能に配置されると共に、該クラッチギア44と切離可能に接続される。具体的に述べると、本好適な実施形態における押圧プレート45は、前記第1押圧面4311と第2押圧面4321との間の凹溝内に第1方向D1に沿って移動可能に設置される。
【0030】
前記押圧プレート45には、第2係合部451及び第2摺動案内部452を有し、該第2係合部451は、該押圧プレート45のクラッチギア44を向く側面に形成されると共に、前記第1係合部443に選択的に係止されることができる。具体的に述べると、前記第2係合部451は、前記押圧プレート45のクラッチギア44を向く側面に突出するように形成されており、前記第1係合部443は前記第1回転方向R1に沿って該第2係合部451に当接するように係止されることができる。このような構成により、該第1、第2係合部443、451が係止された状態で、前記クラッチギア44は前記押圧プレート45を連れて該第1回転方向R1に回転させる。
【0031】
前記第2摺動案内部452は、前記ブラケット43の第1摺動案内部4312に摺動可能に当接し、このような設計により、該第2摺動案内部452が該第1摺動案内部4312に当接するように摺動すると、前記押圧プレート45が前記出力プレートギア42に向かって移動する。具体的に述べると、本好適な実施形態における第2摺動案内部452には、前記押圧プレート45の第1押圧面4311を向く側面に突出するように形成され、前記第1摺動案内部4312の傾斜当接面4313に摺動可能に当接する当接突起を有するが、これに限定されたものではなく、他の実施形態において、第2摺動案内部に傾斜当接面を持たせ、第1摺動案内部に当接突起を設けることもできる。
【0032】
前記弾性部材46は、前記ブラケット43と、前記押圧プレート45のクラッチギア44を向く側面との間に配置される。具体的に述べると、該弾性部材46は、該ブラケット43の第2押圧面4321と押圧プレート45との間に配置される圧縮コイルバネであり、その一端側が該第2押圧面4321に当接し、他端側が該押圧プレート45を前記第1押圧面4311に押し付けるように付勢する。
【0033】
前記第2磁気部材50は、前記ブラケット43上に取り付けられており、前記押圧プレート45を磁気吸引するために用いられる。具体的に述べると、前記第2磁気部材50は、前記ブラケット43の底板部431における第1摺動案内部4312の近くに取り付けられており、このような配置により、前記押圧プレート45に対して磁気吸引力を発生させることができるが、前記クラッチギア44を磁気吸引することはできない。また、本好適な実施形態におけるブラケット43は、底板部431に取り付けられ、前記第2磁気部材50を固定するための位置決めリング部材4314をさらに備えることが好ましい。尚、他の実施形態では、第2磁気部材50または位置決めリング部材4314を有しなくもよい。
【0034】
以下では、図6図12を参照しながら、本発明に係るモータの動力伝達装置の作動方法について説明する。モータ30を始動すると、伝動ホイル41は、第1回転方向R1に回転し始めると共に、クラッチギア44を連れて第1回転方向R1に回転させる。この時、クラッチギア44は、第1磁気部材433の磁気吸着作用により、押圧プレート45側に位置し、第1係合部443と第2係合部451とが係止されている状態であるので、回転駆動されているクラッチギア44は、押圧プレート45を連れて第1回転方向R1に回動させる。
【0035】
押圧プレート45が回転すると、その第2摺動案内部452が第1摺動案内部4312の傾斜当接面4313に沿って摺動し、押圧プレート45が、出力プレートギア42に向かうように第1方向D1に沿って移動し、これで、押圧プレート45は、クラッチギア44を第1方向D1に沿って出力プレートギア42に押し付け、当該クラッチギア44の第2噛合部442と当該出力プレートギア42の第1噛合部421とを噛み合わせる。また、図12に示すように、第1歯部4211及び第2歯部4212は、第1方向D1に対して第1回転方向R1と反対する回転方向の接線方向に傾斜するように構成されていることにより、クラッチギア44が出力プレートギア42を回転駆動する際に、駆動側のクラッチギア44の回転速度が、被駆動側の出力プレートギア42の回転速度よりも高い又は等しい場合には、第1噛合部421と第2噛合部442が分離することなく、噛み合いし続ける。
【0036】
さらに、第2噛合部442と第1噛合部421とが噛み合うように結合されている状態では、第1歯部4211及び第2歯部4212は、第1方向D1に対して傾斜しているため、クラッチギア44が第1方向D1に沿って出力プレートギア42に向かって移動し、その結果、押圧プレート45から分離し、すると、押圧プレート45は、弾性部材46の付勢力によってブラケット43の第1押圧面4311に押し付けられると同時に、第2磁気部材50の磁気吸引力によって、第2摺動案内部452を回転駆動前の位置に復帰させられる。尚、押圧プレート45は、全体的に磁気で吸引可能な磁性材料で製作される必要がなく、第2摺動案内部452が磁気で吸引可能な磁性材料で製作されたものであれば、第2磁気部材50の磁気吸着作用によって回転駆動前の位置に戻ることができる。
【0037】
出力プレートギア42の回転速度が所定の上限回転速度を超えた場合、モータ30はオフになり、モータ30によって駆動されていたクラッチギア44の回転速度は下がり、出力プレートギア42の回転速度よりも低くなり、第1噛合部421の第1歯部4211及び第2歯部4212が第1回転方向R1と反対する回転方向の接線方向に傾斜しているため、この時、第1噛合部421と第2噛合部442が噛合状態から離脱し、クラッチギア44は、第1方向D1に沿ってモータ30側に押し付けられながら、第1磁気部材433の磁気吸着作用によってさらにモータ30側へ移動することとなり、その結果、第1噛合部421と第2噛合部442は完全に離間状態になる。
【0038】
図13及び図14は、本発明の第2好適な実施形態を示したものであり、第2好適な実施形態に係るモータの動力伝達装置は、第1好適な実施形態とほぼ同じであるが、動力伝達アセンブリ40Aにおいて、伝動ホイル41Aの第1環状歯列411Aが当該伝動ホイル41Aの内周面に形成され、クラッチギア44Aの第2環状歯列441Aが当該クラッチギア44A外周面に形成されている点が異なる。
【0039】
上述したように、本発明に係るモータの動力伝達装置では、モータ30が動力を出力しない時に、動力伝達アセンブリ40の作動により、モータ30とハブシェル10との間の動力伝達関係を切り離すことができ、これにより、ハブシェル10は、モータ30を連れて回転させることなく自由に回転することができるので、運動エネルギの損失を回避することが可能となる。また、モータ30が動力を出力しない時に、本発明に係るブラケット43は、クラッチギア44と出力プレートギア42と離間させることで、持続的な接触による消耗を抑制することが可能となる。さらに、モータ30が始動する際には、押圧プレート45の作動により、クラッチギア44は、出力プレートギア42に押し付けられるように結合されて、出力プレートギア42を連れて回転させて、モータ30からの回転駆動力をハブシェル10に伝達し、その後、押圧プレート45はクラッチギア44の回転に干渉しないように、自動的に元の位置に戻ることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 ハブシェル
11 結合凹部
20 ハブシャフト
30 モータ
40、40A 動力伝達アセンブリ
41、41A 伝動ホイル
411、411A 第1環状歯列
42 出力プレートギア
421 第1噛合部
4211 第1歯部
4212 第2歯部
43 ブラケット
431 底板部
4311 第1押圧面
4312 第1摺動案内部
4313 傾斜当接面
4314 位置決めリング部材
432 支持部
4321 第2押圧面
433 第1磁気部材
44、44A クラッチギア
441、441A 第2環状歯列
442 第2噛合部
443 第1係合部
45 押圧プレート
451 第2係合部
452 第2摺動案内部
46 弾性部材
50 第2磁気部材
D1 第1方向
R1 第1回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
前記各第1噛合部は、連結されている第1歯部と第2歯部とを有し、該第1歯部及び第2歯部は共に、前記モータに向かって突出するように形成され、前記第1方向に沿って前記クラッチギアに近づく方向に向かうにつれて前記第1回転方向と反対する回転方向に傾斜することを特徴とする請求項2に記載のモータの動力伝達装置。