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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016786
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】履物
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20240131BHJP
   A43B 7/14 20220101ALI20240131BHJP
【FI】
A43B13/14 A
A43B7/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014494
(22)【出願日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2022118820
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)2022年(令和4年)4月5日 ウェブサイトEddy Japan(https://Eddy.hp.peraichi.com及びhttps://3e3ib.hp.peraichi.com/?_ga=2.238119557.442586141.1672906173-618692429.1635730729)において公開 (2)2022年(令和4年)7月21日 ウェブサイトPR TIMES(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000104378.html)において公開 (3)2022年(令和4年)7月27日~7月29日 東京ビッグサイト 東展示棟1~3ホールで開催された「SPORTEC2022」において公開 (4)2022年(令和4年)8月10日 ウェブサイトYouTube(https://youtu.be/a6dUO8J5Gao)において公開 (5)2022年(令和4年)8月10日 ウェブサイトEddy Japan(https://Eddy.hp.peraichi.com)において公開 (6)2022年(令和4年)8月23日 ウェブサイトPR TIMES(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000104378.html)において公開 (7)2022年(令和4年)10月17日 インスタグタム(https://www.instagram.com/p/CjzmVzQOIH4/?hl=ja)において公開 (8)2022年(令和4年)11月11日 クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」(https://camp-fire.jp/projects/view/629037)において公開 (9)2022年(令和4年)11月15日 ウェブサイトPR TIMES(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000104378.html)において公開 (10)2022年(令和4年)11月29日~12月1日 東京ビッグサイト 南展示棟1・2ホールで開催された「健康・未病産業展2022」において公開
(71)【出願人】
【識別番号】399010545
【氏名又は名称】山三商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】巻渕 文彰
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BA07
(57)【要約】
【課題】進行方向へ自然な意識で足を踏み出すだけで骨格構造に合致した正しい重心移動線に沿った重心移動を促すことができる履物を提供することを目的とする。
【解決手段】接地面1が弾性変形可能に構成され、さらに、前記接地面1には複数の横溝が設けられた履物であって、前記接地面1の踵部1aを含む後側領域部Aに設けられた複数の横溝2aは、内側から外側に向かって溝間隔Lが広くなる放射状に構成され、また、踏付け部1cを含む前記後側領域部Aよりも先端側の前側領域部Bに設けられた複数の横溝2bは、前記内側から前記外側に向かって正面視下がり傾斜するへの字状に構成されている履物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面が弾性変形可能に構成され、さらに、前記接地面には複数の横溝が設けられた履物であって、前記接地面の踵部を含む後側領域部に設けられた複数の横溝は、内側から外側に向かって溝間隔が広くなる放射状に構成され、また、踏付け部を含む前記後側領域部よりも先端側の前側領域部に設けられた複数の横溝は、前記内側から前記外側に向かって正面視下がり傾斜するへの字状に構成されていることを特徴とする履物。
【請求項2】
請求項1記載の履物において、前記後側領域部に設けられた複数の横溝は、後端側へ凸となる湾曲放射状に構成されていることを特徴とする履物。
【請求項3】
請求項1記載の履物において、前記前側領域部に設けられた横溝は、前記内側に位置する部分が正面視ほぼ水平に設けられていることを特徴とする履物。
【請求項4】
請求項2記載の履物において、前記前側領域部に設けられた横溝は、前記内側に位置する部分が正面視ほぼ水平に設けられていることを特徴とする履物。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の履物において、前記後側領域部には、この後側領域部に設けられた横溝と交差する複数の縦溝が設けられ、この後側領域部に設けられた縦溝は、前記踵部から先端側に向かって延設され、また、前記前側領域部には、この前側領域部に設けられた横溝と交差する複数の縦溝が設けられ、この前側領域部に設けられた縦溝は、前記外側へ凸となる湾曲状に構成されていることを特徴とする履物。
【請求項6】
請求項5記載の履物において、前記後側領域部に設けられた縦溝と前記前側領域部に設けられた縦溝とは連通状態に設けられていることを特徴とする履物。
【請求項7】
請求項5記載の履物において、前記後側領域部には、この後側領域部に設けられた横溝及び縦溝とで区画された複数の後側接地ブロック部が設けられ、また、前記前側領域部には、この前側領域部に設けられた横溝と縦溝とで区画された複数の前側接地ブロック部が設けられ、前記後側接地ブロック部及び前記前側接地ブロック部の少なくとも一部には滑り止め用凹凸パターンが設けられていることを特徴とする履物。
【請求項8】
請求項6記載の履物において、前記後側領域部には、この後側領域部に設けられた横溝及び縦溝とで区画された複数の後側接地ブロック部が設けられ、また、前記前側領域部には、この前側領域部に設けられた横溝と縦溝とで区画された複数の前側接地ブロック部が設けられ、前記後側接地ブロック部及び前記前側接地ブロック部の少なくとも一部には滑り止め用凹凸パターンが設けられていることを特徴とする履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人の足においては、膝から下の脛は体を支える太い脛骨と関節の可動や衝撃を分散する細い腓骨で構成されており、荷重を受ける脛骨は足の内側に位置するが、踵骨が脛骨に対して約5°~10°傾いている状態になっているため、踵のやや外側(図4に示すような内側:外側=7:3の位置)で着地することが良いとされている。
【0003】
したがって、歩行の際は、この着地点となる踵のやや外側に近い関節から順に曲げるような歩き方が足に負荷をかけない理想的な歩き方となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、足の指は図5に示すように、中足骨から末節骨までへの字のように結合されており、足の爪先方向に対して親指はほぼ直角で、それ以外の指は外方(図では左)斜め下になっている。
【0005】
したがって、前記のような理想的な歩き方をするためには、歩行の際の重心移動線は、図6に示すような踵のやや外側(内側:外側=7:3の位置)で着地し、そのまま足の外側を通り、小指の手前付近から内側に向かい親指方向に抜けるように蹴り出されることが理想的であるが、このような重心移動を普段の歩行(走行)の際に意識的に行うことは容易ではない。
【0006】
本発明はこのような現状に鑑みなされたものであり、進行方向へ自然な意識で足を踏み出すだけで前記のような正しい重心移動線に沿った重心移動を促すことができる履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
接地面1が弾性変形可能に構成され、さらに、前記接地面1には複数の横溝が設けられた履物であって、前記接地面1の踵部1aを含む後側領域部Aに設けられた複数の横溝2aは、内側から外側に向かって溝間隔Lが広くなる放射状に構成され、また、踏付け部1cを含む前記後側領域部Aよりも先端側の前側領域部Bに設けられた複数の横溝2bは、前記内側から前記外側に向かって正面視下がり傾斜するへの字状に構成されていることを特徴とする履物に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の履物において、前記後側領域部Aに設けられた複数の横溝2aは、後端側へ凸となる湾曲放射状に構成されていることを特徴とする履物に係るものである。
【0010】
また、請求項1記載の履物において、前記前側領域部Bに設けられた横溝2bは、前記内側に位置する部分が正面視ほぼ水平に設けられていることを特徴とする履物に係るものである。
【0011】
また、請求項2記載の履物において、前記前側領域部Bに設けられた横溝2bは、前記内側に位置する部分が正面視ほぼ水平に設けられていることを特徴とする履物に係るものである。
【0012】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の履物において、前記後側領域部Aには、この後側領域部Aに設けられた横溝2aと交差する複数の縦溝3aが設けられ、この後側領域部Aに設けられた縦溝3aは、前記踵部1aから先端側に向かって延設され、また、前記前側領域部Bには、この前側領域部Bに設けられた横溝2bと交差する複数の縦溝3bが設けられ、この前側領域部Bに設けられた縦溝3bは、前記外側へ凸となる湾曲状に構成されていることを特徴とする履物に係るものである。
【0013】
また、請求項5記載の履物において、前記後側領域部Aに設けられた縦溝3aと前記前側領域部Bに設けられた縦溝3bとは連通状態に設けられていることを特徴とする履物に係るものである。
【0014】
また、請求項5記載の履物において、前記後側領域部Aには、この後側領域部Aに設けられた横溝2a及び縦溝3aとで区画された複数の後側接地ブロック部4が設けられ、また、前記前側領域部Bには、この前側領域部Bに設けられた横溝2bと縦溝3bとで区画された複数の前側接地ブロック部5が設けられ、前記後側接地ブロック部4及び前記前側接地ブロック部5の少なくとも一部には滑り止め用凹凸パターンが設けられていることを特徴とする履物に係るものである。
【0015】
また、請求項6記載の履物において、前記後側領域部Aには、この後側領域部Aに設けられた横溝2a及び縦溝3aとで区画された複数の後側接地ブロック部4が設けられ、また、前記前側領域部Bには、この前側領域部Bに設けられた横溝2bと縦溝3bとで区画された複数の前側接地ブロック部5が設けられ、前記後側接地ブロック部4及び前記前側接地ブロック部5の少なくとも一部には滑り止め用凹凸パターンが設けられていることを特徴とする履物に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、進行方向へ自然な意識で足を踏み出すだけで正しい重心移動線に沿った重心移動を促すことができる履物となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施例に係る左足用の靴の底面図である。
図2】本実施例に係る歩行意識方向(白矢印)に対する正しい重心移動線を示す説明図である。
図3】本実施例に係る左足用の靴の斜視図である。
図4】腓骨、脛骨及び踵骨の関係を示す説明概略図である。
図5】足の指の骨構造を示す説明概略図である。
図6】歩行の際の理想的な重心移動線を示す説明図((a)は足甲側から見た場合、(b)は足裏側から見た場合)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
後側領域部Aにおいては、この後側領域部Aに設けられた複数の横溝2aが、内側から外側に向かって溝間隔Lが広くなる放射状に構成されているため、歩行時における踵着地後、踵部1aにかかる荷重が前方へ移動することによる底部7の屈曲変形は、外側ほど大きく、これにより、踵部1aにかかる荷重は外側へ誘導される。
【0020】
また、前側領域部Bにおいては、この前側領域部Bに設けられた複数の横溝2bは、内側から外側に向かって正面視下がり傾斜するへの字状に構成されているため、踏付け部1c付近に荷重がかかる前半では、底部7の屈曲変形が前方に向かって順次進行する際、荷重は内側に誘導され、爪先部1bに近づく後半では、親指方向に誘導される。
【0021】
したがって、本発明に係る履物を装着した場合、歩行の際、図2中の白矢印で示す方向に意識を向けるだけで、図2中の黒矢印で示すような、踵のやや外側で着地し、足の外側に荷重がかかった状態で着地が進み、踏付け部1c付近(小指の手前付近)から荷重が内側に移動しながら進み、爪先部1bにおいて、親指方向に抜けるように蹴り出すことができる正しい(理想的な)重心移動線に沿った重心移動の歩行(走行)が自然に達成され、これにより、歩行(走行)時の人体への負担を可及的に抑制した歩行動作を実現することができる。
【実施例0022】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0023】
本実施例は、使用者が歩行する際に接地する接地面1(ソール面)に溝が設けられた靴10に本発明を適用した例である。なお、靴10に限らずサンダル等、他の履物にも適用できる。また、図1~3に示す靴10はいずれも左足用である。
【0024】
まず、本実施例の底部7について説明する。
【0025】
本実施例の底部7は、弾性変形可能な素材からなり、接地面1は、踵部1aを含む後側領域部Aと、踏付け部1cを含む前側領域部Bとに大別される。
【0026】
具体的には、図1,2に図示したように、踵部1aを含む後側領域部Aには、靴10の内側から外側に向かって溝間隔Lが広くなる放射状に構成された複数の横溝2aが設けられている。
【0027】
より具体的には、後側領域部Aは、接地面1において踵部1a及び踏まず部1dの一部を含む領域であり、この後側領域部Aに設けられた複数の横溝2aは、始端から終端まで等幅等深さに設定され、図示するように、先端側に位置する横溝2aは上がり傾斜、後端側に位置する横溝2aは下り傾斜すると共に、後端側へ僅かに凸となる湾曲放射状に構成されている。
【0028】
また、この後側領域部Aの最後端部には、前記横溝2aよりも細く、また、深さも浅い複数の細横溝6aが設けられている。
【0029】
具体的には、この細横溝6aは、後側領域部Aの最も後端部側に設けられた横溝2aに沿って並設されている。
【0030】
なお、本実施例では、後側領域部Aに設けられた複数の横溝2aは、接地面1の内側にしてこの接地面1外に位置する任意の点を中心として、放射状に構成されているが、前記点(放射状の中心点)は接地面1内に設けても良い。また、横溝2aの湾曲度合いは、本実施例に限定されるものではなく、より湾曲度が大きくても良いし、ほぼ直線でも良い。
【0031】
また、踏付け部1cを含む前記後側領域部Aよりも先端側の前側領域部B(接地面1の後側領域部A以外の領域)には、靴10の内側から外側に向かって(図1及び2において)正面視下がり傾斜するへの字状に構成されている複数の横溝2bが設けられている。
【0032】
具体的には、前側領域部Bは、爪先部1b,踏付け部1c及び踏まず部1dの一部を含む領域であり、この前側領域部Bに設けられた複数の横溝2bは、始端から終端まで等幅等深さ(後側領域部Aの横溝2aと同じ溝幅、同じ溝深さ)で延設され、図示するように、靴10の長軸Xより内側に位置する部分が正面視ほぼ水平に設けられ、また、靴10の長軸Xより内側に位置する部分が正面視下がり傾斜に設けられ、全体として正面視への字に構成されている。なお、靴10の長軸Xとは、図1に示すように、靴10の外周上、最も離れた2点を通る直線である。
【0033】
さらに、本実施例においては、前側領域部Bに設けられた複数の横溝2bは、爪先部1b及びその近傍に設けられた横溝2bが、踏付け部1cに設けられた横溝2bに比して、下り傾斜部分の傾斜が緩傾斜に構成されている(への字というよりも先端部側へ凸となる緩やかな湾曲形状に構成されている。)。
【0034】
また、この前側領域部Bの最先端部には、前記横溝2bよりも細く深さも浅い複数の細横溝6bが設けられている。
【0035】
具体的には、この細横溝6bは、前記した後側領域部Aに設けられた細横溝6aと同構成であり、前側領域部Bの最も先端部側に設けられた横溝2bに沿って並設されている。
【0036】
また、後側領域部Aには、この後側領域部Aに設けられた横溝2aと交差する複数の縦溝3aが設けられている。
【0037】
具体的には、この後側領域部Aに設けられた縦溝3aは、踵部1aから先端側に向かって延設され、後側領域部Aは、この後側領域部Aに設けられた横溝2a及び縦溝3aとで区画された複数の後側接地ブロック部4が設けられた構成となっている。
【0038】
また、前側領域部Bには、前記後側領域部Aと同様に、この前側領域部Bに設けられた横溝2bと交差する複数の縦溝3bが設けられている。
【0039】
具体的には、この前側領域部Bに設けられた縦溝3bは、外側へ凸となる緩やかな湾曲状に構成され、前側領域部Bは、この前側領域部Bに設けられた横溝2b及び縦溝3bとで区画された複数の前側接地ブロック部5が設けられた構成となっている。
【0040】
より具体的には、後側領域部Aに設けられた縦溝3aと前側領域部Bに設けられた縦溝3bとは連通状態に設けられ連通溝3に構成されている。
【0041】
すなわち、連通溝3は、図示するように、後側領域部Aにおいて、後端部からやや外側に向かって先端部方向にほぼ直線的に延設され、前側領域部Bの踏付け部1c付近から内側に湾曲しながら先端部に抜けるような条溝に構成され、略等間隔で並設されている。なお、図示するように、後側領域部Aに設けられた縦溝3a、前側領域部Bに設けられた縦溝3bの全てが連通状態に成っていなくても良い。
【0042】
また、本実施例では、後側領域部Aに設けられた後側接地ブロック部4及び前側領域部Bに設けられた前側接地ブロック部5の少なくとも一部には適宜な形状の滑り止め用凹凸パターンが設けられている。
【0043】
具体的には、本実施例においては、後側領域部Aから前側領域部Bにわたって、図2に示すように、歩行(走行)時の正しい(理想的な)重心移動線上及びその近傍に位置する接地ブロック部(薄墨表示)に滑り止め用凹凸パターンが設けられている。
【0044】
なお、本実施例の底部7において、底部7の硬さ及び厚さ(接地ブロックの溝底部に対する突出高さ)は、靴10(履物)の種類や用途(ランニング用、ウォーキング用等)により適宜設定することで、理想的な重心移動をより良好に促すことができる。
【0045】
次に、本実施例の底部7以外について説明する。
【0046】
本実施例は、図3に示すように、足甲部11の外側寄りに、対向状態で複数の紐通し孔12が並設された一対の羽根部13が設けられた構成となっている。
【0047】
すなわち、本実施例は、使用者の足甲のほぼ中央を通る動脈等の重要な血管が通っている足甲中央部を圧迫することによる、むくみの発生や全身の血行血流が損なわれることを防止するため、足甲部11の緊締を足甲外側部11aで行うように構成されている。
【0048】
また、本実施例では、靴紐20として、結ばなくても足甲外側部11aの緊締状態を保持することができる靴紐が採用されている。
【0049】
具体的には、本実施例の靴紐20は、伸縮性部材からなる芯材と該芯材を被覆する伸縮性部材からなる筒状の外層材とを含んで構成され、靴の足甲部11(足甲外側部11a)に配される伸縮性を具備したものである。
【0050】
詳細には、図示するように、紐長手方向両端部に設けられ、靴の紐通し孔12の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して紐通し孔12の孔径よりも小径に変形するほぼ球状に形成された複数のこぶ部21aが連設されてなる所定長の一対のこぶ状紐部21と、各こぶ状紐部21にそれぞれ連設され、紐通し孔12の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して紐通し孔12の孔径よりも小径に変形するほぼ一定の太さに設定された所定長の一対の大径紐部22と、この一対の大径紐部22間に配され、紐通し孔12の孔径よりも小径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形するほぼ一定の太さに設定された小径紐部23とを有し、大径紐部22の任意の位置で紐通し孔12に係止させることにより、足甲部外側部11aの緊締状態を無段階で調整して保持することができるように構成されている。
【0051】
また、靴10の側面(外側の側面)には、前記靴紐20の両端部(こぶ状紐部21)を夫々止着可能な止着部14が設けられている。
【0052】
この止着部14は、紐通し孔12と同様に、こぶ状紐部21のこぶ部21aが小径状態では通過移動可能で、もとの大径状態では通過移動不能な靴紐挿通孔(図示省略)を有する構成であり、本実施例は、この止着部14の靴紐挿通孔にこぶ状紐部21を挿通することで、このこぶ状紐部21に設けられたこぶ部21aの復元作用によりこぶ状紐部21が靴紐挿通孔に位置決め係止され、これにより、靴紐20の戻り移動が良好に阻止され、大径紐部4及び小径紐部5による足甲部11(足甲外側部11a)の緊締状態が良好に保持されると共に、この靴紐20の両端部となるこぶ状紐部21がバタつかず、体裁が良くなるように構成されている。
【0053】
また、本実施例は、爪先保持部15を構成する表部材15aと裏部材(図示省略)との間に該爪先保持部15を補強する先芯部材が設けられておらず、且つ、踵保持部16を構成する表部材16aと裏部材(図示省略)との間に該踵保持部16を補強する月型芯部材が設けられていない構成となっている。すなわち、本実施例は、使用者の爪先及び踵が先芯部材及び月型芯部材により圧迫されない(動きが阻害され難い。)ように構成されている。
【0054】
また、本実施例では、踵が抜けないように、踵保持部16(の外側)に踵の抜けを防止する足幅方向に延びる帯状の抜け防止体17が設けられている。抜け防止体17は踵の後側外形状に沿って半円弧状に設けられている。抜け防止体17は、適度な伸縮性を有する素材、例えばシリコン等の適宜な部材で形成されている。なお、図中符号18はプルストラップである。また、図面では左足用の靴について説明しているが、右足用の靴についても(対称となるだけで)同様である。
【0055】
以上のように構成される本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0056】
本実施例は、底部7を上述のように構成したから、後側領域部Aにおいては、この後側領域部Aに設けられた複数の横溝2aが、内側から外側に向かって溝間隔Lが広くなる放射状に構成されているため、歩行時における踵着地後、踵部1aにかかる荷重が前方へ移動することによる底部7の屈曲変形は、外側ほど大きく、これにより、踵部1aにかかる荷重は外側へ誘導される。これにより、特に走行時に生じやすい内側への重心移動(内転)が可及的に防止される。
【0057】
また、前側領域部Bにおいては、この前側領域部Bに設けられた複数の横溝2bは、内側から外側に向かって正面視下がり傾斜するへの字状に構成されているため、踏付け部1c付近に荷重がかかる前半では、底部7の屈曲変形が前方に向かって順次進行する際、荷重は内側に誘導され、爪先部1bに近づく後半では、親指方向に誘導される。
【0058】
したがって、本実施例の靴10を装着した場合、歩行の際、踵のやや外側で着地し、図2中の白矢印で示す方向に意識を向けるだけで、図2中の黒矢印で示すような、踵のやや外側から、そのまま、足のやや外側に荷重がかかった状態で、踵部1a、踏まず部1d、踏付け部1cの順に着地が進み、踏付け部1cの途中(小指付け根の少し手前あたり)から前側領域部Bに設けられた複数の横溝2bの傾斜に沿って荷重が内側に移動しながら進み、爪先部1bにおいて、親指方向に抜けるように蹴り出すことができる理想的な重心移動線に沿った重心移動の歩行(走行)が自然に達成されることとなる。
【0059】
また、本実施例においては、前記の理想的な重心移動線に沿って後側領域部A及び前側領域部Bの各接地ブロック部4,5に滑り止め用凹凸パターンが設けられているから、重心移動(荷重移動)に伴い、良好なグリップ力が発揮されることになり、ふらつき・ぐらつきが生じ難く、安定して良好な重心移動ができるものとなる。
【0060】
したがって、本実施例の底部7によれば、骨格構造に合致した適正な重心移動が自然に達成され、歩行(走行)時の人体への負担を可及的に抑制した歩行動作を実現することができるものとなる。
【0061】
また、本実施例は足甲部11の緊締を足甲外側部11aで行うように構成したから、使用者の足甲のほぼ中央を通る動脈等の重要な血管が通っている足甲中央部が圧迫されにくくなり、よって、むくみの発生や全身の血行血流が損なわれることが可及的に防止されるものとなり、しかも、本実施例の靴紐20により、足甲外側部11aの緊締状態を無段階で調整することが可能となり、足甲部11に対してより優れた緊締作用が発揮されるものとなる。
【0062】
さらに、靴紐20の両端部(こぶ状紐部21)が共に靴10の外側の側面に揃って設けられることでデザイン上も極めて美しいものとなる。
【0063】
また、爪先保持部15に先芯部材を設けず、且つ、踵保持部16に月型芯部材を設けずに、踵保持部16に踵の抜けを防止する足幅方向に延びる帯状の抜け防止体17が設けられているから、踵の抜けを防止しつつ、靴10の前後方向(爪先・踵方向)からの圧迫を低減でき、足の血管の圧迫を良好に抑制できるものとなる。
【0064】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0065】
1 接地面
1a 踵部
1c 踏付け部
2a (後側領域部の)横溝
2b (前側領域部の)横溝
3a (後側領域部の)縦溝
3b (前側領域部の)縦溝
4 後側接地ブロック部
5 前側接地ブロック部
A 後側領域部
B 前側領域部
L (後側領域部に設けられた複数の横溝の)溝間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6