IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ツー−シックス デラウェア インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特開-キャビティを有する電極 図1
  • 特開-キャビティを有する電極 図2
  • 特開-キャビティを有する電極 図3
  • 特開-キャビティを有する電極 図4
  • 特開-キャビティを有する電極 図5
  • 特開-キャビティを有する電極 図6
  • 特開-キャビティを有する電極 図7
  • 特開-キャビティを有する電極 図8
  • 特開-キャビティを有する電極 図9
  • 特開-キャビティを有する電極 図10
  • 特開-キャビティを有する電極 図11
  • 特開-キャビティを有する電極 図12
  • 特開-キャビティを有する電極 図13
  • 特開-キャビティを有する電極 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167860
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】キャビティを有する電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20241127BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20241127BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20241127BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241127BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20241127BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241127BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20241127BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20241127BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M10/058
H01M10/052
H01M4/04 A
H01M4/139
H01M10/04 Z
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/88 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023137703
(22)【出願日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】18/321,541
(32)【優先日】2023-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519146787
【氏名又は名称】ツー-シックス デラウェア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】II-VI Delaware,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ディ,ラン
(72)【発明者】
【氏名】シンユー,ルー
(72)【発明者】
【氏名】ザン,ギャオ
(72)【発明者】
【氏名】ウェン-チン,シュー
【テーマコード(参考)】
5H018
5H028
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H018AA01
5H018BB00
5H018BB01
5H018BB08
5H018BB11
5H018HH02
5H018HH03
5H018HH04
5H028AA05
5H028CC07
5H028CC08
5H028HH01
5H028HH05
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AK05
5H029BJ12
5H029DJ14
5H029HJ03
5H029HJ07
5H029HJ12
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA08
5H050BA17
5H050CA11
5H050CA12
5H050FA15
5H050GA04
5H050GA25
5H050HA03
5H050HA07
5H050HA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エネルギー密度が向上し、充放電速度能力が向上し、サイクル安定性が向上した電池を提供する。
【解決手段】電極及び電極を有する電気化学デバイスにおいて、電極は、電気化学デバイス内の電気化学反応においてイオンと反応し得る活物質を含む本体を含む。本体112は、電気化学デバイスのセパレータ106の電解質108に当接し得る第1の表面118と、第1の表面から電極内へと深さ方向に延在する複数のキャビティ120を画定する第2の表面119とを有する。複数のキャビティは、電解質を受け入れる電極104への経路を画定する。経路は、電解質から、第1の表面よりも1つ以上の経路の近くに位置する活物質114の内側サブセット122へのイオン移動を向上させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極であって、
電気化学デバイス内の電気化学反応においてイオンと反応するように構成された活物質を含む本体であって、
前記電気化学デバイスのセパレータと接触するように構成された第1の表面と、
前記第1の表面から前記電極内へと深さ方向に延在する複数のキャビティを画定する第2の表面と、を含む前記本体を含み、
前記複数のキャビティが、前記セパレータの前記電解質を受け入れるように構成された前記電極への経路を画定し、
前記経路が、前記電解質から、前記第1の表面よりも1つ以上の経路の近くに位置する前記活物質の内側サブセットへのイオン移動を向上させるように構成される、
前記電極。
【請求項2】
前記第1の表面と前記第2の表面の総面積が、前記第1の表面の周囲によって境界付けられる面積よりも少なくとも10%広い、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記複数のキャビティの総容積が、前記電極の総体積の30%未満である、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記深さが、前記電極の厚みより少なくとも30%大きい、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記電極が細孔を画定し、前記複数のキャビティのそれぞれのサイズが前記細孔の平均サイズよりも大きい、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記複数のキャビティのそれぞれの前記サイズが、前記細孔のうちの最大の細孔のサイズよりも大きい、請求項5に記載の電極。
【請求項7】
前記複数のキャビティのそれぞれの前記サイズが、前記細孔の前記平均サイズの2倍から15倍の間の大きさである、請求項5に記載の電極。
【請求項8】
前記複数のキャビティのそれぞれの前記サイズが、前記細孔の前記平均サイズの15倍より大きい、請求項6に記載の電極。
【請求項9】
前記複数のキャビティが、円筒形、角錐形、円錐形、長方形、正方形、または多角形の形状を画定する、請求項1に記載の電極。
【請求項10】
前記電極がカソードである、請求項1に記載の電極。
【請求項11】
前記カソードが、酸素、硫黄、セレン、またはテルルのうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の電極。
【請求項12】
前記複数のキャビティが、規則的なマトリクスまたは不規則なマトリクスで配置される、請求項1に記載の電極。
【請求項13】
第1の電極と、
第2の電極であって、
電気化学デバイス内の電気化学反応においてイオンと反応するように構成された活物質を含む本体であって、
第1の表面と、
前記第1の表面から前記第2の電極へと深さ方向に延在する複数のキャビティと、を含む前記本体と、を含む、前記第2の電極と、
電解質を含むセパレータと、を含み、
前記セパレータが、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、前記第1の電極と前記第2の電極の間の直接の電気的接続を防止し、
前記第1の表面が前記電解質に当接し、
前記複数のキャビティが、前記電解質を受け入れる前記第2の電極への経路を画定し、
前記経路が、前記電解質から、前記第1の表面よりも1つ以上の前記経路の近くに位置する前記活物質の内側サブセットへのイオン移動を向上させるように構成される、
前記電気化学デバイス。
【請求項14】
前記経路内の前記電解質と前記第2の電極の前記内側サブセット内の前記活物質との間の平均距離が、前記第1の表面に当接する前記電解質と前記第2の電極の前記内側サブセット内の前記活物質との間の平均距離より少なくとも20%短い、請求項13に記載の電気化学デバイス。
【請求項15】
前記第2の電極が細孔を画定し、前記複数のキャビティのそれぞれのサイズが前記細孔の平均サイズよりも大きい、請求項13に記載の電気化学デバイス。
【請求項16】
前記第2の電極がカソードである、請求項13に記載の電気化学デバイス。
【請求項17】
前記第2の電極がアノードである、請求項13に記載の電気化学デバイス。
【請求項18】
前記第1の電極がアノードであり、前記第2の電極がカソードであり、前記第1の電極が、前記電気化学デバイス内の電気化学反応において前記イオンと反応するように構成された活物質を含む本体であって、
第1の表面と、
前記第1の表面から前記第1の電極内へと深さ方向に延在する複数のキャビティと、を含む前記本体と、を含み、
前記第1の電極の前記第1の表面が前記電解質に当接し、
前記第1の電極の前記複数のキャビティが、前記電解質を受け入れる前記第1の電極への経路を画定し、
前記第1の電極の前記経路が、前記電解質から、前記第1の電極の前記第1の表面よりも前記第1の電極の1つ以上の前記経路の近くに位置する前記第1の電極の前記活物質の内側サブセットへのイオン移動を向上させるように構成される、請求項13に記載の電気化学デバイス。
【請求項19】
電極を製造する方法であって、
電気化学デバイス内の電気化学反応においてイオンと反応するように構成された活物質を含む前記電極の本体を形成することであって、前記本体が細孔を含む、前記形成することと、
前記本体の第1の表面から深さ方向に延在する複数のキャビティを前記本体内に形成することであって、前記複数のキャビティのそれぞれのサイズが前記細孔の平均サイズよりも大きい、前記形成することと、
を含む、前記方法。
【請求項20】
前記複数のキャビティを形成することが、レーザー穴あけ加工、インデント加工、機械ミリング、電子ビーム加工、集束イオンビームミリング、放電ミリング、微細加工、反応性イオンエッチング、インプリンティング、または三次元印刷のうちの1つを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電気化学エネルギーの分野に関し、より具体的には、電気化学デバイスの性能を向上させるキャビティを有する電極に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、後で使用するためにエネルギーを保存する便利な手段を提供する。しかし、エネルギー密度が向上し、充放電速度能力が向上し、サイクル安定性が向上した電池が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明者らは、電極にキャビティを追加すると、エネルギー密度が向上し、充放電速度能力が向上し、サイクル安定性が向上することを認識した。したがって、本開示の1つの態様は、電気化学装デバイス内の電気化学反応においてイオンと反応するように構成された活物質を有する本体を含む電極に関する。本体は、電気化学デバイスのセパレータと接触するように構成された第1の表面と、第1の表面から電極内へと深さ方向に延在する複数のキャビティを画定する第2の表面とを含み得る。複数のキャビティは、セパレータの電解質を受け入れるように構成された電極への経路を画定する。経路は、電解質から、第1の表面よりも1つ以上の経路の近くに位置する活物質を含む内側サブセットへのイオン移動を向上させるように構成される。
【0004】
実施態様は、次の特徴のうちの1つ以上を含み得る。第1の表面と第2の表面との総面積は、第1の表面の周囲によって境界付けられる面積より少なくとも10%広い。複数のキャビティの総容積は、電極の総体積の30%未満である。深さは少なくとも電極の厚みの30%より大きい。電極は細孔を画定し、複数のキャビティのそれぞれのサイズは細孔の平均サイズよりも大きい。複数のキャビティのそれぞれのサイズは、細孔のうちの最大の細孔のサイズよりも大きい。複数のキャビティのそれぞれのサイズは、細孔の平均サイズの15倍を超える大きさである。複数のキャビティのそれぞれのサイズは細孔の平均サイズの2倍から15倍の間の大きさである。複数のキャビティは、円筒形、角錐形、円錐形、長方形、正方形、または多角形の形状を画定する。電極はカソードである。カソードは、酸素、硫黄、セレン、またはテルルのうちの少なくとも1つを含み得る。複数のキャビティは、規則的なマトリクスまたは不規則なマトリクスで配置される。
【0005】
本開示の別の一般的な態様は、第1の電極及び第2の電極を含む電気化学デバイスに関する。第2の電極は、電気化学デバイス内の電気化学反応においてイオンと反応するように構成された活物質を含む本体を含み得る。本体は、第1の表面と、第1の表面から第2の電極内へと深さ方向に延在する複数のキャビティとを含み得る。デバイスは、電解質を含み得るセパレータをさらに含む。セパレータは、第1の電極と第2の電極との間に配置され、第1の電極と第2の電極の間の直接の電気的接続を防止する。第1の表面は電解質に当接する。複数のキャビティは、電解質を受け入れる第2の電極への経路を画定する。経路は、電解質から、第1の表面よりも1つ以上の経路の近くに位置する活物質を含む内側サブセットへのイオン移動を向上させるように構成される。
【0006】
実施態様は、次の特徴のうちの1つ以上を含み得る。経路内の電解質と第2の電極の内側サブセット内の活物質との間の平均距離は、第1の表面に当接する電解質と第2の電極の内側サブセット内の活物質との間の平均距離より少なくとも20%短い。第2の電極は細孔を画定し、複数のキャビティのそれぞれのサイズは細孔の平均サイズよりも大きい。第2の電極はカソードである。第2の電極はアノードである。第1の電極はアノードであり、第2の電極はカソードである。第1の電極は、電気化学デバイス内の電気化学反応においてイオンと反応するように構成された活物質を含む本体を含み得る。本体は、第1の表面と、第1の表面から第1の電極内へと深さ方向に延在する複数のキャビティとを含み得る。第1の電極の第1の表面は電解質に当接する。第1の電極の複数のキャビティは、電解質を受け入れる第1の電極への経路を画定する。第1の電極の経路は、電解質から、第1の電極の第1の表面よりも第1の電極の1つ以上の経路の近くに位置する第1の電極の活物質の内側サブセットへのイオン移動を向上させるように構成される。
【0007】
本開示の別の一般的な態様は、電極を製造する方法を含み得る。製造方法は、電気化学デバイス内の電気化学反応においてイオンと反応するように構成された活物質を含む、電極の本体を形成することを含む。本体は細孔を含み得る。製造方法は、本体の第1の表面から深さ方向に延在する複数のキャビティを本体内に形成することをさらに含む。複数のキャビティのそれぞれのサイズは、細孔の平均サイズよりも大きい。
【0008】
実施態様は、次の特徴のうちの1つ以上を含み得る。複数のキャビティを形成する方法は、レーザー穴あけ加工、インデント加工、機械ミリング、電子ビーム加工、集束イオンビームミリング、放電ミリング、微細加工、反応性イオンエッチング、インプリンティング、または三次元印刷のうちの1つを含み得る。
【0009】
本発明の様々な追加の特徴及び利点は、添付の図面と併せて以下の例示的な実施形態の詳細な説明を検討すれば、当業者には明らかになるであろう。
【0010】
以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて閲読されることにより、より良好に理解される。説明する目的のために例が図示されるが、本主題は、開示される特定の要素及び手段に限定されない。以下の図面を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、電気化学デバイスの概略断面図を示す。
図2図2は、図1の領域A内での電気化学デバイスの拡大した概略斜視図を示す。
図3図3は、キャビティを有する電極の拡大図を示す。
図4図4は、複数のキャビティを有する別の電極の拡大図を示す。
図5図5は、複数のキャビティを有する別の電極の概略上面図を示す。
図6図6は、複数のキャビティを有する別の電極の概略断面図を示す。
図7図7は、電極の製造工程を示す。
図8図8は、サイクルの関数としての比容量電気化学デバイス試験データのグラフを示す。
図9図9は、サイクルの関数としての比容量電気化学デバイス試験データの別のグラフを示す。
図10図10は、サイクルの関数としての比容量電気化学デバイス試験データのさらに別のグラフを示す。
図11図11は、充放電曲線試験データのグラフを示す。
図12図12は、充放電曲線試験データの別のグラフを示す。
図13図13は、放電中の拡散係数試験データのグラフを示す。
図14図14は、充電中の拡散係数試験データのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の態様は、複数のキャビティを有する電極に関する。キャビティは、電極への電解質の浸透を向上させることができる動脈系を形成し得る。キャビティは、電極の活物質と電解質との間の接触面または界面を増大させ得る。キャビティは、電極の活物質と電解質との間の距離を短縮し得る。これにより、電極におけるイオン拡散の経路を短縮し得る。キャビティは、例えば、電極面積当たりの比容量を増大させることにより、セルレベルのエネルギー密度を増大させ得る。キャビティは、定格容量を増大させ、サイクル安定性を向上させ得る。本発明のこれら及び他の態様は、図1から図14に関して以下に説明される。
【0013】
図1は、本開示の態様による電気化学デバイス100の概略断面図を示す。図2は、図1の領域A内での電気化学デバイス100の拡大した概略斜視図を示す。実施形態では、電気化学デバイス100は、他の可能なものの中でも、電池、燃料電池等であり得る。電気化学デバイス100は、第1の電極102と、第2の電極104と、第1の電極102と第2の電極104を電気的に絶縁するセパレータ106とを含み得る。セパレータ106は、第1の電極102と第2の電極104との間のイオン110(例えば、リチウムイオン)の移動を促進し得る電解質108を含み得る。電解質108は、第1の電極102と第2の電極104との間の電子の移動を防止または抑制し得る。いくつかの実施形態では、第1の電極102はアノードであり得、第2の電極104はカソードであり得る。いくつかの代替的な実施形態では、第1の電極102はカソードであり得、第2の電極104はアノードであり得る。
【0014】
第2の電極104は、電気化学デバイス100内の電気化学反応においてイオン110と反応することができる活物質114を有し得る本体112を含み得る。例えば、第2の電極104がカソードであるいくつかの実施形態では、活物質114は、外部回路116を介して第1の電極102、すなわちアノードから電子を取得することができ、活物質114は電気化学反応で還元され得る。活物質は、他の可能なものの中でも、例えば、酸素、硫黄、セレン、テルル等のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、本体112は、例えば68μmと75μmを含む60μmから80μmの間の厚みを有し得るが、他の厚さも可能である。第2の電極104がアノードであるいくつかの実施形態では、活物質114は外部回路116に電子を放出することができ、活物質114は電気化学反応で酸化され得る。
【0015】
第2の電極104の本体112は、第1の表面118を含み得る。第1の表面118は、セパレータ106に当接し得る。第2の電極104の本体112は、第1の表面118から第2の電極104内へと深さを延在させることができるキャビティ120を画定する第2の表面119を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の電極104のみがキャビティ120を含む。いくつかの代替的な実施形態では、第1の電極102及び第2の電極104がそれぞれキャビティ120を含み得る。いくつかの例示的な実施形態では、キャビティ120は、5μmから15μmの間のサイズ(他の可能なものの中でも、例えば、円形のキャビティの直径、不規則な形状のキャビティにおける最大距離など)を有することができるが、他のサイズも可能である。キャビティ120の説明を含む、第2の電極104の本体112の幾何学的形状の実施形態の本明細書における任意の説明は、第1の電極102にも同様に適用し得る。すなわち、いくつかの実施形態では、第1の電極102は、第2の電極104の本体112及びキャビティ120の特徴及び関係のいずれかを有することができるキャビティを有する本体を含み得る。しかし、そのような実施形態では、第1の電極102の活物質は、第2の電極104の活物質と異なり得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、キャビティ120のそれぞれは、他のキャビティ120のそれぞれと同じサイズ及び形状であり得る。あるいは、1つ以上のキャビティ120は、1つ以上の他のキャビティ120とは異なるサイズ及び/または形状を有し得る。したがって、複数のキャビティ120のサイズ及び/または形状に関するその後の説明は、複数のキャビティ120の全てまたは一部に適用し得る。
【0017】
キャビティ120は、第2の電極104への経路を画定してもよく、経路はセパレータ106の電解質108を受け入れてもよい。例えば、図2は、電解質108で満たされたキャビティ120を示す。イオン110は、活物質114内よりも電解質108内でより自由に移動できる。したがって、電解質108のための第2の電極104内への経路を提供することによって、キャビティ120は、第1の表面118よりも1つ以上の経路の近くに位置する第2の電極104内の活物質114を含む内側サブセット122へのイオン110の移動を向上させ得る。すなわち、キャビティ120は、内側サブセット122と第1の表面118との間の距離と比べて、イオン110を運ぶことができる電解質108を、活物質114の内側サブセット122にさらに近づけることで、活物質114の内側サブセット122へのイオン110の移動を向上させ得る。キャビティ120は、電解質108と接触する第2の電極104の表面積を広くすることができ、それによって活物質114へのイオン110の移動を向上させ得る。内側サブセット122内の活物質114へのイオン110の移動を向上させることによって、キャビティ120は、電気化学デバイス100の全体的なエネルギー密度を高めることができ、電気化学デバイス100の充放電速度能力を高めることができ、さらに、電気化学デバイス100のサイクル安定性を高めることができる。例えば、いくつかの実施形態では、キャビティ120を有しない電気化学デバイスと比較して、キャビティ120は、電気化学デバイス100の拡散係数を3%以上、6%以上、9%以上、または12%以上向上させ得る。いくつかの実施形態では、キャビティ120を有しない電気化学デバイスと比較して、キャビティ120は、電気化学デバイス100の比容量を、以下のCレート、すなわち0.05、0.1、0.25、0.5、1、1.5、2、または最大20のCレートのいずれかにおいて、5%以上、10%以上、15%以上、または20%以上向上させ得る。
【0018】
図2に示すように、本体112は、キャビティ120によって画定される経路のいずれかよりも第1の表面118の近くに配置される、活物質114を含む外側サブセット124を含み得る。外側サブセット124に移送されたイオン110の大部分は、第1の表面118において電解質108から移動し得る。これは、活物質114を有する外側サブセット124が、キャビティ120によって画定される経路のいずれよりも、第1の表面118の近くに配置されるためである。反対に、内側サブセット122が、第1の表面118よりもキャビティ120によって画定される経路のうちの少なくとも1つの経路の近くに配置されているため、内側サブセット122に移送されるイオン110の大部分が、電解質108から、キャビティ120によって画定される経路のうちの最も近い経路内に移動し得る。言い換えれば、活物質114を有する外側サブセット124は、キャビティ120を画定する第2の表面119のいずれかよりも第1の表面118の近くに位置する第2の電極102の活物質114によって画定され得る。外側サブセット124は、外側サブセット124の細孔を通る通常の拡散を通じて、イオン110を電解質108の間で移動させ得る。活物質の内側サブセット122は、第1の表面118よりも第2の表面119のいずれかの近くに位置する第2の電極の活物質114によって画定され得る。キャビティ120内の電解質108が第1の表面108の電解質108よりも近いため、内側サブセット122は、複数のキャビティ120内の電解質108間でイオン110を移動させ得る。
【0019】
本発明者らは、内側サブセット122の活物質と電解質108との間の距離を短縮する利益は、キャビティ120を形成するために活物質を除去することによる影響とバランスを保つことができ、第2の電極104に電解質108が浸透することによる影響とのバランスも保つことができることを認識した(以下、「距離短縮効果と利益のバランス」)。発明者らは、経路内の電解質108と内側サブセット122内の活物質との間の平均距離が、第1の表面118に当接する電解質108と内側サブセット122内の活物質との間の平均距離よりも、他の範囲も同様に効果的であり得るが、20%から54%の間で下回るようにキャビティ120を形成することによって、距離短縮効果と利益の望ましいバランスが達成できることを発見した。この平均(mean)距離は、それぞれのサブセット及びそれぞれの電解質108内の活物質のすべての点の平均(average)距離を指す。例えば、いくつかの実施形態では、経路内の電解質108と内側サブセット122内の活物質との間の平均距離は、第1の表面118に当接する電解質108と内側サブセット122内の活物質との間の平均距離よりも、少なくとも20%短縮され得る。いくつかの実施形態では、経路内の電解質108と内側サブセット122内の活物質との間の平均距離は、第1の表面118に当接する電解質108と内側サブセット122内の活物質との間の平均距離より、少なくとも25%短縮され得る。いくつかの実施形態では、経路内の電解質108と内側サブセット122内の活物質との間の平均距離は、第1の表面118に当接する電解質108と内側サブセット122内の活物質との間の平均距離より、少なくとも30%短縮され得る。いくつかの実施形態では、経路内の電解質108と内側サブセット122内の活物質との間の平均距離は、第1の表面118に当接する電解質108と内側サブセット122内の活物質との間の平均距離より、少なくとも35%短縮され得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、距離短縮効果と利益の望ましいバランスは、第1の表面118の周囲によって境界付けられた面積(すなわち、複数のキャビティ120が形成される前の第1の表面118の面積)に対して、第1の表面118と第2の表面119との総面積をサイジングすることによって達成され得る。第2の電極104の任意の表面の面積は、以下でさらに説明するように、第2の電極104の任意の細孔の面積を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、第1の表面118と第2の表面119との総面積は、第1の表面118の周囲によって境界付けられる面積よりも10%から70%広い面積であり得るが、他の範囲も同様に効果的であり得る。いくつかの実施形態では、第1の表面118と第2の表面119との総面積は、第1の表面118の周囲によって境界付けられる面積より少なくとも10%広い面積であり得る。いくつかの実施形態では、第1の表面118と第2の表面119との総面積は、第1の表面118の周囲によって境界付けられる面積より少なくとも30%広い面積であり得る。いくつかの実施形態では、第1の表面118と第2の表面119との総面積は、第1の表面118の周囲によって境界付けられる面積より少なくとも50%広い面積であり得る。いくつかの実施形態では、第1の表面118と第2の表面119との総面積は、第1の表面118の周囲によって境界付けられる面積より少なくとも70%広い面積であり得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、距離短縮効果と利益の望ましいバランスは、第2の電極104の総体積に対して複数のキャビティ120の総容積をサイジングすることによって達成され得る。第2の電極104の総体積は、以下にさらに説明するように、第2の電極104の任意の細孔の容積を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、複数のキャビティ120の総容積は、第2の電極104の総体積の15%から30%であり得るが、他の範囲も同様に効果的であり得る。いくつかの実施形態では、複数のキャビティ120の総容積は、第2の電極104の総体積の30%未満であり得る。いくつかの実施形態では、複数のキャビティ120の総容積は、第2の電極104の総体積の25%未満であり得る。いくつかの実施形態では、複数のキャビティ120の総容積は、第2の電極104の総体積の20%未満であり得る。いくつかの実施形態では、複数のキャビティ120の総容積は、第2の電極104の総体積の15%未満であり得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、距離短縮効果と利益の望ましいバランスは、第2の電極104の総厚みTに対して複数のキャビティ120の深さをサイジングすることによって達成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、複数のキャビティ120の深さは、第2の電極104の厚みTの30%から100%の間であり得るが、他の範囲も同様に効果的であり得る。いくつかの実施形態では、複数のキャビティ120の深さは、第2の電極104の厚みTの少なくとも30%より大きくてもよい。いくつかの実施形態では、複数のキャビティ120の深さは、第2の電極104の厚みTの少なくとも50%より大きくてもよい。いくつかの実施形態では、複数のキャビティ120の深さは、第2の電極104の厚みTの少なくとも70%より大きくてもよい。いくつかの実施形態では、複数のキャビティ120の深さは、第2の電極104の厚みTの少なくとも90%より大きくてもよい。
【0023】
図2及び図3はそれぞれ、本開示の態様による別の第2の電極204、304の拡大図を示す。第2の電極204、304はそれぞれ、第2の電極104の構造、特徴、及び関係のいずれかを含むことができ、またその逆も同様である。例えば、第2の電極204はキャビティ220を含んでもよく、第2の電極304は複数のキャビティ320を含んでもよい。
【0024】
図2及び図3に示すように、第2の電極204、304はそれぞれ、キャビティ220、320とは区別可能な細孔226、326を含み得る。細孔226、326は、電極内部の材料のサイズが異なるために製造中に形成されることができ、キャビティ220、320は、電極の製造中または製造後に設計及び作製することができる。例えば、細孔226、326は、第2の電極204、304全体に均一またはランダムに分布させることができ、一方、キャビティ220、320は規則的または不規則なマトリクスで意図的に配置することができる。図2及び図3に示すように、キャビティ220、320のそれぞれのサイズは、細孔226、326のそれぞれの平均サイズより大きくてもよい。いくつかの実施形態では、キャビティ220、320のそれぞれのサイズは、細孔226、326のそれぞれの平均サイズよりも2倍から15倍大きくてもよいが、他の範囲も同様に効果的であり得る。いくつかの実施形態では、キャビティ220、320のそれぞれのサイズは、図2及び図3に示されるように、第2の電極204、304のそれぞれの最大細孔226、326のサイズより大きくてもよい。
【0025】
図5及び図6はそれぞれ、別の第2の電極404、504の概略上面図及び概略断面図を示す。第2の電極404、504はそれぞれ、第2の電極104、204、304の構造、特徴、及び関係のいずれかを含んでもよく、またその逆も同様である。例えば、第2の電極404、504は、それぞれ複数のキャビティ420、520を含み得る。図5及び図6に示すように、複数のキャビティ420、520は、電極404、504のそれぞれの上部及び/または電極404、504のそれぞれの深さに任意の数の形状を画定し得る。形状は、他の可能なものの中でも、例えば、円筒形、角錐形、円錐形、長方形、正方形、多角形、ジグザグ形などを含み得る。形状は均一であっても不均一であってもよい。
【0026】
図7は、本開示の態様による電極を製造するプロセス700を示す。プロセス700は、前述した第1及び第2の電極102、104、204、304、404、504のいずれかを製造するために使用され得る。
【0027】
プロセス700は、ステップ701において、電極の本体を形成することを含み得る。電極は、前述したように、電気化学デバイス内の電気化学反応においてイオンと反応するように構成された活物質を含み得る。本体は細孔を含み得る。前述したとおりである。電極は、例えばコーティングなどを含む、任意の数の既知の技術を使用して形成され得る。
【0028】
プロセス700は、ステップ702において、前述したように、本体の第1の表面からの深さに延在する複数のキャビティを本体内に形成することを含み得る。複数のキャビティのそれぞれのサイズは、前述したように、細孔の平均サイズよりも大きくてもよく、または最大の細孔よりも大きくてもよい。キャビティは、他の可能なものの中でも、例えば、レーザー穴あけ加工、インデント加工、機械ミリング、電子ビーム加工、集束イオンビームミリング、放電ミリング、微細加工、反応性イオンエッチング、インプリンティング、三次元印刷等を使用して形成され得る。
【0029】
図8から図14は、複数のキャビティ(「穴」と図示)を含めることによる電気化学デバイス性能の向上例を実証する試験データを示す。前述したように、試験される電池のカソード(すなわち、第2の電極104)のキャビティは、キャビティ内の電解質108と内側サブセット122内の活物質との間で、第1の表面118に当接する電解質108と内側サブセット122内の活物質との間の平均距離よりも20%から54%小さい平均距離を有してもよく、第1の表面118と第2の表面119との総面積は、第1の表面118の周囲によって境界付けられる面積よりも10%から70%大きくてもよく、複数のキャビティ120の総容積は、第2の電極104の総体積の15%から30%の間でもよく、及び/または複数のキャビティ120の深さは、第2の電極104の厚みTの30%から100%の間であってもよい。図8から図10は、サイクル数の関数として、さまざまなバッテリーのキャビティすなわち穴によってもたらされる比容量の向上を示す。図11及び図12は、別の電池のキャビティすなわち穴によってもたらされる充放電の向上を示す。図13及び14は、別の電池のキャビティすなわち穴によってもたらされる拡散係数の向上を示す。
【0030】
前述の説明は本発明の例を提供するものであることが理解される。しかしながら、本発明の他の実施態様は、前述の例とは詳細において異なる場合があることが考えられる。本発明またはその実施例へのすべての言及は、その時点で論じられている特定の実施例を参照することを意図しており、より一般的な本発明の範囲に関していかなる制限も示唆することを意図していない。特定の特徴に関する差別及び軽視の全ての言語は、これらの特徴のための好適性の欠如を示すことが意図されているが、別段の指示がないかぎり、これらを発明の範囲から完全に排除することは意図されていない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【外国語明細書】