(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167861
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】支保工自動建込み制御装置、支保工自動建込み制御プログラムおよび支保工自動建込み方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20241127BHJP
E21D 11/18 20060101ALI20241127BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
E21D11/40 A
E21D11/18
E21D9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143446
(22)【出願日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2023083651
(32)【優先日】2023-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】508182589
【氏名又は名称】エフティーエス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117558
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 和之
(72)【発明者】
【氏名】徳川 順一
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】水谷 和彦
(72)【発明者】
【氏名】五味 春香
(72)【発明者】
【氏名】坂下 誠
(72)【発明者】
【氏名】浅井 秀明
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA06
2D155CA01
2D155FB09
2D155LA12
2D155LA13
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】支保工の自動建込みを可能とする支保工自動建込み制御装置、支保工自動建込み制御プログラムおよび支保工自動建込み方法を提供する。
【解決手段】建込み制御装置30は、CPU31を有する。CPU31によって、エレクタ作業車20に設置されている作業車ターゲット95を対象とする作業車計測をTS10に指示する作業車計測指示手段と、作業車計測データを用いて、支保工99の仮建込みデータを生成する仮建込みデータ生成手段と、仮建込みデータにしたがい支保工99が建込まれるように、エレクタ50とエレクタ調整装置60を作動させる建込み制御手段と、支保工ターゲット95を対象とする支保工計測をTS10に指示する支保工計測指示手段と、支保工実測データが設計位置データと一致するまで、エレクタ調整装置60を作動させて支保工99を移動させる移動制御手段とが実現される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動追尾型のトータルステーションを利用した鋼製支保工の自動建込みに用いられる支保工自動建込み制御装置であって、
前記鋼製支保工を把持するエレクタと、該エレクタの位置および姿勢を調整するエレクタ調整装置とを有するエレクタ作業車に設置されている作業車ターゲットを対象とする作業車計測を前記トータルステーションに指示する作業車計測指示手段と、
前記トータルステーションが前記作業車計測を実行することによって得られる作業車計測データを用いて、前記鋼製支保工が建込まれる仮位置に応じた仮建込みデータを生成する仮建込みデータ生成手段と、
前記仮建込みデータにしたがい前記鋼製支保工が建込まれるように、前記エレクタと前記エレクタ調整装置を作動させる建込み制御手段と、
前記仮建込みデータを用いて前記鋼製支保工が建込まれたあとに、前記鋼製支保工に設置されている支保工ターゲットを対象とする支保工計測を前記トータルステーションに指示する支保工計測指示手段と、
前記トータルステーションが前記支保工計測を実行することによって得られる支保工実測データが、前記鋼製支保工が設計位置に建込まれたときの前記支保工ターゲットに応じた設計位置データと一致するまで、前記エレクタ調整装置を作動させて前記鋼製支保工を移動させる移動制御手段とを有する支保工自動建込み制御装置。
【請求項2】
前記支保工実測データと、前記設計位置データとを用いて前記鋼製支保工を前記設計位置に建込まれるように移動させる支保工移動データを生成する移動データ生成手段を更に有し、
前記移動制御手段は、前記鋼製支保工が前記設計位置に建込まれるように、前記支保工移動データにしたがい前記エレクタ調整装置を作動させて前記鋼製支保工を前記設計位置に建込まれるように移動させる請求項1記載の支保工自動建込み制御装置。
【請求項3】
前記エレクタによって前記鋼製支保工が把持されているときに前記支保工計測が実行されることによって得られる前記支保工実測データを第1の支保工実測データとし、前記エレクタによって前記鋼製支保工が把持されていないときに前記支保工計測が実行されることによって得られる前記支保工実測データを第2の支保工実測データとしたときに、該第1の支保工実測データと、第2の支保工実測データとを用いて前記第1の支保工実測データを補正する補正データを生成する補正データ生成手段と、
該補正データによって前記第1の支保工実測データを補正した補正済み実測データを生成する補正済み実測データ生成手段とを更に有する請求項1記載の支保工自動建込み制御装置。
【請求項4】
前記補正済み実測データが前記設計位置データと一致するまで、前記補正データ生成手段と前記補正済み実測データ生成手段とを作動させて、前記補正済み実測データを生成させる補正制御手段を更に有する請求項3記載の支保工自動建込み制御装置。
【請求項5】
前記移動制御手段は、前記支保工実測データとして、前記補正済み実測データを用い、該補正済み実測データが前記設計位置データと一致するまで、前記鋼製支保工を移動させる請求項3記載の支保工自動建込み制御装置。
【請求項6】
前記支保工実測データに応じた前記鋼製支保工の実測位置と、前記設計位置データに応じた前記鋼製支保工の設計位置とを並べて表示させる表示制御手段を更に有する請求項1記載の支保工自動建込み制御装置。
【請求項7】
前記支保工自動建込み制御装置は、前記自動追尾型のトータルステーションとともに三次元スキャナを利用した前記鋼製支保工の自動建込みに用いられ、
前記三次元スキャナが素掘り面を走査することによって生成される点群データと、前記素掘り面の設計値である素掘り面設計データとの差分を示す素掘り面差分データが、前記鋼製支保工の自動建込みが許容される自動建込み許容基準を満たすときに前記作業車計測指示手段を作動させる事前確認手段を更に有する請求項1~6のいずれか一項記載の支保工自動建込み制御装置。
【請求項8】
コンピュータを自動追尾型のトータルステーションを利用した鋼製支保工の自動建込みに用いられる支保工自動建込み制御装置として機能させる支保工自動建込み制御プログラムであって、該コンピュータを
前記鋼製支保工を把持するエレクタと、該エレクタの位置および姿勢を調整するエレクタ調整装置とを有するエレクタ作業車に設置されている作業車ターゲットを対象とする作業車計測を前記トータルステーションに指示する作業車計測指示手段と、
前記トータルステーションが前記作業車計測を実行することによって得られる作業車計測データを用いて、前記鋼製支保工が建込まれる仮位置に応じた仮建込みデータを生成する仮建込みデータ生成手段と、
前記仮建込みデータを用いて前記鋼製支保工が建込まれるように、前記エレクタと前記エレクタ調整装置を作動させる建込み制御手段と、
前記仮建込みデータにしたがい前記鋼製支保工が建込まれたあとに、前記鋼製支保工に設置されている支保工ターゲットを対象とする支保工計測を前記トータルステーションに指示する支保工計測指示手段と、
前記トータルステーションが前記支保工計測を実行することによって得られる支保工実測データが、前記鋼製支保工が設計位置に建込まれたときの前記支保工ターゲットに応じた設計位置データと一致するまで、前記エレクタ調整装置を作動させて前記鋼製支保工を移動させる移動制御手段として機能させる支保工自動建込み制御プログラム。
【請求項9】
前記コンピュータを
前記支保工実測データと、前記設計位置データとを用いて前記鋼製支保工を前記設計位置に建込まれるように移動させる支保工移動データを生成する移動データ生成手段として更に機能させ、
前記移動制御手段として機能させるときは、前記鋼製支保工が前記設計位置に建込まれるように、前記支保工移動データにしたがい前記エレクタ調整装置を作動させて前記鋼製支保工を前記設計位置に建込まれるように移動させる請求項8記載の支保工自動建込み制御プログラム。
【請求項10】
前記コンピュータを
前記エレクタによって前記鋼製支保工が把持されているときに前記支保工計測が実行されることによって得られる前記支保工実測データを第1の支保工実測データとし、前記エレクタによって前記鋼製支保工が把持されていないときに前記支保工計測が実行されることによって得られる前記支保工実測データを第2の支保工実測データとしたときに、該第1の支保工実測データと、第2の支保工実測データとを用いて前記第1の支保工実測データを補正する補正データを生成する補正データ生成手段と、
該補正データによって前記第1の支保工実測データを補正した補正済み実測データを生成する補正済み実測データ生成手段として更に機能させる請求項8記載の支保工自動建込み制御プログラム。
【請求項11】
前記補正済み実測データが前記設計位置データと一致するまで、前記補正データ生成手段と前記補正済み実測データ生成手段とを作動させて、前記補正済み実測データを生成させる補正制御手段として更に機能させる請求項10記載の支保工自動建込み制御プログラム。
【請求項12】
前記支保工自動建込み制御装置は、前記自動追尾型のトータルステーションとともに三次元スキャナを利用した前記鋼製支保工の自動建込みに用いられ、前記コンピュータを、前記三次元スキャナが素掘り面を走査することによって生成される点群データと、前記素掘り面の設計値である素掘り面設計データとの差分を示す素掘り面差分データが、前記鋼製支保工の自動建込みが許容される自動建込み許容基準を満たすときに前記作業車計測指示手段を作動させる事前確認手段として更に機能させる請求項8~11のいずれか一項記載の支保工自動建込み制御プログラム。
【請求項13】
自動追尾型のトータルステーションを利用した鋼製支保工の自動建込みを行う支保工自動建込み制御方法であって、
前記鋼製支保工を把持するエレクタと、該エレクタの位置および姿勢を調整するエレクタ調整装置とを有するエレクタ作業車に設置されている作業車ターゲットを対象とする作業車計測を前記トータルステーションに指示する作業車計測指示工程と、
前記トータルステーションが前記作業車計測を実行することによって得られる作業車計測データを用いて、前記鋼製支保工が建込まれる仮位置に応じた仮建込みデータを生成する仮建込みデータ生成工程と、
前記仮建込みデータにしたがい前記鋼製支保工が建込まれるように、前記エレクタと前記エレクタ調整装置を作動させる建込み制御工程と、
前記仮建込みデータを用いて前記鋼製支保工が建込まれたあとに、前記鋼製支保工に設置されている支保工ターゲットを対象とする支保工計測を前記トータルステーションに指示する支保工計測指示手段と、
前記トータルステーションが前記支保工計測を実行することによって得られる支保工実測データが、前記鋼製支保工が設計位置に建込まれたときの前記支保工ターゲットに応じた設計位置データと一致するまで、前記エレクタ調整装置を作動させて前記鋼製支保工を移動させる移動制御工程とを有する支保工自動建込み制御方法。
【請求項14】
前記支保工実測データと、前記設計位置データとを用いて前記鋼製支保工を前記設計位置に建込まれるように移動させる支保工移動データを生成する移動データ生成工程を更に有し、
前記移動制御工程は、前記鋼製支保工が前記設計位置に建込まれるように、前記支保工移動データにしたがい前記エレクタ調整装置を作動させて前記鋼製支保工を前記設計位置に建込まれるように移動させる請求項13記載の支保工自動建込み制御方法。
【請求項15】
前記エレクタによって前記鋼製支保工が把持されているときに前記支保工計測が実行されることによって得られる前記支保工実測データを第1の支保工実測データとし、前記エレクタによって前記鋼製支保工が把持されていないときに前記支保工計測が実行されることによって得られる前記支保工実測データを第2の支保工実測データとしたときに、該第1の支保工実測データと、第2の支保工実測データとを用いて前記第1の支保工実測データを補正する補正データを生成する補正データ生成工程と、
該補正データによって前記第1の支保工実測データを補正した補正済み実測データを生成する補正済み実測データ生成工程とを更に有する請求項13記載の支保工自動建込み制御方法。
【請求項16】
前記補正済み実測データが前記設計位置データと一致するまで、前記補正データ生成手段と前記補正済み実測データ生成手段とを作動させて、前記補正済み実測データを生成させる請求項15記載の支保工自動建込み制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トータルステーションを利用した鋼製支保工の自動建込みを可能とする支保工自動建込み制御装置、支保工自動建込み制御プログラムおよび支保工自動建込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル工法として、新オーストリアトンネル工法(NATM : New Austrian Tunneling Method)が知られている。NATMは、トンネル周囲の地山がトンネル自らを支えるという支保機能を利用した掘削技術で、主に山岳部の道路や鉄道のトンネルで用いられる。
【0003】
トンネル工事では、大型の掘削機械により、山や地下の土が削られて外に運び出す作業(掘削)が行われながら穴が掘り進められる。トンネルの内部は最終的にコンクリートが吹き付けられて舗装されるが、掘り進めていく途中でむき出しの岩盤や土砂が崩れる恐れがある。そのため、支保工とよばれる構造物が一定間隔で施工されて、岩盤や土砂が崩れないように支えられている。
【0004】
工事中のトンネル坑道の先端は切羽と呼ばれる。掘削機械が使用されるなどしてトンネルが掘り進められた後、その切羽に支保工が設置される。その支保工は、鋼製であり、アーチ状の構造物である。円弧状の一対の部材が天端部で連結されることによって、アーチ状の支保工が形成される。その際、エレクタと呼ばれる大型の重機が使用される。円弧状の部材がエレクタによって把持されながら中央部で連結されるとアーチ状の支保工が形成され、その支保工が切羽に設置される作業が支保工の建込みである。
【0005】
支保工の建込みでは、作業員が切羽直下に立ち入り、支保工の建込み位置を目視と定規で確認しながら作業が行われる。
【0006】
しかしながら、切羽直下での作業には、岩盤や土砂が崩落することによる安全面での問題があった。そこで、従来、このような支保工の建込みに関して、例えば、特許文献1に開示されている技術が知られていた。特許文献1には、支保工を把持するエレクタのハンドにターゲットが固設され、そのターゲットの設置座標値がレーザ測距儀で求められ、その設置座標値と、設置すべき支保工の座標値とに基づきエレクタの移動量が設定される支保工の設置方法および設置装置が開示されている。
【0007】
特許文献1に開示されている技術では、人手による切羽直前での作業無しに支保工の建込みが行えるものの、レーザ測距儀のターゲットがエレクタのハンドに設置されていた。そのため、レーザ測距儀で求めた座標が支保工の実際の位置と対応せず、支保工の位置がずれるという課題があった。
【0008】
そこで、従来、ターゲット等を支保工に取り付けて建込みを行う技術が知られていた(例えば、特許文献2,特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
【0009】
特許文献2では、複数のターゲットを支保工に取り付け、そのそれぞれの座標をトータルステーションが追尾しながら求めることによって、各ターゲットのトンネル中心からの距離を求め、それと支保工の設計半径との誤差に基づき、オペレータが支保工の位置を調整する。また、特許文献3では、支保工をエレクタで把持したあと、複数のターゲットを取り付けて、トータルステーションからレーザ光を照射し、そのターゲットの中心にレーザ光が照射されるようにオペレータがエレクタを操作して支保工を切羽に建込み、その建込みをしたあとのターゲットに照射されたレーザ光の位置を確認しながらオペレータがエレクタを操作して支保工を移動させる。さらに、特許文献4には、支保工にモーションキャプチャ用マーカを取り付け、そのマーカをモーションキャプチャ用カメラで撮影するなどして、支保工の測量対象部位が増えても測量機を増やさずに支保工を建込めることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3381606号公報
【特許文献2】特許第4559346号公報
【特許文献3】特開2021-17790号公報
【特許文献4】特開2019-173393号公報
【特許文献5】特開2023-37188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術によれば、支保工の建込みに関して、作業員が切羽直下に立ち入る必要がなくなるため、作業員の安全性が確保される。
【0012】
しかしながら、上記いずれの従来技術でも、切羽直下での作業がなくなり、作業員の安全性が確保されるとはいえ、作業員には、モニターを監視しながらエレクタで支保工を移動させる等のオペレーションが必要であり、それ故、作業員の負担軽減が十分ではなかった。とりわけ、複数の支保工が建込まれるときは、建込み作業が繰り返されるため、作業員の負担が過大になることがあった。それ故、従来、鋼製支保工の建込み作業におけるより一層の省力化が求められていた。
【0013】
この点、特許文献5に開示されている支保工建込みシステムによれば、支保工の建込みが全自動で行われる。支保工の建込みが全自動で行われると、建込み作業が省力化される。
【0014】
しかしながら、全自動化が実現されるためには、全自動化に要する制御処理をコンピュータ等処理装置がどのようにして実行するのか、制御処理の手順が明らかにされることが必要であるが、特許文献5には、そのような制御処理の手順が明らかにされていなかった。したがって、制御処理の手順が明らかにされて、建込み作業の自動化による省力化が確実に実現されることが求められていた。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、支保工自動建込み制御装置、支保工自動建込み制御プログラムおよび支保工自動建込み方法において、作業員の安全性が確保されたうえに、制御処理の手順が明らかにされて、建込み作業の自動化による省力化が確実に実現されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、自動追尾型のトータルステーションを利用した鋼製支保工の自動建込みに用いられる支保工自動建込み制御装置であって、鋼製支保工を把持するエレクタと、そのエレクタの位置および姿勢を調整するエレクタ調整装置とを有するエレクタ作業車に設置されている作業車ターゲットを対象とする作業車計測をトータルステーションに指示する作業車計測指示手段と、トータルステーションが作業車計測を実行することによって得られる作業車計測データを用いて、鋼製支保工が建込まれる仮位置に応じた仮建込みデータを生成する仮建込みデータ生成手段と、仮建込みデータにしたがい鋼製支保工が建込まれるように、エレクタとエレクタ調整装置を作動させる建込み制御手段と、仮建込みデータを用いて鋼製支保工が建込まれたあとに、鋼製支保工に設置されている支保工ターゲットを対象とする支保工計測をトータルステーションに指示する支保工計測指示手段と、トータルステーションが支保工計測を実行することによって得られる支保工実測データが、鋼製支保工が設計位置に建込まれたときの支保工ターゲットに応じた設計位置データと一致するまで、エレクタ調整装置を作動させて鋼製支保工を移動させる移動制御手段とを有する支保工自動建込み制御装置を提供する。
【0017】
上記支保工自動建込み制御装置の場合、支保工実測データと、設計位置データとを用いて鋼製支保工を設計位置に建込まれるように移動させる支保工移動データを生成する移動データ生成手段を更に有し、移動制御手段は、鋼製支保工が設計位置に建込まれるように、支保工移動データにしたがいエレクタ調整装置を作動させて鋼製支保工を設計位置に建込まれるように移動させるようにすることができる。
【0018】
また、エレクタによって鋼製支保工が把持されているときに支保工計測が実行されることによって得られる支保工実測データを第1の支保工実測データとし、エレクタによって鋼製支保工が把持されていないときに支保工計測が実行されることによって得られる支保工実測データを第2の支保工実測データとしたときに、その第1の支保工実測データと、第2の支保工実測データとを用いて第1の支保工実測データを補正する補正データを生成する補正データ生成手段と、その補正データによって第1の支保工実測データを補正した補正済み実測データを生成する補正済み実測データ生成手段とを更に有することが好ましい。
【0019】
上記支保工自動建込み制御装置において、補正済み実測データが設計位置データと一致するまで、補正データ生成手段と補正済み実測データ生成手段とを作動させて、補正済み実測データを生成させる補正制御手段を更に有することが好ましい。
【0020】
さらに、移動制御手段は、支保工実測データとして、補正済み実測データを用い、その補正済み実測データが設計位置データと一致するまで、鋼製支保工を移動させるようにすることができる。
【0021】
また、支保工実測データに応じた鋼製支保工の実測位置と、設計位置データに応じた鋼製支保工の設計位置とを並べて表示させる表示制御手段を更に有するようにすることもができる。
【0022】
さらに、支保工自動建込み制御装置は、自動追尾型のトータルステーションとともに三次元スキャナを利用した鋼製支保工の自動建込みに用いられ、三次元スキャナが素掘り面を走査することによって生成される点群データと、素掘り面の設計値である素掘り面設計データとの差分を示す素掘り面差分データが、鋼製支保工の自動建込みが許容される自動建込み許容基準を満たすときに作業車計測指示手段を作動させる事前確認手段を更に有することが好ましい。
【0023】
また、本発明は、コンピュータを自動追尾型のトータルステーションを利用した鋼製支保工の自動建込みに用いられる支保工自動建込み制御装置として機能させる支保工自動建込み制御プログラムであって、そのコンピュータを鋼製支保工を把持するエレクタと、そのエレクタの位置および姿勢を調整するエレクタ調整装置とを有するエレクタ作業車に設置されている作業車ターゲットを対象とする作業車計測をトータルステーションに指示する作業車計測指示手段と、トータルステーションが作業車計測を実行することによって得られる作業車計測データを用いて、鋼製支保工が建込まれる仮位置に応じた仮建込みデータを生成する仮建込みデータ生成手段と、仮建込みデータを用いて鋼製支保工が建込まれるように、エレクタとエレクタ調整装置を作動させる建込み制御手段と、仮建込みデータにしたがい鋼製支保工が建込まれたあとに、鋼製支保工に設置されている支保工ターゲットを対象とする支保工計測をトータルステーションに指示する支保工計測指示手段と、トータルステーションが支保工計測を実行することによって得られる支保工実測データが、鋼製支保工が設計位置に建込まれたときの支保工ターゲットに応じた設計位置データと一致するまで、エレクタ調整装置を作動させて鋼製支保工を移動させる移動制御手段として機能させる支保工自動建込み制御プログラムを提供する。
【0024】
上記支保工自動建込み制御プログラムの場合、コンピュータを支保工実測データと、設計位置データとを用いて鋼製支保工を設計位置に建込まれるように移動させる支保工移動データを生成する移動データ生成手段として更に機能させ、移動制御手段として機能させるときは、鋼製支保工が設計位置に建込まれるように、支保工移動データにしたがいエレクタ調整装置を作動させて鋼製支保工を設計位置に建込まれるように移動させることが好ましい。
【0025】
さらにまた、コンピュータをエレクタによって鋼製支保工が把持されているときに支保工計測が実行されることによって得られる支保工実測データを第1の支保工実測データとし、エレクタによって鋼製支保工が把持されていないときに支保工計測が実行されることによって得られる支保工実測データを第2の支保工実測データとしたときに、その第1の支保工実測データと、第2の支保工実測データとを用いて第1の支保工実測データを補正する補正データを生成する補正データ生成手段と、その補正データによって、第1の支保工実測データを補正した補正済み実測データを生成する補正済み実測データ生成手段として更に機能させることが好ましい。
【0026】
上記支保工自動建込み制御プログラムにおいて、補正済み実測データが設計位置データと一致するまで、補正データ生成手段と補正済み実測データ生成手段とを作動させて、補正済み実測データを生成させる補正制御手段として更に機能させることが好ましい。
【0027】
また、上記支保工自動建込み制御プログラムにおいて、支保工自動建込み制御装置は、自動追尾型のトータルステーションとともに三次元スキャナを利用した鋼製支保工の自動建込みに用いられ、コンピュータを、自動追尾型のトータルステーションが三次元スキャナを有し、三次元スキャナが素掘り面を走査することによって生成される点群データと、素掘り面の設計値である素掘り面設計データとの差分を示す素掘り面差分データが、鋼製支保工の自動建込みが許容される自動建込み許容基準を満たすときに作業車計測指示手段を作動させる事前確認手段として更に機能させることが好ましい。
【0028】
さらに、本発明は、自動追尾型のトータルステーションを利用した鋼製支保工の自動建込みを行う支保工自動建込み制御方法であって、鋼製支保工を把持するエレクタと、そのエレクタの位置および姿勢を調整するエレクタ調整装置とを有するエレクタ作業車に設置されている作業車ターゲットを対象とする作業車計測をトータルステーションに指示する作業車計測指示工程と、トータルステーションが作業車計測を実行することによって得られる作業車計測データを用いて、鋼製支保工が建込まれる仮位置に応じた仮建込みデータを生成する仮建込みデータ生成工程と、仮建込みデータにしたがい鋼製支保工が建込まれるように、エレクタとエレクタ調整装置を作動させる建込み制御工程と、仮建込みデータを用いて鋼製支保工が建込まれたあとに、鋼製支保工に設置されている支保工ターゲットを対象とする支保工計測をトータルステーションに指示する支保工計測指示手段と、トータルステーションが支保工計測を実行することによって得られる支保工実測データが、鋼製支保工が設計位置に建込まれたときの支保工ターゲットに応じた設計位置データと一致するまで、エレクタ調整装置を作動させて鋼製支保工を移動させる移動制御工程とを有する支保工自動建込み制御方法を提供する。
【0029】
上記支保工自動建込み制御方法において、支保工実測データと、設計位置データとを用いて鋼製支保工を設計位置に建込まれるように移動させる支保工移動データを生成する移動データ生成工程を更に有し、移動制御工程は、鋼製支保工が設計位置に建込まれるように、支保工移動データにしたがいエレクタ調整装置を作動させて鋼製支保工を設計位置に建込まれるように移動させることが好ましい。
【0030】
また、上記支保工自動建込み制御方法において、エレクタによって鋼製支保工が把持されているときに支保工計測が実行されることによって得られる支保工実測データを第1の支保工実測データとし、エレクタによって鋼製支保工が把持されていないときに支保工計測が実行されることによって得られる支保工実測データを第2の支保工実測データとしたときに、その第1の支保工実測データと、第2の支保工実測データとを用いて第1の支保工実測データを補正する補正データを生成する補正データ生成工程と、その補正データによって第1の支保工実測データを補正した補正済み実測データを生成する補正済み実測データ生成工程とを更に有することが好ましい。
【0031】
上記支保工自動建込み制御方法において、補正済み実測データが設計位置データと一致するまで、補正データ生成手段と補正済み実測データ生成手段とを作動させて、補正済み実測データを生成させることが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
以上詳述したように、本発明によれば、作業員の安全性が確保されたうえに、制御処理の手順が明らかにされて、建込み作業の自動化による省力化が確実に実現されるようにした支保工自動建込み制御装置、支保工自動建込み制御プログラムおよび支保工自動建込み方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施の形態に係る支保工自動建込み制御装置を有するエレクタ作業車によって鋼製支保工の自動建込みが行われているトンネルの要部を示す斜視図である。
【
図2】支保工自動建込み制御装置を有する支保工自動建込みシステムのブロック図である。
【
図3】エレクタ作業車、トータルステーションと、支保工とを示すブロック図である。
【
図7】エレクタ作業車が有するセンサ付きエレクタの平面図である。
【
図8】エレクタ作業車が有するセンサ付きエレクタの側面図である。
【
図9】エレクタ作業車が有するセンサ付きエレクタの正面図である。
【
図10】自動建込み制御処理の動作手順を示したフローチャートである。
【
図11】支保工建込み移動処理の動作手順を示したフローチャートである。
【
図12】
図11に続く支保工建込み移動処理の動作手順を示したフローチャートである。
【
図13】
図12に続く支保工建込み移動処理の動作手順を示したフローチャートである。
【
図14】液晶表示装置に表示される建込み比較表示の一例を示した図である。
【
図15】ブームが撓んだ場合の支保工のずれを模式的に示した図である。
【
図16】変形例に係る支保工自動建込み制御装置を有する支保工自動建込みシステムのブロック図である。
【
図17】エレクタ作業車、変形例に係るトータルステーションと、支保工とを示すブロック図である。
【
図18】変形例に係る事前確認付き自動建込み制御処理の動作手順を示したフローチャートである。
【
図19】素掘り面事前確認処理の動作手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0035】
図1~
図9を参照して、本発明の実施の形態に係る支保工自動建込み制御装置(以下「建込み制御装置」ともいう)30による鋼製支保工の自動建込みについて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る支保工自動建込み制御装置(以下「建込み制御装置」ともいう)30を有するエレクタ作業車20によって鋼製支保工99の自動建込みが行われているトンネルTNの要部を示す斜視図である。
図2は支保工自動建込みシステム1のブロック図である。
図3は建込み制御装置30を有するエレクタ作業車20、自動追尾型のトータルステーション(TS)10と、鋼製支保工99(99A,99B)とを示すブロック図である。
図4~
図6は、建込み制御装置30を有するエレクタ作業車20を示す図である。
図7~
図9は、エレクタ作業車20が有するセンサ付きエレクタ50(50A,50B)を示す図である。
【0036】
図1に示すように、建込み制御装置30による支保工の自動建込みは、トンネルTNの切羽付近で行われる。そのトンネルTNでは、後述するエレクタ作業車20が切羽付近に配置されている。その後方(エレクタ作業車20よりも坑口側)のトンネルTNの壁面W(例えば、既設の鋼製支保工99に固定された台座)にトータルステーション(TS)10が固定されている。そして、切羽付近に支保工99(99A,99B)が設置されている。その支保工99(99A,99B)が支保工の自動建込みによって建込まれている。支保工99(99A,99B)は、そのそれぞれが円弧上の部材であって設計位置に建込まれたときに天端部が締結されることで一体となったアーチ状の支保工99が形成される。支保工99(99A,99B)には、それぞれ天頂部と下端部にターゲット96(96A,96B),97(97A,97B)が設置されている。
【0037】
トータルステーション(TS)10は、ターゲットを自動的に追尾する自動追尾型である。トータルステーション(TS)10では、追尾用のレーザ光を照射して、エレクタ作業車20に設置されているターゲット(プリズム)95(または支保工99に設置されているターゲット96,97)から戻ってきた光をイメージセンサで受信して、ターゲット95(ターゲット96,97)と望遠鏡十字線の中心とのずれを画像処理により求め、そのずれをもとにターゲット95(ターゲット96,97)が常に望遠鏡十字線の中心になるように、筐体内のモータをフィードバック制御させることで自動追尾機能が実現されている。このような自動追尾機能によって、トータルステーション(TS)10は、エレクタ作業車20に設置されているターゲット95,支保工99(99A,99B)に設置されているターゲット96,97を自動追尾で視準する。また、トータルステーション(TS)10は、建込み制御装置30と接続ケーブル9cで接続されている(
図2参照)。その接続ケーブル9cを通じて建込み制御装置30から送信される後述する計測指示データにしたがい、TS10がターゲット95,ターゲット96,97を視準して、エレクタ作業車20の位置・姿勢データ(三次元座標データ)と、支保工99(99A,99B)の位置・姿勢データ(三次元座標データ)とが生成される。
【0038】
(エレクタ作業車)
図1に示すように、エレクタ作業車20は、建込み制御装置30と、センサ付きエレクタ50(50A,50B)と、エレクタ調整装置60とを有している。
図4~
図6にも示すように、エレクタ作業車20は、左右一対のセンサ付きエレクタ50(50A,50B)が前方に配置され、その間にコンクリートの吹付装置71が配置されている。その後方にエレクタ調整装置60と、コントロールデッキ72とが配置され、エレクタ作業車20の全体が無端ベルトを有する走行部73上に配置されている。建込み制御装置30がコントロールデッキ72に配置されている。また、エレクタ作業車20には、切羽からみた後方にターゲット95が設置されている(
図1参照)。ターゲット95は、TS10により視準される。それによって、エレクタ作業車20の位置・姿勢データ(後述する作業車位置・姿勢データ)が生成される。その作業車位置・姿勢データを用いて後述する仮建込みデータが建込み制御装置30によって生成される。
【0039】
(建込み制御装置)
建込み制御装置30は、支保工の自動建込みに用いられる装置であって、後述する自動建込み制御処理を実行する。
図2に示すように、建込み制御装置30は、接続ケーブル9cを通じて、トータルステーション(TS)10と通信を行うことができる。なお、以下の説明では、建込み制御装置30として、ノート型のパーソナルコンピュータが想定されているが、据え置き型のパーソナルコンピュータでもよい。
【0040】
建込み制御装置30は、
図2に示すように、CPU31、ROM32、RAM33、データ記憶部34、液晶表示部35を有している。また、建込み制御装置30は、音声変換処理部36、通信制御部37、通信処理部38a、無線通信部38b、スピーカ39およびマイク40を有している。
【0041】
CPU31は、ROM32に記憶されているプログラムにしたがい作動して建込み制御装置30全体の動作制御を司る。ROM32はCPU31が実行する制御プログラムが記憶されている。RAM33には、データ通信を行うための通信制御プログラムや、CPU31によるプログラムの実行に必要なデータ等が記憶される。
【0042】
データ記憶部34には種々のデータや、後述する支保工自動建込み制御プログラム、そのほかのアプリケーションプログラム、各種データなどが記憶されている。データ記憶部34は、例えば、SSD(Solid State Drive)によって構成される。液晶表示部35は、LCD(Liquid Crystal Display)とその駆動部を有し、文字、図形、記号などの画像表示を行う画像表示手段である。
【0043】
液晶表示部35は、タッチパネル機能を有しており、手指の操作入力によって入力されるデータをCPU31に入力する一方、CPU31の指示にしたがい、後述する建込み比較表示135等を表示する表示機能を有している。
【0044】
音声変換処理部36は、音声データを伸張してスピーカ39に出力する一方、マイク40から入力するアナログ音声信号をデジタルの音声データに変換および圧縮して、通信処理部38aに入力する。通信制御部37はCPU31の指示を受けて作動し、データ通信を行うための回線の接続および切断を制御する。通信処理部38aは、通信制御部37の指示にしたがい作動して、図示しない有線のLANケーブルを介して行われるデータの送受信を実行する。無線通信部38bは通信制御部37の制御にしたがい、無線によるデータの送受信を実行する無線通信手段である。スピーカ39は、音声を出力する音声出力手段であり、マイク40はユーザの会話内容等の音声を入力し、電気信号に変換する。さらに、接続コネクタ41には、接続コード9a,9b,9cが接続される。接続コード9a,9b,9cには、それぞれセンサ付きエレクタ50(50A,50B),エレクタ調整装置60、TS10が接続されている。
【0045】
(センサ付きエレクタ、エレクタ調整装置)
図7~
図9に示すように、センサ付きエレクタ50(50A,50B)は、それぞれブーム51を有し、その先端に把持装置52が設けられている。
図3に示すように、センサ付きエレクタ50(50A,50B)は、エレクタ調整装置60の後述するアクチュエータ61に接続されている。そのアクチュエータ61の動作に応じて、ブーム51と把持装置52の位置および姿勢が調整される。すなわち、ブーム51の後述する伸縮機構51a、傾斜調節機構51bおよび左右の旋回機構51c、把持装置52の後述する移動機構52bがアクチュエータ61の動作に応じて作動して、ブーム51と把持装置52の位置および姿勢が調整される。
【0046】
ブーム51は、把持装置52を支持する装置である。ブーム51は、
図7~
図9に示すように、伸縮機構51aと、傾斜調節機構51bおよび旋回機構51cを有し、そのそれぞれの動作量(伸縮量、傾斜角度、旋回角度)を検出するストロークセンサ51aa,角度センサ51ba,51caが備えられている。ストロークセンサ51aa,角度センサ51ba,51caのそれぞれによって検出されたデータが検出データe51として建込み制御装置30に出力される。把持装置52は、支保工99を把持するハンド52aと、ハンド52aを回動(上下または水平方向)、回転または伸縮させる移動機構52bとを有し、さらに移動機構52bの動作量(上下の回動角度、水平の回動角度または回転角度)を検出する角度センサ52ba、52bb、52bcが備えられている。角度センサ52ba、52bb、52bcによって検出されたデータが検出データe52として建込み制御装置30に出力される。
【0047】
エレクタ調整装置60は、センサ付きエレクタ50(50A,50B)の位置および姿勢を調整する装置である。エレクタ調整装置60は、
図3に示すように、アクチュエータ61、電磁比例弁(油圧バルブ)62,作動油タンク63,油圧ポンプ64およびモータ65を有している。
【0048】
アクチュエータ61は、図示しない接続部材でセンサ付きエレクタ50(50A,50B)のブーム51と把持装置52に接続されている。アクチュエータ61は、電磁比例弁62の動作に応じてブーム51の伸縮機構51a、傾斜調節機構51bおよび旋回機構51cと、把持装置52の移動機構52bを作動させる。電磁比例弁62には、油圧ポンプ64が接続されている。油圧ポンプ64がモータ65の動力によって作動し、その油圧ポンプ64によって加圧されたオイルが電磁比例弁62に供給される。油圧ポンプ64は、作動油タンク63に貯蔵されている油(オイル)を加圧して電磁比例弁62に供給する。また、電磁比例弁62には、建込み制御装置30から後述する指示データd10、d11,d12が出力される。電磁比例弁62は、その指示データd10、d11,d12に応じて、バルブ開閉量が変わる。それにより、アクチュエータ61に送り出される油圧が調整され、それに応じてブーム51と把持装置52の動作が変わる。
【0049】
(自動建込み制御処理)
続いて、
図10~
図13を参照して、建込み制御装置30によって実行される自動建込み制御処理について説明する。建込み制御装置30は、本発明に係る支保工自動建込み制御プログラムにしたがい自動建込み制御処理を実行する。
【0050】
そして、自動建込み制御処理が実行されるときは、CPU31がデータ記憶部34等にアクセスしながら、
図10~
図13に示すフローチャートにしたがい作動して、作業車計測指示手段、仮建込みデータ生成手段、建込み制御手段、支保工計測指示手段、移動制御手段等としての動作を実行する。なお、
図10~
図13において"S"とはステップを略記したものである。
【0051】
CPU31は、
図10に示すフローチャートにしたがい、自動建込み制御処理を実行する。CPU31は、自動建込み制御処理を開始すると、
図10において、ステップ1に処理を進め、作業車計測指示手段としての動作を実行し、エレクタ作業車20の計測指示データi1をTS10に出力する(
図3参照)。計測指示データi1は、エレクタ作業車20(ターゲット95)を対象とする計測(「作業車計測」ともいう)を実行するようにTS10に指示するデータである。その計測指示データi1にしたがいTS10が作業車計測を実行すると、その作業車計測の結果に応じた位置・姿勢データ(3次元座標データ)e1が生成される。続いて、ステップ2に動作が進み、建込み制御装置30は、TS10から位置・姿勢データe1を入力する(
図3参照)まで待機して、TS10から位置・姿勢データe1が入力されるとステップ3に処理を進めて後述する支保工建込み移動処理を実行する(
図10参照)。位置・姿勢データe1は、TS10が計測指示データi1を受けて作業車計測を実行することで得られるデータであり、本発明に係る作業車計測データに相当する。続いて、後述する支保工建込み移動処理を実行したあと、CPU31は、ステップ4に処理を進め、終了条件(例えば、作業時間が経過した等)が成立したか否かを判定し、終了条件が成立したときは自動建込み制御処理を終了するが、終了条件が成立していないときはステップ1に戻り、上記の処理を繰り返す。
【0052】
ここで、終了条件として、例えば、1組の支保工99(99A,99B)を1本とした場合において、複数本の支保工99を1セットとし、その1セット分の支保工99が建込まれたことを終了条件とすることができる。そうすると、例えば、3本の支保工99が1セットとされている場合、その3本の支保工99が建込まれるまで、ステップ1からステップ4までが繰り返されて、3本で1セット分の支保工99が自動で建込まれるようにすることができる。こうすることで、建込み作業がよりいっそう省力化される。
【0053】
(支保工建込み移動処理)
次に、CPU31は、
図11~
図13に示すフローチャートにしたがい、支保工建込み移動処理を実行する。支保工建込み移動処理では、CPU31が移動制御手段としての動作を実行し、支保工99が設計位置に建込まれて、後述する支保工実測データが設計位置データと一致するまで、支保工99の移動処理が繰り返される。
【0054】
CPU31は、支保工建込み移動処理を開始すると、
図11において、ステップ11に処理を進め、TS10から入力される位置・姿勢データe1を作業車位置・姿勢データとして保存してステップ12に処理を進める。作業車位置・姿勢データは、エレクタ作業車20の位置・姿勢を示すデータで、TS10がエレクタ作業車20のターゲット95を視準して生成される。ステップ12では、CPU31が仮建込みデータ生成手段としての動作を行い、ステップ11で保存した作業車位置・姿勢データを用いて仮建込みデータを生成する。続くステップ13では、CPU31が建込み制御手段としての動作を行い、仮建込みデータを含む指示データd10を検出データe51、e52を用いて生成して、その指示データd10をエレクタ調整装置60に出力して、仮建込みデータにしたがい支保工99が建込まれるように、エレクタ調整装置60を作動させる。仮建込みデータは、支保工99を切羽付近に暫定的に建込むのに使用されるデータであって、支保工99の座標値、ブーム51の作動量、把持装置52の作動量のデータなどが含まれている。位置・姿勢データe1はTS10によって、エレクタ作業車20のターゲット95を視準して生成される位置・姿勢の実測データである。ターゲット95の位置・姿勢(3次元座標データ)が把握されると、設計位置データとの比較で、ターゲット95から設計位置までの距離と方向が算出される。すると、その算出結果に応じて、ブーム51の作動量(伸張する長さ、上下、左右の角度)、把持装置52の作動量(上下、左右の角度)が算出される。その算出結果を示す作動量データを用いることで、支保工99が切羽付近に暫定的に建込まれることができる。その作動量データが仮建込みデータに相当する。
【0055】
続いて、処理がステップ14に進み、CPU31は、仮建込みが完了するまで待機して、仮建込みが完了するとステップ15に処理を進める。ステップ15では、CPU31が支保工計測指示手段としての動作を行い、支保工の計測指示データi2をTS10に出力する。計測指示データi2は、(支保工99の)ターゲット96,97を対象とする計測(「支保工計測」ともいう)を実行するようにTS10に指示するデータである。その計測指示データi2にしたがいTS10が支保工計測を実行すると、その支保工計測の結果に応じた位置・姿勢データ(3次元座標データ)e2が生成される。続いて、ステップ16に処理が進み、CPU31は、TS10から位置・姿勢データe2を入力するまで待機して、TS10から位置・姿勢データe2が入力されるとステップ17に処理を進めて入力した位置・姿勢データe2が仮建込み実測データとして保存される。位置・姿勢データe2は、切羽付近に暫定的に建込まれた支保工99の位置・姿勢を示すデータである。その後、CPU31がステップ21に処理を進める。
【0056】
上記のように、支保工建込み移動処理では、ステップ14のあとにステップ15が実行されるので、ステップ15の計測指示データi2に応じた支保工計測は、仮建込みが完了したあとに実行される。その支保工計測では、支保工99がセンサ付きエレクタ50によって把持されていない。そのため、仮建込み実測データには、支保工99がセンサ付きエレクタ50によって把持されている場合のずれ(主にブーム51のたわみによるずれ)が含まれていない。仮建込み実測データは、仮建込みが完了したあと、支保工99がセンサ付きエレクタ50によって把持されていないときの支保工計測によって生成されるので、本発明における第2の支保工実測データに相当する。
【0057】
CPU31は、
図12に示すフローチャートにしたがい、ステップ21以降の処理を実行する。CPU31は、ステップ21に処理を進めると、検出データe51、e52を用いて、支保工把持指示データd11を生成し、その支保工把持指示データd11をエレクタ作業車20のエレクタ調整装置60に出力する。支保工把持指示データd11は、支保工99を把持するようにエレクタ調整装置60に指示するデータである。続くステップ22で、CPU31は、支保工計測指示手段としての動作を行い、支保工99の計測指示データi2をTS10に出力する。その計測指示データi2にしたがいTS10が支保工計測を実行すると、その支保工計測の結果に応じた位置・姿勢データ(3次元座標データ)e2が生成される。続いて、CPU31は、ステップ23で、TS10から位置・姿勢データe2を入力するまで待機してTS10から位置・姿勢データe2が入力されるとステップ24に処理を進めて、入力した位置・姿勢データe2が支保工実測データとして保存される。
【0058】
上記のように、ステップ21のあとにステップ22が実行されるので、ステップ22の計測指示データi2に応じた支保工計測は、支保工99がセンサ付きエレクタ50によって把持されたあとに実行される。そのため、ステップ24で保存される支保工実測データには、支保工99がセンサ付きエレクタ50によって把持されている場合のずれ(主にブーム51のたわみによるずれ)が含まれる。ここで保存される支保工実測データは、支保工99がセンサ付きエレクタ50によって把持されているときに生成されるので、本発明における第1の支保工実測データに相当する。
【0059】
続いて、ステップ25に処理が進み、CPU31が補正データ生成手段としての動作を行い、ステップ17で保存される仮建込み実測データ(第2の支保工実測データ)と、ステップ24で保存される支保工実測データ(第1の支保工実測データ)を用いて両者の相違を求め、その相違に応じたデータをたわみ補正データとして生成する。前述したように、仮建込み実測データは支保工99が把持されていないときの支保工計測で生成されるデータであり、支保工実測データは支保工99が把持されているときの支保工計測で生成されるデータである。センサ付きエレクタ50によって、支保工99が把持されていると、支保工99の重量の影響を受けてセンサ付きエレクタ50(特にブーム51)がたわみ、そのたわみの影響で支保工99の位置(3次元座標)が(重力に沿った方向および水平方向に)変化する。また、ブーム51の長さが長くなればたわみが大きくなるし、ブーム51の上下方向の角度が大きくなる場合も、たわみが大きくなる。このようなたわみの影響を考慮せずに建込みを続けても、そのたわみの影響による3次元座標のずれに応じて、支保工99の建込み位置がずれてしまい、支保工99を正確な位置に建込むことが困難になる。したがって、支保工99の自動建込みがより正確な形で実現されるためには、そのたわみの影響による3次元座標のずれが解消されることが好ましい。
【0060】
そのため、自動建込み制御処理では、そのたわみの影響を解消するため、ステップ25、26が実行される。ステップ25に続くステップ26では、CPU31が補正済み実測データ生成手段としての動作を行い、たわみ補正データによって支保工実測データを補正した補正済み実測データを生成する。補正済み実測データは、センサ付きエレクタ50のたわみの影響による3次元座標のずれが解消されている。
【0061】
この点、特許文献5には、全自動支保工建込み制御において、ブームのたわみ補正を実行することが開示されている。特許文献5に開示されているブームのたわみ補正では、支保工99の重量ごとに、ブームの長さ(本体伸縮量)に応じたたわみの大きさが予め計測されて、そのブームの長さ(本体伸縮量)とたわみの大きさとが関連付けられて、支保工99の重量ごとに記憶手段(たわみ補正テーブル)に記憶されている。係るたわみ補正テーブルには、ブームの長さが飛び飛びの大きさで記憶されるから、たわみ補正テーブルがたわみ補正に用いられる場合、ブーム51の実測した長さがたわみ補正テーブルに記憶されているブームの長さと一致しない場合があり、その場合、たわみ補正テーブルから取得されるたわみの大きさが実際のたわみの大きさと相違する(たわみ補正テーブルに記憶されるブームの長さを細かく変えると、実測した長さと一致しやすくはなるが、両者の相違はなくならない)。したがって、特許文献5に開示されているたわみ補正では、たわみの影響による3次元座標のずれが正確に補正されないおそれがある。
【0062】
これに対し、本実施の形態に係るたわみ補正データは、仮建込み実測データと、支保工実測データという支保工計測が実際に行われた結果を示すデータを用いて生成されている。そのため、たわみ補正データには、ブーム51の実際の長さおよび支保工99の実際の重量が反映されているから、係るたわみ補正データによって、たわみの影響による3次元座標のずれが正確に補正される。
【0063】
また、支保工99の建込みが繰り返される場合(前述した終了条件として、1セット分の支保工99が建込まれることが設定されている場合)、ステップ1からステップ4までが繰り返され、建込まれる支保工99ごとにステップ11~38が実行される。そのため、支保工99が建込まれるたびにその都度、支保工計測が実行され、そのときの状況(支保工99の重量、ブーム51の長さや角度)に応じたたわみ補正データが生成される。したがって、支保工99の建込みが繰り返される場合にも、各支保工99について正確な建込み作業が実行される。
【0064】
さらに、特許文献5に開示されているブームのたわみ補正では、たわみ補正テーブルから取得されるたわみ補正量がZ軸座標に加算され、Z軸座標がたわみ補正量に応じて大きい大きさに補正されている。
【0065】
しかしながら、ブーム51の長さおよび支保工99の重量によるずれは、Z軸(高さ)方向だけでなく、水平方向にも現れる。例えば、
図15に示すように、ブーム51(51e)および支保工99(99e)が、たわみによって、ブーム51(51f)および支保工99(99f)の位置にずれるとすると、支保工99の位置が矢印L1で示すようにずれる。この場合、支保工99(99e)の位置のずれには、高さ方向のずれh1と、水平方向のずれd1とが含まれる。したがって、たわみ補正量がZ軸座標に加算されるだけでは、水平方向のずれが反映されないため、たわみ補正が不正確になる。この点、本実施の形態に係るたわみ補正データは、仮建込み実測データと、支保工実測データという支保工計測が実際に行われた結果を示すデータを用いて生成されている。そのため、本実施の形態に係るたわみ補正データには、Z軸(高さ)方向のずれだけでなく、水平方向のずれも反映されている。したがって、本実施の形態に係る自動建込み制御処理では、ブーム51の長さおよび支保工99の重量によるずれが正確に補正されるので、正確な建込み作業の自動化が実現される。
【0066】
一方、CPU31は、ステップ26の後、ステップ31に処理を進めて、補正済み実測データと設計位置データとを比較する。続くステップ32では、補正済み実測データと設計位置データとが一致するか否かをCPU31が判定し、両者が一致しているときは支保工建込み移動処理が終了するが、両者が一致していないときは、ステップ33に処理が進む。ステップ33では、CPU31が移動データ生成手段としての動作を行い、検出データe51、e52を用いて支保工移動データd12を生成する。支保工移動データd12は、補正済み実測データが設計位置データと一致するように、支保工99を移動させるデータである。支保工移動データd12は、補正済み実測データと設計位置データとの差に応じたデータで、支保工99の座標値、ブーム51の作動量、把持装置52の作動量のデータなどのデータが含まれている。続くステップ34では、支保工移動データd12にしたがい支保工99を設計位置に建込めるように移動させるため、支保工移動データd12がエレクタ作業車20のエレクタ調整装置60に出力される。次のステップ35では、支保工移動データd12に応じた支保工99の移動が完了するまで待機し、支保工99の移動が完了したときはステップ36に処理が進む。ステップ36では、CPU31は、支保工計測指示手段としての動作を行い、支保工99の計測指示データi2をTS10に出力する。その計測指示データi2にしたがいTS10が支保工計測を実行すると、その支保工計測の結果に応じた位置・姿勢データ(3次元座標データ)e2が生成される。次のステップ37で、TS10から位置・姿勢データe2を入力するまで待機して、TS10から位置・姿勢データe2が入力されるとステップ38に処理が進み、入力した位置・姿勢データe2が支保工実測データとして保存される。ステップ38で保存される支保工実測データは支保工99の移動が完了した後、支保工99がセンサ付きエレクタ50によって把持されているときに生成されるので、本発明における第1の支保工実測データに相当する。ステップ38が終了すると、
図12に示すように、処理がステップ25に戻り、上記の処理が繰り返して実行される。
【0067】
上記のように、支保工建込み移動処理では、TS10の支保工計測によって得られる支保工実測データが設計位置データと比較され(ステップ31)、その両者が一致するまで(ステップ32)、支保工移動データd12の生成、支保工移動データd12に応じた支保工99の移動(ステップ33~35)が繰り返される。そのため、建込み制御装置30による自動建込み制御処理によって、支保工99が自動で、すなわち、作業員がエレクタで支保工99を移動させる等のオペレーションを行うことなく支保工99が設計位置に建込まれるようにすることができる。また、たとえ一度の建込み作業で支保工99が設計位置に建込まれなくても、支保工移動データd12に応じた支保工99の移動が繰り返されるから、支保工99の人手を介さない自動建込みが実現される。したがって、本発明の実施の形態に係る建込み制御装置30によって、作業員の安全性が確保されるだけでなく、建込み作業の自動化による省力化が実現される。上記の実施形態では、建込み作業の自動化が実現される制御処理の手順が自動建込み制御処理として明らかにされ、どのようにして、制御処理が実行されるのかが明らかにされており、それによって、省力化が確実に実現される。
【0068】
特に、建込み制御装置30による自動建込み制御処理では、設計位置データと比較される支保工実測データとして、補正済み実測データが用いられ、その補正済み実測データが設計位置データと比較されて、両者が一致するまで(ステップ32)、支保工移動データd12の生成、支保工移動データd12に応じた支保工99の移動、補正済み実測データの生成(ステップ26)が繰り返されている。補正済み実測データは、センサ付きエレクタ50(特にブーム51)のたわみの影響を解消するために補正されたデータである。そのため、設計位置データと比較される支保工実測データとして、補正済み実測データが用いられることで、センサ付きエレクタ50(特にブーム51)のたわみの影響が解消されることになり、上記の自動建込み作業がより正確な形で実現される。
【0069】
また、CPU31が補正制御手段としての動作を行うことで、補正済み実測データが設計位置データと一致するまで、支保工移動データd12に応じた支保工99の移動、その移動後の支保工実測データの保存(ステップ33~38)、たわみ補正データの生成および補正済み実測データの生成(ステップ25,26)が繰り返される。そのため、支保工99の移動が実行されるたびに、支保工計測、たわみ補正データの生成、補正済み実測データの生成が行われる。支保工99の移動が実行されると、支保工99の位置、ブーム51の状況(長さ、角度)が変わり、それに応じて、支保工実測データが変わるため、たわみ補正データも、移動後の支保工99に応じたデータとすることが正確な建込みには必要である。そのため、補正制御手段を有することで、補正済み実測データがその移動後の支保工99に対応したデータになるため、建込み制御装置30によって、正確な自動建込みが実現される。
【0070】
そして、建込み制御装置30では、CPU31が表示制御手段としての動作を行い、建込み比較表示135を液晶表示部35に表示させることが好ましい。例えば、建込み比較表示135では、
図14に示すように、支保工実測データに応じた支保工99の実測位置P1と、設計位置P2とが並べて表示される。建込み比較表示135では、実測位置P1と設計位置P2とに加えて、両者の相違に基づく移動量Xも表示させる。こうすることで、オペレータ自らの操作は不要であるものの、支保工99の実測位置P1と、設計位置P2とがどの程度相違するのかをオペレータが視覚的に把握することができるから、オペレータの心理的な負担を軽減することができる。
【0071】
さらに、建込み制御装置30は、支保工実測データを用いて支保工99の建込み角度を算出する建込み角度算出手段と、その算出された建込み角度を示す建込み角度データにしたがい、支保工99が設計角度で建込まれるようにエレクタ調整装置を作動させる角度制御手段を更に有することが好ましい。支保工99は、左右の支保工99(99A,99B)が連結されて一体化されるが、設計角度で建込まれるように支保工99を回転させることで、その締結精度を向上させることができるからである。
【0072】
図示はしないが、建込み制御装置30によって、支保工99が自動で設計位置に建込まれる。そのため、支保工建込み制御処理の実行に先立ち、建込み予定の支保工99の本数を設定できるように本数設定手段を設け、その本数設定手段によって設定された本数の建込みが完了するまで支保工自動建込み制御処理を継続することが好ましい。この場合、例えば、ステップ4の終了条件の成否をその設定本数の建込みが完了したか否かで判定すればよい。こうすることで、より一層作業の省力化が実現される。
【0073】
(変形例)
次に、変形例に係る支保工自動建込みシステム1Aについて、
図16~
図19を参照して説明する。
図16は、変形例に係る支保工自動建込み制御装置30Aを有する支保工自動建込みシステム1Aのブロック図、
図17は、変形例に係るエレクタ作業車20Aおよび三次元スキャナ(3Dスキャナ)110、トータルステーション10と、支保工99とを示すブロック図である。
図18は、変形例に係る事前確認付き自動建込み制御処理の動作手順を示したフローチャート、
図19は、素掘り面事前確認処理の動作手順を示したフローチャートである。
【0074】
変形例に係る支保工自動建込みシステム1Aは、前述の支保工自動建込みシステム1と比較して、エレクタ作業車20、建込み制御装置30の代わりに、それぞれ、エレクタ作業車20A、建込み制御装置30Aを有する点と、三次元スキャナ110を有する点とで相違している。
【0075】
三次元スキャナ110は、レーザ光を周囲の対象物に照射して得られる反射光から、対象物までの距離、角度を割り出して三次元の点群データを生成する。点群データは無数の点データの集合で、対象物の凹凸形状が三次元座標で記録されているデータである。三次元スキャナ110は、トンネルTNの坑内に設置され、接続ケーブル9dを用いて建込み制御装置30Aに接続される。図示はしないが、三次元スキャナ110として、レーザ光を用いるレーザスキャナのほか、ミリ波スキャナ等のレーダスキャナを用いてもよい。レーダスキャナは、例えばコンクリートの吹付装置71のノズル先端に設置される。
【0076】
エレクタ作業車20Aは、エレクタ作業車20と比較して、建込み制御装置30の代わりに建込み制御装置30Aを有する点で相違している。
【0077】
建込み制御装置30Aは、建込み制御装置30と比較して、後述する事前確認付き自動建込み制御処理を支保工自動建込み制御プログラムにしたがい実行する点で相違するが、そのほかの点では一致している。事前確認付き自動建込み制御処理は、
図18に示すように、前述した自動建込み制御処理と比較して、ステップ40の素掘り面事前確認処理がステップ1の前に実行される点で相違するが、そのほかの点では一致している。変形例に係る支保工自動建込み制御プログラムは、前述の支保工自動建込み制御プログラムと比較して、ステップ40の素掘り面事前確認処理がステップ1の前に実行される点で相違するが、そのほかの点では一致している。その素掘り面事前確認処理では、
図17に示すように、建込み制御装置30Aが三次元スキャナ110に後述するスキャン指示データi11を出力し、三次元スキャナ110から後述するスキャンデータ(「点群データ」ともいう)e11を入力する。
【0078】
(素掘り面事前確認処理)
そして、建込み制御装置30Aでは、CPU31が
図19に示すフローチャートにしたがい、素掘り面確認処理を実行する。CPU31は、素掘り面確認処理を開始すると、
図19において、ステップ51に処理を進め、素掘り面のスキャン指示データi11を三次元スキャナ110に出力する(
図17参照)。素掘り面のスキャン指示データi11は、素掘り面の点群データを生成するように、三次元スキャナ110に指示するデータである。素掘り面は、トンネルTNの内部における切羽の素掘り部(未覆工部)の表面に相当する。そのスキャン指示データi11にしたがい三次元スキャナ110が作動すると、点群データe11が生成される。続いて、ステップ52に動作が進み、建込み制御装置30Aは、その点群データe11を三次元スキャナ110から入力する(
図17参照)まで待機して、三次元スキャナ110から点群データe11が入力されるとステップ53に処理を進めて、入力した点群データe11をデータ記憶部34に保存する。
【0079】
次に、ステップ54に処理が進み、CPU31は、点群データe11と、素掘り面設計データとを用いて、素掘り面差分データを生成する。素掘り面設計データは、素掘り面の設計値に相当するデータである。素掘り面差分データは、点群データe11と、素掘り面設計データとの差分を示すデータである。点群データe11は、三次元スキャナ110による三次元計測によって生成されたデータであって、素掘り面の実際の凹凸形状に応じた三次元データである。素掘り面設計データは、素掘り面の設計上の凹凸形状に応じた三次元データである。そのため、素掘り面差分データは、素掘り面に関する実際の計測データと、設計上のデータとのずれを示すデータである。素掘り面事前確認処理では、設計値(素掘り面設計データ)よりも深く(山側、奥側に)掘り進められている場合に素掘り面差分データがプラスになり、浅く掘り進められている場合に素掘り面差分データがマイナスになるように生成される。
【0080】
続いてステップ55に処理が進み、CPU31は、素掘り面差分データが自動建込み許容条件を満たすか否かを判定し、素掘り面差分データが自動建込み許容基準を満たすとき(自動建込み許容条件が成立しているとき)はステップ58に処理が進むが、自動建込み許容条件が成立していないときはステップ56に処理が進む。ステップ58では、自動建込み許容条件の成立を受けて自動建込み開始を知らせるメッセージが液晶表示部35に表示されるといった処理が実行される。その後、素掘り面事前確認処理が終了する。すると、
図18において、ステップ1に処理が進み、ステップ1以降の自動建込み制御処理が実行される。
【0081】
自動建込み許容基準とは、ステップ1以降の自動建込み制御処理による支保工の自動建込みが許容される場合の基準を意味している。素掘り面差分データがプラスの場合は、設計値(素掘り面設計データ)よりも深く(山側、奥側に)掘り進められて素掘り面が形成されているが、素掘り面差分データがマイナスの場合は、素掘り面が設計値(素掘り面設計データ)よりも浅い(トンネルTNの手前側)位置に形成されている。トンネルTNが掘り進められるときは、発破処理や大型の重機による掘削処理が行われる。その際、岩石などによる"アタリ"と呼ばれる突起物が処理後の素掘り面に出現することがある。かかる突起物が素掘り面に出現すると、その突起物の大きさや形状、場所によっては、その突起物が、支保工が建込まれる際の障害となることがある。そうすると、エレクタ作業車20Aによって支保工を建込もうとしたときにその突起物が支保工を把持しているハンド52a(詳しくは図示しないクランプ)に接触する等してハンド52aの動作が阻害され、支保工の自動建込みが実現困難になるおそれが高い。
【0082】
そこで、素掘り面差分データを用いて、支保工の自動建込みが許容されることを事前に確認し、そのような確認ができた場合にステップ1以降の自動建込み制御処理が実行されるようにデータ処理を実行するのが素掘り面事前確認処理である。素掘り面事前確認処理では、CPU31が事前確認手段としての動作を実行している。素掘り面事前確認処理が実行されることで、支保工の自動建込みをより確実に進めることが可能となる。
【0083】
素掘り面差分データによって、素掘り面の実際の凹凸形状と、素掘り面の設計上の凹凸形状とのずれが明らかになる。そのずれは、"アタリ"と呼ばれる突起物を示す場合があるが、そうでない場合もあり、そのずれの大きさや、形状、場所により、自動建込み処理が許容されるのか否かが相違する。そのため、本実施の形態では、自動建込み処理が許容される場合の基準値が予め設定されており、その基準値のデータを用いて自動建込み許容基準が満たされるか否かが判定される。あらかじめシミュレーションした設計値よりも、一定値以上深く掘り進められている(本実施の形態では、素掘り面差分データがプラス30mm以上)ときは、ハンド52aが素掘り面に接触するおそれがないとされるため、基準値のデータをプラス30mm(30mmとは異なる数値でもよい)に設定している。そして、ステップ55において、素掘り面差分データがプラス30mm以上か否かが判定され、素掘り面差分データがプラス30mm以上のときに自動建込み許容基準が満たされたと判定されて自動建込みが許容され、ステップ58の実行後に素掘り面事前確認処理が終了し、その後、ステップ1に処理が進んで作業車計測指示が実行される。
【0084】
そして、ステップ56に処理が進むと、CPU31が除去処理指示データを出力する。これを受けて、例えば、突起物の除去処理を指示するメッセージが液晶表示部35に表示される。その後、CPU31は、ステップ57に処理を進めて突起物の除去処理が完了するまで待機する。
【0085】
一方、図示しないブレーカとよばれる機械を用いるなどして、オペレータによって突起物の除去処理が実行されたあと、オペレータが建込み制御装置30Aにおいて、除去処理完了を示す操作入力を行う(例えば、液晶表示部35に表示される除去処理完了ボタンをクリックする)と、ステップ57からステップ51に処理が戻り、上記同様の処理が繰り返される。こうすると、素掘り面差分データが自動建込み許容基準を満たすまで、すなわち、支保工の自動建込みの障害となるものがなくなるまで、ステップ51~ステップ57が繰り返される。そうすると、例えば、"アタリ"と呼ばれる突起物が複数出現したときはそのすべてが除去されるまでステップ51~ステップ57が繰り返されるため、支保工の自動建込みをより確実に進めることが可能となる。
【0086】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明を適用することにより、トータルステーションを利用した鋼製支保工の建込みにおいて、支保工の自動建込みが可能となる。本発明は、支保工自動建込み制御装置、支保工自動建込み制御プログラムおよび支保工自動建込み方法の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1,1A…支保工自動建込みシステム、10…トータルステーション、20,20A…エレクタ作業車、30,30A…支保工自動建込み制御装置、31…CPU、35…液晶表示部、50…センサ付きエレクタ、51…ブーム、60…エレクタ調整装置、95,96,97…ターゲット、99,99A,99B…支保工,110…三次元スキャナ。