(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167871
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】面会報告作成支援装置および方法,ならびに面会報告作成システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20240101AFI20241127BHJP
G10L 15/00 20130101ALI20241127BHJP
【FI】
G06Q50/22
G10L15/00 200Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215921
(22)【出願日】2023-12-21
(62)【分割の表示】P 2023196349の分割
【原出願日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2023084085
(32)【優先日】2023-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511181577
【氏名又は名称】株式会社ブルーオーシャンシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 正人
(72)【発明者】
【氏名】川路 信尚
(72)【発明者】
【氏名】中山 武揚
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】面会報告作成の事務作業の効率化を図る。
【解決手段】面会記録フォーム95は,面会者,続柄,様子および面会者数の複数の記録項目を備えている。面会に関する発話があると,記録フォーム95が備える記録項目,発話の文字列,および記録項目に面会内容を対応付ける振り分け命令を含む処理依頼文が生成系AIに与えられる。生成系AIは発話に含まれる面会内容をその内容に応じた記録項目に振り分ける処理を実行する。適切な記録項目に適切な面会内容が振り分けられたデータ入力済記録フォーム95が作成される。
【選択図】
図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面会に関する複数の記録項目を備え,面会記録項目ごとのデータ入力欄を備える面会報告記録フォームの各データ入力欄へのデータ入力を支援する面会報告作成支援装置であって,
上記面会報告記録フォームの各データ入力欄に入力されるべき面会に関する発話の入力を受け付けるマイクロフォン,
マイクロフォンによって受付けられた面会に関する発話を文字列に変換する音声認識手段,ならびに
上記面会報告記録フォームが備える面会記録項目および上記文字列に含まれる面会内容,ならびに上記面会記録項目に上記面会内容を対応付ける振り分け命令を含む処理依頼文が与えられる生成系AIにおいて,処理依頼文にしたがって実行される,上記発話に含まれる面会内容をその内容に応じた面会記録項目に振り分けた振り分け処理の結果を受信する受信手段を備えている,
面会報告作成支援装置。
【請求項2】
上記受信手段によって受信された振り分け処理の結果にしたがって,面会報告記録フォームの面会記録項目のデータ入力欄に面会内容が入力されたデータ入力済み面会報告記録フォームを表示する手段を備えている,
請求項1に記載の面会報告作成支援装置。
【請求項3】
面会報告記録フォームに含まれる面会記録項目は,面会者,続柄,様子および面会者数の各記録項目を含む,
請求項1に記載の面会報告作成支援装置。
【請求項4】
上記面会に関する発話に基づく文字列が,上記面会報告記録フォームに含まれる複数の面会記録項目のうちの少なくとも一つについて,面会記録項目に関する文字列を含まずかるその面会記録項目に対応する面会内容に関する文字列を含むものである,
請求項1に記載の面会報告作成支援装置。
【請求項5】
上記生成系AIは,上記面会に関する発話に基づく文字列の文脈から,上記面会報告記録フォームに含まれる面会記録項目に応じた面会内容を推論する推論処理を実行し,上記推論された面会内容をその内容に応じた面会記録項目に振り分ける処理を実行するものである,
請求項1に記載の面会報告作成支援装置。
【請求項6】
上記処理依頼文が,上記生成系AIに対して,上記面会内容を上記面会記録項目ごとに振り分ける機械として動作することを命令する命令文を含む,
請求項1に記載の面会報告作成支援装置。
【請求項7】
面会に関する複数の記録項目を備え,面会記録項目ごとのデータ入力欄を備える面会報告記録フォームの各データ入力欄へのデータ入力を支援する面会報告作成支援装置の動作を制御する方法であって,
マイクロフォンによって,上記面会報告記録フォームの各データ入力欄に入力されるべき面会に関する発話の入力を受け付け,
音声認識手段によって,マイクロフォンによって受付けられた面会に関する発話を文字列に変換し,
受信手段によって,上記面会報告記録フォームが備える面会記録項目および上記文字列に含まれる面会内容,ならびに上記面会記録項目に上記面会内容を対応付ける振り分け命令を含む処理依頼文が与えられる生成系AIにおいて,処理依頼文にしたがって実行される,上記発話に含まれる面会内容をその内容に応じた面会記録項目に振り分けた振り分け処理の結果を受信する,
面会報告作成支援方法。
【請求項8】
面会報告記録端末および記録サーバーを備え,
面会報告記録端末が,
面会に関する複数の記録項目および記録項目ごとのデータ入力欄を備える面会報告記録フォームにおいて,上記データ入力欄に入力されるべき面会に関する発話の入力を受付けるマイクロフォン,
マイクロフォンによって受付けられた面会に関する発話を文字列に変換する音声認識手段,ならびに
音声認識手段によって変換された文字列を上記記録サーバーに送信する送信手段を備え,
記録サーバーが,
上記面会報告端末の送信手段によって送信される文字列を受信する受信手段,
上記面会報告記録フォームが備える複数の面会記録項目および上記文字列に含まれる面会内容,ならびに上記面会記録項目に上記面会内容を対応づける振り分け命令を含む処理依頼文を作成する処理依頼文作成手段,
上記処理依頼文作成手段によって作成された,上記面会記録項目,面会内容および振り分け命令を含む処理依頼文を生成系AIに送信し,上記処理依頼文にしたがって生成系AIによって実行される,発話に含まれる面会内容をその内容に応じた面会記録項目に振り分けた振り分け処理の結果を受信する生成系AI利用手段,ならびに
上記生成系AI利用手段によって受信された振り分け処理結果,および上記記録フォームを表すフォームデータを上記面会報告記録端末に送信する送信手段を備え,
面会報告記録端末がさらに,
上記記録サーバーの送信手段から送信される振り分け処理結果および記録フォームを表すフォームデータにしたがって,上記発話に含まれる面会内容をその内容に応じた面会記録項目のデータ入力欄に振り分けて入力した,データ入力済み面会報告記録フォームを表すデータを作成する作成手段,ならびに
作成手段によって作成されたデータ入力済み面会報告記録フォームを表すデータにしたがってデータ入力済み面会報告記録フォームを表示する表示手段,を備えている,
面会報告作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,面会報告作成支援装置および方法,ならびに面会報告作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は,音声認識により得られたテキストデータを用いて介護記録入力画面のフォームの各項目に自動的に値を入力する装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
特許文献1に記載の装置では,音声認識されたテキストデータから数値等を抽出するためのテンプレートがあらかじめ用意される。テンプレートに合致する箇所がテキストデータ中にあれば,それがテキストデータから抽出されて,介護記録入力画面の該当項目の値として入力される。テンプレートは,たとえば「体温」,「血圧」といった所定用語を含み,この所定用語が認識されることによって項目は特定される。
【0005】
あらかじめ項目名を発声し,続けてその項目のデータ内容を発声すれば,所望の項目のデータ入力欄(たとえば体温入力欄)に所望のデータ内容(体温を表す数値)を入力することは可能である。しかしながら,記録フォームが複数の項目(データ入力欄)を含む場合,そのすべてについて項目名およびデータ内容を発声するとすれば,データ記録に時間がかかり,現場におけるオペレーションの難度が高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は,適切な項目のデータ入力欄に適切なデータ内容を簡単に入力できるようにすることを目的とする。
【0007】
この発明は特に,発話をすれば,発話順番や項目名の発声などを特に考慮しなくても,適切な項目に適切なデータ内容を入力できるようにすることを目的とする。
【0008】
この発明によるデータ入力支援装置は,複数の記録項目(名)および記録項目ごとのデータ入力欄を備える記録フォームのフォーム名,ならびに上記データ入力欄に入力されるべき記録内容を含む発話の入力を受け付けるマイクロフォン,マイクロフォンによって受付けられた上記フォーム名および記録内容を含む発話を文字列に変換する音声認識手段,ならびに音声認識手段によって変換された文字列に含まれる記録フォーム名によって特定される記録フォームが備える複数の記録項目(名)および上記文字列に含まれる記録内容(文字列そのものでもよい),ならびに上記記録項目に上記記録内容を対応付ける振り分け命令を含む処理依頼文が与えられる生成系AI(生成AI)において,処理依頼文にしたがって実行される,上記発話に含まれる記録内容をその内容に応じた記録項目に振り分けた振り分け処理の結果を受信する受信手段を備えている。
【0009】
この発明によるデータ入力支援方法は,マイクロフォンによって,複数の記録項目および記録項目ごとの入力欄を備える記録フォームのフォーム名,ならびに上記入力欄に入力されるべき記録内容を含む発話の入力を受け付け,音声認識手段によって,マイクロフォンによって受付けられた上記記録フォーム名および記録内容を含む発話を文字列に変換し,受信手段によって,上記音声認識手段によって変換された文字列に含まれる記録フォーム名によって特定される記録フォームが備える複数の記録項目および上記文字列に含まれる記録内容,ならびに上記記録項目に上記記録内容を対応付ける振り分け命令を含む処理依頼文が与えられる生成系AIにおいて,処理依頼文にしたがって実行される,上記発話に含まれる記録内容をその内容に応じた記録項目に振り分けた振り分け処理の結果を受信するものである。
【0010】
この発明によると,発話に含まれる記録内容(データ内容)が,その内容に応じた記録項目に振り分けられる(対応づけられる)ので,記録フォームが備える記録項目ごとのデータ入力欄に記録項目に適する記録内容(データ内容)をデータ入力することができる。入力装置(キーボード等)を用いて記録項目(またはそのデータ入力欄)を選択し,かつ選択した記録項目のデータ入力欄にデータ入力する作業を繰り返す必要がないので,記録の事務作業の効率化が図られる。
【0011】
すなわち,記録フォームは複数の記録項目および記録項目ごとのデータ入力欄を含むので,適切な記録項目に適切な記録内容をデータ入力するためには,複数の記録項目のなかから特定の記録項目を選択し,選択された記録項目のデータ入力欄に記録内容(たとえば数値)を入力しなければならない。入力装置(マウス,キーボード等)を用いたデータ入力であれば,特定の記録項目(またはそのデータ入力欄)をたとえばクリックすることによってあらかじめ選択し,その状態で記録内容(たとえば数値)が入力される。特定の記録項目の選択(データ入力欄の選択)はワンクリックで行われるが,記録フォームに多くの記録項目(データ入力欄)が含まれるとすると,クリック回数は多くなる。音声入力の場合,あらかじめ記録項目名を発声し,続けて記録内容を発声すれば,所望の記録項目のデータ入力欄に所望の記録内容を入力することは可能である。しかしながら,記録フォームが多くの記録項目(データ入力欄)を含む場合にそのすべてについて記録項目名を発声しなければならないすると,やはり時間がかかり,データ入力の現場におけるオペレーションの難度が高くなる。
【0012】
この発明によると,記録項目(名)を必ずしも発声しなくても,所望の記録項目と記録内容との対応付け(振り分け処理)を実現するために生成系AIが用いられる。この発明は,生成系AIを記録項目に記録内容を対応付ける処理(振り分け処理)を実行する機械として動作させるもので,これにはたとえばチャットGPT(ChatGPT)を用いることができる。
【0013】
生成系AIには,複数の記録項目(名),記録内容(記録項目ごとのデータ入力欄に入力されるべき数値等),および振り分け処理命令を含む処理依頼文が送信される。
【0014】
この発明によると,マイクロフォンによって記録フォーム名が受け付けられると,その記録フォーム名によって特定される記録フォームが備える複数の記録項目(名)を含む処理依頼文が生成系AIに与えられる。同じく処理依頼文に含ませられる記録内容を振り分けるべき記録項目(名)(その候補)が正確に生成系AIに伝えられるので,記録項目と記録内容の対応付け(振り分け)の精度を高めることができる。
【0015】
チャットGPTに対して振り分け処理を実際に実行させたところ,発話中に記録内容のみが含まれており,それに対応する記録項目(名)が発話中に含まれていないとしても,比較的精度よく所望の記録項目に所望の記録内容が対応づけられる(振り分けられる)ことが確認された。話し言葉であっても精度よく振り分け処理は実行され,データ入力の事務効率が格段に向上する。チャットGPTは文章の添削・校正,文章や概念の要約,ブレインストーミング,リサーチや論点の洗い出し,アイデアの提案,プログラミング,英文和訳,和文英訳,作文等に利用することが提案等されているが,適切な記録項目に適切な記録内容を対応づける振り分け処理にチャットGPTを用いることは,現在のところ,提案等されている事実は確認することができなかった。
【0016】
発話を文字列に変換する音声認識処理は,マイクロフォンを備える記録管理端末において実行される。たとえば,記録管理端末のオペレーティングシステムに含まれるバーチャルアシスタント(Siri,Google Nowなど)を文字列変換(文字起こし)に用いることができる。
【0017】
上記記録フォームは,好ましくは,高齢者または障がい者に対する介護記録または支援記録に関するフォーム,および高齢者自身または障がい者自身の個人記録に関するフォームを含む。様々な種類の記録フォームを用いて介護記録または支援記録が作成され,または個人記録が作成される。記録の事務作業の効率化が図られることによって,介護記録,支援記録,個人記録のために費やされていた時間を,介護そのものまたは支援そのものに割り振ることができる。
【0018】
一実施態様では,上記受信手段によって受信された振り分け処理の結果にしたがって,記録フォームの記録項目のデータ入力欄に記録内容が入力されたデータ入力済み記録フォームを表示する手段を備えている。入力装置を必ずしも用いることなく,あたかも入力装置を用いて入力されたようなデータ入力済み記録フォームを表示することができる。
【0019】
一実施態様では,上記発話に基づく文字列が,上記記録フォームに含まれる複数の記録項目のうちの少なくとも一つについて,記録項目に関する文字列を含まずかつその記録項目に対応する記録内容に関する文字列を含むものである。すなわち,記録フォームに含まれる複数の記録項目のうちの少なくとも一つについてその記録項目名が発話されなかったときの文字列(文字起こし結果)が,生成系AIに与えられる。生成系AIに与えられる処理依頼文は,記録フォームが備える複数の記録項目を含むので,記録内容を振り分けるべき記録項目については,たとえ発話中に含まれなかったとしても,生成系AIは正確に把握することができる。このため,生成系AIは発話中に記録項目が特定されていない記録内容が含まれている場合であっても,適切な記録項目に適切な記録内容を対応づける振り分け処理を実行することができる。もちろん,記録フォームに含まれる複数の記録項目のうちのいくつかについては,発話中に,記録内容のみならず記録項目(名)を含ませてもよい。たとえば,「36度」と発話するのではなく,「体温36度」と発話する(「体温」が記録項目,「36度」が記録内容である)。記録項目に記録内容を振り分ける(対応づける)生成系AIの処理の精度を高めることができる。
【0020】
また,単位(たとえば上述の場合,温度を表す「度」)が含まれると,記録項目に記録内容を対応付ける生成系AIの処理の精度が高められる可能性がある。複数の記録項目のうちのいくつかについては,発話中に単位を含ませてもよい。
【0021】
一実施態様では,上記発話に基づく文字列が,上記記録フォームに含まれる複数の記録項目の並び順と異なる並び順で複数の記録内容が並んだものである。記録フォームに含まれる複数の記録項目と同じ並び順に記録内容を発話しなくても,生成系AIは適切な記録項目に適切な記録内容を振り分けることができることが確認されたものである。
【0022】
一実施態様では,上記生成系AIは,上記発話に基づく文字列の文脈から,上記記録フォームに含まれる記録項目に応じた記録内容を推論する推論処理を実行し,上記推論された記録内容をその内容に応じた記録項目に振り分ける処理を実行するものである。一例として挙げられるのは,発話中に面会者の血縁関係(たとえば,長男夫婦)が含まれている場合の面会人数(たとえば2人)である。記録項目として面会人数が含まれているにも関わらず面会人数を発話しなかったとしても,面会者が長男夫婦であったことが発話に含まれていることで,記録項目「面会人数」に対応する記録内容が「2人」であることを,生成系AIは正確に推論できることが確認されたものである。生成系AIを用いることによって生成系AIによる推論結果を記録項目に振り分けることができる。
【0023】
この発明によるデータ内容音声入力システムは,記録管理端末(クライアント)および記録管理サーバーを備え,記録管理端末が,複数のデータ項目(記録項目)およびデータ項目ごとのデータ入力欄を備える記録フォームのフォーム名,ならびに上記データ入力欄に入力されるべきデータ内容(記録内容)を含む発話の入力を受付けるマイクロフォン,ならびにマイクロフォンによって受付けられた上記記録フォーム名およびデータ内容を含む発話を文字列に変換する音声認識手段,音声認識手段によって変換された文字列を上記記録管理サーバーに送信する送信手段を備え,記録管理サーバーが,上記記録管理端末の送信手段によって送信される文字列を受信する受信手段,上記受信手段によって受信された文字列に含まれる記録フォーム名によって特定される記録フォームが備える複数のデータ項目および上記文字列に含まれるデータ内容(文字列そのものでもよい),ならびに上記データ項目にデータ内容を対応づける振り分け命令を含む処理依頼文を作成する処理依頼文作成手段,上記処理依頼文作成手段によって作成された,上記データ項目,データ内容および振り分け命令を含む処理依頼文を生成系AIに送信し,上記処理依頼文にしたがって生成系AIによって実行される,発話に含まれるデータ内容をその内容に応じたデータ項目に振り分けた振り分け処理の結果を受信する生成系AI利用手段,上記生成系AI利用手段によって受信された振り分け処理結果,および上記記録フォームを表すフォームデータを上記記録管理端末に送信する送信手段を備え,記録管理端末がさらに,上記記録管理サーバーの送信手段から送信される振り分け処理結果および記録フォームを表すフォームデータにしたがって,上記発話に含まれるデータ内容をその内容に応じたデータ項目のデータ入力欄に振り分けて入力した,データ入力済み記録フォームを表すデータを作成する作成手段,ならびに作成手段によって作成されたデータ入力済み記録フォームを表すデータにしたがってデータ入力済み記録フォームを表示する表示手段を備えている。
【0024】
データ入力済み記録フォームを表すデータは記録管理端末で作成してもよいし,記録管理サーバーで作成してもよい。記録管理端末で作成する場合には,記録管理サーバーから振り分け処理結果および記録フォームを表すフォームデータが記録管理端末に送信される。記録管理サーバーで作成される場合には,記録管理サーバーから記録管理端末にはデータ入力済み記録フォームを表すデータが送信される。
【0025】
記録管理端末が備えるマイクロフォンによって受付けられる発話にしたがって記録フォームのデータ入力欄にデータ内容が入力される。入力装置(キーボード等)を必ずしも用いる必要がなく,記録の事務作業の効率化が図られる。
【0026】
複数のデータ項目を備える記録フォームを特定する記録フォーム名が記録管理端末から記録管理サーバーに送信されると,記録管理サーバーは記録フォーム名によって特定される記録フォームが備える複数のデータ項目を処理依頼文に含ませる。発話中のデータ内容を振り分けるべきデータ項目(その候補)が正確に生成系AIに伝えられることになるので,発話にたとえデータ項目(名)が含まれないとしても,データ項目とそれに適するデータ内容の対応付け(振り分け)を,生成系AIに精度よく実行させることができる。
【0027】
この発明は記録管理装置も提供する。この発明による記録管理装置は,発話にしたがって与えられる,複数のデータ項目(記録項目)およびデータ項目ごとのデータ入力欄を備える記録フォームのフォーム名,ならびに上記データ入力欄に入力されるべきデータ内容(記録内容)を含む文字列にしたがって,上記文字列に含まれる記録フォーム名によって特定される記録フォームが備える複数のデータ項目および上記文字列に含まれるデータ内容,ならびに上記データ項目にデータ内容を対応づける振り分け命令を含む処理依頼文を作成する処理依頼文作成手段,上記処理依頼文作成手段によって作成された,上記データ項目,データ内容および振り分け命令を含む処理依頼文を生成系AIに送信し,上記処理依頼文にしたがって生成系AIによって実行される,発話に含まれるデータ内容をその内容に応じたデータ項目に振り分けた振り分け処理の結果を受信する生成系AI利用手段を備えている。振り分け処理の結果を用いてデータ入力済み記録フォームを表すデータを作成することができる。振り分け処理の結果はそのまま記憶装置に記憶してもよいし,記憶する前に記録管理端末の画面に表示し,誤りが無いかどうかの確認を経たうえで(誤りがあれば正しく修正したうえで),記憶装置に記憶してもよい。
【0028】
この発明はデータ入力方法の発明も提供する。この発明によるデータ入力方法は,処理依頼文作成手段が,発話にしたがって与えられる,複数のデータ項目およびデータ項目ごとのデータ入力欄を備える記録フォームのフォーム名,ならびに上記データ入力欄に入力されるべきデータ内容を含む文字列にしたがって,上記文字列に含まれる記録フォーム名によって特定される記録フォームが備える複数のデータ項目および上記文字列に含まれるデータ内容,ならびに上記データ項目にデータ内容を対応づける振り分け命令を含む処理依頼文を作成し,生成系AI利用手段が,上記処理依頼文作成手段によって作成された,上記データ項目,データ内容および振り分け命令を含む処理依頼文を生成系AIに送信し,上記処理依頼文にしたがって生成系AIによって実行される,発話に含まれるデータ内容をその内容に応じたデータ項目に振り分けた振り分け処理の結果を受信するものである。
【0029】
上記文字列が,一実施態様では,発話に基づく音声認識処理の結果である。
【0030】
好ましくは,上記記録フォーム名と,上記記録フォーム名によって特定される記録フォームが備える複数のデータ項目(記録項目)(名)とが関連付けられて記憶された記録フォームマスター・データベースが,上記記録管理装置に接続される。上述したように,データ内容を振り分けるべきデータ項目を生成系AIに正確に伝えることができ,振り分け処理の精度を高めることができる。
【0031】
一実施態様では,上記処理依頼文が,上記生成系AIに対して,上記データ内容を上記データ項目ごとに振り分ける機械として動作することを命令する命令文を含む。
【0032】
他の実施態様では,上記処理依頼文が,上記生成系AIの動作を制約する制約文を含む。
【0033】
他の実施態様では,上記処理依頼文が,上記生成系AIに多言語対応を命令する命令文を含む。
【0034】
生成系AIを使用する目的は,細かい指示(命令)をしなくても,適切なデータ項目に適切なデータ内容を振り分ける(対応付ける)処理を実行させることである。生成系AIに与える処理依頼文に,データ内容をデータ項目ごとに振り分ける機械として動作することを命令する命令文を含ませることによって振り分け処理の精度を向上させることができる。また,生成系AIの動作を制約する制約文を処理依頼文に含ませることによって,生成系AIによる処理結果を用いた最終的な成果物であるデータ入力済み記録フォームを表すデータのフォーマットに,生成系AIの処理結果を沿わせることができる。さらに多言語対応を命令することによって,発話(発話にしたがって与えられる文字列)が外国語や方言を含むとしても振り分け処理を精度よく実行させることができる。
【0035】
好ましくは,与えられる文字列が特定キーワードを含む場合に,上記記録管理装置を上記処理依頼文作成手段,および生成系AI利用手段として機能させる制御手段を備えている。特定キーワードによって記録管理装置を別のタスクの処理装置として機能させることができる。たとえば特定キーワード「データ保存」が発話(文字列)に含まれていれば,そのときに上記記録管理装置を,上述した生成系AIを利用するように動作させる。そして別の特定キーワード,たとえば「利用者変更」が含まれていれば,記録管理装置を,生成系AIを利用する動作と異なる動作,たとえば利用者変更処理(データ入力済み記録フォームの対象利用者の変更処理)を実行するように動作させることができる。
【0036】
この発明は,事故報告作成支援装置も提供する。この発明による事故報告作成支援装置は,事故に関する複数の記録項目を備え,事故記録項目ごとのデータ入力欄を備える事故報告記録フォームの各データ入力欄へのデータ入力を支援する事故報告作成支援装置であって,上記事故報告記録フォームの各データ入力欄に入力されるべき事故内容に関する発話の入力を受け付けるマイクロフォン,マイクロフォンによって受付けられた事故内容に関する発話を文字列に変換する音声認識手段,ならびに上記事故報告記録フォームが備える事故記録項目および上記文字列に含まれる事故内容(文字列そのものでもよい),ならびに上記事故記録項目に上記事故内容を対応付ける振り分け命令を含む処理依頼文が与えられる生成系AIにおいて,処理依頼文にしたがって実行される,上記発話に含まれる事故内容をその内容に応じた事故記録項目に振り分けた振り分け処理の結果を受信する受信手段を備えている。事故記録項目には,たとえば事故発生日,事故発生時刻,事故発生場所,事故種別および事故発生状況が含まれる。介護施設において利用者が階段から落ちて怪我をしたようなときに事故報告は作成される。
【0037】
生成系AIに与えられる処理依頼文に上記事故報告記録フォームが備える複数の事故記録項目(名)(たとえば事故発生日,事故発生時刻,事故発生場所,事故種別および事故発生状況)が含ませられる。同じく処理依頼文に含ませられる発話に基づく事故内容を振り分けるべき事故記録項目(名)が正確に生成系AIに伝えられるので,事故記録項目と事故記録内容の対応付け(振り分け)の精度を高めることができる。発話に含まれる事故記録内容が,その内容に応じた事故記録項目に振り分けられる(対応づけられる)ので,事故報告記録フォームが備える事故記録項目ごとのデータ入力欄に記録項目に適する記録内容(データ内容)をデータ入力することができる。入力装置(キーボード等)を用いて事故記録項目(またはそのデータ入力欄)を選択し,かつ選択した事故記録項目のデータ入力欄にデータ入力する作業を繰り返す必要がないので,事故報告作成の事務作業の効率化が図られる。
【0038】
この発明はさらに,面会報告作成支援装置も提供する。この発明による面会報告作成支援装置は,面会に関する複数の記録項目を備え,面会記録項目ごとのデータ入力欄を備える面会報告記録フォームの各データ入力欄へのデータ入力を支援するものであって,上記面会報告記録フォームの各データ入力欄に入力されるべき面会に関する発話の入力を受け付けるマイクロフォン,マイクロフォンによって受付けられた面会に関する発話を文字列に変換する音声認識手段,ならびに上記面会報告記録フォームが備える面会記録項目および上記文字列に含まれる面会内容,ならびに上記面会記録項目に上記面会内容を対応付ける振り分け命令を含む処理依頼文が与えられる生成系AIにおいて,処理依頼文にしたがって実行される,上記発話に含まれる面会内容をその内容に応じた面会記録項目に振り分けた振り分け処理の結果を受信する受信手段を備えている。たとえば介護施設利用者の親族が介護施設に面会に来たようなときに面会報告は作成される。面会報告記録フォームに含まれる面会記録項目には,たとえば,面会者,続柄,様子および面会者数が含まれる。
【0039】
生成系AIに与えられる処理依頼文に上記面会報告記録フォームが備える複数の面会記録項目(名)(たとえば,面会者,続柄,様子および面会者数)が含ませられる。同じく処理依頼文に含ませられる発話に基づく面会内容を振り分けるべき面会記録項目(名)が正確に生成系AIに伝えられるので,面会記録項目と面会記録内容の対応付け(振り分け)の精度を高めることができる。入力装置を用いて面会記録項目(またはそのデータ入力欄)を選択し,選択した面会記録項目のデータ入力欄にデータ入力する作業を繰り返す必要がないので,面会報告作成の事務作業の効率化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A】介護内容の音声入力システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図1B】他の態様の介護内容の音声入力システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】記録管理端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】記録フォームマスター・データベースを示す。
【
図7】音声入力システムの処理を示すフローチャートである。
【
図9A】利用者選択フェーズにおける音声入力システムの処理を示すフローチャートである。
【
図9B】利用者選択フェーズにおいて送受信されるデータ例を示す。
【
図11A】記録作成フェーズにおける音声入力システムの処理を示すフローチャートである。
【
図11B】記録作成フェーズにおいて送受信されるデータ例を示す。
【
図13】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【
図14】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【
図15】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【
図16】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【
図17】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【
図18】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【
図19】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【
図20】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【
図21】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【
図22】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【
図23】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【
図24】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【
図25】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【
図26】発話内容の一例と項目振り分けサーバーによる振り分け処理結果を示す。
【実施例0041】
第1.ハードウェア構成
図1Aは介護内容(サービス内容)の音声入力システム(以下,音声入力システムという)のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0042】
音声入力システムは,データベース・サーバー10,記録管理サーバー20,記録管理端末30,形態素解析サーバー40および項目振り分けサーバー50を含む。データベース・サーバー10には,音声入力システムの動作に必要される各種データを記憶したデータベース(利用者マスター・データベース11,記録フォームマスター・データベース12,記録テーブル・データベース13)が接続されている。必要に応じて他のデータベースもデータベース・サーバー10に接続することもできる。
【0043】
音声入力システムは,介護施設の職員等によって介護施設の利用者(典型的には高齢者や障がい者)に対して実施された様々な介護(支援)内容の入力と,入力された介護内容の記録(保存)を行う(介護記録)。介護記録は介護施設の利用者に対するケアプランの検討,質の高い介護サービスやケアマネジメントへの活用,介護施設の職員の資質向上,情報共有等に用いられる。
【0044】
複数の介護施設が存在し,そのそれぞれに一般には複数の利用者が所属している。複数の介護施設の複数の利用者のそれぞれに対する介護は毎日のように実施され,毎日のように介護記録がとられる。介護記録は事務作業であり,多くの場合,介護を行う介護施設の職員等によって行われ,介護それ自体とは別の作業となる。音声入力システムは介護に加えて介護記録を行わなければならない介護施設の職員等の事務処理負担を軽減する。
【0045】
この実施例において音声入力システムを用いて入力されかつ記録される介護内容は,利用者のバイタルデータ(体温,血圧,経皮的動脈血酸素飽和度など),食事内容(食事量),口腔ケア,身長,体重,運動,面会者,レクレーション内容など,多数の項目(介護項目)を含む。利用者のそれぞれについて介護内容は入力されかつ記録(保存)される。介護内容(介護記録)は,この実施例では,利用者に対する身の回りの世話に関する内容のみならず,利用者自身の個人記録(上述した体温,身長,体重など),報告事項等も含む。
【0046】
図1を参照して,一般には複数台(一台でもよい)の記録管理端末30が介護内容の入力(介護記録)に用いられる。詳細は後述するが,この実施例の音声入力システムは,キーボードからの文字(テキスト)入力(マウスを用いたクリックによる文字の選択を含む)による介護内容の入力に代えてまたは加えて,介護施設の職員等による発話(音声)による介護内容の入力(選択を含む)を受付けることができる。もっとも,音声によって介護内容が入力される場合であっても,記録(保存)される介護内容は音声データではなく文字(テキスト)データとされる。音声入力に対応するために記録管理端末30は音声認識ライブラリー31を備えている。音声認識ライブラリー31の処理は後述する。
【0047】
音声入力システムは,上述した記録管理端末30と,記録管理サーバー20と,データベース・サーバー10とによって構成することができる。音声入力可能にするために,さらに形態素解析サーバー40および項目振り分けサーバー50が用いられる。これらのサーバー10,20,40,50は,インターネット等のネットワークを介して,記録管理端末30に直接にまたは間接に接続され,その処理結果を記録管理端末30は受け取ることができる。記録管理端末30およびサーバー10,20,40,50のそれぞれの処理の詳細は後述する。
【0048】
図1Bは他の態様の音声入力システムのハードウェア構成を示している。
【0049】
図1Bに示す音声入力システムは,
図1Aに示すデータベース・サーバー10および記録管理サーバー20の機能を,記録管理端末30に統合したものである。利用者マスター・データベース11,記録フォームマスター・データベース12および記録テーブル・データベース13は記録管理端末30の記憶装置に記憶させてもよいし,インターネット等のネットワークを通じて記録管理端末30に接続してもよい。
【0050】
以下の実施例では,
図1Aに示す音声入力システムを説明する。
図1Bに示す音声入力システムであれば,
図1Aに示すデータベース・サーバー10および記録管理サーバー20の処理は記録管理端末30において実行される。
【0051】
図2は記録管理端末30のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3は介護内容を入力(記録)するための記録フォームの一例(健康管理記録フォーム32)を示している。複数種類の記録フォームが用意され,記録フォームのそれぞれに規定される介護項目(サービス項目)にしたがって介護内容の入力は行われる。
【0052】
図2を参照して,記録管理端末30は音声によって介護内容を入力するための操作端末として用いることができる。記録管理端末30はデータバス30Aに接続されたマイクロフォン30Gおよび表示装置30Jを備える。マイクロフォン30Gによって集音される介護施設の職員等による発話にしたがって,表示装置30Jに表示される記録フォームに介護内容が入力される。記録フォームには記録フォームごとに異なる複数の介護項目(サービス項目)のデータ入力欄が用意されており,データ入力欄のそれぞれに介護内容(数値,文字)が入力される。
【0053】
図3に示す記録フォームの一例である健康管理記録フォーム32は「体温」,「血圧上/下」,「脈拍」,「SPO2」,「呼吸」および「状態観察」の6つの介護項目(サービス項目)を含み,6つの介護項目のそれぞれ(血圧については上/下のそれぞれ)についてデータ入力欄32a~32gを備えている。詳細は後述するが,音声入力システムは,介護施設の職員等による発話が記録フォームに含まれる介護項目と関係がない言葉を含むとしても,また,介護内容(数値,文字)の発話の順番が記録フォームの介護項目の並び順と異なる順番であっても,介護項目名が発話に含まれないとしても,適切な介護項目のデータ入力欄に,発話に基づいて適切な介護内容を入力することができるように動作する。
【0054】
図2に戻って,データバス30Aには,上述したマイクロフォン30Gおよび表示装置30Jに加えて,記録管理端末30の全体的な動作を統括的に制御するCPU30B,データおよびプログラムを一時的に記憶するRAM30C,オペレーティングシステム,各種のアプリケーション・プログラム等を記憶するストレージ(SSD,HDDなど)30D,文字,数字等を入力する入力装置(キーボード等)30E,ネットワークを通じてデータを送受信する通信装置30F,音を出力するスピーカ30H,被写体像を撮像するカメラ30Iも接続されている。ネットワーク接続可能な可搬型のコンピュータ装置を記録管理端末30として用いることができる。
【0055】
データベース・サーバー10,記録管理サーバー20,形態素解析サーバー40および項目振り分けサーバー50も,CPU,RAM,ストレージ,通信装置等を備えるコンピュータである。もっとも,記録管理端末30と異なり,これらのサーバー10,20,40,50は介護施設の職員等が直接に操作するコンピュータ装置ではないので,キーボード等の入力装置,表示装置,マイクロフォン,スピーカ,カメラは必ずしも必要ではない。
【0056】
第2.データベース
図4~
図6は,データベース・サーバー10に接続される利用者マスター・データベース(以下,利用者マスターDBという)11,記録フォームマスター・データベース(以下,記録フォームマスターDBという)12および記録テーブル・データベース(以下,記録テーブルDBという)13の内容をそれぞれ示している。
【0057】
図4を参照して,利用者マスターDB11は,介護施設の運営法人を識別するための「法人ID」,介護施設の利用者を識別するための「利用者ID」,利用者IDによって特定される介護施設の利用者の「氏名」(漢字表記),「性別」,介護施設の利用者の氏名の「読み仮名」(カタカナ表記),介護施設の利用者の氏名の「読み仮名候補」(カタカナ表記)等のデータを含む。法人ID,事業者ID,利用者ID,氏名,性別,読み仮名および読み仮名候補等(レコード)は,互いに関連付けられて利用者マスターDB11に記憶される。
【0058】
「読み仮名候補」は,漢字表記の利用者の「氏名」から想定される,氏名の読み仮名の候補を意味する。後述するように,音声入力システムでは介護内容を記録すべき利用者を特定(選択)するときにも音声が用いられる。氏名の正しい読み仮名に加えてそれ以外の読み仮名候補を利用者マスターDB11に用意しておくことによって,漢字表記の利用者の氏名が正しく読まれなかった(正しく仮名変換されなかった)場合に,利用者を特定できない状況を回避することができる。
【0059】
図5を参照して,記録フォームマスターDB12は,「法人ID」,記録フォームを識別するための「記録フォームID」,記録フォームの「フォーム名」(漢字表記),記録フォーム名の「読み候補」(カタカナ表記),記録フォームに含まれる「介護項目名」(サービス項目名)等を含む。
【0060】
「読み候補」は記録フォームを特定するための読み候補である。
図5を参照して,たとえば,フォームID「010011」の「健康管理記録フォーム」の読み候補には「ケンコウ」および「バイタル」が含まれている。後述するように,介護施設の職員等の発話中に「ケンコウ」または「バイタル」が含まれていると,フォームID「010011」の「健康管理記録フォーム」が特定(選択)されるように音声入力システムを動作させることができる。複数種類の記録フォームのそれぞれに含まれる介護項目は記録フォームの種類ごとに異なり,その名称が「介護項目名」に規定される。
【0061】
図6を参照して,記録テーブルDB13は,「法人ID」,法人IDによって特定される運営法人が運営する介護事業者を識別するための「事業者ID」,「利用者ID」,「フォームID」,「記録日時」,「介護内容」等を含む。上述した記録フォーム(たとえば健康管理記録フォーム32)の介護項目ごとのデータ入力欄に入力された介護内容が,記録日時等とともに記録テーブルDB13に記憶(保存)される。
【0062】
第3.音声入力システムの処理
3-1.フェーズ選択処理
音声入力システムは,大きく分けて「利用者選択フェーズ」と「記録作成フェーズ」の2つの動作を行う。以下,「利用者選択フェーズ」における音声入力システムの動作と,「記録作成フェーズ」における音声入力システムの動作を,それぞれ詳細に説明する。
【0063】
図7は,音声入力システムを「利用者選択フェーズ」で動作させるか,「記録作成フェーズ」で動作させるかを決定するためのフェーズ選択処理の流れを示すフローチャートである。フェーズ選択処理は音声入力システムを構成する記録管理端末30によって実行される。
【0064】
コンピュータ装置を記録管理端末30として動作させるためのアプリケーション・プログラム(クライアント・プログラム)を起動すると(ステップ60),記録管理端末30の表示装置30Jの表示画面に介護内容入力画面(介護記録画面)が表示される。
【0065】
図8は起動時の介護内容入力画面33の一例を示している。
【0066】
介護内容入力画面33は,事業者選択コンボ33a,利用者選択リスト33b,記録フォーム選択コンボ33c,記録書込みボタン(保存ボタン)33d,記録フォーム表示エリア33e,保存済み介護記録リスト表示エリア33f,発話内容テキスト表示エリア33g,開始ボタン33hおよび終了ボタン33iを含む。
【0067】
事業者選択コンボ33aを用いて一の事業者(介護施設)を選択すると,その事業者を利用している利用者の氏名が利用者選択リスト33bに表示される。
図8は,事業者「特養静岡」が選択されたことによって事業者「特養静岡」を利用している利用者の氏名が利用者選択リスト33bに表示されている様子を示している。事業者選択コンボ33aを用いて別の事業者が選択されると,利用者選択リスト33bには選択されたその別の事業者を利用している利用者の氏名が表示されることになる。事業者選択コンボ33aに表示される事業者の名称および利用者選択リスト33bにおける利用者氏名の表示には,上述した利用者マスターDB11(
図4)等が用いられる。すなわち,記録管理端末30においてアプリケーション・プログラムが起動されると,記録管理端末30と記録管理サーバー20とがネットワークによって接続される(もちろん,ID,パスワード等を要求してもよい)。記録管理端末30からのリクエストを受付けた記録管理サーバー20はデータベース・サーバー10に対してそのリクエストにしたがうデータ読み出しを指示する。利用者マスターDB11等にしたがって,事業者選択コンボ33aには事業者名が,利用者選択リスト33bには選択された事業者を利用している利用者氏名が,それぞれ選択可能に表示される。
【0068】
「利用者選択フェーズ」では介護内容を入力すべき利用者が選択され,次の「記録作成フェーズ」において,「利用者選択フェーズ」で選択された利用者に対する介護内容が入力される。利用者が選択されない状態で記録作成フェーズに進むことを防止するために,起動時だけは音声入力ではなく,手入力(マウスを用いたクリック)によって利用者を選択するようにしてもよい。もちろん,起動時から音声入力によって介護内容を入力すべき利用者を選択するようにしてもよい。
【0069】
介護内容入力画面33に設けられている開始ボタン33hがクリックされると,記録管理端末30が備えるマイクロフォン30Gによって介護施設の職員等の発話が受付けられて記録管理端末30に入力される(ステップ61)。
【0070】
マイクロフォン30Gから受付られた音声データは記録管理端末30が備える音声認識ライブラリー31(
図1参照)に与えられ,ここでテキスト変換される(文字起こしされる)(ステップ62)。音声認識ライブラリー31には記録管理端末30のオペレーティングシステムに含まれるバーチャルアシスタント(Siri,Google Nowなど)を用いることができる。音声認識ライブラリー31は発話内容を漢字交じりの文字列に変換する。
【0071】
記録管理端末30に音声入力される発話には,キーワードとして「利用者変更」および「データ保存」のいずれかのキーワードが含まれるものとする。また,キーワード「利用者変更」を含む発話にはさらに氏名(利用者名)が含まれ,キーワード「データ保存」を含む発話には,発話冒頭に記録フォーム名を含み,かつ介護内容が含まれるものとする。
【0072】
開始ボタン33hがクリックされた記録管理端末30は,音声認識ライブラリー31によってテキスト変換された文字列に特定キーワード(上述の「利用者変更」または「データ保存」)が含まれているかどうかを判断する(ステップ63)。
【0073】
たとえば「しずおかたろうさん りようしゃへんこう」(静岡一郎さん,利用者変更)と発話され,音声認識ライブラリー31によってそのとおりにテキストに変換されたとする。この場合,記録管理端末30(アプリケーション・プログラム)はキーワード「利用者変更」を認識し,利用者選択フェーズに進む(ステップ63で利用者変更,ステップ64)。たとえば「けんこうかんり さんじゅうろくどごぶ でーたほぞん」(健康管理,36度5分,データ保存)と発話され,そのとおりにテキストに変換されたとすると,記録管理端末30はキーワード「データ保存」を認識し,記録作成フェーズに進む(ステップ63で「データ保存」,ステップ65)。利用者選択フェーズに進むためのキーワードおよび記録作成フェーズに進むためのキーワードは任意に設定することができ,あらかじめアプリケーション・プログラムにプログラミングすることができる。「利用者変更」または「データ保存」のキーワードが認識されることで,記録管理端末30は利用者選択フェーズと記録作成フェーズとを切り替えることができる。
【0074】
「利用者変更」および「データ保存」の2つのキーワードのいずれもが発話中に含まれていない場合(音声認識できなかった場合を含む),記録管理端末30は「もう一度おっしゃって下さい。」といったメッセージを,表示装置30Jの表示画面に表示したりスピーカ30Hから音声出力したりすることで,2つのキーワードのうちのいずれかが発話中に含まれる(音声認識される)ように介護施設の職員等を促してもよい。「利用者変更」および「データ保存」の両方が発話に含まれている場合も同様である。
【0075】
3-2.利用者選択フェーズ
図9Aは利用者選択フェーズにおける音声入力システムの処理の流れを示している。
図9Bは利用者選択フェーズにおいて送受信されるデータ例を示している。
【0076】
利用者選択フェーズに進む場合,上述したように,氏名(利用者名)およびキーワード「利用者変更」が発話されており,記録管理端末30によってテキスト変換されている。記録管理端末30は発話内容のテキストデータを記録管理サーバー20に送信する(ステップ71,データ例71A)。
【0077】
記録管理サーバー20は,受信した利用者名を含む解析依頼を作成し,形態素解析サーバー40に送信する(ステップ73,データ例73A)。記録管理サーバー20において作成され,形態素解析サーバー40に送信される解析依頼文は,たとえば以下の内容である。
【0078】
{“messages”:[{“role”:“system”,“content”:“以下に含まれる人名をカナ読みしてください。\r\n静岡一郎さん,利用者変更r\n"}],"max_tokens":600,"temperature":0.1,"top_p":0.1,"frequency_penalty":0,"presence_penalty":0}
【0079】
この解析依頼文は,記録管理端末30によって発話からテキストに変換された文字列「静岡一郎さん,利用者変更」に含まれる人名(利用者名)の読み(仮名)を送り返す旨の命令文である。
【0080】
利用者名を含む解析依頼文を受信した形態素解析サーバー40は,解析依頼文に含まれる文字列(解析対象文)「静岡一郎さん,利用者変更」を形態素に分解し,分解によって得られる名詞のうち人名と考えられる名詞の読み仮名を記録管理サーバー20に送り返す(ステップ75,データ例75A)。形態素解析サーバー40は人名およびその読み仮名に関するライブラリーを備えており,これを用いて人名を選択(抽出)し,かつ選択した人名の読み仮名を決定する。
【0081】
利用者名(たとえば「静岡一郎」)の読み仮名データ(たとえば「シズオカイチロウ」)を受信した記録管理サーバー20は,データベース・サーバー10に対して受信した読み仮名データを持つレコードの検索を指示する。データベース・サーバー10は利用者マスターDB11(
図4)を参照して,受信した読み仮名データを持つレコードを検索する。検索によってレコードが見つかると,そのレコード中に読み仮名データに関連付けられて記憶されている利用者IDを記録管理端末30に送信する(ステップ74,データ例74A)。
【0082】
利用者IDによって利用者が特定(選択)される。記録管理端末30は利用者IDを受信すると,受信した利用者IDによって特定される利用者の介護内容入力画面を表示する(ステップ72,データ例72A)。
【0083】
図10は利用者IDを受信した後の記録管理端末30の介護内容入力画面33を示している。
図8に示す起動直後の介護内容入力画面33とは,発話によって特定された利用者(受信した利用者IDを持つ利用者,静岡一郎)の氏名が利用者選択リスト33bにおいて強調表示される点,および保存済み介護記録リスト表示エリア33fに,特定された利用者(静岡一郎)に対して過去(直近のみでもよい)に行われた介護記録が表示される点が異なる。介護記録リスト表示エリア33fに表示される過去の介護記録には記録テーブルDB13(
図6)に記憶されている介護記録が用いられる。利用者選択リスト33bに強調表示される利用者氏名によって,介護内容入力画面33が利用者「静岡一郎」用のものとなったことが分かる。
【0084】
3-3.記録作成フェーズ
図11Aは記録作成フェーズにおける音声入力システムの処理の流れを示している。
図11Bは記録作成フェーズにおいて送受信されるデータ例を示している。
【0085】
上述したように,アプリケーション・プログラムが実行されている記録管理端末30は,音声認識ライブラリー31によって変換された文字列にキーワード「データ保存」が含まれている場合,記録作成フェーズに進む。
【0086】
記録作成フェーズに進む場合,上述したように,発話冒頭の記録フォーム名,介護内容およびキーワード「データ保存」が発話されており,記録管理端末30によってテキストに変換されている。記録管理端末30は記録フォーム名および介護内容を含むテキストデータを,上述した利用者選択フェーズで取得した利用者IDとともに記録管理サーバー20に送信する(ステップ81,データ例81A)。
【0087】
記録管理サーバー20は,受信した記録フォーム名および介護内容(発話全文)を含む処理依頼文を作成し,項目振り分けサーバー50に送信する(ステップ83,データ例83A)。ステップ83において記録管理サーバー20で作成され,項目振り分けサーバー50に送信される処理依頼文は,たとえば以下の内容である。
【0088】
{"messages":[{"role":"system","content":"以下の文章を形態素解析し,最初の単語のみ返してください。句読点も不要です。\r\n健康管理,36度,98%,顔色も良く,体調は良好です。データ保存\r\n"}],"max_tokens":800,"temperature":0,"top_p":0.1,"frequency_penalty":0,"presence_penalty":0}
【0089】
この処理依頼文は,記録管理端末30によって発話からテキストに変換された文字列「健康管理,36度,98%,顔色も良く,体調は良好です。データ保存」に含まれる最初の単語を送り返す旨の命令文である。
【0090】
項目振り分けサーバー50に送信される処理依頼文には,形態素解析サーバー40に送信される解析依頼文と異なり,介護施設等の利用者名は含まれていない。同じサーバーに利用者名と介護内容の両方を送信しない(項目振り分けサーバー50には利用者名を送信しない)ことによって,利用者の個人情報を保護することができる。
【0091】
受信した記録フォーム名および介護内容を含む処理依頼文を受信した項目振り分けサーバー50は,処理依頼文に含まれる文字列(解析対象文),上述の場合「健康管理,36度,98%,顔色も良く,体調は良好です。データ保存」を形態素に分解し,分解によって得られる単語のうち並び順が最初の単語を選択し,選択した単語を記録管理サーバー20に送り返す(ステップ87,データ例87A)。解析対象文が「健康管理,36度,98%,顔色も良く,体調は良好です。データ保存」である場合,発話冒頭の記録フォーム名「健康管理」が記録管理サーバー20に送り返されることになる。
【0092】
記録フォーム名を受信した記録管理サーバー20は,データベース・サーバー10に対して,受信した記録フォーム名を持つレコードの検索を指示する。データベース・サーバー10は記録フォームマスターDB12(
図5)を参照して受信した記録フォーム名を持つレコードを検索する。レコードが見つかると,そのレコードに含まれるフォームIDを取得する(ステップ84)。受信した記録フォーム名が「健康管理」であればフォームID「010011」が取得される(データ例84A)。
【0093】
記録フォームマスターDB12(
図5)には,フォームIDに関連付けられて,フォームIDによって特定される記録フォームに含まれる介護項目名(サービス項目名)が関連付けられている。記録管理サーバー20は,取得したフォームIDに関連付けられている介護項目名と介護内容を含む新たな処理依頼文を作成し,項目振り分けサーバー50に送信する(ステップ85,データ例85A)。ステップ85において記録管理サーバー20において作成され,項目振り分けサーバー50に送信される処理依頼文は,たとえば以下の内容である。
【0094】
{“messages”:[{“role”:“user”,“content”:“あなたは健康管理の介護記録をサービス項目ごとに振り分ける機械です。以下の3つの制約条件をもとに,各サービス項目に対応する健康管理の介護記録を,コロンの右側に転記し,出力してください。\r\n#健康管理の介護記録に対する制約条件\r\n・介護記録の中身を勝手に書き換えないこと\r\n・(yyyy/MM/dd)のyyyyが抜けていた場合,2023年と仮定すること\r\n・「今日」という単語は2023/08/30と仮定すること\r\n・方言は標準の丁寧語に変換すること\r\n・日本語以外の言語の場合,日本語の丁寧語に変換すること(人物名は他言語のままで良い)\r\n#サービス項目に対する制約条件\r\n・サービス項目の中身を勝手に書き換えないこと\r\n#出力結果に関する制約条件\r\n・どのサービス項目にも当てはまらない介護記録があった場合,「様子」,「状態」,「状況」,「内容」のキーワードが含まれている,サービス項目に転記すること\r\n・サービス項目の単位を意識すること\r\n・コロンの左側にかぎかっこ(「」)がある場合,介護記録から読み取れるもののみ抜き出し,コロンの右側に複写すること\r\n・かぎかっこ(「」)の中身が,介護記録から読み取れない場合,コロンの右側に「なし」とのみ,入力すること\r\n・介護記録から読み取れないサービス項目は,コロンの右側に「なし」とのみ,入力すること\r\n・介護記録,サービス項目,共に中身を勝手に書き換えて,振り分け結果を出力しないこと(かぎかっこ「」の中身も変えないこと)\r\n・提示されたサービス項目は全て返すこと\r\n・必ず,介護記録をサービス項目に振り分けること\r\n#健康管理の介護記録\r\n健康管理,36度,98%,顔色もよく,体調は良好です。データ保存\r\n#健康管理のサービス項目\r\n体温(℃):\r\n血圧_上(mmHg):\r\n血圧_下(mmHg):\r\n脈(回/分):\r\nSPO2(%):\r\n呼吸(回/分):\r\n状態観察:\r\n"}],"max_tokens":800,"temperature":0,"top_p":0,"frequency_penalty":0,"presence_penalty":0}
【0095】
上述の処理依頼文には次の(A)命令文,(B)制約条件,(C)介護内容(介護記録)および(D)介護項目(サービス項目)が含まれる。
【0096】
(A)命令文
「あなたは健康管理の介護記録をサービス項目ごとに振り分ける機械です。以下の3つの制約条件をもとに,各サービス項目に対応する健康管理の介護記録を,コロンの右側に転記し,出力してください。」
動作目的を処理依頼文(命令文)に含ませることによって,生成系AI(具体例は後述する)を項目振り分けサーバー50として動作させることができる。上記命令文は記録フォーム名「健康管理」を含むので,健康管理に関する介護記録(介護内容)をサービス項目(介護項目)ごとに振り分ける処理を実行すべきことが,項目振り分けサーバー50に伝達される。
【0097】
(B)制約条件
(B-1)健康管理の介護記録に対する制約条件
・介護記録の中身を勝手に書き換えないこと
・(yyyy/MM/dd)のyyyyが抜けていた場合,2023年と仮定すること
・「今日」という単語は2023/08/30と仮定すること
・方言は標準の丁寧語に変換すること
・日本語以外の言語の場合,日本語の丁寧語に変換すること(人物名は他言語のままで良い)
上記制約条件中の「2023年」および「2023/08/30」は,処理依頼文を作成する記録管理サーバー20のマシンタイムに基づく。方言および日本語以外の言語についての具体例は後述する。
(B-2)サービス項目に対する制約条件
・サービス項目の中身を勝手に書き換えないこと
「サービス項目」は「介護項目」と同じものを意味する。処理依頼文に「サービス項目」を用いるか,「介護項目」を用いるかは,たとえば項目振り分けサーバー50の処理精度に応じていずれかを選択するようにしてもよい。
(B-3)出力結果に関する制約条件
・どのサービス項目にも当てはまらない介護記録があった場合,「様子」,「状態」,「状況」,「内容」のキーワードが含まれている,サービス項目に転記すること
・サービス項目の単位を意識すること
・コロンの左側にかぎかっこ(「」)がある場合,介護記録から読み取れるもののみ抜き出し,コロンの右側に複写すること
・かぎかっこ(「」)の中身が,介護記録から読み取れない場合,コロンの右側に「なし」とのみ,入力すること
・介護記録から読み取れないサービス項目は,コロンの右側に「なし」とのみ,入力すること
・介護記録,サービス項目,共に中身を勝手に書き換えて,振り分け結果を出力しないこと(かぎかっこ「」の中身も変えないこと)
・提示されたサービス項目は全て返すこと
・必ず,介護記録をサービス項目に振り分けること
上述の制約条件を処理依頼文に含ませることによって生成系AIを項目振り分けサーバー50としての動作に特化させることができ,不適切な処理が行われないようにすることができる。
【0098】
(C)介護内容(介護記録)
健康管理,36度,98%,顔色も良く,体調は良好です。データ保存
発話の全文である。発話中の「データ保存」は介護内容(介護記録)自体ではなく,上述したように,記録作成フェーズに進むためのキーワードである。
【0099】
(D)介護項目(サービス項目)
体温(℃):
血圧_上(mmHg):
血圧_下(mmHg):
脈(回/分):
SPO2(%):
呼吸(回/分):
状態観察:
ここでは,処理依頼文に「健康管理」の記録フォーム名が含まれているので,複数の記録フォームのうちの一つである健康管理記録フォーム32(
図3)に含まれる介護項目(サービス項目)が列挙される。列挙される介護項目(サービス項目)は記録フォームマスターDB(
図12)にしたがう。発話において特定される記録フォーム(上述の例では,健康管理記録フォーム)に含まれる複数の介護項目(サービス項目)が,正確にかつ漏れなく処理依頼文に含ませられ,項目振り分けサーバー50に伝達される。
【0100】
上述した処理依頼文を受信した項目振り分けサーバー50は,処理依頼文に含まれる命令文,制約条件,介護内容(介護記録)および介護項目(サービス項目)を用いて,介護内容と介護項目との対応づけを行い(振り分け処理),その結果を記録管理サーバー20に送信する(ステップ88,データ例88A)。たとえば,以下のデータ(振り分け結果データ)が項目振り分けサーバー50から記録管理サーバー20に送信される。
【0101】
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【0102】
この振り分け結果は,以下の内容を含む。
【0103】
体温(℃):36.0
血圧_上(mmHg):
血圧_下(mmHg):
脈拍(回/分):
SPO2(%):98
呼吸(回/分):
状態観察:顔色も良く,体調は良好です。
【0104】
振り分け結果を受信した記録管理サーバー20は,振り分け結果およびフォームIDによって特定される記録フォームのフォームデータ(データ未入力の記録フォームを表すデータ)を記録管理端末30に送信する(ステップ86,データ例86A)。
【0105】
振り分け結果および記録フォームのフォームデータを受信した記録管理端末30は,記録フォームの各入力欄に振り分け結果にしたがって介護内容(数字,文字)を入力したデータ入力済み記録フォームを作成し,データ入力済み記録フォームを含む介護内容入力画面33を表示する(ステップ82,データ例82A)。
【0106】
図12は,データ入力済み記録フォームを含む記録管理端末30の介護内容入力画面33を示している。
図10に示す介護内容入力画面33とは,記録フォーム表示エリア33eにデータ入力済み記録フォームが表示される点,および文字起こしされた発話内容が発話内容テキスト表示エリア33gに表示される点が異なる。
【0107】
記録フォーム表示エリア33eに表示されている記録フォームの介護項目に介護内容が正しく入力されていれば保存ボタン33dがクリックされ,これによって記録フォームに入力された介護内容が記録テーブルDB13(
図6)に保存される。入力されている介護内容に誤りがある場合には入力装置30Eを用いて誤りを正してもよい。
【0108】
終了ボタン33iがクリックされることで音声入力は終了する。
【0109】
介護内容入力画面33の記録フォーム表示エリア33eは,発話による介護内容の入力が正しく行われたかどうかを視覚的に確認するため(および誤りがあった場合に訂正するため)に用いられる。発話内容の音声認識結果は発話内容テキスト表示エリア33gにも表示されるので,発話による介護内容が正しく認識されたかどうかは発話内容テキスト表示エリア33gでも確認することができ,したがって記録フォーム表示エリア33eは必ずしも表示しなくてもよい。記録フォーム表示エリア33eが介護内容入力画面33に含まれない態様では,発話内容テキスト表示エリア33gに表示される文字起こしされた発話内容を見て,誤りがあれば,再度,記録フォーム名,介護内容およびキーワード「データ保存」を含む発話を繰り返せばよい。
【0110】
図13は,上述した発話内容(記録作成フェーズに進むためのキーワード「データ保存」を除く)と項目振り分けサーバー50による振り分け処理結果(健康管理記録フォーム32を用いた介護記録)との関係を示している。
【0111】
上述したように,発話に含まれる記録フォーム名「健康管理」によって,複数種類の記録フォームの中から健康管理記録フォーム32が特定(選択)される。健康管理記録フォーム32が特定されることによって,記録フォームマスターDB12(
図5)に基づいて健康管理記録フォーム32に含まれる介護項目(サービス項目)(「体温」,「血圧上/下」,「脈拍」,「SPO2」,「呼吸」および「状態観察」)が正しく特定される。記録管理サーバー20において作成され,項目振り分けサーバー50に送信される処理依頼文にはこの介護項目(サービス項目)(名)が含められるので,項目振り分けサーバー50には,介護内容(介護記録)を振り分けるべき介護項目(サービス項目)を正確に伝えることができる。
【0112】
上述した発話例(「健康管理,36度,98%,顔色もよく,体調は良好です。」)では,介護項目(サービス項目)(名)それ自体は一切発話されていず,したがって処理依頼文にも介護項目は一切含まれていない。すなわち,発話および処理依頼文の段階では介護項目(サービス項目)と介護内容(介護記録)とは全く対応づけられていない。しかしながら,介護項目と介護内容とが全く対応づけられていないとしても,処理依頼文を受信した項目振り分けサーバー50は,介護項目と介護内容とをかなり正確に対応づけることができる(項目振り分け)。すなわち,上述の例では,単に「36度」と発話されており,「36度」の直前および直後のいずれにも(発話のどこにも),これに対応する介護項目「体温」は一切発話されていないが,項目振り分けサーバー50は「36度」を介護項目「体温」に正しく対応付けることができている。同様にして「98%」は介護項目「SPO2」に正しく対応付けることができている。さらに,「顔色も良く,体調は良好です。」の発話についても,介護項目「状態観察」に正しく対応づけることができている。介護項目「体温」が持つ言葉の意味,人の体温の通常範囲,および「36」という数値の直後の単位(「度」)などが,「36度」を,健康管理記録フォーム32が備える複数の介護項目のうちの介護項目「体温」に振り分ける(対応づける)ための推論に用いられると考えられる。同様に,介護項目「SPO2」(酸素飽和度を意味する)が持つ言葉の意味,人のSPO2の通常の数値範囲,および「98」という数値の直後の単位(%)などが,「98%」を,複数の健康管理記録フォーム32が備える複数の介護項目のうちの介護項目「SPO2」に振り分けるための推論に用いられると考えられる。
【0113】
「顔色も良く,体調は良好です。」が,健康管理記録フォーム32が備える複数の介護項目のうちの介護項目「状態観察」に振り分けられているのは,処理依頼文の制約条件(たとえば,「どのサービス項目にも当てはまらない介護記録があった場合,「様子」,「状態」,「状況」,「内容」のキーワードが含まれている,サービス項目に転記すること」)が,正しい振り分け結果に効果を発揮していると考えられる。
【0114】
項目振り分けサーバー50に与える処理依頼文には,上述のように「あなたは健康管理の介護記録をサービス項目ごとに振り分ける機械です。」という命令文が含められている。この命令文も項目振り分けサーバー50の振り分け処理を正確に行わせることに貢献していると考えられる。さらに,上述のように,上記命令文に加えて制約条件も付加することによって,振り分けの間違い(対応づけの誤り)を確実に少なくすることができる。
【0115】
項目振り分けサーバー50には,インターネット等を介して利用可能な生成系AI(人工知能)である「ChatGPT」を用いることができる。すなわち,ChatGPTに対して上述した命令文,制約条件等を含む処理依頼文を与えることによって,ChatGPTを項目振り分けサーバー50として動作させ,振り分け処理を適切に実行させることができる。Bard,Phindその他の生成系AIを項目振り分けサーバー50として用いてもよい。
【0116】
上述の例では,記録管理サーバー20から振り分け結果およびフォームデータを受信した記録管理端末30がデータ入力済み記録フォームを作成しているが,記録管理サーバー20においてデータ入力済み記録フォームを作成し,記録管理サーバー20において作成されたデータ入力済み記録フォームを記録管理端末30に送信するようにしてもよい。
【0117】
図14は,発話内容の他の例(カッコ内に示す)と項目振り分けサーバー50による振り分け処理結果を示している。
【0118】
上述したように,項目振り分けサーバー50は,記録管理サーバー20から介護項目名と介護内容(介護記録)を含む処理依頼文を受信すると,それらを対応づける処理(振り分け処理)を行う。
図14に示す例は,介護内容(介護記録)として最高血圧,最低血圧および体温の3つのバイタルデータを含む。
【0119】
上述したように,発話に含まれる記録フォーム名「健康管理」によって,複数種類の記録フォームの中から健康管理記録フォーム32が特定(選択)される。健康管理記録フォーム32が特定されることによって記録フォームマスターDB12が参照されて,介護項目名(「体温」,「血圧上/下」,「脈拍」,「SPO2」,「呼吸」および「状態観察」)が正しく特定される。
【0120】
図14に示す例では,
図13と異なり,発話段階で既に介護項目(サービス項目)と介護内容(介護記録)とが対応づけられている(介護項目名の直後に対応する介護内容が発話されている)。このように介護項目と介護内容を発話段階で対応づけてももちろんよい。もっとも,
図14に示す例では,記録フォームに含まれる介護項目の並び順どおりに介護内容が発話されていない。たとえば,健康管理記録フォーム32では介護項目「体温」は先頭の介護項目であるが,
図14に示す発話例では介護項目「体温」よりも先に介護項目「血圧上」が発話されている)。このように発話における介護内容の並び順にかかわらずに,項目振り分けサーバー50は適切な介護項目に適切な介護内容を振り分けることができる。また,「36度5分」を「36.5」に置換する処理,脈拍,SPO2,呼吸および状態観察については発話に含まれていないことも項目振り分けサーバー50は判断することができている。さらに「下が75」のように介護項目が正確に発話されず,単位もなかったとしても,項目振り分けサーバー50は発話の文脈から最低血圧が75(mmHg)であることを推論すると考えられる。上述したように生成系AIに対する処理依頼文に「あなたは健康管理の介護記録をサービス項目ごとに振り分ける機械です。」という命令文を含ませることによって,さらに制約条件を加えることによって,生成系AIを項目振り分けサーバー50として適切に動作させることができ,振り分けの間違い(対応づけの誤り)を確実に少なくすることができる。
【0121】
図15は他の発話例と項目振り分けサーバー50による振り分け処理結果とを示している。
【0122】
この発話例には「サチュレーション」という単語が用いられている。「サチュレーション」という単語は健康管理記録フォーム32に介護項目として含まれていないが,SPO2を意味するものと推論されている。単語「サチュレーション」が持つ言葉の意味,単位「%」の存在などによって,健康管理記録フォーム32に含まれる介護項目の一つである「SPO2」に介護内容(介護記録)「98%」が振り分けられると考えらえる。
【0123】
図16は,他の発話例と項目振り分けサーバー50による振り分け処理結果とを示している。
図16に示す発話例は,日本語ではなく英語で発話されている。
【0124】
介護サービス事業に従事する職員が外国人の場合,母国語で発話する方が内容を正確に伝えることができる場合がある。上述した処理依頼文は,多言語対応のための制約条件(「・日本語以外の言語の場合,日本語の丁寧語に変換すること(人物名は他言語のままで良い)」)を含んでいる。これによって項目振り分けサーバー50に,発話が外国語である場合に日本語に変換した上で振り分け処理(記録フォームの選択を含む)を行わせることができる。このように発話が外国語による発話であったとしても,項目振り分けサーバー50は,記録フォームを適切に選択し,選択された記録フォームに含まれる介護項目と発話中の介護内容とを適切に対応づけることができる。
図16に示す英語による発話例では,介護項目の発話はないが,それにもかかわらず,発話中の介護内容を適切な介護項目に振り分けることができている。
【0125】
図17は,発話が外国語(英語)である場合の発話例と項目振り分けサーバー50による振り分け処理結果の他の例を示している。
図17に示す発話例は介護項目と介護内容とが発話中において既に対応づけられている点が
図16と異なる。この場合も,介護内容を適切な介護項目に振り分けることができる。
【0126】
図18は,他の発話例と,発話例にしたがう項目振り分けサーバー50による振り分け処理結果と示している。記録管理サーバー20において作成され,項目振り分けサーバー50に送信される処理依頼文は,たとえば以下のとおりである。
【0127】
{“messages”:[{“role”:“user”,“content”:“あなたはレクレーションの介護記録をサービス項目ごとに振り分ける機械です。以下の3つの制約条件をもとに,各サービス項目に対応するレクレーションの介護記録を,コロンの右側に転記し,出力してください。\r\n#レクレーションの介護記録に対する制約条件\r\n・介護記録の中身を勝手に書き換えないこと\r\n・(yyyy/MM/dd)のyyyyが抜けていた場合,2023年と仮定すること\r\n・「今日」という単語は2023/08/30と仮定すること\r\n・方言は標準の丁寧語に変換すること\r\n・日本語以外の言語の場合,日本語の丁寧語に変換すること(人物名は他言語のままで良い)\r\n#サービス項目に対する制約条件\r\n・サービス項目の中身を勝手に書き換えないこと\r\n#出力結果に関する制約条件\r\n・どのサービス項目にも当てはまらない介護記録があった場合,「様子」,「状態」,「状況」,「内容」のキーワードが含まれている,サービス項目に転記すること\r\n・サービス項目の単位を意識すること\r\n・コロンの左側にかぎかっこ(「」)がある場合,介護記録から読み取れるもののみ抜き出し,コロンの右側に複写すること。\r\n・かぎかっこ(「」)の中身が,介護記録から読み取れない場合,コロンの右側に「なし」とのみ,入力すること\r\n・介護記録から読み取れないサービス項目は,コロンの右側に「なし」とのみ,入力すること\r\n・介護記録,サービス項目,共に中身を勝手に書き換えて,振り分け結果を出力しないこと(かぎかっこ「」の中身も変えないこと)\r\n・提示されたサービス項目は全て返すこと\r\n・必ず,介護記録をサービス項目に振り分けること\r\n#レクレーションの介護記録\r\nレクレーション体操をやりました。 すごく張り切っていましたが,途中で息切れしてしまいました。 \r\n次回からは軽めな運動をすることとバイタルを必ずとるようにしてください。データ保存\r\n#レクレーションのサービス項目r\nレクレーション「実施or中止orなし」:\r\nレクレーション・中止理由:\r\nレクレーション・プログラム:\r\n状態:\r\n用具・用品:\r\n指示・連絡:\r\n・評価:\r\n"}],"max_tokens}
【0128】
発話に含まれる「レクレーション」によってレクレーション記録フォーム92が特定(選択)され,レクレーション記録フォーム92に含まれる介護項目(「レクレーション」,「中止理由」,「プログラム」,「状態」,「用具・用品」,「指示・連絡」,「評価」)が処理依頼文に含ませられる。項目振り分けサーバー50に対し,介護内容を振り分けるべき介護項目を正確に伝えることができる。
【0129】
上述した発話例では,たとえば介護項目「プログラム」は発話されていないが,発話中の「体操」が介護項目「プログラム」に正しく振り分けられている。項目振り分けサーバー50は単語「体操」の意味から,これを介護項目「プログラム」に振り分ける推論を行うことができている考えられる。また発話中の「途中で息切れ」が介護項目「状態」に振り分けられている。発話における文脈も振り分け処理に用いられていると考えられる。
【0130】
図19は,さらに他の発話例と,発話例にしたがう項目振り分けサーバー50による振り分け処理結果とを示している。
【0131】
発話に記録フォーム名「水分」が含まれることによって複数種類の記録フォームの中から水分記録フォーム91が特定(選択)され,水分記録フォーム91に含まれる介護項目名(「飲料名」および「状態」)が特定される。発話中の「お茶」が飲料名であること,「お茶」の直後の「200cc」によって飲料されたお茶の量が「200cc」であったこと,「状態」に対応する介護内容は発話中に含まれていないことが,項目振り分けサーバー50によって振り分けられている。
【0132】
図20は,他の発話例と項目振り分けサーバー50による振り分け処理結果とを示している。
【0133】
発話に含まれる「夕食」によって夕食記録フォーム93が特定(選択)され,夕食記録フォーム93に含まれる介護項目名(「嚥下リハ」,「食事量」,「経口栄養」,「経管栄養」,「服薬」,「補助食品」,「口腔ケア」,「口腔ケア内容」,「様子(食事)」および「欠食」)が特定される。「食後,歯磨きを行いました。」という発話から口腔ケアが実施されたこと,および口腔ケア内容が適切に判断されて振り分けられている。
【0134】
図21は,他の発話例と項目振り分けサーバー50による振り分け処理結果とを示している。記録管理サーバー20において作成され,項目振り分けサーバー50に送信される処理依頼文は,たとえば以下のとおりである。
【0135】
{“messages”:[{“role”:“user”,“content”:“あなたは身体測定の介護記録をサービス項目ごとに振り分ける機械です。以下の3つの制約条件をもとに,各サービス項目に対応する身体測定の介護記録を,コロンの右側に転記し,出力してください。\r\n#身体測定の介護記録に対する制約条件\r\n・介護記録の中身を勝手に書き換えないこと\r\n・(yyyy/MM/dd)のyyyyが抜けていた場合,2023年と仮定すること\r\n・「今日」という単語は2023/08/30と仮定すること\r\n・方言は標準の丁寧語に変換すること\r\n・日本語以外の言語の場合,日本語の丁寧語に変換すること(人物名は他言語のままで良い)\r\n#サービス項目に対する制約条件\r\n・サービス項目の中身を勝手に書き換えないこと\r\n#出力結果に関する制約条件\r\n・どのサービス項目にも当てはまらない介護記録があった場合,「様子」,「状態」,「状況」,「内容」のキーワードが含まれている,サービス項目に転記すること\r\n・サービス項目の単位を意識すること\r\n・コロンの左側にかぎかっこ(「」)がある場合,介護記録から読み取れるもののみ抜き出し,コロンの右側に複写すること。\r\n・かぎかっこ(「」)の中身が,介護記録から読み取れない場合,コロンの右側に「なし」とのみ,入力すること\r\n・介護記録から読み取れないサービス項目は,コロンの右側に「なし」とのみ,入力すること\r\n・介護記録,サービス項目,共に中身を勝手に書き換えて,振り分け結果を出力しないこと(かぎかっこ「」の中身も変えないこと)\r\n・提示されたサービス項目は全て返すこと\r\n・必ず,介護記録をサービス項目に振り分けること\r\n#身体測定の介護記録\r\n身体測定,48,160,少し体重が増えていました。データ保存\r\n#身体測定のサービス項目r\n身長(cm):\r\n体重(kg):\r\n状態:\r\n"}],"max_tokens":800,"temperature":0,"top_p":0,"frequency_penalty":0,"presence_penalty":0}
【0136】
発話に含まれる「身体測定」によって身体測定記録フォーム94が特定(選択)され,身体測定記録フォーム94に含まれる介護項目名(「身長」,「体重」および「状態」)が項目振り分けサーバー50に正しく伝えられる。
【0137】
「48」,「160」としか発話されていないが,「48」が介護項目「体重」に,「160」が介護項目「身長」に,それぞれ振り分けられている。介護項目「体重」が持つ言葉の意味,人の体重の通常範囲が,「48」を,身体測定記録フォーム94が備える複数の介護項目ののうちの介護項目「体重」に振り分けるための推論に用いられていると考えられる。同様に,介護項目「身長」が持つ言葉の意味,人の身長の通常範囲が,「160」を,身体測定記録フォーム94が備える複数の介護項目のうちの介護項目「身長」に振り分けるための推論に用いられていると考えられる。身体測定記録フォーム94に含まれる介護項目の並び順どおりに介護内容が発話されなくても,適切な介護項目に適切な介護内容が振り分けられている。
【0138】
図22は,他の発話例と項目振り分けサーバー50による振り分け処理結果とを示している。
【0139】
身体測定記録フォーム94の介護項目は,身長,体重および状態の順に並んでいるが,その並び順どおりに介護内容を発話しなくても,「160cm」の介護内容が「身長」の介護項目に,「48.3kg」の介護内容が「体重」の介護項目に,それぞれ適切に振り分けが実行されていることが分かる。
【0140】
図23は他の発話例と項目振り分けサーバー50による振り分け処理結果とを示している。記録管理サーバー20において作成され,項目振り分けサーバー50に送信される処理依頼文は,たとえば以下のとおりである。
【0141】
{“messages”:[{“role”:“user”,“content”:“あなたは面会の介護記録をサービス項目ごとに振り分ける機械です。以下の3つの制約条件をもとに,各サービス項目に対応する面会の介護記録を,コロンの右側に転記し,出力してください。\r\n#面会の介護記録に対する制約条件\r\n・介護記録の中身を勝手に書き換えないこと\r\n・(yyyy/MM/dd)のyyyyが抜けていた場合,2023年と仮定すること\r\n・「今日」という単語は2023/08/30と仮定すること\r\n・方言は標準の丁寧語に変換すること\r\n・日本語以外の言語の場合,日本語の丁寧語に変換すること(人物名は他言語のままで良い)\r\n#サービス項目に対する制約条件\r\n・サービス項目の中身を勝手に書き換えないこと\r\n#出力結果に関する制約条件\r\n・どのサービス項目にも当てはまらない介護記録があった場合,「様子」,「状態」,「状況」,「内容」のキーワードが含まれている,サービス項目に転記すること\r\n・サービス項目の単位を意識すること\r\n・コロンの左側にかぎかっこ(「」)がある場合,介護記録から読み取れるもののみ抜き出し,コロンの右側に複写すること。\r\n・かぎかっこ(「」)の中身が,介護記録から読み取れない場合,コロンの右側に「なし」とのみ,入力すること\r\n・介護記録から読み取れないサービス項目は,コロンの右側に「なし」とのみ,入力すること\r\n・介護記録,サービス項目,共に中身を勝手に書き換えて,振り分け結果を出力しないこと(かぎかっこ「」の中身も変えないこと)\r\n・提示されたサービス項目は全て返すこと\r\n・必ず,介護記録をサービス項目に振り分けること\r\n#面会の介護記録\r\n面会,長男の太郎さんと奥さん,孫2人が面会にきました。え~と修学旅行の話で盛り上がっていました。データ保存\r\n#面会のサービス項目\r\n面会者:\r\n続柄:\r\n様子:\r\n面会者数(人):\r\n"}],"max_tokens":800,"temperature":0,"top_p":0,"frequency_penalty":0,"presence_penalty":0}
【0142】
発話に含まれる「面会」によって面会記録フォーム95が特定され,面会記録フォーム95に含まれる項目名(「面会者」,「続柄」,「様子」および「面会者数」)が処理依頼文に含ませられることによって項目振り分けサーバー50に正しく伝えられる。
【0143】
上述の発話例にも,面会記録フォーム95に含まれる項目名は一切含まれていないが,項目「面会者」,「続柄」,「様子」および「面会者数」に,それぞれ正しく内容が振り分けられている。
【0144】
また,発話例には,面会者数が4人であることは一言も含まれていない。項目振り分けサーバー50は面会者数が4人であることを正しく判断している。これは,発話に含まれる「長男の太郎さんと奥さん,孫2人」の部分にしたがって面会者が「長男の太郎さん」と「奥さん」と「孫2人」の合計4人であることを正しく推論した結果であると考えられる。
【0145】
さらに,上述の発話例には「え~と」という,特段意味を持たない発話も含まれているが,項目振り分けサーバー50は,この特段意味を持たない発話部分を削除する(項目「様子」に含めない)処理も行っている。
【0146】
図24は他の発話例と,発話例にしたがう項目振り分けサーバー50による振り分け結果とを示している。
【0147】
図24に示す発話例においても,発話における「長男ご夫婦」の部分から面会者数が2人であることが正しく推論され,発話に一切含まれていないにも関わらず,項目「面会者数」について「2人」が正しく振り分けられている。
【0148】
面会に来たのが「長男ご夫婦」であるから,面会者の続柄としては,長男とその配偶者が正確であろうが,
図24に示す面会記録フォーム95の介護項目「続柄」には「長男」のみが振り分けられている。このような場合に,介護項目「続柄」のデータ入力欄に,入力装置を用いて,「長男の配偶者」,「長男の奥様」,「嫁」などを入力(追記)することができる。
【0149】
図25は他の発話例と項目振り分けサーバー50による振り分け処理結果とを示している。
【0150】
図25に示す発話例には方言が含まれている。上述したように,処理依頼文に「方言は標準の丁寧語に変換すること」という制約文が含まれており,これによって項目振り分けサーバー50に,方言について丁寧語(標準語)に変換した上で振り分け処理を行わせることができる。発話が方言を含むとしても,介護項目と介護内容を適切に対応づけることができる。
【0151】
図26は,他の発話例と,発話例にしたがう項目振り分けサーバー50による振り分け処理結果とを示している。記録管理サーバー20において作成され,項目振り分けサーバー50に送信される処理依頼文は,たとえば以下のとおりである。
【0152】
{“messages”:[{“role”:“user”,“content”:“あなたは事故報告の記録をサービス項目ごとに振り分ける機械です。以下の3つの制約条件をもとに,各サービス項目に対応する事故報告の記録を,コロンの右側に転記し,出力してください。\r\n#事故報告の記録に対する制約条件\r\n・事故報告の記録の中身を勝手に書き換えないこと\r\n・(yyyy/MM/dd)のyyyyが抜けていた場合,2023年と仮定すること\r\n・「今日」という単語は2023/08/30と仮定すること\r\n・方言は標準の丁寧語に変換すること\r\n・日本語以外の言語の場合,日本語の丁寧語に変換すること(人物名は他言語のままで良い)\r\n#サービス項目に対する制約条件\r\n・サービス項目の中身を勝手に書き換えないこと\r\n#出力結果に関する制約条件\r\n・どのサービス項目にも当てはまらない記録があった場合,「様子」,「状態」,「状況」,「内容」のキーワードが含まれている,サービス項目に転記すること\r\n・サービス項目の単位を意識すること\r\n・コロンの左側にかぎかっこ(「」)がある場合,記録から読み取れるもののみ抜き出し,コロンの右側に複写すること。\r\n・かぎかっこ(「」)の中身が,記録から読み取れない場合,コロンの右側に「なし」とのみ,入力すること\r\n・記録から読み取れないサービス項目は,コロンの右側に「なし」とのみ,入力すること\r\n・記録,サービス項目,共に中身を勝手に書き換えて,振り分け結果を出力しないこと(かぎかっこ「」の中身も変えないこと)\r\n・提示されたサービス項目は全て返すこと\r\n・必ず,記録をサービス項目に振り分けること\r\n#事故報告の記録\r\n事故報告,今日の15時頃分に,階段から落ちて怪我をしてしまいました。えーと ,不注意による足を踏み外したことが原因です。 あー今後,こういったことがないように,つき添いながら階段を下りる必要があります。データ保存\r\n#事故報告のサービス項目\r\n報告者:r\n発生日(yyyy/MM/dd):\r\n発生時刻「AMorPMorなし」:\r\n発生時刻(HHmm):\r\n発生場所「居室orリビングorトイレor脱衣所or浴室or廊下or階段or談話ルームor施設外orなし」:\r\n発生場所(施設外):\r\n発生場所(その他):\r\n事故の種別「転倒or転落or誤薬or火傷or誤飲or溺水」:\r\n事故発生状況:\r\n"}],"max_tokens":800,"temperature":0,"top_p":0,"frequency_penalty":0,"presence_penalty":0}
【0153】
発話に含まれる「事故報告」によって事故報告記録フォーム96が特定される。上記発話例には日にちを特定する発話はないが,発話中に含まれる「今日」から項目「発生日」に「令和05年8月30日」が入力(振り分け)されている。また,発話中の「15時頃」から「PM」であることが判断されている。さらに発話中の「階段から落ちて」から発生場所「階段」,事故種別「転落」が選択されている。「発生日」,「発生時刻」,「発生場所」,「事故種別」,「事故発生状況」の各項目の発話がなくても,適切な項目に適切な内容が振り分けられている。
【0154】
生成系AI(ChatGPT)を利用した項目振り分けサーバー50は,介護項目名(サービス項目名)と介護内容(サービス内容)とをセットで発話しなくても,介護項目(名)と介護内容の対応づけ(振り分け)をかなり適切に推論することができる。たとえば表示画面に介護項目ごとに用意されるデータ入力欄をクリックすることによって介護内容を入力すべきデータ入力欄を選択し,次に選択したデータ入力欄に入力装置を用いて文字,数字等を入力する必要がない。また,記録フォームに含まれる複数の介護項目の並び順にしたがって,その順番にしたがって介護内容を発話する必要もない。介護内容の入力を短時間に済ませることができ,介護職員等の事務負担がかなり軽減されることになる。
【0155】
なお,より適切な介護項目のデータ入力欄が存在にするにもかかわらず,他のデータ入力欄に介護内容が入力されてしまうこともあるが,その場合には上述した制約条件を増やすことによって,振り分けの精度を向上させることができる。