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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167885
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】電磁回転駆動装置及び遠心ポンプ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/09 20060101AFI20241127BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20241127BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20241127BHJP
   F04D 29/00 20060101ALI20241127BHJP
   F04D 13/06 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H02K7/09
H02K7/14 B
H02K7/14 C
H02K11/30
F04D29/00 B
F04D13/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024069456
(22)【出願日】2024-04-23
(31)【優先権主張番号】23174493
(32)【優先日】2023-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】524008915
【氏名又は名称】レヴィトロニクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルセル シュテットラー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル シュタイナート
(72)【発明者】
【氏名】ナターレ バーレッタ
【テーマコード(参考)】
3H130
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AA05
3H130AB02
3H130AB12
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC18
3H130BA91G
3H130BA95G
3H130BA97G
3H130DA02Z
3H130DB10X
3H130DD04X
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC01
5H607CC05
5H607CC07
5H607DD06
5H607FF06
5H607GG20
5H607GG21
5H611BB01
5H611BB06
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小型であり、制御ユニットが過熱から保護される、電磁回転駆動装置を提供する。
【解決手段】電磁回転駆動装置1のモータ・ユニット30は、回転子のコアを受容する窪み210を備えるモータ筐体20内に配置され、支持及び駆動用固定子として設計された固定子を有する。固定子によって、回転子を、動作状態において非接触で、軸方向Aを画定する所望の回転軸を中心として、磁気的に駆動する。また固定子によって、回転子を非接触で、磁気浮上させる。制御ユニット40は、巻線を制御し、電気エネルギーを供給するよう装備されている。熱切離し要素8a、8bは、軸方向Aに、モータ・ユニットと制御ユニットとの間に配置され、モータ・ユニットから制御ユニットへの直接的な熱の流れ込みを低減する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンプル・モータとして設計され、モータ・ユニット(30)と制御ユニット(40)とを有する、電磁回転駆動装置であって、前記モータ・ユニット(30)が、回転子(3)のリング状又はディスク状の磁気的に有効なコア(31)を受容する窪み(210)を備える、モータ筐体(20)内に配置され、前記モータ・ユニット(30)が、支持及び駆動用固定子として設計された固定子(2)を有し、前記固定子によって、前記回転子(3)を、動作状態において非接触で、軸方向(A)を画定する所望の回転軸を中心として磁気的に駆動することができ、また前記固定子によって、前記回転子(3)を、前記固定子(2)に対して非接触で、磁気浮上させることができ、前記回転子(3)が、前記軸方向(A)に垂直な径方向の平面に能動的に磁気浮上し、前記固定子(2)が、複数のコイル・コア(25)を備え、前記コイル・コアのそれぞれが、第1の端部から第2の端部まで前記軸方向(A)に延在する、長手方向脚部(26)と、前記長手方向脚部(26)の前記第2の端部で、前記径方向の平面に配置され、前記長手方向脚部(26)から径方向に延在する、横方向脚部(27)とを有し、前記コイル・コア(25)が、前記窪み(210)の周囲に周方向に配置され、少なくとも1つの集中巻線(61)が、各長手方向脚部(26)に設けられ、前記巻線が、前記それぞれの長手方向脚部(26)を取り囲み、前記制御ユニット(40)が、前記巻線(61)を制御し、電気エネルギーを供給するよう装備されている、電磁回転駆動装置において、熱切離し要素(8a、8b)が、前記軸方向(A)に、前記モータ・ユニット(30)と前記制御ユニット(40)との間に配置され、前記切離し要素が、前記モータ・ユニット(30)及び前記制御ユニットに当接し、これにより、前記モータ・ユニット(30)から前記制御ユニット(40)への直接的な熱の流れ込みを低減することを特徴とする、電磁回転駆動装置。
【請求項2】
冷却導管(81)が、前記熱切離し要素(8a)内に配置され、前記冷却導管を通して、冷却液を流すことができる、請求項1に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項3】
電子部品を備えた回路基板(71)が、前記軸方向(A)に、前記巻線(61)と前記横方向脚部(27)との間に配置される、請求項1又は2に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項4】
前記制御ユニット(40)が、前記軸方向(A)に、前記モータ筐体(20)と隣り合って配置される、別個の制御部筐体(41)を有し、前記熱切離し要素(8a、8b)が、前記軸方向(A)に、前記モータ筐体(20)と前記制御部筐体(41)との間に配置される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項5】
前記モータ筐体(20)及び前記制御部筐体(40)が、互いに直接物理的に接触することなく配置される、請求項4に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項6】
前記固定子(2)が、前記軸方向(A)に、前記コイル・コア(25)と前記熱切離し要素(8a、8b)との間に配置される、熱伝導プレート(91)を備える熱伝導要素(9)を有し、前記熱伝導プレートが、前記コイル・コア(25)、又はこれによりすべての長手方向脚部(26)の前記第1の端部が連結され、磁束を伝導する、バック・アイアン(22)と物理的に接触する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項7】
前記熱伝導要素(9)が、前記熱伝導プレート(91)に連結された複数の伝導歯を有し、各伝導歯(91)が、いずれも前記軸方向(A)に延在し、前記巻線(61)によって取り囲まれた内部空間において、前記巻線(61)に対して径方向内側に配置される、請求項6に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項8】
各伝導歯(91)が、前記長手方向脚部(26)のうちの1つ又は前記巻線(61)のうちの1つに、前記径方向に、接近して隣り合うよう配置される、請求項7に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項9】
前記伝導歯(91)の数が、前記コイル・コア(25)の数と等しい、請求項7又は8に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項10】
前記周方向に見て、2つの隣り合う伝導歯(91)間のいずれにも、刻み目(93)が設けられ、前記刻み目が、前記軸方向(A)に、前記長手方向脚部(26)の前記第1の端部のエリア内に延在する、請求項7から9までのいずれか一項に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項11】
前記制御ユニット(40)が、前記モータ筐体(20)内に配置されている、請求項1から3までのいずれか一項に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項12】
前記熱切離し要素(8b)が、前記モータ筐体(20)に統合された一部である、請求項11に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項13】
前記モータ筐体(20)が、実質的に円筒状に設計され、前記巻線(61)によって取り囲まれた内部空間で、前記巻線(61)に対して径方向内側に配置される、内部カップ(201)を有する、請求項11又は12に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項14】
前記内部カップ(201)が、前記軸方向に、前記巻線(61)の全長にわたって延在する、請求項13に記載の電磁回転駆動装置。
【請求項15】
液体を搬送する遠心ポンプであって、前記遠心ポンプが、請求項1から14までのいずれか一項に従って設計された電磁回転駆動装置(1)と、磁気的に有効なコア(31)を備え、前記モータ筐体の前記窪み(210)内に配置される、回転子(3)とを有し、前記回転子(3)が、前記遠心ポンプの前記回転子(3)として設計されることを特徴とする、遠心ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立特許請求項のプリアンブルによる、電磁回転駆動装置、及びかかる電磁回転駆動装置を有する遠心ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ベアリングレス・モータの原理に従って設計され、動作する、電磁回転駆動装置が知られている。ベアリングレス・モータという用語は、回転子が固定子に対して完全に磁気的に支持され、別個の磁気ベアリングが設けられていない電磁回転駆動装置を意味する。固定子は、この目的のために、電気駆動の固定子であり、磁気ベアリングの固定子でもある、支持及び駆動用固定子として設計されている。回転磁場は、固定子の電気巻線によって生成することができ、一方では回転子にトルクを加え、所望の回転軸を中心とする回転子の回転を生み出し、他方では任意に調整可能な横方向の力を回転子に加え、これにより回転子の径方向の位置を、能動的に制御又は調節することができる。したがって、回転子の3自由度、すなわち回転子の回転及び径方向の位置(2自由度)を、能動的に調節することができる。回転子は、別の3自由度、すなわち回転子の軸方向の位置及び所望の回転軸に垂直な径方向の平面に対する傾斜(2自由度)に関して、受動的に磁気抵抗力によって磁気支持又は安定化される。すなわち、別の3自由度は制御することができない。回転子の完全な磁気ベアリングによって、別個の磁気ベアリングがないことが特質であり、これによりベアリングレス・モータの名前が与えられている。支持機能は、支持及び駆動用固定子では、駆動機能からは分離することができない。
【0003】
かかるベアリングレス・モータは、数多くの用途で実証されている。ベアリングレス・モータは、機械式ベアリングがないため、非常に影響を受けやすい物質が搬送されるポンプ移送、混合、若しくは攪拌デバイス(例えば血液ポンプ)、純度に関して非常に要求が高い、例えば製薬業界若しくは生物工学業界におけるポンプ移送、混合、若しくは攪拌デバイス、又は機械式ベアリングを非常に早く破壊することになる研磨性若しくは侵食性の高い(aggressive)物質が搬送されるポンプ移送、混合、若しくは攪拌デバイス(例えば半導体業界におけるスラリ、硫酸、リン酸、若しくは他の化学物質用ポンプ若しくはミキサ)に、特に好適である。
【0004】
ベアリングレス・モータの原理のさらなる利点は、電磁回転駆動装置の回転子であり、ポンプの回転子でもある、一体型回転子としての回転子の設計である。ここでの利点は、非接触の磁気ベアリングに加えて、非常に小型で省スペースの設計である。
【0005】
加えて、ベアリングレス・モータの原理により、例えば、回転子が固定子から非常に簡単に分離できる、遠心ポンプの設計も可能である。これは、非常に大きな利点である。というのは、例えば、このようにして、回転子又は回転子を有するポンプ・ユニットを、1回だけ使用する使い捨て部品として設計できるからである。今日、かかる使い捨てでの使用は、非常に高い純度要件のために、以前のプロセスにおいて、取り扱われるべき物質と接触するすべてのそうした構成要素を、入念な手法で、例えば蒸気滅菌を用いて、洗浄及び滅菌する必要があった、プロセスに取って代わることが多い。1回だけ使用するよう設計されている場合、取り扱われるべき物質と接触するそうした構成要素は、まさに1回しか使用されず、次いで、次の使用のために新しい、すなわち未使用の使い捨て部品と交換される。
【0006】
この点では、製薬業界及び生物工学業界を、実例として挙げることができる。ここでは、物質の注意深く穏やかな搬送を必要とする溶液及び懸濁液が、頻繁に生産される。
【0007】
ベアリングレス・モータの原理に従って設計できる、それ自体は電磁回転駆動装置として知られている有益な設計は、例えば、欧州特許第3232549A号に開示されている、テンプル・モータの設計である。本発明もまた、テンプル・モータの設計に関する。
【0008】
テンプル・モータ特有の特徴は、固定子が複数のコイル・コアを備え、コイル・コアのそれぞれが、軸方向にほぼ平行に延在する長手方向の脚部を有していることである。軸方向とは、回転子の所望の回転軸、すなわち回転子が、動作状態で、軸方向に垂直な径方向の平面において、固定子に対して中心且つ傾斜していない位置にあるときの、回転子がその回りを回転する回転軸によって画定される方向を指す。各長手方向脚部は、第1の端部から軸方向に、第2の端部まで延在している。各コイル・コアは、長手方向の脚部に加えて、いずれも長手方向の脚部の第2の端部に設けられ、径方向に内側へ、すなわち長手方向の脚部に対してほぼ直角に延在する、横方向脚部を有する。コイル・コアはそれぞれ、L字形状であり、横方向脚部は、L字の短い脚部をなす。回転子は、この場合、横方向脚部間に配置される。
【0009】
軸方向に延在する複数の長手方向の脚部が、寺院の柱を連想させることが、テンプル・モータの名前の由来である。
【0010】
テンプル・モータは、一設計では、例えば、回転子(内側の回転子)の周りに、円形且つ等距離に配置された、6つのコイル・コアを備える。長手方向脚部の第1の端部は、磁束を伝導するよう機能する、バック・アイアンによって周方向に連結されている。回転子は、磁気的に有効なコア、例えば、永久磁気ディスク又は永久磁気リングを有し、横方向脚部の径方向内側にある端部間に配置され、動作状態で軸方向を中心にして回転し、また回転子は、非接触で磁気的に駆動され、固定子に対して非接触で磁気的に支持される。
【0011】
また、磁気的に有効なコアが、永久磁石のない手法で、すなわち永久磁石を使わずに設計されるような、テンプル・モータの設計も知られている。この場合、回転子の磁気的に有効なコアは、例えば、強磁性の手法で設計され、例えば、鉄、ニッケル鉄、コバルト鉄、シリコン鉄、ミューメタル、又は別の強磁性材料からできている。
【0012】
さらに、回転子の磁気的に有効なコアが、強磁性材料と永久磁性材料との両方を有する設計も可能である。例えば、永久磁石を、強磁性の基体内に配置又は挿入することができる。かかる設計は、例えば、永久磁性材料を節約することにより、大型回転子のコストを削減したい場合に有益である。
【0013】
長手方向脚部は、回転子の磁気駆動及び磁気支持に必要な電磁回転場を生成するために、巻線を担持している。巻線は、例えば、1つの集中巻線が、各長手方向脚部の周りに巻かれるように、すなわち、各集中巻線のコイル軸が、いずれも軸方向に延在するように、設計されている。ここで、集中巻線のコイル軸が、所望の回転軸と平行であり、集中巻線が、回転子又は回転子の磁気的に有効なコアが動作状態で支持される、径方向の平面に配置されないのが、典型的なテンプル・モータである。
【0014】
現在、産業用途で頻繁に使用されている設計では、回転子を駆動及び支持するための、支持及び駆動用固定子を有するモータ・ユニットは、巻線に印加すべき電流を供給する電力コンバータ若しくはインバータ、又は巻線を制御する回路遮断器など、固定子の巻線を制御し、電源供給する、パワー・エレクトロニクス回路を有する、制御ユニットから空間的に切り離されている。この場合、制御ユニットは、通常、モータ・ユニットから空間的に切り離されて配置され、モータ・ケーブル及びセンサ・ケーブルを介して、モータ・ユニットに接続される。この結果、例えばモータ・ユニットと制御ユニットとの間のケーブル配線のために、大きな空間が必要となり、取付けが非常に複雑になる。このケーブル配線も、コスト要因となる。加えて、例えば、モータ・ユニットと制御ユニットとの間のセンサ信号の伝送が、干渉の影響を受けやすくなる可能性がある。
【0015】
制御ユニットを、モータ・ユニットのできるだけ近くに配置する試みもなされている。しかしこれは、モータ・ユニットと制御ユニットとの両方によって大量の熱が発生し、モータ・ユニットと制御ユニットとの間に強い熱的相互作用を引き起こすことなく、熱を放散することが非常に困難なので、重大な熱問題をもたらす。
【0016】
モータ・ユニット内で動作中に発生する熱は、特に鉄損及び銅損に基づく。制御ユニット内で、動作中に熱を発生させるのは、とりわけパワー・エレクトロニクス回路、例えばインバータ又は整流器である。したがって、モータ・ユニットと制御ユニットとが、空間的に互いに近接して配置される場合、動作中に発生する熱が十分適切に放散できないリスクがあり、これは特に、電子部品の過熱をもたらし、したがって電子部品の寿命が大幅に短くなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許第3232549A号
【特許文献2】欧州特許第4084304A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は、テンプル・モータとして設計され、とりわけ小型設計であり、制御ユニットが過熱から保護される、電磁回転駆動装置を提案することである。本発明の目的は、さらに、かかる回転駆動装置を有する遠心ポンプを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的を満たす本発明の主題は、独立特許請求項の特徴によって、特徴づけられる。
【0020】
すなわち、本発明によれば、テンプル・モータとして設計され、モータ・ユニットと制御ユニットとを有する、電磁回転駆動装置が提案され、モータ・ユニットは、回転子のリング状又はディスク状の磁気的に有効なコアを受容する窪みを備える、モータ筐体内に配置され、モータ・ユニットは、支持及び駆動用固定子として設計された固定子を有し、固定子によって、回転子を、動作状態において非接触で、軸方向を画定する所望の回転軸を中心として、磁気的に駆動することができ、また固定子によって、回転子を、固定子に対して非接触で、磁気浮上させることができ、回転子は、軸方向に垂直な径方向の平面に能動的に磁気浮上し、固定子は、複数のコイル・コアを備え、コイル・コアのそれぞれが、第1の端部から第2の端部まで軸方向に延在する、長手方向脚部と、長手方向脚部の第2の端部で、径方向の平面に配置され、長手方向脚部から径方向に延在する、横方向脚部とを有し、コイル・コアは、窪みの周囲に周方向に配置され、少なくとも1つの集中巻線が、各長手方向脚部に設けられ、巻線が、それぞれの長手方向脚部を取り囲み、制御ユニットは、巻線を制御し、電気エネルギーを供給するよう装備されている。熱切離し要素は、軸方向に、モータ・ユニットと制御ユニットとの間に配置され、切離し要素は、モータ・ユニット及び制御ユニットに当接し、これにより、モータ・ユニットから制御ユニットへの直接的な熱の流れ込みを低減する。
【0021】
熱切離し要素は、モータ・ユニットと制御ユニットとを互いに熱的に分離する役割を果たす。このようにして、モータ・ユニットから制御ユニットへの熱の流入が大幅に低減されるため、パワー・エレクトロニクス回路などの制御ユニット内の電子部品が、モータ・ユニットで発生する熱から、極めて良好に保護される。このようにして、制御ユニットの過熱を確実に回避することができる。
【0022】
熱切離し要素は、モータ・ユニットと制御ユニットとの両方から熱を吸収し、吸収した熱を、例えばモータ筐体の表面を介して周囲へ放出する、大きな蓄熱体である。したがって、例えあったとしてもほんの僅かな量の熱しか、モータ・ユニットから制御ユニットへ、又はその逆に、制御ユニットからモータ・ユニットへ流れ込まない。
【0023】
熱切離し要素のおかげで、制御ユニットを、モータ・ユニットの非常に近くに配置できるので、とりわけ、電磁回転駆動装置の小型設計が可能になる。モータ・ユニット及び制御ユニットは、熱切離し要素でしか互いに切り離されておらず、これによりモータ・ユニットから制御ユニットへの、又はその逆に、制御ユニットからモータ・ユニットへの直接的な熱の流れ込みが、少なくとも大幅に低減される。
【0024】
制御ユニットがモータ・ユニットと隣り合って配置される、この小型設計のおかげで、一方ではモータ・ユニット、他方では制御ユニットを、別々の、空間的により離れた場所に設ける必要がないので、必要な空間が減少し、取付けの複雑さが軽減される。これにより、例えばモータ・ユニットと制御ユニットとの間のケーブル配線の、接続の手間も軽減される。
【0025】
加えて、モータ・ユニットと制御ユニットとの間の、例えばセンサ信号の信号経路をかなり短くすることができ、これにより、信号経路が、大幅に干渉に対する影響を受けにくくなる。
【0026】
さらに、本発明による電磁回転駆動装置を有するデバイスの、製造及び取付けの全体的なコストも、小型設計によって削減される。
【0027】
特に、例えば2キロワット(kW)以上の出力を持つ、強力な回転駆動装置の場合、冷却液を流すことができる冷却導管が、熱切離し要素内に配置されることが好ましい。この措置により、熱切離し要素から時間当たりに放熱される量を、増やすことができる。
【0028】
好ましい実施例では、電子部品を備える回路基板が、軸方向に、巻線と横方向脚部との間に配置される。回路基板は、例えば、電子プリント又はPCB(プリント回路基板:Printed Circuit Board)として設計され、回路基板は、例えば、センサ、例えば位置センサ若しくは磁場センサの、制御若しくは動作用電子部品、又はセンサから供給される信号を評価するための構成要素を、収めることができる。
【0029】
制御ユニットが、軸方向に、モータ筐体と隣り合って配置される、別個の制御部筐体を有し、熱切離し要素が、軸方向に、モータ筐体と制御部筐体との間に配置されるような実施例も可能である。制御部筐体は、この場合、その中に制御ユニットの電子部品が配置される、モータ筐体とは別の、別個の筐体である。
【0030】
モータ筐体及び制御部筐体は、互いに直接物理的に接触することなく配置されることが好ましい。熱切離し要素は、モータ筐体と制御部筐体とが互いに直接物理的に接触しないように、軸方向に、モータ・ユニットと制御ユニットとの間に配置される。一方の側部では、モータ筐体が熱切離し要素に当接し、他方の側部では、制御部筐体に当接する。モータ筐体と制御部筐体とは互いに接触せず、モータ筐体と制御部筐体との間に配置された、切離し要素によって互いに切り離される。
【0031】
好ましい実施例によれば、固定子は、軸方向に、コイル・コアと熱切離し要素との間に配置される、熱伝導プレートを備える熱伝導要素を有し、熱伝導プレートは、コイル・コア、又はこれによりすべての長手方向脚部の第1の端部が連結され、磁束を伝導する、バック・アイアンと物理的に接触する。熱伝導プレートは、確実に、コイル・コア又はバック・アイアンと熱切離し要素との間を、極めて良好に熱接触させ、これにより、動作中に発生する熱が、コイル・コア又はバック・アイアンから、非常に効率的に放散される。動作中に固定子内で発生する熱は特に、集中巻線、すなわち、例えば銅損によって発生する熱、及びコイル・コア又はバック・アイアンの鉄損によって発生する熱である。
【0032】
熱伝導要素が、熱伝導プレートに連結された複数の伝導歯を有し、各伝導歯が、いずれも軸方向に延在し、巻線によって取り囲まれた内部空間において、巻線に対して径方向内側に配置されることは、さらに有益な措置である。伝導歯は、この場合、巻線によって発生する熱及びコイル・コアで発生する熱を、伝導歯ができるだけ吸収、放散できるように、径方向に、巻線のできるだけ近くに配置される。熱伝導要素、すなわち特に熱伝導プレート及び伝導歯は、優れた熱伝導率を持つ材料、例えば金属材料でできている。熱伝導要素の材料は、アルミニウムであることが好ましい。
【0033】
各伝導歯が、さらに、長手方向脚部のうちの1つ又は巻線のうちの1つに、径方向に、接近して隣り合うよう配置されることが好ましい。
【0034】
伝導歯の数は、例えば、コイル・コアの数と等しい。きっちり1つの伝導歯が、径方向に、各コイル・コア及び各コイル・コア上に配置された巻線と、隣り合って配置されることが好ましい。
【0035】
周方向に見て、2つの隣り合う伝導歯間のいずれにも、窪みが設けられ、窪みが、軸方向に、長手方向脚部の第1の端部の領域内に延在することは、さらに好ましい措置である。伝導歯間のこれらの窪みのおかげで、巻線の電流の漂遊場に起因する渦電流損失が、可能な限り低減される。
【0036】
さらに好ましい実施例によれば、制御ユニットは、モータ筐体内に配置される。したがって、この実施例では、別個の制御部筐体は設けられず、制御ユニットも、モータ筐体内に配置される。
【0037】
この実施例では、熱切離し要素が、モータ筐体に統合された一部であることが好ましい措置である。熱切離し要素は、この目的のために、モータ筐体と一体に設計されることが好ましい。この措置のおかげで、熱抵抗を、大幅に低減することができる。
【0038】
モータ筐体はさらに、実質的に円筒状に設計され、巻線によって取り囲まれた内部空間で、巻線に対して径方向内側に配置される、内部カップを有することが好ましい。この内部カップは、巻線によって発生する熱、例えば銅損によって生じる熱ばかりでなく、コイル・コア及びバック・アイアンで発生する熱、例えば鉄損によって発生する熱も、非常に効率的に吸収し、次いでモータ筐体の外側を通して、熱を周囲に放出することができる。
【0039】
内部カップは、軸方向に、巻線の全長にわたって延在することが好ましい。
【0040】
本発明ではさらに、液体を搬送する遠心ポンプが提案され、遠心ポンプは、本発明に従って設計された電磁回転駆動装置ばかりでなく、磁気的に有効なコアを備え、モータ筐体の窪み内に配置される、回転子も有し、回転子は、遠心ポンプの回転子として設計され、電磁回転駆動装置の回転子は、遠心ポンプの回転子として設計される。
【0041】
遠心ポンプは、搬送されるべき液体用ポンプ入口及びポンプ出口を有する、ポンプ筐体を有し、回転子は、ポンプ筐体内に配置され、液体を搬送するための複数のベーンを有することが好ましい。ポンプ筐体は、回転子の磁気的に有効なコアが、横方向脚部によって取り囲まれるように、モータ筐体の窪み内に挿入できるよう設計されている。
【0042】
本発明のさらに有利な措置及び実施例は、従属請求項から明らかである。
【0043】
以下において、本発明を、実施例を参照しながら、また図面を参照しながら、より詳細に説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明による電磁回転駆動装置の、第1の実施例の分解斜視図である。
図2】部分断面を示す第1の実施例の固定子、及び回転子の磁気的に有効なコアの、斜視図である。
図3】第1の実施例の、熱伝導要素の斜視図である。
図4】第1の実施例の第1の変形例の、軸方向の断面を示す、概略断面図である。
図5】第1の変形例の熱切離し要素の、軸方向に垂直な断面を示す、断面図である。
図6】第1の実施例の第2の変形例の、軸方向の断面を示す、概略断面図である。
図7】本発明による電磁回転駆動装置の第2の実施例の、分解斜視図である。
図8】第2の実施例の、軸方向の断面を示す、概略断面図である。
図9】第2の実施例の熱切離し要素の、軸方向に垂直な断面を示す、断面図である。
図10】第2の実施例の変形例の、軸方向の断面を示す、概略断面図である。
図11】ポンプ・ユニットが固定子とは別々に示されている、本発明による遠心ポンプの一実施例の斜視図である。
図12図11の実施例の、軸方向の断面を示す、概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、全体を参照符号1で示す、本発明による電磁回転駆動装置の第1の実施例の分解斜視面を示している。電磁回転駆動装置1は、モータ筐体20内に配置された、モータ・ユニット30と、モータ・ユニット30を制御し、モータ・ユニットに電気エネルギーを供給する、制御ユニット40とを有する。制御ユニット40は、第1の実施例では、中に制御ユニット40の様々な電子又は電気部品42が配置される、別個の、すなわちモータ筐体20とは別の制御部筐体41を有する。制御部筐体41とモータ筐体20との間に、熱切離し要素8a又は8bが設けられ、熱切離し要素は、一方がモータ・ユニット30及びモータ筐体20に、他方が制御ユニット40に当接する。熱切離し要素8a、8bは、モータ・ユニット30から制御ユニット40への、又はその逆に、制御ユニット40からモータ・ユニット30への、直接的な熱の流れ込みを低減又は防止する。熱切離し要素8a、8bは、モータ筐体20と制御部筐体41とが互いに、直接物理的に接触せず、熱切離し要素8a、8bによって互いに切り離されるよう設計される。
【0046】
モータ筐体20及び制御部筐体41は、金属材料でできていることが好ましい。とりわけモータ筐体20及び制御部筐体41に好適な材料は、アルミニウムであり、特にモータ筐体20及び制御部筐体41の外部に露出した側面は、例えば耐薬品性を高めるために、塗装するよう設計することができる。
【0047】
熱切離し要素8a、8bの設計に関して2つの可能性があり、下記でより詳細に説明することにする。熱切離し要素8aは、第1の実施例の第1の変形例によれば、それを通して冷却液を流すことができる、能動的冷却要素として設計される。図4は、熱切離し要素8aを備えた第1の実施例のこの第1の変形例を、概略断面図で示している。熱切離し要素8bは、第1の実施例の第2の変形例によれば、それを通って冷却液が流れない、受動的熱切離し要素8bとして設計される。受動的切離し要素8bであるこの実施例では、切離し要素8bは、制御ユニット40からモータ・ユニット30を熱的に分離し、これにより、制御ユニット40からモータ・ユニット30への熱流、又はその逆に、モータ・ユニット30から制御ユニット40への熱流は、多くても僅かである。動作中に発生する熱は、主として対流によって、例えばモータ筐体20の表面を通して、周囲に放散される。図6は、熱切離し要素8bを備えた第1の実施例のこの第2の変形例を、概略断面図で示している。
【0048】
図1の図は、熱切離し要素8a、8bが、能動的熱切離し要素8a(図4参照)又は受動的熱切離し要素8b(図6参照)のいずれかとして設計されるものと理解されたい。図1は、したがって、第1の実施例の第1及び第2の変形例を示している。
【0049】
モータ筐体20は、モータ筐体の一方の端面に窪み210があり、窪みは、回転子3の磁気的に有効なコア31(図2)を受容するよう設計されている。
【0050】
窪み210は、別個の回転子カップ21に設けられることが好ましい(図4も参照)。回転子カップ21は、モータ筐体20のカバーとして設計されており、モータ筐体20を、軸方向の端面である、モータ筐体の一方の軸方向端部で閉じる。回転子カップ21は、モータ筐体20にしっかりと連結され、例えば、ネジ止め若しくは接着されるか、又はOリングの有無にかかわらず、圧着により、モータ筐体20に連結される。回転子カップ21は、モータ筐体20を、密閉封止するように塞ぐことが好ましい。別個の回転子カップ21は、プラスチック、例えばポリプロピレンでできていることが好ましい。
【0051】
電磁回転駆動装置1は、テンプル・モータとして設計されている。モータ・ユニット30は、固定子2を有する。図2はまた、理解をより深めるために、固定子2の斜視図を示しており、図2では、モータ筐体20は示されておらず、固定子2の一部分が切り出されている。
【0052】
固定子2は、複数のコイル・コア25、ここでは6つのコイル・コア25を備え、コイル・コアのそれぞれが、テンプル・モータである実施例に従って、軸方向Aに延在する長手方向脚部26と、長手方向脚部26に垂直に配置され、径方向に延在し、端面211によって画定されている、横方向脚部27とを有する。コイル・コア25は、端面211が窪み210を取り囲むように、円形の線上に等距離に配置され、窪みに、磁気的に有効なコア31を備えた回転子3を挿入することができる。きっちり1つの集中巻線61が、各長手方向脚部26に設けられ、それぞれの長手方向脚部26を取り囲んでいる。
【0053】
他の実施例では、複数の集中巻線61、例えば2つの集中巻線がいずれも、各長手方向脚部26に設けられてもよく、集中巻線のそれぞれが、それぞれの長手方向脚部26を取り囲み、軸方向Aに互いに隣り合って配置される。
【0054】
長手方向脚部26はそれぞれ、棒状又はほぼ棒状に設計されている。長手方向脚部26は、特に、例えば欧州特許第4084304A1号の図3又は図5に示されているように、設計することもできる。
【0055】
回転子3は、固定子2に対して非接触で、磁気的に浮上することができる。回転子3はさらに、所望の回転軸を中心にして回転するために固定子2によって非接触で磁気的に駆動されることができる。ここで所望の回転軸とは、回転子3の磁気的に有効なコア31について図2に示しているように、回転子3が動作状態で、固定子2に対して中心にあり、且つ傾斜していない位置にあるときに、それを中心にして回転子3が回転する軸を指す。この所望の回転軸は、軸方向Aを画定する。軸方向Aを画定する所望の回転軸は、通常、固定子2の中心軸に相当する。
【0056】
以下において、径方向とは、軸方向Aに対して垂直な方向を指す。
【0057】
6つのコイル・コア25の数は、単に一実例と理解すべきであることを理解されたい。もちろん、固定子2が6つ未満、例えば5つのコイル・コア25を備える実施例も、又は固定子2が6つを超える、例えば7つ若しくは8つのコイル・コア25を備える実施例も、可能である。
【0058】
回転子3は、リング状又はディスク状に設計された、磁気的に有効なコア31を有する。磁気的に有効なコア31は、図2の図では、リングとして設計され、磁気中心面を画定する。磁気的に有効なコア31は、別法として、ディスクとして設計することもできる。原則として、ディスク状又はリング状の磁気的に有効なコア31において、磁気中心面は、軸方向Aに垂直な、回転子3の磁気的に有効なコア31の幾何学的中心面である。磁気的に有効なコア31は、動作状態では、軸方向Aに対して垂直な径方向の平面に浮上している。
【0059】
径方向の平面は、動作状態において、回転子3の磁気的に有効なコア31が、固定子2の端面211間に能動的に磁気浮上する平面である。回転子3が傾斜しておらず、軸方向Aに偏っていない場合、磁気中心面は、径方向の平面に位置する。径方向の平面は、z軸が軸方向Aに延びる直交座標系の、x-y平面を画定する。
【0060】
磁気的に有効なコア31又は回転子3の径方向位置とは、径方向の平面における回転子3の位置を意味する。
【0061】
本発明を理解するのには十分なので、図面の、図2図4図6図8、及び図10にはいずれも、回転子3の磁気的に有効なコア31しか示していない。回転子3は、もちろん、プラスチック、金属、合金、又はセラミック若しくはセラミック材料でできていることが好ましい、ジャケット又は封入物などのさらなる構成要素を、有することができることを理解されたい。回転子3は、さらに、液体を混合、攪拌、若しくはポンプ移送するためのベーン、又は他の構成要素を有してもよい。
【0062】
固定子2は、固定子2を完全に収容するモータ筐体20(図1参照)内に配置され、これにより、固定子2全体がモータ筐体20の内部に配置される。理解を容易にするために、モータ筐体20内に配置された固定子2の構成要素が認識されることができるように、モータ筐体20は、図2には示していない。
【0063】
モータ筐体20は、固定子2を完全に封入する、密閉封止型モータ筐体20として設計されることが特に好ましい。モータ筐体20は、熱伝導性の鋳造成形材料、例えばエポキシ樹脂又はポリウレタンで充填され、これにより、固定子2及び場合によってはモータ筐体20の内部に配置されるさらなる構成要素が、鋳造成形材料によって取り囲まれていることが好ましい。その結果、全体的な熱抵抗が減少し、振動が減衰する。
【0064】
回転子3が、モータ筐体20の窪み210に挿入されると、回転子3、及び特に回転子3の磁気的に有効なコア31は、径方向外側に配置された、固定子2のコイル・コア25の横方向脚部27に取り囲まれる。したがって、横方向脚部27は、複数の固定子の突極(pronounced stator pole)、ここでは6つの固定子極を形成する。コイル・コア25の長手方向脚部26はそれぞれ、軸方向Aに、図(図2)では下端である第1の端部から、図では上端である第2の端部まで延在する。横方向脚部27は、長手方向脚部26の上端、且つ径方向の平面内に配置される。各横方向脚部27は、径方向に、回転子3に向かって延在する。
【0065】
回転子3の磁気的に有効なコア31が、動作中に、所望の位置にあるとき、磁気的に有効なコア31は、横方向脚部27の端面211間の中心に位置し、したがって径方向の平面内に配置されている横方向脚部27はまた、磁気中心平面内にも位置している。集中巻線61は、図では、径方向の平面より下方に配置され、集中巻線のコイル軸がそれぞれ軸方向Aに延在するよう、一列に整列している。
【0066】
長手方向脚部26のすべての第1の端部、すなわち、図では下端は、バック・アイアン22によって互いに連結されている。バック・アイアン22は、リング状に設計されていることが好ましい。バック・アイアン22が、長手方向脚部26のすべての第1の端部に沿って、径方向内側に延在する実施例が可能である。しかし、バック・アイアン22がバック・アイアン22の周縁に沿って複数の窪みを持ち、窪みのそれぞれが、第1の端部のうちの1つを受容することも可能である。バック・アイアン22はまた、他の実施例では、複数のリング状区間を有することもでき、リング状区間のそれぞれがいずれも、周方向に隣り合う2つのコイル・コア25間の、第1の端部の領域に配置される。
【0067】
回転子3の磁気駆動及び磁気浮上に必要な電磁回転場を生成するために、コイル・コア25の長手方向脚部26は、集中巻線61として設計された巻線61を担持し、第1の実施例では、ちょうど1つの集中巻線61が、各長手方向脚部26の周りに配置される。動作状態において、これらの集中巻線61によって、そうした電磁回転場が生成され、集中巻線61は、回転子3にトルクをもたらし、また回転子3の径方向位置、すなわち軸方向Aに垂直な径方向の平面における回転子3の位置を、能動的に制御又は調節できるように、回転子3に任意の調整可能な横方向の力を、径方向に加えることができる。
【0068】
回転子3の「磁気的に有効なコア31」とは、トルク生成及び磁気浮上力生成のために、固定子2と磁気的に相互作用する回転子3の領域を指す。
【0069】
既に言及したように、この実施例では、磁気的に有効なコア31は、リング状に設計されている。磁気的に有効なコア31はさらに、永久磁石の手法で設計されている。磁気的に有効なコア31は、この目的のために、少なくとも1つの永久磁石を有することができるが、複数の永久磁石を有することもでき、又はここで説明している第1の実施例と同様に、磁気的に有効なコア31が永久磁石となるように、完全に永久磁性材料で構成することもできる。磁気的に有効なコア31は、例えば、径方向に磁化されている。
【0070】
磁気的に硬い、すなわち保磁力が大きい、そうした強磁性材料又はフェリ磁性材料は、通常、永久磁石と呼ばれる。保磁力とは、材料を消磁するのに必要な磁場の強さである。永久磁石は、この適用例の枠組み内では、10,000A/m超まで達する保磁力、より正確には磁気分極の保磁力を持つ物質又は材料と理解されたい。
【0071】
また、磁気的に有効なコア31が、永久磁石のない手法で、すなわち永久磁石を使わずに設計されるような実施例も可能である。回転子3は、この場合、例えば磁気抵抗回転子として設計される。回転子3の磁気的に有効なコア31は、この場合、例えば軟磁性材料からなる。磁気的に有効なコア31に好適な軟磁性材料は、例えば強磁性材料又はフェリ磁性材料、すなわち、特に鉄、ニッケル鉄、コバルト鉄、シリコン鉄、ミューメタルである。
【0072】
さらに、回転子3の磁気的に有効なコア31が、強磁性材料と永久磁性材料との両方を有する実施例も可能である。例えば、永久磁石を、強磁性の基体内に配置又は挿入することができる。かかる実施例は、例えば、永久磁性材料を節約することによって、大型回転子のコストを削減したい場合に有益である。
【0073】
回転子3が、籠型回転子の原理に従って設計される実施例も可能である。
【0074】
固定子2の、リング状バック・アイアン22とコイル・コア25との両方はそれぞれ、磁束を伝導する磁束伝導要素として機能するので、軟磁性材料でできている。
【0075】
コイル・コア25及びバック・アイアン22に好適な軟磁性材料は、例えば、強磁性材料又はフェリ磁性材料、すなわち、特に鉄、ニッケル鉄、コバルト鉄、シリコン鉄、又はミューメタルである。この場合、固定子2については、コイル・コア25及びバック・アイアン22が、板金で設計されている、すなわち、複数枚の積み重ねられた薄い板金要素からなる、固定子のシート積層体として設計されることが好ましい。
【0076】
コイル・コア25及びバック・アイアン22は、さらに、前述の材料の、プレスされ、続いて焼結された粒で作ることが可能である。金属粒は、金属粒が互いに少なくとも部分的に電気的に絶縁されるように、プラスチック母材に埋め込まれることが好ましく、これにより、渦電流損失を最小限に抑えることができる。したがって、電気的に絶縁され、圧縮された金属粒からなる軟磁性複合材料も、固定子に好適である。特に、SMC(軟磁性複合材料:Soft Magnetic Composite)とも称されるこうした軟磁性複合材料は、電気絶縁層で被覆された鉄粉粒で構成することができる。このSMCは、次いで、粉末冶金プロセスで所望の形状に成形される。
【0077】
回転子3の磁気的に有効なコア31は、電磁回転駆動装置1の動作中に、上記で説明した、回転子3を固定子2に対して、非接触で磁気的に駆動でき、非接触で磁気的に浮上させることができるベアリングレス・モータの原理に従って、固定子2と相互作用する。固定子2は、この目的のために、支持及び駆動用固定子として設計されており、これにより回転子3を、動作状態で、固定子2に対して、非接触で所望の回転軸を中心にして磁気的に駆動することができ、すなわち回転させることができ、また非接触で磁気的に浮上させることができる。この場合、回転子3の3自由度、すなわち、回転子3の径方向の平面における位置及び回転を、能動的に調節することができる。回転子3の磁気的に有効なコア31は、軸方向Aにおける、径方向の平面からのコア31の軸方向の偏りに関して、磁気抵抗力によって受動的に磁気安定化される。すなわち、コア31の軸方向の偏りを制御することはできない。回転子3の磁気的に有効なコア31はまた、残りの2自由度、すなわち、所望の回転軸に垂直な径方向の平面に対する傾斜に関しても同様に、受動的に磁気安定化される。回転子3は、したがって、磁気的に有効なコア31とコイル・コア25との相互作用により、軸方向Aにおいて、また傾斜に抗して(3自由度の全体)、受動的に磁気浮上するか、又は受動的に磁気安定化され、且つ径方向の平面に(2自由度)、能動的に磁気浮上する。
【0078】
能動的な磁気浮上は、一般的にそうであるように、この出願の枠組みにおいて、例えば集中巻線61によって生成される電磁回転場によって、能動的に制御又は調節できるものとも呼ばれる。受動的磁気浮上又は受動的磁気安定化は、制御又は調節できないものである。受動的磁気浮上又は受動的磁気安定化は、例えば、回転子が回転子の所望の位置から偏った場合、例えば、軸方向Aにずれているか若しくは偏っている場合、又は傾斜している場合に、回転子3を再び回転子の所望の位置に戻す、磁気抵抗力に基づく。
【0079】
径方向の浮上又は径方向における浮上とは、回転子3の径方向の位置を安定させることができる回転子3の浮上、すなわち、径方向の平面に、したがって回転子3の径方向の位置に回転子3を浮上させるような、浮上を指す。
【0080】
軸方向の浮上又は軸方向における浮上、及び軸方向の安定化又は軸方向における安定化とは、それぞれ、一方ではこれによって、回転子3の位置が軸方向Aに安定化され、他方ではこれによって、回転子3が傾斜に抗して安定化される、回転子3の浮上又は安定化を指す。かかる傾斜は、2自由度を表し、回転子3の瞬間的な回転軸が、もはや軸方向Aに正確には向いておらず、所望の回転軸とゼロではない角度をなす、偏りを示す。したがって磁気中心平面は、傾斜している場合、もはや径方向の平面にないか、又は径方向の平面に平行ではなく、磁気中心平面は、径方向の平面とゼロではない角度をなす。
【0081】
ベアリングレス・モータでは、モータの磁気浮上及び磁気駆動は、従来の磁気ベアリングとは対照的に、電磁回転場によって実現される。ベアリングレス・モータでは、磁気駆動及び磁気浮上の機能は、典型的には、通常は駆動場及び制御場と称される、2つの回転磁場の重ね合わせによって生成される。固定子の巻線によって生成されるこれら2つの回転場は、通常、1だけ異なる極対番号を持つ。例えば、駆動場が極対番号pを持つ場合、制御場は極対番号p+1又はp-1を持つ。この場合、径方向の平面での磁気的に有効なコア31に作用する接線力が、駆動場によって生成され、トルクを引き起こし、軸方向Aを中心とする回転を引き起こす。駆動場と制御場との重ね合わせにより、径方向の平面で磁気的に有効なコア31の位置を調節できる、任意に調整可能な横方向の力を、磁気的に有効なコア31に対して、径方向の平面で発生させることも可能である。したがって、集中巻線61によって生成される電磁束を、回転を駆動することだけを行う(電)磁束と、磁気浮上を実現するだけの(電)磁束とに分割することは不可能である。
【0082】
駆動及び制御場を生成するために、一方では、2種類の相異なる巻線システムを使用すること、すなわち、一方が駆動場を生成し、もう一方が制御場を生成することが可能である。駆動場を生成するためのコイルは、この場合、通常、駆動コイルと呼ばれ、制御場を生成するためのコイルは、制御コイルと呼ばれる。
【0083】
したがって、例えば、軸方向Aに互いに隣り合って配置される2つの集中巻線をいずれも、各コイル・コア25上に設けることができる。一方の巻線は、駆動コイルとして使用され、駆動コイルと隣り合う他方の集中巻線は、制御コイルとして使用される。これらのコイルに印加される電流は、この場合、それぞれ、駆動電流及び制御電流と呼ばれる。電磁回転場である駆動場は、この場合、すべての駆動コイル全体によって生成され、一方、やはり電磁回転場であり、駆動場に重ね合わされる制御場は、制御コイル全体によって生成される。この場合、駆動場と制御場との重ね合わせにより、回転子3に対する、回転を駆動するためのトルクを生み出す接線力ばかりでなく、径方向の平面における磁気的に有効なコア31の位置を能動的に調節できる、径方向の平面で任意に調整可能な横方向の力も、生成することができる。
【0084】
しかし、駆動及び浮上機能が、1つの単一巻線システムだけで生成され、したがって、駆動コイルと制御コイルとの区別がない実施例も可能である。かかる設計が、第1の実施例で提供される。図2に示しているように、きっちり1つの集中巻線61がいずれも、各コイル・コア25上に設けられ、駆動場と制御場との両方が、集中巻線61全体で生成される。これは、いずれも制御ユニット40によって決定された駆動及び制御電流の値が、数学的に、すなわち、例えばソフトウェアによって、加算又は重ね合わされ、結果として得られた総電流が、それぞれの集中巻線61に印加されるようにすることで、実現することができる。この場合、もちろん、制御コイルと駆動コイルとを区別することは、もはや不可能である。この場合、ただ1つの巻線システムしか存在せず、巻線システムの集中巻線61に、数学的に決定された駆動電流と制御電流との合計が印加される。
【0085】
第1の実施例では、あまり詳細には示していない電子部品を備えた、第1の回路基板71(図2)も設けられる。回路基板71は、電子プリント又はPCB(プリント回路基板)として設計されることが好ましい。例えば、センサ(図示せず)の制御及び/又はセンサによって判定された測定信号の評価に使用される構成要素を、回路基板71上に設けてもよい。かかるセンサは、例えば、回転子3の現在位置を判定する、位置センサを有する。回路基板71及び回路基板上に設けられた電子部品は、それぞれ、制御ユニット40に信号接続される。
【0086】
回路基板71は、ほぼリング状に設計され、径方向の平面に平行に配置される。リング状の回路基板71は、コイル・コア25に対して径方向内側に配置されることが好ましく、回路基板71は、図2に見られるように、隣り合うコイル・コア25の長手方向脚部26間の間隙内に、延在することもできる。
【0087】
回路基板71は、軸方向Aに関して、巻線61bとコイル・コア25の横方向脚部27との間に配置されている。回路基板71は、したがって、図2の図では、回転子3の磁気的に有効なコア31の周囲に配置された、横方向脚部27の下方に、横方向脚部27と隣り合って配置される。
【0088】
制御ユニット40は、巻線61を制御し、巻線に電気エネルギーを供給するのに必要な、電気又は電子部品42を有する。これらは、特に、巻線61に供給する電圧又は電流を供給する整流器又はインバータ、整流器用の回路遮断器420(図4)、フィルタ部品421、例えば直流を平滑化するコンデンサ又はインダクタ、巻線61を制御する、巻線61に供給される電流を切り替える回路遮断器422、非接触での磁気浮上及び非接触での磁気駆動を制御する、調節及び制御用部品、センサ信号評価用部品である。巻線61に電源電圧を供給する整流器は、歪無効電力を低減し、これにより整流器の力率を改善するために、力率改善(power factor correction)フィルタ(PFC:Power Factor Correction又はPower Factor Compensation、力率改善又は力率補償)を備えるよう設計されることが好ましい。
【0089】
本発明による回転駆動装置の第1の実施例では、固定子2は、動作中に巻線61、コイル・コア25、及びバック・アイアン22で発生する熱を放散するための、熱伝導要素9をさらに有する。この熱は、特に巻線61の銅損、並びにコイル・コア25及びバック・アイアン22の鉄損に基づく。熱伝導要素9は、巻線61、コイル・コア25、及びバック・アイアン22で発生した熱を、可能な限り放散する役割を果たす。図3は、理解をより深めるために、やはり熱伝導要素9の斜視図を示している。
【0090】
熱伝導要素9は、第1の実施例では、軸方向Aに、コイル・コア25と熱切離し要素8a、8bとの間に配置される、熱伝導プレート91を有する。熱伝導プレート91は、一方が熱切離し要素8a、8bと、他方がコイル・コア25又はバック・アイアン22と、極めて良好に熱接触し、好ましくは物理的に接触している。熱伝導プレート91は、図に従って、すべてのコイル・コア25の第1の下端と物理的に接触し、またバック・アイアン22と物理的に接触していることが好ましい。熱伝導プレート91は、バック・アイアンからの熱を可能な限り吸収できるようにするために、全周にわたってバック・アイアン22に当接していることが、とりわけ好ましい。コイル・コア25又はバック・アイアン22と熱伝導プレート91との間の熱接触をさらに改善するために、熱伝導プレート91とコイル・コア25又はバック・アイアン22との間に熱伝導性ペースト、例えば放熱グリスを塗布することが可能であり、熱伝導性ペーストは、隣接する構成要素を互いに、とりわけ熱的に良好に結合する。
【0091】
熱伝導要素9は、複数の、ここでは6つの伝導歯92をさらに有し、伝導歯のそれぞれが、熱伝導プレート91に連結されている。各伝導歯92はいずれも、とりわけ図2に見られるように、熱伝導プレート91から軸方向Aに延在し、巻線61によって取り囲まれた内部空間で、巻線61に対して径方向内側に配置される。伝導歯92の数は、コイル・コア25の数に等しく、きっちり1つの伝導歯92が、各コイル・コア25の前に配置されることが好ましい。伝導歯92は、径方向に、コイル・コア25の長手方向脚部26又は長手方向脚部上に配置された巻線61のできるだけ近くに配置され、これにより伝導歯92は、巻線61及びコイル・コア25によって発生する熱を、とりわけ良好に吸収及び放散することができる。
【0092】
熱伝導要素9はさらに、熱伝導要素9の熱抵抗を最小限に抑えるために、一体に設計されることが好ましい。熱伝導要素は、優れた熱伝導率を持つ材料、例えば金属材料でできている。熱伝導要素9の材料は、アルミニウムであることが好ましい。
【0093】
周方向に見て、2つの隣り合う伝導歯9間のいずれにも、刻み目93が設けられ、刻み目が、軸方向に、長手方向脚部26の第1の端部の領域内に、又は熱伝導プレート91まで延在していることは、さらに好ましい措置である。渦電流又は渦電流による損失は、これらの刻み目93によって最小限に抑えられる。巻線61を流れる電流の漂遊場によって、かかる渦電流を、熱伝導要素9に誘導することができる。刻み目93は、熱伝導要素9での渦電流損失の大幅な低減をもたらす。
【0094】
伝導歯92と伝導歯間にある切欠き93の、周方向の配置は、各伝導歯92が、長手方向脚部26にちょうど向かい合って位置し、各刻み目93が、2つの隣り合うコイル・コア25間に配置されるようになっている。
【0095】
以下、図4を参照しながら、第1の実施例の第1の変形例、すなわち熱切離し要素8aが能動的冷却要素として設計される変形例を、より詳細に説明する。図4は、第1の実施例のこの第1の変形例を、軸方向Aの断面における、概略断面図で示している。
【0096】
図4で明確に認識できるように、モータ筐体20と、モータ筐体20とは別の、制御ユニット40の制御部筐体41とは、互いに物理的に直接接触しておらず、軸方向Aに、モータ筐体20と制御部筐体41との間に配置された、熱切離し要素8aによって互いに切り離されている。熱切離し要素8aは、一方の側部では、モータ筐体20に当接している、すなわち、モータ筐体20と物理的に接触している。熱切離し要素8aは、他方の側部では、制御部筐体41に当接している、すなわち、制御部筐体41と物理的に接触している。
【0097】
図5は、理解をより深めるために、軸方向Aに垂直な断面における、第1の変形例の熱切離し要素8aの断面図を示している。熱切離し要素8aは、プレート状に設計され、実質的に円板の形状である。少なくとも1つの通路85が熱切離し要素8a内に設けられ、通路は、熱切離し要素8aを軸方向に完全に貫いて延在する。図4に示しているように、いくつかのかかる通路85が設けられることが好ましい。通路85は、制御ユニット40からの信号接続、例えば巻線61に電気エネルギーを供給するための電線を、熱切離し要素8aを通してモータ・ユニット30に渡すことができるように機能する。
【0098】
切離し要素8aは、金属材料、例えば鋼又はステンレス鋼でできていることが好ましい。さらに、熱切離し要素8aの外面、すなわち環境と接触する表面に、塗装(図示せず)を施すことができる。
【0099】
特に図4が示しているように、熱切離し要素8aを、バック・アイアン22、巻線61、コイル・コア25、及びモータ筐体20へ確実に、可能な限り最適に熱接続させるために、熱伝導要素9の熱伝導プレート91とモータ筐体20との両方が、熱切離し要素8aに当接している。そうすることで、動作中に固定子2で、主に鉄損及び銅損に起因して発生する熱を、効率的且つ確実に、熱切離し要素8aへ放散することが可能である。
【0100】
熱切離し要素8aは、制御ユニット40と熱切離し要素8aとの間を確実に、極めて良好に熱接触させるために、モータ・ユニット30とは反対側に向く側面で、制御ユニット40の制御部筐体41に当接している。制御部筐体41は、いくつかの開口部43を備え(図1参照)、信号接続(図示せず)、例えば巻線61に電気エネルギーを供給するための電線を、制御ユニット40から開口部を通して、熱切離し要素8aの通路85を通過させ、モータ・ユニット30に渡すことができる。
【0101】
制御部筐体41は、熱切離し要素8aとは反対側に向く、制御部筐体の軸方向の端面で、制御部筐体41を閉じる、好ましくは密閉封止する、制御部筐体カバー412をさらに有する。制御部筐体カバー412は、金属材料、例えばアルミニウムでできていることが好ましい。制御部筐体カバー412は、1つ又は複数の貫通連結部(図示せず)を備えるよう設計されており、外部から貫通連結部を通して、電気エネルギーを供給するための電源ケーブル、又は電磁回転駆動装置1を制御するための、且つ/若しくはデータ交換するためのインタフェース・ケーブルを、制御部筐体41内へ渡すことができる。
【0102】
制御ユニット40は、制御ユニット40の電子部品42が配置される少なくとも1つの、好ましくは複数の回路基板44、45を有する。各回路基板44、45は、電子プリント又はPCB(プリント回路基板)として設計されることが好ましい。制御ユニット40は、ここで説明している実施例では、互いに平行に、軸方向Aに互いにずらして配置された、コントローラ回路基板44及び電源回路基板45を有する。
【0103】
電源回路基板45は、特に巻線61に電気エネルギーを供給できる、直流電圧の供給を供給する、すべてのそうした電子部品42を有する。電磁回転駆動装置1は、典型的には、外部の交流源(図示せず)、例えば3相の、工業用3相交流源、又は200~240ボルトの交流電圧の、一般的な単相交流源に接続されるので、整流器又はインバータが、電源回路基板45に設けられ、これにより交流電圧が直流電圧に変換され、次いで、例えば巻線61を制御するための中間回路電圧として使用される。インバータは、整流用の回路遮断器420及びPFC回路を有する。電源回路基板45上には、フィルタ部品421、例えば直流を平滑化するためのコンデンサ又はインダクタが、さらに設けられる。
【0104】
駆動及び浮上機能を実現するために、巻線61を制御するのに必要なそうした電子部品は、コントローラ回路基板44上に設けられる。これらは、特に、巻線61を制御するための回路遮断器422である。回路遮断器422に必要な中間回路電圧は、電源回路基板45から供給される。さらに、非接触磁気浮上及び非接触磁気駆動を制御するための、調節及び制御用部品も、オプションの、センサ信号の評価用部品(図示せず)と同様に、コントローラ回路基板44上に設けられる。
【0105】
回路遮断器420、422は、スイッチング損失を可能な限り小さく保つために、炭化ケイ素でできていることが好ましい。
【0106】
回路基板は、図4に示しているように、回路基板44、45と制御部筐体41との間で、確実に、可能な限り最適に熱接続させるために、回路基板44、45が制御部筐体41と物理的に接触するように、制御部筐体41に直接的に配置される。主な熱源である回路遮断器420、422は、回路基板44、45の、制御部筐体41に当接する領域に配置される。回路基板44、45の、制御部筐体41に当接する領域は、さらにより良好な熱結合を実現させるために、任意選択で、銅表面及び/又は熱パッドを備えるように、設計することができる。
【0107】
モータ・ユニット30と、さらに制御ユニット40との両方に関して、個々の構成要素間の熱接続及び熱切離し要素8aへの熱接続は、設計に応じて、互いに隣り合う構成要素間に熱伝導性ペースト、例えば放熱グリスを塗布することによって、さらに改善することができる。
【0108】
能動的冷却要素である熱切離し要素8aの設計では、少なくとも1本の冷却導管81(図5)が熱切離し要素8a内に配置され、冷却液を、冷却導管を通して流すことができ、熱切離し要素8aからの熱を放散する。冷却導管81は、第1の冷却連結部811から熱切離し要素8aの内部を通って第2の冷却連結部812まで連続する導管として延在し、冷却連結部を通して冷却液を、冷却導管81に取り込むことができるか、又は冷却導管81から排出することができる。冷却連結部811、812はそれぞれ、冷却液を、切離し要素8aの外部から、例えば第1の冷却連結部811を用いて、冷却導管81内に供給でき、また切離し要素8aから、第2の冷却連結部812を用いて、再び排出できるように、熱切離し要素8aの外周面に設けられている。
【0109】
冷却導管81は、多量の熱をできるだけ効率的に放散するために、熱切離し要素8aのできるだけ多くの領域を通過するように設計されている。例示的な性質を持つ、図5に示している冷却導管81の実施例では、冷却導管は、いくつかの真っ直ぐな穴813を有し、穴は、連続した冷却導管81を形成するために、互いに補完するように配置、設計され、2つの冷却連結部811、812を互いに連結する。穴813のそれぞれは、熱切離し要素8aの外周面から、熱切離し要素8aの内部に向かって穿孔される。その後、冷却連結部811、812で始まる2個を除くすべての穴813は、それぞれ外周面にある端部で、いずれも例えばネジ814及びシール815を用いて閉じられ、これにより冷却液を、2個の冷却連結部811及び812を通して、単に冷却導管81に取り込むか、又は冷却導管81から排出することができる。
【0110】
冷却液は、流体、例えば水であることが好ましい。冷却液は、脱塩水又は脱イオン水(DI水:deionized water)であることが特に好ましい。DI水は、代表的な冷却液であり、例えば、半導体産業の生産施設で使用されることが多い。
【0111】
熱切離し要素8aは、ステンレス鋼又は防錆鋼でできていることが好ましい。かかる鋼には、例えば、銅よりも耐食性が高いという利点もある。特に冷却液として、例えば、通常の水よりも侵食性の高いDI水が使用される場合、熱切離し要素8aを、防錆鋼又はステンレス鋼で作ることは有益である。
【0112】
熱切離し要素8aの外部に露出する面は、特に強い耐薬品性を必要とするような用途のために、例えばエポキシ樹脂(エポキシ)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、又は別のプラスチックで被覆することができる。
【0113】
金属材料からなる電磁回転駆動装置1のすべての構成要素、すなわち、例えばモータ筐体20及び制御部筐体41の外部に露出する面にも、同じことが当てはまる。これらは、同様に被覆して、耐薬品性を高めることができる。
【0114】
以下、図6を参照しながら、第1の実施例の第2の変形例、すなわち、熱切離し要素8bが、受動的熱切離し要素8bとして、すなわち、冷却液がそれを通って流れない熱切離し要素8bとして設計される変形例について、より詳細に説明する。動作中に発生する熱は、主に対流によって周囲に放散される。図6は、第1の実施例のこの第2の変形例を、軸方向Aの断面における、概略断面図で示している。
【0115】
以下の第2の変形例の説明では、第1の変形例との相違点だけを見ていくことにする。第2の変形例と同じ部品、又は第2の変形例と機能が同等の部品は、第1の変形例と同じ参照符号で示している。参照符号は、特に、第1の変形例に関連して既に説明したものと同じ意味を持つ。第1の変形例の、以前のすべての説明は、同様に又はほぼ同様に、第2の変形例にも当てはまることを理解されたい。
【0116】
第2の変形例では、熱切離し要素8bは、実質的にリング状に設計され(図1も参照)、モータ・ユニット30と制御ユニット40との間で断熱部を形成する。熱切離し要素8bは、モータ筐体20と制御部筐体41との間の直接的な接触を防止するように、軸方向Aに、モータ筐体20と制御部筐体41との間に配置される。一方の側部では、モータ筐体20が熱切離し要素8bに当接し、他方の側面では、制御部筐体41が熱切離し要素8bに当接する。
【0117】
熱切離し要素8bの外径は、最大でもモータ筐体20の外径又は制御部筐体41の外径と同じ大きさであることが好ましく、モータ筐体20の外径が、少なくとも制御部筐体41の外径と実質的に同じサイズであることも好ましい。
【0118】
図6の概略図は、モータ筐体20、熱切離し要素8b、及び制御部筐体41の外径がすべて、実質的に同じサイズである実施例を示している。しかし、熱切離し要素8bの外径が、制御部筐体41又はモータ筐体20の外径より小さいような実施例も可能である。かかる実施例を、図1に示している。熱切離し要素8bに面する制御部筐体41の端面には、熱切離し要素8bを受容する、実質的に円形の筐体の窪み411が設けられている。ほぼ同様に、実質的に同じ筐体の窪みが、モータ筐体20の、熱切離し要素8bに面するその端面に配置されているが、これは図1では見ることができない。筐体の窪み411及びモータ筐体20の筐体の窪みの深さ、すなわち、筐体の窪みのそれぞれの軸方向Aに延在する部分の深さは、モータ筐体20及び制御部筐体41が、組み立てられた状態では互いに接触せず、空隙で互いに離されるように寸法決めされている。これは、制御部筐体41の筐体窪み411の深さとモータ筐体20の筐体窪みの深さとの合計が、リング状の熱切離し要素8bの厚さ、すなわち、熱切離し要素の軸方向Aに延在する部分の厚さよりも小さいことを意味する。その結果、組み立てられた状態では、モータ筐体20と制御部筐体41との間にリング状の空隙が存在し、空隙は、モータ筐体20と制御部筐体41との間の断熱に寄与する。
【0119】
制御部筐体41の筐体窪み411及びモータ筐体20の筐体窪みを備えたこの実施例も、第1の変形例とほぼ同様に実現できることを理解されたい。
【0120】
第2の変形例の熱切離し要素8bは、モータ・ユニット30を制御ユニット40から熱的に分離するための受動的切離し要素として設計され、プラスチックでできていることが好ましい。特に、化学的に侵食性の高い環境における用途では、ポリプロピレンなどの耐薬品性プラスチックが好ましい。
【0121】
図7は、本発明による電磁回転駆動装置1の、第2の実施例の分解斜視図を示している。図8は、理解をより深めるために、やはり第2の実施例の、軸方向Aに沿った断面における、概略断面図を示している。
【0122】
以下では、第1の実施例との相違点だけを、見ていくことにする。第2の実施例と同じ部品、又は第2の実施例と機能が同等の部品は、第1の実施例と同じ参照符号で示している。参照符号は、特に、第1の実施例に関連して既に説明したものと、同じ意味を持つ。第1の実施例の、以前のすべての説明及び第1の実施例の2つの変形例は、同様に又は類似して、第2の実施例にも当てはまることを理解されたい。
【0123】
制御ユニット40は、第2の実施例では、モータ筐体20内に配置される。すなわち、別個の制御部筐体41は設けられず、制御ユニット40は、モータ筐体20内に位置する。
【0124】
電磁回転駆動装置1の第2の実施例の、この多少構造的により単純な設計では、ただ1つの共通の筐体、すなわちモータ筐体20だけが設けられ、この設計は、とりわけ、より小型の回転駆動装置1、すなわちあまり大出力でない、例えば最大1000ワット又は最大600ワットの回転駆動装置1に好適である。かかる出力の場合、熱的に切り離された2つの別個の筐体、すなわちモータ・ユニット用筐体及び制御ユニット用筐体なしで済ますことが可能である。
【0125】
また、制御ユニット40がモータ筐体20内に配置されるこの実施例では、熱切離し要素8a、8bは、それを通って冷却液、例えば水、特にDI水を流すことができる、少なくとも1本の内部冷却導管81を備える能動的冷却要素8aとしても、又はモータ・ユニット30と制御ユニット40との間の受動的な、すなわち内部冷却導管がない切離し要素8bとしても、設計することができる。
【0126】
図7及び図8は、熱切離し要素8aが、能動的冷却要素として設計された実施例を示している。図9は、理解をより深めるために、この熱切離し要素8aを、図5と類似の図である、軸方向Aに垂直な断面における、断面図で示している。
【0127】
図10は、第2の実施例の変形例の概略断面図を示しており、熱切離し要素8bは、モータ・ユニット30と制御ユニット40との間の受動的熱切離し要素として設計されている。
【0128】
ここで、図7から図9を参照しながら、熱切離し要素8aが能動的冷却要素として設計されている、第2の実施例の設計について説明する。
【0129】
第2実施例では、既に言及したように、別個の制御部筐体は設けられておらず、モータ・ユニット30と制御ユニット40との両方が、モータ筐体20内に配置されている。モータ筐体20は、モータ筐体の軸方向の一端において、回転子カップ21によって画定され、モータ筐体の窪み210内に、磁気的に有効なコア31を備える回転子3を挿入することができる。
【0130】
モータ筐体20は、軸方向の他端において、筐体カバー23によって閉じられている。筐体カバー23は、プラスチックでできていることが好ましい。特に、化学的に侵食性の高い環境における用途では、ポリプロピレンなどの耐薬品性プラスチックが好ましい。
【0131】
第2の実施例において、モータ筐体20はやはり、密閉封止されるよう設計されることが好ましい。モータ筐体20は、この目的のために、回転子カップ21及び筐体カバー23に密閉封止して連結されるように、例えばネジ止めして連結される。この場合、シール、特に平坦なシールを、モータ筐体20と回転子カップ21又は筐体カバー23との間に備えることができる。
【0132】
モータ筐体20(特に図8参照)は、好ましい措置によれば、実質的に円筒状に設計され、巻線61によって取り囲まれた内部空間で、巻線61に対して径方向内側に配置される、内部カップ201を有する。内部カップ201は、フランジ状突出部202を介して、モータ筐体20の外壁203に連結されている。外壁203は、モータ筐体20の径方向外側の境界を形成する。内部カップ201及びフランジ状突出部202は、モータ筐体20に統合された一部であることが特に好ましい。外壁203、フランジ状突出部202、及び内部カップ201は、全体が一体に設計され、一体型モータ筐体20を形成することが好ましい。
【0133】
第2の実施例では、第1の実施例とは異なり、熱伝導要素9が設けられていない。第2の実施例では、その代わりに、巻線61、コイル・コア25、及びバック・アイアン22から発生する熱を吸収するために、内部カップ201及びフランジ状突出部202が設けられている。この熱は、次いで、能動的冷却要素として設計された熱切離し要素8aを補助的に使用して放散され、この熱の一部はまた、対流によっても、特にモータ筐体20の外壁203を通して放散される。
【0134】
モータ筐体20の外壁203を内部カップ201に連結するフランジ状突出部202は、軸方向Aに、コイル・コア25と熱切離し要素8aとの間に配置されている。フランジ状突出部202は、一方が熱切離し要素8aと、他方がコイル・コア25又はバック・アイアン22と、極めて良好に熱接触し、好ましくは物理的に接触している。フランジ状突出部202は、図(図8)に従って、すべてのコイル・コア25の第1の下端と物理的に接触し、またバック・アイアン22と物理的に接触していることが好ましい。フランジ状突出部202は、バック・アイアン22からの熱を可能な限り吸収できるようにするために、全周にわたってバック・アイアン22に当接していることが特に好ましい。コイル・コア25又はバック・アイアン22とフランジ状突出部202との間の熱接触をさらに改善するために、フランジ状突出部202とコイル・コア25又はバック・アイアン22との間に熱伝導性ペースト、例えば放熱グリスを塗布することが可能であり、熱伝導性ペーストは、隣接する構成要素を互いに、熱的にとりわけ良好に結合する。
【0135】
フランジ状突出部202に連結された内部カップ201は、特に図8で認識できるように、フランジ状突出部202の径方向内縁から軸方向Aに延在し、巻線61によって取り囲まれた内部空間で、巻線61に対して径方向内側に配置される。内部カップ201は、径方向に、コイル・コア25の長手方向脚部26又は長手方向脚部上に配置された巻線61のできるだけ近くに配置され、これにより内部カップ201は、巻線61及びコイル・コア25によって発生する熱を、とりわけ良好に吸収及び放散することができる。内部カップ201は、図(図8)によれば、軸方向Aに、ほぼ巻線61の上端まで延在している。内部カップ201は、したがって、軸方向Aに、巻線61の全長にわたって延在している。
【0136】
モータ・ユニット30を組み立てるために、内部カップ201、フランジ状突出部202、及び外壁203を有する、一体型モータ筐体20が準備される。コイル・コア25上に配置された巻線61及び回路基板71を備える固定子2が、モータ筐体20に挿入される。その後、モータ筐体20を熱鋳造(thermal casting)成形材料で充填し、最後に回転子カップ21で密閉して閉じることができる。
【0137】
熱切離し要素8aは、モータ筐体20に挿入できるよう寸法決めされている。熱切離し要素8aは、できるだけ広いエリアにわたってモータ筐体20のフランジ状突出部202に当接する、すなわち、モータ筐体20と物理的に接触している。そうすることで、フランジ状突出部202と熱切離し要素8aとの間で、可能な限り最適な熱接触が実現され、これにより、フランジ状突出部202又は内部カップ201から熱切離し要素8aへの、極めて良好な伝熱が可能となる。
【0138】
図9は、理解をより深めるために、第2の実施例の熱切離し要素8aの、軸方向Aに垂直な断面における、断面図を示している。熱切離し要素8aは、プレート状に設計され、実質的に長方形又は正方形である。制御ユニット40から熱切離し要素8aを通して、モータ・ユニット30に信号接続、例えば巻線61に電気エネルギーを供給する電線を渡すために、熱切離し要素8aに、少なくとも1つの通路85が設けられている。
【0139】
特に図9が示しているように、熱切離し要素8aを、バック・アイアン22、巻線61、コイル・コア25、及びモータ筐体20へ確実に、可能な限り最適に熱接続させるために、熱切離し要素8aは、モータ筐体20のフランジ状突出部202に当接している。このようにして、動作中に固定子2で、主に鉄損及び銅損に起因して発生する熱を、効率的且つ確実に熱切離し要素8aへ放散することが可能である。
【0140】
制御ユニット40のコントローラ回路基板44は、熱切離し要素8aの、モータ・ユニット30とは反対側に向く側面に配置されており、コントローラ回路基板44は、制御ユニット40と熱切離し要素8aとの間を、確実に、極めて良好に熱接触させるために、熱切離し要素8a上に直接的に配置されている。このようにして、制御部40で発生する熱を、熱切離し要素8aに効率的に放散することができる。
【0141】
能動的冷却要素として設計された熱切離し要素8aは、図9に示しているように、それを通して熱切離し要素8aから熱を除去する冷却液を流すことができる、少なくとも1本の冷却導管81を有する。冷却導管81は、第1の冷却連結部811から熱切離し要素8aの内部を通って、第2の冷却連結部812まで連続する導管として延在し、冷却連結部を通して、冷却液を、冷却導管81に取り込むことができるか、又は冷却導管81から排出することができる。冷却連結部811、812はそれぞれ、冷却液を、モータ筐体20の外部から、例えば第1の冷却連結部811を用いて、冷却導管81内に供給でき、またモータ筐体20から、第2の冷却連結部812を用いて、再び排出できるように、筐体カバー23を貫いて軸方向Aに延在している(図8参照)。
【0142】
冷却導管81は、多量の熱をできるだけ効率的に放散できるように設計されている。例示的な性質を持つ、図9に示している冷却導管81の実施例では、冷却導管81は、いくつかの真っ直ぐな穴813を有し、穴は、連続した冷却導管81を形成するために、互いに補完するように配置、設計され、2つの冷却連結部811、812を互いに連結する。穴813のそれぞれは、熱切離し要素8aの外部から熱切離し要素8aの内部に向かって穿孔される。その後、冷却連結部811、812で始まる2個を除くすべての穴813は、それぞれ熱切離し要素8aの外側にある端部で、例えばいずれもネジ814及びシール815を用いて閉じられ、これにより冷却液を、2個の冷却連結部811及び812を通して、単に冷却導管81に取り込むか、又は冷却導管81から排出することができる。
【0143】
コントローラ回路基板44は、図8に示している実施例では、やはり制御ユニット40内に設けられている。駆動及び浮上機能を実現するために、巻線61を制御するのに必要なそうした電子部品は、コントローラ回路基板44上に設けられる。これらは、特に、巻線61を制御するための回路遮断器422である。さらに、非接触磁気浮上及び非接触磁気駆動を制御するための、調節及び制御用部品も、オプションの、センサ信号の評価用部品と同様に、コントローラ回路基板44上に設けられる。
【0144】
特に、回転駆動装置1が、例えば最大600ワットの、あまり大きくない出力用に設計されている場合、制御ユニット40に統合される整流器なしで済ますことが可能である。したがって、図8による実施例では、電源回路基板45が設けられていない。この場合、例えば24ボルト又は48ボルトの直流電圧が、外部電源(図示せず)から電源電圧として供給される。この目的のために、貫通連結部403(図8)が筐体カバー23に設けられ、貫通連結部を通して直流電圧の形態の電気エネルギーを、電源ケーブルから制御ユニット40へ供給することができる。直流電圧は、コントローラ回路基板44上の回路遮断器422に必要な、中間回路電圧を供給する役割を果たす。
【0145】
回路遮断器422は、特により低出力の場合、MOSFETで実現することが好ましい。
【0146】
コントローラ回路基板44と熱切離し要素8aとの間を、確実に、可能な限り最適に熱接続させるために、コントローラ回路基板44は、熱切離し要素8aに直接的に配置され、これによりコントローラ回路基板44は、熱切離し要素8aと物理的に接触する。したがって、制御ユニット40内の主な熱源である回路遮断器422は、熱切離し要素8aのできるだけ近くに配置される。コントローラ回路基板44の熱切離し要素8aに当接する領域は、さらにより良好な熱結合を実現させるために、任意選択で、銅表面及び/又は熱パッドを備えるように、設計することができる。
【0147】
本発明による電磁回転駆動装置1の第2の実施例での、制御ユニット40が、第1の実施例について説明したものとほぼ同様に、電源電圧を供給する内部整流器を有することができる実施例も、可能であることを理解されたい。内部整流器は、この場合、図4又は図6に示し、これら図4図6を参照しながら説明したものと類似したやり方で、電源回路基板45上に配置することができる。
【0148】
ここで図10を参照しながら、第2の実施例の変形例について説明する。この変形例では、熱切離し要素8bは、モータ・ユニット30と制御ユニット40との間の受動的熱切離し要素8bとして、すなわち、それを通って冷却液が流れず、その代わりに、主に対流によって吸収される熱を周囲に放散する熱切離し要素8bとして、設計されている。
【0149】
熱切離し要素8bは、図10に示している第2の実施例の変形例では、モータ筐体20に統合された一部であることが好ましい、内部カップ201及びフランジ状突出部202を有する。内部カップ201、フランジ状突出部202、及び外壁203は、全体が一体に設計されていることが好ましく、これにより、モータ筐体20の、とりわけ簡単でコスト効率の高い製造が可能となる。
【0150】
熱切離し要素8bは、したがって、図10に示しているこの実施例では、モータ筐体20に統合された一部である。熱切離し要素8bは、モータ・ユニット30で発生した熱と制御ユニット40で発生した熱との両方を吸収し、次いで熱は、主に対流によって、モータ筐体20の外壁203を通して周囲に放散される。
【0151】
コントローラ回路基板44は、コントローラ回路基板44が熱切離し要素8bに当接するように、フランジ状突出部202上に直接的に配置される。制御ユニット40の主な熱源である回路遮断器422は、コントローラ回路基板44の、熱切離し要素8bに当接する領域に配置されていることが好ましい。
【0152】
さらに、液体を搬送する遠心ポンプ100が本発明で提案され、遠心ポンプ100は、本発明に従って設計された電磁回転駆動装置1ばかりでなく、電磁回転駆動装置1によって回転駆動できる回転子3を有することを特徴とする。回転子3は、磁気的に有効なコア31を有し、モータ筐体20の窪み210内に配置される。回転子3は、遠心ポンプ100の回転子3として設計される。
【0153】
図11は、本発明による遠心ポンプの実施例を斜視図で示しており、遠心ポンプ全体を、参照記号100で示している。図12は、理解をより深めるために、図11の実施例の、軸方向Aの断面における、概略断面図を示している。図12では、理解をより深めるために、モータ筐体20、制御ユニット40、及び熱切離し要素8a、8bは示していない。
【0154】
遠心ポンプ100は、搬送されるべき液体用入口52及び出口53を有するポンプ筐体51を備えた、ポンプ・ユニット50を有し、回転子3は、ポンプ筐体51内に配置され、液体を搬送するための複数のベーン54を有する。ポンプ・ユニット50は、回転子3の磁気的に有効なコア31が、横方向脚部27の端面211によって取り囲まれるように、ポンプ・ユニット50を窪み210内に挿入できるよう設計されている。
【0155】
図11では、ポンプ・ユニット50を固定子2とは別個に示している。電磁回転駆動装置1は、ここで説明している遠心ポンプ100の実施例では、第1の実施例に従って設計されている。すなわち、電磁回転駆動装置は、モータ筐体20と、モータ筐体とは別個の制御部筐体41とを備え、熱切離し要素8a又は8bは、モータ筐体20と制御部筐体41との間に配置され、能動的冷却要素8a又は受動的熱切離し要素8bとして設計することができる。
【0156】
電磁回転駆動装置1が、第2の実施例に従って設計され、別個の制御部筐体41が設けられておらず、制御ユニット40がモータ筐体20内に配置されるような遠心ポンプ100の実施例も、可能であることを理解されたい。
【0157】
ポンプ・ユニット50は、図12の概略図では、窪み210(図12では図示せず)に、すなわち固定子2に挿入される。図12ではさらに、回転子3の磁気的に有効なコア31が、非接触で磁気浮上する径方向の平面を、参照符号Eを付した破線で示している。
【0158】
回転子3が、一体型回転子として設計されていることは、有利な態様である。というのは、回転子3が、電磁回転駆動デバイス1の回転子3であり、且つ流体が搬送される遠心ポンプ100の回転子3でもあるからである。回転子3はしたがって、1つで合計3つの機能を果たす。すなわち、回転子3は、電磁回転駆動デバイス1の回転子3であり、磁気浮上の回転子3であり、また1種類又は複数の液体に作用する羽根車である。一体型回転子であるこの設計は、非常に小型で省スペース設計の利点を提供する。
【0159】
固定子2は、モータ筐体20内に配置され、モータ筐体は、密閉封止されたモータ筐体20として設計されていることが好ましく、固定子2を封入する。回路基板71も、モータ筐体20内に配置されている。固定子用筐体20は、鋳造成形材料、例えばエポキシ樹脂又はポリウレタンで充填され、これにより、固定子2、及び場合によってはモータ筐体20の内部に配置されているさらなる構成要素が、鋳造成形材料によって取り囲まれることが好ましい。
【0160】
モータ筐体20はさらに、回転子カップ21のポンプ・ユニット50に面する端部に窪み210を備え、これにより、ポンプ・ユニット50をこの窪み210に挿入することができる。次いで、ポンプ筐体51内に備えられる回転子3が、モータ筐体20のこの窪み210に収容され、回転子3の磁気的に有効なコア31は、コイル・コア25の横方向脚部27間に配置される。
【0161】
ポンプ筐体51は、固定子用筐体20に、複数のネジ511を用いて固定されることが好ましい。
【0162】
制御ユニット40は、制御ユニット40の様々な電子又は電気部品42、すなわち、特にコントローラ回路基板44及び電源回路基板45も配置される、制御部筐体41を有する。制御部筐体41は、電子部品42を封入する、密閉封止された制御部筐体41として設計されることが好ましい。制御部筐体41は、鋳造成形材料、例えばエポキシ樹脂又はポリウレタンで充填され、これにより、回路基板44、45、及び場合によっては制御部筐体41の内部に配置されているさらなる構成要素が、鋳造成形材料によって取り囲まれることが好ましい。
【0163】
電気エネルギーを制御ユニット40に供給するための電源ケーブル401、及び電磁回転駆動装置1を制御するための、且つ/又はデータ交換するためのインタフェース・ケーブル402も、図11に示している。例えば、制御ユニット40へのプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC:programmable logic controller)を制御するための信号が、インタフェース・ケーブル402によって送信される。電源ケーブル401及びインタフェース・ケーブル402は、詳細には図示していない貫通連結部を通って、制御部筐体41の内部に接続される。
【0164】
回転子3は、液体を搬送するための複数のベーン54を有する。ここで説明している実施例では、例えば、合計4つのベーン54が設けられており、この数は、例示的な性質のものである。回転子3は、回転子3の磁気的に有効なコア31を収容し、回転子3の磁気的に有効なコア31を、搬送されるべき液体と接触しないように密閉封入することが好ましい、ジャケット38をさらに有する。すべてのベーン54が、ジャケット38上に配置され、回転子3の周方向に等距離に配置されている。各ベーン54は、径方向外側に延在し、トルクに耐えるようにジャケット38に連結されている。ベーン54は、この場合、ジャケット38に固定される別個の構成要素であってもよい。もちろん、ベーン54のすべてが、ジャケット38に統合された一部であること、すなわち、ジャケット38を、ベーン54のすべてと一体に設計することも可能である。ベーン54を備えた回転子3は、1種類又は複数の液体に作用する、遠心ポンプ100のホイール又は羽根車を形成する。
【0165】
ポンプ・ユニット50のポンプ筐体51ばかりでなくジャケット38及びベーン54が、用途に応じて、1種類又は複数のプラスチックでできていることが好ましい。好適なプラスチックは、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、又はシリコンである。多くの用途では、テフロンの商標名で知られている材料である、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びパーフルオロアルコキシポリマー(PFA)も、プラスチックとして好適である。
【0166】
本発明による電磁回転駆動装置は、遠心ポンプ以外のデバイス用、例えば、流動性物質を混合する混合デバイス用、例えばタンク内の液体を混合する撹拌デバイス用、送風機用、又は例えば半導体製造における、ウェハを搬送し回転させるデバイス用にも、やはり好適であることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】