(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167891
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】断熱材及び製造装置
(51)【国際特許分類】
C30B 15/00 20060101AFI20241127BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20241127BHJP
F27B 14/08 20060101ALI20241127BHJP
C30B 29/06 20060101ALN20241127BHJP
【FI】
C30B15/00 Z
F27D1/00 K
F27B14/08
C30B29/06 502C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024077817
(22)【出願日】2024-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2023083632
(32)【優先日】2023-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】523188926
【氏名又は名称】燦栄コンサルティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】會田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 博文
【テーマコード(参考)】
4G077
4K046
4K051
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EG19
4G077EG25
4K046AA02
4K046BA05
4K046CB13
4K046CB15
4K046CD03
4K046EA05
4K051AA03
4K051AB03
4K051BD01
(57)【要約】
【課題】より品質の高い半導体又は結晶を製造することができる断熱材及び製造装置を提供する。
【解決手段】結晶製造装置10に用いられる断熱材20は、一酸化ケイ素(SiO)及び/又は二酸化ケイ素(SiO
2)を主成分とした材質で形成される断熱材本体部21と、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)及び窒化ケイ素(Si
3N
4)から選択される1つ以上を主成分とした材質で、断熱材本体部21の外側表面に形成される保護層22と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体又は結晶を製造する製造装置に用いられる断熱材であって、
一酸化ケイ素及び/又は二酸化ケイ素を主成分とした材質で形成される断熱材本体部と、
ケイ素、炭化ケイ素及び窒化ケイ素から選択される1つ以上を主成分とした材質で、前記断熱材本体部の外側表面に形成される保護層と、を備える、
断熱材。
【請求項2】
前記保護層は、前記断熱材本体部の外側表面に膜状に形成され、
前記保護層の膜厚は、1μm~10mmで形成されている、
請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
半導体又は結晶を製造する製造装置であって、
一酸化ケイ素及び/又は二酸化ケイ素を主成分とした材質で形成される断熱材と、
前記断熱材の近傍に位置し、黒鉛を主成分とした材質で形成される部材と、
前記断熱材と前記部材が接触しないように、前記断熱材と前記部材の間に位置し、ケイ素、炭化ケイ素及び窒化ケイ素から選択される1つ以上を主成分とした材質、又は金属材料で形成される隔離材と、を備える、
製造装置。
【請求項4】
半導体又は結晶を製造する製造装置であって、
前記半導体又は前記結晶の原料を収容するルツボと、
前記原料を加熱する加熱ヒータと、
前記ルツボ及び前記加熱ヒータを収容するメインチャンバと、
一酸化ケイ素及び/又は二酸化ケイ素を主成分とした材質で形成され、前記加熱ヒータから前記メインチャンバへの熱輸送を減少させる断熱材本体部と、
前記メインチャンバ内に位置し、黒鉛を主成分とした材質で形成される部材と、
ケイ素、炭化ケイ素及び窒化ケイ素から選択される1つ以上を主成分とした材質で、前記断熱材本体部及び/又は前記部材の外側表面に形成される保護層と、を備える、
製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の結晶製造装置は、黒鉛製の部材として、黒鉛ルツボ、ヒータ及び断熱材(保温筒)等を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の結晶製造装置の部材の材質として、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)が採用された場合には、上述した黒鉛(C)製の部材との間で、下記の化学反応式にて、一酸化炭素(CO)が発生するおそれがある。
2C+SiO2→2CO+Si
二酸化ケイ素以外に一酸化ケイ素(SiO)が採用された場合も、同様に、一酸化炭素が発生するおそれがある。この一酸化炭素の発生により、製造される半導体又は結晶の品質が悪化するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、より品質の高い半導体又は結晶を製造することができる断熱材及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る半導体又は結晶を製造する製造装置に用いられる断熱材は、一酸化ケイ素及び/又は二酸化ケイ素を主成分とした材質で形成される断熱材本体部と、ケイ素、炭化ケイ素及び窒化ケイ素から選択される1つ以上を主成分とした材質で、前記断熱材本体部の外側表面に形成される保護層と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る半導体又は結晶を製造する製造装置は、一酸化ケイ素及び/又は二酸化ケイ素を主成分とした材質で形成される断熱材と、前記断熱材の近傍に位置し、黒鉛を主成分とした材質で形成される部材と、前記断熱材と前記部材が接触しないように、前記断熱材と前記部材の間に位置し、ケイ素、炭化ケイ素及び窒化ケイ素から選択される1つ以上を主成分とした材質、又は金属材料で形成される隔離材と、を備える。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る半導体又は結晶を製造する製造装置は、前記半導体又は前記結晶の原料を収容するルツボと、前記原料を加熱する加熱ヒータと、前記ルツボ及び前記加熱ヒータを収容するメインチャンバと、一酸化ケイ素及び/又は二酸化ケイ素を主成分とした材質で形成され、前記加熱ヒータから前記メインチャンバへの熱輸送を減少させる断熱材本体部と、前記メインチャンバ内に位置し、黒鉛を主成分とした材質で形成される部材と、ケイ素、炭化ケイ素及び窒化ケイ素から選択される1つ以上を主成分とした材質で、前記断熱材本体部及び/又は前記部材の外側表面に形成される保護層と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より品質の高い半導体又は結晶を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る結晶製造装置の概略図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る結晶製造装置の概略図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る結晶製造装置の概略図である。
【
図4】(A)~(D)は、本発明の第3実施形態に係る結晶製造装置の一部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る断熱材及び製造装置について、図面を参照して説明する。本実施形態の製造装置は、例えば、チョクラルスキー法(CZ法)により、結晶(例えば、シリコン単結晶)を製造する結晶製造装置である。
図1に示すように、結晶製造装置10は、メインチャンバ12Aと、引上げチャンバ12Bと、引上げワイヤ8と、ルツボ14と、加熱ヒータ15と、断熱材20と、支持軸11と、を備える。
【0012】
メインチャンバ12Aは、金属製であり、ルツボ14、加熱ヒータ15、断熱材20、支持軸11を収容する中空形状をなす。メインチャンバ12Aの天井部には、開口部12Hが形成されている。
【0013】
引上げチャンバ12Bは、金属製であり、上下方向に延びる円筒状をなし、メインチャンバ12Aの開口部12Hを囲むように、メインチャンバ12Aの上面に連結されている。引上げチャンバ12B内には、引上げワイヤ8が収容されている。引上げチャンバ12Bの上部には、引上げワイヤ8を引き上げることができる引上げ機構(図示せず)が設けられている。引上げワイヤ8の下端部には種結晶9が取り付けられている。種結晶9は、ルツボ14内で加熱された原料(例えば、多結晶シリコン塊)の融液3(例えば、シリコン融液)に浸漬されて、引上げワイヤ8が引上げ機構により引き上げられる。これにより、種結晶9の下方に結晶2が育成される。
【0014】
ルツボ14は、メインチャンバ12A内に位置し、開口部12Hに向けて開口する容器である。ルツボ14は、椀形状をなす。ルツボ14は、二重構造をなしている。すなわち、ルツボ14は、石英内容器14Aと、黒鉛外容器14Bと、を備える。石英内容器14Aは、石英により形成され、融液3を収容し、黒鉛外容器14Bの内側に重ねられている。黒鉛外容器14Bは、黒鉛により形成され、石英内容器14Aの外面に沿うように形成されている。黒鉛外容器14Bは、高温下で石英内容器14Aが軟化した状態で融液3に押されても石英内容器14Aの形状を保つように機能する。
【0015】
支持軸11は、上下方向に沿って延びる。支持軸11の上端はルツボ14(黒鉛外容器14B)の外側底面の中央に固定されている。支持軸11は、図示しない回転駆動部によりルツボ14とともに支持軸11の中心軸を回転軸として回転し、図示しない昇降駆動部により上下方向に昇降する。支持軸11は、黒鉛により形成される。
【0016】
加熱ヒータ15は、黒鉛により形成され、ルツボ14の外周面に位置する。加熱ヒータ15は、図示しない制御部による制御のもと、電源から電力が供給されて発熱する。加熱ヒータ15の発熱により、ルツボ14内の温度が原料の融点よりも高い温度まで高まり、ルツボ14に収容される原料が融解した融液3が形成される。
【0017】
引上げチャンバ12B内には、図示しないガス供給手段により、不活性ガス、例えば、アルゴン(Ar)ガスが供給される。不活性ガスは、引上げチャンバ12B内からメインチャンバ12A内を通って外部に排出される。
【0018】
断熱材20は、加熱ヒータ15とメインチャンバ12Aの内面の間に位置し、加熱ヒータ15からメインチャンバ12Aへの熱輸送を断熱することにより、メインチャンバ12A等への熱の影響を抑制する。断熱材20は、加熱ヒータ15の外周面を囲むように筒状、本例では円筒状に形成されている。
【0019】
断熱材20は、断熱材本体部21と、保護層22と、を備える。
断熱材本体部21は、一酸化ケイ素(SiO)又は二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする材質により形成されている。
なお、断熱材本体部21は、一酸化ケイ素と二酸化ケイ素の両方を含む材質で形成されていてもよい。
【0020】
保護層22は、炭化ケイ素(SiC:シリコンカーバイト)、ケイ素(Si:シリコン)又は窒化ケイ素(Si3N4)を主成分とする材質により形成されている。
なお、保護層22は、本実施形態では、SiC、Si及びSi3N4のうち何れか1つを含む材質で形成されていたが、これに限らず、SiC、Si及びSi3N4から選択される2つ(SiCとSiの組み合わせ、SiCとSi3N4の組み合わせ、又はSiとSi3N4の組み合わせ)を含む材質で形成されていてもよいし、SiC、Si及びSi3N4の全てを含む材質で形成されていてもよい。
保護層22は、断熱材本体部21の外側の表面全域に膜状に形成されている。
断熱材20の近傍には、黒鉛を主成分とした材質で形成される部材(例えば、黒鉛外容器14B、加熱ヒータ15、支持軸11等)が配置されている。保護層22は、これらの部材と断熱材本体部21の間で、一酸化炭素(CO)を発生させるような反応が起きることを抑制する。
【0021】
保護層22の膜厚T1は、断熱材本体部21の外側の表面全域にわたって同一の厚さに設定されている。保護層22の膜厚T1は、例えば、1μm(=0.001mm)~10mm、より好ましくは、0.01mm~10mmで形成されている。保護層22の膜厚T1が薄すぎると、保護層22の消耗により断熱材本体部21が外部に露出するおそれがあり、保護層22の膜厚T1が厚すぎると、断熱材20の厚みによる断熱材20の大型化、又は保護層22の形成に時間がかかるおそれがある。
【0022】
断熱材20の製造方法は、例えば、断熱材本体部21の表面全域に保護層22を形成するコーティング工程を含む。このコーティング工程では、例えば、保護層22の原料となるSi、SiC又はSi3N4を含有した塗料を断熱材本体部21の表面全域に塗布することにより保護層22を形成する。
【0023】
なお、このコーティング工程では、刷毛又はスプレーを使った塗料の塗布に限らず、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により保護層を形成してもよい。
また、保護層22は、このコーティング工程に限らず、外張り工程により形成されていてもよい。この外張り工程は、断熱材本体部21とは別体で保護層22を形成する第1工程と、保護層22を断熱材本体部21に貼り付ける第2工程と、を含む。この場合、保護層22は、基材と、この基材上に形成されるシリコン層と、を有し、基材の裏面(シリコン層とは反対側の面)が断熱材本体部21に接着されてもよい。
【0024】
以上、説明した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)結晶2を製造する製造装置の一例である結晶製造装置10に用いられる断熱材20は、一酸化ケイ素(SiO)及び/又は二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とした材質で形成される断熱材本体部21と、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si3N4)から選択される1つ以上を主成分とした材質で、断熱材本体部21の外側表面に形成される保護層22と、を備える。
この構成によれば、保護層22により、断熱材本体部21と黒鉛を主成分とした部材(例えば、黒鉛外容器14B及び加熱ヒータ15等)の間で、一酸化炭素(CO)が発生する反応が起きることが抑制される。よって、結晶製造装置10は、より品質の高い結晶2を製造することができる。
【0025】
(2)保護層22は、断熱材本体部21の外側表面にコーティング又は外張りにより膜状に形成されている。保護層22の膜厚T1は、1μm~10mmで形成されている。
この構成によれば、より確実に、上記の反応が起きることが抑制される。
【0026】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る断熱材及び製造装置について、図面を参照して説明する。本実施形態では、断熱材として、黒鉛断熱材とシリカ断熱材が用いられており、黒鉛断熱材とシリカ断熱材のそれぞれの表面に保護層が形成されている点が第1実施形態と相違する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図2に示すように、結晶製造装置10Aは、加熱ヒータ15からメインチャンバ12Aへの熱輸送を減少させるアウター断熱材20A及びインナー断熱材30を備える。アウター断熱材20A及びインナー断熱材30は、互いに異なる径を持つ円筒状をなし、径方向に配置されている。
【0027】
アウター断熱材20Aは、上記第1実施形態の断熱材20と同様に、SiO及び/又はSiO2からなる断熱材本体部21と、Si及び/又はSiCからなる保護層22と、を備える。アウター断熱材20Aは、メインチャンバ12Aの内周面とインナー断熱材30の外周面の間に位置する。
【0028】
インナー断熱材30は、加熱ヒータ15の外周面とアウター断熱材20Aの内周面の間に位置する。
インナー断熱材30は、断熱材本体部31と、保護層32と、を備える。断熱材本体部31は、黒鉛からなる。保護層32は、保護層22と同様の材質(Si、SiC及びSi3N4のうち何れか1つ以上を含む材質)からなり、断熱材本体部31の外側の表面全域にわたって形成されている。保護層32は、保護層22と同様の製造方法により断熱材本体部31に形成される。保護層32の膜厚は、保護層22の膜厚T1と同様の範囲内に設定される。
保護層22,32は、黒鉛からなる断熱材本体部31と酸化ケイ素を含む断熱材本体部21の間で、一酸化炭素(CO)が発生する反応が起きることを抑制する。
【0029】
また、アウター断熱材20A及びインナー断熱材30は、常温では、互いに隙間を持って離れて位置しているが、温度上昇とともに膨張してインナー断熱材30がアウター断熱材20Aに接触した状態となる。
なお、本実施形態において、アウター断熱材20Aの保護層22とインナー断熱材30の保護層32の何れか一方が省略されてもよい。
【0030】
以上、説明した第2実施形態によれば、以下の効果を奏する。
結晶2を製造する結晶製造装置10Aは、原料の一例である多結晶塊又は融液3を収容するルツボ14と、多結晶塊が融液3となるように加熱する加熱ヒータ15と、ルツボ14及び加熱ヒータ15を収容するメインチャンバ12Aと、一酸化ケイ素(SiO)及び/又は二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とした材質で形成され、加熱ヒータ15からメインチャンバ12Aへの熱輸送を減少させるアウター断熱材20Aの断熱材本体部21と、断熱材本体部21の周囲(メインチャンバ12A内の断熱材本体部21の近傍)に位置し、黒鉛を主成分とした材質で形成される部材の一例であるインナー断熱材30の断熱材本体部31と、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)及び窒化ケイ素(Si3N4)から選択される1つ以上を主成分とした材質で、断熱材本体部21及び/又は断熱材本体部31の外側表面に形成される保護層22,32と、を備える。
この構成によれば、保護層22,32により、断熱材本体部21と断熱材本体部31の間で、一酸化炭素(CO)が発生する反応が起きることが抑制される。よって、結晶製造装置10Aは、より品質の高い結晶2を製造することができる。
【0031】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る断熱材及び製造装置について、図面を参照して説明する。本実施形態では、Si等からなる保護層が省略され、黒鉛断熱材とシリカ断熱材の間に、Si等からなる隔離材が配置されている点が第2実施形態と相違する。以下、第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0032】
図3に示すように、結晶製造装置10Bは、アウター断熱材120と、インナー断熱材130と、隔離材40と、を備える。
アウター断熱材120は、SiO及び/又はSiO
2により形成されている。アウター断熱材120は、Si等からなる保護層を有さず、SiO等を表面に露出した状態で形成されている。
インナー断熱材130は、黒鉛により形成されている。インナー断熱材130は、Si等からなる保護層を有さず、黒鉛を表面に露出した状態で形成されている。
【0033】
隔離材40は、アウター断熱材120とインナー断熱材130が非接触状態に保持されるように、アウター断熱材120とインナー断熱材130の間に位置する。言い換えると、隔離材40は、黒鉛を主成分とした部材(インナー断熱材130及び加熱ヒータ15等)が収容される空間とSiO等からなるアウター断熱材120が収容される空間との間を隔てるように配置されている。隔離材40は、円筒状をなす。隔離材40は、上記第1実施形態の保護層22と同様の材質(Si、SiC及びSi3N4のうち何れか1つ以上を含む材質)、又は金属材料により形成されている。この金属材料は、耐熱金属、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)又はステンレスにより構成されている。特に、この金属材料としては、一例として、高温用としてはモリブデン又はタングステンが用いられ、低温用としてはステンレスが用いられる。隔離材40は、アウター断熱材120等の黒鉛を主成分とした部材とインナー断熱材130の間で、一酸化炭素(CO)が発生する反応を抑制する。
なお、隔離材40は、アウター断熱材120とインナー断熱材130それぞれに間隙を持って対面していてもよいし、面接触していてもよい。
【0034】
図3の例に限らず、
図4(A)~(D)に示すように、隔離材140,240,340は、上述した金属材料により、アウター断熱材120とインナー断熱材130の少なくとも何れか一方を収容するケース(容器)として形成されていてもよい。隔離材140,240,340は、アウター断熱材120又はインナー断熱材130を収容するための空洞を有する円筒状をなす。
図4(A)~(D)の何れの構成でも、黒鉛系の材料(断熱材130等)と酸化物系の材料(断熱材120)とを隔離することができ、一酸化炭素(CO)が発生する反応が起きることが抑制される。
【0035】
詳しくは、
図4(A)の構成では、隔離材140は、インナー断熱材130を収容する。アウター断熱材120は、メインチャンバ12A内に露出している。
図4(B)の構成では、隔離材240は、アウター断熱材120を収容する。インナー断熱材130は、メインチャンバ12A内に露出している。
図4(C)の構成では、隔離材140は、インナー断熱材130を収容するとともに、隔離材240は、アウター断熱材120を収容する。2つの隔離材140,240は、別体であってもよいし、一体であってもよい。
【0036】
また、
図4(A)~(C)の隔離材140,240の空洞内は、大気圧であってもよいし、断熱性を高めるために真空であってもよい。
さらに、隔離材は、メインチャンバの壁部として構成されてもよい。
例えば、
図4(D)に示すように、上述した金属材料により形成されるメインチャンバ112Aは、調圧空間Vsを有する圧力調整層341と、冷却液Cが流れる空間を有する冷却層342と、を備える。
圧力調整層341の調圧空間Vs内の気圧状態は、圧力調整手段としての真空ポンプ(図示略)及び大気開放弁(図示略)により、真空状態と大気圧状態の間で変化させることが可能である。調圧空間Vs内にはアウター断熱材120が位置している。これにより、メインチャンバ112Aの圧力調整層341は、アウター断熱材120を収容する隔離材340としても機能する。
冷却層342は、圧力調整層341の外周面に重なって形成されている。冷却層342は、メインチャンバ112Aの熱を冷却液Cが回収することにより温度を下げる水冷ジャケットである。ルツボに収容される原料を融解する期間及び融液から結晶を育成する期間においては、調圧空間Vsを真空状態としつつ、冷却層342内への冷却液Cの供給を停止した状態とする。これにより、メインチャンバ112A内の温度を高温に維持することができる。また、メインチャンバ112A内の温度を下げる冷却期間では、調圧空間Vs内の気圧を大気圧に開放したうえで、冷却層342内への冷却液Cの供給を行う。これにより、メインチャンバ112A内の温度を迅速に下げることができる。
【0037】
以上、説明した第3実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)結晶2を製造する結晶製造装置10Bは、一酸化ケイ素(SiO)及び/又は二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とした材質で形成される断熱材の一例であるアウター断熱材120(酸化ケイ素断熱材)と、アウター断熱材120の近傍(メインチャンバ12A内)に位置し、黒鉛を主成分とした材質で形成される部材の一例であるインナー断熱材130(黒鉛断熱材)と、アウター断熱材120とインナー断熱材130が接触しないように、アウター断熱材120とインナー断熱材130の間に位置し、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)及び窒化ケイ素(Si3N4)から選択される1つ以上を主成分とした材質、又は金属材料で形成される隔離材40,140,240,340と、を備える。
この構成によれば、隔離材40,140,240,340により、アウター断熱材120とインナー断熱材130の間で、一酸化炭素(CO)が発生する反応が起きることが抑制される。よって、結晶製造装置10Bは、より品質の高い結晶2を製造することができる。
【0038】
(2)一酸化ケイ素(SiO)等からなるアウター断熱材120が黒鉛を主成分とした部材(インナー断熱材130及び加熱ヒータ15等)よりも外周側に配置される。これにより、
図3に示すように、隔離材40は、アウター断熱材120の内周側にのみ配置すればよく、アウター断熱材120の外周側に配置する必要がなくなり、簡易な構成を実現できる。
【0039】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0040】
(変形例)
上記第2実施形態においては、黒鉛を主成分とした部材の一例である断熱材本体部31の外側表面には、Si等の保護層32が形成されていたが、断熱材本体部31以外の部材の外側表面にSi等の保護層が形成されてもよい。この部材は、例えば、黒鉛外容器14B、加熱ヒータ15及び支持軸11から選択される何れか1つ又は複数であってもよい。また、この部材が、上記第3実施形態と同様に容器としての隔離材内に収容されてもよい。
上記各実施形態においては、黒鉛外容器14B、加熱ヒータ15及び支持軸11は、それぞれ黒鉛により形成されていたが、これらのうち何れか1つ又は複数は、黒鉛以外の材質で形成されていてもよい。
【0041】
上記第1及び第2実施形態においては、断熱材本体部21,31の外側表面の全域に、保護層22,32が形成されていたが、断熱材本体部21,31の外側表面の一部のみに保護層22,32が形成されていてもよい。例えば、第1実施形態において、保護層22は、断熱材本体部21における黒鉛を主成分とした部材(例えば、加熱ヒータ15)に対向する領域のみ、例えば、断熱材本体部21の内周面のみに形成されていてもよい。
また、上記第3実施形態の容器としての隔離材140,240も、これと同様に、断熱材120、130の全周囲のうち一部を開放するように形成されていてもよい。例えば、隔離材140,240は、その内部空間に断熱材120、130を挿入可能に、上方向又は下方向に開口した形状をなしていてもよい。
【0042】
上記各実施形態における断熱材20,20A,30,120,130の形状は適宜変更可能である。例えば、断熱材は、上方向に向けて開口する有底筒状であってもよいし、円筒状に限らず、角筒状をなしていてもよく、また、筒状に限らず、板状をなしていてもよい。
さらに、
図1の破線で示すように、断熱材20は、加熱ヒータ15の上面に対向するように張り出した張り出し部29を有していてもよい。他の実施形態の断熱材20A,30,120,130も、同様に、張り出し部を有していてもよい。
【0043】
上記第3実施形態の
図3の構成においては、隔離材40は、アウター断熱材120とインナー断熱材130の間に位置していたが、黒鉛系の材料と酸化物系の材料の間であれば、隔離材40の設置位置はこれに限定されない。
【0044】
上記各実施形態においては、結晶製造装置10(半導体製造装置)は、半導体としても用いられるシリコン単結晶を製造していたが、このシリコン単結晶に限らず、その他の結晶又は半導体を製造してもよい。例えば、リン化ガリウム(GaP)結晶等の化合物半導体等を製造してもよいし、半導体以外にサファイア等の結晶(単結晶と多結晶の何れも含む)を製造してもよい。また、結晶製造装置10は、融液3に磁場を印加しながら結晶又は半導体を育成するMCZ法(Magnetic Field AppliedCzochralski Method、磁界下引上法)を用いて結晶又は半導体を製造してもよいし、CZ法以外の方法、例えば、EFG(Edge-defined Film-fed Growth)法、キロプロス法、るつぼ溶融法等により結晶又は半導体を製造してもよい。
第3実施形態の隔離材40は、第1実施形態の断熱材20と加熱ヒータ15の間に設けられていてもよい。この場合、断熱材20は、保護層22を有していてもよいし、保護層22を有していなくてもよい。また、第3実施形態の隔離材40は、第2実施形態のアウター断熱材20Aとインナー断熱材30の間に設けられていてもよい。
また、第2実施形態において、保護層22,32は一体的に形成されてもよい。
上記第2及び第3実施形態において、インナー断熱材30、130は、黒鉛系以外の材質(アルミナ系、ジルコニア系、窒化物系など)で形成されていてもよい。
上記各実施形態と変形例は、適宜組み合わせることが可能である。例えば、保護層22,32が、上記第3実施形態に開示した金属材料により形成されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
2…結晶、3…融液、8…引上げワイヤ、9…種結晶、10,10A,10B…結晶製造装置、11…支持軸、12A,112A…メインチャンバ、12B…引上げチャンバ、12H…開口部、14…ルツボ、14A…石英内容器、14B…黒鉛外容器、15…加熱ヒータ、20,20A,30,120,130…断熱材、20A,120…アウター断熱材、21,31…断熱材本体部、22,32…保護層、24…断熱材、29…張り出し部、30,130…インナー断熱材、40,140,240,340…隔離材、341…圧力調整層、342…冷却層、Vs…調圧空間、T1…膜厚