(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167892
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】卵ソース用増粘促進剤
(51)【国際特許分類】
A23L 23/00 20160101AFI20241127BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20241127BHJP
【FI】
A23L23/00
A23L15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024079091
(22)【出願日】2024-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2023083912
(32)【優先日】2023-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 翔
【テーマコード(参考)】
4B036
4B042
【Fターム(参考)】
4B036LC01
4B036LE02
4B036LF03
4B036LH04
4B036LH11
4B036LH25
4B036LH26
4B036LH41
4B036LP01
4B042AC03
4B042AC05
4B042AD40
4B042AE08
4B042AG07
4B042AH09
4B042AK09
4B042AK13
4B042AP02
4B042AP14
(57)【要約】
【課題】
本発明は、卵の風味・食感を損なうことなく増粘させることができる素材を提供することを目的とする。
【解決手段】
20℃での10質量%水溶液の粘度が200mPa・s以下の水溶性多糖類を含む卵ソース用増粘促進剤が卵の風味・食感を損なうことなく卵ソースを増粘させることができることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃での10質量%水溶液の粘度が200mPa・s以下の水溶性多糖類を含む、卵ソース用増粘促進剤。
【請求項2】
請求項1記載の卵ソース用増粘促進剤を含有する、卵ソース。
【請求項3】
請求項2記載の卵ソースを利用した食品。
【請求項4】
以下の(A)~(C)の全工程を有する卵ソースの製造方法。
(A)20℃での10質量%水溶液の粘度が200mPa・s以下の水溶性多糖類を準備する工程。
(B)(A)の水溶性多糖類と、卵類を含む原料とを混合する工程。ただし、(A)の水溶性多糖類が、卵類の蛋白質の質量に対して0.5~250質量%となるように添加する。
(C)(B)で得られる混合物を加熱する工程。
【請求項5】
(C)の工程において、加熱温度が95℃未満である、請求項4記載の卵ソースの製造方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の製造方法により得られる卵ソースを利用する、食品の製造方法。
【請求項7】
以下の(a)~(c)の全工程を有する卵ソースの増粘促進方法。
(a)20℃での10質量%水溶液の粘度が200mPa・s以下の水溶性多糖類を準備する工程。
(b)(a)の水溶性多糖類と、卵類を含む原料とを混合する工程。ただし、(a)の水溶性多糖類が、卵類の蛋白質の質量に対して0.5~250質量%となるように添加する。
(c)(b)で得られる混合物を加熱する工程。
【請求項8】
(c)の工程において、加熱温度が95℃未満である、請求項7記載の卵ソースの増粘促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵ソース用増粘促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液卵に味付けや粘性等を付与した卵加工物が様々な用途で活用されている。
例えば、カップ焼きそばや、照り焼きのタレに用いるソースや、ハンバーグやおにぎりに包餡するための中具、マヨネーズや調味液のコク出し、増粘目的で、流動性を有するソース状の卵加工物(以後、本発明において「卵ソース」と称する)が使用されている。これらの用途に卵加工物を用いる場合、卵加工物が「絡みやすくする」「外部に染み出させない」「増粘させて離水させない」ようにするため、適度な粘度を付与することが必要である。
一般的に卵加工物の物性をコントロールする方法として、多糖類等の増粘剤を用いる方法があり、例えば、グルコマンナンを添加する方法に関する技術(特許文献1)、キサンタンガム等の増粘多糖類を添加して粘度を調整した全卵液を使用する卵液の製造方法に関する技術(特許文献2)等がある。
また、卵の熱凝固力を利用した方法としてエタノールを添加する方法も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2011/033807号公報
【特許文献2】特開平8-116925号公報
【特許文献3】特開2019-187265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1や2の技術のようにキサンタンガムやグルコマンナンなどの増粘剤を用いた場合、粘度は増加するため、「食材に絡みやすくなる」という効果や「増粘させて外部に染み出させない」という効果を得られるものの、増粘剤自体による物性が大きく発現するため卵本来の食感や風味が損なわれるという問題があった。また、特許文献3の技術ではエタノールを用いて増粘させてもアルコールによる風味を感じるため一定以上のナトリウムを添加して濃い味付けにしなければ望ましい風味が得られないという問題があった。
以上の如く、卵の風味・食感を損なうことなく増粘させる方法として満足される手法が確立されていない。
本発明は、卵の風味・食感を損なうことなく卵ソースを増粘させることができる素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題の解決に対し鋭意検討を重ねた結果、20℃での10質量%水溶液の粘度が200mPa・s以下の水溶性多糖類を含む卵ソース用増粘促進剤が卵の風味・食感を損なうことなく卵ソースを増粘させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)20℃での10質量%水溶液の粘度が200mPa・s以下の水溶性多糖類を含む、卵ソース用増粘促進剤、
(2)(1)記載の卵ソース用増粘促進剤を含有する、卵ソース、
(3)(2)記載の卵ソースを利用した食品、
(4)以下の(A)~(C)の全工程を有する卵ソースの製造方法、
(A)20℃での10質量%水溶液の粘度が200mPa・s以下の水溶性多糖類を準備する工程、
(B)(A)の水溶性多糖類と、卵類を含む原料とを混合する工程。ただし、(A)の水溶性多糖類が、卵類の蛋白質の質量に対して0.5~250質量%となるように添加する、
(C)(B)で得られる混合物を加熱する工程。
(5)(C)の工程において、加熱温度が95℃未満である、(4)記載の卵ソースの製造方法、
(6)(4)または(5)記載の製造方法により得られる卵ソースを利用する、食品の製造方法、
(7)以下の(a)~(c)の全工程を有する卵ソースの増粘促進方法、
(a)20℃での10質量%水溶液の粘度が200mPa・s以下の水溶性多糖類を準備する工程。
(b)(a)の卵ソース用増粘促進剤と、卵類を含む原料とを混合する工程。ただし、該卵ソース用増粘促進剤に含まれる水溶性多糖類が、卵類の蛋白質の質量に対して0.5~250質量%となるように添加する、
(c)(b)で得られる混合物を加熱する工程、
(8)(c)の工程において、加熱温度が95℃未満である、(7)記載の卵ソースの増粘促進方法、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の卵ソース用増粘促進剤を用いることにより、卵の風味・食感を損なうことなく増粘させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(卵ソース用増粘促進剤)
本発明の卵ソース用増粘促進剤は、20℃での10質量%水溶液の粘度が200mPa・s以下の水溶性多糖類を含むことを特徴とする。
本発明の卵ソース用増粘促進剤を、卵ソースの製造時に添加することで、卵ソースの増粘を促進しつつ風味も良好な卵ソースを得ることができる。
本発明において卵ソースの「増粘促進」とは、無添加よりも粘度が高くなる(上昇する)ことを意味する。好ましくは、後述する、粘度測定において、無添加の卵ソースの粘度に対する、該水溶性多糖類を添加した卵ソースの粘度が110%以上、すなわち粘度上昇率が110%以上であることをいう。
また、本発明の卵ソース用増粘促進剤は、風味や食感を損なわずに卵ソースの増粘促進ができる特徴を有する。この点、他の増粘多糖類を用いた場合、増粘の程度が無添加のものよりも低いか、増粘しても卵ソースの食感や風味が悪くなり、卵ソースの品質の点においても、本発明の卵ソース用増粘促進剤は優れている。
また、本発明の卵ソース用増粘促進剤で増粘促進させる温度、すなわち加熱温度として、好ましくは95℃未満であり、より好ましくは90℃以下、85℃以下、80℃以下とすることができる。また、下限の温度は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは55℃以上、60℃以上または65℃以上とすることができる。
本発明の卵ソース用増粘促進剤に用いる水溶性多糖類の、該卵ソース用増粘促進剤中の含有量は、固形分中、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、100質量%とすることができる。
本発明の卵ソース用増粘促進剤の形態は限定されず、液体、粉末、造粒物などの形態で使用することができる。
【0009】
本発明の卵ソース用増粘促進剤には、本発明の効果を損なわない範囲で適宜、他の添加剤と併用することができる。他の添加剤としては、砂糖、グルコース,フルクトース等の単糖類、蔗糖,マルト─ス,ラクトース,ラフィノース,マルトトリオース,トレハロ─ス,スタキオース,マルトテトラオース等の少糖類、及び糖アルコ─ル、ぶどう糖果糖液糖、水あめ、還元水あめ、オリゴ糖、還元オリゴ糖、はちみつ、スクラロース、アスパルテーム、ステビアなどの甘味料、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油、卵黄油等の動植物油又はこれらの精製油(サラダ油)、あるいはMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的、酵素的処理等を施して得られる油脂などの食用油脂、塩類、食塩、醤油、胡椒、アミノ酸、塩化カルシウム、核酸等の調味料類、酢酸,クエン酸,乳酸,アジピン酸,グルコン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸、アスコルビン酸等の酸味料、湿熱処理澱粉、加工澱粉、ビタミンE等の酸化防止剤、色素等が挙げられる。
【0010】
(卵ソース)
本発明において卵ソースとは、卵類(全卵、卵黄または卵白)を含有し、流動性を有するソース状の食品ないしは食品素材である。好ましくは全卵または卵黄と各種食品原料を混合したものである。
また、卵類としては生卵を割卵して用いる他、各種液卵、加糖液卵、冷凍卵、粉末(乾燥)卵等をいずれも使用でき、これらの単独または2種以上を適宜混合して使用することもできる。
本発明の卵ソースには、砂糖、グルコース,フルクトース等の単糖類、蔗糖,マルト─ス,ラクトース,ラフィノース,マルトトリオース,トレハロ─ス,スタキオース,マルトテトラオース等の少糖類、及び糖アルコ─ル、ぶどう糖果糖液糖、水あめ、還元水あめ、オリゴ糖、還元オリゴ糖、はちみつ、スクラロース、アスパルテーム、ステビアなどの甘味料、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油、卵黄油等の動植物油又はこれらの精製油(サラダ油)、あるいはMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的、酵素的処理等を施して得られる油脂などの食用油脂、塩類、食塩、醤油、胡椒、アミノ酸、塩化カルシウム、核酸等の調味料類、酢酸,クエン酸,乳酸,アジピン酸,グルコン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸、アスコルビン酸等の酸味料、湿熱処理澱粉、加工澱粉、ビタミンE等の酸化防止剤、色素等を配合することができる。
【0011】
上記卵ソースは、他の食品と適宜組み合わせて利用することができる。利用形態としては卵ソースを各種調理食品や食品素材にかける、塗布する、添える、混合する、内包する、などの態様が例示でき、より具体的には焼きそば等のソース、照り焼きのたれに用いるソース、ハンバーグやおにぎり等に包餡する中具に用いるソース、マヨネーズや調味液のコクを付与するためのソース、親子丼やかつ丼用のソース、増粘目的に用いるソース等に用いることができる。
【0012】
(水溶性多糖類)
本発明の水溶性多糖類として、大豆、エンドウ豆、小豆、ササゲ、インゲン豆、ソラ豆、ヒヨコ豆、レンズ豆、アラビアゴムノキ等の豆科植物由来の水溶性多糖類、プルラン等が例示できる。豆科植物由来の水溶性多糖類として、好ましくは、水溶性大豆多糖類、水溶性エンドウ多糖類またはアラビアガムである。
これらの水溶性多糖類の20℃での10質量%水溶液の粘度の上限は、好ましくは180mPa・s以下である。
また、水溶性多糖類の20℃での10質量%水溶液の粘度の下限は、好ましくは、3mPa・s以上、4mPa・s以上、5mPa・s以上、8mPa・s以上、または10mPa・s以上とすることができる。
これらの水溶性多糖類は2種以上を併用して使用することができる。
また、ある実施形態において、本発明の水溶性多糖類の20℃での10質量%水溶液の粘度の上限は、好ましくは100mPa・s以下であり、より好ましくは80mPa・s以下、70mPa・s以下、60mPa・s以下、50mPa・s以下とすることができる。このような水溶性多糖類として、水溶性大豆多糖類、水溶性エンドウ多糖類またはアラビアガム等が例示できる。
なお、水溶性多糖類の粘度は、TVB-10形粘度計(東機産業株式会社製、スピンドルNo.M1またはM2、攪拌速度20、60、100rpm)で測定する。
前記、水溶性多糖類の20℃での10質量%水溶液の粘度の上限と下限は任意の値を組み合わせることができる。
【0013】
(水溶性大豆多糖類)
本発明でいう水溶性大豆多糖類とは、大豆種子から抽出される水溶性の多糖類を指す。好ましくは大豆種子の子実部から抽出されたものであり、更に好ましくは豆腐や分離大豆蛋白などを生産する場合に副産物として生じるオカラから抽出されたものである。脱脂大豆から得られたオカラを使用するのが更に好ましい。その製造法は、例えばオカラを原料とし、アルカリ性域乃至は弱酸性域の条件下で100℃を超える温度、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下で抽出し、固液分離することにより得られる。商品名としては、例えば、「ソヤファイブ-S」(不二製油株式会社製)等が例示される。
【0014】
(水溶性エンドウ多糖類)
本発明でいう水溶性エンドウ多糖類とは、エンドウ豆種子から抽出される水溶性の多糖類を指す。好ましくはエンドウ豆種子の子実部から抽出されたものであり、更に好ましくは黄色エンドウの種子から抽出されたものである。その製造法は、例えばWO2012/17682号の明細書に記載される製造例で得ることが出来る。商品名としては「FIPEA-D」(不二製油株式会社製)が例示される。
【0015】
(卵ソースの製造方法)
本発明の卵ソースの製造方法について以下に例示して説明する。
本発明の特定の性質の水溶性多糖類を含む卵ソース用増粘促進剤を、卵類を含む原材料と混合し、加熱することにより得られる。
卵ソース用増粘促進剤は、該卵ソース用増粘促進剤に含まれる水溶性多糖類が、好ましくは、卵の蛋白質の質量に対して、0.5~250質量%となるように添加する。
添加量の下限はより好ましくは、卵の蛋白質の質量に対して、1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、2.5質量%以上とすることができる。
また、添加量の上限は、より好ましくは230質量%以下、200質量%以下、150質量%以下、100質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下とすることができる。
また、加熱温度は好ましくは95℃未満であり、より好ましくは90℃以下、85℃以下とすることができる。また、下限の温度は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは55℃以上、60℃以上または65℃以上とすることができる。
また、加熱時間は好ましくは、5分間以上であり、より好ましくは8分間以上、10分間以上、12分間以上、15分間以上とすることもできる。また、加熱時間の上限は、好ましくは120分間以下であり、より好ましくは100分間以下、90分間以下、80分間以下、70分間以下とすることができる。
【実施例0016】
以下に実施例を記載することで本発明を説明する。尚、例中の%は特に断らない限り質量基準を意味するものとする。
【0017】
本発明において、卵ソース用増粘促進剤として使用した水溶性多糖類は以下の通りである。
○水溶性大豆多糖類:「ソヤファイブ-S-DA100」(不二製油株式会社製、10%水溶液の粘度: 40.0mPa・s)
○水溶性エンドウ多糖類:「FIPEA-D」(不二製油株式会社製、10%水溶液の粘度:21.0mPa・s)
○デキストリン:「マルデックPH400P」(昭和産業株式会社製、10%水溶液の粘度:2.6mPa・s)
○HMペクチン:「GENU pectin type YM-115-LJ」(三晶株式会社製、10%水溶液の粘度:高粘度のため測定不可)
○アラビアガム:「アラビックコールSS」(三栄薬品貿易株式会社製、10%水溶液の粘度:12.2mPa・s)
○プルラン:(株式会社林原製、10%水溶液の粘度:177.7mPa・s)
○キサンタンガム:「サチアキサンCX91」(カーギルジャパン合同会社製、10%水溶液の粘度:高粘度のため測定不可)
【0018】
(卵黄を用いた卵ソースの試験)
表1-1、表1-2の配合で、原料を混合し、各加熱条件で加熱し卵ソースを得た。
なお、混合は、回転式粘度計(RheolabQC、ヤマト科学製、共軸円筒型ペルチェ温調システム、共軸円筒測定システムCC27/QC-LTD、羽根型測定システム(ST24-2D/2V/2V-30/109(特注))を用いて100rpmの攪拌速度で行った。加熱条件は、規定の温度(70℃)まで10分かけて昇温させ、達温後30~60分間加熱した。
なお、卵黄を用いた卵ソースの増粘促進の評価は、上記、回転式粘度計を用いて評価することとする。粘度測定は、70℃達温後、30~60分間の各時間加熱後の粘度を測定した。
なお、卵黄の蛋白質量は16.5%であった。結果を表1-1(実施例1~4、比較例1~2)、表1-2(実施例5~8、比較例3~5)に示した。
【0019】
表1-1、表1-2の評価基準は以下の通りである。なお、風味評価、食感評価はパネル5名で評価し、パネルの合意により評価を決定した。
(粘度評価)
◎:無添加に対する粘度上昇率が150%以上
○:無添加に対する粘度上昇率が110~149%
△:無添加に対する粘度上昇率が80~109%
×:無添加に対する粘度上昇率が79%以下
(風味評価)
○:卵ソースの風味として問題無く良好である。
×:卵ソースの風味として違和感があり不良である。
(食感評価)
○:多糖類無添加の卵ソースを加熱したときと同様の粘性を感じる食感であり、良好である。
×:多糖類無添加の卵ソースを加熱したときとは異なる粘性を感じる食感であり、不良である。
(総合評価)
◎:粘度評価が◎、かつ、風味評価が○、かつ、食感評価が○
○:粘度評価が○、かつ、風味評価が○、かつ、食感評価が○
×:粘度評価、風味評価、食感評価の少なくとも1つが×、または、粘度評価が△、風味評価、食感評価の少なくとも1つが×
総合評価が、◎または○の場合、合格と判断した。
【0020】
【0021】
【0022】
実施例1~8の卵黄を用いた卵ソースの粘度上昇率は良好であった。また、風味も卵ソースの風味として良好であった。また、食感も多糖類無添加の卵ソースを加熱したときと同様の粘性が感じられ良好であった。
【0023】
(全卵を用いた卵ソースの試験)
表2の配合に従い、実施例1と同様に原料を混合し、72℃、10分の加熱条件で加熱し卵ソースを得た。結果を表2に示した。なお、全卵を用いた卵ソースの増粘促進の評価は、卵黄を用いた卵ソースと同様に回転式粘度計を用いて評価することとする。粘度測定は、72℃達温後、10分間加熱後の粘度を測定した。なお、全卵の蛋白質量は12.2%であった。
【0024】
表2の評価基準は以下の通りである。なお、風味評価、食感評価はパネル5名で評価し、パネルの合意により評価を決定した。
(粘度評価)
◎:無添加に対する粘度上昇率が200%以上
○:無添加に対する粘度上昇率が120~199%
△:無添加に対する粘度上昇率が70~119%
×:無添加に対する粘度上昇率が69%以下
(風味評価)
○:卵ソースの風味として問題無く良好である。
×:卵ソースの風味として違和感があり不良である。
(食感評価)
○:多糖類無添加の卵ソースを加熱したときと同様の粘性を感じる食感であり、良好である。
×:多糖類無添加の卵ソースを加熱したときとは異なる粘性を感じる食感であり、不良である。
(総合評価)
◎:粘度評価が◎、かつ、風味評価が○
○:粘度評価が○、かつ、風味評価が○
×:粘度評価、風味評価、食感評価の少なくとも1つが×、または、粘度評価が△、風味評価、食感評価の少なくとも1つが×
総合評価が、◎または○の場合、合格と判断した。
【0025】
【0026】
実施例9~10の全卵を用いた卵ソースの粘度上昇率は良好であった。また、風味も卵ソースの風味として良好であった。また、食感も多糖類無添加の卵ソースを加熱したときと同様の粘性が感じられ良好であった。
【0027】
(卵白を用いた卵ソースの試験)
表3の配合に従い、各原料をマグネチックスターラーで混合(オクタゴン回転子:38mm×φ8mm)し、卵ソースを得た。卵ソースを包材(材質:ポリエチレン、ポリアミド、内寸15.5cm×11cm)に200g充填した。これを湯に完全に浸した状態で、62℃、10分間、あるいは57℃、10分間の加熱条件で加熱後氷水を用いて20℃まで冷却した。
なお、卵白を用いた卵ソースの増粘促進の評価は、TVB-10形粘度計(東機産業株式会社製)を用いて評価することとする。粘度測定条件は、スピンドルNo.M2、攪拌速度20rpmの条件(20℃)で粘度を測定した。結果を表3に示した。なお、全卵の蛋白質量は12.2%であった。
【0028】
表3の評価基準は以下の通りである。なお、風味評価、食感評価はパネル5名で評価し、パネルの合意により評価を決定した。
(粘度評価)
◎:無添加に対する粘度上昇率が150%以上
○:無添加に対する粘度上昇率が110~149%
△:無添加に対する粘度上昇率が80~109%
×:無添加に対する粘度上昇率が79%以下
(風味評価)
○:卵ソースの風味として問題無く良好である。
×:卵ソースの風味として違和感があり不良である。
(食感評価)
○:多糖類無添加の卵ソースを加熱したときと同様の粘性を感じる食感であり、良好である。
×:多糖類無添加の卵ソースを加熱したときとは異なる粘性を感じる食感であり、不良である。
(総合評価)
◎:粘度評価が◎、かつ、風味評価が○
○:粘度評価が○、かつ、風味評価が○
×:粘度評価、風味評価、食感評価の少なくとも1つが×、または、粘度評価が△、風味評価、食感評価の少なくとも1つが×
総合評価が、◎または○の場合、合格と判断した。
【0029】
【0030】
実施例11~12の卵白を用いた卵ソースの粘度上昇率は良好であった。また、風味も卵ソースの風味として良好であった。また、食感も多糖類無添加の卵ソースを加熱したときと同様の粘性が感じられ良好であった。
【0031】
(各種多糖類の検討1)
表4の配合に従い、実施例1と同様に原料を混合し、各加熱条件で加熱し卵ソースを得た。結果を表4に示した。評価基準は実施例9と同様にした。
なお、本実施例において、加熱が70℃、15分及び70℃、40分での粘度を測定している。それぞれで粘度評価が異なる場合、悪い方の評価とする。例えば、70℃、10分の加熱のものが評価が「○」であり、70℃、40分の加熱のものが評価が「△」の場合、その実施例の評価は「△」とする。
【0032】
【0033】
全卵を用いた卵ソースで、水溶性大豆多糖類以外の多糖類として、水溶性エンドウ多糖類、アラビアガム、プルランも卵ソースの粘度上昇率が良好な結果となった。また、風味も卵ソースの風味として良好であった。また、食感も多糖類無添加の卵ソースを加熱したときと同様の粘性が感じられ良好であった。
【0034】
(各種多糖類の検討2)
表5の配合に従い、実施例1と同様に原料を混合し、各加熱条件で加熱し卵ソースを得た。結果を表5に示した。
評価基準は実施例13と同様に行った。
【0035】
【0036】
全卵を用いた卵ソースで、比較例10(デキストリン)、比較例11、12(HMペクチン)、比較例14、15(キサンタンガム)は、卵ソースの粘度上昇率が不良であり、風味も良くなかった。
また、食感は、比較例10では、多糖類無添加の卵ソースを加熱したものと同等の食感を有していた。
比較例11、12、比較例14、15では、非常にねちゃつきのある食感であり、多糖類無添加の卵ソースを加熱したときとは異なる粘性を感じる食感であり、不良であった。
また、比較例13(エタノール)は、食感は良好だったが、風味が不良であった。
【0037】
(比較例16、実施例20~21)
卵ソースを凍結後解凍した場合の増粘の影響について検討を行った。
表6の配合に従い、実施例1と同様に原料を混合し、各加熱条件で加熱することにより、卵ソースを得た。各卵ソースは、20℃まで冷却された。その後、実施例1に用いた回転式粘度計で粘度を測定した。
さらに、各卵ソースを-20℃の冷凍庫に入れて凍結した。凍結20日後に、流水解凍したのち、20℃における粘度を回転式粘度計で測定した。結果を表6に示した。
【0038】
【0039】
実施例20~21の凍結後解凍した卵ソースには、比較例16の多糖類無添加の卵ソースと比較して、増粘が認められた。粘度評価は良好だった。また、風味評価及び食感評価も良好だった。