(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167928
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】半導体回路装置及びスイッチングレギュレーター
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241128BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H01L27/04 C
H01L27/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084243
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】浅野 恵生
(72)【発明者】
【氏名】山元 佑基
【テーマコード(参考)】
5F038
5H730
【Fターム(参考)】
5F038AC03
5F038AC05
5F038AC07
5F038AC14
5F038AR09
5F038AR12
5F038BG01
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5F038DF01
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5H730AA15
5H730AS04
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5H730BB13
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5H730BB57
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5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FF01
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】位相補償回路の抵抗に生じる寄生容量がスイッチングレギュレーターの周波数特性に与える影響を、低減できる半導体回路装置等を提供すること。
【解決手段】半導体回路装置100は、スイッチングレギュレーター200の出力電圧VOUTに基づいて電流を出力するトランスコンダクタンスアンプ110と、トランスコンダクタンスアンプ110の出力ノードNVCに接続される位相補償回路120と、スイッチング信号出力回路130とを含む。位相補償回路120は、トランスコンダクタンスアンプ110の出力ノードNVCと低電位側電源ノードとの間に直列接続される抵抗RC及び第1キャパシターCC1と、出力ノードNVCと低電位側電源ノードとの間に接続される第2キャパシターCC2と、容量素子とを含む。抵抗RCは、第1ウェル上に、絶縁膜350を介して設けられる。容量素子は、第1ウェルと所定電位ノードとの間に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ素子とインダクターを用いて入力電圧をレギュレートするスイッチングレギュレーターに用いられる半導体回路装置であって、
前記スイッチングレギュレーターの出力電圧に基づいて電流を出力するトランスコンダクタンスアンプと、
前記トランスコンダクタンスアンプの出力ノードに接続される位相補償回路と、
前記トランスコンダクタンスアンプの前記出力ノードの電圧と、前記インダクターに流れる電流に応じた電圧とに基づいて、前記スイッチ素子のスイッチング信号を出力するスイッチング信号出力回路と、
を含み、
前記位相補償回路は、
前記トランスコンダクタンスアンプの前記出力ノードと低電位側電源ノードとの間に直列接続される抵抗及び第1キャパシターと、
前記トランスコンダクタンスアンプの前記出力ノードと前記低電位側電源ノードとの間に接続される第2キャパシターと、
容量素子と、
を含み、
前記抵抗は、半導体基板に設けられた第1ウェル上に、絶縁膜を介して設けられ、
前記容量素子は、前記第1ウェルと所定電位ノードとの間に接続されることを特徴とする半導体回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載された半導体回路装置において、
前記容量素子の容量値は、前記抵抗と前記第1ウェルとの間の寄生容量の容量値よりも小さいことを特徴とする半導体回路装置。
【請求項3】
請求項1に記載された半導体回路装置において、
前記容量素子は、MIMキャパシター、ポリシリコンキャパシター又は拡散容量素子であることを特徴とする半導体回路装置。
【請求項4】
請求項1に記載された半導体回路装置において、
前記第1ウェルは、第1導電性のウェルであり、前記半導体基板に設けられた第2導電性の第2ウェル上に設けられ、
前記容量素子は、前記第1ウェルと前記第2ウェルの間のジャンクション容量であることを特徴とする半導体回路装置。
【請求項5】
請求項4に記載された半導体回路装置において、
前記第1ウェルは、P型ウェルであり、
前記第2ウェルは、N型ウェルであり、前記第1ウェルの電位より高い電位に設定されることを特徴とする半導体回路装置。
【請求項6】
請求項1に記載された半導体回路装置において、
前記抵抗は、ポリシリコン抵抗であり、
前記絶縁膜は、シリコン酸化膜であることを特徴とする半導体回路装置。
【請求項7】
請求項1に記載された半導体回路装置において、
前記半導体基板の第1層のメタル層は、平坦化用のダミーメタルを含み、
前記ダミーメタルは、前記半導体基板に対する平面視において、前記抵抗に重なる領域には非配置であることを特徴とする半導体回路装置。
【請求項8】
請求項7に記載された半導体回路装置において、
前記平面視において、前記抵抗に重なる前記領域、及び前記領域の周囲に設けられるマージン領域には、前記ダミーメタルが非配置であることを特徴とする半導体回路装置。
【請求項9】
請求項7に記載された半導体回路装置において、
前記平面視において、前記抵抗は蛇行形状であり、前記抵抗の配置領域を内包する矩形領域には、前記ダミーメタルが非配置であることを特徴とする半導体回路装置。
【請求項10】
請求項7に記載された半導体回路装置において、
前記半導体基板のトップメタル層は、平坦化用のダミーメタルを含み、
前記平面視において、前記抵抗に重なる前記領域には、前記トップメタル層の前記ダミーメタルが配置されることを特徴とする半導体回路装置。
【請求項11】
スイッチ素子とインダクターを用いて入力電圧をレギュレートするスイッチングレギュレーターに用いられる半導体回路装置であって、
前記スイッチングレギュレーターの出力電圧に基づいて電流を出力するトランスコンダクタンスアンプと、
前記トランスコンダクタンスアンプの出力ノードに接続される位相補償回路と、
前記トランスコンダクタンスアンプの前記出力ノードの電圧と、前記インダクターに流れる電流に応じた電圧とに基づいて、前記スイッチ素子のスイッチング信号を出力するスイッチング信号出力回路と、
を含み、
前記位相補償回路は、
前記トランスコンダクタンスアンプの前記出力ノードと低電位側電源ノードとの間に直列接続される抵抗及び第1キャパシターと、
前記トランスコンダクタンスアンプの前記出力ノードと前記低電位側電源ノードとの間に接続される第2キャパシターと、
を含み、
前記抵抗は、半導体基板に設けられた第1ウェル上に、絶縁膜を介して設けられ、
前記半導体基板の第1層のメタル層は、平坦化用のダミーメタルを含み、
前記半導体基板に対する平面視において、前記抵抗に重なる領域には、前記ダミーメタルが非配置であることを特徴とする半導体回路装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載された半導体回路装置と、
前記インダクターと、
を含むことを特徴とするスイッチングレギュレーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体回路装置及びスイッチングレギュレーター等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、昇圧型の電流モード制御スイッチングレギュレーターが開示されている。このスイッチングレギュレーターは、トランスコンダクタンスアンプ及び位相補償回路を有する出力電圧フィードバック回路を含む。位相補償回路は、トランスコンダクタンスアンプの出力ノードとグランドとの間に直列接続された抵抗及びキャパシターを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0152099号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
位相補償回路により周波数特性のゼロ点が生成されるが、そのゼロ点を低周波数に設定するためには、抵抗の抵抗値とキャパシターの容量値との積を大きくする必要がある。キャパシターの容量値を大きくするとチップ面積が大きくなるため、抵抗の抵抗値を大きくすることが望ましい。しかしながら、抵抗の面積が大きくなるため、抵抗と他のレイヤーとの間に意図しない寄生容量が生じ、その寄生容量によって意図しないポール又はゼロ点が発生するという課題がある。これらのポール又はゼロ点は、例えば、スイッチングレギュレーターの帯域又は位相余裕に影響する。上記の特許文献1には、抵抗と他のレイヤーとの間に生じる寄生抵抗、及びその影響について、開示も示唆もされていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、スイッチ素子とインダクターを用いて入力電圧をレギュレートするスイッチングレギュレーターに用いられる半導体回路装置であって、前記スイッチングレギュレーターの出力電圧に基づいて電流を出力するトランスコンダクタンスアンプと、前記トランスコンダクタンスアンプの出力ノードに接続される位相補償回路と、前記トランスコンダクタンスアンプの前記出力ノードの電圧と、前記インダクターに流れる電流に応じた電圧とに基づいて、前記スイッチ素子のスイッチング信号を出力するスイッチング信号出力回路と、を含み、前記位相補償回路は、前記トランスコンダクタンスアンプの前記出力ノードと低電位側電源ノードとの間に直列接続される抵抗及び第1キャパシターと、前記トランスコンダクタンスアンプの前記出力ノードと前記低電位側電源ノードとの間に接続される第2キャパシターと、容量素子と、を含み、前記抵抗は、半導体基板に設けられた第1ウェル上に、絶縁膜を介して設けられ、前記容量素子は、前記第1ウェルと所定電位ノードとの間に接続される半導体回路装置に関係する。
【0006】
本開示の他の態様は、スイッチ素子とインダクターを用いて入力電圧をレギュレートするスイッチングレギュレーターに用いられる半導体回路装置であって、前記スイッチングレギュレーターの出力電圧に基づいて電流を出力するトランスコンダクタンスアンプと、前記トランスコンダクタンスアンプの出力ノードに接続される位相補償回路と、前記トランスコンダクタンスアンプの前記出力ノードの電圧と、前記インダクターに流れる電流に応じた電圧とに基づいて、前記スイッチ素子のスイッチング信号を出力するスイッチング信号出力回路と、を含み、前記位相補償回路は、前記トランスコンダクタンスアンプの前記出力ノードと低電位側電源ノードとの間に直列接続される抵抗及び第1キャパシターと、前記トランスコンダクタンスアンプの前記出力ノードと前記低電位側電源ノードとの間に接続される第2キャパシターと、を含み、前記抵抗は、半導体基板に設けられた第1ウェル上に、絶縁膜を介して設けられ、前記半導体基板の第1層のメタル層は、平坦化用のダミーメタルを含み、前記半導体基板に対する平面視において、前記抵抗に重なる領域には、前記ダミーメタルが非配置である半導体回路装置に関係する。
【0007】
本開示の更に他の態様は、上記の半導体回路装置と、前記インダクターと、を含むスイッチングレギュレーターに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】スイッチングレギュレーターの周波数特性を説明する図。
【
図3】スイッチングレギュレーターの周波数特性を説明する図。
【
図4】半導体基板の厚み方向に平行な断面における、位相補償回路の抵抗の断面図。
【
図6】寄生容量の影響を低減する第1手法を説明する図。
【
図7】寄生容量の影響を低減する第2手法を説明する図。
【
図8】寄生容量の影響を低減する第3手法を説明する図。
【
図9】抵抗の抵抗値が小さく、抵抗の寄生容量の影響が小さいときの補償器の周波数特性のシミュレーション例。
【
図10】抵抗の抵抗値が大きく、抵抗の寄生容量の影響が大きいときの補償器の周波数特性のシミュレーション例。
【
図11】第1手法を用いたときの補償器の周波数特性のシミュレーション例。
【
図12】寄生容量の影響を低減する第4手法を説明する図。
【
図13】第4手法を用いたときの補償器の周波数特性のシミュレーション例。
【
図14】平坦化のためのダミーメタルを設けたときの、位相補償回路の抵抗の断面図。
【
図15】寄生容量の影響を低減する第5手法を説明する図。
【
図20】インダクタンス電流検出回路の詳細構成例。
【
図21】インダクタンス電流検出回路の信号波形例。
【
図23】トランスコンダクタンスアンプの詳細構成例。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。例えば、以下では降圧型のスイッチングレギュレーターを例に説明するが、本実施形態における寄生容量の影響を低減する手法は、昇圧型のスイッチングレギュレーターにも適用可能である。
【0010】
1.スイッチングレギュレーター及び半導体回路装置
図1は、スイッチングレギュレーターの構成例である。スイッチングレギュレーター200は、電源250と半導体回路装置100とインダクター210とキャパシター220とを含む。
【0011】
電源250は、低電位側電源VSSが供給される低電位側電源ノードと、スイッチングレギュレーター200の入力ノードNHとの間に接続される。電源250は、スイッチングレギュレーター200への入力電圧VHを生成する。電源250は、AC/DCコンバーター又はDC/DCコンバーターのいずれでもよい。なお、本実施形態における接続は電気的な接続である。電気的な接続とは、電気信号が伝達可能に接続されていることであり、電気信号による情報の伝達が可能となる接続である。電気的な接続は受動素子又は能動素子等を介した接続であってもよい。
【0012】
インダクター210の一端は、スイッチノードNSWに接続され、他端は、スイッチングレギュレーター200の出力ノードNOUTに接続される。キャパシター220の一端は、ノードNOUTに接続され、他端は、低電位側電源ノードに接続される。
【0013】
出力ノードNOUTと低電位側電源ノードの間には、スイッチングレギュレーター200の負荷290が設けられる。負荷290は、スイッチングレギュレーター200の出力電圧VOUTを電源電圧として用いる回路である。
【0014】
半導体回路装置100は、スイッチングレギュレーター200の出力電圧VOUTが所定の電圧となるように、スイッチングレギュレーター200を制御する。半導体回路装置100は、半導体基板に複数の回路素子が集積された集積回路装置である。半導体回路装置100は、スイッチ素子SWTとダイオード160と抵抗RA1と抵抗RA2と電圧生成回路140とトランスコンダクタンスアンプ110と位相補償回路120とスイッチング信号出力回路130とを含む。なお、スイッチ素子SWT、ダイオード160、抵抗RA1、抵抗RA2、及び電圧生成回路140が、半導体回路装置100の外部に設けられてもよい。
【0015】
スイッチ素子SWTは、トランジスターであり、スイッチング信号CSWTによりオン又はオフに制御される。
図1にはスイッチ素子SWTがN型トランジスターである例を示すが、P型トランジスターであってもよい。スイッチ素子SWTのソースは、スイッチノードNSWに接続され、ドレインは、入力ノードNHに接続される。スイッチ素子SWTのゲートには、スイッチング信号CSWTが入力される。
【0016】
ダイオード160のアノードは、低電位側電源ノードに接続され、カソードは、スイッチノードNSWに接続される。なお、ダイオード160の代わりにスイッチ素子が設けられてもよい。そのスイッチ素子は、スイッチ素子SWTがオンのときオフであり、スイッチ素子SWTがオフのときオンである。
【0017】
抵抗RA1の一端は、出力ノードNOUTに接続され、他端は、トランスコンダクタンスアンプ110の反転入力端子に接続される。抵抗RA2の一端は、トランスコンダクタンスアンプ110の反転入力端子に接続され、他端は、低電位側電源ノードに接続される。抵抗RA1及び抵抗RA2は、出力電圧VOUTを電圧DVOUTに分圧する。
【0018】
電圧生成回路140は、トランスコンダクタンスアンプ110の正転入力端子と低電位側電源ノードとの間に接続される。電圧生成回路140は、出力電圧VOUTの電圧値を設定するための基準電圧VREFを生成する。半導体回路装置100が行うフィードバック制御によって、電圧DVOUTが基準電圧VREFと等しくなるように、出力電圧VOUTが制御される。
【0019】
トランスコンダクタンスアンプ110は、電圧DVOUTと基準電圧VREFの電圧差を電流に変換し、その電流をトランスコンダクタンスアンプ110の出力インピーダンスによって電圧VCに変換し、その電圧VCを出力ノードNVCへ出力する。
【0020】
位相補償回路120は、フィードバックループの位相補償を行う回路である。詳細は後述するが、位相補償回路120及びトランスコンダクタンスアンプ110の出力インピーダンスによって、スイッチングレギュレーター200全体としてのファーストポール及びセカンドポールを設定できる。これにより、スイッチングレギュレーター200の帯域及び位相余裕を制御できる。位相補償回路120は、抵抗RCと第1キャパシターCC1と第2キャパシターCC2とを含む。
【0021】
抵抗RC及び第1キャパシターCC1は、トランスコンダクタンスアンプ110の出力ノードNVCと低電位側電源ノードとの間に直列接続される。抵抗RCの一端は、出力ノードNVCに接続され、他端は、第1キャパシターCC1の一端に接続される。第1キャパシターCC1の他端は、低電位側電源ノードに接続される。第2キャパシターCC2の一端は、出力ノードNVCに接続され、他端は、低電位側電源ノードに接続される。
【0022】
スイッチング信号出力回路130は、トランスコンダクタンスアンプ110の出力ノードNVCの電圧VCと、インダクター210に流れる電流ILとに基づいて、スイッチ素子SWTのオンデューティーを制御する。即ち、スイッチング信号出力回路130は、電圧VCと電流ILとに基づいて、PWM信号であるスイッチング信号CSWTのパルス幅を制御する。PWMはPulse Width Modulationの略である。インダクター210に流れる電流ILは、スイッチ素子SWTのオン抵抗によって電圧に変換される。スイッチング信号出力回路130は、その電圧を、スイッチ素子SWTの両端の電位差から取得し、その電位差に基づいてPWM制御を行う。なお、インダクター210に流れる電流に基づく電圧は、スイッチ素子SWTの両端の電位差に限定されず、例えばインダクター210に対して直列に挿入されたセンス抵抗の両端の電位差であってもよい。
【0023】
図2及び
図3は、スイッチングレギュレーターの周波数特性を説明する図である。
図2に示すように、スイッチングレギュレーター200をプラントと補償器に分ける。補償器は、抵抗RA1、抵抗RA2、トランスコンダクタンスアンプ110及び位相補償回路120を含む。それ以外の部分がプラントである。プラントの伝達関数をGplantとし、補償器の伝達関数をGcとする。
【0024】
図3に、伝達関数のゲインの周波数特性を示す。Tsは、スイッチングレギュレーター200全体の伝達関数である。
【0025】
プラントの伝達関数Gplantは、周波数ωpp1のポールを持つ。周波数ωpp1は、プラントを構成する回路の回路定数によって決まる。補償器の伝達関数Gcは、周波数ωpc1のファーストポールと、周波数ωzc1のゼロ点と、周波数ωpc2のセカンドポールとを持つ。
図3に示すように、ゼロ点の周波数ωzc1は、位相補償回路120の抵抗RCと第1キャパシターCC1により設定される。ファーストポールの周波数ωpc1は、トランスコンダクタンスアンプ110の出力インピーダンスROと、位相補償回路120の第1キャパシターCC1により設定される。セカンドポールの周波数ωpc2は、位相補償回路120の抵抗RCと第2キャパシターCC2により設定される。これらの周波数は、ωpc1<ωzc1<ωpc2を満たす。
【0026】
補償器のゼロ点の周波数ωzc1は、プラントのポールの周波数ωpp1と略同一となるように設定される。即ち、周波数ωzc1が周波数pp1と略同一となるように、抵抗RCの抵抗値と第1キャパシターCC1の容量値とが設定される。これにより、スイッチングレギュレーター200全体としては、プラントのポールと補償器のゼロ点がキャンセルする。これにより、スイッチングレギュレーター200全体の伝達関数Tsは、周波数ωpc1のファーストポールと、周波数ωpc2のセカンドポールとを持つ伝達関数となる。これらのポールの周波数は補償器により制御されるので、補償器の回路定数を定めることによってスイッチングレギュレーター200の帯域及び位相余裕等を制御できる。
【0027】
2.本実施形態の手法
図4は、半導体基板の厚み方向に平行な断面における、位相補償回路の抵抗の断面図である。
【0028】
半導体基板300はP型基板であり、そのP型基板にN型ウェル320が設けられ、そのN型ウェル320上にP型ウェル310が設けられる。P型ウェル上に、LOCOSにより形成されたシリコン酸化膜が絶縁膜350として設けられる。LOCOSは、LOCal Oxidation of Siliconの略である。絶縁膜350上には、ポリシリコン抵抗360が設けられる。このポリシリコン抵抗360が位相補償回路120の抵抗RCに対応している。抵抗RCは、直列接続された複数のポリシリコン抵抗360であってもよい。P型ウェルに接続される端子をTBとする。ポリシリコン抵抗360の一端に接続される端子をTXとし、他端に接続される端子をTYとする。これらの端子は、導電プラグ又は配線層のメタルである。
【0029】
ポリシリコン抵抗360とP型ウェル310との間には、ポリシリコン抵抗360とP型ウェル310を電極とする寄生容量C1が生じる。この寄生容量C1は、端子TXと端子TBの間、及び端子TYと端子TBとの間に、発生する。
【0030】
図5は、抵抗と寄生容量の接続関係を示す回路図である。
図5に示す例では、抵抗RCは、直列接続された複数のポリシリコン抵抗360である。各ポリシリコン抵抗360の端部の端子TX、TYと、P型ウェル310の端子TBとの間に、寄生容量C1が生じる。端子TBは、様々な電位のノードに接続され得るが、一例として低電位側電源ノードに接続される。
【0031】
図3で説明したように、補償器のゼロ点の周波数ωzc1は、プラントのポールの周波数ωpp1と略同一となるように設定される。プラントのポールの周波数ωpp1が低周波数にある場合には、補償器のゼロ点の周波数ωzc1も低周波数となる。このとき、抵抗RCの抵抗値、又は第1キャパシターCC1の容量値を大きくする必要がある。このとき、第1キャパシターCC1の容量値を大きくし過ぎると、半導体回路装置100のチップ面積が増加することから、抵抗RCの抵抗値を大きくすることが望ましい。
【0032】
しかし、抵抗RCを大きくすると、
図4において1つのポリシリコン抵抗360の面積が大きくなって寄生容量C1が増加する、或いは
図5において直列に接続されるポリシリコン抵抗360の数が増加して抵抗RC全体として寄生容量が増加する。そうすると、補償器の伝達関数Gcにおいて、本来意図していないポール又はゼロ点が発生し、スイッチングレギュレーター200の周波数特性を適切に設定しにくくなる。例えば、
図3の補償器の伝達関数Gcにおいて、セカンドポールより低周波数のポールが発生した場合、そのポールがスイッチングレギュレーター200全体の伝達関数Tsにおけるセカンドポールになる。そうすると、設計したセカンドポールより低周波数に実際のセカンドポールが生じることになり、ファーストポールとセカンドポールの周波数差が小さくなる。これにより、スイッチングレギュレーター200の帯域が狭くなる、或いは位相余裕が小さくなるという問題がある。
【0033】
そこで本実施形態では、寄生容量C1に対して直列に容量素子を接続することで、実質的に寄生容量C1の容量値を小さくし、寄生容量C1の影響を低減する。以下、幾つかの実施形態を説明する。
【0034】
図6は、寄生容量の影響を低減する第1手法を説明する図である。本手法において、位相補償回路120は、P型ウェル310と低電位側電源ノードとの間に接続されたキャパシターC2を含む。このキャパシターC2が、寄生容量C1に対して直列に接続された容量素子である。キャパシターC2は、例えば、MIMキャパシター、ポリシリコンキャパシター又は拡散容量素子である。MIMは、Metal Insulator Metalの略である。キャパシターC2の容量値は、寄生容量C1の容量値よりも小さい。キャパシターC2の容量値は、寄生容量C1の容量値よりも十分に小さいことが望ましい。
【0035】
第1手法によれば、ポリシリコン抵抗360と低電位側電源ノードとの間に、直列に寄生容量C1とキャパシターC2が接続される。これにより、P型ウェル310が低電位側電源ノードに接続される場合に比べて、ポリシリコン抵抗360と低電位側電源ノードとの間の容量が小さく見える。このため、寄生容量C1によって生じるポール又はゼロ点の影響が小さくなり、適切な補償器の伝達関数Gcを得ることができる。
【0036】
図7は、寄生容量の影響を低減する第2手法を説明する図である。本手法において、P型の半導体基板300にN型ウェル330が設けられ、そのN型ウェル上に、LOCOSにより形成された絶縁膜350が設けられる。絶縁膜350上には、ポリシリコン抵抗360が設けられる。キャパシターC2は、N型ウェル330と、高電位側電源VDDが供給される高電位側電源ノードとの間に接続される。キャパシターC2は、例えば、MIMキャパシター、ポリシリコンキャパシター又は拡散容量素子である。MIMは、Metal Insulator Metalの略である。キャパシターC2の容量値は、寄生容量C1の容量値よりも小さい。
【0037】
第2手法によれば、ポリシリコン抵抗360と高電位側電源ノードとの間に、直列に寄生容量C1とキャパシターC2が接続される。これにより、N型ウェル330が高電位側電源ノードに接続される場合に比べて、ポリシリコン抵抗360と高電位側電源ノードとの間の容量が小さく見える。このため、寄生容量C1によって生じるポール又はゼロ点の影響が小さくなり、適切な補償器の伝達関数Gcを得ることができる。
【0038】
図8は、寄生容量の影響を低減する第3手法を説明する図である。本手法において、寄生容量C1に対して直列に接続される容量素子は、P型ウェル310とN型ウェル320の間のジャンクション容量CJである。N型ウェル320は電位VRに設定され、P型ウェル310は、直接には電位が与えられない。電位VRは、一例として高電位側電源VDDの電位であるが、これに限らず、ポリシリコン抵抗360の電位より高い電位であればよい。半導体回路装置100は、電位VRを生成する電圧生成回路を含んでもよい。電圧生成回路は、例えば、レギュレーター、或いはバンドギャップリファレンス回路及びボルテージフォロア回路である。或いは、半導体回路装置100の外部から電位VRが入力されてもよい。
【0039】
第3手法によれば、P型ウェル310とN型ウェル320のジャンクションに逆電圧が印加されるので、空乏層によってジャンクション容量CJが発生する。そして、ポリシリコン抵抗360と電位VRのノードとの間に、直列に寄生容量C1とジャンクション容量CJが接続されている。これにより、P型ウェル310が低電位側電源ノードに接続される場合の寄生容量C1に比べて、ポリシリコン抵抗360と電位VRのノードとの間の容量は小さい。このため、寄生容量C1によって生じるポール又はゼロ点の影響が小さくなり、適切な補償器の伝達関数Gcを得ることができる。
【0040】
図9~
図11は、補償器の周波数特性のシミュレーション例である。各図において、左図にゲインの周波数特性を示し、右図に位相の周波数特性を示す。CALA、CALB及びCALCは、伝達関数の数式から計算された周波数特性である。即ち、抵抗の寄生容量を考慮しない周波数特性である。SIMA、SIMB及びSIMCは、回路シミュレーションにより得られた周波数特性である。
【0041】
図9は、抵抗の抵抗値が小さく、抵抗の寄生容量の影響が小さいときの補償器の周波数特性のシミュレーション例である。シミュレーションによる周波数特性SIMAは、1Hz~10Hz付近にファーストポールを、100Hz~1kHz付近にゼロ点を、100kHz付近にセカンドポールを有する。これらは、計算による周波数特性CALAのファーストポール、ゼロ点、及びセカンドポールと略一致している。
【0042】
図10は、抵抗の抵抗値が大きく、抵抗の寄生容量の影響が大きいときの補償器の周波数特性のシミュレーション例である。抵抗RCの抵抗値は、
図9における抵抗値の10倍である。シミュレーションによる周波数特性SIMBは、1Hz~10Hz付近にファーストポールを、10Hz~100Hz付近にゼロ点を、1kHz付近にセカンドポールを有する。
図9に比べるとゼロ点が低周波数に移動しており、プラントのポールが低周波数である場合に対処できる。しかし、セカンドポールは、計算による周波数特性CALBにおける10kHz付近のセカンドポールよりも、低周波数となっている。また、位相の周波数特性を見ると、シミュレーションによる周波数特性CALBにおいて、1kHzより高周波数にポール及びゼロ点が複数発生していることが分かる。このように、抵抗RCの抵抗値を大きくすると、ゼロ点を低周波数にできる一方で、予定した伝達関数通りの周波数特性が得られないという問題がある。
【0043】
図11は、上記の第1手法を用いたときの補償器の周波数特性のシミュレーション例である。なお、第2手法及び第3手法を適用したときも同様な効果が得られる。抵抗RCの抵抗値は、
図10における抵抗値と同じである。シミュレーションによる周波数特性SIMCは、10kHz付近にセカンドポールを有する。このセカンドポールは、計算による周波数特性CALCのセカンドポールに対してやや低周波数であるが概ね一致しており、
図10のシミュレーションによる周波数特性SIMBのセカンドポールに比べると計算値に近づいている。このように、本実施形態によれば、ゼロ点を低周波数にできると共に予定した伝達関数に近い周波数特性が得られる。
【0044】
図12は、寄生容量の影響を低減する第4手法を説明する図である。本手法では、N型ウェル320には直接には電位が与えられず、P型ウェル310がフローティング状態になっている。
【0045】
第4手法によれば、P型ウェル310に電荷が蓄積されないので、ポリシリコン抵抗360とP型ウェル310の間に寄生容量が発生しない。このため、寄生容量に起因したポール又はゼロ点が発生しなくなり、適切な補償器の伝達関数Gcを得ることができる。
【0046】
図13は、第4手法を用いたときの補償器の周波数特性のシミュレーション例である。抵抗RCの抵抗値は、
図10における抵抗値と同じである。シミュレーションによる周波数特性SIMDは、10kHz付近にセカンドポールを有する。このセカンドポールは、計算による周波数特性CALDのセカンドポールに対してやや低周波数であるが概ね一致している。このように、本実施形態によれば、ゼロ点を低周波数にできると共に予定した伝達関数に近い周波数特性が得られる。
【0047】
図14は、平坦化のためのダミーメタルを設けたときの、位相補償回路の抵抗の断面図である。配線層である複数のメタル層のうち、半導体基板300に最も近い層を第1層のメタル層と呼び、半導体基板300から最も遠い層をトップメタル層と呼ぶ。
【0048】
第1層のメタル層は、CMPによる平坦化を行うためのダミーメタル370を含む。CMPは、Chemical Mechanical Polishingの略である。ダミーメタル370は、半導体基板300に対する平面視において、配線に用いられるメタルの隙間を埋めるように、配置されている。平面視とは、半導体基板300の厚み方向に半導体基板300を見ることである。ポリシリコン抵抗360の上にダミーメタル370が設けられると、ポリシリコン抵抗360とダミーメタル370との間に寄生容量C3が生じるおそれがある。例えば、ダミーメタル370が、第2層のメタル層に配置される電源線又は信号線とカップリングし、そのカップリングを介して寄生容量C3が見えることになる。
【0049】
図15は、寄生容量の影響を低減する第5手法を説明する図である。本手法では、ポリシリコン抵抗360の上には、第1層のメタル層のダミーメタル370が設けられない。即ち、半導体基板300に対する平面視において、ポリシリコン抵抗360に重なる領域にダミーメタル370が設けられない。なお、平面視において、第2層以上のメタル層には、ポリシリコン抵抗360に重なる領域にダミーメタル370が設けられてもよい。例えば、平面視において、トップメタル層には、ポリシリコン抵抗360に重なる領域にダミーメタル370が設けられてもよい。
【0050】
図16は、ダミーメタル禁止領域の第1例である。レイアウト設計においてダミーメタル禁止領域380を設定することで、半導体プロセスにおいてダミーメタル禁止領域380に第1層のメタル層のダミーメタル370が形成されない。第1例では、平面視においてポリシリコン抵抗360に重なる領域、及びその周囲のマージン領域が、ダミーメタル禁止領域380である。なお、マージン領域を設けずに、ポリシリコン抵抗360に重なる領域のみをダミーメタル禁止領域380としてもよい。
図16にはポリシリコン抵抗360が直線形状である例を示すが、ポリシリコン抵抗360が直線形状でない場合においても、ポリシリコン抵抗360に重なる領域、及びその周囲のマージン領域をダミーメタル禁止領域380としてもよい。
【0051】
図17は、ダミーメタル禁止領域の第2例である。第2例において、ポリシリコン抵抗360は蛇行形状である。蛇行形状とは、ポリシリコン抵抗360が、一端から第1方向に延び、次に、第1方向に直交する第2方向に延び、次に第1方向の反対方向に延び、次に第2方向に延び、次に、再び第1方向に延び、以下同様に繰り返されるような、形状のことである。ダミーメタル禁止領域380は、平面視において蛇行形状のポリシリコン抵抗360を内包する矩形領域である。具体的には、ダミーメタル禁止領域380は、蛇行形状のポリシリコン抵抗360に外接する矩形領域であってもよいし、その外接する矩形領域に更にマージン領域を加えた矩形領域であってもよい。
【0052】
以上の第5手法によれば、ポリシリコン抵抗360とダミーメタル370の間に寄生容量が生じない。このため、寄生容量に起因したポール又はゼロ点が発生しなくなり、適切な補償器の伝達関数Gcを得ることができる。
【0053】
本実施形態において、半導体回路装置100は、スイッチ素子SWTとインダクター210を用いて入力電圧VHをレギュレートするスイッチングレギュレーター200に用いられる。半導体回路装置100は、スイッチングレギュレーター200の出力電圧VOUTに基づいて電流を出力するトランスコンダクタンスアンプ110と、トランスコンダクタンスアンプ110の出力ノードNVCに接続される位相補償回路120と、スイッチング信号出力回路130とを含む。スイッチング信号出力回路130は、トランスコンダクタンスアンプ110の出力ノードNVCの電圧VCと、インダクター210に流れる電流ILに応じた電圧とに基づいて、スイッチ素子SWTのスイッチング信号CSWTを出力する。位相補償回路120は、抵抗RCと第1キャパシターCC1と第2キャパシターCC2と容量素子とを含む。抵抗RC及び第1キャパシターCC1は、トランスコンダクタンスアンプ110の出力ノードNVCと低電位側電源ノードとの間に直列接続される。第2キャパシターCC2は、トランスコンダクタンスアンプ110の出力ノードNVCと低電位側電源ノードとの間に接続される。抵抗RCは、半導体基板300に設けられた第1ウェル上に、絶縁膜350を介して設けられる。容量素子は、第1ウェルと所定電位ノードとの間に接続される。
【0054】
本実施形態によれば、抵抗RC及び第1キャパシターCC1が、トランスコンダクタンスアンプ110の出力ノードNVCと低電位側電源ノードとの間に直列接続されることで、補償器の伝達関数Gcに周波数ωzc1=1/(RC×CC1)のゼロ点が生じる。このゼロ点によりプラントの伝達関数Gplantのポールをキャンセルすることで、スイッチングレギュレーター200全体の伝達関数Tsの周波数特性を制御できる。
【0055】
また本実施形態によれば、容量素子が、第1ウェルと所定電位ノードとの間に設けられることで、抵抗RCと所定電位ノードの間に、抵抗RCと第1ウェルの間に生じる寄生容量C1と容量素子とが直列接続される。これにより、寄生容量C1の容量値を実質的に小さく見せることができ、補償器の伝達関数Gcにおける意図しないポール又はゼロ点が生じにくくなる。意図しないポール又はゼロ点が生じるとスイッチングレギュレーター200の帯域が狭くなる又は位相余裕が小さくなる等の問題が生じるが、本実施形態によれば、所望の帯域又は位相余裕を得やすくなる。
【0056】
なお、
図6において、容量素子はキャパシターC2であり、第1ウェルはP型ウェル310であり、所定電位ノードは低電位側電源ノードである。
図7において、容量素子はキャパシターC2であり、第1ウェルはN型ウェル330であり、所定電位ノードは高電位側電源ノードである。
図8において、容量素子はジャンクション容量CJであり、第1ウェルはP型ウェル310であり、所定電位ノードは電位VRのノードである。
【0057】
また本実施形態では、容量素子の容量値は、抵抗RCと第1ウェルとの間の寄生容量C1の容量値よりも小さい。
【0058】
本実施形態によれば、直列接続された寄生容量C1及び容量素子の容量値は、寄生容量C1の容量値の1/2より小さくなる。これにより、寄生容量C1の容量値を実質的に1/2より小さい容量に見せることができる。
【0059】
また本実施形態では、容量素子は、MIMキャパシター、ポリシリコンキャパシター又は拡散容量素子であってもよい。
【0060】
本実施形態によれば、MIMキャパシター、ポリシリコンキャパシター又は拡散容量素子を、第1ウェルと所定電位ノードとの間に接続することで、寄生容量C1の容量値を実質的に小さく見せることができる。
【0061】
また本実施形態では、第1ウェルは、第1導電性のウェルであり、半導体基板300に設けられた第2導電性の第2ウェル上に設けられてもよい。容量素子は、第1ウェルと第2ウェルの間のジャンクション容量CJであってもよい。
【0062】
本実施形態によれば、抵抗RCと第2ウェルの間に、抵抗RCと第1ウェルの間に生じる寄生容量C1とジャンクション容量CJとが直列接続される。これにより、寄生容量C1の容量値を実質的に小さく見せることができる。
【0063】
また本実施形態では、第1ウェルは、P型ウェル310であってもよい。第2ウェルは、N型ウェル320であり、第1ウェルの電位より高い電位VRに設定されてもよい。
【0064】
本実施形態によれば、P型ウェル310とN型ウェル320のジャンクションに逆電圧が印加されるので、空乏層によってジャンクション容量CJが発生する。
【0065】
また本実施形態では、抵抗RCは、ポリシリコン抵抗360である。絶縁膜350は、シリコン酸化膜である。
【0066】
ポリシリコン抵抗360を半導体基板300から絶縁するために、ポリシリコン抵抗360と半導体基板300の間に絶縁膜350が設けられる。このため、ポリシリコン抵抗360を一方の電極とし、半導体基板300の第1ウェルを他方の電極とする寄生容量C1が発生する。本実施形態によれば、寄生容量C1に対して直列に容量素子を接続することで、寄生容量C1を実質的に小さく見せ、補償器の伝達関数Gcの周波数特性を改善できる。
【0067】
また本実施形態では、半導体基板300の第1層のメタル層は、平坦化用のダミーメタル370を含む。ダミーメタル370は、半導体基板300に対する平面視において、抵抗RCに重なる領域には非配置である。
【0068】
抵抗RCとダミーメタル370の間に寄生容量が生じると、補償器の伝達関数Gcにおける意図しないポール又はゼロ点が生じる恐れがある。本実施形態によれば、抵抗RCの上にダミーメタル370が設けられないので、抵抗RCとダミーメタル370の間に寄生容量が生じない。これにより、意図しないポール又はゼロ点が生じにくくなる。
【0069】
また本実施形態では、平面視において、抵抗RCに重なる領域、及びその領域の周囲に設けられるマージン領域には、ダミーメタル370が非配置であってもよい。
【0070】
本実施形態によれば、抵抗RCに重なる領域及びマージン領域に第1層のメタル層のダミーメタル370が設けられない。これにより、抵抗RCとダミーメタル370の間に寄生容量が生じない。
【0071】
なお、抵抗RCに重なる領域、及びその領域の周囲に設けられるマージン領域は、
図16においてダミーメタル禁止領域380に対応する。
【0072】
また本実施形態では、平面視において、抵抗RCは蛇行形状であてもよい。抵抗RCの配置領域を内包する矩形領域には、ダミーメタル370が非配置であってもよい。
【0073】
本実施形態によれば、少なくとも抵抗RCに重なる領域には第1層のメタル層のダミーメタル370が設けられない。これにより、抵抗RCとダミーメタル370の間に寄生容量が生じない。
【0074】
なお、抵抗RCの配置領域を内包する矩形領域は、
図17においてダミーメタル禁止領域380に対応する。
【0075】
また本実施形態では、半導体基板300のトップメタル層は、平坦化用のダミーメタルを含んでもよい。平面視において、抵抗RCに重なる領域には、トップメタル層のダミーメタルが配置されてもよい。
【0076】
抵抗RCとトップメタル層の間には1又は複数の配線層が含まれる。このため、抵抗RCとトップメタル層のダミーメタルとの間の寄生容量は非常に小さいと想定される。このため、抵抗RCに重なる領域には、トップメタル層のダミーメタルが配置されたとしても、補償器の伝達関数Gcの周波数特性に与える影響は小さい。
【0077】
3.スイッチング信号出力回路、及びトランスコンダクタンスアンプ
図18は、スイッチング信号出力回路の詳細構成例である。半導体回路装置100は、レギュレーター170を含む。スイッチング信号出力回路130は、インダクタンス電流検出回路131と内部スロープ生成回路132とPWM回路133と抵抗R2とを含む。
【0078】
レギュレーター170は、入力電圧VHを内部電源電圧VDDにレギュレートするDC/DCコンバーターである。レギュレーター170は、例えば演算増幅器と抵抗から構成されたリニアレギュレーターであるが、それに限定されない。
【0079】
インダクタンス電流検出回路131は、入力電圧VHとスイッチノードNSWの電圧VSWとの差分に基づいて、インダクター210に流れる電流ILを検出し、その結果を検出電流Isnとして出力する。
【0080】
内部スロープ生成回路132は、内部電源電圧VDDにより動作し、所定の傾きを持つスロープ電流Iseを生成する。
【0081】
抵抗R2の一端は、インダクタンス電流検出回路131の出力ノード、内部スロープ生成回路132の出力ノード、及びPWM回路133の反転入力端子に、接続される。抵抗R2の他端は、低電位側電源ノードに接続される。抵抗R2は、検出電流Isn及びスロープ電流Iseを電圧Vrampに変換する。
【0082】
PWM回路133の非反転入力端子には、トランスコンダクタンスアンプ110から電圧VCが入力される。PWM回路133は、電圧Vrampと電圧VCを比較することで、PWM信号であるスイッチング信号CSWTを生成する。
【0083】
図19は、スイッチング信号出力回路の信号波形例である。
PWM回路133は、カウンター等を用いて、周期Tp毎にスイッチング信号CSWTをハイレベルにリセットする。スイッチング信号CSWTがハイレベルにリセットされると、スイッチ素子SWTがオフからオンになると共に、検出電流Isn及びスロープ電流Iseが出力される。このとき、Vramp=(Isn+Ise)×R2である。PWM回路133は、電圧Vrampが電圧VCに達したとき、スイッチ素子SWTをハイレベルからローレベルにする。これにより、スイッチ素子SWTがオンからオフになる。スイッチ素子SWTがオフになると、検出電流Isn及びスロープ電流Iseが出力されなくなる。
【0084】
図1で説明したように、出力電圧VOUTが分圧された電圧DVOUTと、基準電圧VREFとが一致するように、電圧VCが制御される。電圧VCが変化すると、スイッチ素子SWTのオン期間Tonが変化し、出力電圧VOUTが変化する。このようにして、出力電圧VOUTが一定となるように、フィードバック制御される。
【0085】
図20は、インダクタンス電流検出回路の詳細構成例である。インダクタンス電流検出回路131は、スイッチSW1、SW2と、抵抗R1a、R1b、R1cと、P型トランジスターTPE1、TPE2、TPE3と、N型トランジスターTNE1、TNE2と、電流源回路IBEと、を含む。以下、信号波形例を用いてインダクタンス電流検出回路131の動作を説明する。
【0086】
図21は、インダクタンス電流検出回路の信号波形例である。スイッチ素子SWTのオン抵抗をRonとする。抵抗R1a、R1b、R1cの抵抗値は等しいとし、その抵抗値をR1とする。
【0087】
図21に示すように、スイッチ素子SWTがオンであるとき、スイッチSW1がオフであり、スイッチSW2がオンである。インダクター210に流れる電流ILは、徐々に上昇していく。この電流ILは、オン抵抗Ronによって下式(1)の電位差に変換される。インダクタンス電流検出回路131は、この電位差VH-VSWから検出電流Isnを生成する。
VH-VSW=IL×Ron ・・・(1)
【0088】
具体的には、電流源回路IBEは電流Irefを抵抗R1a及びP型トランジスターTPE1に流す。抵抗R1aとP型トランジスターTPE1の間のノードN1aの電圧を、Vxとする。抵抗R1aの両端の電位差はVSW-Vxなので、電流Irefは下式(2)となる。
Iref=(VSW-Vx)/R1 ・・・(2)
【0089】
P型トランジスターTPE1、TPE2はカレントミラーを構成しており、抵抗R1b及びP型トランジスターTPE2に電流Irefが流れる。また、P型トランジスターTPE1、TPE3はカレントミラーを構成しており、抵抗R1c及びP型トランジスターTPE3に電流Irefが流れる。これにより、抵抗R1bとP型トランジスターTPE2の間のノードN1bの電圧、及び抵抗R1cとP型トランジスターTPE3の間のノードN1cの電圧は、Vxに等しくなる。
【0090】
抵抗R1cの両端の電位差はVH-Vxなので、抵抗R1c及びP型トランジスターTPE3に流れる電流Ivhは、下式(3)となる。
Ivh=(VH-Vx)/R1 ・・・(3)
【0091】
P型トランジスターTPE2に流れる電流Irefは、N型トランジスターTNE1に流れる。N型トランジスターTNE1、TNE2はカレントミラーを構成しており、N型トランジスターTNE2に電流Irefが流れる。インダクタンス電流検出回路131は、P型トランジスターTPE3に流れる電流IVhと、N型トランジスターTNE2に流れる電流Irefとの差分を、検出電流Isnとして出力する。上式(1)~(3)から、検出電流Isnは下式(4)となる。
Isn=Ivh-Iref=(VH-VSW)/R1=IL×Ron/R1
・・・(4)
【0092】
スイッチ素子SWTがオフであるとき、スイッチSW1がオンであり、スイッチSW2がオフである。インダクター210に流れる電流ILは、徐々に低下していく。スイッチSW1がオンなので、Iref=Ivhとなり、Isn=0になる。
【0093】
図22は、スロープ生成回路の詳細構成例である。内部スロープ生成回路132は、電流源回路IBF1、IBF2と、PNPトランジスターTBF1と、NPNトランジスターTBF2と、P型トランジスターTPF2、TPF3と、スイッチSW3と、キャパシターCFと、抵抗RFとを含む。以下、内部スロープ生成回路132の動作を説明する。
【0094】
スイッチ素子SWTがオンであるとき、スイッチSW3がオフである。電流源回路IBF1がキャパシターCFの一端のノードNF1に電流を流すことで、ノードNF1の電圧VCFが所定の傾きで上昇する。
【0095】
PNPトランジスターTBF1のベースはノードNF1に接続されている。バイポーラートランジスターのベース-エミッター間電圧がVbeであるとする。PNPトランジスターTBF1のエミッターのノードNF2の電圧は、VCF+Vbeとなる。NPNトランジスターTBF2のベースは、ノードNF2に接続されている。NPNトランジスターのエミッターのノードNF3の電圧は、(VCF+Vbe)-Vbe=VCFとなる。
【0096】
抵抗RFは、ノードNF3と低電位側電源ノードとの間に設けられる。低電位側電源VSSの電圧を0Vとすると、抵抗RFには電流VCF/RFが流れる。この電流は、P型トランジスターTPF2及びNPNトランジスターTBF2に流れる。P型トランジスターTPF2、TPF3はカレントミラーを構成しており、P型トランジスターTPF3に電流VCF/RFが流れる。内部スロープ生成回路132は、P型トランジスターTPF3に流れる電流をスロープ電流Iseとして出力する。即ち、スロープ電流Iseは下式(5)となる。
Ise=VCF/RF ・・・(5)
【0097】
スイッチ素子SWTがオフであるとき、スイッチSW3がオンである。キャパシターCFの両端がスイッチSW3により短絡されるので、電圧VCFが0Vとなる。このため、Ise=0になる。
【0098】
図23は、トランスコンダクタンスアンプの詳細構成例である。トランスコンダクタンスアンプ110は、P型トランジスターTPD1、TPD2、TPD3、TPD4と、N型トランジスターTND1、TND2、TND3、TND4と、電流源回路IBDと、を含む。トランスコンダクタンスアンプ110の電源電圧は、レギュレーター170が生成する内部電源電圧VDDである。以下、トランスコンダクタンスアンプ110の動作を説明する。
【0099】
N型トランジスターTND1、TND2は差動対であり、N型トランジスターTND1のゲートに電圧DVOUTが入力され、N型トランジスターTND2のゲートに基準電圧VREFが入力される。電流源回路IBDは、上記の差動対に電流を流す。N型トランジスターTND1に流れる電流をInとし、N型トランジスターTND2に流れる電流をIpとする。
【0100】
電流Inは、P型トランジスターTPD2に流れる。P型トランジスターTPD1、TPD2はカレントミラーを構成しており、P型トランジスターTPD1に電流Inが流れる。この電流Inは、N型トランジスターTND3に流れる。N型トランジスターTND3、TND4はカレントミラーを構成しており、N型トランジスターTND4に電流Inが流れる。
【0101】
電流Ipは、P型トランジスターTPD3に流れる。P型トランジスターTPD3、TPD4はカレントミラーを構成しており、P型トランジスターTPD4に電流Ipが流れる。
【0102】
トランスコンダクタンスアンプ110は、P型トランジスターTPD4に流れる電流Ipと、N型トランジスターTND4に流れる電流Inとの差分電流Ip-Inを、出力する。この差分電流Ip-Inは、トランスコンダクタンスアンプ110の出力インピーダンスROによって電圧VCに変換される。即ち、VC=(Ip-In)×ROである。
【0103】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また、トランスコンダクタンスアンプ、位相補償回路、スイッチング信号出力回路、半導体回路装置、及びスイッチングレギュレーター等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0104】
100…半導体回路装置、110…トランスコンダクタンスアンプ、120…位相補償回路、130…スイッチング信号出力回路、131…インダクタンス電流検出回路、132…内部スロープ生成回路、133…PWM回路、140…電圧生成回路、160…ダイオード、170…レギュレーター、200…スイッチングレギュレーター、210…インダクター、220…キャパシター、250…電源、290…負荷、300…半導体基板、310…P型ウェル、320…N型ウェル、330…N型ウェル、350…絶縁膜、360…ポリシリコン抵抗、370…ダミーメタル、380…ダミーメタル禁止領域、C1…寄生容量、C2…キャパシター、C3…寄生容量、CC1…第1キャパシター、CC2…第2キャパシター、CJ…ジャンクション容量、CSWT…スイッチング信号、IL…インダクターに流れる電流、SWT…スイッチ素子、VH…入力電圧、VOUT…出力電圧、ωpc1…ファーストポールの周波数、ωpc2…セカンドポールの周波数、ωzc1…ゼロ点の周波数