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  • 特開-眼科撮影装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167935
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】眼科撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20241128BHJP
   A61B 3/12 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
A61B3/10 300
A61B3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084263
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】山内 聡一郎
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB12
4C316FA06
4C316FA14
4C316FY04
4C316FY05
4C316FY06
(57)【要約】
【課題】 撮影画像の画質の低下を軽減する。
【解決手段】 被検眼の撮影対象組織上で照明光を走査する走査部を有する照明光学系と、前記照明光に照明された被検眼からの戻り光を、撮影対象組織と共役な位置に配置されたピンホールを介して受光部に受光する受光光学系と、を備え、受光部からの受光信号に基づいて被検眼の撮影対象組織の撮影画像を得る眼科撮影装置であって、戻り光の光軸とピンホールとの位置関係を調整する調整手段と、調整手段を駆動する駆動手段と、駆動手段を制御する制御手段であって、ピンホールに対する戻り光の光軸位置を順次変化させ、この変化に伴う受光部からの受光信号に基づいてピンホールに対する戻り光の光軸ずれを補正する制御手段と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の撮影対象組織上で照明光を走査する走査部を有する照明光学系と、前記照明光に照明された被検眼からの戻り光を、撮影対象組織と共役な位置に配置されたピンホールを介して受光部に受光する受光光学系と、を備え、前記受光部からの受光信号に基づいて被検眼の撮影対象組織の撮影画像を得る眼科撮影装置であって、
前記戻り光の光軸と前記ピンホールとの位置関係を調整する調整手段と、
前記調整手段を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段であって、前記ピンホールに対する前記戻り光の光軸位置を順次変化させ、この変化に伴う前記受光部からの受光信号に基づいて前記ピンホールに対する前記戻り光の光軸ずれを補正する制御手段と、
を備えることを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項2】
請求項1の眼科撮影装置において、
前記戻り光を反射させて前記ピンホールに導くために前記受光光学系に配置されたミラーを備え、
前記調整手段は、前記ミラーの反射角度と、前記ミラーによって導光される前記戻り光の光軸に対する前記ピンホールの位置と、の少なくとも一方を調整する手段であることを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項3】
請求項2の眼科撮影装置において、
前記調整手段は、前記ミラーの反射角度を調整する手段であることを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れかの眼科撮影装置において、
前記制御手段は、前記受光部からの受光信号に基づいて前記調整手段の調整状態を決定し、決定した調整状態となるように前記駆動手段を制御する自動調整を実行することを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項5】
請求項1~3の何れかの眼科撮影装置において、
前記制御手段は、前記受光部からの受光信号を出力する出力手段と、前記調整手段の調整状態の決定信号であって、調整者によって決定される決定信号を受け付ける受付手段と、を備え、前記決定信号の受付に基づいて前記駆動手段を制御することを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れかの眼科撮影装置において、
前記眼科撮影装置の周囲又は前記撮影光学系の光学要素の周囲の温度を取得する温度取得手段を備え、
前記ピンホールに対する前記戻り光の光軸ずれの補正後、前記制御手段は、前記温度取得手段によって取得された温度に基づいて前記駆動手段を制御し、前記ピンホールに対する前記戻り光の光軸ずれを修正することを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項7】
請求項4の眼科撮影装置において、
前記調整手段による調整を行うための調整モードに切換えるモード切換え手段を備え、
前記制御手段は、前記調整モードに切換えられたときに、前記自動調整を実行することで、前記調整手段の調整状態を自己補正することを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項8】
被検眼の撮影対象組織上で照明光を走査する走査部を有する照明光学系と、前記照明光に照明された被検眼からの戻り光を、撮影対象組織と共役な位置に配置されたピンホールを介して受光部に受光する受光光学系と、を備え、前記受光部からの受光信号に基づいて被検眼の撮影対象組織の撮影画像を得る眼科撮影装置であって、
前記戻り光の光軸と前記ピンホールとの位置関係を調整する調整手段と、
前記調整手段を駆動する駆動手段と、
前記眼科撮影装置の周囲又は前記撮影光学系の光学要素の周囲の温度を取得する温度取得手段と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記温度取得手段によって取得された温度に基づいて前記駆動手段を制御し、前記ピンホールに対する前記戻り光の光軸ずれを補正することを特徴とする眼科撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の組織を撮影する眼科撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科撮影装置としては、被検眼の眼底上で照明光を走査し、眼底からの戻り光を、眼底と共役な位置に配置されたピンホール(共焦点開口)を介して受光部に受光することで、眼底画像を得る装置(Scanning Light Ophthalmoscope:いわゆるSLO装置)が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-291253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、SLO装置においては、画質のよい撮影画像を得る上で、受光光学系に配置されたピンホールを戻り光が適切に通過するように調整されることが必要とされる。
【0005】
しかし、装置の製造段階で戻り光がピンホールを適切に通過するように調整されたとしても、受光光学系の光学部品を保持する保持部材が周囲の温度変化によって微妙に変化し、ピンホールを通過する戻り光の光軸がずれることがある。この対応として、温度変化に伴う変動を見込んでピンホールの孔径を大きくすると、ピンホールを通過する戻り光のS/N比が低下し、撮影画像の画質が低下する。
【0006】
本開示は、上記従来技術に鑑み、撮影画像の画質の低下を軽減できる眼科撮影装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本開示の第1態様に係る眼科撮影装置は、被検眼の撮影対象組織上で照明光を走査する走査部を有する照明光学系と、前記照明光に照明された被検眼からの戻り光を、撮影対象組織と共役な位置に配置されたピンホールを介して受光部に受光する受光光学系と、を備え、前記受光部からの受光信号に基づいて被検眼の撮影対象組織の撮影画像を得る眼科撮影装置であって、前記戻り光の光軸と前記ピンホールとの位置関係を調整する調整手段と、前記調整手段を駆動する駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段であって、前記ピンホールに対する前記戻り光の光軸位置を順次変化させ、この変化に伴う前記受光部からの受光信号に基づいて前記ピンホールに対する前記戻り光の光軸ずれを補正する制御手段と、を備えることを特徴とする。
(2) 本開示の第2態様に係る眼科撮影装置は、被検眼の撮影対象組織上で照明光を走査する走査部を有する照明光学系と、前記照明光に照明された被検眼からの戻り光を、撮影対象組織と共役な位置に配置されたピンホールを介して受光部に受光する受光光学系と、を備え、前記受光部からの受光信号に基づいて被検眼の撮影対象組織の撮影画像を得る眼科撮影装置であって、前記戻り光の光軸と前記ピンホールとの位置関係を調整する調整手段と、前記調整手段を駆動する駆動手段と、前記眼科撮影装置の周囲又は前記撮影光学系の光学要素の周囲の温度を取得する温度取得手段と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記温度取得手段によって取得された温度に基づいて前記駆動手段を制御し、前記ピンホールに対する前記戻り光の光軸ずれを補正することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例に係る眼科撮影装置の光学系及び制御系を示す図である。
図2】ミラー駆動部の例を示す図である。
図3】自動調整モードの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[概要]
以下、典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立又は関連して利用されうる。
【0010】
例えば、眼科撮影装置は、撮影光学系(例えば、SLO光学系100)を備える。例えば、眼科撮影装置は、調整手段(例えば、調整部140)と、駆動手段(例えば、ミラー駆動部140A)と、制御手段(例えば、制御部50)と、を備える。また、例えば、眼科撮影装置は、モード切換え手段(例えば、操作部54)を備えていてもよい。例えば、モード切換え手段は、調整手段による調整を行うための調整モードに切換える場合に使用される。例えば、眼科撮影装置は、温度取得手段(例えば、温度検知器60)を備えていてもよい。
【0011】
<撮影光学系>
例えば、撮影光学系は、照明光学系(例えば、照明光学系100a)と、受光光学系(例えば、受光光学系100b)と、を備える。例えば、照明光学系は、被検眼の撮影対象組織上(例えば、眼底上)で照明光を走査する走査部(例えば、走査部110)を有する。例えば、照明光学系は、走査部の他、光源、穴開きミラー、視度補正部、対物光学系を備える。
【0012】
例えば、受光光学系は、照明光に照明された被検眼からの戻り光を、撮影対象組織と共役な位置に配置されたピンホール(例えば、ピンホール136)を介して受光部(例えば、受光素子138)に受光する。眼科撮影装置は、受光部からの受光信号に基づいて被検眼の撮影対象組織の撮影画像を得る。例えば、ピンホールは共焦点開口として機能する。例えば、受光光学系は、被検眼からの戻り光を反射させてピンホールに導くためのミラー(例えば、ミラー134)を備えていてもよい。例えば、ミラーは受光光学系の独立光路に配置されていてもよい。なお、本開示における共役位置とは、略共役位置の場合も含む。略共役とは、完全に共役でなくも、撮影精度との関係で必要とされる精度で共役であればよい。
【0013】
<温度取得手段>
例えば、温度取得手段は眼科撮影装置の周囲の温度又は撮影光学系の光学要素の周囲の温度を取得する。例えば、温度取得手段は、受光光学系の光学要素の周囲の温度を取得してもよい。例えば、温度取得手段は、温度検知器(例えば、温度検知器60)を備え、ピンホールの付近の光学部品の周囲の温度を検知してもよい。例えば、戻り光をピンホールに導くためのミラーが備えられている場合、温度検知器はミラーの周囲の温度を検知してもよい。例えば、眼科撮影装置自体が温度検知器を備えない場合、温度取得手段は、眼科撮影装置外の温度センサーから温度情報が通信されることで、眼科撮影装置の周囲の温度を取得してもよい。
【0014】
<調整手段・駆動手段>
例えば、調整手段は、ミラーによって導光される戻り光の光軸と、ピンホールと、の位置関係を調整するために使用される。例えば、調整手段は、ミラーによって導光される戻り光の光軸とピンホールとの位置関係を直交する2方向に変化させることで、ピンホールに対する戻り光の位置関係を調整する。例えば、調整手段は、ミラーの反射角度と、ミラーによって導光される戻り光の光軸(中心位置)に対するピンホールの位置と、の少なくとも一方を調整する。例えば、調整手段は、ミラーの反射角度を直交する2方向に調整する手段であってもよい。例えば、調整手段は、ピンホールの位置を直交する2方向に調整する手段であってもよい。例えば、調整手段は、ミラーの角度は直交する2方の一方のみの調整で、他方の方向の調整は、ピンホールの位置を変化させることでもよい。例えば、調整手段がミラーの反射角度を調整する手段の場合、直交する二つの傾斜軸を組み合わせることで任意の方向に傾斜できるジンバル機構が使用されてもよい。この場合、ピンホールの位置を調整する場合に比べ、スライド機構を使用せず、回転機構で構成できるため、簡単な機構で、調整の位置決めを精度よく行える。
【0015】
例えば、駆動手段は、調整手段を駆動する。例えば、駆動手段は、調整手段を駆動するためのアクチュエータ(例えば、モータ等)を備えていてもよい。
【0016】
<制御手段>
例えば、制御手段は、駆動手段を制御し、ピンホールに対する戻り光の光軸位置を順次変化に変化させ(例えば、直交する2方向に変化させ)、この変化に伴う受光部からの受光信号に基づいてピンホールに対する戻り光の光軸ずれを補正する。これにより、調整を精度よく容易に行える。また、ピンホールの孔径を小さくできるため、ピンホールを通過する戻り光のS/N比が良くなることで、コントラストがより高く、より良好な撮影画像を得ることができる。
【0017】
また、例えば、制御手段は、受光部からの受光信号に基づいて調整手段の調整状態を決定し、決定した調整状態となるように駆動手段を制御する自動調整を実行してもよい。例えば、制御手段は、ピンホールに対する戻り光の光軸位置の順次変化に伴う、受光部からの受光信号に基づいて撮影画像を随時取得し、取得した撮影画像を調整手段の調整データと対応付けて記憶手段に記憶していく。例えば、ピンホールに対する戻り光の光軸位置の順次変化は、ミラーによる戻り光の光軸とピンホールとの位置関係が直交する2方向に変化するように行われる。そして、例えば、制御手段は、記憶手段に記憶された撮影画像について評価し、所定の評価基準を満たす撮影画像を決定し、その撮影画像に対応する調整データとなるように駆動手段を制御することで、ピンホールに対する戻り光の光軸ずれを補正してもよい。これにより、ピンホールに対する戻り光の光軸ずれの調整を精度よく容易に行える。そして、ピンホールの孔径が小さくされることで、コントラストがより高く、より良好な撮影画像を得ることができる。
【0018】
また、例えば、制御手段は、モード切換え手段により調整モードに切換えられたときに、自動調整を実行することで、調整手段の調整状態を自己補正してもよい。この場合、眼科撮影装置が医療施設等の場所に置かれた後も、撮影画像の画質の低下が抑えられる。例えば、モード切換え手段による調整モードへの切換えは、眼科撮影装置に所定の信号(例えば、操作者の選択による調整モードの選択信号、眼科撮影装置の電源投入の信号、等)が入力されたときに、自動的に実行されてもよい。
【0019】
また、例えば、制御手段が所定の評価基準を満たす撮影画像を決定する代わりに、調整者が撮影画像を確認(観察)して評価し、調整手段の調整状態を決定してもよい。この場合、例えば、制御手段は、受光部からの受光信号(あるいは、受光信号に基づいて得られた撮影画像)を出力する出力手段と、調整手段の調整状態の決定信号であって、調整者によって決定される決定信号を受け付ける受付手段と、を備えていてもよい。この場合、制御手段は、受付手段により受け付けられた決定信号に基づいて駆動手段を制御してもよい。これにより、調整者が撮影画像を評価し、調整作業を容易に行うことできる。
【0020】
なお、調整手段による調整段階では、被検眼に代えて模型眼が使用されてもよい。
【0021】
また、例えば、眼科撮影装置が温度取得手段を備えられている場合、ピンホールに対する戻り光の光軸ずれの補正後に、制御手段は、温度取得手段によって取得された温度に基づいて駆動手段を制御し、ピンホールに対する戻り光の光軸ずれをさらに修正してもよい。これにより、眼科撮影装置が医療施設等の場所に置かれた後も、温度変化による撮影画像の画質の低下を抑えられる。例えば、温度変化に対する修正量のテーブルが記憶手段に記憶されていることで、制御手段は、温度取得手段によって取得された温度の変化に対する修正量のデータを記憶手段から呼び出し、これに基づいて駆動手段を制御し、調整手段の調整状態を修正してもよい。
【0022】
[実施例]
本実施形態の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、実施例に係る眼科撮影装置の光学系及び制御系を示す図である。なお、実施例では、眼科撮影装置として、被検眼の眼底を撮影対象組織とする装置を例にして説明する。
【0023】
<光学系>
図1においては、眼科撮影装置は、撮影光学系の例であるSLO光学系100を備える。SLO光学系100は、照明光学系100aと、受光光学系100bと、を備える。
【0024】
照明光学系100aは、光源102、穴開きミラー104、視度補正部120のレンズ106、レンズ108、走査部110、対物光学系112、等を備える。
【0025】
光源102は、例えば、SLD光源等のレーザ光源、LED光源、等が使用される。光源102を発した照明光は、穴開きミラー104に形成された開口部を通り、レンズ106及びレンズ108を介した後、走査部110に向かう。走査部110によって走査された照明光は、対物光学系112を通過した後、被検眼(E)の眼底に照射される。
【0026】
走査部110は、光源102からの照明光を被検眼眼底上で走査するためのユニットである。例えば、走査部110は、2つの光スキャナ(例えば、ポリゴンスキャナ、ガルバノミラー等)を備え、2つの光スキャナが駆動されることで、レーザ光を被検眼眼底上で二次元的に走査する。
【0027】
視度補正部120は、被検眼の視度を補正するために使用される。視度補正部120は、被検眼の屈折誤差に応じて視度補正量を調整し、光源102からの照明光を被検眼眼底に集光させる。例えば、視度補正部120は、フォーカシングレンズとして機能するレンズ106を光軸方向に移動させるレンズ移動部122を備える。
【0028】
照明光学系100aによって被検眼眼底に照射された照明光は、眼底組織によって反射又は散乱されることで、被検眼眼底からの戻り光とされる。被検眼眼底からの戻り光は、受光光学系100bによって受光される。
【0029】
受光光学系100bは、照明光学系100aの対物光学系112から穴開きミラー104までの光学要素を共用する。受光光学系100bは、穴開きミラー104の反射方向の独立光路に、集光レンズ132、調整用のミラー134を含む調整部140、共焦点開口の例であるピンホール136、受光素子138、等を備える。調整部140は、ミラー134によって導光される戻り光の光軸(中心位置)と、ピンホール136と、の位置関係を調整するために使用される。
【0030】
例えば、ピンホール136は、撮影対象組織(実施例では、被検眼眼底)と共役位置に配置され、共焦点絞りとして機能する。集光レンズ132を通過した眼底からの戻り光は、眼底と共役位置のピンホールにおいて焦点を結ぶ。
【0031】
ミラー134は、被検眼からの戻り光を反射させてピンホール136に導くために使用される。また、ミラー134は、その反射角度(傾斜角度)がミラー駆動部140Aによって直交する2方向に変更可能とされ、ピンホール136を通過する戻り光の光軸位置を調整するために使用される。本実施例の調整部140はミラー駆動部140Aを含み、ミラー駆動部140Aによって、ミラー134の反射角度が変えられることにより、ピンホール136に対する戻り光の光軸ずれが補正される。
【0032】
図2は、ミラー駆動部140Aの例を示す図である。例えば、ミラー駆動部140Aはジンバル機構(直交する二つの傾斜軸を組み合わせることで任意の方向に傾斜できる機構)が採用される。図2において、ミラー134はミラーホルダー141に保持されている。ミラーホルダー141は、U字状のブロック143により、水平に延びるm軸の軸回りに回転可能に保持されている。そして、ミラーホルダー141は、m軸モータ145によって、m軸の軸回りに回転される。これにより、ミラー134がm軸の軸回りに傾斜され、その反射角度がm軸回りに変えられる。
【0033】
ブロック143は、回転ベース147上に固定されている。回転ベース147は、n軸モータ149により、m軸に直交するn軸の軸回りに回転される。これにより、ミラー134がn軸の軸回りに傾斜され、その反射角度がn軸回りに変えられる。そして、m軸モータ145及びn軸モータ149が駆動されることにより、ミラー134の反射角度(傾斜角度)が直交する2方向に任意に変えられる。
【0034】
なお、本実施例では、ミラー駆動部140Aがジンバル機構である例を説明したが、ミラー134の反射角度を直交する2方向に任意に変えられる機構であれば、これに限られない。また、m軸モータ145及びn軸モータ149にはパルスモータが使用され、それぞれ1パルのステップ毎に回転されることで、ミラー134の角度がステップ毎に変えられる。
【0035】
図1において、被検眼眼底からの戻り光は、対物光学系112、走査部110、レンズ108、レンズ106を介した後、穴開きミラー104によって反射され、集光レンズ132、ミラー134を経てピンホール136に到達する。そして、ピンホール136によって、眼底組織の集光点(あるいは、焦点面)以外の位置からの戻り光が取り除かれ、眼底組織の集光点からの戻り光が受光素子138に受光される。
【0036】
なお、眼科撮影装置の光学系には、付加的に、被検眼の組織の断層像を得るOCT(Optical Coherence Tomography)光学系200が備えられていてもよい。OCT光学系200は、例えば、走査部110と対物光学系112との間に配置されたダイクロイックミラー202によって分岐される光路に配置される。例えば、OCT光学系200は、低コヒーレント光を発するOCT光源、光源から出射した光を測定光及び参照光に分割する光分割器、被検眼へ測定光を導く測定光学系、被検眼組織上で測定光を横断方向に走査させる走査部、参照光を生成する参照光学系、測定光と参照光の合成による干渉信号を検出する検出器、等を備える。なお、このOCT光学系200の詳細は、例えば、特開2019-134896号公報に記載されている。
【0037】
<制御系>
図1において、眼科撮影装置は、制御部50と、モニタ52と、操作部54と、記憶手段の例であるメモリ56と、を備える。制御部50は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を備え、眼科撮影装置の全般の制御を司る。制御部50には、光源102、レンズ移動部122、走査部110、ミラー駆動部140A、受光素子138、等のSLO光学系100の電気要素が接続され、これらの駆動を制御する。また、制御部50は、受光素子138から出力される受光信号を処理し、その受光信号に基づいて眼底画像を得る。また、制御部50には、温度取得手段の例である温度検知器60が接続されていてもよい。温度検知器60は、例えば、ピンホールの付近の光学部品の周囲の温度を検知するために使用される。また、温度検知器60は、ミラー134(ミラー駆動部140Aの場合も含む)の周囲の環境温度を検知するめに使用されてもよい。或いは、温度検知器60は、眼科撮影装置の周囲の温度を検知するために使用されてもよい。さらに、眼科撮影装置自体は温度検知器を備えず、制御部50が眼科撮影装置外の温度センサーから温度情報が通信されることで、眼科撮影装置の周囲の温度を取得してもよい。
【0038】
モニタ52には、SLO光学系100によって取得された眼底画像、OCT光学系200によって得られた断層像画像、図示を略す前眼部観察光学系による前眼部像、等が表示される。操作部54は、操作者(調整者)が各種の信号を入力するために使用される。制御部50は、操作部54によって入力された各種の操作信号を受信する受信手段としても機能する。メモリ56には、SLO光学系100及びOCT光学系200によって得られた各種の画像が記憶される。また、メモリ56には、各種の制御プログラムが記憶されている。
【0039】
[動作]
以上のような構成を備える眼科撮影装置の動作を説明する。ここでは、ミラー134の反射角度が調整されることで、ピンホール136に対して、受光光学系100bに受光される戻り光の光軸ずれを補正する動作を中心に説明する。
【0040】
照明光学系100aの照明光に照明された被検眼眼底からの戻り光は、ピンホール136を介して受光素子138に受光され、撮影画像(本実施例では眼底画像)が取得される。ピンホール136に対する戻り光の光軸ずれが基準以上に生じていると、受光素子138の出力信号に基づいて得られる眼底の撮影画像のコントラスト等の画質が劣ることになる。そのため、まず、眼科撮影装置の製造段階で、ミラー134の反射角度の調整作業が行われる。
【0041】
ここで、本実施例の眼科撮影装置は、ミラー134の反射角度の調整を自動的に行う自動調整モードが備えられている。操作部54に設けられたスイッチにより、自動調整モードに切換えられると、制御部50によってミラー134の反射角度を自動的に調整するための自動調整プログラムが実行される。なお、調整作業段階では、被検眼に代えて模型眼が使用されてもよい。模型眼は、対物光学系112に対して所定の位置関係に置かれる。
【0042】
照明光学系100aの光源102からの照明光は、走査部110によって走査され、模型眼(被検眼)の眼底上で走査される。また、視度補正部120によって、視度が補正される。模型眼眼底からの戻り光は、受光光学系100bのミラー134、ピンホール136を介して受光素子138に受光され、眼底の撮影画像を取得される。以下、自動調整モードの動作を、図3のフロー図を使用して説明する。
【0043】
自動調整モードに切換えられると、これが調整開始信号として制御部50に受信される(S1)。調整開始信号が受信されると、制御部50の制御によりミラー駆動部140Aが駆動され、ミラー134の角度が直交する2方向に順次変化されることで、ピンホール136に対する戻り光の光軸位置が直交する2方向に順次変化される(S2)。なお、説明の便宜上、以下では、図2におけるn軸の軸回りのミラー134の角度変化による戻り光の変化方向をx方向とし、m軸の軸回りのミラー134の角度変化による戻り光の変化方向をy方向として説明する。
【0044】
例えば、制御部50の制御によりm軸モータ144が駆動され、まず、m軸の軸回りのミラー134の角度が基準の初期角度に置かれた後、n軸モータ149が1ステップ毎に駆動される。これにより、n軸の軸回りのミラー134の角度が1ステップ毎に変えられ、ピンホール136に対する戻り光の光軸位置がx方向に順次変化される。すなわち、y向の第1位置で、戻り光がx方向に1走査される。
【0045】
次に、m軸モータ145が1ステップ分駆動され、m軸の軸回りのミラー134の角度が1ステップ分変えられた状態で、再び、n軸モータ149が1ステップ毎に駆動されることでn軸の軸回りのミラー134の角度が1ステップ毎に変えられる。これにより、y向の第2位置で、戻り光がx方向に1走査される。そして、m軸の軸回りのミラー134の角度の所定ステップ分で、この動作が繰り返されることで、ピンホール136に対する戻り光の光軸位置がxy方向の2方向に二次元的に変化される。
【0046】
この戻り光の光軸位置の二次元的な変化の間、受光素子138からの受光信号に基づき、撮影画像が随時取得される。取得された撮影画像は、ミラー駆動部140Aによるミラー134の調整角度の調整データと対応付けてメモリ56に記憶される(S3)。
【0047】
所定範囲における戻り光の光軸位置の変化が終了すると、制御部50により、メモリ56に記憶された各撮影画像が所定の評価基準に基づいて評価され、ミラー134の調整角度が決定される(S4)。例えば、戻り光の光軸位置の順次変化に伴って取得された各撮影画像において、所定の評価基準として、平均の明るさ(平均輝度)が最大となる撮影画像が決定される。あるいは、評価基準として、明るさの分散が考慮され、明るさムラが少ない撮影画像が決定されてもよい。また、コントラストの評価を加えた評価値が高くなる撮影画像が決定されてもよい。また、対象物や対物光学系112の反射光が入っている場合は、その反射が上下左右方向で均等に薄くなる撮影画像が決定されてもよい。評価の高い撮影画像が決定されると、その撮影画像に対応付けられたミラー134の調整角度が決定される。
【0048】
ミラー134の調整角度が決定されたならば、決定された調整角度(調整状態)となるように、ミラー駆動部140Aが駆動される(S5)。これにより、ピンホール136に対し、ミラー134で反射される戻り光の光軸位置が補正される。
【0049】
このように、制御部50の制御により、ミラー駆動部140Aが駆動され、ミラー134の調整角度が決定されるため、作業者がミラー134の反射角度を手動で移動して位置決めする作業に対して、作業者の労力や作業時間を大幅に軽減でき、調整作業を精度よく容易に行うことができる。そして、撮影画像の画質の低下が軽減された撮影が可能にされる。
【0050】
以上のように、眼科撮影装置の製造段階でミラー134の反射角度が適切に調整されたとしても、眼科撮影装置が医療施設等の場所に置かれ、その場所の環境温度が製造段階での調整時に対して大きく変化していると、受光光学系100bの光学要素の例であるミラー134の保持部材(ミラーホルダー141やブロック143等)が温度変化によって変動(熱膨張、熱収縮、熱変形)する場合がある。この場合、ミラー134の角度が変化し、ピンホール136に対する戻り光の光軸位置が適正状態からずれてしまう。また、眼科撮影装置が医療施設等の場所で長期的に使用されると、ピンホール136に対する戻り光の光軸位置が適正状態からずれてしまうこともある。
【0051】
そこで、医療施設等の使用場所においては、例えば、最初に眼科撮影装置の電源が投入されると、自動調整モードに自動的に切換えられる。この場合には、自動調整モードに切換えられた旨がモニタ52に表示され、操作者(調整者)に知らされてもよい。作業者は、模型眼等を所定の位置に設置した後、自動調整モードの調整開始信号を操作部54によって入力する。制御部50によって調整開始信号が受信されると、前述の自動調整プログラムが実行され、ピンホール136に対する戻り光の光軸ずれが補正される。これにより、撮影画像の画質の低下が軽減された撮影が行える。調整モードへの切換えの所定信号は、眼科撮影装置の電源投入の信号が利用される他、操作者による調整モードへの選択信号が利用されてもよい。
【0052】
また、眼科撮影装置の製造段階のみならず、眼科撮影装置が医療施設等の使用場所に置かれた後も、高い技量を持つ調整作業者を必要とせず、戻り光の光軸ずれが容易に補正可能となる。これにより、温度変化等に伴う変動を見込んでピンホール136の孔径が大きくする対応を取らずに済むため、ピンホール136の孔径を、より小さくできる。ピンホール136の孔径が小さくされることで、ピンホールを通過する戻り光のS/N比が良くなり、コントラストが高い、より良好な撮影画像を得ることができる。言い換えれば、撮影画像の画質の低下をより抑えることができる。
【0053】
なお、眼科撮影装置の使用場所(すなわち、装置の製造段階で戻り光の光軸ずれの補正後)における温度変化に対しては、温度検知器60によって取得された温度に基づき、ピンホール136に対する戻り光の光軸ずれの修正が行われてもよい。例えば、メモリ56には、温度変化に対する修正量のテーブル(例えば、前に行われた調整時からの温度変化とミラー134の角度の修正量とのテーブル)が記憶されている。ミラー134の周囲の温度は、温度検知器60によって常時又は一定期間ごとにモニタされている。温度変化が所定値以上あった場合は、温度検知器60による検知結果に基づいてピンホール136に対する戻り光の光軸ずれの修正が行われる。例えば、メモリ56に記憶されたテーブルから温度変化に対する修正量が呼び出されることで、ミラー134の角度の修正量が決定され、その修正量に基づいてミラー134の角度が調整される。これにより、眼科撮影装置が使用場所に置かれた後も、温度変化による撮影画像の画質の低下を抑えられる。また、簡易的に、温度変化に対するミラー134の角度の調整が行われる。
【0054】
<変容例>
以上、本開示の実施例の一つを説明したが、本開示はここに示した実施例に限られず、種々の変容が可能である。
【0055】
例えば、上記で説明した自動調整モードのステップS4においては、制御部50によってミラー134の調整角度(すなわち、調整状態)が決定されるものとしたが、調整者(操作者)によって調整角度が決定されてもよい。例えば、ステップS3にて、取得された撮影画像がメモリ56に記憶された後、調整者の操作により、操作部54に設けられた再生用スイッチの信号が入力されると、メモリ56に記憶された撮影画像(受光素子138からの受光信号であってもよい)がモニタ52に表示(すなわち、出力)される。モニタ52に表示される撮影画像は動画のように連続表示されてもよいし、操作者の操作で1枚の画像ごとに表示されてもよい。操作者は、表示された撮影画像を観察し、画像の平均的な輝度(明るさ)や明るさムラ、ノイズ反射光の入り具合、等により、適切な撮影画像を決定(指定又は選択でもよい)する。そして、撮影画像の決定信号が操作部54の操作によって入力されると、その信号が制御部50によって受付けられることで、撮影画像に対応付けられたミラー134の調整角度が決定される。
【0056】
また、上記の開示では、調整部140は、ミラー134の反射角度を直交する2方向に調整するものとしたが、これに限られない。調整部140は、ミラー134の反射角度と、ミラー134よって導光される戻り光の光軸(中心位置)に対するピンホール136の位置と、の少なくとも一方を調整することでもよい。例えば、ミラー134の角度は固定で、ミラー134による直交する2方向の駆動の代わりに、ピンホール136の位置が直交する2方向(xy方向)に調整されてもよい。あるいは、ミラー134の角度は直交する2方向の一方のみの調整で、他方の方向の調整は、ピンホール136の位置を変化させることでもよい。ピンホール136の位置を調整する場合は、ピンホール136の位置を調整する駆動手段が設けられる。または、ミラー134の反射角度とピンホール136の位置の両方が直交する2方向で調整されてもよい。
【0057】
なお、調整部140は、ミラー134の反射角度をに調整する手段の方が有利な場合がある。すなわち、ピンホール136の位置を調整する場合、直交する2方向の少なとも一方にピンホール136を平行移動するためのスライド機構が採用され、そのためのスペースも必要とされる。これに対し、ミラー134の反射角度を調整する場合には、スライド機構を使用せず、図2に示されたように、回転機構で構成できる。このため、簡単な機構で、位置決めを精度よく行える。また、ピンホール136の移動機構のためのスペースを取らずにすむ。
【0058】
また、例えば、ピンホール136に対して、ミラー134よって導光される戻り光の光軸位置をわざと偏心させることで、いわゆるレトロ撮影(例えば、特開2009-95632号公報参照)を可能してもよい。例えば、眼科撮影装置は、撮影モードをレトロ撮影モードに切換え可能とされる。レトロ撮影モードに切換えられた場合、ピンホール136は通常の撮影対象組織(例えば、眼底表面)と共役な位置にされているが、調整部140(例えば、ミラー134の反射角度の調整)によって戻り光の光軸位置がピンホール136の孔中心に対して設定された量だけ偏心されることで、眼底組織における照明光の集光位置の前後の組織にて散乱された散乱光が、ピンホール136を通過し、受光素子138に受光される。その結果、眼底の内部の組織(例えば、網膜、深層部および脈絡膜等)における撮影画像が取得される。これにより、眼底表面以外の眼の疾患に対する有用な情報も提供可能となる。
【符号の説明】
【0059】
50 制御部
54 操作部
60 温度検知器
100 SLO光学系
100a 照明光学系
100b 受光光学系
134 ミラー
136 ピンホール
138 受光素子
140 調整部
140A ミラー駆動部

図1
図2
図3