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特開2024-167937情報処理装置、情報処理プログラムおよび機械学習装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167937
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理プログラムおよび機械学習装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20241128BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20241128BHJP
   G16H 50/00 20180101ALI20241128BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61B5/00 102C
G16H50/20
G16H50/00
A61B10/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084265
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】韓 浩
【テーマコード(参考)】
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XA03
4C117XA07
4C117XB04
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE23
4C117XE24
4C117XE26
4C117XE27
4C117XE28
4C117XE29
4C117XE33
4C117XE43
4C117XE53
4C117XH16
4C117XJ03
4C117XJ45
4C117XL01
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】認知症症状の発生に起因する患者およびその周囲への負担を軽減可能な情報処理装置、情報処理プログラムおよび機械学習装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置は、第1期間における対象認知症患者の生活状態に関する状態指標および前記第1期間における前記対象認知症患者の生活環境に関する環境指標の少なくとも一方を含む指標情報を取得する取得部211と、取得された前記指標情報に基づいて、前記第1期間よりも後の第2期間における前記対象認知症患者の認知症症状の発生に関する発生情報を予測する予測部212とを含む。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1期間における対象認知症患者の生活状態に関する状態指標および前記第1期間における前記対象認知症患者の生活環境に関する環境指標の少なくとも一方を含む指標情報を取得する取得部と、
取得された前記指標情報に基づいて、前記第1期間よりも後の第2期間における前記対象認知症患者の認知症症状の発生に関する発生情報を予測する予測部と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記状態指標および前記環境指標を含む前記指標情報を取得する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記状態指標は、前記対象認知症患者の動作を表す指標および前記対象認知症患者の睡眠状態を表す指標の少なくとも一方を含む請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記動作は、前記対象認知症患者の移動、立ち止まり、繰り返し行動およびふらつきの少なくともいずれか一つを含む請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記睡眠状態は、前記対象認知症患者の睡眠時間、睡眠率および睡眠安定性の少なくともいずれか一つを含む請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記環境指標は、前記生活環境の気温を表す指標、前記生活環境の気圧を表す指標および前記生活環境の湿度を表す指標の少なくともいずれか一つを含む請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記発生情報は、前記対象認知症患者の前記認知症症状の発生の有無に関する情報と、発生する前記認知症症状の種類に関する情報とを含む請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記発生情報は、複数の前記種類に関する情報を含み得る請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記予測部は、機械学習モデルを用いて、前記発生情報を予測する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記機械学習モデルは、学習用第1期間における認知症患者の生活状態に関する学習用状態指標および前記学習用第1期間における前記認知症患者の生活環境に関する学習用環境指標の少なくとも一方を含む学習用指標情報を説明変数、前記学習用第1期間よりも後の学習用第2期間における前記認知症患者の認知症症状の発生に関する学習用発生情報を目的変数として学習されている請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
予測された前記発生情報を出力する出力部をさらに有する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記第1期間は前記第2期間よりも長い請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記第1期間は一週間以上の期間である請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記指標情報は、前記第1期間における前記状態指標の変化に関する情報および前記第1期間における前記環境指標の変化に関する情報の少なくとも一方を含む請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項15】
第1期間における対象認知症患者の生活状態に関する状態指標および前記第1期間における前記対象認知症患者の生活環境に関する環境指標の少なくとも一方を含む指標情報を取得することと、
取得された前記指標情報に基づいて、前記第1期間よりも後の第2期間における前記対象認知症患者の認知症症状の発生に関する発生情報を予測することと
を含む処理をコンピューターに実行させるための情報処理プログラム。
【請求項16】
学習用第1期間における認知症患者の生活状態に関する学習用状態指標および前記学習用第1期間における前記認知症患者の生活環境に関する学習用環境指標の少なくとも一方を含む学習用指標情報を説明変数、前記学習用第1期間よりも後の学習用第2期間における前記認知症患者の認知症症状の発生に関する学習用発生情報を目的変数として含む学習用データが記憶された記憶部と、
記憶された前記学習用データに基づいて、前記学習用指標情報と前記学習用発生情報との関係を機械学習して、機械学習モデルを生成するモデル生成部と
を備える機械学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置、情報処理プログラムおよび機械学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国は、戦後の高度経済成長に伴う生活水準の向上、衛生環境の改善、および医療水準の向上等により、長寿命化が顕著となっている。このため、出生率の低下と相まって、高齢化率が高い高齢化社会になっている。認知症は、高齢化社会の抱える問題の一つである(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-139993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高齢者が入居する介護施設等では、認知症患者に、認知症症状が表れると、患者自身だけでなく、介護者等の患者の周囲にも大きな負担となる。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、認知症症状の発生に起因する患者およびその周囲への負担を軽減可能な情報処理装置、情報処理プログラムおよび機械学習装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、以下の手段によって解決される。
【0007】
(1)第1期間における対象認知症患者の生活状態に関する状態指標および前記第1期間における前記対象認知症患者の生活環境に関する環境指標の少なくとも一方を含む指標情報を取得する取得部と、取得された前記指標情報に基づいて、前記第1期間よりも後の第2期間における前記対象認知症患者の認知症症状の発生に関する発生情報を予測する予測部とを備える情報処理装置。
【0008】
(2)前記取得部は、前記状態指標および前記環境指標を含む前記指標情報を取得する上記(1)に記載の情報処理装置。
【0009】
(3)前記状態指標は、前記対象認知症患者の動作を表す指標および前記対象認知症患者の睡眠状態を表す指標の少なくとも一方を含む上記(1)に記載の情報処理装置。
【0010】
(4)前記動作は、前記対象認知症患者の移動、立ち止まり、繰り返し行動およびふらつきの少なくともいずれか一つを含む上記(3)に記載の情報処理装置。
【0011】
(5)前記睡眠状態は、前記対象認知症患者の睡眠時間、睡眠率および睡眠安定性の少なくともいずれか一つを含む上記(3)に記載の情報処理装置。
【0012】
(6)前記環境指標は、前記生活環境の気温を表す指標、前記生活環境の気圧を表す指標および前記生活環境の湿度を表す指標の少なくともいずれか一つを含む上記(1)に記載の情報処理装置。
【0013】
(7)前記発生情報は、前記対象認知症患者の前記認知症症状の発生の有無に関する情報と、発生する前記認知症症状の種類に関する情報とを含む上記(1)に記載の情報処理装置。
【0014】
(8)前記発生情報は、複数の前記種類に関する情報を含み得る請求項7に記載の情報処理装置。
【0015】
(9)前記予測部は、機械学習モデルを用いて、前記発生情報を予測する上記(1)に記載の情報処理装置。
【0016】
(10)前記機械学習モデルは、学習用第1期間における認知症患者の生活状態に関する学習用状態指標および前記学習用第1期間における前記認知症患者の生活環境に関する学習用環境指標の少なくとも一方を含む学習用指標情報を説明変数、前記学習用第1期間よりも後の学習用第2期間における前記認知症患者の認知症症状の発生に関する学習用発生情報を目的変数として学習されている上記(9)に記載の情報処理装置。
【0017】
(11)予測された前記発生情報を出力する出力部をさらに有する上記(1)に記載の情報処理装置。
【0018】
(12)前記第1期間は前記第2期間よりも長い期間である上記(1)に記載の情報処理装置。
【0019】
(13)前記第1期間は一週間以上の期間である上記(1)に記載の情報処理装置。
【0020】
(14)前記指標情報は、前記第1期間における前記状態指標の変化に関する情報および前記第1期間における前記環境指標の変化に関する情報の少なくとも一方を含む上記(1)に記載の情報処理装置。
【0021】
(15)第1期間における対象認知症患者の生活状態に関する状態指標および前記第1期間における前記対象認知症患者の生活環境に関する環境指標の少なくとも一方を含む指標情報を取得することと、取得された前記指標情報に基づいて、前記第1期間よりも後の第2期間における前記対象認知症患者の認知症症状の発生に関する発生情報を予測することとを含む処理をコンピューターに実行させるための情報処理プログラム。
【0022】
(16)学習用第1期間における認知症患者の生活状態に関する学習用状態指標および前記学習用第1期間における前記認知症患者の生活環境に関する学習用環境指標の少なくとも一方を含む学習用指標情報を説明変数、前記学習用第1期間よりも後の学習用第2期間における前記認知症患者の認知症症状の発生に関する学習用発生情報を目的変数として含む学習用データが記憶された記憶部と、記憶された前記学習用データに基づいて、前記学習用指標情報と前記学習用発生情報との関係を機械学習して、機械学習モデルを生成するモデル生成部とを備える機械学習装置。
【発明の効果】
【0023】
本願発明に係る情報処理装置および情報処理プログラムでは、対象認知症患者の指標情報に基づいて、認知症症状の発生に関する発生情報が予測される。これにより、対象認知症患者に、認知症症状が発生すると予測されたとき、介護者等は、事前に必要な対応を行うことが可能となる。よって、認知症症状の発生に起因する患者およびその周囲への負担を軽減することが可能となる。本願発明に係る機械学習装置では、指標情報に基づいて、発生情報を予測可能な機械学習モデルが生成される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】見守りシステムの全体構成を示す図である。
図2】対象者の部屋に設置された検出部の例を示す図である。
図3】検出部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】サーバーのハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】サーバーの記憶部に記憶される状態指標の一例を示す図である。
図6図5に続く状態指標の例を示す図である。
図7】サーバーの記憶部に記憶される環境指標の一例を示す図である。
図8】管理者端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
図9】スタッフ端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
図10】サーバーの制御部の機能構成を示すブロック図である。
図11】指標情報および発生情報の一例を示す図である。
図12】サーバーの動作の一例を示すフローチャートである。
図13】機械学習モデルの学習処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0026】
<実施形態>
[見守りシステム1の構成]
(全体構成)
図1は、一実施形態に係る見守りシステム1の全体構成を示す図であり、図2は対象者70の部屋に設置された検出部10の例を示す図である。
【0027】
図1に示すように、見守りシステム1は、複数の検出部10、サーバー20、管理者端末30、および1つ以上のスタッフ端末40を有する。これらは、有線や無線によって、LAN(Local Area Network)、電話網またはデータ通信網等のネットワーク50を介して、相互に通信可能に接続される。ネットワーク50は、通信信号を中継するリピーター、ブリッジ、ルーターまたはクロスコネクト等の中継機を含んでいてもよい。図1に示す例では、スタッフ端末40は、検出部10、サーバー20、および管理者端末30と、アクセスポイント51を含む無線LAN等(例えばIEEE802.11規格に従ったLAN)のネットワーク50によって、相互に通信可能に接続されている。
【0028】
見守りシステム1は、対象者70に応じて適宜な場所に配設される。対象者70は、例えば、病気や怪我等によって看護を必要とする患者、高齢による身体能力の低下等によって介護を必要とする被介護者、一人暮らしの独居者、または病院施設に入院している患者等である。特に、早期発見および早期対処を可能にする観点から、対象者70は、例えば異常状態等の所定の不都合な事象がその者に生じた場合に、その発見を必要としている者であり得る。本実施形態では、対象者70は、認知症患者である。見守りシステム1は、対象者70の種類に応じて、老人福祉施設、病院、および住戸等の建物に好適に配設される。図1に示す例では、見守りシステム1は、複数の対象者70が入居する複数の部屋(居室)やナースステーションを含む複数の部屋を備える施設の建物に配置されている。
【0029】
検出部10は、例えば、対象者70の観察領域であるそれぞれの居室に配置される。図1に示す例では、4つの検出部10が対象者70であるAさん、Bさん、CさんおよびDさんの居室にそれぞれ配置されている。検出部10の観察領域にはベッド60が含まれている。対象者70に対して介護または看護等の対応(例えば、ケア)を行うスタッフ80は、それぞれ携帯端末であるスタッフ端末40を持ち歩いている。ただし、見守りシステム1が備える各構成の位置や個数等は、図1に示す例に限定されない。例えば、サーバー20は、ナースステーションに配置されなくてもよく、ネットワーク50に接続されている外部のサーバーユニットであってもよい。
【0030】
(検出部10)
図3は、検出部10のハードウェア構成を示すブロック図である。図3に示すように、検出部10は、制御部11、通信部12、カメラ13、ケアコール部14、および音声入出力部15を有し、これらはバスによって、相互に接続されている。
【0031】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、およびRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリにより構成され、プログラムに従って検出部10の各部の制御および演算処理を行う。なお、制御部11は、メモリとして、さらにHDD(Hard Disk Drive)を含んでいてもよい。
【0032】
通信部12は、ネットワーク50を介して、例えば、サーバー20、管理者端末30またはスタッフ端末40等の、他の装置と通信するためのインターフェース回路(例えばLANカード等)である。
【0033】
カメラ13は、例えば居室の天井、または壁の上部に配置され、観察領域として対象者70のベッド60を含む領域を撮影し、撮影画像(画像データ)を出力する。以下、カメラ13により撮影された画像を、単に「撮影画像」とも称する。撮影画像には対象者70を含む画像が含まれる。撮影画像は、静止画および動画を含む。カメラ13は近赤外線カメラであるが、これに換えて可視光カメラを用いてもよく、これらを併用してもよい。
【0034】
制御部11は、カメラ13が撮影した撮影画像から、対象者70の行動を認識する。この認識する行動には、ベッド60から起き上がる「起床」、ベッド60から離れる「離床」、ベッド60から転落する「転落」、および床面等に転倒する「転倒」が含まれる。
【0035】
制御部11は、複数の撮影画像(動画像)から画像のシルエット(以下、「人シルエット」と称する)を検出する。人シルエットは、例えば、撮影時刻が前後する画像の差分を抽出する時間差分法により差分が相対的に大きい画素の範囲を抽出することによって検出され得る。人シルエットは、撮影画像と背景画像との差分を抽出する背景差分法により検出されてもよい。起床、離床、転倒、転落の別は、検出した人シルエットから対象者70の姿勢(例えば立位、座位および横臥等)、およびベッド60等の居室内の設置物との相対的な位置から認識される。これらの認識は、制御部11のCPUが処理するプログラムにより行ってもよく、組み込み型の処理回路により行うようにしてもよい。また、これに限られずサーバー20側でこれらの認識の全部またはほとんどの処理を行うようにし、制御部11ではサーバー20への撮影画像の送信のみを行うようにしてもよい。制御部11は、いずれかの行動を認識した場合、イベントが発生した旨の通知をサーバー20等に送信する。
【0036】
ケアコール部14は、押しボタン式のスイッチを含み、スイッチが対象者70によって押されることによってケアコールを検出する。ケアコールはナースコールとも言う。押しボタン式のスイッチに換えて、音声マイクによりケアコールを検出してもよい。ケアコール部14のスイッチが押された場合、すなわち、ケアコールを検出した場合、制御部11は、通信部12およびネットワーク50を介して、ケアコールがあった旨の通知(ケアコール通知)をサーバー20等に送信する。
【0037】
音声入出力部15は、例えばスピーカーとマイクであり、通信部12を介してスタッフ端末40等との間で音声信号を送受信することによって音声通話を可能とする。なお、音声入出力部15は検出部10の外部装置として、通信部12を介して検出部10に接続されてもよい。
【0038】
また、検出部10は、ベッド60の方向に向けてマイクロ波を送受信して対象者70の体動(例えば呼吸動)によって生じたマイクロ波のドップラシフトを検出するドップラシフト方式の体動センサーを、さらに含んでいてもよい。この体動センサーにより、対象者70の呼吸動作に伴う胸部の体動(胸部の上下動)を検出し、その胸部の体動における周期の乱れや予め設定された閾値以下である胸部の体動における振幅を検知すると、微体動異常であると認識する。
【0039】
検出部10は、対象者70の居室の気温、気圧および湿度等の対象者70の生活環境を検出するセンサーをさらに含んでいてもよい。検出部10は、対象者70の居室以外の施設内の気温、気圧および湿度を検出するセンサーを含んでいてもよく、施設の外の気温、気圧および湿度を検出するセンサーを含んでいてもよい。
【0040】
スタッフ80は、業務に応じた、対象者70への各種の対応を行う者である。業務には、医療業務、介護業務を含み得る。ここで、スタッフ80の業務が、対象者70に対する介護業務である場合に、各イベントに関する対応内容について説明する。イベントとして「起床」を判定し、その判定が所定時間内(施設で設定された起床時間(例えば午前7~8時))であれば、モーニングケアを行う。このモーニングケアには、洗顔、歯磨き介助、義歯装着、着替え介助等が含まれる。また、「離床」のイベントであれば、車椅子移乗、歩行介助が必要となる場合がある。また、検出部10が判定したイベント以外の定期的(定時)なイベントとして、水分摂取、および食事介助、排泄介助、車椅子移乗、歩行介助、体位変換(褥瘡予防)がある。これらの定期的イベントは、ケアコール部14等により、定時になるとアラートを発生させるようにしてもよい。
【0041】
イベントには、スタッフ80により対象者70への対応が行われるべき事象が広く含まれる。例えば、イベントには、スタッフ80への発報(報知)が行われることによってスタッフ80が対応すべき事象(第1事象と称する)、決まった時間にスタッフ80が対応すべき事象(第2事象と称する)、およびスタッフ80が気付いた際に対応すべき事象(第3事象と称する)等が含まれる。第1事象には、例えば、ケアコール、ならびに、起床、離床、転倒、転落、および微体動異常が含まれる。第2事象には、例えば、食事、入浴、着替え、および散策等の際の車椅子への移乗が含まれる。第3事象には、例えば、対象者70の口頭での依頼による排泄ケア、発熱が疑われるときの体温測定、嘔吐していたときの対応、および認知症症状発生時の対応等が含まれる。
【0042】
検出部10は、検出したイベントの情報(以下、単に「イベント情報」とも称する)、ドップラシフト、生活環境および撮影画像等の情報をサーバー20へ送信(出力)する。
【0043】
(サーバー20)
図4は、サーバー20のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0044】
サーバー20は、制御部21、通信部22、および記憶部23を備える。ここでは、サーバー20が、本発明の情報処理装置の一具体例に対応する。サーバー20は、例えば、第1期間に検出部10によって検出されたドップラシフト、生活環境および撮影画像等の情報を用いて、第1期間よりも後の第2期間における、対象者70の認知症症状の発生の有無等を予測する。第2期間は、例えば、対象者の当日の起床時から次の日の起床時までの約一日間であり、第1期間は、例えば、対象者の当日の起床時から遡って一週間程度の期間である。認知症症状は、いわゆる、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)である。
【0045】
サーバー20は、対象者70用の居室と同じ建物内に設けられてもよく、遠隔地に設けられてネットワークを介して接続可能であってもよい。例えば、サーバー20は、インターネット等のネットワーク上に配置された複数のサーバーによって仮想的に構築されるクラウドサーバーであってもよい。各構成は、バスによって、相互に通信可能に接続されている。制御部21、および通信部22は、それぞれ検出部10の制御部11、および通信部22と同様の機能を有するため、詳細な説明を省略する。制御部21の具体的な機能については、後述する。
【0046】
記憶部23は、本実施形態に係る情報処理プログラムを記憶する。サーバー20の上記構成要素は、プログラムに従い、制御部21により制御される。記憶部23は、イベントリスト、撮影画像、対象者70のドップラシフト、対象者70の生活環境、ケア対象者リスト、ケアリスト、指標情報等の各種情報を記憶する。ケア対象者リストには、対象者70の氏名、要介護認定レベル、認知症有無、有りの場合その認知症レベル、車椅子使用有無等の情報が含まれる。また、ケアリストには、各対象者70に関する食事摂取量、水分摂取量、排泄状況等のケア履歴が含まれる。ケアリストには、各対象者70に認知症症状が発生したときのケア履歴も含まれる。
【0047】
指標情報は、対象者70の状態指標および環境指標の少なくとも一方を含む情報である。状態指標は、対象者70の第1期間の生活状態に関する指標である。環境指標は、対象者70の第1期間の生活環境に関する指標である。指標情報は、状態指標および環境指標を含んでいることが好ましい。これにより、より高い精度で対象者70の認知症症状の発生の有無等を予測することが可能となる。
【0048】
図5および図6は状態指標の一例を表し、図7は環境指標の一例を表している。状態指標は、例えば、ADL(Activities of Daily Living)に関する指標であり、対象者70の動作を表す指標および対象者70の睡眠状態を表す指標の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。対象者70の動作および睡眠状態は、対象者70の認知症症状の発生との関わりが大きいと考えられるためである。
【0049】
対象者70の動作は、例えば、対象者70の移動、立ち止まり、繰り返し行動およびふらつきの少なくともいずれか一つを含んでいる。
【0050】
例えば、対象者70の移動を表す指標は、昼間移動範囲の指標1~指標3、夜間移動範囲の指標4~指標6、はみ出し面積の指標15、移動速度の指標16および移動時間・移動距離の指標21~指標24である。指標1~指標6は、ベッド60外の対象者70の訪問エリアの面積に基づいて算出される。指標15は、夜間におけるベッド外60の高頻度通過経路からのはみ出し面積に基づいて算出される。指標16は、夜間におけるベッド60外の対象者70の移動速度に基づいて算出される。指標21~指標24は、ベッド60外の対象者70の滞在時間および移動距離に基づいて算出される。
【0051】
例えば、対象者70の立ち止まりを表す指標は、立ち止まりの指標17~指標20である。この指標17~指標20は、ベッド60外の日常行動以外で対象者70が立ち止まっている時間および回数に基づいて算出される。
【0052】
例えば、対象者70の繰り返し行動を表す指標は、昼間繰り返し行動の指標7~指標10および夜間繰り返し行動の指標11~指標14である。指標7~指標14は、対象者70の繰り返し行動の回数および時間に基づいて算出される。
【0053】
例えば、対象者70のふらつきを表す指標は、ふらつきの指標25である。指標25は、夜間ベッド60外の、対象者70の軌跡のふらつき度に基づいて算出される。
【0054】
対象者70の睡眠状態は、例えば、対象者70の睡眠時間、睡眠率および睡眠安定性の少なくともいずれか一つを含んでいる。例えば、対象者70の睡眠時間および睡眠率を表す指標は、夜間睡眠時間・睡眠率の指標26~指標30である。指標26~指標30は、対象者70の夜間睡眠時間および夜間覚醒時間に基づいて算出される。例えば、対象者70の睡眠安定性を表す指標は、夜間睡眠安定性の指標31および指標32である。指標31および指標32は、午前0時から午前5時までの対象者70の睡眠パターン安定性等に基づいて算出される。
【0055】
環境指標は、対象者70の生活環境の気温を表す指標、対象者70の生活環境の気圧を表す指標および対象者70の生活環境の湿度を表す指標の少なくともいずれか一つを含んでいる。この気温、気圧および湿度は、例えば、対象者70の居室の気温、気圧および湿度である。例えば、対象者70の生活環境の気温を表す指標は指標35であり、対象者70の生活環境の気圧を表す指標は指標33であり、対象者70の生活環境の湿度を表す指標は指標34である。
【0056】
指標1~指標35は、例えば、検出部10によって検出された情報に基づいて、算出される。例えば、検出部10によって算出された指標1~指標35が、サーバー20に送信されて、記憶部23に記憶される。あるいは、検出部10から送信された情報に基づいて、サーバー20が指標1~指標35を算出し、記憶部23に記憶するようにしてもよい。指標1~指標35の一部を検出部10が算出し、他の部分をサーバー20が算出してもよい。あるいは、検出部10から送信された情報に基づいて、外部装置が指標1~指標35の一部または全部を算出し、外部装置からサーバー20に送信された指標1~指標35が、記憶部23に記憶されてもよい。
【0057】
記憶部23には、さらに、機械学習により学習された機械学習モデルが記憶される。本実施形態では、この機械学習モデルを用いて、サーバー20が、対象者70の認知症症状の発生の有無等を予測する。記憶部23には、学習に用いる学習用データが記憶されていてもよい。
【0058】
上記の各情報は、サーバー20の記憶部23以外において蓄積されてもよく、例えばネットワークを介してサーバー20と接続されるクラウドサーバー等の各種ストレージに蓄積されていてもよい。また、上記の各情報は、一つデータベースとして構築される形態に限定されず、相互に関連付けられた複数のデータベースに分散されて蓄積されてもよい。
【0059】
サーバー20は、検出部10から受信したイベント情報および撮影画像を単独で、または検出部10と協働することによって、検出部10が認識した、起床、離床、転倒、ナースコール等のイベントが、どの対象者70に関するものであるかを判定(識別)する。この判定は、イベントを認識した検出部10が設置されている居室番号から、これに対応付けられている対象者70(すなわち、居室の入居者)を判定することによって行う。なお、対象者70の判定は、対象者70がICタグを携帯している場合には、このICタグを各居室に設けたRFIDリーダーで読み取ることにより、判定してもよい。なお、相部屋等で、1つの居室に複数の対象者70が存在する場合には、ベッド60ごとに検出部10を配置することによって、対象者70を判定してもよい。
【0060】
サーバー20は、検出部10からイベント情報を受信したときは、イベントを発生させた対象者70の氏名、居室番号、およびイベントの内容を含むイベント通知をスタッフ端末40へ送信することによって、スタッフ80にイベントの発生を報知するとともに、イベントへの対応を指示する。
【0061】
(管理者端末30)
図8は、管理者端末30のハードウェア構成を示すブロック図である。管理者端末30は、いわゆるPC(Personal Computer)であり、制御部31、通信部32、表示部33、および入力部34を有しており、これらはバスにより相互に接続される。
【0062】
制御部31は、検出部10の制御部11と同様の構成として、CPU、RAM、ROM等を備える。
【0063】
通信部32は、イーサネット(登録商標)等の規格による有線通信のネットワークインターフェースや、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11等の規格による無線通信のインターフェース等の各種ローカル接続向けのインターフェースであり、ネットワーク50に接続した各端末との通信を行う。
【0064】
表示部33は、例えば液晶ディスプレイであり、各種情報を表示する。
【0065】
入力部34は、キーボード、テンキー、マウス等を備えており、各種情報の入力を行う。
【0066】
本実施形態では、管理者端末30は、管理者90用の端末として用いられる。管理者90は、例えば、スタッフ80を統括するマネージャーである。
【0067】
管理者端末30は、管理者90等からケア情報の分析や出力に関する指示を受け付けて、受け付けた指示をサーバー20へ送信する。
【0068】
(スタッフ端末40)
図9は、スタッフ端末40のハードウェア構成を示すブロック図である。スタッフ端末40は、制御部41、無線通信部42、表示部43、入力部44および音声入出力部45を有しており、これらはバスにより相互に接続される。
【0069】
制御部41は、検出部10の制御部11と同様の構成であり、CPU、RAM、ROM等を備える。
【0070】
無線通信部42は、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)等の規格を用いた無線通信が可能であり、アクセスポイント51を経由して、または直接的に各装置と無線通信する。
【0071】
表示部43、および入力部44は、例えばタッチパネル式のディスプレイであり、液晶等で構成される表示部43の表示面に、入力部44としてのタッチセンサーを重畳させたものである。表示部43、入力部44によって、スタッフ80に対する各種指示が通知される。また、表示部43、入力部44によって、イベント通知を表示した操作画面を表示したり、操作画面を通じてイベントへの対応の受諾の応答の入力や、介護記録の入力等の各種の操作を受け付けたりする。対象者70の認知症症状が発生したとき、例えば、スタッフ80は、どの対象者70について、どのような認知症症状が発生したのかを、入力部44を介して、スタッフ端末40に入力する。スタッフ80は、認知症症状の発生日時を入力してもよい。
【0072】
音声入出力部45は、例えばスピーカーとマイクであり、無線通信部42を介して他のスタッフ端末40との間でスタッフ80による音声通話を可能にする。スタッフ端末40は、例えば、タブレット型コンピューター、スマートフォンまたは携帯電話等の、持ち運び可能な通信端末機器によって構成できる。
【0073】
[制御部21の機能]
次に、図10および図11を用いて、サーバー20の制御部21の具体的な機能を説明する。
【0074】
図10は、制御部21の機能構成を示すブロック図である。制御部21は、記憶部23に記憶されたプログラムを読み込んで処理を実行することによって、取得部211、予測部212および出力部213として機能する。
【0075】
図11は、制御部21が取得する指標情報と、この指標情報に基づいて予測された対象者70(Aさん、Bさん)の認知症症状の発生に関する発生情報とを例示したものである。図11には、対象者70の2023年1月2日の起床時から2023年1月3日の起床時までの認知症症状の発生が予測される例を示している。
【0076】
取得部211は指標情報を取得する。上述のように、指標情報は、第1期間における対象者70の生活状態に関する状態指標および第1期間における対象者70の生活環境に関する環境指標の少なくとも一方を含んでいる。取得部211は、例えば、記憶部23から指標情報を取得する。第1期間は、例えば、2022年12月26の対象者70の起床時から2023年1月2日の起床時までの約1週間の期間である。第1期間は、第2期間よりも長いことが好ましく、一週間以上の期間であることがより好ましい。これにより、より高い精度で、認知症症状の発生を予測することが可能となる。
【0077】
指標情報は、例えば、2023年1月2日の対象者70の起床時の指標33~指標35(a)を含んでいる。指標情報は、対象者70の2023年1月1日の起床時から2023年1月2日の起床時までの指標1~指標30(d)を含んでいる。指標情報は、対象者70の2022年12月26日の起床時から2023年1月2日の起床時までの指標31および指標32(g)を含んでいる。
【0078】
取得部211が取得する指標情報は、第1期間における対象者70の状態指標の変化に関する情報および第1期間における対象者70の環境指標の変化に関する情報の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。これにより、より高い精度で、対象者70の発生情報を予測することが可能となる。
【0079】
例えば、指標情報は、2023年1月2日の対象者70の起床時の指標33~指標35と、2023年1月1日の対象者70の起床時の指標33~指標35との差に関する情報(b)を含んでいる。指標情報は、2022年12月26日の対象者70の起床時から2023年1月2日の対象者70の起床時までの指標33~指標35のばらつきに関する情報(c)を含んでいる。指標33~指標35のばらつきは、例えば、標準偏差を用いて算出することができる。
【0080】
例えば、指標情報は、2023年1月1日の起床時から2023年1月2日の起床時まで指標26~指標30と、2022年12月31日の起床時から2023年1月1日の起床時までの指標26~指標30との比較に関する情報(f)を含んでいる。この比較に関する情報は、例えば、除算により算出する。
【0081】
例えば、指標情報は、2023年1月1日の対象者70の起床時から2023年1月2日の起床時までの指標1~指標25と、2022年12月26日の起床時から2023年1月1日の起床時までの指標1~指標25の平均との比較に関する情報(e)を含んでいる。この比較に関する情報は、例えば、除算により算出する。
【0082】
予測部212は、取得部211により取得された指標情報に基づいて、第2期間における対象者70の認知症症状の発生に関する発生情報を予測する。第2期間は、第1期間よりも後の期間であり、例えば、2023年1月2日の対象者70の起床時から2023年1月3日の起床時までの約1日間の期間である。発生情報は、認知症症状の発生の有無に関する情報と、発生する認知症症状の種類に関する情報とを含んでいることが好ましい。発生情報が、認知症症状の種類に関する情報を含むことにより、介護者等は、事前により細やかな対応をすることが可能となる。予測部212は、例えば、機械学習モデルを用いて発生情報を予測する。これにより、より高い精度で対象者70の認知症症状の発生の有無等を予測することが可能となる。機械学習モデルの生成については、後述する。
【0083】
予測部212は、例えば、Aさんについて、2023年1月2日の起床から2023年1月3日の起床までの間に、徘徊の認知症症状が発生すると予測する。認知症症状の種類には、徘徊の他、例えば、幻視・幻聴、妄想、無断外出、帯同行動、易怒性、うつ、傾眠傾向および大声等が含まれる。予測部212が予測する発生情報には、認知症症状の複数の種類に関する情報が含まれていてもよい。例えば、予測部212は、Aさんについて、徘徊および大声の認知症症状が発生すると予測してもよい。
【0084】
予測部212は、Bさんについて、例えば、2023年1月2日の起床から2023年1月3日の起床までの間には、認知症症状が発生しないと予測する。
【0085】
出力部213は、予測部212により予測された対象者70の発生情報を出力する。出力部213は、例えば、通信部22を介して発生情報をスタッフ端末40に送信することにより、発生情報を出力する。スタッフ端末40は、例えば、受信した発生情報を表示部43に表示させる。例えば、表示部43には、2023年1月2日に、Aさんが徘徊の認知症症状を発生する可能性が高いことが表示される。表示部43には、対象者70の認知症症状の発生に対して、スタッフ80への事前の対応指示が表示されてもよい。予測部212が、第2期間における対象者の認知症症状の発生はないと予測したとき、出力部213は、発生情報を出力しなくてもよい。
【0086】
なお、検出部10、サーバー20、管理者端末30、およびスタッフ端末40は、上記の構成要素以外の構成要素を含んでもよく、あるいは、上記の構成要素のうちの一部を含まなくてもよい。
【0087】
[サーバー20の動作]
次に、見守りシステム1におけるサーバー20の動作について説明する。
【0088】
図12は、サーバーの動作を示すフローチャートである。本フローチャートは、サーバー20の記憶部23に記憶されたプログラムに従い、制御部21により実行され得る。
【0089】
制御部21は、まず、対象者70の指標情報を取得する(ステップS101)。例えば、制御部21は、記憶部23に記憶されている指標情報を読み出して取得する。この指標情報は、例えば、第1期間における対象者70の生活状態に関する状態情報および第1期間における対象者70の生活環境に関する環境情報を含んでいる。
【0090】
続いて、制御部21は、ステップS101の処理において取得された指標情報に基づいて、第1期間よりも後の第2期間における対象者70の認知症症状の発生に関する発生情報を予測する(ステップS102)。制御部21は、例えば、ステップS101の処理において取得された指標情報を、機械学習モデルに入力することにより、対象者70の発生情報を予測する。制御部21は、例えば、対象者70の当日の起床時に、対象者70の当日の発生情報を予測する。制御部21は、例えば、毎日、対象者70の起床時に、対象者70の発生情報を予測する。
【0091】
この後、制御部21は、ステップS102の処理において予測された発生情報を出力して(ステップS103)、処理を終了する。
【0092】
[機械学習モデルの生成]
次に、制御部21が用いる機械学習モデルの生成方法について説明する。
【0093】
図13は、機械学習モデルの生成方法を示すフローチャートである。例えば、制御部21がモデル生成部として機能し、機械学習モデルを生成する。ここでは、サーバー20が、機械学習装置の一具体例に対応する。
【0094】
図13の処理においては、予め準備した学習用データを用いて、機械学習が実行される。この学習用データは、説明変数および目的変数の多数のデータセットを含んでいる。説明変数は認知症患者の学習用指標情報であり、目的変数は認知症患者の学習用発生情報である。学習用指標情報は、学習用第1期間における認知症患者の生活状態に関する学習用状態指標および学習用第1期間における認知症患者の生活環境に関する学習用環境指標の少なくとも一方を含んでいる。学習用状態指標および学習用環境指標は、例えば、検出部10により検知された情報に基づいて得ることができる。学習用発生情報は、学習用第1期間よりも後の学習用第2期間における認知症患者の認知症症状の発生に関する情報である。学習用発生情報は、例えば、スタッフ80により、スタッフ端末40に入力された認知症患者のケア履歴から得ることができる。学習用指標情報および学習用発生情報は、例えば、複数の対象者70の過去の情報である。学習用指標情報および学習用発生情報は、記憶部23に記憶されていてもよい。
【0095】
学習器(図示せず)には、例えば、CPUおよびGPUのプロセッサを用いたスタンドアロンの高性能コンピューター、またはクラウドコンピューターが用いられる。以下においては、学習器において、ディープラーニング等のパーセプトロンを組み合わせて構成したニューラルネットワークを用いる学習方法について説明するが、これに限られず、種種の手法が適用され得る。例えば、ランダムフォレスト、決定木、サポートベクターマシン(SVM)、ロジスティック回帰、k近傍法、トピックモデル等が適用され得る。
【0096】
(ステップS111)
学習器は、学習用データを読み込む。最初であれば1組目の学習用データを読み込み、i回目であれば、i組目の学習用データを読み込む。
【0097】
(ステップS112)
学習器は、読み込んだ学習用データのうち説明変数をニューラルネットワークに入力する。
【0098】
(ステップS113)
学習器は、ニューラルネットワークの予測結果を、目的変数と比較する。
【0099】
(ステップS114)
学習器は、比較結果に基づいてパラメータを調整する。学習器は、例えば、バックプロパゲーション(Back-propagation、誤差逆伝搬法)に基づく処理を実行することにより、比較結果の差異が小さくなるようにパラメータを調整する。
【0100】
(ステップS115)
学習器は、1~i組目まで全データの処理が完了すれば(YES)、処理をステップS116に進め、完了していなければ(NO)、処理をステップS111に戻し、次の学習用データを読み込み、ステップS111以下の処理を繰り返す。
【0101】
(ステップS116)
学習器は、学習を継続するか否かを判定し、継続する場合(YES)、処理をステップS111に戻し、ステップS111~S115において再度1組目~i組目までの処理を実行し、継続しない場合(NO)、処理をステップS117に進める。
【0102】
(ステップS117)
学習器は、これまでの処理で機械学習された機械学習モデルを記憶して終了する(エンド)。記憶先には、サーバー20の記憶部23が含まれる。上述のサーバー20の動作では、このようにして生成された機械学習モデルを用いて対象者70の認知症症状の発生に関する発生情報が予測される。学習器は、施設毎に学習用データを学習してもよく、対象者70毎に学習用データを学習してもよい。
【0103】
[サーバー20および見守りシステム1の作用効果]
本実施形態に係るサーバー20および見守りシステム1では、対象者70の指標情報に基づいて、今後の対象者70の認知症症状の発生等が予測される。これにより、認知症症状が発生すると予測されたとき、スタッフ80または家族等の介護者が、事前に必要な対応を行うことが可能となる。よって、認知症症状の発生に起因する対象者70およびその周囲への負担を軽減することが可能となる。
【0104】
以上に説明した見守りシステム1の構成は、上述の実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上述の構成に限られず、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。また、一般的な見守りシステムが備える構成を排除するものではない。
【0105】
例えば、上記実施形態では、第2期間が第1期間の直後である例について説明したが、第2期間と第1期間とが離れていてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、第2期間が当日の対象者の起床時から翌日の対象者の起床時までの一日間である例について説明したが、第2期間は二日間以上の期間であってもよい。あるいは、当日の対象者の起床時から当日の就寝時までの期間であってもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、サーバー20が、スタッフ端末40に送信することにより、発生情報を出力する例について説明したが、サーバー20は、管理者端末30に送信することにより、発生情報を出力してもよく、外部の表示装置等に送信することにより、発生情報を出力してもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、サーバー20が、機械学習モデルを用いて、対象者70の発生情報を予測する例について説明したが、サーバー20は、統計処理等の他の方法を用いて、対象者70の発生情報を予測するようにしてもよい。
【0109】
また、サーバー20が有する機能の一部または全部を、管理者端末30、スタッフ端末40または検出部10が有するようにしてもよい。
【0110】
また、検出部10、サーバー20、管理者端末30およびスタッフ端末40は、それぞれ複数の装置により構成されてもよく、あるいはいずれかの装置が他の装置に含まれて単一の装置として構成されてもよい。
【0111】
また、上述したフローチャートは、一部のステップを省略してもよく、他のステップが追加されてもよい。また各ステップの一部は同時に実行されてもよく、一つのステップが複数のステップに分割されて実行されてもよい。また各ステップの実行順序が変更されてもよい。
【0112】
また、上述した実施形態に係る見守りシステム1における各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、例えば、USBメモリやDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、一機能としてその検出部等の装置のソフトウエアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1 見守りシステム、
10 検出部、
11 制御部、
12 通信部、
13 カメラ、
14 ケアコール部、
15 音声入出力部、
20 サーバー、
21 制御部、
22 通信部、
23 記憶部、
30 管理者端末、
31 制御部、
32 通信部、
33 表示部、
34 入力部、
40 スタッフ端末、
41 制御部、
42 無線通信部、
43 表示部、
44 入力部、
45 音声入出力部、
46 位置取得部、
50 ネットワーク、
51 アクセスポイント、
60 ベッド、
70 対象者、
80 スタッフ、
90 管理者。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13