(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167940
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】感光性樹脂塗膜の製造方法、ディスプレイの製造方法、カラーフィルタの製造方法および感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/40 20060101AFI20241128BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20241128BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20241128BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20241128BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241128BHJP
H10K 50/84 20230101ALI20241128BHJP
H10K 71/00 20230101ALI20241128BHJP
G02B 5/20 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
G03F7/40 501
G03F7/027 502
G03F7/031
G03F7/004 505
H10K59/10
H10K50/84
H10K71/00
G02B5/20 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084273
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 久典
(72)【発明者】
【氏名】古谷 敏典
(72)【発明者】
【氏名】石塚 雅敏
【テーマコード(参考)】
2H148
2H196
2H225
3K107
【Fターム(参考)】
2H148BD01
2H148BD11
2H148BD14
2H148BD15
2H148BE03
2H148BE09
2H148BE24
2H148BE36
2H148BE38
2H148BE39
2H148BF02
2H148BF06
2H148BF12
2H148BF16
2H148BF19
2H148BH04
2H148BH28
2H196AA27
2H196AA28
2H225AC21
2H225AC31
2H225AC35
2H225AC36
2H225AC74
2H225AD02
2H225AD06
2H225AN34P
2H225AN56P
2H225AN96P
2H225BA16P
2H225CA15
2H225CA16
2H225CA24
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC13
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD88
3K107DD97
3K107EE54
3K107FF00
3K107FF14
3K107FF15
3K107GG11
3K107GG26
3K107GG28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】露光・現像した後のポストベーク工程に着目して、塗膜のポストベーク後残膜率とポストベーク温度などとの関係性を顕在化し、面内温度などのバラツキの影響が小さい温度領域などを見い出して、その温度領域などを実際の製造プロセスにおけるポストベーク温度として採用することで、良好な塗膜を安定して製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】塗膜を以下の条件でポストベークする。-0.05≦α≦0.12(α;ポストベーク後残膜率を縦軸とし、ポストベーク温度を横軸としてプロットしたポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線において、前記曲線の接線の傾斜角度の正接で定義される値)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に感光性樹脂組成物をコートして塗膜を形成し、前記形成した塗膜を700mJ/cm2以下の露光量で露光し、前記露光した塗膜を現像してパターン形成した後、前記パターン形成した塗膜を以下の条件でポストベークする感光性樹脂塗膜の製造方法。
-0.05≦α≦0.12
(α;ポストベーク後残膜率を縦軸とし、ポストベーク温度を横軸としてプロットしたポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線において、前記曲線の接線の傾斜角度の正接で定義される値)
【請求項2】
前記パターン形成した塗膜を以下の条件でポストベークする請求項1に記載の感光性樹脂塗膜の製造方法。
-0.010≦β≦0.015
(β;ポストベーク後光線透過率を縦軸とし、ポストベーク温度を横軸としてプロットしたポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線において、前記曲線の接線の傾斜角度の正接で定義される値)
【請求項3】
前記形成した塗膜を以下の条件で露光する請求項1または2に記載の感光性樹脂塗膜の製造方法。
-0.8≦γ≦0.3
(γ;ポストベーク後残膜率を縦軸とし、前記露光の際の露光量を横軸としてプロットしたポストベーク後残膜率・露光曲線において、前記曲線の接線の傾斜角度の正接で定義される値)
【請求項4】
飽和露光量(ポストベーク後残膜率が85%以上になる最小露光量)の0.1%の露光量で、ポストベーク後残膜率が0~0.5%となる請求項1または2に記載の感光性樹脂塗膜の製造方法。
【請求項5】
ポストベーク後さらに100℃で240分間追加で焼成したときの焼成前後の色差ΔEabが5.0以下である前記請求項1または2に記載の感光性樹脂塗膜の製造方法。
【請求項6】
前記基材の面積が、0.4~16.0m2である前記請求項1または2に記載の感光性樹脂塗膜の製造方法。
【請求項7】
前記請求項1または2に記載の感光性樹脂塗膜の製造方法によって製造された感光性樹脂塗膜を用いて発光画素パターン、スペーサーパターン、オーバーコートパターンのいずれかを形成するディスプレイの製造方法。
【請求項8】
基材前記請求項1または2に記載の感光性樹脂塗膜の製造方法によって製造された感光性樹脂塗膜を用いて画素パターンまたはブラックマトリックスパターンを形成するカラーフィルタの製造方法。
【請求項9】
下記化学式1で表される単位及び水酸基を含む重合性化合物(A)と、下記化学式1で表される単位及び下記化学式2で表される単位を含む重合性化合物(B)とを、含有する感光性樹脂組成物。
【化1】
【化2】
【請求項10】
固形分全体を100重量部として、重合性化合物(A)と重合性化合物(B)の合計が20~70重量部含有される請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
重合性化合物(A)の重量平均分子量が100~800であり、前記重合性化合物(B)の重量平均分子量が300~1,000である請求項9または10に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
重合性化合物(A)の二重結合当量が50~150であり、重合性化合物(B)の二重結合当量が30~200である請求項9または10に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
重合性化合物(A)と重合性化合物(A)との重量部比が30:70~70:30である請求項9または10に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
融点115℃以下の光重合開始剤を含有する請求項9または10に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
アルキルフェノン系光重合開始剤とオキシムエステル系光重合開始剤とを含有する請求項9または10に記載の感光性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に感光性樹脂組成物をコートし、露光・現像してパターン形成する感光性樹脂塗膜の製造方法に関し、とくに露光・現像してパターン形成した後のポストベーク工程において、感光性樹脂塗膜のポストベーク後残膜率とポストベーク温度などとの関係に着目した感光性樹脂塗膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗膜の残膜率とベーク温度などとの関係に着目した発明として、引用文献1の発明や引用文献2の発明があった。引用文献1の発明は、レジスト膜焼成(ベーク)工程において実際にレジスト膜が受けた熱処理効果を顕在化し、評価する方法の発明であり、
図1の領域Bは、面内温度バラツキの影響が小さい領域であり、特に両者の関係が極値を示す点C
において面内温度バラツキの影響が最も小さく、この温度を実際のプロセス焼成温度として採用することで、良好なレジストパターンを形成する旨記載されている。
【0003】
引用文献2の発明は、レジストにベークを施すレジスト処理方法及びレジスト付き基体の製造方法に関する発明であり、所定の露光前ベーク温度条件で露光前ベークを行い、且つ、所定の露光後ベーク温度条件で露光後ベークを行った後の試験用レジスト層に対して現像処理を行い、露光前ベーク温度条件及び露光後ベーク温度条件毎の残膜率を得る工程と、露光前ベーク温度軸及び露光後ベーク温度軸を有するグラフにて前記残膜率が95%以上の領域における温度条件で、前記試験用レジスト層と同組成且つ基体上に形成されたレジスト層に対して露光前ベーク及び露光後ベークを行うことで、化学増幅型レジスト層における未露光部について高残膜率を維持でき、露光部については現像後において未露光部に対して高いパターンコントラストを有し、高い解像度を有することができる記載がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-189303号公報
【特許文献2】特開2012-47828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、引用文献1に記載されている内容は、レジスト膜焼成工程によって焼成されたレジスト膜を室温に達するまで冷却し、その後レジスト膜を露光・現像する工程でのレジストパターン形成条件を決定する方法であり、露光・現像した後のポストベークについての塗膜の残膜率とベーク温度などとの関係については一切記載がされていない。
【0006】
同様に、引用文献2に記載されている発明も、レジスト層形成後かつパターン露光前に行われる露光前ベーク(PB)と、パターン露光後かつ現像処理前に行われる露光後ベーク(PEB)処理に関する方法であって、露光・現像した後のポストベークについての塗膜の残膜率とベーク温度などとの関係については一切記載がされていない。
【0007】
その一方で、重合性化合物が含有される感光性樹脂組成物をコートして形成した塗膜では、前記引用文献1のレジスト膜焼成工程または引用文献2の露光前後のベーク工程によって熱処理がされ現像がされた後も未反応の重合性化合物が一部残存し、それが残存されたままであると密着強度不足や耐性不足などの不具合で所望する性能が得られず、経時的変化によりクラックなども生じやすくなるため、ポストベーク処理をして残存する未反応の重合性化合物を極力減らしておくことが望ましい。
【0008】
ところが、そのポストベークをした場合も、面内の温度バラツキが大きいと局所的に未反応の重合性化合物が残存してしまったり、面内での最終的な塗膜の厚みにバラツキが生じたりして、生産性や品質が低下する課題があった。特に、基材のサイズが半導体などよりも大面積で、かつ塗膜の厚みの許容範囲が厳しいディスプレイやカラーフィルタなどの製品を製造する場合には、歩留まりの低下が大きく前記課題が深刻であった。さらにポストベークは時間がかかるので、効率アップのために各製品をラックに何段も積んで一挙に行うことが多く、その場合にはさらに温度バラツキが大きくなり、より前記課題が深刻であった。
【0009】
本発明は、この露光・現像した後のポストベーク工程に着目して、塗膜のポストベーク後残膜率とポストベーク温度などとの関係性を顕在化し、面内温度などのバラツキの影響が小さい温度領域などを見い出して、その温度領域などを実際の製造プロセスにおけるポストベーク温度として採用することで、良好な塗膜を安定して製造できる製造方法の提供等を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の感光性樹脂塗膜の製造方法は、次の構成を有する。すなわち本発明の第1の構成は、基材上に感光性樹脂組成物をコートして塗膜を形成し、前記形成した塗膜を700mJ/cm2以下の露光量で露光し、前記露光した塗膜を現像してパターン形成した後、前記パターン形成した塗膜を以下の条件でポストベークする感光性樹脂塗膜の製造方法である。
-0.05≦α≦0.12
(α;ポストベーク後残膜率を縦軸とし、ポストベーク温度を横軸としてプロットしたストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線において、前記曲線の接線の傾斜角度の正接で定義される値)
また本発明の第2の構成は、前記パターン形成した塗膜を以下の条件でポストベークする感光性樹脂塗膜の製造方法である。
-0.010≦β≦0.015
(β;ポストベーク後光線透過率を縦軸とし、ポストベーク温度を横軸としてプロットしたポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線において、前記曲線の接線の傾斜角度の正接で定義される値)
また本発明の第3の構成は、前記形成した塗膜を以下の条件で露光する感光性樹脂塗膜の製造方法である。
-0.8≦γ≦0.3
(γ;ポストベーク後残膜率を縦軸とし、前記露光の際の露光量を横軸としてプロットしたポストベーク後残膜率・露光曲線において、前記曲線の接線の傾斜角度の正接で定義される値)
また本発明の第4の構成は、飽和露光量(ポストベーク後残膜率が85%以上になる最小露光量)の0.1%の露光量で、ポストベーク後残膜率が0~0.5%となる感光性樹脂塗膜の製造方法である。また本発明の第5の構成は、ポストベーク後さらに100℃で240分間追加焼成したときの焼成前後の色差ΔEabが5.0以下である感光性樹脂塗膜の製造方法である。
【0011】
また本発明の第6の構成は、前記基材の面積が、0.4~16.0m2である感光性樹脂塗膜の製造方法である。なお、本発明の第7および第8の構成は、前記感光性樹脂塗膜の製造方法の発明を適用したディスプレイやカラーフィルタの製造方法である。
【0012】
本発明の第9の構成は、特定の重合性化合物(A)と、特定の重合性化合物(B)とを、含有する感光性樹脂組成物であり、本発明の第10ないし第13の構成は、特定の重合性化合物(A)と、特定の重合性化合物(B)の、合計含有量、重量平均分子量、二重結合当量、重量部比を規定する感光性樹脂組成物であり、本発明の第14ないし第15の構成は、特定の光重合開始剤を含有し、その光重合開始剤をさらに特定した感光性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の感光性樹脂塗膜の製造方法によれば、ポストベークする際の面内の温度バラツキを小さくでき、面内での最終的な塗膜の厚みのバラツキが軽減され、生産性および品質が向上する効果がある。その結果、大面積かつ塗膜の厚みの許容範囲が厳しい分野の製品を製造する場合にも適用できる効果がある。
【0014】
また本発明の感光性樹脂塗膜の製造方法によれば、ポストベークする際の最適かつ必要最小限のポストベーク温度や、露光の際の最適かつ必要最小限の露光量が的確に把握できるので、ポストベークのエネルギー量や露光エネルギー量を節約することが可能となり、省エネルギー化につながるエコロジーな製造方法として活用できる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の構成における感光性樹脂塗膜の製造方法の工程を示す一例である。
【
図2】本発明の第1の構成におけるポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線の一例である。
【
図3】本発明の第2の構成におけるポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線の一例である。
【
図4】本発明の第1の構成におけるポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線の別の一例である。
【
図5】本発明の第2の構成におけるポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線の一例である。
【
図6】本発明の第3の構成におけるポストベーク後残膜率・露光曲線の一例である。
【
図7】本発明の第3の構成におけるポストベーク後残膜率・露光曲線の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。本発明の第1の構成の感光性樹脂塗膜23の製造方法は、基材1上に感光性樹脂組成物をコートして塗膜20を形成し(
図1(a))、前記形成した塗膜20の上部にフォトマスク3を載置し700mJ/cm
2以下の露光量で露光し(
図1(b))、前記露光した塗膜21を現像してパターン形成(
図1(c))した後、前記パターン形成した塗膜22を以下の条件でポストベークする(
図1(d))ことを特徴とする。
-0.05≦α≦0.12
(α;ポストベーク後残膜率を縦軸とし、ポストベーク温度を横軸としてプロットしたストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線において、前記曲線の接線の傾斜角度の正接で定義される値)
本発明のポストベークとは、露光・現像してパターン形成した後に残存した未反応の重合性化合物を熱架橋させ、基板との密着性や耐性を高めるために行うベーキングのことであり、ポストベーク温度とはポストベークの際の処理温度のことであり、ポストベーク後残膜率(%)とは{(ポストベーク後の感光性樹脂塗膜23の平均厚み/露光前の塗膜20の平均厚み)×100}のことである。塗膜20の平均厚みは、対象とする塗膜20の同一面内の任意の5箇所をVecco社製の接触式膜厚計Dektak150で測定して得た値の平均値である。
【0017】
また、ポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線とは、ポストベーク後残膜率を縦軸とし、ポストベーク温度を横軸として各測定値をプロットし、3次数の多項式近似曲線により得られる、例えば、
図2、
図4の点線で示す曲線のことである。
【0018】
図2は、本発明の第1の構成におけるポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線の一例であり、ポストベーク温度が40℃から220℃におけるポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線の一例である。
【0019】
図4は、本発明の第1の構成におけるポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線の別の一例であり、ポストベーク温度が210℃から310℃におけるポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線の一例である。
【0020】
この3次数の多項式近似曲線は、等間隔かつ5~10個の各温度条件で測定して得られる曲線であり、ポストベーク後の感光性樹脂塗膜23に剥がれが発生しているなどの性能不足や明らかな異常の測定値は除かれる。
【0021】
また、ポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線の接線とは、
図2、
図4に示すような曲線上の各点に接する接線Tのことである。その接線の傾斜角度とは、
図2、
図4におけるθの数値(ポストベーク後残膜率の変動値/ポストベーク温度の変動値)であり、θの正接(すなわちtanθ)で定義される値αは、
図2、
図4における右肩下がりを示す曲線上では正の数値を示し、右肩上がりを示す曲線上ではαは負の数値を示し、曲線の極大点ではαの数値は0となる。
【0022】
検証した結果、αが-0.05以上0.12以下となるポストベーク温度の範囲では、ポストベーク後の残膜率は高い数値を維持し、かつポストベーク温度が多少変動しても当該残膜率の数値の変化は少ないことが判明した。したがって、ポストベーク温度を当該範囲内に設定して製造をすれば、多少面内温度にバラツキが発生しても、感光性樹脂塗膜23の最終厚みが均一でかつ厚く形成できる効果がある。
【0023】
ポストベークのための装置としては、高温乾燥機、オーブン、ホットプレートなど、温度制御が可能なものであればいずれでもよく、とくにファンがついたものが好ましい。
【0024】
次に、本発明の第2の構成の感光性樹脂塗膜23の製造方法は、前記パターン形成(
図1(c))した塗膜22を以下の条件でポストベークする(
図1(d))ことを特徴とする。
【0025】
-0.010≦β≦0.015
(β;ポストベーク後光線透過率を縦軸とし、ポストベーク温度を横軸としてプロットしたポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線において、前記曲線の接線の傾斜角度の正接で定義される値)
ポストベーク後光線透過率(%)は、ポストベーク後の感光性樹脂塗膜23の同一面内の任意の5箇所を大塚電子(株)製のCF基板光学検査装置(LCF-100MA_SF;)で測定して得た平均値である。
【0026】
また、ポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線とは、ポストベーク後光線透過率を縦軸とし、ポストベーク温度を横軸として各測定値をプロットし、3次数の多項式近似曲線により得られる
図3、
図5の点線で示すような曲線のことである。
【0027】
図3は、本発明の第2の構成におけるポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線の一例であり、ポストベーク温度が40℃から220℃におけるポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線の一例である。
【0028】
図5は、本発明の第2の構成におけるポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線の一例であり、ポストベーク温度が210℃から310℃におけるポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線の一例である。
【0029】
この3次数の多項式近似曲線も、等間隔かつ5~10個の各温度条件で測定して得られる曲線であり、ポストベーク後の感光性樹脂塗膜23に剥がれが発生しているなどの性能不足や明らかな異常の測定値は除かれる。
【0030】
また、ポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線の接線Tとは、
図3、
図5に示すような曲線上の各点に接する接線のことである。その接線の傾斜角度とは、
図3、
図5におけるθの数値(ポストベーク後光線透過率の変動値/ポストベーク温度の変動値)であり、θの正接(すなわちtanθ)で定義される値βは、
図3、
図5における右肩下がりを示す曲線上では正の数値を示し、右肩上がりを示す曲線上ではαは負の数値を示し、曲線の極大点ではβの数値は0となる。
【0031】
検証した結果、βが-0.010以上0.015以下となるポストベーク温度の範囲では、ポストベーク後の光線透過率は一定の高い数値を維持し、かつポストベーク温度が多少変動しても当該光線透過率の数値の変化が少ないことが判明した。したがって、ポストベーク温度を当該範囲内に設定して製造をすれば、多少面内温度にバラツキが発生しても、感光性樹脂塗膜23の光線透過率を均一かつ高く形成できる。特に、ディスプレイやカラーフィルタの画素やオーバーコートのように高い透明性が要求される用途の製品に感光性樹脂塗膜23を適用する場合には、生産性や性能の向上に大きく寄与する効果がある。
【0032】
次に、本発明の第3の構成の感光性樹脂塗膜23の製造方法は、感光性樹脂組成物をコートして形成した(
図1(a))塗膜20を以下の条件で露光する(
図1(b))ことを特徴とする。
【0033】
-0.8≦γ≦0.3
(γ;ポストベーク後残膜率を縦軸とし、前記露光の際の露光量を横軸としてプロットしたポストベーク後残膜率・露光曲線において、前記曲線の接線の傾斜角度の正接で定義される値)
ポストベーク後残膜率・露光曲線とは、ポストベーク後残膜率を縦軸とし、露光の際の露光量を横軸としてプロットし、3次数の多項式近似曲線により得られる
図6、
図7の点線で示すような曲線のことである。
【0034】
図6は、本発明の第3の構成におけるポストベーク後残膜率・露光曲線の一例であり、露光量が20mJ/cm
2から80mJ/cm
2におけるポストベーク後残膜率・露光曲線の一例である。
【0035】
図7は、本発明の第3の構成におけるポストベーク後残膜率・露光曲線の一例であり、露光量が100mJ/cm
2から700mJ/cm
2におけるポストベーク後残膜率・露光曲線の一例である。
【0036】
この3次数の多項式近似曲線も、等間隔かつ5~10個の各露光量条件で測定して得られる曲線であり、ポストベーク後の感光性樹脂塗膜23に剥がれが発生しているなどの性能不足や明らかな異常の測定値は除かれる。したがって、
図6と
図7とは露光量以外は全く同じ図であるが、露光量の間隔幅が異なるので別物の曲線として扱っている。
【0037】
また、ポストベーク後残膜率・露光曲線の接線とは、
図6、
図7に示すような当該曲線上に接する接線のことである。その接線の傾斜角度とは、
図6、
図7におけるθの数値(ポストベーク後残膜率の変動値/露光量の変動値)であり、θの正接(すなわちtanθ)で定義される値γは、
図6、
図7における右肩下がりを示す曲線上では正の数値を示し、右肩上がりを示す曲線上ではγは負の数値を示し、曲線の極大点ではγの数値は0となる。
【0038】
その接線の傾斜角度とは
図6、
図7におけるθの数値であり、θの正接(すなわちtanθ)で定義される値γは、-0.8以上0.3以下が好ましい。このγが-0.8以上0.3以下である条件下で露光をすると、多少露光量にバラツキが発生してもパターン形成した塗膜22のポストベーク後の厚みに与える影響が少なく、サイズが大面積の例えばディスプレイやカラーフィルタの画素パターンなどにも感光性樹脂塗膜23を適用できる効果がある。
【0039】
次に、本発明の第4の構成の感光性樹脂塗膜23の製造方法は、飽和露光量の0.1%の露光量で、ポストベーク後残膜率が0~0.5%となることを特徴とする。飽和露光量とは、ポストベーク後残膜率が85%以上になる最小露光量のことである。ポストベーク後残膜率が85%以上になる最小露光量は、例えば
図6の場合では露光量が45mJ/cm
2程度に該当する。その飽和露光量の0.1%の露光量は、
図6の場合では0.045mJ/cm
2程度の露光量に該当する。
【0040】
したがって本発明の第4の構成は、
図6の場合では0.045mJ/cm
2程度以下の露光量でポストベーク後残膜率が0~0.5%となることを意味している。露光の際にフォトマスクでもって未露光部分を完全に遮蔽していたとしても、露光光線の回折作用によって本来未露光部分となるべき箇所にも露光光線の一部が入り込んで露光されてしまい、現像しても露光した塗膜21の一部が膜残りとして残存してしまう。その結果、露光部分と未露光部分との境界部分がぼやけて解像度が低下する問題があった。
【0041】
しかし、この入り込んで露光されてしまう露光量は、検証の結果、飽和露光量の0.1%程度であることが判明したので、本発明の第4の構成のように、その露光量でポストベーク後残膜率が0~0.5%になるようにすると膜残りが0.5%以下になるので、解像度が向上する。その結果、高精細の半導体パターンや、高精細のディスプレイやカラーフィルタの画素パターンなどにも感光性樹脂塗膜23を適用できる効果がある。
【0042】
次に、本発明の第5の構成の感光性樹脂塗膜23の製造方法は、ポストベーク後さらに100℃で240分間追加焼成したときの焼成前後の色差ΔEabが5.0以下であることを特徴とする。色差ΔEabは、CIE(国際照明委員会)が1976年にL*a*b*色空間上の2点間の距離で算出した色の違いを表す数値であり、本発明では日本電色工業株式会社製微小面分光色差計VSS400にて測定した数値である。
【0043】
前記本発明のポストベークにより未反応の重合性化合物はほぼ消滅しているが、感光性樹脂塗膜23が感光性樹脂組成物の硬化膜で構成されるので、重度の熱負荷が掛かると感光性樹脂塗膜23が変色することがある。上記100℃で240分間追加焼成したときの焼成前後の色差ΔEabが5.0以下であれば、過酷な環境での使用でない限り変色が問題となることは少ない。ゆえに、本発明の第5の構成の感光性樹脂塗膜23の製造方法で製造された塗膜は、人が生活するような環境下で使用される半導体、ディスプレイ、カラーフィルタなどへ適用できる効果がある。
【0044】
次に、本発明の第6の構成の感光性樹脂塗膜23の製造方法は、前記基材1の面積が面積0.4~16.0m2であることを特徴とする。一般的な直径300mmの半導体基板のように面積が0.4m2未満の基材1でも本発明の効果は当然あるが、そのような小サイズの基材1ではそもそも面内バラツキの問題自体が余り発生しない。一方、2,160mm×2,460mmのサイズの基材1での良好な試験結果から、本発明の効果は4m角の大面積に拡大しても充分得られる。
【0045】
基材1の材質は、とくに限定されるものではないが、例えばガラスや樹脂等のシートを挙げることができる。ガラスとしては、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウ酸ガラス等が挙げられ、厚みは0.5~2mmが好ましい。樹脂としては、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィン、ポリアクリレート、アクリル等が挙げられ、厚みは50~500μmが好ましい。
【0046】
次に本発明の第7の構成はディスプレイの製造方法であり、前記感光性樹脂塗膜23の製造方法によって製造された感光性樹脂塗膜23を用いて発光画素パターン、スペーサーパターン、オーバーコートパターンのいずれかを形成することを特徴とする。前記記載の通り、本発明は大面積であっても面内の温度バラツキ等を少なくすることができるので、大面積のままで形成する場合が多いディスプレイの発光画素パターン、スペーサーパターン、オーバーコートパターンを製造するのに適している。
【0047】
また本発明の第8の構成はカラーフィルタの製造方法であり、前記感光性樹脂塗膜23の製造方法によって製造された感光性樹脂塗膜23を用いて画素パターンまたはブラックマトリックスパターンを形成することを特徴とする。第7の構成と同様、大面積のままで形成する場合が多いので、本発明はカラーフィルタの画素パターンやブラックマトリックスパターンを製造するのにも適している。
【0048】
つぎに感光性樹脂塗膜23の製造方法に用いる感光性樹脂組成物について説明する。感光性樹脂組成物は、露光・現像によりパターン形成が可能となる組成物のことであり、バインダー樹脂、重合性化合物、光重合開始剤、溶剤、およびその他の添加物の組成からなる。その他の添加物としては、連鎖移動剤、増感剤、高分子分散剤、密着改良剤、界面活性剤、分散剤などが挙げられる。
【0049】
バインダー樹脂は、有機溶剤で容易に希釈することができる成分であればとくに限定されず、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらを2種以上含有していてもよい。
【0050】
とくに、上記有機溶剤への溶解のしやすさ、透明性、安定性の面から、アクリル樹脂が好ましく用いられる。アクリル樹脂としては、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物との共重合体が好ましい。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸もしくはビニル酢酸等のモノカルボン酸またはイタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸等のジカルボン酸あるいはその酸無水物が挙げられる。
【0051】
その中でも、アクリル酸またはメタクリル酸由来の単位を含むことが好ましい。具体的には、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、などのトリシクロデカン骨格やジシクロペンタジエン骨格を有する樹脂が好ましい。
【0052】
重合性化合物は、露光工程において光重合開始剤の作用により重合する反応性のモノマーであり、下記化学式1で表される単位及び水酸基を含む重合性化合物(A)や、下記化学式1で表される単位及び下記化学式2で表される単位を含む重合性化合物(B)などが挙げられる。
【0053】
【0054】
【0055】
重合性化合物(A)の化合物の例としては、例えば下記に示す化合物(a)~(i)が挙げられる。
【0056】
【0057】
【0058】
重合性化合物(B)の化合物の例としては、例えば下記に示す化合物(i)~(o)が挙げられる。なお、化合物(i)は重合性化合物(A)および重合性化合物(B)のどちらにも属する構造の化合物である。
【0059】
【0060】
【0061】
さらに、本発明の第9の構成に示したように感光性樹脂組成物に上記重合性化合物(A)と重合性化合物(B)の両方を含有させるのが好ましい。両方を含有させると、-0.05≦α≦0.12や-0.010≦β≦0.015の条件を満たすポストベーク温度の温度範囲を広く設定でき、かつそのポストベーク温度を相対的に低くでき、かつパターン形成に必要な露光量も相対的に少なくできるので、それらのいずれの観点からも省エネルギー化および生産性向上の効果が得られる。
【0062】
重合性化合物(A)と重合性化合物(B)の合計の含有量は、本発明の第10の構成に示したように固形分全体を100重量部として20~70重量部にするとよい。重合性化合物を20質量%以上含有することで密着性に優れかつ凝集破壊のない強靭な層を形成することができ、重合性化合物を70質量%以下にすることで未反応の二重結合の影響を防止することができる。
【0063】
さらに本発明の第11の構成に示したように、重合性化合物(A)の重量平均分子量は100~800が好ましく、重合性化合物(B)の重量平均分子量は300~1,000が好ましい。重合性化合物の重量平均分子量を当該範囲にすることで、コートに適した粘度に調整しやすくできる。
【0064】
さらに本発明の第12の構成に示したように、重合性化合物(A)の二重結合当量は50~150が好ましく、重合性化合物(B)の二重結合当量は30~200が好ましい。重合性化合物の二重結合当量を当該範囲にすることで、露光の感度が向上して相対的に少ない露光量でパターン形成することが可能になり、省エネルギー化しやすくできる。
【0065】
重合性化合物(A)と重合性化合物(B)との重量部比は、本発明の第13の構成に示したように30:70~70:30が好ましい。この重量比率にすることで有機溶剤により容易に希釈することができ、かつ顔料などの着色材を含有させた場合の分散性が優れ、ディスプレイやカラーフィルタの画素パターンなどに適用しやすくできる。
【0066】
溶剤は、沸点が150℃以下の溶剤が好ましい。沸点が150℃を越える溶剤では、感光性樹脂塗膜23中に残留溶剤として残りやすく、残留溶剤が多いとラジカルが失活して重合反応が阻害されやすい。沸点が150℃以下の溶剤としては、脂肪族エステル系溶剤、脂肪族アルコール類溶剤、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤、アセテート系溶剤、グリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0067】
光重合開始剤は、光(紫外線または電子線を含む)により分解および/または反応し、ラジカルを発生させる化合物であり、オキシムエステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、オキサントン系化合物、アントラキノン系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、カルバゾール系化合物、トリアジン系化合物、リン系化合物、チタノセン系化合物などが挙げられる。
【0068】
光重合開始剤は、バインダー樹脂および重合性化合物に存在する不飽和二重結合の反応のきっかけとなり、パターニング時の感度を向上させ、未反応の二重結合による悪影響を防止する作用がある。すなわち、光硬化が十分に進んで二重結合の残基が低減され残基による経時安定性の低下が抑制される。そのためには、露光光線が表面だけでなく深部にまで均一に到達するような光重合開始剤が好ましい。
【0069】
とくに低温でポストベークする場合には、二重結合の残基が残りやすくなるが、当該機能を有する光重合開始剤を含有させることで感光性樹脂塗膜23の表面と深部とで光硬化の度合いにバラツキが生じないようにすることができ、結果的に二重結合の残基が残る可能性を低くできる。そのような機能を有する光重合開始剤としては、フォトブリーチ系の光重合開始剤が挙げられる。
【0070】
フォトブリーチ系の光重合開始剤とは、二重結合の反応が進行するにつれ開裂することで光吸収が減少していく光重合開始剤のことである。具体的には、モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、メタロセン(チタノセン)系光重合開始剤、ポリシラン系光重合開始剤、オキシムエステル系開始剤が挙げられる。
【0071】
光重合開始剤は複数種類含有させてもよく、例えば本発明の第14の構成に示したようにオキシムエステル系光重合開始剤とアルキルフェノン系光重合開始剤とを含有させてもよい。また、光重合開始剤は融点が高くなると可視領域の吸光度が高くなって黄ばんだ色相になりやすく感光性樹脂塗膜23の無色透明性を維持するため、本発明の第15の構成に示したように融点115℃以下の光重合開始剤が好ましい。
【0072】
融点が115℃以下であるオキシムエステル系光重合開始剤としては、例えばBASFジャパン(株)製の「イルガキュア369」「イルガキュアOXE-03」「イルガキュアOXE-04」、東京化成工業(株)製の「P0211」、ADEKA(株)製の「アデカクルーズNCI-930」、「アデカクルーズNCI-803」「アデカクルーズNCI-730」等が挙げられる。
【0073】
光重合開始剤の含有量は、感度、パターニング性、加工性の観点から、感光性樹脂組成物の固形分中、1質量%以上30質量%以下が好ましく、2質量%以上20質量%以下がより好ましく、5質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。
【0074】
なお、本発明によって製造された感光性樹脂塗膜を画素パターンやブラックマトリックスパターンなどに適用するため、感光性樹脂組成物に赤色、青色、緑色、黄色、黒色などの有機顔料、無機顔料、染料等の色材を含有させてもよい。赤色色材としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(以下、「PR」)9、PR48、PR97、PR122、PR123、PR144、PR、149、PR166、PR168、PR177、PR179、PR180、PR192、PR209、PR215、PR216、PR217、PR220、PR223、PR224、PR226、PR227、PR228、PR240、PR254、臭素基を有するジケトピロロピロール色材などが挙げられる。
【0075】
緑色色材としては、C.I.ピグメントグリーン(以下、「PG」)PG1、PG2、PG4、PG7、PG8、PG10、PG13、PG14、PG15、PG17、PG18、PG19、PG26、PG36、PG38、PG39、PG45、PG48、PG50、PG51、PG54、PG55、PG58、PG59(以上、番号はいずれもカラーインデックスNo.)などが挙げられる。
【0076】
黄色色材としては、C.I.ピグメントイエロー(以下、「PY」)12、PY13、PY17、PY20、PY24、PY83、PY86、PY93、PY95、PY109、PY110、PY117、PY125、PY129、PY137、PY139、PY147、PY148、PY150、PY153、PY154、PY166、PY168(以上、番号はいずれもカラーインデックスNo.)などが挙げられる。
【0077】
青色色材としては、C.I.ピグメントブルー(以下、「PB」)15、PB15:3、PB15:4、PB15:6、PB21、PB22、PB60、PB64などが挙げられる。黒色色材としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラックなどが挙げられる。色材の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分中、10質量%以上40質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上35質量%以下である。
【0078】
感光性樹脂組成物をコートする方法としては、グラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、スリットダイコーティング、インクジェットコーティング、ノズルコーティングなどの方法が挙げられる。
【0079】
コートした感光性樹脂組成物の溶剤を飛散させて塗膜20を形成する乾燥方法は、とくに限定されないが、熱の影響を少なくするため常温での減圧乾燥が好ましい。減圧乾燥圧力は、層中に含まれる溶剤の蒸気圧以下が好ましく、1~1000Paにするとよい。減圧乾燥時間は10~600秒が好ましい。
【0080】
露光工程は、
図1の(b)のように形成された塗膜20の上部にフォトマスク3を載置して露光するとよい。そして、
図1の(c)のように露光部分を硬化させ現像工程においてアルカリ現像液を用いて現像することにより、未露光部分を除去してパターン形成するネガ型の露光工程が好ましい。
【0081】
露光機としては、ステッパー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、パラレルライトマスクアライナー(PLA)、レンズスキャンなどが挙げられる。露光光源としては、i線、h線、g線などの紫外線や、KrF(波長248nm)レーザー、ArF(波長193nm)レーザーなどが挙げられる。
【0082】
露光量は、700mJ/cm2以下で設定する。露光量が700mJ/cm2以下であることにより、露光時間を短縮でき、生産性が向上するとともに露光のためのエネルギー量を節約することができる。好ましくは露光量が300mJ/cm2以下であり、さらに好ましくは露光量が100mJ/cm2以下である。露光量が少なくできるほど露光時間を短縮でき、生産性が向上するとともに露光のためのエネルギー量を節約することができる。
【0083】
現像方法としてはシャワー、ディッピング、パドルなどの方法が挙げられ、露光後の塗膜21を現像液に5秒間~10分間浸漬することで
図1の(c)のように所定のパターンの塗膜22が形成できる。現像液としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩などの無機アルカリ;2-ジエチルアミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、コリンなどの4級アンモニウム塩などを含む水溶液などのアルカリ現像液が挙げられる。現像後は、水でリンスすることが好ましい。
【実施例0084】
<ポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線およびポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線 作成例1>
厚み1mm、10cm角の各々ソーダライムガラス基材上に以下の組成の感光性樹脂組成物をスリットダイコート法により塗布した後、減圧乾燥させ厚み5.0μm、光線透過率85%の塗膜を形成した。次いで、当該塗膜上にフォトマスクをセットし、フォトマスクの上から紫外線i線を露光量60mJ/cm2で照射して露光し、当該露光した塗膜を炭酸ナトリウム水溶液でもって未露光部を現像してパターン形成した。
【0085】
(感光性樹脂組成物の組成)
アルカリ可溶性樹脂 トリシクロデカニル(メタ)アクリレート 40重量部
重合性化合物(A)(B) 化合物(i)(重量平均分子量:298、二重結合当量:99) 30重量部
重合性化合物(B) 化合物(n)(重量平均分子量:579、二重結合当量:96) 30重量部
光重合開始剤 BASF イルガキュア369(融点 110℃、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤) 1重量部
光重合開始剤 アデカクルーズNCI-930(融点96℃、オキシムエステル系重合開始剤 1重量部
溶媒 ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート 120重量部
次いで、前記パターン形成した塗膜を40℃、60℃、80℃、100℃、120℃、140℃、160℃、180℃、200℃、220℃の各温度で各々30分間ポストベークして、各々の塗膜のポストベーク後厚みを測定して各々のポストベーク後残膜率を算出し、各々の塗膜のポストベーク後光線透過率を測定した。ポストベーク後残膜率を縦軸とし、ポストベーク温度を横軸としてプロットした
図2に示すポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線およびポストベーク後光線透過率を縦軸とし、ポストベーク温度を横軸としてプロットした
図3に示すポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線を作成した。
【0086】
次いで、各曲線の任意のポイントにおける接線Tを引き、その任意のポイントにおける接線と横軸に平行な直線とのなす角4θおよび20θを測定し、そこから傾斜角度θを求めて、その任意のポイントにおけるαおよびβの値を算出した。その結果を表1に示す。表1より、ポストベーク温度が40~160℃であれば-0.05≦α≦0.12の条件を満たし、ポストベーク温度が40~140℃であれば-0.010≦β≦0.015の条件を満たすことがわかる。
【0087】
【0088】
<ポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線およびポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線 作成例2>
感光性樹脂組成物の組成を以下の通りにし、ポストベークの各温度を190℃、210℃、230℃、250℃、270℃、290℃、310℃に変更した以外は作成例1と同様にして、当該パターン形成した塗膜を形成した。
【0089】
(感光性樹脂組成物の組成)
アルカリ可溶性樹脂 ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート 30重量部
重合性化合物(B) 化合物(n)(重量平均分子量:579、二重結合当量:96) 40重量部
光重合開始剤 BASF イルガキュア369(融点 110℃、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤) 1重量部
溶媒 ポリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート 120重量部
次いで、前記作成例1と同様にして、ポストベーク後残膜率・ポストベーク温度曲線およびポストベーク後光線透過率・ポストベーク温度曲線を作成した。次いで、各曲線の任意のポイントにおける接線Tを引き、その任意のポイントにおける接線と横軸に平行な直線とのなす角4θおよび5θを測定し、そこから傾斜角度θを求めて、その任意のポイントにおけるαおよびβの値を算出した。その結果を表2に示す。表2より、ポストベーク温度が210~250℃であれば-0.05≦α≦0.12の条件を満たし、ポストベーク温度が230℃であれば-0.010≦β≦0.015の条件を満たすことがわかる。
【0090】
【0091】
<ポストベーク後残膜率・露光曲線 作成例3>
フォトマスクの上から照射する紫外線i線の露光量を60mJ/cm2および20mJ/cm2、40mJ/cm2、80mJ/cm2、100mJ/cm2、200mJ/cm2、300mJ/cm2、400mJ/cm2、500mJ/cm2、600mJ/cm2、700mJ/cm2に各々変更した以外は作成例1と同様にしてパターン形成した塗膜を形成した。
【0092】
(感光性樹脂組成物の組成)
アルカリ可溶性樹脂 ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート 30重量部
重合性化合物(B) 化合物(n)(重量平均分子量:579、二重結合当量:96) 40重量部
光重合開始剤 BASF イルガキュア369(融点 110℃、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤) 1重量部
溶媒 ポリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート 120重量部
次いで、前記作成例1と同様にして、前記パターン形成した塗膜を100℃で30分間ポストベークして、ポストベーク後厚みを測定しポストベーク後残膜率を算出し、ポストベーク後残膜率を縦軸とし、前記露光量を横軸としてプロットした
図6、
図7に示すポストベーク後残膜率・露光量曲線を作成した。
【0093】
次いで、各曲線の任意のポイントにおける接線Tを引き、その任意のポイントにおける接線と横軸に平行な直線とのなす角θおよび20θを測定し、そこから傾斜角度θを求めて、その任意のポイントにおけるγ値を算出した。その結果を表3に示す。表3より、露光量が60mJ/cm2以上700mJ/cm2までであれば-0.8≦γ≦0.3の条件を満たすことがわかる。
【0094】
【0095】
<実施例1~5、比較例1~2>
厚み1mm、縦2.16m、横2.46mの700枚のソーダライムガラス基材上にそれぞれ以下の組成の感光性樹脂組成物をスリットダイコート法により塗布した後、減圧乾燥させ厚み5.0μm、光線透過率85%の塗膜を形成した。次いで、当該塗膜上にフォトマスクをセットし、フォトマスクの上から紫外線i線を露光量80mJ/cm2で照射して露光し、当該露光した塗膜を炭酸ナトリウム水溶液でもって未露光部を現像して剥離しパターン形成した。
【0096】
(感光性樹脂組成物の組成)
アルカリ可溶性樹脂 トリシクロデカニル(メタ)アクリレート 40重量部
重合性化合物(A)(B) 化合物(i)(重量平均分子量:298、二重結合当量:99) 30重量部
重合性化合物(B) 化合物(n)(重量平均分子量:579、二重結合当量:96) 30重量部
光重合開始剤 アデカクルーズNCI-930(融点96℃、オキシムエステル系重合開始剤) 2重量部
溶媒 ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート 120重量部
次いで、各100枚ずつ前記パターン形成した塗膜を40℃、60℃、100℃、140℃、160℃、180℃、200℃の各温度で30分間ポストベークして、ポストベーク後光線透過率(%)を測定した。また、パターン形成した塗膜のポストベーク後厚みおよび現像後の残膜のポストベーク後厚み(飽和露光量の0.1%の露光量での塗膜厚みに該当)を測定し、パターン形成した塗膜のポストベーク後残膜率および現像後の残膜のポストベーク後残膜率を算出した。
【0097】
次いで、パターン形成した塗膜のポストベーク後残膜率およびポストベーク後光線透過率(%)から各ポストベーク温度におけるα値、β値を算出した。その後、100℃で240分間追加焼成し、パターン形成した塗膜の焼成前後の色差ΔEabを測定した。それらの結果を表4および表5に示す。表4および表5より、-0.05≦α≦0.12の条件を満たす条件で製造すれば、良品率は97%以上になり、さらに-0.010≦β≦0.015の条件も満たす条件で製造すれば、良品率は99%以上になることがわかる。
【0098】
<実施例6~8、比較例3~4>
厚み1mm、縦2.16m、横2.46mの500枚のソーダライムガラス基材上にそれぞれ以下の組成の感光性樹脂組成物を塗布した以外は、実施例1~5と同様にしてパターン形成した塗膜を形成した。
【0099】
(感光性樹脂組成物の組成)
アルカリ可溶性樹脂 ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート 30重量部
重合性化合物(B) 化合物(n)(重量平均分子量:579、二重結合当量:96) 40重量部
光重合開始剤 BASF イルガキュア369 (融点 110℃、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤) 1重量部
溶媒 ポリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート 120重量部
次いで、各100枚ずつ前記パターン形成した塗膜を190℃、210℃、230℃、250℃、270℃の各温度でポストベークした以外は、実施例1と同様にした。それらの結果を表4および表5に示す。表4および表5より、-0.05≦α≦0.12の条件を満たす条件で製造すれば、良品率は95%以上になり、さらに-0.010≦β≦0.015の条件も満たす条件で製造すれば、良品率は99%になることがわかる。
【0100】
【0101】
【0102】
<実施例9>
(有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ用オーバーコート膜の作製)
厚み1mm、縦2.88m、横3.13mの有機エレクトロルミネッセンスの画素パターンの上に封止膜が形成され、該封止膜上に以下の組成の感光性樹脂組成物をスリットダイコート法により塗布した後、減圧乾燥させてオーバーコート塗膜を形成した。次いで、当該塗膜上にフォトマスクをセットし、フォトマスクの上から紫外線i線を露光量80mJ/cm2で照射して露光し、当該露光した塗膜を炭酸ナトリウム水溶液でもって未露光部を現像して剥離しオーバーコートパターンを形成した。
【0103】
(感光性樹脂組成物の組成)
アルカリ可溶性樹脂 ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート 40重量部
重合性化合物(A) 化合物(b)(重量平均分子量:116、二重結合当量:116) 30重量部
重合性化合物(B) 化合物(k)(重量平均分子量:212、二重結合当量:106) 30重量部
光重合開始剤 アデカクルーズNCI-930(融点96℃、オキシムエステル系重合開始剤) 2重量部
光重合開始剤 アデカクルーズNCI-730(融点85℃、オキシムエステル系重合開始剤) 2重量部
溶媒 ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート 120重量部
次いで、前記パターン形成した塗膜を40℃の温度で30分間ポストベークして、オーバーコートパターン付きの有機エレクトロルミネッセンス素子を形成した。また、ポストベーク後光線透過率(%)、パターン形成した塗膜のポストベーク後厚みおよび現像後の残膜のポストベーク後厚み(飽和露光量の0.1%の露光量での塗膜厚みに該当)を測定し、パターン形成した塗膜のポストベーク後残膜率および現像後の残膜のポストベーク後残膜率を算出した。
【0104】
次いで、パターン形成した塗膜のポストベーク後残膜率およびポストベーク後光線透過率(%)からポストベーク温度におけるα値、β値を算出した。その後、100℃で240分間追加焼成し、パターン形成した塗膜の焼成前後の色差ΔEabを測定した。それらの結果を表6に示す。表6より、当該ポストベーク条件は-0.05≦α≦0.12の条件および-0.010≦β≦0.015の条件を満たすことがわかる。
【0105】
<実施例10>
(赤色の反射型液晶ディスプレイ用カラーフィルタの作製)
厚み1mm、縦1m、横1.2mのソーダライムガラス基材上に以下の組成の赤色感光性樹脂組成物をスリットダイコート法により塗布した後、減圧乾燥させて赤色感光性樹脂塗膜を形成した。次いで、当該塗膜上にフォトマスクをセットし、フォトマスクの上から紫外線i線を露光量100mJ/cm2で照射して露光し、当該露光した塗膜を炭酸ナトリウム水溶液でもって未露光部を現像して剥離し、赤色の感光性樹脂塗膜のパターンを形成した。
【0106】
(感光性樹脂組成物の組成)
着色剤 C.I.ピグメントレッド220 15重量部
アルカリ可溶性樹脂 トリシクロデカニル(メタ)アクリレート 40重量部
重合性化合物(A)(B) 化合物(i)(重量平均分子量:298、二重結合当量:99) 30重量部
重合性化合物(B) 化合物(n)(重量平均分子量:579、二重結合当量:96) 30重量部
光重合開始剤 アデカクルーズNCI-803(融点72℃、オキシムエステル系重合開始剤) 1重量部
光重合開始剤 アデカクルーズNCI-730(融点85℃、オキシムエステル系重合開始剤) 1重量部
溶媒 ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート 120重量部
次いで、前記パターン形成した塗膜を80℃の温度で30分間ポストベークして、赤色の反射型液晶ディスプレイ用カラーフィルタを作製した。また、ポストベーク後光線透過率(%)、パターン形成した塗膜のポストベーク後厚みおよび現像後の残膜のポストベーク後厚み(飽和露光量の0.1%の露光量での塗膜厚みに該当)を測定し、パターン形成した塗膜のポストベーク後残膜率および現像後の残膜のポストベーク後残膜率を算出した。
【0107】
次いで、パターン形成した塗膜のポストベーク後残膜率およびポストベーク後光線透過率(%)からポストベーク温度におけるα値、β値を算出した。その後、100℃で240分間追加焼成し、パターン形成した塗膜の焼成前後の色差ΔEabを測定した。それらの結果を表6に示す。表6より、当該ポストベーク条件は-0.05≦α≦0.12の条件および-0.010≦β≦0.015の条件を満たすことがわかる。
【0108】