(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167946
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20241128BHJP
H04N 1/48 20060101ALI20241128BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20241128BHJP
H04N 9/64 20230101ALI20241128BHJP
【FI】
H04N1/60
H04N1/48
G06T1/00 510
H04N9/64 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084285
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】小倉 暢
【テーマコード(参考)】
5B057
5C066
【Fターム(参考)】
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB16
5B057CE17
5B057CE18
5B057DA17
5B057DB06
5B057DB09
5B057DC25
5C066AA01
5C066BA20
5C066CA08
(57)【要約】
【課題】画像を色変換する際に生じる誤差を低減させる。
【解決手段】デジタルカメラ1で複数のパッチ(色)をもつ色票3を撮像した画像(ソース色空間の画像)と、特定のカメラで色票3を撮像した画像(ターゲット色空間の画像)のそれぞれから計測された、パッチ(色)の計測値のデータを取得する。そして、色空間上の入力点を取得する。そして、ソース色空間の画像から計測された計測値のデータから、複数のパッチ(色)に対応する複数の基準点候補を取得し、複数の基準点候補の中から、入力点との色空間上の距離が近い複数の基準点候補を、基準点として選択する。そして、入力点の位置に基づいて、色変換の係数を取得し、取得した色変換の係数と、複数の基準点に対応する、ターゲット色空間の画像から計測された計測値のデータに基づいて、入力点における色変換結果を算出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色票を撮像した画像において計測された、前記複数の色票の色を表す第1のデータと、前記第1のデータが計測された計測点における目標の色を表す第2のデータを取得するデータ取得手段と、
色空間上の入力点を取得する入力点取得手段と、
前記第1のデータから、前記複数の色票に対応する複数の基準点候補を取得し、複数の前記基準点候補の中から、前記入力点との色空間上の距離が近い複数の前記基準点候補を、基準点として選択する基準点選択手段と、
前記入力点の位置に基づいて、色変換の係数を取得する係数取得手段と、
前記色変換の係数と、複数の前記基準点に対応する前記第2のデータに基づいて、前記入力点における色変換結果を算出する算出手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記係数取得手段は、複数の前記基準点と、前記入力点との相対的な位置に基づいて、前記色変換の係数を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記計測点における、前記第1のデータと前記第2のデータとの変分値を算出し、前記色変換の係数と、複数の前記基準点に対応する前記変分値に基づいて、前記入力点における色変換結果を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像は、撮像装置において撮像された画像であって、
前記撮像装置が3次元ルックアップテーブルで保持する色変換関数を生成する生成手段を更に有し、
前記生成手段は、前記3次元ルックアップテーブルの格子点に対応する前記入力点と、当該入力点における前記色変換結果とに基づいて、前記色変換関数を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記データ取得手段は、同一の色票から輝度の異なる複数の計測値を取得し、
前記複数の計測値の間の値を前記複数の色票ごとに補間する補間手段、を更に有し、
前記基準点選択手段は、前記補間手段により補間された前記第1のデータから、前記複数の色票に対応する複数の基準点候補を取得することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記補間手段は、前記複数の計測値を輝度で表現する関数を前記複数の色票ごとに生成することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記補間手段は、前記複数の計測値を多項式近似することにより前記関数を生成することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記画像は、露光時間を多段階にして前記複数の色票を撮像した画像データ群、開口率を多段階にして前記複数の色票を撮像した画像データ群、及び照明強度を多段階にして前記複数の色票を撮像した画像データ群のうちの少なくとも何れか1つを含むことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記基準点選択手段は、前記複数の色票ごとの前記関数に対して、前記入力点の輝度値を代入して得られる点を、複数の前記基準点候補として取得することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記基準点選択手段は、複数の前記基準点候補の中から、前記入力点との色相の近い複数の前記基準点候補を、基準点として選択することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記データ取得手段は、同一の色票から輝度の異なる複数の計測値を取得し、
前記複数の計測値の間の値を前記複数の色票ごとに補間する補間手段と、
前記補間手段により補間された前記第1のデータを表す形状データを、前記複数の色票ごとに表示するよう制御する表示制御手段と、
を更に有することを特徴する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記基準点選択手段は、前記複数の色票に対応する前記第1のデータのうち、所定の条件を満たす一部の色票に対応する前記第1のデータを、複数の基準点候補を取得する対象から除外することを特徴する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記基準点選択手段は、前記複数の色票に対応する前記第1のデータのうち、ユーザより操作指示のあった色票に対応する前記第1のデータを、複数の基準点候補を取得する対象から除外することを特徴とする請求項12に記載の画像処理装置。
【請求項14】
複数の色票を撮像した画像において計測された、前記複数の色票の色を表す第1のデータと、前記第1のデータが計測された計測点における目標の色を表す第2のデータを取得するデータ取得工程と、
色空間上の入力点を取得する入力点取得工程と、
前記第1のデータから、前記複数の色票に対応する複数の基準点候補を取得し、複数の前記基準点候補の中から、前記入力点との色空間上の距離が近い複数の前記基準点候補を、基準点として選択する基準点選択工程と、
前記入力点の位置に基づいて、色変換の係数を取得する係数取得工程と、
前記色変換の係数と、複数の前記基準点に対応する前記第2のデータに基づいて、前記入力点における色変換結果を算出する算出工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項15】
画像処理装置のコンピュータを、
複数の色票を撮像した画像において計測された、前記複数の色票の色を表す第1のデータと、前記第1のデータが計測された計測点における目標の色を表す第2のデータを取得するデータ取得手段と、
色空間上の入力点を取得する入力点取得手段と、
前記第1のデータから、前記複数の色票に対応する複数の基準点候補を取得し、複数の前記基準点候補の中から、前記入力点との色空間上の距離が近い複数の前記基準点候補を、基準点として選択する基準点選択手段と、
前記入力点の位置に基づいて、色変換の係数を取得する係数取得手段と、
前記色変換の係数と、複数の前記基準点に対応する前記第2のデータに基づいて、前記入力点における色変換結果を算出する算出手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラは、予め用意された複数の色処理パラメータを内部に保持し、例えばユーザが選択したモードに応じた色処理パラメータを使用して、撮像画像に対する色変換などの画像処理を行う機能を有する。特許文献1には、カラーチャートをデジタルカメラで撮像したときの撮像データを、カラーチャートの本来の色、または、ユーザが好ましいと思う色に近づけるような、色変換関数を求める技術が開示されている。この色変換関数は、3次元ルックアップテーブル(3DLUT)という形式で保持されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、上記の色変換関数は、入力データのRGB値を説明変数とした3次の項までの和で表現されている。そのため、僅かな入力色の変化に対して出力色が大きく変化するような性質(カオス性)のある条件下においては、関数の自由度が不足し、色変換関数による変換誤差が大きくなる。このような変換誤差の影響は、デジタルカメラの色再現範囲が広くなるほど顕著になり、例えば最近のHDR(ハイダイナミックレンジ)再現が可能なデジタルカメラでは無視できないものになっている。
【0005】
そこで、本発明は、画像を色変換する際に生じる誤差を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、複数の色票を撮像した画像において計測された、前記複数の色票の色を表す第1のデータと、前記第1のデータが計測された計測点における目標の色を表す第2のデータを取得するデータ取得手段と、色空間上の入力点を取得する入力点取得手段と、前記第1のデータから、前記複数の色票に対応する複数の基準点候補を取得し、複数の前記基準点候補の中から、前記入力点との色空間上の距離が近い複数の前記基準点候補を、基準点として選択する基準点選択手段と、前記入力点の位置に基づいて、色変換の係数を取得する係数取得手段と、前記色変換の係数と、複数の前記基準点に対応する前記第2のデータに基づいて、前記入力点における色変換結果を算出する算出手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像を色変換する際に生じる誤差を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】画像処理装置を含むシステムの構成例を示す図である。
【
図1B】画像処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】実施形態1に係る画像処理装置による処理を示すフローチャートである。
【
図5】色票の計測値をプロットした例を示す図である。
【
図10】実施形態2に係る画像処理装置による処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の実施形態は本発明を必ずしも限定するものではない。
【0010】
[実施形態1]
図1Aは、本実施形態に係る画像処理装置2が適用されるシステムの構成の例を示すブロック図である。
図1に示すシステムは、撮像装置の一例であるデジタルカメラ1と、色変換結果を算出する画像処理装置2を含む。このシステムでは、デジタルカメラ1で色票3を撮像した画像(以下、ソース色空間の画像と呼ぶことがある)を、理想の発色をもつ特定のカメラで色票3を撮像した画像(以下、ターゲット色空間の画像と呼ぶことがある)へ色変換するための3DLUTを生成する。3DLUTは、3次元ルックアップテーブルのことである。
図2は、色票3の一例を示す図である。色票3は、例えば肌色、空の色、草の色、原色など色彩値の異なる複数のパッチが印刷等されたカラーチャートである。色票3として、x-rite社のColor Checker SG(140色)やColor Checker(24色)など、色設計に使用可能なカラーチャートが使用される。
【0011】
まずデジタルカメラ1について説明する。
デジタルカメラ1は、撮像部101、データ入出力部102、画像処理部103、保持部104、および表示部105などを有して構成されている。
撮像部101は、撮像レンズとCCDなどの画像センサ等から構成されている。データ入出力部102は、画像データおよび色変換関数などのデータを、外部機器との間で送受信可能なインタフェイスである。保持部104は、撮像部101による撮像画像、画像処理部103による画像処理後の画像データ、色変換関数などのデータを保持する。画像処理部103は、撮像部101による撮像画像に対して色処理等の画像処理を施す。表示部105は、液晶ディスプレイなどの表示装置を含み、撮像中や撮像後、色処理後の画像などを表示する。画像処理部103は、保持部104で保持する色変換関数を用いて画像処理を行う。この色変換関数は、3DLUTの形態で保持されているものとする。また、データ入出力部102には、ケーブルなどを介して画像処理装置2が接続され、またメモリカードなどの記録媒体を接続することができる。
【0012】
被写体等の撮像が行われる場合、デジタルカメラ1では以下のような処理が行われる。
ユーザによって電源スイッチ(不図示)がオンにされると、撮像部101は、継続的に画像を撮像する動作を開始する。画像処理部103は、保持部104に保持されている3DLUTを使用して、撮像部101から継続的に入力される画像データに画像処理を施し、さらにその画像処理後の画像データから表示用画像を生成する。表示部105は、画像処理部103から継続的に送られてくる表示用画像を表示する。ユーザは、表示部105に表示された表示用画像を観察して画面の構図を決め、シャッタボタン(不図示)を押す。シャッタボタンが押されると、画像処理部103は、シャッタボタンが押されたタイミングで撮像部101が取得した画像データに対して、保持部104の3DLUTを用いた画像処理を施す。3DLUTを用いた画像処理は、色、明るさを調整する処理である。画像処理が施された後の画像データは、データ入出力部102を介して、外部機器(画像処理装置2や記録媒体など)に出力される。なお、撮像部101が取得した画像データを、そのままデータ入出力部102へ出力するような色変換関数が保持部104に設定されている場合には、撮像部101が取得した画像データそのものがデジタルカメラ1から出力される。
【0013】
次に画像処理装置2の機能構成について説明する。
画像処理装置2は、ソース色空間の画像をターゲット色空間の画像へ変換するための色変換関数を生成する。画像処理装置2は、データ入出力部201、画像処理部202、平均値算出部203、表示制御部204、ユーザ操作取得部205、色処理パラメータ保持部206、データ保持部207、および3DLUT生成部208などの機能を有している。
【0014】
データ入出力部201は、画像データ、色変換関数などの各種のデータを外部機器との間でやり取りする。データ入出力部201は、汎用I/F215(
図1B)や通信I/F217(
図1B)を介してデジタルカメラ1などとの間で各種のデータの送受信を行ってよく、不図示のメモリカードなどの記録媒体との間で各種のデータの入出力を行ってもよい。ここでデータ入出力部201から入力される画像データ(入力画像データ)は、デジタルカメラ1や特定のカメラで色票3を撮像した画像とする。ここで、デジタルカメラ1で色票3を撮像した画像(ソース色空間の画像)は、撮像部101が取得した画像データそのものある。また、特定のカメラで色票3を撮像した画像(ターゲット色空間の画像)は、ソース色空間の画像の目標とする色で構成された画像データの例である。なお、ターゲット色空間の画像は、カメラで撮像した画像でなくても、CGにより得られたデータなど、ユーザが理想とする色彩値が直接的に与えられたデータであっても構わない。
【0015】
画像処理部202は、データ入出力部201からの入力画像データを用いて、色空間上の任意の入力点に対する、色変換結果を算出する。画像処理部202の機能の詳細については、
図3で後述する。
平均値算出部203は、データ入出力部201からの入力画像データから得られる色彩値の平均値を、計測値として算出する。ここでは色票3を撮像した画像内のパッチごとに、L
*a
*b
*値の平均値を、計測値として算出する。以下、ソース色空間の画像とターゲット色空間の画像のそれぞれから得られた計測値を学習データと呼ぶ。本実施形態では、ソース色空間の画像とターゲット色空間の画像は、多段階の露光時間で色票3を撮像した画像データ群である。ここでパッチ数を18、露光時間の段階数を32とすると、ソース色空間の画像とターゲット色空間の画像のそれぞれから、18×32の計測点における計測値が得られる。
【0016】
データ保持部207は、入力画像データ、画像処理後の画像データ、学習データなどのデータを保持する。
色処理パラメータ保持部206は、デジタルカメラ1における色変換関数を保持する。
3Dルックアップテーブル(LUT)生成部208は、画像処理部202により算出された画像処理結果を用いて3DLUTを生成する。
ユーザ操作取得部205は、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力装置220(
図1B)からユーザの入力操作を取得する。
表示制御部204は、3DLUTの後述するグリッド数(格子点数)等を入力する際のGUIや、学習データに対する操作指示を受け付けるためのGUIを、表示装置214(
図1B)表示する。
【0017】
続いて、画像処理部202の内部構成について説明する。
図3は、画像処理部202の内部構成の例を示すブロック図である。画像処理部202は、計測値取得部301、計測値補間部302、入力点取得部303、基準点選択部304、変換係数算出部305、変分値取得部306、および色変換結果算出部307などの機能を有している。
計測値取得部301は、平均値算出部203から計測値を取得し、ソース色空間の画像とターゲット色空間の画像について対応する各計測点における計測値間のL
*a
*b
*の成分ごとの変分値を算出する。
計測値補間部302は、各計測点における変分値の間を補間する。具体的には、計測値補間部302は、色票3のパッチ(色)ごとに、変分値のL
*a
*b
*の各成分を輝度lの関数で表現する式を求める。
【0018】
入力点取得部303は、ソース色空間における入力点Pを取得する。
基準点選択部304は、ソース色空間の画像から得られた計測値に基づいて、入力点Pと色相の近い2つ以上の基準点を選択する。
変換係数算出部305は、入力点Pの位置を、基準点選択部304で選択した基準点の位置で表現するような係数(以下、変換係数という)を算出する。
変分値取得部306は、変換係数算出部305で算出した変換係数と、基準点選択部304で選択した基準点に対応する変分値を用いて、入力点Pにおける変分の推定値を算出する。
色変換結果算出部307は、入力点Pと変分値取得部306で算出した変分の推定値に基づいて、入力点Pにおける色変換結果を算出する。
【0019】
図1Bは、画像処理装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。画像処理装置2は、CPU211、ROM212、RAM213、表示装置214、汎用I/F215、SATA(シリアルATA)I/F216、および通信I/F217などを有して構成されている。汎用I/F(インタフェイス)215には、シリアルバス219を介して、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力装置220やデジタルカメラ1が接続されている。SATAI/F(インタフェイス)216には、シリアルバス221を介して、HDD(ハードディスクドライブ)222やメモリカードなどの記録媒体の読み書きを行う汎用ドライブ223が接続されている。
【0020】
CPU211は、RAM213をワークメモリとして、ROM212やHDD222などに格納されたOS(オペレーティングシステム)や各種のプログラムを実行する。また、CPU211は、システムバス218を介して各構成を制御する。なお、ROM212やHDD222などに格納されたプログラムがRAM213に展開され、CPU211によって実行されることで、後述するフローチャートによる処理が実現する。また、ROM212やHDD222などに格納されたプログラムがRAM213に展開され、CPU211によって実行されることで、
図1や
図3に示す画像処理装置2の各種の機能が実現する。通信I/F217は、外部装置との間で情報の送受信を行う。CPU211は、プログラムによって提供される各種のGUIを表示装置214に表示し、入力装置220を介してユーザの入力操作を取得し、その入力操作に応じて、GUIの表示を制御する。表示装置214と入力装置220は、表示機能と入力機能を兼ね備えたタッチパネルディスプレイにより構成されても構わない。CPU211は、HDD222や汎用ドライブ223にマウントされた記録媒体を、入力画像データや色変換関数などの各種のデータの格納場所として使用する。
【0021】
図4は、本実施形態により実行される画像処理装置2の処理の流れを示すフローチャートである。以下の説明では、各工程(ステップ)について先頭にSを付けて表記することで、工程(ステップ)の表記を省略する。
S401において、データ入出力部201は、デジタルカメラ1で色票3を撮像した画像データ群と、特定のカメラで色票3を撮像した画像データ群を入力する。これらの画像データ群は、ソース色空間の画像とターゲット色空間の画像のペア画像であり、かつ、均一照明下で撮像媒体の露光量を調整しながら複数回撮像されたデータセットであるとする。ここでは、様々な輝度レベルの画像データが得られるよう、多段階(ここでは、32段階)の露光時間で色票3が撮像されている。このとき、撮像結果が色空間の低輝度側から高輝度側までを被覆するように露光時間が調整されている。
【0022】
なお、露光時間の段階数は32段階に限られない。また、撮像媒体の露光量を調整する方法は、露光時間の調整に限定されず、絞り(開口率)の調整、照明強度の調整、別色票の使用などの方法で行っても構わない。また、低輝度から高輝度へグラデーションするような色のパッチが印刷等された色票を使用し、複数の輝度レベルの画像データの撮像を1枚の色票で実現しても構わない。また、輝度レベルの異なる複数の色票の撮像を行っても構わない。また、自発光する色票である自発光チャートを利用し、多段階の発光強度で撮像を行っても構わない。本ステップにおける画像データ群の入力は、ケーブルなどを介してデジタルカメラ1から直接読み込むことで行ってもよく、メモリカードなどの記録媒体を介して読み込むことで行ってもよい。読み込んだ画像データ群は、データ保持部207に格納される。
【0023】
次にS402において、平均値算出部203は、データ保持部207から読み出された画像データ群の各画像における、画像内のパッチごとのL
*a
*b
*値の平均値を、計測値として算出する。なお、各画像のRGB値をL
*a
*b
*値に変換する際には、後述する色空間変換式を利用することができる。ここで、パッチ数を18、露光時間の段階数を32とすると、ソース色空間の画像とターゲット色空間の画像のそれぞれから、18×32の計測点における計測値が得られることになる。
図5は、ソース色空間の画像から得られた計測値を、L
*a
*b
*の色空間上にプロットした例を示す。以下、ソース色空間の画像から得られた計測値をソース色空間の学習データと呼び、ターゲット色空間の画像から得られた計測値をターゲット色空間の学習データと呼ぶ。これらの学習データは、データ保持部207に格納される。ソース色空間の画像とターゲット色空間の画像のそれぞれから計測値を取得する処理は、データ取得処理の一例である。
【0024】
次にS403において、計測値取得部301は、データ保持部207から学習データを読み出す。そして、読み出したソース色空間の学習データとターゲット色空間の学習データについて対応する各計測点における、計測値間のL*a*b*の成分ごとの変分Δl、Δa、Δbを算出する。変分Δl、Δa、Δbは、下記の式(1)~(3)で求められる。
Δl=l´―l・・・(1)
Δa=a´―a・・・(2)
Δb=b´―b・・・(3)
但し、(l、a、b)は、ソース色空間における学習データの計測値(L*a*b*値)を表す。また、(l´、a´、b´)は、ターゲット色空間における学習データの計測値(L*a*b*値)を表す。(l´、a´、b´)は、(l、a、b)に対応する計測点を表している。
【0025】
次にS404において、計測値補間部302は、色票3のパッチ(色)ごとに、S403で得られた各計測点における変分Δl、Δa、Δbについて、輝度lの関数で表現する式を求める。例えば計測値補間部302は、成分aに関して、色票3のi番目のパッチ(色)の目的変数Δaiを説明変数lで説明する関数Δai(l)を求める。また、計測値補間部302は、色票3のパッチ(色)ごとに、各計測点におけるソース色空間の学習データの成分l、a、bを、輝度lの関数で表現する式も同様に求めておく。以上のようにして計測値補間部302は、関数li(l)、ai(l)、bi(l)、Δli(l)、Δai(l)、Δbi(l)を生成する。なお、ここでiはパッチの番号を表し、パッチ数が18である場合、1≦i≦18である。
【0026】
ここで関数Δa
i(l)を求める方法について具体的に説明する。まず、計測点は離散的にしか存在しない。例えば、露出時間を32段階で撮像した場合、色票3のパッチ(色)ごとの計測点数は32点である。そこで、離散的に存在する計測点における変分値を、順番に滑らかに繋ぐ曲線を求める。
図6は、色票3のi番目のパッチ(色)についての関数Δa
i(l)を表すグラフの例を示す。
図6のグラフの横軸は輝度lを表し、縦軸は変分Δaを表す。丸印は計測点を表し、曲線は補間結果を表す。
図6の例では、計測点を誤差なく通過するような7次多項式を最小2乗法により求めることで計測点間の補間を行っている。なお、多項式の次数は7以外でも構わない。また、多項式近似を行う代わりに、計測点の間を折れ線補間、スプライン補間、ベジエ補間など他の方法により補間を行っても構わない。また、必ずしも補間を行わなくてもよく、例えば計測点間の値は、最近傍の計測点の値と同じ値であると定義しても構わない。
【0027】
次にS405において、入力点取得部303は、色変換対象の入力点Pを取得する。ここで入力点Pは、l、a、bの3要素で表される。本実施形態において入力点Pは、3DLUTの格子点に対応している。3DLUTのグリッド数が17と仮定した場合、17×17×17=4913個の入力点P1,P2,・・・、P4913が存在することになる。つまり、以下のS406~S409に示す色変換処理が、4913個の入力点のそれぞれに対して繰り返し実行されることになる。
【0028】
なお、入力点P1,P2,・・・、P4913の求め方は次の通りである。まず、デジタルカメラ1が出力する画像のRGB値が、例えばRGBの各色10ビット(0~1023)であり、デジタルカメラ1の3DLUTのグリッド数が17であると仮定した場合、当該3DLUTの各格子点は、以下のように表される。
(R,G,B)=(0, 0, 0) (0, 0, 64) (0, 0, 128)
… (0, 0, 1023) (0, 64, 0) (0, 64, 64)
… (0, 64, 1023) (0, 128, 0) (0, 128, 64)
… (1023, 1023, 1023)
続いて入力点取得部303は、上記の3DLUTの各格子点のRGB値、L*a*b*値に変換する。これにより、入力点P1,P2,・・・,P4913が得られる。RGB値をL*a*b*値に変換する際には、後述する色空間変換式を利用することができる。
【0029】
次にS406において、基準点選択部304は、S404にてソース色空間における学習データから得られた関数l
i(l)、a
i(l)、b
i(l)を用いて、S405で取得した入力点Pと色相の近い基準点を2点選択する。以下、
図7を用いて、基準点を選択する方法について説明する。
まず、基準点選択部304は、入力点Pの輝度値l
0を、S404で求めた関数a
i(l)、b
i(l)に代入することで、下記の式(4)に示すように、色票3の全てのパッチ(色)に対応する、色彩値P
i(l
0)を求める。
P
i(l
0)=(l
0,a
i(l
0),b
i(l
0)) ・・・(4)
図7は、輝度値l
0であるときのa
*b
*色平面に、色彩値P
i(l
0)をプロットした例を示す。
図7の例では、i=1,2,・・・,18についての色彩値Pi(l
0)が表れている。これらのP
i(l
0)を、基準点候補と呼ぶ。点702は、入力点Pを表す。
【0030】
次に、基準点選択部304は、入力点Pと色相が近い基準点候補を2点選択する。具体的には、輝度値l0であるときのa*b*色平面において、点702から反時計回りに見て最も色相が近い基準点候補である基準点候補703と、時計回りに見て最も色相が近い基準点候補704を選択し、これらを基準点とする。ここでは、上記の式(4)で表される基準点候補のうち、ζ番目の色票を表すPζ(l0)=(l0,aζ(l0),bζ(l0))と、η番目の色票を表すPη(l0)=(l0,aη(l0),bη(l0))が、基準点として選択されたとする。このように、複数の色票に対応する複数の基準点候補の中から、複数の基準点(ここでは、Pζ(l0)、Pη(l0))を選択する処理は、基準点選択処理の一例である。
【0031】
なお、入力点Pと色空間上の距離が近い複数の基準点を選択する方法であれば、基準点を選択する方法は上記の方法に限定されない。例えば、時計回りや反時計回りといった方向を無視して入力点Pと色相の近い基準点候補を2点選択してもよい。また、色相差でなく、彩度差や色差が小さい点を選択してもよい。また、入力点Pとの差分の計算を、別の色空間で行っても構わない。また、入力点Pと基準点候補の相対位置に基づいて基準点の選択を行うのではなく、入力点Pの位置する領域に応じて基準点を選択するなど、入力点Pの絶対位置に基づいて基準点の選択を行っても構わない。
【0032】
次にS407において、変換係数算出部305は、入力点Pの位置を、S406において選択した基準点の位置で表現する変換係数を算出する。以下、変換係数を算出する方法について具体的に説明する。本実施形態では、変換係数算出部305は、入力点Pの位置を2つの基準点と原点との相対位置で表す線形結合係数を、変換係数として算出する。
図8は、入力点Pと基準点P
ζ(l
0)、P
η(l
0)と原点Oの相対的な位置関係を示す図である。
図8では、(l,a,b)=(l
0,0,0)の位置を原点Oとして表す。この時、原点Oから入力点Pに向かうベクトルOPは、原点Oから基準点P
ζ(l
0)に向かうベクトルOP
ζと、原点Oから基準点P
η(l
0)に向かうベクトルOP
ηの線形結合で表される。このことを、下記の式(5)で表す。
【0033】
【数1】
但し、上記の式(5)の各符号は以下を表す。
a,b:入力点Pのa成分、b成分の値
a
ζ,b
ζ:基準点P
ζ(l
0)のa成分、b成分の値
a
η,b
η:基準点P
η(l
0)のa成分、b成分の値
α:ベクトルOP
ζの線形結合係数
β:ベクトルOP
ηの線形結合係数
上記の式(5)の線形結合係数α、βは、下記の式(6)で導出される。
【数2】
このようにして入力点Pと基準点P
ζ(l
0)、P
η(l
0)との相対的な位置関係から線形結合係数α、βを取得する処理は、係数取得処理の一例である。
【0034】
次にS408において、変分値取得部306は、入力点Pにおける変分ΔPの推定値を算出する。まず、変分値取得部306は、入力点Pの輝度値l0を、S404で求めた関数Δli(l)、Δai(l)、Δbi(l)に代入することで、下記の式(7)に示すように、色票3の全てのパッチ(色)における、変分ΔPiを求める。
ΔPi(l0)=(Δli(l0)、Δai(l0)、Δbi(l0)) ・・・(7)
そして、変分値取得部306は、S407で算出した線形結合係数α、βを用いて、以下の式(8)から、入力点Pにおける変分ΔPの推定値を算出する。
ΔP=αΔPζ(l0)+βΔPη(l0) ・・・(8)
上記の式(8)のΔPζ(l0)は、上記の式(7)でi=ζのときのΔPζ(l0)であり、基準点Pζ(l0)に対応する変分値である。また、上記の式(8)のΔPη(l0)は、上記の式(7)でi=ηのときのΔPη(l0)であり、基準点Pη(l0)に対応する変分値である。
【0035】
次にS409において、色変換結果算出部307は、S408で算出された変分ΔPの推定値を用いて、入力点Pに対する色変換結果P´を算出する。算出式は、下記の式(9)で表される。
P´=P+ΔP ・・・(9)
続いて、画像処理部202は、S405の処理に戻り、4913個の入力点Pのうち、次の入力点Pを色変換対象として取得して、S406~S409に示す色変換処理を実行する。その後すべての入力点Pに対してS406~S409に示す色変換処理が完了すると、処理はS410に遷移する。
【0036】
S410において、3DLUT生成部208は、S405において取得された入力点Pと、その入力点Pに対してS409において算出された色変換結果P´の組を生成する。
T={(P1,P1´),(P2,P2´),…,(P4913,P4913´)} ・・・(10)
上記の式(10)のTは、3DLUTの各格子点における色変換結果を保持する。上記の式(10)のTが、3DLUTに相当する。
【0037】
次にS411において、データ入出力部201は、S410で生成された3DLUTを、汎用I/F215を介してデジタルカメラ1にアップロードする。以上のようにして、
図4に示すフローチャートの一連の処理が終了する。
【0038】
以下、
図4に示すフローチャートで生成された3DLUTを用いて、デジタルカメラ1で実際に撮像して得られた画像を色変換する方法を示す。ここでは、色変換する処理の主体がデジタルカメラ1の画像処理部103であるとして説明するが、画像処理装置2の画像処理部202であっても構わない。
【0039】
まず、任意の入力画像データの画素値Q(RGB値)が入力された際、画像処理部103は、この画素値Qを含む四面体を構成する4点PAPBPCPDを、上記の式(10)のTが表す格子点の中から選択して、それらを対応格子点4点として確定する。
次に画像処理部103は、補間比率を算出する。まず画像処理部103は、四面体を構成する対応格子点4点のうち1点を基準とし、4つのベクトル(PAPB)、(PAPC)、(PAPD)、(PAQ)を作成する。そして画像処理部103は、作成した4つのベクトル(PAPB)、(PAPC)、(PAPD)、(PAQ)と、任意の係数wB、wC、wDを用いた下記の式(11)を満たすwB、wC、wDを求める。このwB、wC、wDは、補間比率である。
(PAQ)=wB(PAPB)+wC(PAPC)+wD(PAPD) ・・・(11)
続いて画像処理部103は、上記の式(11)で求めた補間比率wB、wC、wDを用いて、色変換結果Q´を下記の式(12)で算出する。
Q´=PA´+wB(PA´PB´)+wC(PA´PC´)+wD(PA´PD´) ・・・(12)
以上のようにして、デジタルカメラ1で撮像して得られた画像を、3DLUTを用いて色変換することができる。このように、3DLUTとして色変換関数を保持することで、計算時間とメモリ量の削減を図ることができる。
【0040】
続いて、S402やS405などで利用される色空間変換式(sRGB→CIEXYZ変換式、およびCIEXYZ→CIELAB変換式)について説明する。
まず、sRGB→CIEXYZ変換式について説明する。
画像処理部202は、入力データのRGB値を正規化する。ここでの正規化は、入力画像データのRGB値が10ビットの場合には、各値を210-1=1023で除算する処理であるとする。そして、画像処理部202は、以下の式(13)~式(17)を用いてXYZ値を算出する。
RsRGB≦0.04045 のとき Rliner=RsRGB/12.92
RsRGB>0.04045 のとき Rliner=[(RsRGB+0.055)/1.055)]2.4 …(13)
GsRGB≦0.04045 のとき Gliner=GsRGB/12.92
GsRGB>0.04045 のとき Gliner=[(GsRGB+0.055)/1.055)]2.4 …(14)
BsRGB≦0.04045 のとき Bliner=BsRGB/12.92
BsRGB>0.04045 のとき Bliner=[(BsRGB+0.055)/1.055)]2.4 …(15)
【0041】
【0042】
X=X・Xn/95.045
Y=Y・Yn/100.000
Z=Z・Zn/108.892 …(17)
ここで、Xn、Yn、Znは撮像時の照明の色温度から算出した値である。
【0043】
次に、CIEXYZ→CIELAB変換式について説明する。
CIEXYZ→CIELAB変換式は、以下の式(18)~式(22)により表される。
X/Xn>0.00856 のとき XRate=(X/Xn)1/3
X/Xn≦0.00856 のとき XRate=7.787×(X/Xn)+16.0/116.0 …(18)
Y/Yn>0.00856 のとき YRate=(Y/Yn)1/3
Y/Yn≦0.00856 のとき YRate=7.787×(Y/Yn)+16.0/116.0 …(19)
Z/Zn>0.00856 のとき ZRate=(Z/Zn)1/3
Z/Zn≦0.00856 のとき ZRate=7.787×(Z/Zn)+16.0/116.0 …(20)
Y/Yn>0.00856 のとき L*=116.0×(Y/Yn)1/3-16.0
Y/Yn≦0.00856 のとき L*=903.29×(Y/Yn) …(21)
a*=500×(XRate-YRate)
b*=200×(YRate-ZRate) …(22)
ここで、Xn、Yn、Znは撮像時の照明の色温度から算出した値である。
【0044】
なお、本実施形態では、デジタルカメラ1と画像処理装置2は、ケーブルを用いてデータのやり取りを行うが、勿論、メモリカードなどの記録媒体、無線や赤外線などの通信路を用いてデータをやり取りしてもよい。
【0045】
以上説明したように、実施形態1によれば、色票を撮像した撮像画像データが、理想の発色をもつカメラで色票を撮像したデータに色変換されるよう最適化された3DLUTを生成することができる。この3DLUTを用いて色変換処理を行うことで、撮像画像データを色変換する際に生じる変換誤差を低減することが可能になる。これにより、本実施形態によれば、僅かな入力色の変化に対して出力色が大きく変化するような条件下においても、変換誤差を低減することができる。
【0046】
[変形例1]
上述の実施形態では、デジタルカメラ1からの入力データのRGB値をsRGBと仮定しL*a*b*色空間で各種の計算を行っているが、他の色空間で計算を行っても構わない。例えば、入力データのRGB値をBT.2020RGBと仮定しICtCp色空間で計算を行っても構わない。その場合、画像処理部202は、以下の色空間変換式を利用する。
【0047】
BT.2020RGB→CIEXYZ変換式は、以下の式(23)~式(25)により表される。
Rliner=((R1/m-c1)/(c2-c3*R1/m))1/n
Gliner=((G1/m-c1)/(c2-c3*G1/m))1/n
Bliner=((B1/m-c1)/(c2-c3*B1/m))1/n …(23)
m=78.8437500;
n=0.15930176;
c1=0.83593750;
c2=18.8515625;
c3=18.6875000;
【0048】
【0049】
X=X・Xn/95.045
Y=Y・Yn/100.000
Z=Z・Zn/108.892 …(25)
ここで、Xn、Yn、Znは撮像時の照明の色温度から算出した値である。
【0050】
CIEXYZ→ICtCp変換式は、以下の式(26)~式(28)により表される。
【0051】
【0052】
LPQ=((c1+c2*Ln)/(1+c3*Ln))m
MPQ=((c1+c2*Mn)/(1+c3*Mn))m
SPQ=((c1+c2*Sn)/(1+c3*Sn))m …(27)
m=78.8437500;
n=0.15930176;
c1=0.83593750;
c2=18.8515625;
c3=18.6875000;
【0053】
【0054】
[変形例2]
上述の実施形態では、実際に撮像した画像の画素値Qが入力された場合に、3DLUTを用いて色変換結果Q´を算出する例について説明した。本変形例では、S405~S409までの処理を実行して、色変換結果Q´を直接算出する例を示す。本変形例は、S405~S409についてのみ説明し、他のステップについては実施形態1と同様であるとして説明を割愛する。
【0055】
まずS405において、入力点取得部303は、ソース色空間における色変換対象の画素の一つを点Qとして取得する。続いてS406~S408と同様の処理により、画像処理部202は、入力点Qにおける変分ΔQの推定値を算出する。次のS409において、色変換結果算出部307は、色変換結果Q´=Q+ΔQを算出する。その後、画像処理部202は、色変換対象の画素が無くなるまで、S405~S409を繰り返し実行する。なお、その後のS410~S411の処理は省略される。
このように本変形例では、3DLUTを用いることなく、色変換結果を算出することができる。
【0056】
[変形例3]
上述の実施形態では、S404で求めた変分の関数Δli(l)、Δai(l)、Δbi(l)を用いて色変換結果P´を算出する例について説明した。本変形例では、変分の関数Δli(l)、Δai(l)、Δbi(l)を求めることなく、色変換結果P´を算出する例を示す。本変形例は、S404~S409についてのみ説明し、他のステップについては実施形態1と同様であるとして説明を割愛する。
【0057】
まずS404において、計測値補間部302は、色票3のパッチ(色)ごとに、各計測点におけるターゲット色空間の学習データの成分l´、a´、b´から、輝度lを説明変数とする関数l´i(l)、a´i(l)、b´i(l)を求めておく。そして、計測値補間部302は、これら3要素を持つ関数P´i(l)を生成する。続いてS405~S407が実行される。本変形例では、次のS408~S409に代えて、画像処理部202は、下記の式(29)を用いて、色変換結果P´を算出する。なお、下記の式(29)のα、βは、S407において算出された線形結合係数である。また、下記の式(29)のPζ´(l0)、Pη´(l0)は、S406で選択された基準点である。
P´=αPζ´(l0)+βPη´(l0) …(29)
このように本変形例では、変分の関数Δli(l)、Δai(l)、Δbi(l)を求めることなく、色変換結果を算出することができる。
【0058】
[実施形態2]
実施形態1では、計測値取得部301において取得された、すべての学習データを用いて色変換処理を行う例について説明した。一方で、不適切な一部の学習データを色変換処理の対象から除去することで、色変換の精度が向上する場合がある。
図9は、計測値取得部301が取得した学習データの例を示す。
図9に示すグラフは、学習データの色ごとの補間結果をa
*b
*色平面に射影したものであり、系列1本がそれぞれ色票のi番目の色の色彩値P
i(l)の形状データを表す。ここで、系列901は、デジタルカメラ1での撮像時の誤差やソース色空間自体の歪みが原因で、他の系列と交叉してしまっている系列である。この系列を学習データとして使用すると、色変換結果画像に階調反転や疑似輪郭が発生するなどの画質弊害が起こりうる。従って、学習データから系列901を除去し、それ以外の系列のみを使用することが望ましい。以下では、実施形態1と異なる部分について主として説明する。また、実施形態1と同一の構成については、同じ符号を付して説明する。
【0059】
図10は、本実施形態により実行される画像処理装置2の処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、
図4のフローチャートとは、S404とS405との間に、下記に説明するS1001~S1003の処理が実行される点で相違する。
まずS1000において、S401~S404と同様の処理が実行される。
【0060】
次にS1001において、計測値補間部302は、S404で生成した関数形式のソース色空間の学習データを、データ保持部207に格納する。続いて、表示制御部204は、データ保持部207からソース色空間の学習データ(関数形式)を読み出し、表示装置214に出力することで、ユーザに提示する。
図11は、表示装置214に出力されたGUIの例を示す。このGUIは、ウインドウ1101内に、学習データ形状1102を表示する。この学習データ形状1102は、ソース色空間の学習データ(関数形式)をa
*b
*色平面に射影したものであり、系列1本がそれぞれ色票のi番目のパッチ(色)の色彩値P
i(l)の形状データを表す。
【0061】
次にS1002において、ユーザ操作取得部205は、学習データの中からユーザが削除したい系列の操作指示を受け付ける。系列が選択されている間、表示制御部204は、系列1103のように、選択された系列を強調表示する。なお、ユーザ操作取得部205は、選択のやり直しや複数選択などの機能を備えていてもよい。本ステップの操作は、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力装置220を介して行われる。ユーザ操作取得部205は、削除ボタン1104が押下された場合、処理をS1003に進める。なお、削除ボタン1104が押下されなかった場合には、S1003をスキップして、処理はS1004に進む。
S1003において、データ保持部207は、S1003で削除指示された系列に対応する学習データを削除する。なお、データ保持部207は、S1003で削除指示された系列に対応する学習データを破棄するのではなく、別のメモリに別途保存しておいてもよい。その後処理はS1002に戻る。
【0062】
上記の削除処理は、任意の回数繰り返されてもよい。ユーザは削除すべき系列が無いならば完了ボタン1105を押下する。ユーザ操作取得部205は、完了ボタン1105が押下された場合、処理をS1004に進める。
次にS1004において、S405~S411と同様の処理が実行される。本実施形態では、S1003で削除指示された系列に対応する基準点候補が、候補対象から除外される。以上のようにして、
図10に示すフローチャートの一連の処理が終了する。
【0063】
なお、より利便性を高めるため、ユーザ操作取得部205は、系列を新たに追加する機能を備えていてもよい。追加ボタン1107が押下されると、ユーザ操作取得部205は、過去に撮像、編集した学習データを、入力欄1106で指定された格納場所から読み出して、現在編集中の学習データに追加する。また、再読み込みボタン1108が押下されると、ユーザ操作取得部205は、現在編集中の学習データの編集を終了して、入力欄1106で指定された格納場所から学習データが新たに読み出す。表示制御部204は、新たに読み出した学習データに基づき学習データ形状1102を表示し直す。
【0064】
なお、データ保持部207は、ソース色空間の学習データ(関数形式)の形状を色票3のパッチ(色)ごとに解析し、解析の結果、色変換精度低下の要因となり得る所定の条件を満たすと判定した場合に、そのパッチ(色)に対応する学習データを削除してもよい。色変換精度低下の要因となり得る所定の条件の例としては、他の系列と交差するなど撮影誤差が大きいと判断できる条件がある。具体的には、データ保持部207は、パッチ(色)に対応する系列が、他の系列と所定値以上交差するか否かを判定し、判定の結果、所定値以上交差すると判定した場合に、当該系列を削除してもよい。
【0065】
以上説明したように、実施形態2によれば、撮像誤差の大きい学習データを予め除去することが可能になり、色変換の誤差を低減することができる。また、学習データの形状を表示することで、誤差の大きいものを除去する作業を支援することができる。
【0066】
[その他の実施形態]
なお、各種のデバイスと接続され、各種のデバイスを動作させる装置あるいはシステム内のコンピュータに、上記の画像処理装置2の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードを供給しておいても構わない。この場合、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUあるいはMPU)が、供給されたプログラムに従い、各種のデバイスを動作させることによって、上記の実施形態を実施する場合も本発明の範疇に含まれる。例えば、上記の画像処理をコンピュータにインストールされたドライバソフト上で行う場合が含まれる。その場合、前記のソフトウェアのプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、および、そのプログラムコードをコンピュータに供給するための、当該プログラムコードが格納された記憶媒体は本発明を構成する。
【0067】
上述の各実施形態の開示は、以下の構成、方法及びプログラムを含む。
(構成1)
複数の色票を撮像した画像において計測された、前記複数の色票の色を表す第1のデータと、前記第1のデータが計測された計測点における目標の色を表す第2のデータを取得するデータ取得手段と、
色空間上の入力点を取得する入力点取得手段と、
前記第1のデータから、前記複数の色票に対応する複数の基準点候補を取得し、複数の前記基準点候補の中から、前記入力点との色空間上の距離が近い複数の前記基準点候補を、基準点として選択する基準点選択手段と、
前記入力点の位置に基づいて、色変換の係数を取得する係数取得手段と、
前記色変換の係数と、複数の前記基準点に対応する前記第2のデータに基づいて、前記入力点における色変換結果を算出する算出手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
(構成2)
前記係数取得手段は、複数の前記基準点と、前記入力点との相対的な位置に基づいて、前記色変換の係数を算出することを特徴とする構成1に記載の画像処理装置。
(構成3)
前記算出手段は、前記計測点における、前記第1のデータと前記第2のデータとの変分値を算出し、前記色変換の係数と、複数の前記基準点に対応する前記変分値に基づいて、前記入力点における色変換結果を算出することを特徴とする構成1又は2に記載の画像処理装置。
(構成4)
前記画像は、撮像装置において撮像された画像であって、
前記撮像装置が3次元ルックアップテーブルで保持する色変換関数を生成する生成手段を更に有し、
前記生成手段は、前記3次元ルックアップテーブルの格子点に対応する前記入力点と、当該入力点における前記色変換結果とに基づいて、前記色変換関数を生成することを特徴とする構成1~3の何れか1つに記載の画像処理装置。
(構成5)
前記データ取得手段は、同一の色票から輝度の異なる複数の計測値を取得し、
前記複数の計測値の間の値を前記複数の色票ごとに補間する補間手段、を更に有し、
前記基準点選択手段は、前記補間手段により補間された前記第1のデータから、前記複数の色票に対応する複数の基準点候補を取得することを特徴とする構成1~4の何れか1つに記載の画像処理装置。
(構成6)
前記補間手段は、前記複数の計測値を輝度で表現する関数を前記複数の色票ごとに生成することを特徴とする構成5に記載の画像処理装置。
(構成7)
前記補間手段は、前記複数の計測値を多項式近似することにより前記関数を生成することを特徴とする構成6に記載の画像処理装置。
(構成8)
前記画像は、露光時間を多段階にして前記複数の色票を撮像した画像データ群、開口率を多段階にして前記複数の色票を撮像した画像データ群、及び照明強度を多段階にして前記複数の色票を撮像した画像データ群のうちの少なくとも何れか1つを含むことを特徴とする構成5~7の何れか1つに記載の画像処理装置。
(構成9)
前記基準点選択手段は、前記複数の色票ごとの前記関数に対して、前記入力点の輝度値を代入して得られる点を、複数の前記基準点候補として取得することを特徴とする構成6~7の何れか1つに記載の画像処理装置。
(構成10)
前記基準点選択手段は、複数の前記基準点候補の中から、前記入力点との色相の近い複数の前記基準点候補を、基準点として選択することを特徴とする構成1~9の何れか1つに記載の画像処理装置。
(構成11)
前記データ取得手段は、同一の色票から輝度の異なる複数の計測値を取得し、
前記複数の計測値の間の値を前記複数の色票ごとに補間する補間手段と、
前記補間手段により補間された前記第1のデータを表す形状データを、前記複数の色票ごとに表示するよう制御する表示制御手段と、
を更に有することを特徴する構成1~10の何れか1つに記載の画像処理装置。
(構成12)
前記基準点選択手段は、前記複数の色票に対応する前記第1のデータのうち、所定の条件を満たす一部の色票に対応する前記第1のデータを、複数の基準点候補を取得する対象から除外することを特徴する構成1~11の何れか1つに記載の画像処理装置。
(構成13)
前記基準点選択手段は、前記複数の色票に対応する前記第1のデータのうち、ユーザより操作指示のあった色票に対応する前記第1のデータを、複数の基準点候補を取得する対象から除外することを特徴とする構成12に記載の画像処理装置。
(方法)
複数の色票を撮像した画像において計測された、前記複数の色票の色を表す第1のデータと、前記第1のデータが計測された計測点における目標の色を表す第2のデータを取得するデータ取得工程と、
色空間上の入力点を取得する入力点取得工程と、
前記第1のデータから、前記複数の色票に対応する複数の基準点候補を取得し、複数の前記基準点候補の中から、前記入力点との色空間上の距離が近い複数の前記基準点候補を、基準点として選択する基準点選択工程と、
前記入力点の位置に基づいて、色変換の係数を取得する係数取得工程と、
前記色変換の係数と、複数の前記基準点に対応する前記第2のデータに基づいて、前記入力点における色変換結果を算出する算出工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
(プログラム)
画像処理装置のコンピュータを、
複数の色票を撮像した画像において計測された、前記複数の色票の色を表す第1のデータと、前記第1のデータが計測された計測点における目標の色を表す第2のデータを取得するデータ取得手段と、
色空間上の入力点を取得する入力点取得手段と、
前記第1のデータから、前記複数の色票に対応する複数の基準点候補を取得し、複数の前記基準点候補の中から、前記入力点との色空間上の距離が近い複数の前記基準点候補を、基準点として選択する基準点選択手段と、
前記入力点の位置に基づいて、色変換の係数を取得する係数取得手段と、
前記色変換の係数と、複数の前記基準点に対応する前記第2のデータに基づいて、前記入力点における色変換結果を算出する算出手段、
として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0068】
1:デジタルカメラ、2:画像処理装置、3:色票