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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167953
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/506 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H01R13/506
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084295
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 興珂
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087GG14
5E087JJ06
5E087MM05
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】簡単な構成でコネクタの変形を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】コネクタ10は、雌端子金具33を収容する収容部材31と、収容部材31に収容された雌端子金具33を覆う覆い部材32と、を備えている。収容部材31は、係止部31Jを有し、覆い部材32は、係止部31Jが係止する被係止部32Dを有している。係止部31Jは、被係止部32Dによって下方向(所定方向)に弾性変形し、弾性復帰して被係止部32Dに係止する構成である。覆い部材32は、規制部32Gを有している。規制部32Gは、係止部31Jが被係止部32Dによって下方向(所定方向)に弾性変形した状態において、覆い部材32が下方向(所定方向)と反対向きの上方向に収容部材31から離隔することを規制する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具を収容する収容部材と、
前記収容部材に収容された前記端子金具を覆う覆い部材と、
を備え、
前記収容部材は、係止部を有し、
前記覆い部材は、前記係止部が係止する被係止部を有し、
前記係止部は、前記被係止部によって所定方向に弾性変形し、弾性復帰して前記被係止部に係止する構成であり、
前記覆い部材は、規制部を有し、
前記規制部は、前記係止部が前記被係止部によって前記所定方向に弾性変形した状態において、前記覆い部材が前記所定方向と反対向きに前記収容部材から離隔することを規制する、コネクタ。
【請求項2】
前記覆い部材は、前記収容部材に対して第1位置と第2位置との間を変位可能であり、
前記係止部は、前記覆い部材が前記第1位置と前記第2位置との間を変位する間において弾性変形及び弾性復帰する構成であり、
前記収容部材は、前記規制部が前記所定方向側から係止するガイド部を有し、
前記規制部は、前記覆い部材が前記第1位置と前記第2位置との間を変位する間において、常に前記ガイド部に係止した状態を維持する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記覆い部材は、前記収容部材に対向する平板状をなした板部と、前記板部に交差する向きに延びる平板状の補強壁部と、を有している、請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記板部は、板厚方向を上下方向に向けており、
前記補強壁部は、板厚方向を左右方向に向けており、
前記規制部は、前記補強壁部の前端部の下端に設けられ、
前記被係止部は、前記板部から下向きに突出し、前記補強壁部の前記前端部の上端に連なっている、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記覆い部材は、板厚方向を左右方向に向けて前後方向に長く延びて前記板部の右端縁から垂下する第1壁部と、板厚方向を左右方向に向けて前後方向に長く延びて前記板部の左端縁から垂下する第2壁部と、を有し、
前後方向における前記第2壁部の長さは、前記第1壁部よりも短く、
前記第1壁部は、前記収容部材の右側壁部の前後方向の全体を覆い、前記右側壁部と係止し、
前記第2壁部は、前記収容部材の左側壁部の後側を覆い、前記左側壁部と係止し、
前記係止部は、前後方向に延びた形態であり、前記第2壁部の前方に並んで配置され、
前記補強壁部は、前記第2壁部の前端から前方に延出し、前記係止部よりも右方に配置されている、請求項4に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたコネクタは、コネクタハウジングから後方に突出する端子ユニットについて、変位規制部材を取り付けることによって、変形を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-114334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、変位規制部材を別個に設ける構成であり、部品点数が増えてしまうことになる。
【0005】
本開示は上述した事情に基づいてなされたものであり、簡単な構成でコネクタの変形を抑制できる技術の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
端子金具を収容する収容部材と、
前記収容部材に収容された前記端子金具を覆う覆い部材と、
を備え、
前記収容部材は、係止部を有し、
前記覆い部材は、前記係止部が係止する被係止部を有し、
前記係止部は、前記被係止部によって所定方向に弾性変形し、弾性復帰して前記被係止部に係止する構成であり、
前記覆い部材は、規制部を有し、
前記規制部は、前記係止部が前記被係止部によって前記所定方向に弾性変形した状態において、前記覆い部材が前記所定方向と反対向きに前記収容部材から離隔することを規制する、コネクタ。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、簡単な構成でコネクタの変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1のコネクタを示す分解斜視図である。
図2図2は、収容部材を左側上方から見た斜視図である。
図3図3は、収容部材を右側下方から見た斜視図である。
図4図4は、収容部材を示す部分拡大平面図である。
図5図5は、収容部材を示す部分拡大側面図である。
図6図6は、収容部材を左側下方から見た斜視図である。
図7図7は、覆い部材を左側下方から見た斜視図である。
図8図8は、覆い部材を右側下方から見た斜視図である。
図9図9は、相手側ハウジングを示す平断面図である。
図10図10は、覆い部材が第2位置に配置された状態のコネクタを示す側面図である。
図11図11は、図10におけるA-A断面図である。
図12図12は、図10におけるB-B断面図である。
図13図13は、覆い部材が第1位置に配置された状態のコネクタを示す側面図である。
図14図14は、覆い部材が第2位置に配置された状態のコネクタをフード部に挿入した状態を示す平面図である。
図15図15は、コネクタをフード部に挿入した状態において、覆い部材を第1位置に変位させた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)端子金具を収容する収容部材と、
前記収容部材に収容された前記端子金具を覆う覆い部材と、
を備え、
前記収容部材は、係止部を有し、
前記覆い部材は、前記係止部が係止する被係止部を有し、
前記係止部は、前記被係止部によって所定方向に弾性変形し、弾性復帰して前記被係止部に係止する構成であり、
前記覆い部材は、規制部を有し、
前記規制部は、前記係止部が前記被係止部によって前記所定方向に弾性変形した状態において、前記覆い部材が前記所定方向と反対向きに前記収容部材から離隔することを規制する、コネクタ。
【0011】
(1)のコネクタは、覆い部材に規制部を設けることによって、係止部が弾性変形したとしても、その反力で覆い部材が収容部材から離隔することが規制されるので、覆い部材が塑性変形することを、部品を増やすことなく防止できる。
【0012】
(2)前記覆い部材は、前記収容部材に対して第1位置と第2位置との間を変位可能であり、
前記係止部は、前記覆い部材が前記第1位置と前記第2位置との間を変位する間において弾性変形及び弾性復帰する構成であり、
前記収容部材は、前記規制部が前記所定方向側から係止するガイド部を有し、
前記規制部は、前記覆い部材が前記第1位置と前記第2位置との間を変位する間において、常に前記ガイド部に係止した状態を維持する、(1)に記載のコネクタ。
【0013】
(2)のコネクタは、係止部が弾性変形及び弾性復帰する間、覆い部材が収容部材から離隔することを確実に規制することができる。
【0014】
(3)前記覆い部材は、前記収容部材に対向する平板状をなした板部と、前記板部に交差する向きに延びる平板状の補強壁部と、を有している、(1)又は(2)に記載のコネクタ。
【0015】
(3)のコネクタは、補強壁部によって板部を補強して板部が撓むことを防止することができる。
【0016】
(4)前記板部は、板厚方向を上下方向に向けており、
前記補強壁部は、板厚方向を左右方向に向けており、
前記規制部は、前記補強壁部の前端部の下端に設けられ、
前記被係止部は、前記板部から下向きに突出し、前記補強壁部の前記前端部の上端に連なっている、(3)に記載のコネクタ。
【0017】
(4)のコネクタは、被係止部と規制部がともに補強壁部の前端部に設けられており、弾性変形した係止部の反力が付与される被係止部の近傍に規制部が配置されているため、板部が収容部材から離隔することを効率的に規制することができる。
【0018】
(5)前記覆い部材は、板厚方向を左右方向に向けて前後方向に長く延びて前記板部の右端縁から垂下する第1壁部と、板厚方向を左右方向に向けて前後方向に長く延びて前記板部の左端縁から垂下する第2壁部と、を有し、
前後方向における前記第2壁部の長さは、前記第1壁部よりも短く、
前記第1壁部は、前記収容部材の右側壁部の前後方向の全体を覆い、前記右側壁部と係止し、
前記第2壁部は、前記収容部材の左側壁部の後側を覆い、前記左側壁部と係止し、
前記係止部は、前後方向に延びた形態であり、前記第2壁部の前方に並んで配置され、
前記補強壁部は、前記第2壁部の前端から前方に延出し、前記係止部よりも右方に配置されている、(4)に記載のコネクタ。
【0019】
(5)のコネクタは、係止部が第2壁部の前方の領域に設けられているため、第2壁部は、収容部材の左側壁部の前側と係合することができない構成である。しかし、補強壁部が第2壁部の前端から前方に延出し、係止部よりも右方に配置されているので、補強壁部が係止部の右方に隣接するように配置することが可能となり、第2壁部よりも前方の領域において、板部(覆い部材)が収容部材から離隔しないように補強することができる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
<実施形態1>
本開示を具体化した実施形態1のコネクタ10を、図1から図15を参照して説明する。本実施形態1において、図中、「前側」、「後側」、「上側」、「下側」、「右側」、及び「左側」は、それぞれ「F」、「B」、「U」、「D」、「R」、及び「L」で表される。コネクタ10は、車載通信用のコネクタである。図1に示すように、コネクタ10は、収容部材31、覆い部材32、及び雌端子金具33を備えている。コネクタ10は、相手側コネクタ70に嵌合される。相手側コネクタ70は、フード部70A、及び奥壁部70Bを有している。
【0021】
[収容部材の構成]
収容部材31は、合成樹脂製の誘電体である。図2に示すように、収容部材31は、全体として前後方向に細長く、底壁部31Aと、底壁部31Aの左右両側縁から立ち上がった左側壁部31B、及び右側壁部31Sと、底壁部31A、左側壁部31B、及び右側壁部31Sの前端に連なる前壁部31Cと、を有している。底壁部31Aの左右方向中央には、上向きに立ち上がる隔壁部31Dが形成されている。収容部材31の内部には、隔壁部31D、左側壁部31B、及び右側壁部31Sによって区画され、収容部材31の上方及び後方に開放された左右一対の収容室31Eが形成されている。各収容室31E内には、後述する端子金具である雌端子金具33が収容され、各収容室31Eの底面には、雌端子金具33の箱部33Aの後端に係止して雌端子金具33が後向きに変位することを規制する抜止め突起31Fが形成されている。
【0022】
図2、3に示すように、左側壁部31B、及び右側壁部31Sの各々の外側面には、複数のロック突起31Gが左右方向外向きに突出して設けられている。具体的には、右側壁部31Sには、三つのロック突起31Gが前後方向に並んで設けられている。左側壁部31Bには、一つのロック突起31Gが設けられている。各ロック突起31Gの外側面における上側領域は、上向きに左右方向中央に向けて傾斜した傾斜面とされている。ロック突起31Gの下面は、左右方向中央に向けて切り立っている。底壁部31Aの後側の下面には、複数の指掛け突起31Qが下向きに突出して設けられている(図3参照)。各指掛け突起31Qは、左右方向に延びており、互いに前後方向に離間して配置されている(図3参照)。
【0023】
図2に示すように、前壁部31Cには、収容部材31の前端面から各収容室31Eに貫通した左右一対の貫通孔31Hが形成されている。貫通孔31Hには、細長いタブ状の相手側端子(図示せず)が前方から挿入されるようになっている。
【0024】
前壁部31Cの左端部には、係止部31Jが設けられている。言い換えると、収容部材31は、係止部31Jを有している。係止部31Jは、前壁部31Cの左端部から後向きに片持ち状に延びている。係止部31Jは、前後方向に長く延びた形態である。係止部31Jは、左側壁部31Bに沿うように後向きに延びている。係止部31Jの後側は、左側壁部31Bから左方後向きに離間するように傾斜している。係止部31Jと、左側壁部31Bと、の間の空間は、弾性変形した係止部31Jが進入可能な許容空間Sとして形成されている。係止部31Jの後端部における左面及び右面は、後に向うにつれ互いに近づく向きに傾斜した右側傾斜面31P、及び左側傾斜面31Nとして形成されている(図4参照)。
【0025】
図5に示すように、係止部31Jの後端部には、上向きに突出した突部31Kが設けられている。突部31Kの前面及び後面は、上に向かうにつれ互いに近づく向きに傾斜した前側傾斜面31L、及び後側傾斜面31Mとして形成されている。図6に示すように、左側壁部31Bと底壁部31Aとが繋がる下端縁部には、ガイド部31Rが形成されている。言い換えると、収容部材31は、ガイド部31Rを有している。ガイド部31Rは、左側壁部31Bと底壁部31Aとが繋がる下端縁部に上向きに凹んで前後方向に延びて形成されている。
【0026】
[覆い部材の構成]
覆い部材32は、合成樹脂製の誘電体である。図7に示すように、覆い部材32は、全体として前後方向に細長い形状をなしている。覆い部材32は、板部32Aと、第1壁部32Bと、第2壁部32Lと、補強壁部32Cと、被係止部32Dと、を有している。板部32Aは、平板状をなしており、板厚方向を上下方向に向けている。板部32Aには、複数の指掛け突起32Kが上向きに突出して設けられている。各指掛け突起32Kは、左右方向に延びており、互いに前後方向に離間して配置されている(図1参照)。
【0027】
第1壁部32Bは、板厚方向を左右方向に向けて前後方向に長く延びて板部32Aの右端縁から垂下している。第1壁部32Bは、板部32Aの右端縁の前後方向の全体にわたって繋がっている。第2壁部32Lは、板厚方向を左右方向に向けて前後方向に長く延びて板部32Aの左端縁から垂下している。第2壁部32Lの前端縁は、板部32Aの前後方向中央部に位置している。第1壁部32B及び第2壁部32Lの後端は、板部32Aの後端と面一に形成されている。つまり、第2壁部32Lの前後方向の長さは、第1壁部32Bよりも短い。
【0028】
第1壁部32B及び第2壁部32Lは、その上端縁(板部32Aとの境界部)を支点として左右方向へ拡開するように弾性変形することが可能である。第1壁部32B及び第2壁部32Lの内面には、左右方向外向きに凹んだ係止凹部32Eが形成されている(図7、8参照)。各係止凹部32Eの下端は、第1壁部32B及び第2壁部32Lの各々の下端よりも上方に位置している。
【0029】
補強壁部32Cは、板部32Aの下側の板面(収容部材31に対向する板面)に直交する向きにこの板面から平板状をなして垂下するように延びている。補強壁部32Cは、板厚方向を左右方向に向けている。補強壁部32Cは、第2壁部32Lの前端から前方に延出している。補強壁部32Cの左面は、第2壁部32Lの左面よりも右方に位置している。補強壁部32Cの右面は、第2壁部32Lの右面と面一である(図8参照)。補強壁部32Cの左面の前端部は、前方右向きに傾斜した傾斜面32Fとして形成されている。補強壁部32Cの前端部の下端には、右向きに片持ち状に延びた規制部32Gが設けられている。言い換えると、覆い部材32は、規制部32Gを有している。
【0030】
被係止部32Dは、板部32Aの下側の板面から下向きに突出して設けられている。被係止部32Dは、補強壁部32Cの前端部の上端に連なって配置されている。被係止部32Dは、補強壁部32Cよりも左方に延びて配置されている。被係止部32Dの前面及び後面は、上に向かうにつれ互いに近づくように傾斜した前側傾斜面32H、及び後側傾斜面32Jとして形成されている。
【0031】
[雌端子金具の構成]
図1に示すように、雌端子金具33は、全体として前後方向に細長い形状である。雌端子金具33の前端側領域は、相手側端子(図示せず)を挿入させて導通可能に接続させるための角筒状をなした箱部33Aとなっている。収容室31Eに収容された雌端子金具33は、箱部33Aを抜止め突起31Fに係止させることによって、収容部材31に対して後向きに離脱すること規制される。
【0032】
雌端子金具33の後端側領域は、箱部33Aの後端から後方へ延出したオープンバレル状の圧着部33Bとなっている。圧着部33Bには、電線Wの前端部が導通可能に固着されている。二つの雌端子金具33に固着された2本の電線Wは、ツイストペア線を構成する。ツイストペア線は、2本の電線Wを螺旋状に撚り合わせることで電磁ノイズを抑制するシールド機能を発揮する。2本の電線Wは、外被(図示せず)で覆われているが、ツイストペア線の前端部では、外被が除去され、2本の電線Wが撚りを解かれた状態で露出している。2本の電線Wの前端部に個別に固着された二つの雌端子金具33は、収容部材31の上方から収容室31E内に収容される。
【0033】
[相手側コネクタの構成]
相手側コネクタ70は、合成樹脂製の誘電体である。図1に示すように、相手側コネクタ70は、前後方向に長いブロック状をなしている。図9に示すように、フード部70Aは、角筒状をなして前後方向に延びている。フード部70Aの後端は、後向きに開放されている。フード部70Aの左側の壁部の内面には、左右方向内向きに突出して山型部70Eが設けられている。山型部70Eの前面及び後面は、右に向うにつれ互いに近づくように傾斜した前側傾斜面70F、及び後側傾斜面70Gとして形成されている。奥壁部70Bは、フード部70Aの前端を閉鎖して配置されている。奥壁部70Bには、前後方向に貫通して二つの挿通孔70Cが形成されている。各挿通孔70Cには、タブ状の相手側端子(図示せず)が圧入される。これにより、挿通孔70Cは、圧入された相手側端子を挿通した状態を保持する。
【0034】
[コネクタの組付け手順の一例について]
次に、コネクタ10の組付け手順を説明する。先ず、電線Wに固着した二つの雌端子金具33を収容部材31の収容室31Eに収容する。このとき、箱部33Aを前壁部31Cの後面に隣接させ、圧着部33Bを収容部材31の後部に配置する姿勢にして雌端子金具33を収容室31Eに収容する。次に、図10に示すように、前後方向における収容部材31に対する覆い部材32の相対位置を、被係止部32Dを突部31Kの後方に位置するように配置して、覆い部材32を上方から収容部材31に被せるように合体させる。このとき、第1壁部32B及び第2壁部32Lは、上方からロック突起31Gに接触することによって、左右方向外向きに弾性変形する。そして、各ロック突起31Gの下端が各係止凹部32E内に至ると第1壁部32B及び第2壁部32Lは、弾性復帰する(図11参照)。
【0035】
これとともに、補強壁部32Cの規制部32Gが左側壁部31Bに接触することによって、補強壁部32Cが左方に弾性変形する。そして、規制部32Gが左側壁部31Bのガイド部31Rよりも下方に至ると補強壁部32Cは、弾性復帰する(図12参照)。これにより、規制部32Gは、下方からガイド部31Rに係止する。こうして、覆い部材32は、収容部材31に取り付けられる。覆い部材32を収容部材31に取り付けた状態において、被係止部32Dの前側傾斜面32Hが、突部31Kの後側傾斜面31Mに対向する(図10参照)。覆い部材32の板部32Aは、収容部材31に対向する(図12参照)。また、補強壁部32Cは、係止部31Jよりも後方に配置される(図10参照)。このときの収容部材31に対する覆い部材32の位置は、第2位置である。
【0036】
次に、覆い部材32を、収容部材31に対してスライドさせるように前向きに変位させる。具体的には、図13に示すように、第2位置に配置された覆い部材32を、収容部材31に対して前向きに変位させると、被係止部32Dも覆い部材32とともに前向きに変位する。これによって係止部31Jの突部31Kの後側傾斜面31Mは、前側傾斜面32Hによって下向きに押圧され、係止部31Jが下向きに弾性変形する(二点鎖線で示された係止部31J参照)。係止部31Jが被係止部32Dによって弾性変形する方向(下方向)は、所定方向であり、覆い部材32を、収容部材31に対してスライドさせる方向に直交する方向である。
【0037】
さらに覆い部材32を収容部材31に対して前向きに変位させると、被係止部32Dは、突部31Kを通過して突部31Kの前方に至る。これによって、下向きに弾性変形した係止部31Jは、弾性復帰する(実線で示された係止部31J参照)。これによって、被係止部32Dの後側傾斜面32Jは、突部31Kの前側傾斜面31Lに対向する。こうして、被係止部32Dに係止部31Jが係止する。このとき、補強壁部32Cは、許容空間S内に後方から入り込み、係止部31Jの後部よりも右方に配置される(図15参照)。補強壁部32Cは、先端部に係止部31Jを避けるように傾斜面32Fが形成されている(図15参照)ので、許容空間Sに入り込み易い。これにより、係止部31Jが許容空間Sへ変位することが規制されるとともに、覆い部材32が後向きに変位することが規制される。このときの収容部材31に対する覆い部材32の位置は、第1位置である。
【0038】
覆い部材32が第1位置と第2位置との間を変位する間において、規制部32Gは、常にガイド部31Rに係止した状態を維持しつつ(図12参照)、ガイド部31Rに対して前後にスライドする。これにより、規制部32Gは、係止部31Jが被係止部32Dによって下方向に弾性変形した状態において、覆い部材32の板部32Aが収容部材31に対して上向き(所定方向(下方向)と反対向き)に離隔することを規制する(図12参照)。
【0039】
覆い部材32は、係止部31Jが被係止部32Dに係止した状態において、第1位置に保持される。覆い部材32が第1位置にある状態では、補強壁部32Cが許容空間S内に配置されることによって係止部31Jが右向きに弾性変形することを規制する(図15参照)。第1位置にある覆い部材32は、収容部材31に収容された雌端子金具33を上方から覆う。このとき、第1壁部32Bは、収容部材31の右側壁部31Sの前後方向の全体を覆い、右側壁部31Sと係止した状態である(図11参照)。第2壁部32Lは、収容部材31の左側壁部31Bの後側を覆い、左側壁部31Bと係止した状態である(図11参照)。係止部31Jは、覆い部材32の位置が第1位置及び第2位置であっても、第2壁部32Lの前方に並んで配置されている(図10、13参照)。こうして、コネクタ10の組付けが完了する。覆い部材32の位置が第1位置に配置されたコネクタ10は、組付けが行われた場所から、使用する場所(相手側コネクタ70との嵌合を行う場所)へ搬送することができる。
【0040】
次に、相手側コネクタ70にコネクタ10を嵌合させる。具体的には、収容部材31に対する覆い部材32の位置を第1位置から後向きに移動させて第2位置に変位させる。このとき、係止部31Jの突部31Kの前側傾斜面31Lは、後側傾斜面32Jによって下向きに押圧され、係止部31Jが下向きに弾性変形する。さらに覆い部材32を収容部材31に対して後向きに変位させると、被係止部32Dは、突部31Kを後向きに通過して突部31Kの後方に至る(図10参照)。これによって、下向きに弾性変形した係止部31Jは、弾性復帰する(図10参照)。こうして、被係止部32Dの前側傾斜面32Hが突部31Kの後側傾斜面31Mに対向し、係止部31Jは、被係止部32Dから解離する(図10参照)。このとき、補強壁部32Cは、許容空間S外に配置される(図14参照)。覆い部材32は、第1位置と第2位置との間を変位可能である。覆い部材32が第2位置にある状態では、補強壁部32Cが許容空間S外に配置されることによって係止部31Jが弾性変形して許容空間Sに進入して収容されることが許容される。覆い部材32は、係止部31Jが被係止部32Dから解離した状態において、第2位置に配置される。
【0041】
次に、相手側コネクタ70のフード部70Aにコネクタ10を挿入する。具体的には、図14に示すように、覆い部材32が第2位置にある状態のコネクタ10の前端をフード部70Aに対向させる姿勢にして、コネクタ10をフード部70Aに挿入する。
【0042】
フード部70Aへコネクタ10の挿入を進めると、係止部31Jは、フード部70Aの山型部70Eに接触し、山型部70Eの後側傾斜面70Gによって右向きに押圧される。これによって、係止部31Jは、左側壁部31Bに近づくように右向きに弾性変形し、許容空間S内に進入する(二点鎖線で示された係止部31J参照)。
【0043】
さらに、フード部70Aへコネクタ10の挿入を進めると、コネクタ10の前端が奥壁部70Bの後面に接触する。これにより、相手側端子(図示せず)が箱部33Aに挿入され、雌端子金具33と相手側端子との導通が図られる。このとき、係止部31Jの後端部は、山型部70Eを前向きに乗り越え、係止部31Jは弾性復帰する(一点鎖線で示された係止部31J参照)。そして、左側傾斜面31Nが前側傾斜面70Fに対向する。こうして、係止部31Jは、山型部70Eによって弾性変形し、弾性復帰して山型部70Eに係止する。
【0044】
次に、収容部材31に対する覆い部材32の位置を第2位置から前向きに移動させて第1位置に変位させる。このとき、係止部31Jの突部31Kの後側傾斜面31Mは、前側傾斜面32Hによって下向きに押圧され、係止部31Jが下向きに弾性変形する(図13参照)。さらに覆い部材32を収容部材31に対して前向きに変位させると、被係止部32Dは、突部31Kを前向きに通過して突部31Kの前方に至る(図13参照)。これによって、下向きに弾性変形した係止部31Jは、弾性復帰する。これによって、被係止部32Dの後側傾斜面32Jは、突部31Kの前側傾斜面31Lに対向する(図13参照)。
【0045】
このとき、図15に示すように、補強壁部32Cは、許容空間S内に配置され、係止部31Jの後端部の右方に配置される。こうして、覆い部材32は、第1位置に配置され、係止部31Jが許容空間Sに進入することが規制される。つまり、コネクタ10がフード部70Aに挿入されると、係止部31Jは、フード部70A内で山型部70Eに係止した状態が補強壁部32Cによって保持され、コネクタ10をフード部70Aに対して抜け止めする。こうして、相手側コネクタ70とコネクタ10との嵌合が完了する。
【0046】
相手側コネクタ70からコネクタ10を離脱させる場合には、収容部材31に対する覆い部材32の位置を第1位置から後向きに移動させて第2位置に変位させ、補強壁部32Cを許容空間Sから離脱させる(図14参照)。そして、コネクタ10をフード部70Aから離脱させる方向(後向き)に変位させる。このとき、係止部31Jの左側傾斜面31Nが山型部70Eの前側傾斜面70Fによって右向きに押圧される(図14参照)。これによって、係止部31Jは、左側壁部31Bに近づく向きに弾性変形し、許容空間S内に進入する(図14参照)。さらに、コネクタ10をフード部70Aから離脱させる方向(後向き)に変位させると、係止部31Jの前端部(基端部)に山型部70Eに至る。すると、係止部31Jは、弾性復帰する。こうして、相手側コネクタ70からコネクタ10を離脱させることができる。
【0047】
次に、本構成の効果を例示する。
コネクタ10は、雌端子金具33を収容する収容部材31と、収容部材31に収容された雌端子金具33を覆う覆い部材32と、を備えている。収容部材31は、係止部31Jを有し、覆い部材32は、係止部31Jが係止する被係止部32Dを有している。係止部31Jは、被係止部32Dによって下方向(所定方向)に弾性変形し、弾性復帰して被係止部32Dに係止する構成である。覆い部材32は、規制部32Gを有している。規制部32Gは、係止部31Jが被係止部32Dによって下方向(所定方向)に弾性変形した状態において、覆い部材32が下方向(所定方向)と反対向きの上方向に収容部材31から離隔することを規制する。この構成によれば、覆い部材32に規制部32Gを設けることによって、係止部31Jが弾性変形したとしても、その反力で覆い部材32が収容部材31から離隔することが規制されるので、覆い部材32が塑性変形することを、部品を増やすことなく防止できる。
【0048】
覆い部材32は、収容部材31に対して第1位置と第2位置との間を変位可能である。係止部31Jは、覆い部材32が第1位置と第2位置との間を変位する間において弾性変形及び弾性復帰する構成である。収容部材31は、規制部32Gが下方向(所定方向)側から係止するガイド部31Rを有している。規制部32Gは、覆い部材32が第1位置と第2位置との間を変位する間において、常にガイド部31Rに係止した状態を維持する。この構成によれば、係止部31Jが弾性変形及び弾性復帰する間、覆い部材32が収容部材31から離隔することを確実に規制することができる。
【0049】
覆い部材32は、収容部材31に対向する平板状をなした板部32Aと、板部32Aに交差する向きに延びる平板状の補強壁部32Cと、を有している。この構成によれば、補強壁部32Cによって板部32Aを補強して板部32Aが撓むことを防止することができる。
【0050】
板部32Aは、板厚方向を上下方向に向けており、補強壁部32Cは、板厚方向を左右方向に向けている。規制部32Gは、補強壁部32Cの前端部の下端に設けられ、被係止部32Dは、板部32Aから下向きに突出し、補強壁部32Cの前端部の上端に連なっている。この構成によれば、被係止部32Dと規制部32Gがともに補強壁部32Cの前端部に設けられており、弾性変形した係止部31Jの反力が付与される被係止部32Dの近傍に規制部32Gが配置されているため、板部32Aが収容部材31から離隔することを効率的に規制することができる。
【0051】
覆い部材32は、板厚方向を左右方向に向けて前後方向に長く延びて板部32Aの右端縁から垂下する第1壁部32Bと、板厚方向を左右方向に向けて前後方向に長く延びて板部32Aの左端縁から垂下する第2壁部32Lと、を有している。前後方向における第2壁部32Lの長さは、第1壁部32Bよりも短い。第1壁部32Bは、収容部材31の右側壁部31Sの前後方向の全体を覆い、右側壁部31Sと係止し、第2壁部32Lは、収容部材31の左側壁部31Bの後側を覆い、左側壁部31Bと係止している。係止部31Jは、前後方向に延びた形態であり、第2壁部32Lの前方に並んで配置され、補強壁部32Cは、第2壁部32Lの前端から前方に延出し、係止部31Jよりも右方に配置されている。この構成によれば、係止部31Jが第2壁部32Lの前方の領域に設けられているため、第2壁部32Lは、収容部材31の左側壁部31Bの前側と係合することができない構成である。しかし、補強壁部32Cが第2壁部32Lの前端から前方に延出し、係止部31Jよりも右方に配置されているので、補強壁部32Cが係止部31Jの右方に隣接するように配置することが可能となり、第2壁部32Lよりも前方の領域において、板部32A(覆い部材32)が収容部材31から離隔しないように補強することができる。
【0052】
<他の実施形態>
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0053】
実施形態1とは異なり、被係止部をフード部の右壁に設け、第2被係止部及び係止部を右側に設けてもよい。
【0054】
実施形態1とは異なり、端子金具としてタブを有する雄端子金具を用いた構成としてもよい。
【0055】
被係止部によって係止部が弾性変形する方向は、下方向に限らず、上方向、左方向、右方向等であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 …コネクタ
31 …収容部材
31A …底壁部
31B …左側壁部
31C …前壁部
31D …隔壁部
31E …収容室
31F …抜止め突起
31G …ロック突起
31H …貫通孔
31J …係止部
31K …突部
31L …前側傾斜面
31M …後側傾斜面
31N …左側傾斜面
31P …右側傾斜面
31Q …指掛け突起
31R …ガイド部
31S …右側壁部
32 …覆い部材
32A …板部
32B …第1壁部
32C …補強壁部
32D …被係止部
32E …係止凹部
32F …傾斜面
32G …規制部
32H …前側傾斜面
32J …後側傾斜面
32K …指掛け突起
32L …第2壁部
33 …雌端子金具(端子金具)
33A …箱部
33B …圧着部
70 …相手側コネクタ
70A …フード部
70B …奥壁部
70C …挿通孔
70E …山型部
70F …前側傾斜面
70G …後側傾斜面
S …許容空間
W …電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15