(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167961
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/184 20060101AFI20241128BHJP
B62D 1/185 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B62D1/184
B62D1/185
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084303
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】渡川 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】堀 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】池山 学
(72)【発明者】
【氏名】真木 周次
(72)【発明者】
【氏名】森 利彦
(72)【発明者】
【氏名】福家 広幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 信幸
(72)【発明者】
【氏名】中野 大扉
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DC16
3D030DC17
3D030DD02
3D030DD17
3D030DD26
3D030DD65
3D030DD79
(57)【要約】
【課題】コラムを高い締付剛性で固定することができるとともに解除状態ではコラムの傾動および軸方向移動をスムーズに行うことが可能なステアリング装置を提供する。
【解決手段】ステアリング装置1は、アッパーコラム3の傾動および軸方向移動の許容および禁止をするチルト・テレスコピック機構部10を備える。チルト・テレスコピック機構部10は、アッパーコラム3の車幅方向両側に配置された一対の側壁部61と、一対の側壁部61を貫通して一対の側壁部61に対して互いに近づける方向に押圧するボルト9と、レバー8と、一対の側壁部61のそれぞれとアッパーコラム3との間に配置され、アッパーコラム3に対して軸中心に向けて車幅方向両側から押圧力を与える付勢部12とを備える。付勢部12は、アッパーコラム3の軸中心よりも上方側の部分を挟んで押圧する一対の上側押圧部21と、アッパーコラム3の下方側の部分を挟んで押圧する一対の下側押圧部22とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びるアッパーシャフトであって、その後端部にステアリングホイールが固定されるアッパーシャフトと、
前記アッパーシャフトを回転自在に支持するアッパーコラムと、
前記アッパーシャフトの前端部に軸方向にスライド自在に連結されたロアーシャフトと、
前記ロアーシャフトを回転自在に支持するとともに、前記アッパーコラムに対して相対的に軸方向に移動可能なロアーコラムと、
車体に固定され、前記ロアーコラムまたは前記アッパーコラムのうちのいずれか一方のコラムである支持側コラムを支持する支持ブラケットと、
前記支持側コラムの上下方向の傾動および軸方向の移動を許容する可動状態と禁止する禁止状態とを切り替えるチルト・テレスコピック機構部とを備え、
前記チルト・テレスコピック機構部は、
前記支持側コラムを車幅方向両側から挟むように前記支持ブラケットに設けられた一対の側壁部であって、上下方向に延びるチルト用長孔が形成された一対の側壁部と、
前記チルト用長孔を通して前記一対の側壁部を貫通し、当該一対の側壁部に対して互いに近づける方向に押圧する締付力を発生させるボルトと、
前記ボルトを回転操作して締結力を変えるボルト操作部と、
前記一対の側壁部のそれぞれと前記支持側コラムとの間に配置され、前記一対の側壁部が前記締付力を受けることにより前記支持側コラムに対して車幅方向両側から押圧力を与える付勢部材と
を含み、
前記付勢部材は、前記支持側コラムの軸中心よりも上方側の部分を車幅方向両側から押圧する少なくとも一対の上側押圧部と、前記支持側コラムの軸中心よりも下方側の部分を車幅方向両側から押圧する少なくとも一対の下側押圧部とを有する、
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1記載のステアリング装置において、
前記ボルト操作部は、前記チルト用長孔に挿通された前記ボルトの締付力を変えるレバーであり、
前記レバーは、前記ボルトに連結された根元側端部と、前記ボルトに対して車両後方側に位置し、外部からの操作力を受ける操作側端部とを有し、
前記一対の上側押圧部および前記一対の下側押圧部は、前記チルト用長孔に対して少なくとも車両後方側に配置されている、
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項2記載のステアリング装置において、
前記一対の上側押圧部および前記一対の下側押圧部は、前記チルト用長孔に対して車両前後方向における前後両側にそれぞれ配置されている、
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のステアリング装置において、
前記一対の側壁部の車幅方向外側にそれぞれ配置され、前記ボルトの締付力を受けて前記一対の側壁部を車幅方向内側に押圧する一対の押圧プレートをさらに備え、
前記一対の押圧プレートは、それぞれ、前記側壁部を挟んで前記上側押圧部および前記下側押圧部に対向する位置において、前記側壁部に向かって突出する凸部を有する、
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のステアリング装置において、
前記支持ブラケットは、前記一対の側壁部の上部同士を連結する連結部をさらに備え、
前記連結部は、前記一対の側壁部が前記ボルトの締結力を受けたときに前記一対の側壁部の上部同士が近づく方向に曲げ変形する曲げ変形部を有する、
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のステアリング装置において、
前記付勢部材は、車両前後方向に延び、車幅方向両側の前記上側押圧部および前記下側押圧部をそれぞれ支持する一対の支持部と、前記一対の支持部の車両前方側端部同士を連結する連結部とをさらに有し、
前記一対の支持部は、前記上側押圧部および前記下側押圧部が前記ボルトの締結力を受けたときに車幅方向内側に曲げ変形可能な構成を有する、
ことを特徴とするステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングシャフトが伸縮および傾動可能なステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、伸縮および傾動が可能なステアリングシャフトを所望の長さおよび角度で固定することが可能な車両用のステアリング装置が種々提案されている。
【0003】
特許文献1記載のステアリング装置は、伸縮可能なステアリングシャフトを回転自在に支持するとともに互いに嵌合した筒状のアッパージャケットおよびロアージャケット(支持コラム)と、当該アッパーおよびロア―ジャケットを車体に傾動自在に支持する一対の側壁部を有する支持ブラケットと、一対の側壁部のそれぞれとアッパーおよびロア―ジャケットとの間に配置され、ボルトの締結力により、当該アッパーおよびロアージャケットを車幅方向両側から押圧するレインフォースブラケットとを備える。
【0004】
レインフォースブラケットは、アッパーおよびロア―ジャケットの下半分を覆う略U字状の板状の部材であり、互いに対向する一対の押圧部を有する。
【0005】
ボルトを締め付けた状態では、ボルトの締結力により、レインフォースブラケットの一対の押圧部の間隔が狭くなり、互いに嵌合するアッパーおよびロアージャケットの下半分を車幅方向外側から内側へ向けて押圧することにより、アッパーおよびロアージャケットを所望の長さおよび角度で固定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のステアリング装置では、ボルトの締結力により間隔が狭められたレインフォースの一対の押圧部は、互いに嵌合するアッパーおよびロアージャケット(支持コラム)の下半分を車幅方向外側から内側へ向けて押圧するが、アッパーおよびロアージャケットの上半分は押圧力を受けていない。そのため、アッパーおよびロアージャケットの固定時の締付剛性を上げることが難しい。
【0008】
また、この構成では、アッパーおよびロアージャケットの下半分のみに強い押圧力を与えてアッパーおよびロアージャケット全体の固定をする必要があるので、ボルトの締結力を上げざるを得ない。そのため、ボルトの締付けを解除する場合に解除完了までに時間がかかるとともに締付力を十分に解除できずにアッパーおよびロアージャケットの傾動および軸方向移動をスムーズに行うことができないおそれがある。
【0009】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、シャフトを支持するコラムを高い締付剛性で固定することができるとともに締付解除状態ではコラムの傾動および軸方向移動をスムーズに行うことが可能なステアリング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のステアリング装置は、車両前後方向に延びるアッパーシャフトであって、その後端部にステアリングホイールが固定されるアッパーシャフトと、前記アッパーシャフトを回転自在に支持するアッパーコラムと、前記アッパーシャフトの前端部に軸方向にスライド自在に連結されたロアーシャフトと、前記ロアーシャフトを回転自在に支持するとともに、前記アッパーコラムに対して相対的に軸方向に移動可能なロアーコラムと、車体に固定され、前記ロアーコラムまたは前記アッパーコラムのうちのいずれか一方のコラムである支持側コラムを支持する支持ブラケットと、前記支持側コラムの上下方向の傾動および軸方向の移動を許容する可動状態と禁止する禁止状態とを切り替えるチルト・テレスコピック機構部とを備え、前記チルト・テレスコピック機構部は、前記支持ブラケットに設けられ、前記支持側コラムを車幅方向両側から挟むように位置する一対の側壁部であって、上下方向に延びるチルト用長孔が形成された一対の側壁部と、前記チルト用長孔を通して前記一対の側壁部を貫通し、当該一対の側壁部に対して互いに近づける方向に押圧する締付力を発生させるボルトと、前記ボルトを回転操作して締結力を変えるボルト操作部と、前記一対の側壁部のそれぞれと前記支持側コラムとの間に配置され、前記一対の側壁部が前記締付力を受けることにより前記支持側コラムに対して車幅方向両側から押圧力を与える付勢部材とを含み、前記付勢部材は、前記支持側コラムの軸中心よりも上方側の部分を車幅方向両側から押圧する少なくとも一対の上側押圧部と、前記支持側コラムの軸中心よりも下方側の部分を車幅方向両側から押圧する少なくとも一対の下側押圧部とを有することを特徴とする。
【0011】
上記のステアリング装置は、アッパーコラムまたはロアーコラムのいずれかが支持側コラムとして支持ブラケットに支持され、チルト・テレスコピック機構により、当該支持側コラムの上下方向の傾動および軸方向の移動を許容する可動状態と禁止される禁止状態が切り替えられる。チルト・テレスコピック機構は、支持ブラケットの一対の側壁部のそれぞれと支持側コラムとの間に配置され、一対の側壁部がボルトの締付力(締結力)を受けることにより支持側コラムに対して車幅方向両側から押圧力を与える付勢部材を備える。
【0012】
付勢部材は、支持側コラムの軸中心よりも上方側の部分を車幅方向両側から押圧する少なくとも一対の上側押圧部と、支持側コラムの軸中心よりも下方側の部分を車幅方向両側から押圧する少なくとも一対の下側押圧部とを有する。
【0013】
したがって、一対の側壁部がボルトの締付力を受けたときには、支持側コラムの軸中心の上下両側の部分は、付勢部材の一対の上側押圧部および一対の下側押圧部によって車幅方向両側から押圧されるので、支持側コラムは軸方向視において軸中心の周囲において周方向に離間した4点で拘束された状態になる。その結果、支持側コラムを一対の側壁部の間に高い締付剛性で固定することが可能である。
【0014】
一方、一対の側壁部は締付力を受けない解除状態では、支持側コラムの軸中心の上下両側の部分は、上記の付勢部材から押圧力を受けない状態になるので、支持側コラムの上下方向の傾動および軸方向の移動をスムーズに行うことが可能である。
【0015】
上記のステアリング装置において、前記ボルト操作部は、前記チルト用長孔に挿通された前記ボルトの締付力を変えるレバーであり、前記レバーは、前記ボルトに連結された根元側端部と、前記ボルトに対して車両後方側に位置し、外部からの操作力を受ける操作側端部とを有し、前記一対の上側押圧部および前記一対の下側押圧部は、前記チルト用長孔に対して少なくとも車両後方側に配置されていることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、付勢部材の一対の上側押圧部および一対の下側押圧部は、一対の側壁部のチルト用長孔に挿通されるボルトの位置よりも少なくとも車両後方側に配置されているので、ボルト操作部であるレバーの根元側端部とボルトとの連結部分は、支持側コラムを固定する上側押圧部および下側押圧部よりも車両前方側へずらすことが可能になる。これにより、レバーの操作側端部の前後方向位置を変えないで、レバーを長くすることが可能である。レバーを長くすることにより、操作側端部に与える操作力を増やさなくてもボルトの締付力を大きくすることが可能になる。その結果、レバーの操作性が向上する。
【0017】
上記のステアリング装置において、前記一対の上側押圧部および前記一対の下側押圧部は、前記チルト用長孔に対して車両前後方向における前後両側にそれぞれ配置されているのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、付勢部材の上側押圧部および下側押圧部は、車幅方向視において、側壁部のチルト用長孔を囲むように、それぞれ前後方向に2か所ずつ配置される。そのため、側壁部がボルトから受けた締付力を車幅方向視においてチルト用長孔を取り囲む前後2か所の上側押圧部および前後2か所の下側押圧部、すなわち、合計4か所の押圧部により、支持側コラムを安定して固定することが可能である。
【0019】
上記のステアリング装置において、前記一対の側壁部の車幅方向外側にそれぞれ配置され、前記ボルトの締付力を受けて前記一対の側壁部を車幅方向内側に押圧する一対の押圧プレートをさらに備え、前記一対の押圧プレートは、それぞれ、前記側壁部を挟んで前記上側押圧部および前記下側押圧部に対向する位置において、前記側壁部に向かって突出する凸部を有するのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、押圧プレートがボルトの締付力を受けたときに、押圧プレートの凸部が側壁部を介して付勢部材の上側押圧部および下側押圧部を押圧することが可能である。これにより、ボルトの締結力を付勢部材の上側押圧部および下側押圧部に効果的に伝達することが可能である。その結果、付勢部材の一対の上側押圧部および一対の下側押圧部によって押圧される支持側コラムを安定して一対の側壁部の間に固定することが可能である。
【0021】
上記のステアリング装置において、前記支持ブラケットは、前記一対の側壁部の上部同士を連結する連結部をさらに備え、前記連結部は、前記一対の側壁部が前記ボルトの締結力を受けたときに前記一対の側壁部の上部同士が近づく方向に曲げ変形する曲げ変形部を有するのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、一対の側壁部の上部同士を連結する連結部が曲げ変形部を有するので、一対の側壁部がボルトの締結力を受けたときに当該曲げ変形部が曲げ変形することにより、一対の側壁部の上部同士を近づけることが可能である。したがって、側壁部と支持側コラムとの間の付勢部材の上側押圧部および下側押圧部へ均等にボルトの締付力を伝達することが可能になる。その結果、付勢部材の一対の上側押圧部および一対の下側押圧部によって押圧される支持側コラムを安定して一対の側壁部の間に固定することが可能である。
【0023】
上記のステアリング装置において、前記付勢部材は、車両前後方向に延び、車幅方向両側の前記上側押圧部および前記下側押圧部をそれぞれ支持する一対の支持部と、前記一対の支持部の車両前方側端部同士を連結する連結部とをさらに有し、前記一対の支持部は、前記上側押圧部および前記下側押圧部が前記ボルトの締結力を受けたときに車幅方向内側に曲げ変形可能な構成を有するのが好ましい。
【0024】
かかる構成によれば、車幅方向両側の上側押圧部および下側押圧部をそれぞれ支持する一対の支持部は、上側押圧部および下側押圧部がボルトの締結力を受けたときに車幅方向内側に曲げ変形可能であるので、付勢部材の一対の上側押圧部および一対の下側押圧部によって押圧される支持側コラムを安定して一対の側壁部の間に固定することが可能である。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明のステアリング装置によれば、シャフトを支持するコラムを高い締付剛性で固定することができるとともに締付解除状態ではコラムの傾動および軸方向移動をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係るステアリング装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図9】
図7のアウターコラムを車両後方側から見た図である。
【
図12】ボルトの前後両側にアッパーコラム付勢部の上方押圧部が配置され、かつ、レバーの操作側端部が上方押圧部よりも車両後方側に配置されている位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係るステアリング装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1~6に示される本実施形態のステアリング装置1は、自動車の車体内部のエンジンルームから車室内へ突出するように車両前後方向Xに沿って配置され、車両の操舵装置として用いられる。
【0029】
このステアリング装置1は、アッパーシャフト2およびロアーシャフト4からなる伸縮自在のステアリングシャフトを伸縮および傾動を許容するとともに所望の長さおよび角度で固定することができる構成を有する。
【0030】
具体的には、ステアリング装置1は、アッパーシャフト2と、アッパーシャフト2を回転自在に支持するアッパーコラム3と、アッパーシャフト2の前端部(車両前方側X1の端部)に軸方向にスライド自在に連結されたロアーシャフト4と、ロアーシャフト4を回転自在に支持するロアーコラム部11(ロアーコラム)およびアッパーコラム付勢部12(付勢部材)を含むアウターコラム5と、アッパーコラム3を支持する支持ブラケット6と、支持ブラケット6の車幅方向Yの両側に配置された一対の押圧プレート7と、支持ブラケット6および一対の押圧プレート7を車幅方向Yの外側から締結するボルト9およびナット14と、ボルト9の頭部側の部分に連結され、ボルト9を回転操作してボルト9の締結力を変えるボルト操作部であるレバー8と、アウターコラム5を上下方向Zに傾動自在に支持するアウターコラム支持ブラケット13とを備える。なお、ナット14は、押圧プレート7の外面に回転できないように固定されているので、車室内の運転者がレバー8を操作することによりボルト9を締めたり緩めたりすることが可能である。また、レバー8は、具体的には、ボルト9に取り付けられたカム18の回転操作による乗り上げと乗り下げによりボルト9の締結力の発生有無を切り替える構成である。
【0031】
支持ブラケット6およびアウターコラム支持ブラケット13は、車体にボルトなどによって固定される。レバー8の操作によりボルト9を緩めて締結力を弱めることにより、上記のアッパーシャフト2、アッパーコラム3、ロアーシャフト4、アウターコラム5、および一対の押圧プレート7がアウターコラム支持ブラケット13の支持軸13aを回転中心として上下方向Zに傾動することが可能である(
図1の傾動方向T参照)。それとともに、アッパーシャフト2およびアッパーコラム3をロアーシャフト4およびアウターコラム5に対して相対的に車両前後方向Xにスライドさせることも可能になる(
図1のスライド方向S参照)。アッパーシャフト2を操作者の希望する角度および前後方向Xの位置へ移動した後、ボルト9を締める操作をすればステアリング装置1を容易に固定状態に戻すことが可能である。
【0032】
以下、ステアリング装置1の各部品の説明をする。
【0033】
アッパーシャフト2は、車両前後方向Xに延びる棒状の部材であり、その後端部(車両後方側X2の端部)にはステアリングホイール(図示せず)が固定される。
【0034】
アッパーコラム3は、アッパーシャフト2を回転自在に支持する円筒状の部材である。アッパーコラム3は、その内部にアッパーシャフト2の前後両側の端部を回転自在に支持する複数のベアリング31(
図1、
図5~6、および
図12参照)を有する。
【0035】
本実施形態では、
図4~5に示されるように、アッパーコラム3の下側部分のうちアッパーコラム付勢部12と車両前後方向Xにおいて重なる範囲には、下方に突出する矩形の突出部3aが形成されている。矩形の突出部3aには、ボルト9が車幅方向Yに貫通している。また、矩形の突出部3aは、アッパーコラム付勢部12の矩形開口12aを通して、下方側に露出している。矩形開口12aは、矩形の突出部3aよりも前後方向Xの幅が広いので、アッパーコラム付勢部12がアッパーコラム3の前後方向Xの移動を妨げない。
【0036】
ロアーシャフト4は、アッパーシャフト2の前端部(車両前方側X1の端部)に軸方向にスライド自在に連結されている棒状の部材である。さらに詳しく言えば、ロアーシャフト4は、アッパーシャフト2に対して軸方向へのスライドは許容されたテレスコピック構造(
図12参照)であるが、アッパーシャフト2と一体になって回転することが可能に連結(スプライン結合などによって連結)されている。
【0037】
図7~9に示されるように、アウターコラム5は、ロアーシャフト4を回転自在に支持するロアーコラム部11(ロアーコラム)と、アッパーコラム付勢部12(付勢部材)とを含む部材である。言い換えれば、本実施形態では、ロアーコラム部11(ロアーコラム)およびアッパーコラム付勢部12(付勢部材)が合体することにより、アウターコラム5が構成されている。
【0038】
ロアーコラム部11は、ロアーシャフト4を回転自在に支持するとともに、アッパーコラム3に対して相対的に軸方向(車両前後方向X)に移動可能な部分である。本実施形態では、ロアーコラム部11だけでなくロアーコラム部11を含むアウターコラム5全体がアッパーコラム3に対して相対的に軸方向(車両前後方向X)に移動可能である。
【0039】
ロアーコラム部11は、円筒状の本体の内部にロアーシャフト4の車両前方側X1の端部を回転自在に支持するベアリング32(
図1参照)を有する。
【0040】
アッパーコラム付勢部12は、後述する支持ブラケット6の一対の側壁部61(
図3、
図5~6、
図10~11参照)のそれぞれとアッパーコラム3との間に配置され、一対の側壁部61がボルト9の締付力を受けることによりアッパーコラム3に対して当該アッパーコラム3の軸中心Oに向けて車幅方向Y両側から押圧力を与える付勢部材に対応する部分である。
【0041】
図6~9に示されるように、アッパーコラム付勢部12は、アッパーコラム3の軸中心Oよりも上方側の部分を車幅方向Y両側から挟んで当該軸中心O側へ押圧する少なくとも一対(本実施形態では前後二対)の上側押圧部21と、アッパーコラム3の軸中心Oよりも下方側の部分を車幅方向Y両側から挟んで当該軸中心O側へ押圧する少なくとも一対(本実施形態では前後二対)の下側押圧部22と、車幅方向Yの両側の上側押圧部21および下側押圧部22をそれぞれ支持する一対の側壁部25と有する。
【0042】
側壁部25には、後述する支持ブラケット6の側壁部61に形成されたチルト用長孔63(
図7、
図10~11参照)に重なり合う位置において、ボルト9が挿入されるボルト挿通孔26が形成されている。
【0043】
本実施形態では、一対の上側押圧部21および一対の下側押圧部22は、チルト用長孔63に対して少なくとも車両後方側X2に配置されている。
【0044】
さらに、詳しく言えば、本実施形態では、一対の上側押圧部21および一対の下側押圧部22は、チルト用長孔63に対して車両前後方向Xにおける前後両側にそれぞれ配置されている。
【0045】
上側押圧部21および下側押圧部22は、側壁部25の車幅方向Yの内側(一対の側壁部25が対向する側)に配置されている。本実施形態では、上側押圧部21および下側押圧部22は、側壁部25と一体に形成され、具体的には、側壁部25の上下両端部から車幅方向Yの内側に折り返されたように延びる板状の部分によって構成されている。
【0046】
側壁部25の車幅方向Yの外側の面には、上側押圧部21および下側押圧部22に対して車幅方向Yの外側(裏側)に対応する位置において、当該外側の面から車幅方向外側に突出する上側凸部23および下側凸部24が形成されている。
【0047】
本実施形態では、アッパーコラム付勢部12は、一対の側壁部25の前端部(車両前方側X1の端部)から車両前方側X1へ向かって車両前後方向Xに延びる一対の支持部15と、一対の支持部15と、一対の支持部15の車両前方側X1の端部同士を連結する連結部16とをさらに有する。
【0048】
一対の支持部15は、一対の側壁部25を介して車幅方向Y両側の上側押圧部21および下側押圧部22をそれぞれ支持する。一対の支持部15は、上側押圧部21および下側押圧部22が側壁部25を介してボルト9の締結力を受けたときに車幅方向Y内側に曲げ変形可能な構成を有する。具体的には、
図7に示されるように、支持部15は、車幅方向Yに曲げ変形可能な板状の部分であり、支持部15の車両前方側X1の端部が連結部16に固定された片持ち梁の形態になっている。支持部15の車両後方側X2の端部は側壁部25を介して上側押圧部21および下側押圧部22に連結されている。ボルト挿通孔26に挿通されたボルト9の締結力が一対の側壁部25に入力されることにより、上側押圧部21および下側押圧部22に伝達されるとともに板状の一対の支持部15を車幅方向Y内側に曲げ変形することが可能である。
【0049】
本実施形態の連結部16は、ロアーコラム部11の車幅方向Y両側に配置され、一対の支持部15の車両前方側X1の端部にそれぞれ連結された一対の側壁部16aと、ロアーコラム部11の下方を車幅方向Yに延び、一対の側壁部16aの下端同士を連結する底壁部16bとを有する。さらに、連結部16は、一対の側壁部16aのそれぞれとロアーコラム部11を連結する一対のコラム連結部16cとを有する。
【0050】
本実施形態のアウターコラム5は、上記の連結部16の一対の側壁部16aの前端部からさらに車両前方側X1に延びる板状の一対の腕部17を備える。一対の腕部17の車両前方側X1の端部には、軸孔17aが形成されている。軸孔17aには、
図1および
図3に示されるアウターコラム支持ブラケット13の支持軸13aが回転自在に支持される。これにより、アウターコラム5は、支持軸13aを回転中心として上下方向Zに傾動可能にアウターコラム支持ブラケット13に支持されている(
図1の傾動方向T参照)。
【0051】
支持ブラケット6は、車体に固定され、ロアーコラム部11またはアッパーコラム3のうちのいずれか一方のコラムである支持側コラム、本実施形態ではアッパーコラム3を支持する部材である。
【0052】
支持ブラケット6は、具体的には、
図10~11に示されるように、アッパーコラム3を車幅方向Y両側から挟むように位置する一対の側壁部61であって、上下方向Zに延びるチルト用長孔63が形成された一対の側壁部61と、一対の側壁部61の上部同士を連結する連結部62と、車体に連結する複数(
図10では4か所)の車体連結部64とを有する。
【0053】
連結部62は、一対の側壁部61がボルト9の締結力を受けたときに一対の側壁部61の上部同士が近づく方向に曲げ変形する曲げ変形部62aを有する。
図10に示される曲げ変形部62aは、車幅方向Yに延びる帯板状の連結部62の車幅方向Yの中間部を下方に凹ませることによって当該連結部62を上下方向Zに曲げやすくした部分である。すなわち、
図10に示される曲げ変形部62aを有する連結部62は、車両前後方向Xから見てM字形状になっている。連結部62が曲げ変形部62aを有することにより、一対の側壁部61がボルト9の締結力を受けたときに曲げ変形部62aが変形することにより一対の側壁部61の上部同士が近づく方向に容易に変位することが可能である。
【0054】
図1~6に示されるように、一対の押圧プレート7は、支持ブラケット6の一対の側壁部61の車幅方向Y外側にそれぞれ配置される。一対の押圧プレート7は、ボルト9の締付力を受けて一対の側壁部61を車幅方向Y内側に押圧する。
【0055】
一対の押圧プレート7は、それぞれ、ボルト9が挿通される挿通孔7aを有する。また、一対の押圧プレート7は、それぞれ、側壁部61を挟んで上側押圧部21および下側押圧部22に対向する位置において、側壁部61に向かって突出する少なくとも1つの上側凸部7bおよび少なくとも1つの下側凸部7cを有する。本実施形態では、前後一対の上側押圧部21および下側押圧部22に対応するように、
図3に示されるように、挿通孔7aの前後両側において、それぞれ上側凸部7bおよび下側凸部7cが配置されている。
【0056】
図5に示されるように、ボルト9は、車幅方向Y左側から一対の押圧プレート7の挿通孔7a、支持ブラケット6の一対の側壁部61のチルト用長孔63、アッパーコラム付勢部12の一対の側壁部25のボルト挿通孔26を貫通するとともに、アッパーコラム3の突出部3aを貫通する。これにより、1本のボルト9により、一対の押圧プレート7、支持ブラケット6、アッパーコラム付勢部12、およびアッパーコラム3を連結することが可能である。
【0057】
レバー8は、
図1に示されるように、ボルト9に連結された根元側端部8bと、ボルト9に対して車両後方側X2に位置し、外部からの操作力を受ける操作側端部8aとを有する。レバー8の操作側端部8aに上下方向Zに操作力を与えることにより、根元側端部8bに連結されるとともにチルト用長孔63に挿通されたボルト9に締付力を与えたりボルト9を緩めたりすることが可能である。
【0058】
(本実施形態の特徴)
(1)
上記のように構成された本実施形態のステアリング装置1は、言い換えれば、アッパーコラム3の上下方向Zの傾動および軸方向(車両前後方向X)の移動を許容する可動状態と禁止する禁止状態とを切り替えることが可能なチルト・テレスコピック機構部10を有する。具体的には、チルト・テレスコピック機構部10は、上記の支持ブラケット6における一対の側壁部61と、上記のチルト用長孔63を通して一対の側壁部61を貫通し、当該一対の側壁部61に対して互いに近づける方向に押圧する締付力を発生させるボルト9と、ボルト9を回転操作してボルト9の締結力を変えるボルト操作部であるレバー8と、上記の一対の側壁部61のそれぞれとアッパーコラム3との間に配置され、一対の側壁部61が締付力を受けることによりアッパーコラム3に対して当該アッパーコラム3の軸中心Oに向けて車幅方向Y両側から押圧力を与える付勢部材に対応するアッパーコラム付勢部12(付勢部材)とを含む。
【0059】
レバー8の操作側端部8aに上下方向Zの操作力を与えることにより、ボルト9の締結力を強めたり弱めたりすることが可能である。それにより、チルト・テレスコピック機構部10の機能、すなわち、アッパーコラム3の上下方向Zの傾動および軸方向(車両前後方向X)の移動を許容する可動状態と禁止する禁止状態とを切り替える機能を奏することが可能である。
【0060】
アッパーコラム付勢部12は、
図6~7に示されるように、アッパーコラム3の軸中心Oよりも上方側の部分を車幅方向Y両側から挟んで当該軸中心O側へ押圧する少なくとも一対(本実施形態では前後二対)の上側押圧部21と、アッパーコラム3の軸中心Oよりも下方側の部分を車幅方向Y両側から挟んで当該軸中心O側へ押圧する少なくとも一対(本実施形態では前後二対)の下側押圧部22とを有する。
【0061】
したがって、一対の側壁部61がボルト9の締付力を受けたときには、アッパーコラム3の軸中心Oの上下両側の部分は、アッパーコラム付勢部12の一対の上側押圧部21および一対の下側押圧部22によって車幅方向Y両側から押圧されるので、アッパーコラム3は軸方向(車両前後方向X)視において軸中心Oの周囲において周方向に離間した4点で拘束された状態になる。その結果、アッパーコラム3を一対の側壁部61の間に高い締付剛性で固定することが可能である。
【0062】
一方、一対の側壁部61は締付力を受けない解除状態では、アッパーコラム3の軸中心Oの上下両側の部分は、上記のアッパーコラム付勢部12から押圧力を受けない状態になるので、アッパーコラム3の上下方向Zの傾動および軸方向(車両前後方向X)の移動をスムーズに行うことが可能である。
【0063】
(2)
本実施形態のステアリング装置1は、ボルト操作部は、チルト用長孔63に挿通されたボルト9の締付力を変えるレバー8である。レバー8は、
図1に示されるように、ボルト9に連結された根元側端部8bと、ボルト9に対して車両後方側X2に位置し、外部からの操作力を受ける操作側端部8aとを有する。一対の上側押圧部21および一対の下側押圧部22は、チルト用長孔63に対して少なくとも車両後方側X2に配置されている。(なお、本実施形態では、一対の上側押圧部21および一対の下側押圧部22は、チルト用長孔63に対して前後両側それぞれ配置されている。)
【0064】
かかる構成によれば、アッパーコラム付勢部12の一対の上側押圧部21および一対の下側押圧部22は、一対の側壁部61のチルト用長孔63に挿通されるボルト9の位置よりも少なくとも車両後方側X2に配置されている。このため、レバー8の根元側端部8bとボルト9との連結部分は、アッパーコラム3を固定する上側押圧部21および下側押圧部22よりも車両前方側X1へずらすことが可能になる。これにより、レバー8の操作側端部8aの前後方向X位置を変えないで、レバー8を長くすることが可能である。レバー8を長くすることにより、操作側端部8aに与える操作力を増やさなくてもボルト9の締付力を大きくすることが可能になる。その結果、レバー8の操作性が向上する。
【0065】
例えば、
図12に示される簡略化されたモデルを用いて、レバー8、ボルト9,および前後一対の上側押圧部21の位置関係について考える。アッパーコラム付勢部12がボルト9の締結力を受ける部分は、支持ブラケット6の側壁部61と接する上側凸部23である。ボルト9の軸中心Cの位置を基準に考えた場合、上側凸部23とボルト9の軸中心Cの位置までの長さをL1とする。つぎに、アッパーコラム付勢部12がアッパーコラム3に締結力を与える部分は、上側押圧部21である。上側押圧部21とボルト9の軸中心Cの位置までの長さをL2とする。一方、ボルト9に締結力を与えるために外部から操作力を受ける部分は、レバー8の操作側端部8aである。操作側端部8aとボルト9の軸中心Cの位置までの長さをL3とする。
【0066】
図12に示されるように、2つの上側押圧部21のうち右側の上側押圧部21は、ボルト9の位置よりも車両後方側X2(右側)に配置されている。この
図12の位置関係であれば、操作側端部8aと軸中心C間の長さL3を、上側凸部23と軸中心C間の長さL1および上側押圧部21と軸中心C間の長さL2のいずれの長さよりも大きく設定することが可能である。そのため、レバー8の根元側端部8bとボルト9との連結部分は、アッパーコラム3を固定する当該右側の上側押圧部21よりも車両前方側X1へずらすことが可能になる。これにより、レバー8の操作側端部8aの前後方向X位置を変えないで、レバー8を長くすることが可能である。
【0067】
(3)
本実施形態のステアリング装置1では、一対の上側押圧部21および一対の下側押圧部22は、
図7に示されるように、チルト用長孔63に対して車両前後方向Xにおける前後両側にそれぞれ配置されている。
【0068】
かかる構成によれば、アッパーコラム付勢部12の上側押圧部21および下側押圧部22は、車幅方向Y視において、側壁部61のチルト用長孔63を囲むように、それぞれ前後方向Xに2か所ずつ配置される。そのため、側壁部61がボルト9から受けた締付力を車幅方向視において(車幅方向Yから見て)チルト用長孔63を取り囲む前後2か所の上側押圧部21および前後2か所の下側押圧部22、すなわち、合計4か所の押圧部により、アッパーコラム3を安定して固定することが可能である。
【0069】
(4)
本実施形態のステアリング装置1は、
図1~6に示されるように、一対の側壁部61の車幅方向Y外側にそれぞれ配置され、ボルト9の締付力を受けて一対の側壁部61を車幅方向Y内側に押圧する一対の押圧プレート7を備える。一対の押圧プレート7は、それぞれ、側壁部61を挟んで上側押圧部21および下側押圧部22に対向する位置において、側壁部61に向かって突出する上側凸部7bおよび下側凸部7cを有する。
【0070】
かかる構成によれば、押圧プレート7がボルト9の締付力を受けたときに、押圧プレート7の上側凸部7bおよび下側凸部7cが側壁部61を介してアッパーコラム付勢部12の上側押圧部21および下側押圧部22を押圧することが可能である。これにより、ボルト9の締結力をアッパーコラム付勢部12の上側押圧部21および下側押圧部22に効果的に伝達することが可能である。その結果、アッパーコラム付勢部12の一対の上側押圧部21および一対の下側押圧部22によって押圧されるアッパーコラム3を安定して一対の側壁部61の間に固定することが可能である。
【0071】
(5)
また、本実施形態では、アッパーコラム付勢部12の側壁部25の車幅方向Yの外側の面には、上側押圧部21および下側押圧部22に対して車幅方向Yの外側(裏側)に対応する位置において、当該外側の面から車幅方向外側に突出する上側凸部23および下側凸部24が形成されている。したがって、押圧プレート7がボルト9の締結力を受けた状態では、押圧プレート7の上側凸部7bおよび下側凸部7cは、アッパーコラム付勢部12の車幅方向外側に突出する上側凸部23および下側凸部24をピンポイントで押圧し、上側凸部23および下側凸部24からこれらの車幅方向内側に位置する上側押圧部21および下側押圧部22へ効果的に押圧力を伝達することが可能になる。このため、レバー8に与える操作力を高くしなくても、アッパーコラム付勢部12の上側押圧部21および下側押圧部22によって、アッパーコラム3を効果的に押圧しながら固定することが可能である。
【0072】
(6)
本実施形態のステアリング装置1では、支持ブラケット6は、一対の側壁部61の上部同士を連結する連結部62を備える。連結部62は、一対の側壁部61がボルト9の締結力を受けたときに一対の側壁部61の上部同士が近づく方向に曲げ変形する曲げ変形部62aを有する。
【0073】
かかる構成によれば、一対の側壁部61の上部同士を連結する連結部62が曲げ変形部62aを有するので、一対の側壁部61がボルト9の締結力を受けたときに当該曲げ変形部62aが曲げ変形することにより、一対の側壁部61の上部同士を近づけることが可能である。したがって、側壁部61とアッパーコラム3との間のアッパーコラム付勢部12の上側押圧部21および下側押圧部22へ均等にボルト9の締付力を伝達することが可能になる。その結果、アッパーコラム付勢部12の一対の上側押圧部21および一対の下側押圧部22によって押圧されるアッパーコラム3を安定して一対の側壁部61の間に固定することが可能である。
【0074】
(7)
本実施形態のステアリング装置1では、アッパーコラム付勢部12は、車両前後方向Xに延び、車幅方向Y両側の上側押圧部21および下側押圧部22それぞれ支持する一対の支持部15と、一対の支持部15の車両前方側X1端部同士を連結する連結部16とをさらに有する。一対の支持部15は、上側押圧部21および下側押圧部22がボルト9の締結力を受けたときに車幅方向Y内側に曲げ変形可能な構成(例えば、車幅方向Yに曲げ変形可能なM字状の板状部材からなる構成)を有する。
【0075】
かかる構成によれば、車幅方向Y両側の上側押圧部21および下側押圧部22それぞれ支持する一対の支持部15は、上側押圧部21および下側押圧部22がボルト9の締結力を受けたときに車幅方向Y内側に曲げ変形可能であるので、アッパーコラム付勢部12の一対の上側押圧部21および一対の下側押圧部22によって押圧されるアッパーコラム3を安定して一対の側壁部61の間に固定することが可能である。
【0076】
(変形例)
(A)
上記の実施形態では、ロアーシャフト4を回転自在に支持するロアーコラム部11およびアッパーコラム3を押圧付勢するアッパーコラム付勢部12がアウターコラム5に含まれているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ロアーコラム部11およびアッパーコラム付勢部12をそれぞれ単体の部品にしてもよい。すなわち、ロアーコラム部11を円筒状の単体の部品であるロアーコラムとしてもよく、アッパーコラム付勢部12を少なくとも一対の上側押圧部21および少なくとも一対の下側押圧部22を備えた単体の部品としてもよい。
【0077】
(B)
上記の実施形態のステアリング装置1では、アッパーコラム3を支持する構成、すなわち、支持ブラケット6がアッパーコラム3を支持し、かつ、アッパーコラム付勢部12がアッパーコラム3の軸中心Oよりも上方側の部分を車幅方向Y両側から押圧する少なくとも一対の上側押圧部21と、軸中心Oよりも下方側の部分を車幅方向Y両側から押圧する少なくとも一対の下側押圧部22とを有する構成が示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0078】
本発明では、支持ブラケットがロアーコラムまたはアッパーコラムのうちのいずれか一方のコラムである支持側コラムを支持し、かつ、付勢部材は、支持側コラムの軸中心よりも上方側の部分を車幅方向両側から押圧する少なくとも一対の上側押圧部と、軸中心よりも下方側の部分を車幅方向両側から押圧する少なくとも一対の下側押圧部とを有する構成であればよい。
【0079】
したがって、支持ブラケットがロアーコラムを支持し、かつ、付勢部材の少なくとも一対の上側押圧部および少なくとも一対の下側押圧部がロアーコラムの上方側部分および下方側部分を挟んで軸中心側へ押圧する構成も本発明の範囲に含まれる。
【0080】
(C)
上記の実施形態では、ボルト9を回転操作してボルト9の締結力を変えるボルト操作部の例としてレバー8が用いられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ボルト9を回転操作してボルト9の締結力を変えることが可能な構成を有していれば、本発明のボルト操作部に含まれる。例えば、ボルトを回転操作可能な電動アクチュエータなどもボルト操作部に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 ステアリング装置
2 アッパーシャフト
3 アッパーコラム
4 ロアーシャフト
5 アウターコラム
6 支持ブラケット
7 押圧プレート
7b 上側凸部
7c 下側凸部
8 レバー
8a 操作側端部
8b 根元側端部
9 ボルト
10 チルト・テレスコ機構部
11 ロアーコラム部(ロアーコラム)
12 アッパーコラム付勢部(付勢部材)
14 ナット
21 上側押圧部
22 下側押圧部
61 側壁部
62 連結部
63 チルト用長孔