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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167965
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】液体収容容器及び液体補充システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B41J2/175 141
B41J2/175 131
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084308
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】北瀬 雄士
(72)【発明者】
【氏名】布施 能登
(72)【発明者】
【氏名】井上 良二
(72)【発明者】
【氏名】小原 学
(72)【発明者】
【氏名】永井 議靖
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FA10
2C056KC01
2C056KC09
2C056KC17
(57)【要約】
【課題】 ユーザーの利便性を向上できる液体収容容器及び液体補充システムの提供を目的とする
【解決手段】 液体を収容するための収容部と、前記収容部に収容された液体を外部に注出するための注出口を有する注出部と、前記注出部の前記注出口を覆うように構成された保護部と、を有する液体収容容器であって、前記保護部は、前記注出口の上方に位置する開口部を有し、前記開口部の直径をD、前記注出口本体の注出口と前記開口部の鉛直方向の距離をLとしたときに、式(1)の関係を満足することを特徴とする液体収容容器。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容するための収容部と、
前記収容部に収容された液体を外部に注出するための注出口を有する注出部と、
前記注出部の前記注出口を覆うように構成された保護部と、
を有する液体収容容器であって、
前記保護部は、前記注出口の上方に位置する開口部を有し、
前記開口部の直径をD、前記注出口本体の注出口と前記開口部の鉛直方向の距離をLとしたときに、式(1)の関係を満足することを特徴とする液体収容容器。
【数1】
【請求項2】
前記保護部材の側面に開口部を備えている請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
前記Lが式(4)の関係を満足する請求項1に記載の液体収容容器。
【数2】
【請求項4】
前記Lが10未満である請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項5】
前記Lが6未満である請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項6】
前記液体が、インクである請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項7】
液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給するための液体を収容するように構成されており、外部から液体の注入を受けるように構成された注入部を有する液体タンクと、を有する画像記録装置と、
前記注入部から前記液体タンクに液体を供給するための液体収容容器と、
を有する液体補充システムであって、
前記液体収容容器が、請求項1乃至6の何れか1項に記載の液体収容容器であることを特徴とする液体補充システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容容器及び液体補充システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドを有するインクジェット記録装置のような液体吐出装置(画像記録装置)で使用される液体を内部に貯留する液体タンクに対し、液体を補充できる液体容器がある。例えば、液体収容容器には液体を注入するための注出口を備え、液体吐出装置内の液体タンクには内部と外部を連通される流路を有して延びる針を備え、針を注入口に挿入するようにして液体を補給することができる。この種の液体収容容器においては、利用者の手及び周囲を汚すことを防ぐため、注出口先端にスリットの入ったバルブを設けることで、液体の漏れ止めることが行われており、針が注出口に挿入されることでバルブが開弁し液体補給を行う(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1においては、液体収容容器から液体タンクへの液体補充時において、バルブが液体タンクに対し位置決めされた状態で開弁されるため、バルブ開弁時の液体漏れ等の不具合を抑制していることが記載されている。
【0004】
また、上記液体収容容器の位置決め部を注出口形成部とは異なる部材とすることで、位置決め部と注出口部の設計自由度を向上させ、注出口部から放射状に広がる領域に針と同じ方向に開口する凹部を有し、液体収容容器の位置決め部には注出口を中心とする放射方向で注出口の外側領域に、前記凹部と係合する凸部を設けた構成についても開示されている。この構成では、液体タンクの凹部形状と液体収容容器の凸部形状が嵌合しない場合は、注出口に針が挿入されずインクが補給されないので、不適切な液体補充は防止される。さらには、注出口形成部材やバルブ部材は液体の種類によらず同一部品を使用し、注出口形成部材よりサイズの小さい位置決め部材だけを液体の種類に応じて適宜変更することで製造過程での在庫やスペースの削減に利する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-222152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された構成では、液体補充時にバルブと針との間にどうしても微小な空間が発生し、その領域に液体が保持される。この状態で液体収容容器を脱離させると微小な空間内の液体が液体収容容器の注出口付近に付着したままとなる場合がある。このような場合で液体収容容器の注出口を閉鎖するための蓋部材を液体収容容器に装着する際に、誤って注出口付近を指で接触すると指に液体が接触しさらには衣類や机等を汚す場合がある。また、液体収容容器を立たせた状態で注出口付近に付着した液滴が注出口の外側領域に垂れると、液体収容容器の側面側にも液体が達する場合がある。したがって、ユーザーの利便性を考えると、誤って注出口付近を触らないで済むような機構が求められる。
【0007】
本発明は、ユーザーの利便性を向上できる液体収容容器及び液体補充システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体を収容するための収容部と、前記収容部に収容された液体を外部に注出するための注出口を有する注出部と、前記注出部の前記注出口を覆うように構成された保護部と、を有する液体収容容器であって、前記保護部は、前記注出口の上方に位置する開口部を有し、前記開口部の直径をD、前記注出口本体の注出口と前記開口部の鉛直方向の距離をLとしたときに、式(1)の関係を満足することを特徴とする。
【0009】
【数1】
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザーの利便性を向上できる液体収容容器及び液体補充システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】液体吐出装置の外観を示す斜視図である。
図2】液体吐出装置の内部構成を示す斜視図である。
図3】液体吐出装置における液体タンクが収容された部分の拡大斜視図と平面図と断面図である。
図4】液体収容容器の外観を示す斜視図である。
図5】液体収容容器の正面図、側面図、上面図、断面図である。
図6】人間の指形状と、指及びカバー、注出口の位置関係を表す概要図である。
図7】液体収容容器のカバー部品の詳細を説明する図である。
図8】液体収容容器から液体タンクへ液体を補給している状態の斜視図と断面図である。
図9】液体収容容器から液体タンクへ液体を補給している状態の概要図である。
図10】液体収容容器の取り回しが安易な構成のLを規定するグラフである。
図11】液体吐出装置が比較的小型な構成のLを規定するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。尚、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。また、実施形態に記載されている構成要素の相対配置、形状などは、あくまで例示である。
【0013】
図1は、本実施形態の液体吐出装置1の外観を示す斜視図である。図1に示す液体吐出装置1は、シリアル型のインクジェット記録装置である。図1に示す液体吐出装置1は、左右方向を長手とする直方体形状の筐体11と、筐体11の内部に配置された液体タンク12とを備える。液体タンク12は、記録媒体(不図示)に吐出される液体であるインクを収容する。
【0014】
図2は、図1に示した液体吐出装置1の内部構成を示す斜視図である。図2において液体吐出装置1は、記録媒体(不図示)を搬送するための搬送ローラ(付図示)と、液体を吐出する記録ヘッド14が下面に設けられたキャリッジ15と、キャリッジ15を駆動するためのキャリッジモータ16とを備える。キャリッジ15はキャリッジモータ16により左右方向に往復自在に移動可能である。記録媒体は、記録ヘッド14から吐出されたインクによって画像が形成されるものであれば、特に限定されない。例えば、記録媒体としては、紙、布、光ディスクラベル面、プラスチックシート、またはOHPシートなどが挙げられる。
【0015】
インクは、液体タンク12に収容されており、液体流通路17を介して記録ヘッド14に供給され、記録ヘッド14から吐出される。本実施形態では、4色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック)のインクが使用され、液体タンク12として、各色のインクを収容する4つの色別の液体タンク12a~12dが設けられている。以下、個々の液体タンクを識別して言及する場合、液体タンク12a~12dなどを末尾にアルファベットを付し、任意の液体タンクを言及する場合、液体タンク12と称するものとする。色別の液体タンク12a~12dのそれぞれは、筐体11の内部における液体吐出装置1の前面部に配置されている。
【0016】
図3(a)は、図1に示した液体吐出装置1の液体タンク12b~12dが収容された部分の拡大斜視図の一例であり、図3(b)は、図3(a)で示した斜視図の平面図である。さらに、図3(c)は図3(a)におけるX-X断面図である。液体タンク12は、液体を収容するための液体タンク本体121と、液体タンク本体121内の液体収容室に連通する連通流路122とを有する。また、液体補充時以外に連通流路122を覆い、液体タンク本体121の収容室を密閉するために装着可能なタンクカバー123を有する。図3(a)においては液体タンク12dのみタンクカバー123dが解放された状態である。液体を液体タンク12に補充する場合には、液体収容容器2(図4参照)の注出口を連通流路122に挿入し、液体を注入する。液体補充時以外はタンクカバー123で液体収容室を密閉することで、液体タンク12内部の液体の蒸発を抑制することができる。連通流路122は、内部に鉛直方向に並列に延びる2つの流路122aと122bを備えており、気液交換によって液体収容容器2内の液体が液体タンクに注入される仕組みとなっている。液体吐出装置1において、液体収容容器2の注出口を挿入する部分にはソケット18が設けられている。ソケット18には内周壁から内側に突出する凸部19が設けられている。ソケット18は、液体タンク12ごとに設けられており、凸部19の形状は、液体容器の入れ間違い抑制の為にソケット18ごとに異なっている。凸部19は、連通流路122の中心軸に対して、180°の回転対称に存在している。
【0017】
図4(a)及び(b)は、液体タンク12に液体を補充する液体容器である液体収容容器2の外観を示す斜視図である。図4(a)における液体収容容器2は、液体を収容する収容部(本体部)であるボトル21と、ボトル21と接続されたノズル22と、ノズル22に着脱可能なキャップ23とを有する。キャップ23は、ノズル22に装着されることで、液体収容容器2(具体的には、ボトル21)の内部を外気から遮蔽する蓋部である。ノズル22は、ボトル21に収容された液体を注出する際の出口としての機能を有する注出口部材である。
【0018】
図4(b)に液体収容容器2よりキャップ23を取り外した状態の外観の斜視図を示す。キャップ23を取り外すことによってノズル22に形成された注出口29が開放され、カバー28はノズル22に接合され、注出口29を覆うように構成される。ノズル22には外周面に雄ネジ部22aが構成されており、キャップ23の内面に構成された雌ネジ部(付図示)により、ノズル22とキャップ23が螺合させることでキャップ23は注出口29と接合し、注出口29の周囲を密閉する。カバー28には液体吐出装置1におけるソケット18の凸部19の形状に対応した凹部28aを有し、ソケット18と同様にインク種類に応じて形状が異なっている。ボトル21とノズル22とを接続する方法は、可撓性の部品を挟んでシールする方法、または、ボトル21とノズル22とを共に樹脂部品とし、二部品を溶着する方法などがある。ボトル21及びノズル22は、一体の部品であってもよい。
【0019】
図5(a)は、図4(b)に示すキャップ23を外した状態の液体収容容器2のY方向から見た平面図であり、図5(b)はX方向から見た平面図であり、図5(c)はZ方向から見た上面図である。さらに図5(d)は図5(b)の縦断面図を示す。ボトル21に接合されたノズル22は先端部に注出口29を備え、注出口29の全周を覆うようにカバー28がノズル22に接合されている。即ち、注出口とカバー(保護部)とが別体形成されており、両者が溶着によって、全周に亘って接合されているが、両者を一体形成していても本発明の範囲に含むものとする。
【0020】
液体吐出装置1へのインク補給動作後には、注入口29の内部や周囲にインクが付着する場合がある。注入口29付近にインクが付着しているとキャップ閉鎖動作時やキャップ23を閉鎖する前に誤って液体収容容器2を倒してしまう場合などに、ユーザーの指にインクが付着する場合や、机等をインクで汚す場合がある。しかしながら、本構成において、注出口29はカバー28により覆われているため、ユーザーが不意に注出口29を触ってしまうことを防止し、さらにはインク飛散も抑制することができる。
【0021】
カバー28の開口部30は、注出口29より常に鉛直上方に配置され、ユーザーの指が注出口29に到達しづらい構成となっている。さらに、ユーザーが人差し指で開口部30を触れた際に、開口部30からカバー28内に入り込んだ指の下端が注出口29に到達しないように、カバー28の寸法が調整されている。その調整条件の規定方法を以下で述べる。
【0022】
図6(a)は、人間の人差し指の平面図であり、図に示されているように指の幅a及び指の厚みbを規定する。人間の指の形状に関して、最も開口部30内に入り込みやすい形状を想定するために、aを長軸、bを短軸とする楕円の柱として扱う。特に日本人のデータに基づくと、日本人の約95%で、aは13以上17以下であり(13≦a≦17)、bは11以上15以下である(11≦b≦15)。
【0023】
ここで、a及びbが最小となる時(下限値の場合)に最も指が開口部30内に入りこみやすいと考えられるため、aが13及びbが11である楕円の柱を指の形状を検討する。図6(b)は、ユーザーの指が開口部30に触れた際の、指及び開口部30、注出口29の位置関係を示す断面図であり、上記の楕円柱が開口部30上に配置された状態を示している。開口部30と注出口29の鉛直方向の距離Lが、開口部30と開口部30から28内に入り込んだ楕円柱の下端の鉛直方向の距離よりも大きくなれば、楕円柱の下端が注出口に到達しないことになる。つまり、開口部の直径をDとした時、開口部30からカバー28内に入り込んだ指の下端が注出口29に到達しない条件は、以下の式(1)であらわされる。
【0024】
【数2】
【0025】
図6(c)は、式(1)で表される範囲を示すグラフであり、カバー28の構成がこの範囲内であれば、Dで示される開口部30の直径が大きくなっても、Lで示される注出口29と開口部30の間の鉛直方向の距離が十分に確保されるため、指の下端が注出口に到達することがなくなる。また、指の幅よりも小さい直径の開口部30に規定されるため、開口部30に対して鉛直方向に指が侵入することも防ぐことができる。
【0026】
カバー28には注出口29を中心として放射状に延出した形状を有し、延出した形状部には液体吐出装置1におけるソケット18の凸部19の形状に対応した凹部28aを有し、ソケット18と同様にインク種類に応じて形状が異なっている。凸部28aの形状は注出口29を中心として点対称に構成されており、180°回転させた状態でも液体吐出装置1に装着可能である。このとき、カバー28の凹部28aの形状を液体収容容器に収容される液体の種類によって、変更することで、どの液体が入っているかを視認できるようになり、更に、液体吐出装置側の液体収容容器を挿入する受け側の形状をそれぞれの凹部28aの形状に対応させておくことで、ユーザーによる液体収容容器のご挿入を防止するメカIDとすることができる。より具体的には、液体収容容器に収容する液体がインクである場合に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのカラーに応じて、液体収容容器のメカIDとしてのカバー28の凹部28aの形状を異ならせる方法などが挙げられる。
【0027】
液体収容容器2のボトル21は、上部に形成されたボトル溶着部21aと、下部に形成された液体収容部21bとを含む。ノズル22は、液体を注出する注出口29と、外側に雄ネジ構造が形成されたノズルネジ部22aと、内側または底面に溶着面が形成されたノズル溶着部22bとを含む。ボトル21を形成する材料としては、PE(ポリエチレン)またはPP(ポリプロピレン)等が挙げられる。ノズル22を形成する材料としては、PE(ポリエチレン)またはPP(ポリプロピレン)等が挙げられる。ノズル22は、ノズル溶着部22bがボトル溶着部21aと溶着することでボトル21と接合される。ボトル21とノズル22とを溶着により接合する場合は、ボトル21及びノズル22は同種の材料であることが好ましい。ノズル22内部には、開口を有するシール24と、シール24の開口を開閉するバルブ25と、バルブ25を付勢するバネ26と、バネ26を固定するホルダ27とが備えられている。シール24はノズル22とバルブ25と合わせて内部の液体が外部へ漏出することを防いでいるため、シール24を構成する材料は柔軟性のあるゴム材料やエラストマー材料などが好ましい。
【0028】
図7(a)はカバー28をノズル22に接合する前の状態を示すX方向からの正面図であり、図7(b)はY方向からの平面図であり、図7(c)はその状態の斜視図である。本構成において、カバー28をノズル22に接合する方法としては、ノズル22の平面部22bに対しカバー28の底面部28bを溶着する構成となっている。図7(a)及び(b)より平面部22bは注出口9に対し同一面で全周にわたって構成されており、対応するカバー28の底面部28bも同一面で全周にわたって構成されている。これにより、液体吐出装置へのインク補給動作終了後に注出口29付近に付着した微小なインクが垂れた場合でも、たれたインクは平面部22bと底面部28bとの接合部によりせき止められ、ノズル22とカバー28との隙間で保持される。これにより、微小なインクが垂れた場合も外部に漏出することを抑制する。また、カバー28には凹部28aが構成されており、液体吐出装置1の凹部19の形状と対応しているため、カバー28とノズル22との接合位置のズレが大きいと注入口29と連通流路122との位置のズレが大きくなってしまう。突起22cは溝部28dと対応しており、ノズル22とカバー28との位置決めの精度を向上させている。
【0029】
カバー28にはY方向に窓28cが構成されている。液体吐出装置1のY方向のサイズを縮小する場合において、記録媒体の幅サイズは縮小することができないので、液体吐出装置に装着する液体収容容器2のノズル22のY方向をなるべく小さくすることが必要である。ただし、連通流路122の幅を小さくするとインク補給時間が長くなってしまうとため、連通流路122の幅を確保した上でノズル22のY方向幅を小さくする必要がある。そのためカバー28にY方向に窓28cを構成し、Y方向幅を小さくしている。
【0030】
図8(a)は液体収容容器2を液体吐出装置1の液体タンク12に液体を補給する液体補充システムとしての状態を示す斜視図であり、図8(b)は上記の液体補給状態における液体収容容器2と液体タンク12の装着部付近の断面図を示す。液体収容容器2から液体タンク12へ液体を補給する際には、液体収容容器2のノズル22の注出口29に、液体タンク12の連通流路122を挿入させるように液体収容容器2を装着する。この時に連通流路122の先端部によりバルブ25が液体収容容器2の内部側に移動し、液体収容容器2の内部と、連通流路122を介して液体タンク本体121と連通状態にある。連通流路122は2つの流路122aと122bを備えており、気液交換によって液体収容容器2内の液体が液体タンクに注入される仕組みとなっている。つまり、一方の連通路122において、液体収容容器2より液体タンク本体121へ液体が移動し、他方の連通路122において液体タンク本体121より液体収容容器2へ気体が移動する。
【0031】
図9(a)は、液体供給のメカニズムを表す概略図、図9(b)は、連通路122(a)に発生する気液界面31に働く力を表す概略図であり、気液界面31と連通路122(a)の接触線32に働くメニスカス力Fmより、連通路122(a)の気液界面31と液体タンク12の液面の水頭差によって気液界面31に働く力Fが大きくなることで、気液界面31が崩壊して液体と気体が移動し、液体が液体収容容器2から液体タンク12へ液体が供給される状態を示している。
【0032】
図9(c)は、図の連通路122(a)の気液界面31の形状を鉛直方向に表した投影図であり、接触線32が連通路122(a)における直径dの内接円で表されている。前記直径D及び前記直径Dは、注出口29の直径によって決まるため、連通路122が連通路(a)と連通路(b)でちょうど二分されていると仮定した場合、dは以下の式で置き換えることができる。
【0033】
d=D/2
この時Fmは、液体の表面張力γ及び液体の接触角θとすると、以下の式(2)で表せる。
【0034】
【数3】
【0035】
また、液体タンク12に液体を十分に満たす場合、気液界面31を崩壊させるのに必要な水頭差はLにほぼ置き換えることができるため、液体の密度をρ、重力加速度をgとすると、Fは以下の式(3)で表される。
【0036】
F=ρgL (3)
実際に使用される液体の想定でρ=1、g=9.8とし、メニスカス力が強い想定でγ=40.6、θ=35°とすると、D及びLに関して、FがFmより大きくなり、液体収容容器2から液体タンク12に液体を供給することが可能な条件は以下の式(4)で表される。
【0037】
【数4】
【0038】
図9(d)は、式(1)の範囲に、式(4)で表される範囲を追加したグラフであり、カバー28の構成がこの範囲内であれば、Dが小さくなっても、十分な水頭差が確保できるため、液体供給が可能で、ユーザーが注出口29に触れることがない構成となる。
【0039】
また、Lが長いと、液体収容容器2を本体に装着する際に、注出口が針に到達するまでの距離が長くなり、取り回しが難しくなるため、L<10(Lが10未満)にすることがより好ましい。図10は、式(1)及び式(4)の範囲に、L<10の範囲を追加したグラフであり、カバー28の構成がこの範囲内であれば、液体供給が可能で、ユーザーが注出口29に触れることがなく、取り回しが安易な構成となる。
【0040】
また、Lが長いと、本体側の針も長くなり、本体大型化につながるため、L<6(Lが6未満)にすることがより好ましい。図11は、式(1)及び式(4)の範囲に、L<6の範囲を追加したグラフであり、カバー28の構成がこの範囲内であれば、液体供給が可能で、ユーザーが注出口29に触れることがなく、本体がより小型な構成となる。
【0041】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
【0042】
(構成1)
液体を収容するための収容部と、
前記収容部に収容された液体を外部に注出するための注出口を有する注出部と、
前記注出部の前記注出口を覆うように構成された保護部と、
を有する液体収容容器であって、
前記保護部は、前記注出口の上方に位置する開口部を有し、
前記開口部の直径をD、前記注出口本体の注出口と前記開口部の鉛直方向の距離をLとしたときに、式(1)の関係を満足することを特徴とする液体収容容器。
【0043】
【数5】
【0044】
(構成2)
前記保護部材の側面に開口部を備えている請求項1に記載の液体収容容器。
【0045】
(構成3)
前記Lが式(4)の関係を満足する請求項1に記載の液体収容容器。
【0046】
【数6】
【0047】
(構成4)
前記Lが10未満である請求項1に記載の液体収容容器。
【0048】
(構成5)
前記Lが6未満である請求項1に記載の液体収容容器。
【0049】
(構成6)
前記液体が、インクである請求項1に記載の液体収容容器。
【0050】
(構成7)
液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給するための液体を収容するように構成されており、外部から液体の注入を受けるように構成された注入部を有する液体タンクと、を有する画像記録装置と、
前記注入部から前記液体タンクに液体を供給するための液体収容容器と、
を有する液体補充システムであって、
前記液体収容容器が、請求項1乃至6の何れか1項に記載の液体収容容器であることを特徴とする液体補充システム。
【符号の説明】
【0051】
1 液体吐出装置
11 筐体
12 液体タンク
121 液体タンク本体
122 連通流路
18 ソケット
19 凸部
2 液体収容容器
21 ボトル
22 ノズル
23 キャップ
24 シール
25 バルブ
26 バネ
28 カバー
28a 凹部
29 注出口
30 開口部
31 気液界面
32 接触線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11