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特開2024-16797ケイ素製のバランスばねを製造する方法
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  • 特開-ケイ素製のバランスばねを製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016797
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ケイ素製のバランスばねを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 13/02 20060101AFI20240131BHJP
   G04B 19/04 20060101ALI20240131BHJP
   G04B 19/10 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
G04B13/02 Z
G04B19/04 B
G04B19/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023090623
(22)【出願日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】22187006.6
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ヴェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キュザン
(57)【要約】
【課題】 裏面に対して加工及び/又は装飾をすることができるように裏面を自由にしつつ、外側輪郭にアタッチメントを取り付けることができないコンポーネントを含むコンポーネントをウェハーに取り付け続けることを可能にする手法を提供する。
【解決手段】 本発明は、機能的な外側プロファイルを有するケイ素製の計時器用コンポーネント(1)を製造する方法に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素製の計時器用コンポーネント(1)を製造する方法であって、
a)ケイ素製の「デバイス」層(11)、酸化ケイ素結合層(13)、及びケイ素製の「ハンドル」層(12)をこの順で含むSOIウェハーであるウェハー(10)を用意するステップと、
b)前記ウェハー(10)の面上に酸化ケイ素層を成長させるステップと、
c)前記ウェハー(10)の表面にて前記酸化ケイ素層に対してエッチングをし、そして、DRIEによって前記「デバイス」層(11)に対してエッチングをして、前記計時器用コンポーネント(1)と、内側のアンカー要素(7)と、前記アンカー要素を前記計時器用コンポーネントの内壁にその内壁の非重大領域において接続する材料ブリッジ(8)との形を作るステップと、
d)前記ウェハー(10)の裏面にて前記酸化ケイ素層に対してエッチングをし、そして、DRIEによって前記「ハンドル」層(12)に対してエッチングをして、少なくとも1つの狭ブリッジ(9)と、前記少なくとも1つの狭ブリッジ(9)と一体的にされ、かつ、前記「デバイス」層と前記「ハンドル」層を結合する前記酸化ケイ素結合層(13)によって前記「デバイス」層の前記アンカー要素(7)に接続される、少なくとも1つのアンカー裏側(9')との形を作るステップと、
e)湿式エッチングによって前記計時器用コンポーネント(1)を解放するステップとを含み、
前記計時器用コンポーネント(1)は、前記アンカー要素(7)によって前記材料ブリッジ(8)を介して前記ウェハー(10)上に保持され、
前記酸化ケイ素結合層は、前記湿式エッチングによって前記「デバイス」層と前記「ハンドル」層の両方がエッチングされておらず除去されていない箇所においてのみ残存し、
前記計時器用コンポーネントの全体は、前記少なくとも1つの狭ブリッジ(9)に接続される前記少なくとも1つのアンカー裏側(9')に載っており、
前記狭ブリッジ(9)自体は、前記計時器用コンポーネントのすべての面にアクセスできるように前記「ハンドル」層に接続される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記計時器用コンポーネント(1)の前記内壁は、コンポーネント内部のシャフトを受けるように構成している穴の壁、又は前記計時器用コンポーネントの内側にある開口の壁である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化ケイ素結合層(13)は、前記ステップe)の終わりにおいて、前記アンカー要素(7)と前記アンカー裏側(9')の間に部分的に存在する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記狭ブリッジ(9)と前記材料ブリッジ(8)は、重なり合わない
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップd)において、前記「ハンドル」層のDRIE中に、さらに、一体化されたシャドウマスクを形成し、これによって、前記裏面に計画的かつ意図的な開口のパターンを作り、
前記開口は、堆積による精巧な装飾を可能にする
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記計時器用コンポーネント(1)の表面、裏面及び/又は側面に対してウェハー仕上げをするステップf)を含み、
前記ステップf)は、例えば、層を堆積させること、パターン形成すること、及び/又は装飾することを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記計時器用コンポーネントは、車、カム、針、レバー、スネール、インデックス、又はアプリークである
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法を実行することによって得られる
ことを特徴とする計時器用コンポーネント(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素製の計時器用コンポーネント、特に、機能的な外側プロファイルを有するケイ素製の計時器用コンポーネント、を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素製の計時器用コンポーネントは、典型的には、ケイ素ベースの材料によって作られたウェハーに対して、深掘り反応性イオンエッチング(DRIEとしても知られている)を行うことによって製造される。このウェハーは、その厚み全体を通り抜けるようにエッチングされるシリコンウェハーであることができ(例えば、欧州特許出願EP1722281、EP2145857及びEP3181938を参照)、又は中間の酸化ケイ素層によって結合される上部のケイ素層と下部のケイ素層があるシリコンオンインシュレーター(SOI)基材であって、この上部のケイ素層に対してエッチングが行われるものであることができる(例えば、国際特許出願WO2019/180177及びWO2019/180596を参照)。シリコンオンインシュレーター基材には、単一のシリコンウェハーと比べて、剛体の支持体(上部のケイ素層よりも厚い下部のケイ素層)があって取り扱いと保持が容易になることと、エッチングを止めるためのバリア層(中間酸化ケイ素層)があること、という利点がある。
【0003】
用いるウェハーのタイプにかかわらず、同じウェハー内においていくつかのコンポーネントが同時にエッチングされ、エッチング中に残されたアタッチメントやブリッジによって、他の製造工程のためにコンポーネントがウェハーに取り付けられたままにする。そして、これらのアタッチメントを破壊又は除去することによってコンポーネントをウェハーから解放する。
【0004】
各コンポーネントの周部をウェハーに接続するこのようなアタッチメントは、特に、コンポーネントの周部が機能面であり、その機能がアタッチメントの残留物によって損なわれてはならない場合、あるいはコンポーネントの外面が針の場合などのように特に完全性が高い外観を有しなければならない場合に、問題となり得る。また、場合によっては、特に微小な歯列があるコンポーネントにおいては、外側の機能面において、十分に強力なアタッチメントを設けるための自由空間が十分に大きくないことがある。
【0005】
国際特許出願WO2019/166922は、酸化ケイ素層を担持するケイ素基材を用意し、その酸化ケイ素層に貫通穴を形成し、酸化ケイ素層上にケイ素層をエピタキシャル成長させるようなバランスばねを製造する方法を提案している。このケイ素層が貫通穴を充填して、アタッチメント又は材料ブリッジを形成し、ケイ素層においてバランスばねがエッチングされる。前記酸化ケイ素層が除去され、バランスばねが前記アタッチメントを介してケイ素基材に取り付けられたままとなる。バランスばねに対して熱処理をし、最後にバランスばねをケイ素基材から取り外す。
【0006】
このような方法を用いると、典型的な場合のように最外周の巻きの外面とケイ素エッチング層の間ではなく、バランスばねの平面外に延在するアタッチメントによって、エッチング後もバランスばねが基材に結合し続ける。しかし、この方法は、市販のシリコンオンインシュレーター基材の使用を可能にするものではなく、また、バランスばねが形成されるケイ素層のエピタキシャル成長の操作は複雑である。
【0007】
前記国際特許出願WO2019/166922は、この問題を克服するように意図されており、SOIウェハーからケイ素製の計時器用コンポーネントを製造する方法であって、そのコンポーネントがそのコンポーネントの輪郭の内側においてアンカーに取り付けられるものを提案している。したがって、このアタッチメントは、コンポーネントの機能的な外側輪郭に対して邪魔をしない。しかし、この方法は、特に表面処理又は装飾を必要とするコンポーネントの場合に、コンポーネントの裏面に対して加工をすることを可能にするものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、裏面に対して加工及び/又は装飾をすることができるように裏面を自由にしつつ、外側輪郭にアタッチメントを取り付けることができないコンポーネントを含むコンポーネントをウェハーに取り付け続けることを可能にする手法を提供することによって上述の課題を解決する。
【0009】
このために、本発明は、ケイ素製の計時器用コンポーネントを製造する方法に関し、
a)ケイ素製の「デバイス」層、酸化ケイ素結合層、及びケイ素製の「ハンドル」層をこの順で含むSOIウェハーであるウェハーを用意するステップと、
b)前記ウェハーの面上に酸化ケイ素層を成長させるステップと、
c)前記ウェハーの表面にて前記酸化ケイ素層に対してエッチングをし(マスクのエッチング)、そして、DRIEによって前記「デバイス」層に対してエッチングをして、前記計時器用コンポーネントと、内側のアンカー要素と、前記アンカー要素を前記計時器用コンポーネントの内壁に非重大な内側の輪郭領域において接続する材料ブリッジとの形を作るステップと、
d)前記ウェハーの裏面にて前記酸化ケイ素層に対してエッチングをし(マスクのエッチング)、そして、DRIEによって前記「ハンドル」層に対してエッチングをして、少なくとも1つの狭ブリッジと、前記少なくとも1つの狭ブリッジと一体的にされ、かつ、前記「デバイス」層と前記「ハンドル」層を結合する前記酸化ケイ素結合層によって前記「デバイス」層の前記アンカー要素に接続される、少なくとも1つのアンカー裏側との形を作るステップと、
e)湿式エッチングによって前記計時器用コンポーネントを解放するステップとを含み、
前記計時器用コンポーネントは、前記アンカー要素によって前記材料ブリッジを介して前記ウェハー上に保持され、前記酸化ケイ素結合層は、前記湿式エッチングによって前記「デバイス」層と前記「ハンドル」層の両方がエッチングされておらず除去されていない箇所においてのみ残存し、前記計時器用コンポーネントの全体は、前記少なくとも1つの狭ブリッジに接続される前記少なくとも1つのアンカー裏側に載っており、前記狭ブリッジ自体は、前記「ハンドル」層に接続される。
【0010】
本発明の他の有利な代替的実施形態においては、以下の特徴を有する。
- 前記計時器用コンポーネントの前記内壁は、コンポーネント内部のシャフトを受けるように構成している穴の壁、又は前記計時器用コンポーネントの内側にある開口の壁である。
- 前記酸化ケイ素結合層は、前記ステップe)の終わりにおいて、前記アンカー要素と前記アンカー裏側の間に部分的に存在する。
- 前記狭ブリッジと前記材料ブリッジは、重なり合わない。
- 前記ステップd)において、前記「ハンドル」層のDRIE中に、さらに、一体化されたシャドウマスクを形成し、これによって、前記裏面に計画的かつ意図的な開口のパターンを作り、前記開口は、CVD又はPVDによる精巧な装飾を可能にする。
- 本方法は、前記計時器用コンポーネントの表面及び/又は裏面に対してウェハー仕上げをするステップf)を含み、前記ステップf)は、例えば、層を堆積させること、パターン形成すること、及び/又は装飾することを行う。
- 前記計時器用コンポーネントは、車、カム、針、レバー、スネール、インデックス、又はアプリークである。
【0011】
本発明は、さらに、本発明に係る計時器用コンポーネントを製造する方法を実行することによって得られる計時器用コンポーネントに関する。
【0012】
このように、本方法は、ウェハーに取り付けられた計時器用コンポーネントの裏面にアクセスして、裏面に対して加工及び/又は装飾をすることができるようにすることを可能にすることがわかる。
【0013】
添付の図面を参照しながら例として与えられる以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1a及び1bはそれぞれ、「デバイス」層と一体的にされたケイ素コンポーネントの斜視図及び「ハンドル」層の斜視図を示している。
図2図2a及び2bはそれぞれ、SOIウェハー内において形成されたケイ素コンポーネントを上方から見た斜視図と下方から見た斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ケイ素製の計時器用コンポーネント、特に、機能的な外側プロファイルを有するケイ素製の計時器用コンポーネント、を製造する方法に関する。
【0016】
機能的な外側プロファイルとは、他の部品及び/又は計時器用コンポーネントと連係するように構成している機能面を外側の周部が形成するような計時器用コンポーネントを意味すると理解することができる。
【0017】
計時器用コンポーネントを製造するためにケイ素ベースの材料を用いることには、既存のエッチング方法を用いることによって正確であること、そして、機械的及び化学的性質が良好であること、特に磁場の影響をほとんど又はまったく受けない、という利点がある。
【0018】
好ましくは、用いられるケイ素ベースの材料は、その結晶配向にかかわらず、単結晶ケイ素であることができる。当然、他のケイ素ベースの化合物、又はガラス、セラミックス、サーメット、金属又は金属合金のような他の材料を考えることもできる。簡明性のため、以下においては、ケイ素ベースの材料について説明する。
【0019】
上記のように、本発明は、ケイ素製の計時器用コンポーネント1を製造する方法に関する。本発明の方法を用いて、歯車、エスケープ車、レバー、スネールのような他の計時器用コンポーネントを製造することもできる。このような本発明に係る方法を、可能なかぎり外面仕上げの完全性が高いことを必要とする、針、インデックス、又はアプリークの製造のために用いることも考えることができる。
【0020】
本発明によると、本方法は、図2に示しているように、SOIウェハー10、すなわち、酸化ケイ素層13によって互いに結合される2つのケイ素層11及び12があるウェハー、を用意することを伴う第1のステップa)を含む。これらの3つの層にはそれぞれ、一又は複数の特定の役割がある。
【0021】
単結晶シリコンウェハー内に形成された上部のケイ素層11(その主配向を変えることができる)は、「デバイス」層と呼ばれ、典型的には携行型時計(例、腕時計、懐中時計)において、製造されるコンポーネントの最終厚みを決める、100~200μmの厚みを有する。
【0022】
下部のケイ素層12は、「ハンドル」層と呼ばれ、実質的に、機械的支持体として作用し、これによって、この方法を、十分に剛性が高いアセンブリー(このような剛性は「デバイス」の薄くなった厚みでは確実ではない)上で実行することができる。下部のケイ素層12は、典型的には「デバイス」層と同様の配向である、単結晶シリコンウェハーによっても形成される。
【0023】
2つのケイ素層11及び12どうしを密接に結合するために酸化物層13を用いる。また、酸化物層13は、後の操作においてバリア層としても用いる。
【0024】
その後のステップb)は、一又は複数のウェハーを高温酸化雰囲気に曝すことによって、一又は複数のウェハー10の表面上に酸化ケイ素層を成長させることを伴う。この酸化ケイ素層は、パターン化される「デバイス」の厚みに応じて変わる。この厚みは、典型的には1~4μmである。当然、エッチングマスクを形成するために他の技術も使え、次のステップc)のように、フォトレジスト層で十分であることもでき、酸化物を用いる場合は、成長させるのではなく堆積させるようにすることができる。
【0025】
本方法のステップc)は、シリコンウェハー10内においてその後に形成することを意図されているパターンを、例えば、ポジ型フォトレジスト内において形成することを可能にする。このステップc)は、次の操作を行う。
- スピンコーティングなどによって、典型的には1~2μmの厚みを有する、非常に薄い層となるようにフォトレジストを堆積させる。
- 乾燥させた後に、光源を用いて、フォトリソグラフィーマスク(所望のパターンを表すクロム層で被覆された光透過性のプレート)を通して、フォトリソグラフィー性質を有する前記フォトレジストを露光する。
- ポジ型フォトレジストである特定の場合においては、溶媒を用いてフォトレジストの露光された領域を除去して、酸化物層を露出する。この場合、依然としてフォトレジストで覆われている領域は、その後のケイ素に対する深掘り反応性イオンエッチングプロセス(「DRIE」としても知られている)においてエッチングされるべきでない領域を形成する。
【0026】
このように、ステップc)において、露光された領域又は逆にフォトレジストで被覆された領域が利用される。第1のエッチングプロセスは、前のステップにおいてフォトレジストに形成されたパターンを、予め成長させた酸化ケイ素に転写することを可能にする。また、製造プロセスの再現性の観点から、方向性がありこの操作のためのマスクとして用いられるフォトレジストの側壁の品質を再現するドライプラズマエッチングによって、酸化ケイ素に対してパターン形成を行う。
【0027】
フォトレジストの開口領域において酸化ケイ素がエッチングされると、上層11のケイ素表面が露出して、DRIEの準備が整う。フォトレジストがDRIE中に追加のマスクとして用いられるか否かに応じて、フォトレジストを保存することができ、また、保存しないことができる。
【0028】
露出しており酸化ケイ素によって保護されていないケイ素は、ウェハー表面に垂直な方向にてエッチングされる(Bosch(登録商標)異方性DRIE)。まずフォトレジストにおいて形成され、次いで酸化ケイ素において形成されるパターンが、「デバイス」層11の厚みに「投射」される。
【0029】
2つのケイ素層11及び12を結合する酸化ケイ素層13までエッチングが進むと、エッチングは止まる。特に、Bosch(登録商標)プロセスにおいてマスクとして作用しエッチングプロセス自体に耐性がある酸化ケイ素の例と同様に、同じ性質の埋め込まれた酸化物層13も耐性がある。
【0030】
このようにして、ケイ素「デバイス」層11に対して、その厚み全体にわたって、製造されるコンポーネントを表す所定のパターンによってパターン形成され、ここで、このパターンが、すなわち、図示している例においてはカム1、が前記DRIEによって露出される。
【0031】
コンポーネントは、埋め込まれた酸化ケイ素層13を通してそれらのコンポーネントが結合する「ハンドル」層12と一体的となっているままである。このステップc)において、上部のケイ素層2の一部がエッチングされて、計時器用コンポーネントの内部にアンカー要素7を形成し、また、計時器用コンポーネント1の内壁の非重大領域において、このアンカー要素7を計時器用コンポーネントの内壁に接続する材料ブリッジ8を形成する。
【0032】
図示している例において、計時器用コンポーネントの内壁は、シャフトを受けるように構成している穴の壁である。この穴は、アタッチメントの残りがケイ素プレートと連係するアーバーと干渉しないような形を有する。内壁は、スケルトン化されている場合などにおいて、コンポーネント内部の別の開口のものであることができる。
【0033】
当然、本方法は、ステップc)においてDRIEによるエッチングに限定されない。例として、ステップc)におけるエッチングは、同じケイ素ベース材料に対する化学エッチングによっても同様に達成することができる。
【0034】
ステップc)において、複数のカムを同じウェハーに形成することができる。
【0035】
ステップd)において、ステップc)において実行した第1のフォトリソグラフィー操作と同様の第2のフォトリソグラフィー操作を、ウェハー10の裏面(すなわち、「ハンドル」層12側)に対して実行する。このために、ウェハー10を裏返して、その上にフォトレジストを堆積させ、そして、マスクを通して露光する。この第2のフォトリソグラフィー操作の間に、計時器用コンポーネントの裏側を通して少なくとも1つの狭ブリッジ9を形成し、また、前記少なくとも1つの狭ブリッジ9と一体的にされたアンカー裏側9'を形成する。このアンカー裏側9'は、「デバイス」層と「ハンドル」層を結合する酸化ケイ素層によって、「デバイス」層のアンカー要素7に接続される。
【0036】
本発明によると、ステップd)における「ハンドル」層のDRIE中に、一体化されたシャドウマスクも形成して、裏面に計画的かつ意図的な開口のパターンを作り、この開口のおかげで、後のステップの間にCVD又はPVDによって複雑な装飾を作ることが可能になる。
【0037】
そして、露光されたフォトレジストの領域を溶媒で除去して、DRIEのような深掘りドライエッチングのためのマスクとして作用する、前に形成された酸化物層を露出し、これによって、前記少なくとも1つの狭ブリッジ9、アンカー裏側9'及びシャドーマスクを露出することが可能になる。
【0038】
ステップe)において、コンポーネントを完全に解放するために、様々な酸化ケイ素層に対して、フッ化水素酸ベースの溶液を用いる湿式エッチングプロセス又は気相中のフッ化水素酸によって、エッチングを行う。好ましいことに、形成されたカム1は、材料ブリッジ8を介してアンカー要素に保持され、カム1全体は、前記少なくとも1つの狭ブリッジに接続されるアンカー裏側上に載置され、この狭ブリッジ自体は「ハンドル」層に形成されるフレームに接続される。
【0039】
本方法の任意のステップであるステップf)において、アタッチメントによって依然として保持されている、解放されたワークピースに対して様々な表面仕上げ操作を行う。したがって、計時器用コンポーネントがウェハーに依然として保持されている間に、計時器用コンポーネントの表面、裏面及び/又は側面に対して操作を行うことができる。この仕上げステップは、計時器用コンポーネントの異なる面に対して、層を堆積させたり、パターン形成したり、装飾したりすることを伴うことができる。これらの操作は、PVD又はCVDによって、機能的な性質のもの(強化、トライボロジー的など)又は美的な性質のものである(着色、パターン化)。
【0040】
このステップにおいて、シャドウマスクを介してステップd)において現像されたパターンも、CVD又はPVDによって装飾される。
【0041】
このようにして、図1a及び1bに示しているカム1が得られ、好ましいことに、本発明によると、このカム1には、ケイ素ベースのコア及び酸化ケイ素ベースの被覆がある。
【0042】
したがって、好ましいことに、本発明によると、機能的な外側プロファイルを有する計時器用コンポーネント1を複雑にせずに製造することができる。
【0043】
また、最後に、本方法は、計時器用コンポーネント1をそのアンカー要素8から分離することによって、計時器用コンポーネント1をウェハー10から分離するステップh)を含むことができる。
【0044】
当然、本発明は、図示している例、すなわち、カムの製造、に限定されるものではなく、当業者であれば明らかである様々な代替形態及び変異形態が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 計時器用コンポーネント
7 アンカー要素
8 材料ブリッジ
9 狭ブリッジ
9’ アンカー裏側
10 ウェハー
11 「デバイス」層
12 「ハンドル」層
13 酸化ケイ素層
図1
図2
【外国語明細書】