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特開2024-167977人員配置計画立案装置及び人員配置計画立案システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167977
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】人員配置計画立案装置及び人員配置計画立案システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/40 20240101AFI20241128BHJP
   G06Q 10/06 20230101ALI20241128BHJP
   B61L 27/18 20220101ALI20241128BHJP
【FI】
G06Q50/30
G06Q10/06
B61L27/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084326
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由泰
(72)【発明者】
【氏名】皆川 剛
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄一
(72)【発明者】
【氏名】難波 康晴
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 敏之
【テーマコード(参考)】
5H161
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ01
5H161JJ22
5H161JJ26
5L010AA09
5L049AA09
5L049CC42
5L050CC42
(57)【要約】
【課題】 公共交通機関において、今後、さらなる省力化、効率化、無人化等の流れが促進されても、少ない人員で細かく且つ柔軟に業務を実行可能にする。
【解決手段】 本発明の人員配置立案装置は、公共交通機関の運行データを取得し、運行データに対応する公共交通機関の運行に際して必要となる複数種の業務への社員の配置案を作成する第1の人員配置立案部と、第1の人員配置立案部で作成された社員の配置案を変更する必要性が発生した場合に、乗客の業務参加の可能性を評価し、評価の結果に基づいて、乗客の業務参加を含めた新たな配置案を作成する第2の人員配置立案部と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
公共交通機関の運行データを取得し、前記運行データに対応する前記公共交通機関の運行に際して必要となる複数種の業務への社員の配置案を作成する第1の人員配置立案部と、
前記第1の人員配置立案部で作成された前記社員の配置案を変更する必要性が発生した場合に、乗客の業務参加の可能性を評価し、該評価の結果に基づいて、前記乗客の業務参加を含めた新たな配置案を作成する第2の人員配置立案部と、を備える
人員配置計画立案装置。
【請求項2】
前記第2の人員配置立案部は、前記第1の人員配置立案部で作成された前記社員の配置案を変更する必要性が発生した場合に、前記乗客の業務参加を含めた前記新たな配置案を作成する機能とは別に、前記業務の運用態様の変更の可能性を評価し、該評価の結果に基づいて、前記業務の運用態様の変更を反映した別の新たな配置案を作成する機能も有する
請求項1に記載の人員配置計画立案装置。
【請求項3】
前記運行データ、前記複数種の業務と各業務に必要な人数との関係性を規定した業務データ、業務間での兼務の可否を規定した兼務可否データ、前記社員の担当可能な業務を規定した社員スキルデータ、及び、乗客による前記業務への参加可能性に関する情報を規定した乗客支援可能性データを記憶可能な記憶部を、さらに備え、
前記第1の人員配置立案部は、前記運行データ、前記業務データ、前記兼務可否データ及び前記社員スキルデータに基づいて制約条件を作成し、該作成した制約条件を満足する前記社員の配置案を作成し、
前記第2の人員配置立案部は、前記第1の人員配置立案部で作成された前記社員の配置案を変更する必要性が発生した場合には、前記乗客支援可能性データを用いて、前記乗客の業務参加の可能性を評価する
請求項1に記載の人員配置計画立案装置。
【請求項4】
前記第2の人員配置立案部は、前記新たな配置案が複数作成された場合には、前記乗客の業務参加の可能性に関する情報及び現在の運行状況に関する情報に基づいて、前記新たな配置案のそれぞれを評価し、該評価の結果に基づいて、前記新たな配置案を選択する
請求項1に記載の人員配置計画立案装置。
【請求項5】
前記第2の人員配置立案部は、前記乗客の業務参加の実績情報に基づいて、前記新たな配置案に対応可能な乗客を特定し、該特定された乗客に対して支援依頼を送信する
請求項4に記載の人員配置計画立案装置。
【請求項6】
前記第2の人員配置立案部は、前記別の新たな配置案が複数作成された場合には、前記公共交通機関の運行経路上に設置された設備の情報及び現在の運行状況に関する情報に基づいて、前記別の新たな配置案のそれぞれを評価し、該評価の結果に基づいて、前記別の新たな配置案を選択する
請求項2に記載の人員配置計画立案装置。
【請求項7】
公共交通機関の運行データを作成する運行データ作成部と、
前記運行データ作成部で作成された前記運行データを取得し、前記運行データに対応する前記公共交通機関の運行に際して必要となる複数種の業務への社員の配置案を作成する第1の人員配置立案部と、
前記第1の人員配置立案部で作成された前記社員の配置案を変更する必要性が発生した場合に、乗客の業務参加の可能性を評価し、該評価の結果に基づいて、前記乗客の業務参加を含めた新たな配置案を作成する第2の人員配置立案部と、を備える
人員配置計画立案システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人員配置計画立案装置及び人員配置計画立案システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば鉄道等の公共交通機関における乗務員計画を作成可能な情報処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、制約条件に基づき作業計画(乗務員計画)を作成可能な情報処理装置が開示されており、現場における制約の変更及び追加等にも容易に対応可能にするため、ソフト制約条件の優先度及び重みのチューニングを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-45174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現在、鉄道機関の人員配置計画では、例えば、運転士、車掌、駅員等の役職ごとに人員が配置される。それゆえ、例えば乗降者の支援や社員の欠勤などに対応できるようにするため、各役職(業務)に対して人数に余裕を持たせて、人員配置計画が立案される。しかしながら、今後、例えば鉄道機関において、さらなる省力化、効率化、駅の無人化等の流れが進むことが予測される。この場合には、各社員が複数の業務に対応できるようにして、少ない人員で細かく且つ柔軟に業務を実行できるようにすることが求められる。また、状況によっては、今まで社員が行っていた業務の一部を乗客に依頼するといった業務形態の採用も十分に考えられる。そして、このような要求に応えるためには、新たな人員配置計画の立案システムの構築が必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、上記要望に応えるためになされたものである。本発明の目的は、例えば鉄道等の公共交通機関において、今後、さらなる省力化、効率化、無人化等の流れが促進されても、少ない人員で細かく且つ柔軟に業務を実行可能にするための人員配置計画立案装置及び人員配置計画立案システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の人員配置計画立案装置は、第1の人員配置立案部と、第2の人員配置立案部と、を備える。第1の人員配置立案部は、公共交通機関の運行データを取得し、運行データに対応する公共交通機関の運行に際して必要となる複数種の業務への社員の配置案を作成する。また、第2の人員配置立案部は、第1の人員配置立案部で作成された社員の配置案を変更する必要性が発生した場合に、乗客の業務参加の可能性を評価し、評価の結果に基づいて、乗客の業務参加を含めた新たな配置案を作成する。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の人員配置計画立案システムは、公共交通機関の運行データを作成する運行データ作成部と、前記本発明の人員配置計画立案装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の本発明によれば、例えば鉄道等の公共交通機関において、今後さらなる省力化、効率化、無人化等の流れが促進されても、少ない人員で細かく且つ柔軟に業務を実行可能にする人員配置計画を立案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置及び人員シフト計画立案システムの機能ブロック構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置のハードウェアの構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置の列車ダイヤ記憶部に格納される列車ダイヤのデータ構成例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置の役割データベースに格納されるデータの構成例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置の兼務可否データベースに格納されるデータの構成例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置の社員スキルデータベースに格納されるデータの構成例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置の乗客支援可能性データベースに格納されるデータの構成例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置の設備データベースに格納されるデータの構成例を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置に入力される実績データ(現在運行中のデータ)の構成例を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案システムにおいて、乗客の携帯端末にインストールされている乗客支援用アプリケーションソフトウェアの表示画面の一例を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置で行われる人員シフト計画立案処理(最適化処理)の手順を示すフローチャートである。
図12】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置で行われる、乗客支援可能性を考慮した人員シフト計画案の更新処理の手順を示すフローチャートである。
図13】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置で行われる、各業務の運用態様の変更を考慮した人員シフト計画案の更新処理の手順を示すフローチャートである。
図14】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置で作成された人員シフト計画案の表示例(社員単位表示)を示す図である。
図15】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置で作成された人員シフト計画案の表示例(棒ダイヤ表示)を示す図である。
図16】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置で作成された計画時の人員シフト計画案の表示例(列車単位表示)を示す図である。
図17】本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置で作成された更新後の人員シフト計画案の表示例(列車単位表示)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、公共交通機関で利用可能な本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置及び人員シフト計画立案システムについて、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では、公共交通機関として鉄道を例に挙げ説明する。
【0011】
[人員シフト計画立案システムの構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案装置、及び、当該人員シフト計画立案装置を含む人員シフト計画立案システム(人員配置計画立案システム)の機能ブロック構成図である。なお、図1には、人員シフト計画案の作成(立案)処理に関する機能部のみを示す。
【0012】
人員シフト計画立案システム1は、図1に示すように、人員シフト計画立案装置10(人員配置計画立案装置)と、列車ダイヤ立案装置20(運行データ作成部)とを備える。人員シフト計画立案装置10は、通信ネットワーク31を介して通信回線(無線及び/又は有線)により、列車ダイヤ立案装置20に接続される。
【0013】
列車ダイヤ立案装置20は、列車の運行表(以下、「列車ダイヤ」と称する)を作成し、該作成した列車ダイヤ(運行データ)を、通信ネットワーク31を介して人員シフト計画立案装置10に送信する。なお、列車ダイヤの具体的な構成については、後で図面を参照しながら説明する。そして、人員シフト計画立案装置10は、列車ダイヤ立案装置20から送信された列車ダイヤに基づいて、運行当日の各列車の各種業務への社員の配置案(以下、「人員シフト計画案」と称する)を作成する。
【0014】
また、本実施形態の人員シフト計画立案システム1では、例えば、車椅子の乗客に対する乗降補助や停車駅での警備などの業務を支援可能な乗客に関する情報が予め登録されている。なお、この登録は、乗客自身により乗客支援用アプリケーションソフトウェアを使用して行われる。そして、人員シフト計画立案装置10は、通信ネットワーク32を介して通信回線(無線及び/又は有線)により、登録済みの支援活動可能な乗客の携帯端末30に接続可能である。乗客に業務支援を依頼する場合には、例えば支援依頼メール等が人員シフト計画立案装置10から乗客の携帯端末30に送信される。
【0015】
[人員シフト計画立案装置の構成]
人員シフト計画立案装置10は、図1に示すように、機能上、人員シフト計画立案部11(第1の人員配置立案部)と、人員シフト計画更新部12(第2の人員配置立案部)と、記憶部13とを備える。
【0016】
人員シフト計画立案部11は、記憶部13に格納されている各種データに基づき、立案対象日の人員シフト計画案を作成する。また、人員シフト計画更新部12は、人員シフト計画立案部11で作成された人員シフト計画案の運行当日に当該人員シフト計画案を変更する必要性が発生した場合に、当該人員シフト計画案を更新する(新たな人員シフト計画案を作成する)。なお、人員シフト計画更新部12は、図1に示すように、乗客支援評価部14と、運用態様変更評価部15とを有するが、これらの構成部での処理内容については後で詳述する。
【0017】
また、図1では図示を省略するが、人員シフト計画更新部12(乗客支援評価部14及び運用態様変更評価部15)は、処理機能上、人員シフト計画立案部11に接続される。また、人員シフト計画立案部11、乗客支援評価部14及び運用態様変更評価部15は、それぞれ、処理機能上、記憶部13に接続される。
【0018】
(1)人員シフト計画立案部及び人員シフト計画更新部での処理概要
人員シフト計画立案部11は、運行当日より前(計画時)に、記憶部13に格納された各種データ(例えば、後述の役割データ等)に基づき、最適化ソルバーを用いて、人員シフト計画案を作成する。
【0019】
なお、ここでいう「最適化ソルバー」とは、数理最適化問題の最適解を得るために用いるソフトウェア(ソルバー)であり、従来、数理最適化問題に応じて様々な最適化ソルバーが開発されている。本実施形態では、最適化ソルバーとして、例えば、混合整数計画問題(MIP:Mixed Integer Programming problem)と呼ばれる数理最適化問題の最適解を求めるためのソルバー(以下、「MIPソルバー」と称する)が用いられる。このMIPソルバーとしては、既存のMIPソルバーを使用することができる。また、最適化ソルバーの使用時には、対象となる数理最適化問題の解を求める際に守るべき条件である制約条件が作成される。本実施形態では、記憶部13内の後述の列車ダイヤ記憶部13a、役割データベース13b、兼務可否データベース13c及び社員スキルデータベース13dに格納されている各種データを用いて、人員シフト計画立案部11により制約条件が作成される。
【0020】
また、人員シフト計画立案部11は、運行当日に人員シフト計画案に対して変更事項が発生した場合には、乗客支援評価部14又は運用態様変更評価部15からの要求に応じて、変更事項を反映した各種データに基づき、再度、人員シフト計画案の作成処理を行う。そして、当該人員シフト計画案の作成(更新)時にも、人員シフト計画立案部11は、計画時と同様に最適化ソルバーを使用する。
【0021】
人員シフト計画立案部11による最適化ソルバーを用いた人員シフト計画案の作成(更新)処理では、複数の解(人員シフト計画案)が得られる場合もある。この場合には、例えば、人員シフト計画立案装置10のオペレーターや列車の運行計画の責任者など(以下、「運行管理者等」と称する)により、複数の人員シフト計画案の中から1つの案が採用される。なお、人員シフト計画立案部11による人員シフト計画案の作成(更新)処理(新たな人員シフト計画案の作成処理)のより詳細な内容は、後で図面を参照しながら説明する。
【0022】
乗客支援評価部14は、運行当日に、例えば、車椅子の乗客や幼稚園の遠足などに対して新たな乗降支援の要請があった場合や、社員の病気等による欠勤などがあった場合に対応するため、一部の業務に関して、乗客による支援が可能であるか否かの評価を行う。そして、乗客支援が必要であり且つ可能であれば、乗客支援評価部14は、当日の業務の担当者として乗客を加えた新たな人員シフト計画案(新たな配置案)を作成する。すなわち、乗客支援評価部14は、運行当日に業務担当の変更が必要になったときに、乗客の支援可能性を考慮して、人員シフト計画案を更新(作成)する。
【0023】
乗客支援評価部14による新たな人員シフト計画案の作成過程では、乗客支援評価部14は、変更事項を反映した各種データ(例えば、後述の役割データ等)を取得するとともに、人員シフト計画立案部11に対して人員シフト計画案の作成処理を要求する。当該要求を受けた人員シフト計画立案部11は、変更事項を反映した各種データに基づいて、最適化ソルバーによる人員シフト計画案の作成処理を実行し、その結果を乗客支援評価部14に出力する(戻す)。そして、乗客支援評価部14は、更新後の人員シフト計画案に対して、乗客の支援可能性を評価する。なお、乗客支援評価部14による人員シフト計画案の更新処理(新たな人員シフト計画案の作成処理)のより詳細な内容は、後で図面を参照しながら説明する。
【0024】
運用態様変更評価部15は、運行当日に、例えば、新たな乗降支援の要請や社員の欠勤などがあった場合に対応するため、各業務の運用態様(手動/自動/遠隔)の変更が可能であるか否かの評価を行う。そして、一部の業務に関して運用態様が変更可能であれば、運用態様変更評価部15は、それが反映された新たな人員シフト計画案(別の新たな配置案)を作成する。すなわち、運用態様変更評価部15は、運行当日に業務担当の変更が必要になったときに、各業務の運用態様の変更可能性を考慮して、人員シフト計画案を更新(作成)する。
【0025】
具体的には、運用態様変更評価部15は、例えば、運転業務の態様を手動及び自動の間で変更した場合を評価し、新たな人員シフト計画案を作成する。また、運用態様変更評価部15は、例えば、警備業務の態様を、手動、自動及び遠隔の間で変更した場合を評価し、新たな人員シフト計画案を作成する。さらに、運用態様変更評価部15は、例えば、改札業務の態様を、手動、自動及び遠隔の間で変更した場合を評価し、新たな人員シフト計画案を作成する。
【0026】
運用態様変更評価部15よる新たな人員シフト計画案の作成過程では、運用態様変更評価部15は、変更事項を反映した各種データ(例えば、後述の役割データ等)を生成するとともに、人員シフト計画立案部11に対して人員シフト計画案の作成処理を要求する。当該要求を受けた人員シフト計画立案部11は、変更事項を反映した各種データに基づいて、最適化ソルバーによる人員シフト計画案の作成処理を実行し、その結果を運用態様変更評価部15に出力する(戻す)。そして、運用態様変更評価部15は、更新後の人員シフト計画案に対して設備等の観点に基づく評価処理を行う。なお、運用態様変更評価部15による人員シフト計画案の更新処理(新たな人員シフト計画案の作成処理)のより詳細な内容は、後で図面を参照しながら説明する。
【0027】
上述のように、乗客支援評価部14による人員シフト計画案の更新処理、及び、運用態様変更評価部15による人員シフト計画案を更新処理はともに、運行当日に人員シフト計画案を変更する必要性が発生した場合に対応するために行われる処理である。この場合、乗客支援評価部14による人員シフト計画案を更新処理、及び、運用態様変更評価部15による人員シフト計画案を更新処理の一方を行えばよいが、両処理間の実行優先順位は任意である。ただし、例えば、全ての業務(後述の役割)をできる限り社員だけで行い、乗客に頼らないようにするという観点では、運用態様変更評価部15による人員シフト計画案の更新処理を優先して実行する。そして、運用態様変更評価部15による人員シフト計画案の更新処理で適切な解(人員シフト計画案)が得られない場合には、乗客支援評価部14による人員シフト計画案の更新処理を実行するようにしてもよい。
【0028】
なお、上述した人員シフト計画立案部11、乗客支援評価部14及び運用態様変更評価部15による各種処理機能は、ソフトウェア、すなわち、プロセッサがそれぞれの機能を実現するためのプログラムを解釈して実行することにより制御される。しかしながら、本発明はこれに限定されず、上記各種処理機能のうちの一部又は全ては、ハードウェアで構成されてもよい。また、本実施形態では、乗客支援評価部14及び運用態様変更評価部15の両方を備える構成としたが、乗客支援評価部14及び運用態様変更評価部15の一方のみを備える構成としてもよい。
【0029】
(2)記憶部の構成
記憶部13には、人員シフト計画立案部11、乗客支援評価部14及び運用態様変更評価部15による人員シフト計画案の作成(更新)処理で使用される各種データが記憶される。記憶部13は、図1に示すように、列車ダイヤ記憶部13a、役割データベース13b、兼務可否データベース13c、社員スキルデータベース13d、乗客支援可能性データベース13e、設備データベース13f、実績データ記憶部13g及び混雑情報記憶部13hを有する。
【0030】
列車ダイヤ記憶部13aは、図1に示すように、通信ネットワーク31を介して列車ダイヤ立案装置20に接続される。列車ダイヤ記憶部13aには、列車ダイヤ立案装置20で立案された列車ダイヤが記憶される。なお、列車ダイヤ記憶部13aに記憶される列車ダイヤは、人員シフト計画案の立案対象日の列車ダイヤである。
【0031】
役割データベース13bには、列車毎に、走行経路上の停車駅及び走行区間(停車駅間)のそれぞれと、停車駅及び走行区間のそれぞれで必要となる各種業務の人数との関係を示すデータが格納される。役割データベース13bに規定される業務は、例えば、自動運転時の列車の運転監視業務、手動運転時の列車の運転業務、駅内の改札業務、駅内及び列車内の警備業務、乗客の乗降支援業務等である。なお、以下では、役割データベース13bに規定される業務、すなわち、列車の運行に際して必要となる業務を「役割」と称する。
【0032】
兼務可否データベース13cには、列車毎に規定された、兼務可能な役割に関する情報が格納される。社員スキルデータベース13dには、各社員が有するスキル(担当可能な役割)に関する情報が格納される。乗客支援可能性データベース13eには、業務支援可能な登録済みの各乗客の支援可能性に関する各種情報が格納される。設備データベース13fには、停車駅及び走行区間(停車駅間)のそれぞれにおいて設置されている各種設備(例えば、ホームドア、踏切、高架等)に関する情報が格納される。
【0033】
実績データ記憶部13gには、当日、運行中の列車ダイヤに関する情報(後述の実績データ)が格納される。また、混雑情報記憶部13hには、列車ダイヤ、役割データ及び後述の実績データに規定された各列車の停車駅及び走行区間(停車駅間)における現在及び過去の混雑状況を示す情報が格納される。
【0034】
上述した役割データベース13b、兼務可否データベース13c、社員スキルデータベース13d及び乗客支援可能性データベース13eのそれぞれに格納されるデータは、データ変更が発生した場合に適宜更新される。また、運行中の列車ダイヤに関する情報(後述の実績データ)及び現在の混雑状況を示す情報は、図示しないが、運行当日に、例えば、鉄道の運行状況を管理するシステム等から人員シフト計画立案装置10に適宜送信される。なお、各データベース及び各記憶部に格納されるデータの具体的な構成については、後で、図面を参照しながら説明する。
【0035】
[人員シフト計画立案装置のハードウェア構成]
本実施形態の人員シフト計画立案システム1では、人員シフト計画立案装置10は、演算機能及び通信機能を備えたコンピューター装置等の演算処理装置で構成することができる。図2は、人員シフト計画立案装置10として適用可能なコンピューター装置100のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【0036】
コンピューター装置100は、バスライン108に接続されたCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102及びRAM(Random Access Memory)103を備える。また、コンピューター装置100は、バスライン108に接続されたネットワークI/F(インターフェース)104、操作部105、表示部106及び不揮発性ストレージ107を備える。なお、図2には示さないが、コンピューター装置100は、外部機器との間で各種データ(各種情報)の入出力処理を実行する際に使用される各種インターフェースも備える。
【0037】
CPU101は、人員シフト計画立案装置10が備える各種処理機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードをROM102からRAM103に読み出して実行する。この際、RAM103には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータなども一時的に書き込まれる。
【0038】
ネットワークI/F104は、例えば、NIC(Network Interface Card)等で構成され、無線通信を介して接続される各装置との間で、各種データを送受信する。
【0039】
操作部105は、例えば、キーやボタンなどで構成され、オペレーターによって入力された操作内容に応じた操作信号を生成して該操作信号をCPU101に供給する。表示部106は、例えば、液晶パネルなどで構成され、文字や画像などを画面に表示する。また、表示部106をタッチパネルで構成してもよく、その場合には、表示部106と操作部105とが一体的に構成される。
【0040】
不揮発性ストレージ107は、例えば、HDD(Hard disk drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリなどで構成することができる。不揮発性ストレージ107には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、コンピューター装置100を人員シフト計画立案装置10として機能させるためのプログラムが記憶される。なお、人員シフト計画立案装置10が備える各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報(データ)は、ROM102や不揮発性ストレージ107以外に、例えば、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納されていてもよい。
【0041】
[記憶部に格納される各種データの構成]
次に、人員シフト計画立案装置10の記憶部13に格納される各種データの構成例を、図3図9を参照しながら説明する。なお、図示を省略するが、記憶部13には下記データだけでなく、後述の人員シフト計画案の更新処理(後述の図12及び図13参照)において人員シフト計画案の評価点を算出する際に利用される各種データも格納される。
【0042】
(1)列車ダイヤの構成例
図3は、列車ダイヤ記憶部13aに格納される列車ダイヤ(テーブル)のデータ構成例を示す図である。列車ダイヤは、図3に示すように、運行予定の列車(列車番号)毎に、列車種別、車両番号、当該運用前の列車番号、当該運用後の列車番号及び各駅の発着時刻が規定される。例えば、運行予定の列車番号「003」号の列車(以下、「003列車」と称する)については、次のような情報(データ)が、列車ダイヤで規定される。
【0043】
003列車の列車種別(図中の「種別」欄)には、図3に示すように、普通列車が規定され、車両番号(図中の「車両」欄)には番号「11」が規定される。なお、「車両」欄には、手動運転又は自動運転の運転態様も規定され、003列車は、手動運転で運行されるので、003列車の「車両」欄には、手動運転を示す情報が規定される(図中の「(手動)」)。
【0044】
003列車の運用前及び運用後の列車番号(図中の「前運用」欄及び「後運用」欄)には、それぞれ、列車番号「002」号及び「010」号の列車番号が規定される。すなわち、003列車は、当該列車の運用前には002列車として運用され、当該列車の運用後には、010列車として運用される。なお、図3中の107列車のように前運用の列車がなく、A駅に車庫から直接到着する場合には、「前運用」欄にその旨の情報(図中の「車庫発」)が規定される。
【0045】
003列車のA駅の到着時刻及び発車時刻(図中の「A駅着」欄及び「A駅発」欄)には、それぞれ8時及び8時1分が規定され、003列車のB駅の到着時刻及び発車時刻(図中の「B駅着」欄及び「B駅発」欄)には、それぞれ8時5分及び8時6分が規定される。003列車のC駅の到着時刻及び発車時刻(図中の「C駅着」欄及び「C駅発」欄)には、それぞれ8時10分及び8時11分が規定される。また、003列車のD駅の到着時刻及び発車時刻(図中の「D駅着」欄及び「D駅発」欄)には、それぞれ8時15分及び8時17分が規定される。なお、図3中の107列車(特急)のように、B駅及びC駅に停車せずに通過する場合には、「B駅着」欄~「C駅発」欄にはその旨の情報(図中の「通過」)が規定される。
【0046】
(2)役割データベースに格納されるデータの構成例
図4A及び図4Bは、役割データベース13bに格納される役割データ(テーブル)の構成例を示す図である。なお、役割データは、列車ダイヤに規定されている列車毎に設けられ、ここでは、003列車に対して設定されている役割データ(業務データ)の構成例を示す。また、本実施形態では、各列車(列車番号)に対して、運転態様の種別(手動運転又は自動運転)毎に役割データが設定される。図4Aは、003列車を手動運転で運行する場合の役割データの構成例であり、図4Bは、003列車を自動運転で運行する場合の役割データの構成例である。
【0047】
各役割データでは、図4A及び図4Bに示すように、003列車の走行経路上の停車駅及び走行区間(停車駅間)のそれぞれにおいて、各役割(業務)の必要人数が規定される。なお、役割データは、例えば、列車種別、運行経路、運行時間帯、列車間隔等の情報から推定される乗客人数や乗客層などの情報を考慮して、例えば運行管理者等により予め設定される。
【0048】
図4A及び図4B中に規定の役割「運転監視」は、自動運転時に列車内で自動運転を監視する業務であり、役割「運転」は、手動運転時の列車の運転業務(従来の運転士の業務)である。図中に規定の役割「改札」は、停車駅での改札業務(従来の駅員の改札業務)であり、役割「警備」は、停車駅又は列車内での警備業務である。また、図中に規定の役割「乗降支援」は、例えば、車椅子の乗客に対する乗降補助や幼稚園の遠足時の乗降補助などの業務である。なお、図示を省略するが、役割データに規定される役割には、例えば、「車内検札」、「駅案内」、「車内案内」、「販売」等もある。
【0049】
例えば、003列車を手動運転する場合、A駅では、図4Aに示すように、役割「改札」及び「警備」のそれぞれには必要人数として「2」が規定され、その他の役割には必要人数として「0」が規定される。また、例えば、003列車を手動運転する場合、A駅~B駅の走行区間では、役割「運転」及び「警備」のそれぞれには必要人数として「1」が規定され、その他の役割には必要人数として「0」が規定される。
【0050】
一方、例えば、003列車を自動運転する場合、A駅では、図4Bに示すように、役割「改札」及び「警備」のそれぞれには必要人数として「2」が規定され、その他の役割には必要人数として「0」が規定される。また、例えば、003列車を自動運転する場合、A駅~B駅の走行区間では、役割「運転監視」及び「警備」のそれぞれには必要人数として「1」が規定され、その他の役割には必要人数として「0」が規定される。
【0051】
すなわち、図4A及び図4Bに示す例では、手動運転時には、役割「運転監視」及び「運転」の必要人数に、それぞれ「0」及び「1」が規定され、自動運転時には、役割「運転監視」及び「運転」の必要人数に、それぞれ「1」及び「0」が規定される。そして、その他の役割の必要人数は、運転態様に関係なく同じになる。
【0052】
(3)兼務可否データベースに格納されるデータの構成例
図5A及び図5Bは、兼務可否データベース13cに格納される兼務可否データ(テーブル)の構成例を示す図である。なお、兼務可否データは、列車ダイヤに規定されている列車毎に設けられ、ここでは、003列車に対して設定されている兼務可否データの構成例を示す。また、本実施形態では、各列車(列車番号)に対して、運転態様の種別(手動運転又は自動運転)毎に兼務可否データが設定される。図5Aは、003列車を手動運転で運行する場合の兼務可否データの構成例であり、図5Bは、003列車を自動運転で運行する場合の兼務可否データの構成例である。
【0053】
各兼務可否データでは、図5A及び図5Bに示すように、役割間における兼務の可否の関係性が規定される。各兼務可否データにおいて、所定の役割に対して兼務可能な他の役割は「〇」印で示され、兼務不可の他の役割は「×」印で示される。
【0054】
例えば、003列車を手動運転する場合、図5Aに示すように、役割間における兼務の可否の関係性は、次の通りとなる。役割「運転監視」と兼務可能の役割は警備及び乗降支援であり、役割「運転監視」と兼務不可の役割は運転及び改札である。役割「運転」と兼務可能の役割は無く、役割「運転」はそれ以外の全ての役割と兼務不可となる。役割「改札」と兼務可能の役割は警備及び乗降支援であり、役割「改札」と兼務不可の役割は運転監視及び運転である。役割「警備」と兼務可能の役割は運転監視、改札及び乗降支援であり、役割「警備」と兼務不可の役割は運転である。また、役割「乗降支援」と兼務可能の役割は運転監視、改札及び警備であり、役割「乗降支援」と兼務不可の役割は運転である。
【0055】
一方、003列車を自動運転する場合における役割間の兼務可否の関係性は、図5Bに示すように、003列車を手動運転する場合のそれと同様となる。
【0056】
なお、図5Aに示す例(手動運転時の兼務可否データ)では、役割「運転監視」に関する情報も規定しているが、本発明はこれに限定されない。手動運転時には、役割「運転監視」はないので、図5Aに示す兼務可否データにおいて、役割「運転監視」に関する情報を規定しなくてもよいし、役割「運転監視」については、全て兼務不可(「×」印)としてもよい。また、図5Bに示す例(自動運転時の兼務可否データ)では、役割「運転」に関する情報も規定しているが、本発明はこれに限定されない。自動運転時には、役割「運転」はないので、図5Bに示す兼務可否データにおいて、役割「運転」に関する情報を規定しなくてもよい。
【0057】
(4)社員スキルデータベースに格納されるデータの構成例
図6は、社員スキルデータベース13dに格納される社員スキルデータ(テーブル)の構成例を示す図である。社員スキルデータでは、図6に示すように、社員毎に担当可能な役割の情報が規定される。社員スキルデータにおいて、所定の社員が担当可能な役割は「〇」印で示され、担当不可の役割は「×」印で示される。
【0058】
図6に示す例では、「社員1」及び「社員2」のそれぞれが担当可能な役割は、運転監視、運転、改札及び乗降支援であり、担当不可の役割は、警備である。また、「社員N」が担当可能な役割は、乗降支援であり、その他の役割は担当不可である。
【0059】
(5)乗客支援可能性データベースに格納されるデータの構成例
図7は、乗客支援可能性データベース13eに格納される乗客支援可能性データ(テーブル)の構成例を示す図である。乗客支援可能性データでは、図7に示すように、業務支援可能な登録済みの乗客毎に、支援可能な役割及びその実行可能性に関する情報が規定される。図7に示す例では、「乗客A」が支援可能な役割は、警備及び乗降支援であり、役割「警備」の実行可能性は10%であり、役割「乗降支援」の実行可能性は60%である。
【0060】
なお、乗客支援可能性データでは、図7に示すように、乗客の支援可能な役割の実行可能性をパーセント表示する。例えば、乗客支援可能性データにおいて、所定の役割に対して実行可能性として10%が規定されている場合には、当該乗客が、10回の所定の役割の依頼に対して1回、所定の役割を実行可能であることを示す。この実行可能性の数値は、所定の役割に対する各乗客の過去の支援実績に基づいて設定される。
【0061】
また、図7では図示を省略するが、乗客支援可能性データでは、登録済みの乗客毎に、例えば、利用区間情報、過去の支援実施情報(例えば、役割毎の支援実施回数及び支援実施日時等の情報)が格納されている。これらの情報は、乗客支援評価部14により作成された更新後の人員シフト計画案の評価処理や、支援依頼先の乗客の選定処理などで使用される(後述の図12参照)。
【0062】
(6)設備データベースに格納されるデータの構成例
図8は、設備データベース13fに格納される設備データ(テーブル)の構成例を示す図である。設備データでは、図8に示すように、列車の走行経路上の停車駅及び走行区間(停車駅間)のそれぞれにおいて、各種設備の設置の有無が規定される。なお、ここでは、図3に示す列車ダイヤで規定されている列車の走行経路上の停車駅及び走行区間での設備データを示す。
【0063】
図8に示す設備データでは、「ホームドア」、「高架」及び「踏切」等の設備の設置の有無が規定される。また、図8には示さないが、設備データには、設備の項目として、「カメラ(駅内,列車内)」や「リモート設備(改札)」も規定される。
【0064】
設備データにおいて、ホームドアが設置されている場合には「ホームドア」欄に「1」が規定され、ホームドアが設置されていない場合には「ホームドア」欄に「0」が規定される。設備データにおいて、高架が設置されている場合には「高架」欄に「1」が規定され、高架が設置されていない場合には「高架」欄に「0」が規定される。また、設備データにおいて、「踏切」欄には、踏切の設置台数(0,1,2,3…)が規定される。
【0065】
さらに、設備データでは、停車駅及び走行区間の「見通し」の良し悪しも規定される。「見通し」の良し悪しは、例えば運行管理者等により予め判定された数値が規定され、設備データ中の「見通し」欄には、-2~+2の範囲内の数値が規定される。なお、「見通し」が良い及び非常に良い場合には、「見通し」欄にそれぞれ「1」及び「2」が規定され、「見通し」が悪い及び非常に悪い場合には、「見通し」欄にそれぞれ「-1」及び「-2」が規定される。また、「見通し」が良くも悪くもないと判定された場合には「見通し」欄に「0」が規定される。
【0066】
図8に示す例では、「A駅」では、ホームドア及び高架が設置され、踏切は無く、「見通し」が良いので、「ホームドア」欄、「高架」欄及び「見通し」欄にはそれぞれ「1」が規定され、「踏切」欄には「0」が規定される。また、例えば、「A駅~B駅」の走行区間では、高架が設置され、踏切は無く、「見通し」が良いので、「高架」欄及び「見通し」欄にはそれぞれ「1」が規定され、「ホームドア」欄及び「踏切」欄には「0」が規定される。
【0067】
なお、設備データに規定の各種情報は、運用態様変更評価部15により作成された更新後の人員シフト計画案の評価処理で使用される(後述の図13参照)。
【0068】
(7)実績データ記憶部に格納されるデータの構成例
図9は、実績データ記憶部13gに格納される実績データ(テーブル)のデータ構成例を示す図である。実績データは、現在の列車の運行状況を示すデータであり、図3に示す列車ダイヤと同様の構成となる。すなわち、実績データでは、運行中の列車(列車番号)毎に、列車種別、車両番号、当該運用前の列車番号、当該運用後の列車番号及び各駅の発着時刻が規定される。
【0069】
図9に示す例では、現在の列車の運行がダイヤ通りに行われている場合のデータ構成例を示す。それゆえ、図9に示す実績データと、図3に示す列車ダイヤの構成とは同じになる。ただし、例えば、所定の列車の運行が予定より遅れている場合には、実績データに格納される所定の列車の各駅の発着時刻が、列車ダイヤに規定のそれと異なる。
【0070】
(8)混雑情報記憶部に格納されるデータの構成例
混雑情報記憶部13hに格納されている現在の混雑状況を示す情報の構成例についての図示は省略するが、現在の混雑状況を示す情報は、列車ダイヤ、役割データ及び実績データに規定された各列車の停車駅及び走行区間(停車駅間)に対して紐付けられている。また、混雑情報記憶部13hには、各列車の停車駅及び走行区間の現在の混雑状況を示す情報だけでなく、過去の混雑状況を示す情報も格納される。そして、この過去の混雑状況を示す情報も、列車ダイヤ、役割データ及び実績データに規定された各列車の停車駅及び走行区間に対して紐付けられている。
【0071】
[乗客の携帯端末の構成]
乗客の携帯端末30は、演算機能及び通信機能を備え、且つ、携帯可能な例えばスマートフォン、タブレット等の演算処理装置で構成することができる。乗客の携帯端末30には、乗客支援用アプリケーションソフトウェアがインストールされ、携帯端末30で起動された乗客支援用アプリケーション上における乗客の操作により各種情報が登録される。なお、人員シフト計画立案装置10から登録済みの乗客の携帯端末30への支援依頼は、例えば、メール、SMS(Short Message Service)、LINE(登録商標)等のコミニュケーションツールを利用して行われる。
【0072】
また、乗客支援用アプリケーション上では、乗客自身の過去の支援実績等の情報が表示される。図10は、乗客の携帯端末30の表示画面30aに表示された乗客自身の過去の支援実績等の情報の表示態様を示す図である。携帯端末30の表示画面30aには、乗客支援可能な役割の種別毎に、過去の支援回数(図中の「累計」欄)や、最新の支援実行日及び実行駅等の情報(図中の「最新」欄)が表示される。また、携帯端末30の表示画面30aには、例えば、定期券の情報(区間等)や、支援実行に伴い乗客が獲得したポイント数(図中の「25pt」)などの情報も表示される。なお、これらの登録済みの各乗客の各種情報は、図示を省略するが、記憶部13に記憶される。
【0073】
[人員シフト計画立案処理(最適化処理)の処理フロー]
次に、人員シフト計画立案装置10の人員シフト計画立案部11により実行される最適化ソルバーを用いた人員シフト計画立案処理(最適化処理)の処理フローを説明する。図11は、人員シフト計画立案部11により実行される人員シフト計画立案処理の手順を示すフローチャートである。
【0074】
図11に示す人員シフト計画立案処理は、例えば、計画時に人員シフト計画案を作成する場合だけでなく、運行当日に人員シフト計画案を更新する場合にも実行される(後述の図12図13中の最適化処理)。なお、人員シフト計画立案部11による人員シフト計画立案処理の制御は、図2中のCPU101により行われる。
【0075】
まず、人員シフト計画立案部11は、通信ネットワーク31を介して、列車ダイヤ立案装置20から列車ダイヤ(図3参照)を受信する(S1)。また、S1の処理では、人員シフト計画立案部11は、受信した列車ダイヤを列車ダイヤ記憶部13aに格納する。
【0076】
次いで、人員シフト計画立案部11は、後述のS2~S6の処理を、人員シフト計画の立案対象となる各列車の停車駅(例えば図4A中の「A駅」等)毎及び走行区間(例えば図4A中の「A駅~B駅」等)毎に繰り返し実行する。例えば、003列車に対しては、「A駅」、「A駅~B駅」、「B駅」、「B駅~C駅」、「C駅」…の順で、後述のS2~S6の処理が繰り返し実行される。
【0077】
人員シフト計画立案部11は、まず、列車ダイヤを制約条件に変換する(S2)。この処理では、人員シフト計画立案部11は、列車ダイヤに規定の各情報に対応する制約条件を作成する。
【0078】
ここで、列車ダイヤの制約条件への変換処理の一例として、例えば、現在実行中の処理が、所定列車(例えば、図3中の003列車等)の所定駅に対して行われている場合を考える。この場合、S2の処理では、人員シフト計画立案部11は、列車ダイヤに規定の所定駅(例えば、図3中のA~D駅等)での発着時刻を用いて、例えば、下記式で表される制約条件を作成する。
【0079】
【数1】
【0080】
到着時刻に関する上記制約条件では、所定列車が所定駅に到着する時刻が、前駅の発車時刻に駅間時間(走行時間)を加算した時刻以降となることが規定される。発車時刻に関する1つ目の上記制約条件では、所定列車が所定駅を発車する時刻が、到着時刻に停車時間を加算した時刻以降となることが規定される。また、発車時刻に関する2つ目の上記制約条件では、所定列車が所定駅を発車する時刻が、列車ダイヤに規定された発車時刻以降となることが規定される。なお、発車時刻に関する1つ目の上記制約条件では、列車ダイヤに規定された発車時刻より前に所定列車が所定駅を発車する場合も含まれるので、当該場合を含ませないようにするため、発車時刻に関する2つ目の上記制約条件が設けられる。
【0081】
次いで、人員シフト計画立案部11は、役割データを制約条件に変換する(S3)。この処理では、人員シフト計画立案部11は、役割データに規定の各役割と必要人数との関係性に対応する制約条件を作成する。
【0082】
ここで、役割データの制約条件への変換処理の一例として、例えば、所定駅での役割「警備」及び「運転監視」に対して生成される制約条件を説明する。この場合、S3の処理では、人員シフト計画立案部11は、役割「警備」及び「運転監視」に対して下記式で表される制約条件を作成する。
【0083】
【数2】
【0084】
上記制約条件に記載の「人j,k」は、社員jがkの役割を担当するか否かを示す変数であり、最適化ソルバーでの決定変数である。なお、インデックス「j」は社員の識別番号(図6中のj=1~N)であり、インデックス「k」は役割の種別を示す。そして、社員jがkの役割を担当する場合には、人j,k=1がセットされ、担当しない場合には、人j,k=0がセットされる。また、上記制約条件中の「必要警備員数」及び「必要運転監視員数」は、役割データ(図4A及び図4B参照)において、役割「警備」及び「運転監視」に対してそれぞれ規定されている必要人数である。
【0085】
警備員数に関する上記制約条件では、役割「役割」を担当する社員数が必要警備員数以上となることが規定される。また、運転監視員数に関する上記制約条件では、役割「運転監視」を担当する社員数が必要運転監視員数以上となることが規定される。なお、具体的な説明は省略するが、S3の処理では、図4A及び図4Bに示す役割データに規定する他の各役割(運転、改札、乗降支援等)についても、同様にして制約条件が作成される。
【0086】
次いで、人員シフト計画立案部11は、兼務可否データを制約条件に変換する(S4)。この処理では、人員シフト計画立案部11は、兼務可否データに規定の役割間の兼務可能性に対応する制約条件を作成する。
【0087】
ここで、兼務可否データの制約条件への変換処理の一例として、例えば、所定列車(例えば、図3中の003列車等)の所定駅での役割「警備」と「運転監視」との兼務可能性に対して作成される制約条件を説明する。図5A及び図5Bに示すように、役割「警備」と「運転監視」とは兼務可能であるので、S4の処理では、人員シフト計画立案部11は、全ての社員に対して、下記式で表される役割「警備」及び「運転監視」の兼務可能性に関する制約条件を作成する。
【0088】
【数3】
【0089】
社員jが役割「警備」及び「運転監視」を兼務する場合には、人j,警備員役割=1及び人j,運転監視員役割=1となり、両者の加算値は2となるので兼務可能性に関する上記制約条件が満たされる。また、社員jが役割「警備」及び「運転監視」の一方しか担当しない場合には、人j,警備員役割及び人j,運転監視員役割の一方が1となり、他方が0となるので、両者の加算値は1となり、兼務可能性に関する上記制約条件が満たされる。さらに、社員jが役割「警備」及び「運転監視」の両方とも担当しない場合には、人j,警備員役割及び人j,運転監視員役割はともに0となるので、両者の加算値は0となり、兼務可能性に関する上記制約条件が満たされる。すなわち、兼務可能性に関する上記制約条件では、役割「警備」及び「運転監視」の両方を担当(兼務)する社員がいてもよいし、両役割の一方のみを担当する社員がいてもよいし、両役割を担当しない社員がいてもよいことを規定する。なお、具体的な説明は省略するが、S4の処理では、図5A及び図5Bに示す兼務可否データに規定する他の役割間(例えば、警備及び改札間や、運転監視及び乗降支援間など)での兼務可能性に対応する制約条件も同様にして作成される。
【0090】
次いで、人員シフト計画立案部11は、社員スキルデータを制約条件に変換する(S5)。この処理では、人員シフト計画立案部11は、社員スキルデータに規定の各社員の担当可能及び担当不可の役割に対応する制約条件を作成する。
【0091】
ここで、社員スキルデータの制約条件への変換処理の一例として、例えば、役割「警備」は担当可能(図6中の「〇」印)であるが、役割「運転監視」は担当不可である(図6中の「×」印)の社員jに対して作成される制約条件を説明する。この場合、S5の処理では、人員シフト計画立案部11は、社員jのスキルに関して下記式で表される制約条件を作成する。
【0092】
【数4】
【0093】
社員jは、役割「警備」は担当可能であるので、警備員役割に関する上記制約条件では、社員jが役割「警備」を担当してもよいし(人j,警備員役割=1)、担当しなくてもよい(人j,警備員役割=0)ことが規定される。一方、社員jは、役割「運転監視」は担当不可であるので、運転監視員役割に関する上記制約条件では、社員jは役割「運転監視」を担当しないこと(人j,運転監視員役割=0)が規定される。なお、具体的な説明は省略するが、S5の処理では、図6Bに示す社員スキルデータに規定する他の社員についても、各社員が有するスキル(担当可能な役割及び担当不可の役割)に対応した制約条件が同様にして作成される。
【0094】
次いで、人員シフト計画立案部11は、最適化ソルバーを使用して、上述した各種制約条件を満たすような解(決定変数「人j,k」)を求める(S6)。なお、この処理では、最適化ソルバーとして、例えば、既存のMIPソルバーを使用することができる。この処理により、現在、処理対象となっている所定列車の所定の停車駅又は所定の走行区間において、各役割を担当する社員(各役割kに対して人j,k=1となる社員j)が解として決定される。なお、この処理では、複数の解が求められることもある。
【0095】
そして、上述したS2~S6の処理が、人員シフト計画の立案対象となる各列車の停車駅毎及び走行区間(停車駅間)毎に繰り返し行われることにより、人員シフト計画案が作成される。なお、この際、複数の人員シフト計画案が作成される場合もある。
【0096】
次いで、人員シフト計画立案部11は、作成された人員シフト計画案を出力する(S7)。そして、S7の処理後、人員シフト計画立案部11は、人員シフト計画立案処理(最適化処理)を終了する。
【0097】
なお、S7の処理での人員シフト計画案の出力処理の内容は、人員シフト計画立案処理(最適化処理)の実行タイミングに応じて変化する。
【0098】
例えば、上述した人員シフト計画立案処理が運行当日前の計画時(第1の実行タイミング)に行われる場合には、S7の処理において、人員シフト計画立案部11は、作成された人員シフト計画案を人員シフト計画立案装置10の表示部(図2中の表示部106等)に出力することができる。これにより、人員シフト計画案が表示部に表示される。この場合、例えば、求められた人員シフト計画案が複数あるときには、運行管理者等が、表示された複数の人員シフト計画案の内容を確認し、その中から一つの人員シフト計画案を選択することができる。なお、人員シフト計画案の表示態様については、後で、図面を参照しながら説明する。
【0099】
また、後述するように、上述した人員シフト計画立案処理(最適化処理)は、後述の図12又は図13に示す人員シフト計画案の更新処理で呼び出されて実行される場合もある。ただし、この場合には、まず、人員シフト計画案の更新処理の開始直後に、更新後の役割データ及び/又は更新後の社員スキルデータに基づいて上述した人員シフト計画立案処理(最適化処理)が行われる(後述のS12,S22:第2の実行タイミング)。そして、当該人員シフト計画立案処理により解が得られなかった場合には、乗客の支援可能性又は役割の運用態様の変更可能性を考慮した役割データに基づいて人員シフト計画立案処理(最適化処理)が再度行われる(後述のS15,S25:第3の実行タイミング)。
【0100】
第2の実行タイミングで人員シフト計画立案処理(最適化処理)が行われた場合には、S7の処理において、人員シフト計画立案部11は、まず、更新前(計画時)の人員シフト計画案と更新後の人員シフト計画案との間の差分量を目的関数として設定する。次いで、人員シフト計画立案部11は、更新前の人員シフト計画案と更新後の人員シフト計画案との間において、決定変数「人j,k」が一つ変更されていれば差分量を1加算し、差分量の合計値が最小となるものを解(更新後の人員シフト計画案)として決定する。なお、この際、複数の更新後の人員シフト計画案が決定される場合もある。そして、S7の処理では、人員シフト計画立案部11は、最適化処理の実行結果を乗客支援評価部14又は運用態様変更評価部15に出力する。
【0101】
一方、第3の実行タイミングで人員シフト計画立案処理(最適化処理)が行われた場合には、S7の処理において、人員シフト計画立案部11は、乗客の支援可能性又は役割の運用態様の変更可能性を考慮した更新後の人員シフト計画案を乗客支援評価部14又は運用態様変更評価部15に出力する。
【0102】
[乗客支援可能性を考慮した人員シフト計画案の更新処理の処理フロー]
次に、人員シフト計画立案装置10の乗客支援評価部14により実行される乗客支援可能性を考慮した人員シフト計画案の更新処理の処理フローを説明する。図12は、乗客支援評価部14により実行される人員シフト計画案の更新処理の手順を示すフローチャートである。なお、乗客支援評価部14による人員シフト計画案の更新処理の制御は、図2中のCPU101により行われる。また、図12に示す乗客支援可能性を考慮した人員シフト計画案の更新処理は、運行当日に人員シフト計画案を変更する必要性が発生した場合に実行される。
【0103】
まず、乗客支援評価部14は、更新された当日の役割データ及び/又は社員スキルデータを取得するとともに、当日(計画時)の人員シフト計画案を取得する(S11)。
【0104】
なお、運行当日に、例えば、所定の駅で新たに役割「乗降支援」が必要となった場合、例えば運行管理者等により当日の役割データ(図4A及び図4B参照)が更新される。具体的には、運行管理者等により当日の役割データ中の所定駅での役割「乗降支援」に「1」等の必要人数が規定された役割データが作成され、更新後の役割データが役割データベース13bに格納される。そして、この場合には、S11の処理において、乗客支援評価部14は、役割データベース13bに格納された更新後の当日の役割データを取得する。
【0105】
また、運行当日に、例えば、社員(運転士や駅員など)の欠勤があった場合には、例えば運行管理者等により社員スキルデータ(図6参照)が更新される。具体的には、社員スキルデータにおいて、欠勤となった社員の全ての役割に担当不可(「×」印)がセットされ、更新後の社員スキルデータが社員スキルデータベース13dに格納される。そして、この場合には、S11の処理において、乗客支援評価部14は、社員スキルデータベース13dに格納された更新後の社員スキルデータを取得する。
【0106】
さらに、運行当日に、例えば、所定駅で新たに役割「乗降支援」が必要となり且つ社員の欠勤があった場合には、S11の処理において、乗客支援評価部14は、更新後の当日の役割データ及び更新後の社員スキルデータの両方を取得する。
【0107】
また、例えば運行管理者等により予め決定(選択)されている当日の人員シフト計画案は、運行当日前に予め人員シフト計画立案装置10に入力され、記憶部13に格納される。それゆえ、S11の処理において、乗客支援評価部14は、記憶部13に予め格納されている当日の人員シフト計画案を取得する。
【0108】
次いで、乗客支援評価部14は、S11の処理で取得した当日(計画時)の人員シフト計画案と更新後の人員シフト計画案との差分量を目的関数として、最適化処理を実行する(S12)。S12の処理では、乗客支援評価部14は、図11で説明した人員シフト計画立案部11による最適化ソルバーを用いた人員シフト計画立案処理(最適化処理)を呼び出して実行する。この際、上述した図11中のS7の処理において、当日の人員シフト計画案と更新後の人員シフト計画案との差分量が最小となる人員シフト計画案が解(更新後の人員シフト計画案)として求められる。そして、上述した図11中のS7の処理において、最適化処理の実行結果が、人員シフト計画立案部11から乗客支援評価部14に出力される。
【0109】
次いで、乗客支援評価部14は、S12の最適化処理で解(更新後の人員シフト計画案)が得られたか否かを判定する(S13)。
【0110】
S13において、乗客支援評価部14が、解が得られたと判別した場合(S13がYES判定である場合)、乗客支援評価部14は、人員シフト計画案の更新処理を終了する。なお、S12の最適化処理で解(更新後の人員シフト計画案)が得られた場合とは、乗客の支援を受けることなく、新たな人員シフト計画案が得られた場合である。そして、S13がYES判定である場合、S12の最適化処理で得られた更新後の人員シフト計画案は、人員シフト計画立案装置10の表示部(図2中の表示部106等)に出力され、表示される。なお、S12の最適化処理で得られた更新後の人員シフト計画案が複数ある場合には、例えば運行管理者等により、その中から一つの更新後の人員シフト計画案が決定される。
【0111】
一方、S13において、乗客支援評価部14が、解が得られなかったと判別した場合(S13がNO判定である場合)、乗客支援評価部14は、後述のS14~S16の処理を、乗客参加可能な役割毎に繰り返し実行する。なお、乗客参加可能な役割は、例えば、乗降支援、警備、駅案内等である。
【0112】
S13がNO判定である場合、乗客支援評価部14は、まず、S11の処理で取得された更新後の当日の役割データから、現在、処理対象となっている乗客参加可能な所定の役割(例えば乗降支援等)を削除した役割データを作成する(S14)。
【0113】
次いで、乗客支援評価部14は、現在、処理対象となっている乗客参加可能な所定の役割を削除した役割データを用いて、最適化処理を実行する(S15)。S15の処理では、乗客支援評価部14は、図11で説明した人員シフト計画立案部11による最適化ソルバーを用いた人員シフト計画立案処理(最適化処理)を呼び出して実行する。すなわち、S15の最適化処理では、現在、処理対象となっている乗客参加可能な所定の役割を乗客が担当することを前提とし、所定の役割以外の役割を社員で担当可能となるような人員シフト計画立案を解として求める。なお、S15の最適化処理では、複数の解(更新後の人員シフト計画案)が得られる場合もある。
【0114】
次いで、乗客支援評価部14は、S15の最適化処理で得られた解(更新後の人員シフト計画案)の評価点を算出する(S16)。この処理では、乗客支援評価部14は、乗客が支援する停車駅又は走行区間における、例えば、利用者数(定期券保持者数等)、乗客支援用アプリケーションへの登録者数、乗客支援の過去の参加者数、時間帯等の情報に応じて評価点を算出する。これらの情報は、例えば、現在の運行状況を示す実績データ、乗客支援可能性データに登録されている乗客数、及び、乗客支援可能性データに格納されている各種情報(各乗客の役割毎の支援実施回数及び支援実施日時等)を参照して取得される。なお、乗客が支援する停車駅又は走行区間における、利用者数(定期券保持者数等)に関する情報は、図示を省略するが、記憶部13に記憶されている。
【0115】
S16の評価点の算出処理では、図12に示すように、例えば、乗客が支援する停車駅又は走行区間(停車駅間)での、定期券保持者数が2000人以上で4000人未満であれば、評価点が1点加算される。例えば、定期券保持者数が4000人以上で80000人未満であれば、評価点が2点加算され、定期券保持者数が8000人以上で16000人未満であれば、評価点が3点加算される。また、例えば、定期券保持者数が16000人以上で320000未満であれば、評価点が4点加算され、定期券保持者数が32000人以上であれば、評価点が5点加算される。
【0116】
また、S16の評価点の算出処理では、乗客が支援する停車駅又は走行区間(停車駅間)での、乗客支援用アプリケーションへの登録者数が、例えば200人以上で400人未満であれば、評価点が1点加算される。例えば、登録者数が400人以上で800人未満であれば、評価点が2点加算され、登録者数が800人以上で1600人未満であれば、評価点が3点加算される。また、例えば、登録者数が1600人以上で3200人未満であれば、評価点が4点加算され、登録者数が3200人以上であれば、評価点が5点加算される。
【0117】
また、S16の評価点の算出処理では、乗客が支援する停車駅又は走行区間(停車駅間)での、過去の乗客支援の参加者数が、例えば20人以上で40人未満であれば、評価点が1点加算され、参加者数が40人以上で80人未満であれば、評価点が2点加算される。また、例えば、参加者数が80人以上で160人未満であれば、評価点が3点加算され、参加者数が160人以上で320人未満であれば、評価点が4点加算され、参加者数が320人以上であれば、評価点が5点加算される。
【0118】
さらに、S16の評価点の算出処理では、乗客が支援する停車駅又は走行区間(停車駅間)の時間帯がラッシュのピーク時である場合には、評価点が5点減点される。すなわち、利用者数、登録者数、乗客支援可能な乗客数が多いほど、評価点が高くなり、混雑する時間帯では評価点が低くなる。このような評価を行った場合、乗客の支援実績及び現在の運行状況に適した人員シフト計画案の選択が可能になる。
【0119】
そして、乗客参加可能な全ての役割に対して、上述したS14~S16の処理を繰り返した後、乗客支援評価部14は、S14~S16の処理で得られた複数の解(更新後の人員シフト計画案)から、乗客参加の人員シフト計画案を選定する(S17)。この処理では、乗客支援評価部14は、各解(更新後の人員シフト計画案)の評価点に基づき更新後の人員シフト計画案(以下、「乗客参加案」と称する)を選定する。具体的には、乗客支援評価部14は、評価点の最も高い乗客参加案を含む所定数の乗客参加案を選定する。
【0120】
次いで、乗客支援評価部14は、支援依頼先の乗客を選定する(S18)。この処理では、乗客支援評価部14は、乗客の業務参加の実績情報及び乗客の現在の位置情報等に基づいて各乗客を評価し、その評価結果に基づいて、支援依頼先の乗客を選定する。S18の処理で用いられる乗客の業務参加の実績情報としては、登録済みの各乗客の、例えば、依頼対象の役割の過去の実施時期、依頼対象の役割の過去の実施回数等の情報が挙げられる。なお、S18の処理では、乗客支援評価部14は、乗客支援可能性データを参照して、登録済みの各乗客の、例えば、依頼対象の役割の過去の実施時期、依頼対象の役割の過去の実施回数等の各種情報を取得する。また、S18の処理では、乗客支援評価部14は、乗客の携帯端末30の位置情報を乗客の現在の位置情報として取得する。
【0121】
S18の乗客の評価処理では、図12に示すように、例えば、依頼対象の役割の過去の実施時期が6ケ月以内であれば、評価点が1点加算される。例えば、依頼対象の役割の過去の実施回数が1回であれば、評価点が1点加算され、実施回数が2回であれば、評価点が2点加算され、実施回数が3回であれば、評価点が3点加算される。また、例えば、乗客の現在位置が、例えば、支援場所(駅)から500m以内であれば、評価点が3点加算される。さらに、例えば、乗客の支援場所(駅)への到着時刻が、必要とする支援の遂行時刻より後になる場合には、条件不一致として当該乗客は対象外となる。なお、乗客の支援場所(駅)への到着時刻は、当該乗客の現在位置及び過去の実績情報(支援実施時刻)から予測される。
【0122】
そして、S18の処理では、乗客支援評価部14は、上記評価処理の結果に基づき、評価点の高い所定数の乗客に対して支援依頼を行う。この支援依頼は、乗客支援評価部14から乗客の携帯端末30に、例えば、支援依頼メール等が自動的に送信されることにより行われる。
【0123】
上述のように、支援依頼先の乗客を選定処理(S18)では、乗客の役割参加の可能性に関する評価情報として、各乗客の、例えば、役割の過去の実施時期、役割の過去の実施回数等の各種情報、並びに、乗客の現在の位置情報を使用する。このような評価を行うことにより、支援可能性の高い乗客を確実にピックアップすることができる。
【0124】
S18の処理後、乗客支援評価部14は、上述した人員シフト計画案の更新処理を終了する。なお、上述した乗客支援評価部14による人員シフト計画案の更新処理で選定され且つ乗客に支援が受諾された乗客参加案が複数ある場合には、例えば運行管理者等により、その中から一つの乗客参加案が決定される。そして、乗客支援評価部14により決定された乗客参加案(更新後の人員シフト計画案)は、人員シフト計画立案装置10の表示部(図2中の表示部106等)に出力され、表示される。なお、乗客参加案の表示態様については、後で、図面を参照しながら説明する。
【0125】
[役割の運用態様の変更を考慮した人員シフト計画案の更新処理の処理フロー]
次に、人員シフト計画立案装置10の運用態様変更評価部15により実行される役割の運用態様の変更を考慮した人員シフト計画案の更新処理の処理フローを説明する。図13は、運用態様変更評価部15により実行される人員シフト計画案の更新処理の手順を示すフローチャートである。なお、運用態様変更評価部15による人員シフト計画案の更新処理の制御は、図2中のCPU101により行われる。また、図13に示す役割の運用態様の変更を考慮した人員シフト計画案の更新処理は、運行当日に人員シフト計画案を変更する必要性が発生した場合に実行される。
【0126】
まず、運用態様変更評価部15は、更新された当日の役割データ及び/又は社員スキルデータを取得するとともに、当日(計画時)の人員シフト計画を取得する(S21)。なお、運用態様変更評価部15によるS21の処理は、乗客支援評価部14による上述したS11の処理と同様にして行われる。
【0127】
次いで、運用態様変更評価部15は、S21の処理で取得した当日(計画時)の人員シフト計画案と更新後の人員シフト計画案との差分量を目的関数として、最適化処理を実行する(S22)。S22の処理では、運用態様変更評価部15は、図11で説明した人員シフト計画立案部11による最適化ソルバーを用いた人員シフト計画立案処理(最適化処理)を呼び出して実行する。この際、上述した図11中のS7の処理において、当日の人員シフト計画案と更新後の人員シフト計画案との差分量が最小となる人員シフト計画案が解(更新後の人員シフト計画案)として求められる。そして、上述した図11中のS7の処理において、最適化処理の実行結果が、人員シフト計画立案部11から運用態様変更評価部15に出力される。
【0128】
次いで、運用態様変更評価部15は、S22の最適化処理で解(更新後の人員シフト計画案)が得られたか否かを判定する(S23)。
【0129】
S23において、運用態様変更評価部15が、解が得られたと判別した場合(S23がYES判定である場合)、運用態様変更評価部15は、人員シフト計画案の更新処理を終了する。なお、S22の最適化処理で解(更新後の人員シフト計画案)が得られた場合とは、各役割(業務)の運用態様を変更することなく、人員シフト計画案が得られた場合である。そして、S23がYES判定である場合、S22の最適化処理で得られた更新後の人員シフト計画案は、人員シフト計画立案装置10の表示部(図2中の表示部106等)に出力され、表示される。なお、S22の最適化処理で得られた更新後の人員シフト計画案が複数ある場合には、例えば運行管理者等により、その中から一つの運用態様変更案が決定される。
【0130】
一方、S23において、運用態様変更評価部15が、解が得られなかったと判別した場合(S23がNO判定である場合)、運用態様変更評価部15は、後述のS24~S26の処理を、役割データ(図4A及び図4B)に規定されている役割毎に繰り返し実行する。
【0131】
S23がNO判定である場合、運用態様変更評価部15は、まず、S21の処理で取得された更新後の当日の役割データから、現在、処理対象となっている役割(例えば、運転、警備、改札等)の運用態様を変更した役割データを作成する(S24)。
【0132】
例えば、現在、処理対象となっている役割が運転であり、その運用態様を「手動」から「自動」に変更する場合には、S24の処理において、使用する役割データを手動運転用の役割データ(図4A)から自動運転用の役割データ(図4B)に変更する。一方、例えば、現在、処理対象となっている役割が運転であり、その運用態様を「自動」から「手動」に変更する場合には、S24の処理において、使用する役割データを自動運転用の役割データ(図4B)から手動運転用の役割データ(図4A)に変更する。
【0133】
また、例えば、現在、処理対象となっている役割が警備であり、その運用態様を「手動」から「遠隔」に変更する場合には、S24の処理において、使用する役割データ中の役割「警備」に規定される必要人数を「0」に変更する。一方、例えば、現在、処理対象となっている役割が警備であり、その運用態様を「遠隔」から「手動」に変更する場合には、S24の処理において、使用する役割データ中の役割「警備」に規定される必要人数を「1」等に変更する。
【0134】
さらに、例えば、現在、処理対象となっている役割が改札であり、その運用態様を「手動」から「自動」又は「遠隔」に変更する場合には、S24の処理において、使用する役割データ中の役割「改札」に規定される必要人数を「0」に変更する。一方、例えば、現在、処理対象となっている役割が改札であり、その運用態様を「自動」又は「遠隔」から「手動」に変更する場合には、S24の処理において、使用する役割データ中の役割「改札」に規定される必要人数を「1」等に変更する。
【0135】
次いで、運用態様変更評価部15は、現在、処理対象となっている役割の運用態様が変更された役割データを用いて、最適化処理を実行する(S25)。S25の処理では、運用態様変更評価部15は、図11で説明した人員シフト計画立案部11による最適化ソルバーを用いた人員シフト計画立案処理(最適化処理)を呼び出して実行する。なお、S25の最適化処理では、複数の解(更新後の人員シフト計画案)が得られる場合もある。
【0136】
次いで、運用態様変更評価部15は、S25の最適化処理で得られた解(更新後の人員シフト計画案)の評価点を算出する(S26)。この処理では、更新後の各人員シフト計画案で運用態様が変更された列車の停車駅又は走行区間(停車駅間)における、設備、見通し、混雑状況等に応じて評価点が算出される。それゆえ、運用態様変更評価部15は、例えば、運用態様が変更された列車の停車駅及び走行区間の設備データ(図8参照)、混雑情報記憶部13hに格納された停車駅及び走行区間での現在及び過去の混雑情報等を参照して、S26での評価点の算出処理を行う。
【0137】
具体的には、役割の運用態様を「手動」から「自動」又は「遠隔」に変更した場合には、次のような評価点の算出処理が行われる。例えば、処理対象の役割が運転であり、評価対象となる列車の停車駅にホームドアが設置されている場合には、図13に示すように、評価点が3点加算される。また、例えば、処理対象の役割が運転であり、評価対象となる列車の停車駅又は走行区間(停車駅間)に踏み切りが1台設置されている場合には、評価点が1点減算される。例えば、処理対象の役割が運転であり、評価対象となる列車の停車駅又は走行区間に踏み切りが2台設置されている場合には、評価点が2点減算される。さらに、例えば、処理対象の役割が運転であり、評価対象となる列車の停車駅又は走行区間に踏み切りが3台設置されている場合には、評価点が3点減算される。
【0138】
例えば、処理対象の役割が運転であり、評価対象となる列車の停車駅又は走行区間(停車駅間)が高架である場合には、評価点が3点加算される。また、例えば、処理対象の役割が運転である場合において、見通しの良し悪しを示す評価点については、例えば運行管理者等により予め定義された評価点(-2点~+2点)が加点又は減点される。さらに、例えば、処理対象の役割が運転であり、評価対象となる列車の停車駅又は走行区間において当日、混雑が無ければ、評価点が1点加算される。
【0139】
また、例えば、処理対象の役割が警備であり、評価対象となる列車の停車駅内又は列車内にカメラが設置されている場合には、図13に示すように、評価点が1点加算される。例えば、処理対象の役割が警備であり、評価対象となる列車の停車駅又は走行区間(停車駅間)において当日、混雑が無ければ、評価点が1点加算される。例えば、処理対象の役割が警備である場合において、評価対象となる列車の停車駅又は走行区間が要注意時間帯・区間であるか否かを示す評価点については、例えば運行管理者等により予め定義された評価点(-2点~+2点)が加点又は減点される。なお、要注意時間帯・区間に関する評価点は、評価対象となる列車の停車駅又は走行区間での過去の混雑情報等に基づいて設定される。
【0140】
さらに、例えば、処理対象の役割が改札であり、評価対象となる列車の停車駅内にリモート設備が設置されていない場合には、図13に示すように、評価の対象外とする。例えば、処理対象の役割が改札であり、評価対象となる列車の停車駅内にカメラが設置されている場合には、評価点が1点加算される。例えば、処理対象の役割が改札であり、評価対象となる列車の停車駅において当日、混雑が無ければ、評価点が1点加算される。また、例えば、処理対象の役割が改札である場合において、評価対象となる列車の停車駅(停車時間帯)が要注意時間帯・区間であるか否かを示す評価点については、例えば運行管理者等により予め定義された評価点(-2点~+2点)が加点又は減点される。上述のような評価を行った場合、運用態様が変更された列車の停車駅又は走行区間の設備及び混雑状況に適した人員シフト計画案を選択することが可能になる。
【0141】
そして、役割データに規定の全ての役割に対して、上述したS24~S26の処理を繰り返した後、運用態様変更評価部15は、得られた複数の解(更新後の人員シフト計画案)から、運用態様変更後の人員シフト計画案を選定する(S27)。この処理では、運用態様変更評価部15は、S26で算出した各解(更新後の人員シフト計画案)の評価点に基づき更新後の人員シフト計画案(以下、「運用態様変更案」と称する)を選定する。具体的には、運用態様変更評価部15は、評価点の最も高い運用態様変更案を含む所定数の運用態様変更案を選定する。
【0142】
S27の処理後、運用態様変更評価部15は、上述した人員シフト計画案の更新処理を終了する。そして、運用態様変更評価部15により決定された運用態様変更案(更新後の人員シフト計画案)は、人員シフト計画立案装置10の表示部(図2中の表示部106等)に出力され、表示される。なお、運用態様変更案の表示態様については、後で、図面を参照しながら説明する。また、上述した運用態様変更評価部15による人員シフト計画案の更新処理で選定された運用態様変更案が複数ある場合には、例えば運行管理者等により、その中から一つの運用態様変更案が決定される。
【0143】
[人員シフト計画案の各種表示態様]
次に、本実施形態の人員シフト計画立案装置10で作成された人員シフト計画案の各種表示態様を説明する。
【0144】
(1)人員シフト計画案の社員単位の表示例
図14は、人員シフト計画立案装置10の人員シフト計画立案部11、乗客支援評価部14及び運用態様変更評価部15のいずれかにより作成された人員シフト計画案の社員単位の第1の表示態様を示す図である。また、図15は、人員シフト計画立案装置10の人員シフト計画立案部11、乗客支援評価部14及び運用態様変更評価部15のいずれかで作成された人員シフト計画案の社員単位の第2の表示態様を示す図である。
【0145】
人員シフト計画案の社員単位の第1の表示態様では、図14に示すように、各社員が担当する役割と、各役割で担当する列車番号との関係性がテーブル態様で表示される。また、人員シフト計画案の社員単位の第2の表示態様では、図15に示すように、各社員が担当する役割と、その役割の遂行時間との関係性が棒ダイヤで表示される。なお、ここでは、説明を簡略化するため、社員1に対する表示態様のみを説明し、社員2の表示態様についての説明は省略する。
【0146】
社員単位の第1の表示態様では、図14に示すように、例えば、社員1に対して、役割「運転監視」の欄に列車番号「015列車」が表示され、役割「運転」の欄に列車番号「003列車」,「010列車」が表示される。すなわち、作成された人員シフト計画案では、社員1は、015列車において運転監視を担当し、003列車及び010列車において運転を担当する。
【0147】
また、社員単位の第1の表示態様では、社員1に対して、役割「改札」及び「乗降支援」の欄に、列車番号と停車駅との組み合わせとして、「015列車A駅」,「015列車B駅」,「015列車C駅」が表示される。さらに、社員単位の第1の表示態様では、社員1に対して、役割「警備」の欄に、列車番号「015列車」が表示される。すなわち、作成された人員シフト計画案では、015列車においては、社員1が、運転監視だけでなく、改札、警備及び乗降支援も担当する。
【0148】
図14に示す社員1が担当する各列車番号及び役割と、当該役割の遂行時間帯との関係性を表示したものが、図15に示す社員1の欄に表示の棒ダイヤである。社員単位の第2の表示態様では、図15に示すように、社員1は、8時から9時過ぎまでの時間帯には、003列車(手動)の運転を担当することが棒ダイヤで表示される。また、社員単位の第2の表示態様では、社員1は、003列車(手動)の運転を担当した後、9時10分から10時10分過ぎまでの時間帯には、015列車(自動)の運転監視及び警備を担当することが棒ダイヤで表示される。また、図15中の015列車(自動)の運転監視及び警備の棒ダイヤの下部には、社員1が015列車(自動)の各停車駅(A駅、B駅及びC駅)で改札及び乗降支援を担当することが棒ダイヤで表示される。
【0149】
(2)人員シフト計画案の列車単位の表示例
図16は、人員シフト計画立案装置10の人員シフト計画立案部11により作成された計画時の人員シフト計画案の列車単位の表示態様を示す図である。図17Aは、人員シフト計画立案装置10の乗客支援評価部14により作成された乗客参加案(更新後の人員シフト計画案)の列車単位の表示態様を示す図である。また、図17Bは、運用態様変更評価部15により作成された運用態様変更案(更新後の人員シフト計画案)の列車単位の表示態様を示す図である。なお、図16図17A及び図17Bには、各列車の種別、車両番号(運転態様)、前運用及び後運用に関する情報も合わせて表示される例を示す。
【0150】
計画時(運用当日前)に人員シフト計画立案部11により作成された人員シフト計画案の列車単位の表示態様では、図16に示すように、列車毎に各役割の担当社員が表示される。例えば、計画時の人員シフト計画案では、005列車(自動)において、社員4が役割「運転監視」、「改札」及び「警備」を担当することが表示される。なお、図16に示す例では、計画時の人員シフト計画案の作成段階において、005列車(自動)に関しては乗降支援が不要である場合を示す。それゆえ、図16に示す計画時の人員シフト計画案の表示態様では、005列車(自動)に対して、役割「乗降支援」の担当社員は無しとなる。
【0151】
図17Aは、図16に示す計画時の人員シフト計画案の運用当日に、例えば、005列車に対して新たな乗降支援が要請された場合に、乗客支援評価部14により作成された乗客参加案の列車単位の表示態様を示す図である。この場合、図12で説明した乗客支援評価部14による人員シフト計画案の更新処理が行われ、例えば、社員のみで新たな乗降支援に対応できない場合には、乗客への支援依頼が行われる。そして、図17Aには、乗客支援評価部14により作成された乗客参加案において、005列車に対して新たに要請された乗降支援を乗客Aが担当する場合の列車単位の表示例を示す。それゆえ、この場合には、005列車(自動)の役割「乗降支援」の欄に乗客Aが表示される。
【0152】
一方、図17Bは、図16に示す計画時の人員シフト計画案の運用当日に、例えば、社員1が欠勤となった場合に、運用態様変更評価部15により作成された運用態様変更案の列車単位の表示態様を示す図である。また、図17Bに示す例では、社員1の欠勤に対応するため、003列車の運転態様を「手動」から「自動」に変更した場合を示す。この場合、003列車の役割データを手動運転用の役割データ(図4A)から自動運転用の役割データ(図4B)に変更するとともに、社員1の社員スキルデータ(図6)を全て担当不可(「×」印)にする。そして、これらの更新後の役割データ及び社員スキルデータを用いて、図13で説明した運用態様変更評価部15による人員シフト計画案の更新処理が行われる。そして、図17Bには、運用態様変更評価部15により作成された運用態様変更案において、003列車の役割「運転監視」を社員7が担当する場合の列車単位の表示例を示す。それゆえ、この場合には、図17Bに示すように、003列車の「車両」欄に表示の運転態様が「手動」から「自動」に変更され、役割「運転監視」欄の担当者として「社員7」が新たに表示され、役割「運転」欄では担当者無しの表示に変更される。
【0153】
[各種効果]
上述のように、本実施形態の人員シフト計画立案システム1及び人員シフト計画立案装置10では、運行当日に、運行計画を変更せざるを得ない状況が発生しても、役割データ、社員スキルデータ等を適宜変更し、再度、新たに人員シフト計画案を作成する。また、この際、各社員の役割の兼務可否データを考慮するとともに、乗客支援の可能性及び/又は各役割の運用態様の変更も検討して、人員シフト計画案を作成する。それゆえ、本実施形態の人員シフト計画立案システム1及び人員シフト計画立案装置10では、運行当日に、運行計画を変更せざるを得ない状況が発生しても、少ない人員で細かく且つ柔軟に役割(業務)を実行することが可能になる。
【0154】
また、上述した本実施形態の人員シフト計画立案技術では、将来、さらに省力化、効率化、駅の無人化等の対策が促進され、より少ない人員で細かく且つ柔軟に役割(業務)を実行することが求められても、対応可能となる。
【0155】
また、本実施形態の人員シフト計画立案システム1及び人員シフト計画立案装置10では、乗客参加型の人員シフト計画案を立案する機能を備えるので、この機能を用いることにより、サービスの提供者及び受益者間の垣根を越えて役割を分担することできる。この場合、社会全体で公共交通機関の運行に携わることが可能になるので、より少ない人員で公共交通機関のサービスを維持することができる。
【0156】
さらに、本実施形態の人員シフト計画立案システム1及び人員シフト計画立案装置10では、役割の運用態様の変更を考慮した人員シフト計画案の立案機能を備えるので、できる限り、社員のみで様々な状況に対応することができる。
【0157】
[各種変形例]
以上、本発明の一実施形態に係る人員シフト計画立案システム1及び人員シフト計画立案装置10について説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、次のような各種変形例が採用可能であり、下記各種変形例においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0158】
上記実施形態では、計画時に作成された人員シフト配置案を運行当日に変更する必要性が発生した場合に、乗客支援評価部14及び/又は運用態様変更評価部15により人員シフト配置案を更新する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、計画時の人員シフト配置案の作成後で且つ運行当日前に当該人員シフト配置案の変更必要性が把握された場合には、その時点で、乗客支援評価部14及び/又は運用態様変更評価部15により人員シフト配置案を更新してもよい。この場合には、更新後の人員シフト配置案の評価処理において、例えば、当日の混雑状況に関する情報や乗客の位置情報などの運行当日に得られる情報以外の各種情報(利用者数、登録者数、乗客の過去の支援実績、設備データ等)のみを用いて評価が行われる。
【0159】
上記実施形態では、公共交通機関として鉄道を例に挙げ説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、予め運行計画及びそれに対応する人員シフト計画案を作成するような公共交通機関であれば、任意の公共交通機関に本発明の技術を適用可能である。例えば、バスや飛行機などの人員シフト計画の立案処理にも本発明の技術は適用可能である。
【0160】
また、上述した実施形態例は本発明を分かりやすく説明するためにシステム及び装置の構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本発明は、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得る。
【符号の説明】
【0161】
1…人員シフト計画立案システム、10…人員シフト計画立案装置、11…人員シフト計画立案部、12…人員シフト計画更新部、13…記憶部、13a…列車ダイヤ記憶部、13b…役割データベース、13c…兼務可否データベース、13d…社員スキルデータベース、13e…乗客支援可能性データベース、13f…設備データベース、13g…実績データ記憶部、13h…混雑情報記憶部、14…乗客支援評価部、15…運用態様変更評価部、20…列車ダイヤ立案装置、30…乗客の携帯端末
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