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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167979
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】液体吐出装置および液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20241128BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20241128BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/18
B41J2/01 401
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084328
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 恭輔
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EB38
2C056EC34
2C056EC36
2C056EC40
2C056EC59
2C056KA01
2C056KB08
2C056KB15
2C056KB16
2C056KB35
2C056KC02
2C056KC18
2C056KD02
(57)【要約】
【課題】安定的な液体の循環を実現しつつ、循環経路内に生じた、含有材料の沈降を解消可能な技術を提供する。
【解決手段】循環制御手段が、第1圧力制御室および第2圧力制御室における圧力差を利用して、液体を、前記第1圧力制御室から、液体を吐出する吐出手段および前記第2圧力制御室を通って前記第1圧力制御室に戻す第1循環と、前記第1圧力制御室に対して液体を供給しつつ、前記第1圧力制御室および前記第2圧力制御室がそれぞれ対応する負圧に制御されることなく、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段における液体を、前記第1圧力制御室に液体を供給可能な供給手段に回収する第2循環と、を実行可能であるようにした。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1負圧に制御される第1圧力制御室と、
前記第1圧力制御室に流路を介して接続され、前記第1負圧よりも低圧となる第2負圧に制御される第2圧力制御室と、
前記第1圧力制御室から供給される液体を吐出口から吐出可能であるとともに、前記吐出口から吐出されなかった液体を前記第2圧力制御室に回収可能な吐出手段と、
前記第1圧力制御室に対して、貯留する液体を供給可能であり、かつ、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段における液体を回収可能な供給手段と、
前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、前記吐出手段、および前記供給手段の間での液体の循環を制御可能な循環制御手段と、を有し、
前記循環制御手段は、
前記第1圧力制御室および前記第2圧力制御室における圧力差を利用して、液体を、前記第1圧力制御室から前記吐出手段および前記第2圧力制御室を通って前記第1圧力制御室に戻す第1循環と、
前記第1圧力制御室に対して液体を供給しつつ、前記第1圧力制御室および前記第2圧力制御室がそれぞれ対応する負圧に制御されることなく、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段における液体を、前記供給手段に回収する第2循環と、を実行可能であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1圧力制御室と前記第2圧力制御室とを接続する流路は、第1ポンプによって前記第1圧力制御室から前記第2圧力制御室へ液体を移送可能な流路を含み、
前記第2循環では、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段における液体は、前記第1循環の際に液体が流れる方向において、前記吐出手段における、前記吐出口から液体を吐出するためのエネルギーが液体に付与される圧力室よりも下流側、かつ、前記第1ポンプよりも上流側の所定位置から回収されることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記所定位置は、前記第1ポンプと前記第2圧力制御室との間に位置することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第2循環では、前記供給手段によって負圧を生じさせて液体を回収し、
前記第2循環の際に前記供給手段によって前記第2圧力制御室にかかる負圧値は、前記第1循環の際に前記第1ポンプによって前記第2圧力制御室にかかる負圧値よりも高いことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第1圧力制御室と前記第2圧力制御室とを接続する流路は、第1ポンプによって前記第1圧力制御室から前記第2圧力制御室へ液体を移送可能な流路を含み、
前記第2循環では、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段における液体は、前記第1循環の際に液体が流れる方向において、前記吐出手段における、前記吐出口から液体を吐出するためのエネルギーが液体に付与される圧力室よりも上流側、かつ、前記第1ポンプよりも下流側の所定位置から回収されることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記所定位置は、前記第1ポンプと前記第1圧力制御室との間に位置することを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記供給手段は、
液体を貯留する貯留手段と、
前記貯留手段に貯留される液体および回収される液体を、前記第1圧力制御室へ移送可能な第2ポンプと、を有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記供給手段は、
前記第1循環が実行される際には、前記貯留手段に貯留された液体の前記第1圧力制御室への移送が許容され、かつ、回収される液体の流入が規制され、
前記第2循環が実行される際には、前記貯留手段に貯留された液体の前記第1圧力制御室への移送が規制され、かつ、回収される液体の流入が許容されることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記供給手段は、回収される液体を貯留可能な貯留部をさらに備え、
前記第2循環では、回収されて前記供給手段に流入する液体は、前記貯留部に流入した後に、前記第2ポンプによって前記貯留部から前記第1圧力制御室に移送されることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記第2循環では、回収されて前記供給手段に流入する液体は、前記貯留手段に流入するとともに、前記第2ポンプによって前記貯留手段における液体が前記第1圧力制御室に移送されることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記第1圧力制御室および前記第2圧力制御室は、
負圧に制御される室内の圧力を制御する圧力制御機構と、
前記室内の圧力に応じて前記室内の体積を変動させる変動膜と、を有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記圧力制御機構は、
前記室内に液体を流入させるためのオリフィスと、
前記室内からの液体の流出によって所定の圧力以下となると前記オリフィスを開放して前記室内に液体が流入できるようにし、前記室内への液体の流入によって前記所定の圧力を上回ると前記オリフィスを閉塞して前記室内に液体が流入できないようにする弁と、
前記室内の体積を広げる方向に前記変動膜を付勢するバネと、を有することを特徴とする請求項11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記バネが伸長したときの前記第2圧力制御室の前記室内の体積は、第2循環によるインクの流れによって、前記第2圧力制御室から前記第1圧力制御室までに生じる液体の含有材料の沈降を解消可能な液体の量に対応することを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記第1圧力制御室と前記吐出手段との間、および前記第2圧力制御室と前記吐出手段との間の少なくとも一方には、液体に生じた気泡を貯留可能な気泡貯留手段が配置されることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記第1循環は、前記吐出口から液体を吐出する動作中に実行されることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記第2循環は、前記吐出口から液体を吐出する動作を実行しない時間が所定時間を超過したタイミングで実行されることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
前記所定時間は、使用する液体において、含有材料が沈降し始める時間以降であり、かつ、生じた沈降が前記第2循環によって解消できなくなる時間よりも一定時間だけ前となる時間であることを特徴とする請求項16に記載の液体吐出装置。
【請求項18】
前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段は、液体を循環するための流路と共に液体吐出ヘッドに一体的に設けられることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項19】
前記液体吐出ヘッドは、所定方向に沿って移動しながら前記吐出手段における前記吐出口から液体を吐出することを特徴とする請求項18に記載の液体吐出装置。
【請求項20】
前記液体吐出装置は、複数の液体を吐出可能であり、
前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、前記吐出手段、および前記供給手段は、複数の液体ごとに設けられ、
前記循環制御手段は、すべての液体に対して前記第1循環を実行するとともに、所定の液体に対して前記第2循環を実行することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項21】
前記所定の液体は、含有材料の沈降が生じる液体であることを特徴とする請求項20に記載の液体吐出装置。
【請求項22】
第1負圧に制御される第1圧力制御室と、
前記第1圧力制御室に流路を介して接続され、前記第1負圧よりも低圧となる第2負圧に制御される第2圧力制御室と、
前記第1圧力制御室から供給される液体を吐出口から吐出可能であるとともに、前記吐出口から吐出されなかった液体を前記第2圧力制御室に回収可能な吐出手段と、を有し、
前記第1圧力制御室および前記第2圧力制御室における圧力差を利用して、液体を、前記第1圧力制御室から前記吐出手段および前記第2圧力制御室を通って前記第1圧力制御室に戻す第1循環と、
前記第1圧力制御室に対して液体が供給されつつ、前記第1圧力制御室および前記第2圧力制御室がそれぞれ対応する負圧に制御されることなく、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段における液体が回収される第2循環と、を実行可能であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置および液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液体を吐出する液体吐出装置の用途は、インクを吐出して記録する記録装置や電極形成、バイオチップ製造などの造形装置など多岐にわたっている。このため、液体吐出装置には、例えば、材料が高濃度で含有している液体、比重の重い材料を含有している液体など、種々の液体を安定して吐出することが求められる。
【0003】
特許文献1には、インク中の気泡の排出およびインクに分散した顔料の沈降を解消のための技術が開示されている。特許文献1に開示の技術では、共通液室から吐出口に連通する圧力室へインクを供給可能なメイン循環路と、メイン循環路における共通液室へのインクの流入位置を挟むように、当該共通液室の延在方向の一方から他方にインクを流すサブ循環路とを形成している。そして、2種類の循環路を切り替えて使用することで、気泡排出と沈降解消とを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-121416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、メイン循環路において、一定圧力でのインクの循環を安定的に実行するために、圧力調整機能を備えた圧力レギュレータなどを用いると、インクの流速を一時的に増加させるような制御が困難となる。このため、サブ循環路を利用することが考えられるが、この場合、メイン循環路のうち、サブ循環路と共有する共通液室以外の部分で生じた沈降を解消することはできない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、安定的な液体の循環を実現しつつ、循環経路内に生じた、含有材料の沈降を解消可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示による液体吐出装置の一実施形態は、第1負圧に制御される第1圧力制御室と、前記第1圧力制御室に流路を介して接続され、前記第1負圧よりも低圧となる第2負圧に制御される第2圧力制御室と、前記第1圧力制御室から供給される液体を吐出口から吐出可能であるとともに、前記吐出口から吐出されなかった液体を前記第2圧力制御室に回収可能な吐出手段と、前記第1圧力制御室に対して、貯留する液体を供給可能であり、かつ、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段における液体を回収可能な供給手段と、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、前記吐出手段、および前記供給手段の間での液体の循環を制御可能な循環制御手段と、を有し、前記循環制御手段は、前記第1圧力制御室および前記第2圧力制御室における圧力差を利用して、液体を、前記第1圧力制御室から前記吐出手段および前記第2圧力制御室を通って前記第1圧力制御室に戻す第1循環と、前記第1圧力制御室に対して液体を供給しつつ、前記第1圧力制御室および前記第2圧力制御室がそれぞれ対応する負圧に制御されることなく、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段における液体を、前記供給手段に回収する第2循環と、を実行可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定的な液体の循環を実現しつつ、循環経路内に生じた、含有材料の沈降を解消することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】記録装置の概略構成図
図2】記録ヘッドの外観図
図3】記録ヘッドの分解構成図
図4】記録素子基板の断面構成図
図5】循環ユニットの概略構成図
図6】循環ユニットの分解構成図
図7】循環ユニットの斜視図
図8】循環ユニットでのインクの流れを示す図
図9】記録装置におけるインクの循環経路を示す図
図10】記録装置の制御系の構成を示すブロック図
図11】第2循環を説明する図
図12】他の実施形態の記録装置におけるインクの循環経路を示す図
図13】他の実施形態での第2循環を説明する図
図14】各圧力制御室および各圧力制御機構の近傍でのインクの流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、液体吐出装置および液体吐出ヘッドの実施形態の一例を説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。また、実施形態に記載されている構成要素の位置、形状などはあくまで一例であり、この発明をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
(第1実施形態)
まず、図1乃至図11を参照しながら、第1実施形態による液体吐出装置について説明する。本実施形態では、記録媒体に対して、インクジェット方式によりインクを吐出して記録する記録装置を、液体吐出装置の一例として説明する。従って、本実施形態では、液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして説明することとなる。記録装置としては、複写機、通信システムを有するファクシミリ、記録機能を備えたワードプロセッサなどの装置、さらには各種の処理装置と複合的に組み合わされた産業記録装置を含む。また、本発明による液体吐出装置としては、例えば、バイオチップの作製、電子回路の印刷、非吸収メディアへの印刷などの用途にも適用することができる。
【0012】
<記録装置の構成>
図1は、記録装置の概略構成図である。図1の記録装置10は、X方向(所定方向)に延在するガイド軸12に移動可能に設けられたキャリッジ14と、キャリッジ14に搭載され、インクジェット方式により、液体としてのインクを吐出可能な記録ヘッド(液体吐出ヘッド)16とを備えている。従って、記録装置10では、記録ヘッド16は、キャリッジ14を介してX方向に移動可能となっている。記録装置10では、搬送部(不図示)により記録媒体Mが、X方向と交差(本実施形態では直交)するY方向に搬送されて記録開始位置に到達すると、X方向で移動する記録ヘッド16から記録媒体Mにインクを吐出する記録動作を実行する。その後、搬送部により記録媒体Mを所定量だけ搬送する搬送動作を実行した後に、再度記録動作を実行する。このように、記録装置10では、記録動作と搬送動作とを交互に実行することにより、記録を実行することとなる。
【0013】
記録ヘッド16は、6種類のインクを吐出可能な記録ヘッド16aと、3種類のインクを吐出可能な記録ヘッド16bと、の2種類の記録ヘッドから構成されている。つまり、本実施形態では、記録ヘッド16から9種類のインクを吐出可能な構成となっている。なお、記録ヘッド16は、1種類の記録ヘッドから構成されるようにしてもよいし、3種類以上の記録ヘッドから構成されるようにしてもよい。また、記録ヘッド16a、16bが吐出可能なインクの種類は、上記した数に限定されない。さらに、記録ヘッド16は、インクのみを吐出することに限定されるものではなく、吐出したインクに所定の処理を施す処理液などの液体を吐出可能な構成としてもよい。
【0014】
記録装置10は、インクタンク18に貯留するインクを記録ヘッド16に供給可能なインク供給ユニット20を備えている。インクタンク18は、記録ヘッド16から吐出する異なる種類のインクが、それぞれ独立して貯留されており、本実施形態では、9種類のインクが貯留されている。インク供給ユニット20に設けられたインクタンク18は、供給チューブ22を介して記録ヘッド16a、16bに接続されている。インク供給ユニット20には、ポンプ904(図9参照)が設けられており、このポンプ904によって、供給チューブ22を介してインクタンク18から記録ヘッド16へインクが加圧供給される。
【0015】
詳細は後述するが、本実施形態では、記録ヘッド16bにおいて、比重の大きい材料(顔料)を含有する白色インクを吐出する構成となっており、記録ヘッド16bでは、記録ヘッド16bから白色インクを回収するための回収チューブ24が接続されている。回収チューブ24は、一方の端部が記録ヘッド16bと接続され、他方の端部がインクタンク18における白色インクを貯留するタンクと接続されている。本実施形態では、記録ヘッド16bの1箇所に回収チューブ24が設けられているが、これに限定されるものではない。つまり、記録ヘッド16a、16bにおいて、比重の大きい材料を含有するインク、つまり、含有材料の沈降が生じ易いインクを複数吐出する場合には、当該インクに対応した数だけ回収チューブ24が設けられる。
【0016】
<記録ヘッドの構成>
次に、記録ヘッド16の構成について説明する。本実施形態では、記録ヘッド16bから、含有材料の沈降が生じ易いインクを吐出する形態となっている。本願明細書では、「含有材料の沈降が生じ易いインク」を、単に「沈降が生じ易いインク」と適宜に称する。沈降が生じ易いインクを吐出する構成でない記録ヘッド16aは、公知技術を用いることができるため、以下の説明では、その構成の詳細な説明を省略する。つまり、以下の説明では、回収チューブ24が接続された記録ヘッド16bの構成について詳細に説明することとする。
【0017】
図2は、記録ヘッド16bの外観図である。図3は、記録ヘッド16bの分解図である。記録ヘッド16bは、記録素子基板302を備えた記録素子ユニット304と、記録素子基板302へ供給するインクを循環させる循環ユニット306と、循環ユニット306を覆う筐体ユニット308およびカバー310とを備えている(図3参照)。記録ヘッド16bは、キャリッジ14に設けられた位置決め部(不図示)および電気的接点によって、キャリッジ14に固定的に支持される。
【0018】
=記録素子ユニット304=
記録素子ユニット304は、供給されるインクを吐出可能な記録素子基板302と、循環ユニット306と記録素子基板302とに形成された流路を接続する接続流路916、918(図9参照)が形成された支持部材312と、を備えている(図3参照)。また、記録素子ユニット304は、キャリッジ14に設けられた電気的接点と接続される電気コンタクト基板314と、電気コンタクト基板314と記録素子基板302とを接続する電気配線テープ316と、を備えている。
【0019】
電気コンタクト基板314は、キャリッジ14の電気的接点と電気的に接続可能に構成され、循環ユニットコネクタ318およびポンプ配線(不図示)を介して循環ユニット306に搭載された循環ポンプ322へ駆動信号および駆動エネルギーを供給する。また、電気コンタクト基板314は、電気配線テープ316を介して記録素子基板302に対して、記録素子である吐出エネルギー発生素子412(図4参照)を駆動するための駆動信号および駆動エネルギーを供給する。記録素子基板302と電気配線テープ316との電気的な接続には、異方性導電フィルム、ワイヤボンディング、半田実装などが用いられるが、記録素子基板302と電気配線テープ316との電気的な接続方法はこれに限定されるものではない。本実施形態では、記録素子基板302と電気配線テープ316との接続は、ワイヤボンディングで行われており、ワイヤボンディングにより電気的に接続された部分には、封止材により封止されている。
【0020】
記録素子ユニット304は、筐体ユニット308に接着固定され、これにより、支持部材312に形成された接続流路916、918を介して、筐体ユニット308に固定された循環ユニット306の流路と記録素子基板302の流路とが連通される。なお、記録素子ユニット304と筐体ユニット308とは、シール部材として、ゴムやエラストマなどの弾性部材を介して接続されるようにしてもよい。なお、筐体ユニット308については、キャリッジ14の位置決め部への係止部(不図示)やインクの流路が形成されるため、フィラー入り樹脂を射出成型した部品を組み合わせて構成されている。
【0021】
=循環ユニット306=
記録ヘッド16bは、沈降が生じ易いインクを含む3種類のインクを吐出可能な構成となっている。本実施形態では、記録ヘッド16bは、沈降が生じ易いインクである白インクと、沈降が生じ易くない、つまり、比較的沈降が少ないインクであるライトマゼンタインクおよびライトシアンインクを吐出可能な構成となっている。白インクには循環ユニット306aが対応し、ライトマゼンタインクおよびライトシアンインクには循環ユニット306bが対応している。即ち、供給チューブ22から供給された白インクは、循環ユニット306aを介して記録素子ユニット304へ送られる。また、供給チューブ22から供給されたライトマゼンタインクおよびライトシアンインクは、循環ユニット306bを介して記録素子ユニット304に送られる。
【0022】
循環ユニット306a、306bは、第1圧力制御機構320と、第2圧力制御機構500(図5参照)と、循環ポンプ322とを備えている。第1圧力制御機構320、第2圧力制御機構500、および循環ポンプ322の構成については、後述する。循環ユニット306a、306bは、内部にインクを流入させるための供給口324を備えている。ここで、供給チューブ22が接続部326で接続される筐体ユニット308には、固定された循環ユニット306a、306bの供給口324と接続される流路912(図9参照)を備えている。これにより、供給チューブ22から供給されたインクは、流路912を介して供給口324へ流れることとなる。
【0023】
循環ユニット306a、306bは、内部からインクを流出させるための回収口328を備えている。ここで、回収チューブ24が接続部330で接続される筐体ユニット308には、固定された循環ユニット306a、306bの回収口328と接続される流路922(図9参照)を備えている。これにより、回収口328から流出したインクは、流路922を介して回収チューブ24へ流れることが可能になっている。なお、回収口328については、沈降を生じ易い白インクに対応する循環ユニット306aでは、流路922と連通しているが、沈降が生じ難いライトマゼンタインクおよびライトシアンインクに対応する循環ユニット306bでは、流路922と連通していない。従って、本実施形態では、回収チューブ24は、循環ユニット306aの回収口328と連通する流路922に対応する接続部330にのみ接続されている。
【0024】
循環ユニット306a、306bは、筐体ユニット308に対して、ビス332によって固定される。これにより、供給口324と流路912とが接続されて連通され、回収口328と流路922とが接続されるが、循環ユニット306bでは、回収口328と流路922とは連通せず、循環ユニット306aでのみ回収口328が流路922と連通する。接続部分に設けられるシール部材としては、ゴムやエラストマといった弾性部材が用いられる。上記のように記録ヘッド16bを構成したため、記録ヘッド16bでは、循環ユニット306aと循環ユニット306bとを変更することで、容易に、吐出するインクの、含有材料の沈降の生じ易さに対応することが可能に構成されている。なお、このときには、循環ユニット306aと循環ユニット306bとの変更に応じて、回収口328と流路922との連通状態や、回収チューブ24の接続部330への接続を変更することとなる。
【0025】
<記録素子基板302の構成>
次に、記録素子基板302の構成について説明する。図4は、記録素子基板302の断面構成図である。記録素子基板302は、基板402と、基板402の一方の面を覆う吐出口形成部材404と、基板402の他方の面を覆うカバープレート406とを備えている。吐出口形成部材404には、吐出エネルギーが付与されるインクを貯留する圧力室408と、付与された吐出エネルギーによって、圧力室408内のインクが外部に吐出される吐出口410とが形成されている。吐出口形成部材404では、複数の吐出口410が、記録素子基板302の延在方向に沿って配列されている。圧力室408には、基板402上の吐出口410と対向する位置に、記録素子としての、吐出エネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子412が設けられている。吐出エネルギー発生素子412としては、電気熱変換素子や圧電素子などの公知の素子を用いることができる。
【0026】
電気熱変換素子を用いた場合には、その発熱によって圧力室408内のインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して、圧力室408に連通する吐出口410からインクが吐出される。圧力室408には、吐出口410の配列方向と交差する方向の一方側に、圧力室408へインクが流入するための流入口414と、当該方向の他方側に、圧力室408からインクが流出する流出口416とが形成されている。流入口414および流出口416はそれぞれ、1または複数の吐出口410に対して1つずつ配置されている。
【0027】
基板402には、吐出口410の延在方向に沿って、互いに平行に延設される供給流路418と回収流路420とが形成されている。供給流路418には、流入口414が接続され、回収流路420には、流出口416が接続される。供給流路418および回収流路420は、基板402の他方の面側で開口しており、当該開口は、カバープレート406により覆われている。
【0028】
カバープレート406には、供給流路418および回収流路420を外部と連通する開口部422が形成されている。供給流路418は、開口部422を介して、後述する第1気泡貯留流路914(図9参照)に連通する接続流路916(図9参照)に接続される。また、回収流路420は、開口部422を介して、後述する第2気泡貯留流路920(図9参照)に連通する接続流路918(図9参照)に接続される。なお、第1気泡貯留流路914および第2気泡貯留流路920は、支持部材312に設けられている。
【0029】
供給流路418を外部と連通する開口部および回収流路420を外部と連通する開口部は、それぞれ1つだけ設けられるようにしてもよいし、2つ以上の複数設けられるようにしてもよい。また、供給流路418を外部と連通する開口部および回収流路420を外部と連通する開口部は、同じ数だけ設けられるようにしてもよいし、一方を他方よりも多く設けるようにしてもよい。例えば、1つの供給流路418に9つの開口部422が形成され、1つの回収流路420に8つの開口部422が形成されている。
【0030】
カバープレート406は、吐出口410から吐出されるインクに対して十分な耐食性を有している材料を用いることが好ましい。また、混色防止などの観点から、開口部422の開口形状および開口位置には高い精度が求められる。このため、カバープレート406の材質としては、感光性樹脂材料やシリコン板を用い、フォトリソグラフィプロセスによって開口部422を形成することが好ましい。
【0031】
=記録素子基板302における流路=
記録素子基板302では、接続流路916から開口部422を介して供給流路418に供給されたインクは、流入口414を介して圧力室408に流入する(図4の矢印I参照)。また、圧力室408に流入したインクは、流出口416を介して回収流路420に流出し(図4の矢印II参照)、回収流路420内のインクは、開口部422を介して接続流路918に回収される。接続流路916は、第1気泡貯留流路914を介して、相対的に低い負圧に圧力制御される第1圧力制御室508(図5参照)に接続されている(図9参照)。また、接続流路918は、第2気泡貯留流路920を介して、相対的に高い負圧に圧力制御されている第2圧力制御室528(図5参照)に接続されている(図9参照)。第1圧力制御室508および第2圧力制御室528については、後述する。
【0032】
このため、接続流路916に接続される供給流路418は、接続流路918に接続される回収流路420よりも圧力が高くなっており、この圧力差により、各圧力室408では、図4の矢印I、IIの方向でインクが流れることとなる。そして、このインクの流れにより、例えば、非記録動作時に吐出口410内で増粘したインクを回収したり、記録動作時にインクを吐出しない吐出口410内でのインクの増粘を抑制したりすることができるようになる。これにより、各吐出口410におけるインクの吐出性能の低下を抑制することができるようになる。このように、本実施形態では、記録素子基板302は、供給された液体を吐出口を介して吐出可能であり、かつ、吐出口から吐出されなかった液体が回収される吐出部として機能している。
【0033】
<循環ユニット306の構成>
次に、循環ユニット306aの構成について説明する。図5は、循環ユニット306aの概略構成図である。図6は、循環ユニット306aの分解図である。図7は、循環ユニット306aの斜視図である。なお、循環ユニット306bの構成については、循環ユニット306aの回収口328が、回収チューブ24が接続する接続部330に連通する流路922に連通していないことのみ循環ユニット306aと異なっている。
【0034】
循環ユニット306aに備えられた第1圧力制御機構320は、第1圧力制御弁502と、弁バネ504と、バネ受け506と、を備えており(図5参照)、これらの構成については、基部600の一方の面側に設けられている(図6参照)。また、第1圧力制御機構320は、第1圧力制御室508内に配置される第1受圧板510と、第1受圧板510を介して第1圧力制御室の体積を広げる方向に付勢する第1制御バネ512と、を備えている(図5参照)。これらの構成については、基部600の他方の面側に設けられている(図6参照)。さらに、第1圧力制御機構320は、基部600の他方の面側を覆うことで、複数の流路の一部および第1圧力制御機構320における変動膜を構成するフィルム514を備えている(図6参照)。
【0035】
循環ユニット306aに設けられた第2圧力制御機構500は、第2圧力制御弁522と、弁バネ524と、バネ受け526と、を備えており(図5参照)、これらの構成については、基部600の他方の面側に設けられている(図6参照)。また、第2圧力制御機構500は、第2圧力制御室528内に配置される第2受圧板530と、第2受圧板530を介して第2圧力制御室528の体積を広げる方向に付勢する第2制御バネ532と、を備えている(図5参照)。これらの構成については、基部600の一方の面側に設けられている(図6参照)。さらに、第2圧力制御機構500は、基部600の一方の面側を覆うことで、複数の流路の一部および第2圧力制御機構500における変動膜を構成するフィルム534を備えている。
【0036】
上記したように、本実施形態では、第1圧力制御機構320および第2圧力制御機構500を、線バネを使用した直動方式としたが、これに限定されるものではない。第1圧力制御機構320および第2圧力制御機構500は、板バネや回転動作を含む制御機構であってもよいし、外部制御による圧力制御機構によって構成してもよい。
【0037】
循環ユニット306aは、第1圧力制御機構320、第2圧力制御機構500、および循環ポンプ322のほかに、フィルタ540を備えている。流路912から流入したインクは、フィルタ540および第1圧力制御機構320を介して、第1圧力制御機構320により内部の負圧が制御される第1圧力制御室508に流入する。第1圧力制御室508は、第2圧力制御室528と2つの流路542、544で接続されており、流路544には、循環ポンプ322が設けられている。また、流路544には、第2圧力制御室528と循環ポンプ322との間に、回収口328まで延設される回収流路924(図9参照)が接続されている。
【0038】
循環ポンプ322は、ダイヤフラムポンプであり、2つの逆止弁543と、逆止弁543を基部600に固定するポンプ接続部644(図6参照)と、駆動素子となる圧電素子526と、圧電素子526により体積変動可能なポンプ筐体527と、を備えている。なお、2つの逆止弁543のうち、一方の逆止弁543aが、第2圧力制御室528側からインクを吸引可能に設けられ、他方の逆止弁543bが、第1圧力制御室508側へインクを排出可能に設けられている。こうした構成により、圧電素子526に駆動電圧を印加することで、ポンプ筐体527(図5参照)内の容積を変化させ、圧力変動により2つの逆止弁が交互に動き、第2圧力制御室528から第1圧力制御室508に向かってインクを移送可能となっている。循環ポンプ322は、圧電素子526に印加する電圧、周波数によってポンプ能力を変更することが可能となっている。
【0039】
記録装置10では、循環ユニット306a内に設けられた流路を含むインクの循環経路(後述する)を記録ヘッド16b内に設けることで循環経路が小型化され、吐出口410からインクを安定的に吐出するために必要なポンプ能力は小さくて済む。このため、循環ポンプ322を小型化することが可能となり、これにより、記録ヘッド16を小型化して、高速記録への対応が可能となる。
【0040】
記録装置10では、第1圧力制御室508と第2圧力制御室528との圧力差を一定に維持するように、第1圧力制御機構320および第2圧力制御機構500が機能する。これにより、記録装置10では、循環ユニット306aおよび記録素子基板302内の流路を含む循環経路においてインクを循環させつつ、安定的にインクを吐出することを可能としている。これにより、例えば、記録動作時の、インクを吐出しない吐出口410内でのインクの増粘を抑制可能としている。
【0041】
第2圧力制御機構500は、フィルム534に対して、第2受圧板530を介して第2制御バネ532の反力がかかることにより、第2圧力制御室528内に負圧を発生することが可能となっている。また、第2圧力制御機構500は、第2制御バネ532のバネ係数と、弁バネ524のバネ係数と、第1圧力制御室508の設定圧力と、を調整することで、第2圧力制御弁522の弁開圧力を調整可能となっている。
【0042】
循環ポンプ322により第2圧力制御室528のインクを回収し、第2圧力制御室528内の圧力が第2圧力制御弁522の弁開圧力以下となると、第2圧力制御弁522はオリフィス546を開放する。これにより、流路542を介して第1圧力制御室508から第2圧力制御室528にインクが流入する。流路542を介した第1圧力制御室508からのインクの流入により、第2圧力制御室528内の圧力が、第2圧力制御弁522の弁開圧力を上回ると、第2圧力制御弁522はオリフィス546を閉塞し、第2圧力制御室528は設定された負圧に戻る。
【0043】
こうした動作により、循環ユニット306aと、接続流路918などを介して接続される記録素子基板302と、の間で循環するインク量が変化しても、第2圧力制御室528の負圧を設定された負圧に維持することが可能となる。
【0044】
第1圧力制御機構320は、フィルム514に対して、第1受圧板510を介して、第1制御バネ512の反力がかかることにより、第1圧力制御室508内に負圧を発生することが可能となっている。また、第1圧力制御機構320は、第1制御バネ512のバネ係数と、弁バネ504のバネ係数と、第1圧力制御室508へインクを供給する圧力と、を調整することで、第1圧力制御弁502の弁開圧力を調整可能となっている。第1圧力制御室508へインクを供給する圧力とは、フィルタ540から流出したインクを第1圧力制御機構320に導く流路にかかる、ポンプ904の圧力と、供給チューブ22およびフィルタ540でのインクの流れにより圧力損失と、を考慮した圧力である。
【0045】
第1圧力制御室508から流路542を介して第2圧力制御室528にインクが流出し、第1圧力制御室508内の圧力が第1圧力制御弁502の弁開圧力以下となると、第1圧力制御弁502はオリフィス548を開放する。これにより、フィルタ540を介して供給されるインクが第1圧力制御室508に流入する。そして、第1圧力制御室508へのインクの入流により、第1圧力制御室508内の圧力が、第1圧力制御弁502の弁開圧力を上回ると、第1圧力制御弁502はオリフィス548を閉塞し、第1圧力制御室508は設定された負圧に戻る。
【0046】
吐出口410からインクを吐出すると、記録素子基板302および循環ユニット306aでの流路を含む循環経路内のインク量が減り、当該循環経路内全体の負圧が高まる(つまり、圧力が低くなる)。第1圧力制御室508と第2圧力制御室528との差圧によって、第2圧力制御機構500によるインクの回収量が変動されるため、第2圧力制御機構500は、循環経路内の圧力制御には寄与していない。従って、吐出口410から吐出されたインク分は、第1圧力制御機構320によって、フィルタ540を介して供給されるインクを流入させることで、安定的に吐出口410からインクを吐出可能なように、循環経路内の圧力調整が行われる。
【0047】
循環ユニット306aと、筐体ユニット308に設けられた流路912、922との接続部にはシール部材702が配置される(図7参照)。また、循環ユニット306aと、第1気泡貯留流路914および第2気泡貯留流路920との接続部にはシール部材704が配置される(図7参照)。これらシール部材702、704は、エラストマの2色成形で接合されている。シール部材702、704は、EPDMなどのゴム部材で構成されるようにしてもよい。
【0048】
<循環ユニット306aにおけるインクの流れ>
次に、循環ユニット306aにおけるインクの流れについて説明する。なお、ここで説明する循環ユニット306aにおけるインクの流れは、後述する第1循環でのインクの流れとする。図8は、循環ユニット306aでのインクの流れを説明する図であり、(a)は基部600の一方の面を示し、(b)は基部600の他方の面を示す。循環ユニット306aでは、基部600の一方の面および他方の面に形成された溝と、フィルム514、534とで、インクが循環する流路を構成している。一部、バネ反力などを受ける部分に第1受圧板510および第2受圧板530やバネ受け506、526のような部材で補強されている。
【0049】
記録装置10では、循環ポンプ322、第1圧力制御機構320、および第2圧力制御機構500を備えた循環ユニット306aを、記録ヘッド16bに搭載する構成とすることで、インクの循環機構を小型化している。これにより、大判プリンタなどの大規模な装置でも、インクの増粘を抑制しつつ、安定的にインクを吐出することが可能となる。
【0050】
循環ユニット306aは、小型化のために、基部600を貫通させて、基部600の一方の面および他方の面に形成された流路を接続している。具体的には、供給口324から流入したインクは、基部600の一方の面側に設けられたフィルタ540を通過して貫通孔802を介して基部600の他方の面側に流出する。その後、貫通孔802を通って、他方の面側に設けられた流路に流入したインクは、貫通孔804を介して一方の面側に流出し(矢印A参照)、その後、オリフィス548を通って他方の面側に流出する(矢印B参照)。オリフィス548を通って他方の面側に流入したインクは、流出口706(図7参照)を介して、循環ユニット306aから流出して(矢印C参照)第1気泡貯留流路914へ流れる。また、オリフィス548を通って他方の面側に流入したインクは、貫通孔806を介して一方の面側に流出し(矢印D参照)、その後、貫通孔808を介して他方の面側に流出する。
【0051】
貫通孔808を介して他方の面側に流入したインクは、オリフィス546を通って一方の面側に流出する(矢印E参照)。また、他方の面において、流入口708(図7参照)を介して、第2気泡貯留流路920から流入したインクは(矢印F参照)、貫通孔810を介して一方の面側に流出し、オリフィス546を通って一方の面に流出したインクを合流する。そして、合流したインクは、貫通孔812を介して他方の面側に流出し(矢印G参照)、その後、回収口328から循環ユニット306aの外部に流出するとともに(破線矢印参照)、貫通孔814を介して一方の面側に流出する(矢印H参照)。貫通孔814を介して一方の面側に流入したインクは、一方の逆止弁543aが設けられた貫通孔816を介して他方の面側に流出し(矢印J参照)、その後、他方の逆止弁543bが設けられた貫通孔818を介して一方の面側に流出する(矢印K参照)。
【0052】
フィルタ540は、供給口324から流入したインクに含まれるゴミをトラップして集めることで、循環ユニット306aおよび記録素子基板302に設けられた流路が閉塞されることを抑制する。貫通孔816、818には、ポンプ接続部644を介して逆止弁543a、543bが他方の面側に配置されている。第1圧力制御機構320および第2圧力制御機構500の圧力調整機能として、圧力制御弁502、522の弁開閉の安定性と、オリフィス546、548の安定したインク回収機能が重要となる。
【0053】
<インクの循環経路>
次に、記録装置10におけるインクの循環経路について説明する。図9は、記録装置10に設けられたインクの循環経路を説明する図である。記録装置10では、インク供給ユニット20と、記録ヘッド16bとを、供給チューブ22および回収チューブ24により接続して、インク供給ユニット20と記録ヘッド16bと間でインクを循環可能な循環経路が形成されている。
【0054】
インク供給ユニット20では、インクタンク18が供給路902を介して供給チューブ22と接続されている。供給路902には、インクタンク18に貯留されたインクを供給チューブ22に移送可能なポンプ904が設けられている。また、供給路902には、ポンプ904とインクタンク18との間に開閉可能な供給弁906が設けられている。供給弁906が開状態のとき、ポンプ904の駆動により、インクタンク18に貯留されたインクが、供給路902を介して供給チューブ22へ移送可能な状態となる。一方、供給弁906が閉状態のとき、ポンプ904が駆動しても、インクタンク18に貯留されたインクは、供給路902を介して供給チューブ22へ移送不可能な状態となる。このように、インク供給ユニット20では、供給弁906によって、インクタンク18から供給チューブ22へのインクの移送が許容および規制される構成となっている。
【0055】
また、インク供給ユニット20では、回収チューブ24を介して流入するインクを供給路902に導く回収路908を備えている。回収路908は、ポンプ904と供給弁906との間で、供給路902に接続されている。また、回収路908には回収弁910が設けられており、回収弁910が開状態のとき、回収路908に流入するインクを供給路902まで導くことができ、回収弁910が閉状態のとき、回収路908を介して供給路902までインクを導くことができなくなる。このように、インク供給ユニット20では、回収弁910によって、回収チューブ24などを介するインクの流入が許容および規制される構成となっている。
【0056】
供給チューブ22を介して供給されるインクは、筐体ユニット308に設けられた流路912を介して、循環ユニット306aに流入され、その後、フィルタ540介して第1圧力制御機構320を備えた第1圧力制御室508に流入する。第1圧力制御室508に流入したインクは、流路542を介して第2圧力制御機構500を備えた第2圧力制御室528に流入する。また、第1圧力制御室508に流入したインクは、流出口706を介して第1気泡貯留流路914、接続流路916を介して記録素子基板302に流入する。記録素子基板302では、開口部422から、供給流路418、流入口414、圧力室408、流出口416、回収流路420を介して、開口部422から接続流路918に流出する。
【0057】
接続流路918に流入したインクは、第2気泡貯留流路920を介して、流入口708から循環ユニット306a内に流入し、第2圧力制御室528に流入する。第2圧力制御室528のインクは、流路544を介して第1圧力制御室508に流入可能となっている。また、流路544では、循環ポンプ322と第2圧力制御室528との間において、接続部330に連通する流路922に対して、回収口328を介して接続する回収流路924を備えている。従って、第2圧力制御室528のインクは、ポンプ904の駆動によって回収流路924、流路922、および回収チューブ24を介してインク供給ユニット20に回収可能となっている。このように、本実施形態では、第1圧力制御室508に対してインクタンク18に貯留する液体を供給可能であり、かつ、前記第1圧力制御室508、第2圧力制御室528、および記録素子基板302におけるインクを回収可能な供給部として機能している。
【0058】
<記録装置の制御系の構成>
次に、記録装置10の制御系の構成について説明する。図10は、記録装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【0059】
記録装置10は、インターフェース1002を介して、ホストコンピュータ(以下、「ホストPC」と称する。)1004などのデータ供給装置に接続される。ホストPC1004から送信される各種データや記録装置10で実行する各種の処理に関連する制御信号など、制御部1006に入力される。制御部1006は、各種の制御プログラムを実行するCPU1008と、CPU1008で実行する制御プログラムなどを格納するROM1010とを備えている。また、制御部1006は、入力画像データ、中間生成物の多値階調データ、マルチパスマスク、およびプログラム制御変数などの各種のデータを格納するとともに、CPU1008のワークエリアとして利用されるRAM1012を備えている。
【0060】
記録装置10は、搬送モータ1014を駆動するモータドライバ1016を備えている。なお、搬送モータ1014の駆動によって、記録媒体MがY方向(図1参照)に搬送される。モータドライバ1016はCPU1008により制御され、これにより、CPU1008がモータドライバ1016を介して搬送部の駆動を制御する。また、記録装置10は、キャリッジ14をX方向(図1参照)で移動するキャリッジモータ1018を駆動するためのモータドライバ1020を備えている。モータドライバ1020はCPU1008により制御され、これにより、CPU1008がモータドライバ1020を介してキャリッジ14(記録ヘッド16)の移動を制御する。
【0061】
記録装置10は、ポンプ1022を駆動するためのポンプ駆動部1024を駆動するための駆動ドライバ1026を備えている。図10を用いた説明では、理解を容易にするために、循環ポンプ322およびポンプ904をポンプ1022として示している。駆動ドライバ1026はCPU1008により制御され、これにより、CPU1008が循環ポンプ322およびポンプ904の駆動を制御する。また、記録装置10は、弁1028を駆動するための弁駆動部1030を駆動するための駆動ドライバ1032を備えている。図10を用いた説明では、理解を容易にするために、供給弁906および回収弁910を弁1028として示している。駆動ドライバ1032はCPU1008により制御され、これにより、CPU1008が供給弁906および回収弁910の駆動を制御する。さらに、記録装置10は、記録ヘッド16を駆動するヘッドドライバ1034を備えている。ヘッドドライバ1034はCPU1008により制御され、これにより、記録ヘッド16a、16bはCPU1008によって、インクの吐出のタイミングなどの各種の制御が実行される。
【0062】
<第1循環>
記録装置10では、以上に説明したインクの循環経路において、記録動作中には、安定的に吐出口410からインクを吐出可能としつつ、インクを吐出していない吐出口410内のインクの増粘を抑制するようにインクを循環する第1循環を実行する。なお、第1循環については、記録動作中に実行することにのみ限定されるものではない。例えば、非記録動作時の吐出口410内でのインクの増粘を解消するために、直近の記録動作後に新たな記録動作が実行されずに一定時間を超過したタイミングなどの所定のタイミングで第1循環を実行するようにしてもよい。なお、第1循環は、記録ヘッド16aおよび記録ヘッド16bで実行される。
【0063】
第1循環では、まず、CUP1008が、供給弁906を開状態として供給路902とインクタンク18とを連通した状態とし、回収弁910を閉状態として供給路902と回収路908とが連通していない状態とする(図9参照)。次に、CPU1008がポンプ904を駆動して、インクタンク18に貯留されたインクを、供給チューブ22を介して記録ヘッド16bに移送する。以降のインクの流れについては、図9の矢印を参照しながら説明する。
【0064】
記録ヘッド16bに移送されたインクは、流路912およびフィルタ540を通過した後に、第1圧力制御機構320および第1圧力制御室508へ供給される。このインクの供給により、第1圧力制御機構320によって、第1圧力制御室508内の圧力が所定の圧力(負圧)に調整される。つまり、第1圧力制御機構320によって、第1圧力制御室508の室内の圧力が第1負圧に制御されることとなる。また、CPU1008は、循環ポンプ322を駆動し、流路544を介して第2圧力制御室528から第1圧力制御室508へインクを移送する。この循環ポンプ322によるインクの移送により、第2圧力制御機構500によって第2圧力制御室528内の圧力が、第1圧力制御室508内の圧力よりも低圧に調整される。つまり、第2圧力制御機構500によって、第2圧力制御室528の室内の圧力が上記第1負圧よりも低い圧力を示す第2負圧、つまり、第1負圧よりも高い負圧値を示す第2負圧に調整される。
【0065】
これにより、第1圧力制御室508に接続される、圧力室408への供給流路側では、第2圧力制御室528に接続される、圧力室408からの回収流路側よりも負圧が低くなり、供給流路側から圧力室408を介して回収流路側に向かうインクの流れが生じる。なお、圧力室408への供給流路側の構成としては、第1気泡貯留流路914、接続流路916,開口部422、供給流路418、および流入口414となる。また、圧力室408からの回収流路側の構成としては、流出口416、回収流路420、開口部422、接続流路918、および第2気泡貯留流路920となる。第1気泡貯留流路914および第2気泡貯留流路920は、循環するインク中に生じた気泡を一時的に貯留可能な容積を備えている。
【0066】
このため、第1循環では、第1圧力制御室508から、第1気泡貯留流路914、接続流路916、および供給流路418を介して圧力室408に向かうインクの流れが生成される。また、圧力室408から、回収流路420、接続流路918、第2気泡貯留流路920を介して第2圧力制御室528に向かうインクの流れが生成される。さらに、第1圧力制御室508から流路542を通って第2圧力制御室528へ向かうインクの流れが生成される。そして、循環経路を循環するインクが吐出口410から外部に吐出されて、循環経路内の圧力が低下すると、フィルタ540を介して、供給チューブ22から供給されるインクが第1圧力制御室508に流入する。なお、流路544には、循環ポンプ322と第2圧力制御室528との間で、回収口328に連通する回収流路924が接続されている。しかしながら、第1循環では、回収流路924が回収チューブ24を介して接続される回収路908において回収弁910が閉状態となっているため、回収流路924、回収チューブ24、および回収路908にインクは流入しない。このように、本実施形態では、第1循環の際には、制御部1006(CPU1008)が、第1圧力制御室508、第2圧力制御室528、および記録素子基板302との間でのインクの循環を制御可能な循環制御部として機能している。
【0067】
第1循環では、上述したようなインクの流れによって、インクを吐出していない吐出口410および当該吐出口410に連通する圧力室408内に位置するインクは、回収流路420を介して回収されることとなる。このため、吐出口410からのインク中の液体成分の蒸発に伴って生じるインクの増粘を抑制することができるようになる。また、第1循環では、圧力室408および吐出口410内で気泡や増粘インクが生じたとしても、それらは循環するインクと共に回収される。これにより、循環経路における流路および圧力制御室などには、増粘したインクや泡が流れ込む。なお、循環経路には、増粘インクに比べて多量のインクが貯留されているため、吐出に影響のない範囲まで粘度が均一化される。また、泡に関しては、浮力があるため、第1気泡貯留流路914、第2気泡貯留流路920、第1圧力制御室508、および第2圧力制御室528に貯留されて、吐出口410からのインクの吐出に影響のない状態を維持することができる。
【0068】
第1循環を実行することで、圧力室408や吐出口410内でのインクの増粘を抑制するために、記録に寄与しないインクの吐出である予備吐出の実行を抑制することができ、インクの消費量を抑制することができるようになる。また、記録素子基板302内において、供給流路418と回収流路420との圧力が制御された状態であるため、圧力室408への安定したインクの供給が可能となり、吐出口410からのインクの吐出を安定的に実行することができる。
【0069】
<第2循環>
例えば、沈降が生じ易い白インクの場合、第1循環により、循環経路のうち、継続してインクが循環する一部の流路については、沈降を抑制することは可能である。また、白インクを貯留するインクタンク18では、ユーザにインクタンク18を取り外して手振り撹拌をさせたり、インクタンク18に撹拌機能を搭載したりすることで、生じた沈降を解消することができる。しかしながら、第1循環では、インクタンク18と第1圧力制御機構320とを繋ぐ流路では、インクが流れない時間が生じることがあり、この場合、当該流路には、白インクに含有する材料(具体的には、顔料)が沈降する虞がある。また、記録装置10の電源OFF状態などの循環経路内のインクの循環が停止する時間が所定時間を超えた場合、循環経路内に白インクに含有する材料の沈降が生じる虞がある。
【0070】
第1循環を利用して、生じた沈降を解消しようとする場合、例えば、循環ポンプ322のポンプ周波数を増加し、循環するインクの流量を増加させることで、生じたインクの流れにより流路内を撹拌した沈降を解消することが考えられる。しかしながら、循環経路では、第1圧力制御機構320および第2圧力制御機構500によって、第1圧力制御室508と第2圧力制御室528とが所定の圧力差に制御されている。このため、第1圧力制御室508から記録素子基板302内を介して第2圧力制御室528に至る流路においては、インクの流速が増加せずに、生じた沈降はインクの流れによって解消されない虞がある。なお、第1圧力制御室508、流路542、第2圧力制御室528、および流路544を循環する流路においては、循環ポンプ322のポンプ周波数の増加によってインクの流速を向上させることができる。このため、当該流路では生じた沈降をインクの流れによって解消することができる。
【0071】
そこで、本実施形態では、インク供給ユニット20と第1圧力制御室508とを繋ぐ流路と、第1圧力制御室508から記録素子基板302を介して第2圧力制御室528に至る流路と、に生じた沈降の解消を可能とする第2循環を実行する。なお、インク供給ユニット20と第1圧力制御室508とを繋ぐ流路とは、具体的には、供給路902から、供給チューブ22、流路912、供給口324、フィルタ540などを通って、第1圧力制御機構320に至る流路である。第1圧力制御室508から記録素子基板302を介して第2圧力制御室528に至る流路とは、具体的には、第1気泡貯留流路914、記録素子基板302内の流路、および第2気泡貯留流路920などを通って、第2圧力制御室528に至る流路である。以下、第2循環について詳細に説明する。
【0072】
記録装置10では、記録動作が長時間実行されなかった所定のタイミングで第2循環を実行する。なお、記録動作が長時間実行されなかった所定のタイミングとは、例えば、沈降が生じ易いインクにおいて、第2循環により解消することが可能な程度に、沈降が生じたタイミングとする。具体的には、例えば、直近の記録動作が終了した時点からの経過時間が、沈降が生じ易いインクに沈降が生じ始める時間以降であり、かつ、生じた沈降が第2循環によって解消できなくなる時間よりも一定時間だけ前となるタイミングとする。なお、第2循環では回収流路924が使用されるため、記録ヘッド16aにおいて第2循環は実行不能である。従って、第2循環は、記録ヘッド16bの循環ユニット306aにおける流路を含む循環経路においてのみ実行されることとなる。
【0073】
第2循環では、まず、CPU1008が、供給弁906を閉状態として供給路902とインクタンク18とが連通していない状態とし、回収弁910を開状態として供給路902と回収路908とが連通した状態とする(図11参照)。図11は、第2循環でのインクの流れを説明する図である。これにより、ポンプ904が駆動しても、インクタンク18に貯留されるインクが、循環経路内に流入することがなくなる。次に、CPU1008がポンプ904を駆動して、インクの循環を開始する。ここで、ポンプ904の上流側(ポンプ904によるインクの流れる方向の上流側)では、供給路902に回収路908が接続され、回収路908における回収弁910は開状態となっている。また、ポンプ904の上流側では、供給路902にインクタンク18が接続され、供給路902における供給弁906は閉状態となっている。このため、ポンプ904が駆動しても、インクタンク18に貯留されたインクは循環経路内に流入しない。また、ポンプ904が駆動することにより、回収流路924、回収チューブ24、および回収路908を介して第2圧力制御室528内のインクを吸引しつつ、吸引されて回収路908に流入したインクが供給チューブ22を介して記録ヘッド16bに移送される。
【0074】
記録ヘッド16bに移送されたインクは、流路912およびフィルタ540を通過した後に、第1圧力制御機構320および第1圧力制御室508へ供給される。そして、第1圧力制御室508のインクは、第1気泡貯留流路914、接続流路916、供給流路418、圧力室408、回収流路420、接続流路918、および第2気泡貯留流路920を通って、第2圧力制御室528に流入する。また、第1圧力制御室508のインクは、流路542、第2圧力制御機構500を介して第2圧力制御室528に流入する。
【0075】
また、第2圧力制御室528のインクは、ポンプ904の駆動や第1圧力制御室508から流入したインクにより、回収流路924および回収チューブ24を介して回収路908に流入する。そして、回収路908に流入したインクは、供給路902を介して供給チューブ22に流出する。これにより、インク供給ユニット20と記録ヘッド16bとの間でインクが循環することとなる。このように、本実施形態では、第2循環の際には、制御部1006(CPU1008)が、第1圧力制御室508、第2圧力制御室528、記録素子基板302、およびインク供給ユニット20との間でのインクの循環を制御可能な循環制御部として機能している。
【0076】
上述したように、第2循環では、ポンプ904の駆動により、回収路908、回収チューブ24、および回収流路924を介して第2圧力制御室528内のインクを回収する。第2循環では、ポンプ904により第2圧力制御室528にかかる負圧値が、第1循環の際に循環ポンプ322により第2圧力制御室528にかかる負圧値よりも高くなっている。これにより、第1圧力制御室508から、第1気泡貯留流路914などを介して記録素子基板302を通り、第2気泡貯留流路920などを介して記録素子基板302から第2圧力制御室528に流入するインクの流速が、第1循環のときよりも大きくなる。また、第1圧力制御室508から流路542を通って第2圧力制御室528に向かうインクの流速も、第1循環のときよりも大きくなる。このため、第2循環では、第1循環において循環ポンプ322のポンプ周波数を増加しても実現することができない、第1圧力制御室508から記録素子基板302における流路などを通って第2圧力制御室528までの流路で生じた沈降を解消可能となる。また、第1循環でも解消できていた沈降であっても、第2循環では、より短時間で沈降を解消することができるようになる。また、第1循環ではインクが循環しない、インク供給ユニット20から第1圧力制御機構320までの流路について、第2循環ではインクが循環するようになるため、当該流路での沈降も解消することができるようになる。
【0077】
第2循環では、第1気泡貯留流路914、接続流路916、供給流路418、圧力室408、回収流路420、接続流路918、および第2気泡貯留流路920を通る流路でのインクの流速を、第1循環よりも増加させることができる。また、第1圧力制御室508から流路542および第2圧力制御機構500を通る流路でのインクの流速を、第1循環よりも増加させることができる。これにより、第2循環では、これらの流路において生じた沈降を、第1循環よりも確実に解消することができるようになる。また、第2循環では、インク供給ユニット20から第1圧力制御機構320への流路についてもインクを循環させることができる。これにより、第2循環では、第1循環では解消することができない流路において生じた沈降を解消することができるようになる。
【0078】
<作用効果>
本実施形態では、記録ヘッド16bにおいて、インク供給ユニットから供給されたインクを、互いに所定の圧力差で負圧に調整される第1圧力制御室および第2圧力制御室と、記録素子基板に形成された流路との間でインクを循環する構成とした。さらに、インクタンクから供給チューブへインクを供給するための供給路に、回収チューブ24を介して回収されたインクが流入する回収路を接続し、これら流路を含めた循環経路においてインクを循環する構成とした。そして、記録動作時には、吐出分のインクが供給されつつ、第1圧力制御室および第2圧力制御室との圧力差を維持するように、記録ヘッド16b内においてインクを循環する第1循環を実行するようにした。また、所定時間を越えて記録動作が実行されないときには、第2圧力制御室からインクを回収しつつ、第1圧力制御室へインクを供給するようにして、第1循環時よりも高い流速でインクを循環させる第2循環を実行するようにした。これにより、記録装置10では、インクの増粘を抑制し、かつ、安定してインクを吐出可能としつつ、循環経路内で生じた、インクの含有材料の沈降を解消することができるようになる。
【0079】
(第2実施形態)
次に、図12乃至図14を参照しながら、第2実施形態による液体吐出ヘッドについて説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態で説明した記録装置と同一または相当する構成については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0080】
第2実施形態による記録装置10では、循環ユニット306aにおいて、流路544からインクを回収する回収流路が、循環ポンプ322と第1圧力制御室508との間に接続されている点において、第1実施形態と異なっている。
【0081】
図12は、第2実施形態による記録装置10に設けられたインクの循環経路を説明する図である。第2実施形態では、流路544と回収口328とを連通し、流路544におけるインクを回収チューブ24へ導く回収流路1224を備えている。回収流路1224は、流路544における循環ポンプ322と第1圧力制御室508との間から、流路544と回収口328を連通するように設けられている。本実施形態における記録装置10の他の構成および第1循環(図12の矢印参照)については、第1実施形態と同じであるため、以下の説明では、第1実施形態と異なる第2循環について詳細に説明する。
【0082】
<第2循環>
図13は、第2実施形態による記録装置10での第2循環を説明する図である。図14は、循環ユニット306aでのインクの流れを説明する図である。第2循環では、まず、CPU1008が、供給弁906を閉状態として供給路902とインクタンク18とが連通していない状態とし、回収弁910を開状態として供給路902と回収路908とが連通した状態とする。これにより、ポンプ904が駆動しても、インクタンク18に貯留されるインクが、循環経路内に流入することがなくなる。次に、CPU1008がポンプ904を駆動して、インクの循環を開始する。ポンプ904を駆動してインクの循環を実行することで、循環経路では、第2圧力制御室528よりも第1圧力制御室508の負圧が高く(圧力が低く)なる。本実施形態では、ポンプ904を駆動してインクの循環を開始することで、回収流路1224を介して第1圧力制御室508からインクがインク供給ユニット20に回収される。これにより、循環経路では、第2圧力制御室528よりも第1圧力制御室508の負圧が高く(圧力が低く)なり、第1循環のときと逆方向となるインクの流れが生じる(図13の矢印参照)。
【0083】
具体的には、ポンプ904が駆動されると、第1圧力制御室508のインクは、流路544および回収流路1224などを介して回収チューブ24に流出する(図14(a)の矢印L参照)。これにより、第1圧力制御室508は、第2圧力制御室528よりも低圧となり、第1圧力制御室508内の圧力が第1圧力制御弁502の開弁圧力に達すると、第1圧力制御弁502がオリフィス548を開放する(図14(a)参照)。このため、第1圧力制御室508には、供給チューブ22を介して供給されるインクが、フィルタ540、第1圧力制御機構320を介して流入する(図14(a)の矢印M参照)。
【0084】
第1圧力制御室508には、第2圧力制御機構500および流路542を介して第2圧力制御室528が接続されるとともに、第1気泡貯留流路914,接続流路916を介して、記録素子基板302の流路に接続されている。従って、第1圧力制御室508における圧力が、第2圧力制御室528における圧力よりも低くなると、これらの流路から第1圧力制御室508に向かってインクが流れることとなる(図14(a)の矢印N、S参照)。即ち、第2圧力制御機構500、流路542を介して第1圧力制御室508に向かってインクが流れる(図14(a)の矢印N参照)。また、第2圧力制御室528から、第2気泡貯留流路920、接続流路918、回収流路420、圧力室408、供給流路418、接続流路916、および第1気泡貯留流路914から第1圧力制御室508に向かってインクが流れる(図13の矢印参照)。
【0085】
流路542から第1圧力制御室508へ向け、第2圧力制御機構500の第2圧力制御弁522の弁開圧力に達するインク量が流れると、第2圧力制御弁522がオリフィス546を開放する(図14(b)参照)。これにより、オリフィス546を介して、第2圧力制御室528内のインクが第1圧力制御室508に流出して、第2圧力制御室528内の圧力が、第1圧力制御室508内の圧力と同程度となる。第1圧力制御室508と第2圧力制御室528とにおける圧力が同程度となると、第2圧力制御室528から、流路542および第2気泡貯留流路920側へのインクの流れは停止する。そして、第1圧力制御機構320、第1圧力制御室508、回収流路1224、回収チューブ24、回収路908、供給路902、供給チューブ22,およびフィルタ540を通るインクの循環のみが実行される。この循環により、供給路902から第1圧力制御室508までの間の流路における沈降を解消、例えば、供給チューブ22、接続部326、第1圧力制御弁502、オリフィス548などにおける沈降物を除去することができる。
【0086】
なお、第2圧力制御室528から流路542および第2気泡貯留流路920側に流れるインクの量は、第2制御バネ532が伸長したときの第2圧力制御室528の体積に対応する。このため、第2圧力制御室528からのインクの流れによって、第2圧力制御室528から第1圧力制御室508までに生じた沈降を確実に解消可能なように、第2圧力制御室528の体積が調整、つまり、第2制御バネ532の変位ストローク量が調整されている。また、第2循環では、第1気泡貯留流路914を介して第1圧力制御室508にインクが流入するため、供給流路418に滞留した気泡を排出することができるようになる。なお、供給流路418に滞留する気泡については、通常は、吐出口410からのインクの排出によって除去されるものである。従って、本実施形態での第2循環を行うことで、供給流路418に滞留した気泡を除去するためのインクの排出動作を実行する必要がなくなり、インクの消費量が抑制されるようになる。
【0087】
<作用効果>
上記第1実施形態では、流路544において、循環ポンプ322と第2圧力制御室528との間に回収流路924を接続した。これに対して、第2実施形態では、流路544において、循環ポンプ322と第1圧力制御室508との間に回収流路1224を接続するようにした。このため、第2実施形態では、第2循環において、第1実施形態とは逆方向のインクの流れを生じさせることができる。これにより、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、供給流路418に滞留する気泡を、インクを排出することなく除去することができるようになる。
【0088】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下の(1)乃至(7)に示すように変形してもよい。
【0089】
(1)上記第1実施形態では、流路544において、第2圧力制御室528と循環ポンプ322との間の所定位置に回収流路924を接続するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、回収流路420、接続流路918、第2気泡貯留流路920、および第2圧力制御室528を含む、記録素子基板302の圧力室408から循環ポンプ322まで間であれば、どこに回収流路924を接続するようにしてもよい。即ち、回収流路924は、圧力室408の下流側、かつ、循環ポンプ322の上流側であればどこに接続するようにしてよい。
【0090】
また、上記第2実施形態では、流路544において、循環ポンプ322と第1圧力制御室508との間の所定位置に回収流路1224を接続するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、供給流路418、接続流路916、第1気泡貯留流路914、および第1圧力制御室508を含む記録素子基板302の圧力室408から循環ポンプ322までの間であれば、どこに回収流路924を接続するようにしてもよい。即ち、回収流路924は、圧力室408の上流側、かつ、循環ポンプ322の下流側であればどこに接続するようにしてもよい。
【0091】
なお、上記「上流側」および上記「下流側」とは、第1循環の際にインクが循環する際のインクの流れる方向における上流側および下流側を示すものとする。
【0092】
(2)上記実施形態では、インクタンク18に接続される供給路902に、回収チューブ24を介してインクが流入する回収路908を接続するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、回収路908から流出されるインクを一時的に貯留可能なサブタンクを設け、サブタンク内のインクが供給路902に流出する構成としてもよい。この場合、サブタンクと供給路902との間に回収弁910が設けられる。あるいは、回収路908がインクタンク18に接続され、回収路908からインクタンク18内にインクが流出する構成としてもよい。この場合、回収路908とインクタンク18との間に回収弁910が設けられ、供給弁906は設けられない。これにより、循環経路内で発生した気泡をサブタンクあるいはインクタンク18に集めることができ、循環中のインクに気泡が混入し難くなる。なお、気泡の回収効率を向上するために、例えば、回収流路924、1224を、第1気泡貯留流路914、第2気泡貯留流路920の下流側近傍に接続するようにしてもよい。
【0093】
(3)上記第1実施形態では特に記載しなかったが、第2循環では、ポンプ周波数を第1循環時よりも増加して循環ポンプ322を駆動するようにしてもよい。これにより、第1圧力制御室508、流路542、第2圧力制御室528、および流路544を通って循環するインクの流速を確実に増加させ、例えば、圧力制御弁502、522およびオリフィス546、548に溜まる沈降物を確実に解消することができる。上記第1実施形態では、循環ポンプ322を駆動しない第2循環と、第1循環時のポンプ周波数よりも増加して循環ポンプ322を駆動する第2循環と、の一方を選択的に実行可能なようにしてもよいし、両方を実行可能なようにしてもよい。
【0094】
(4)上記実施形態では、Y方向に搬送される記録媒体Mに対して、記録ヘッド16をX方向に移動させながらインクを吐出することで記録する、所謂、シリアルスキャンタイプの記録装置を例として説明した。しかしながら、本発明は、吐出口410が記録媒体Mの幅方向に対応する長さだけ配列された記録ヘッドを用いる、所謂、フルラインタイプの記録装置に対しても適用することができる。なお、フルラインタイプの記録装置に適用する際には、第1圧力制御室508、第2圧力制御室528、記録素子基板302、循環ポンプ322などの記録ヘッド16bに一体的に設けられている構成の一部を、別体で設けるようにしてもよい。
【0095】
(5)上記実施形態では、インク中の気泡を貯留する気泡貯留部として、第1圧力制御室508と記録素子基板302との間に第1気泡貯留流路914を設けるようにした。また、第2圧力制御室528と記録素子基板302との間に第2気泡貯留流路920を設けるようにした。しかしながら、気泡貯留部については、第1気泡貯留流路914および第2気泡貯留流路920のどちらか一方が設けられる構成としてもよい。
【0096】
(6)上記実施形態では、記録ヘッド16bにおいて、沈降の生じ易い白インクに対してのみ、インク供給ユニット20へインクを回収可能な循環ユニット306aを用いるようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、沈降の生じ難い、ライトシアンインクおよびライトマゼンタインクに対しても、循環ユニット306aを用いるようにしてもよい。この場合、制御部1006(CPU1008)の制御によって、第1循環を実行するタイミングで、白インク、ライトシアンインク、およびライトマゼンタインクに対して第1循環を実行する。また、第2循環を実行するタイミングで、白インクに対して第2循環を実行し、ライトシアンインクおよびライトマゼンタインクに対して第2循環を実行しない。
【0097】
(7)上記実施形態および上記した(1)および(6)に示す各種の形態は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【0098】
上記実施形態の開示は、以下の構成および方法を含む。
(構成1)
第1負圧に制御される第1圧力制御室と、
前記第1圧力制御室に流路を介して接続され、前記第1負圧よりも低圧となる第2負圧に制御される第2圧力制御室と、
前記第1圧力制御室から供給される液体を吐出口から吐出可能であるとともに、前記吐出口から吐出されなかった液体を前記第2圧力制御室に回収可能な吐出手段と、
前記第1圧力制御室に対して、貯留する液体を供給可能であり、かつ、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段における液体を回収可能な供給手段と、
前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、前記吐出手段、および前記供給手段の間での液体の循環を制御可能な循環制御手段と、を有し、
前記循環制御手段は、
前記第1圧力制御室および前記第2圧力制御室における圧力差を利用して、液体を、前記第1圧力制御室から前記吐出手段および前記第2圧力制御室を通って前記第1圧力制御室に戻す第1循環と、
前記第1圧力制御室に対して液体を供給しつつ、前記第1圧力制御室および前記第2圧力制御室がそれぞれ対応する負圧に制御されることなく、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段における液体を、前記供給手段に回収する第2循環と、を実行可能であることを特徴とする液体吐出装置。
(構成2)
前記第1圧力制御室と前記第2圧力制御室とを接続する流路は、第1ポンプによって前記第1圧力制御室から前記第2圧力制御室へ液体を移送可能な流路を含み、
前記第2循環では、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段における液体は、前記第1循環の際に液体が流れる方向において、前記吐出手段における、前記吐出口から液体を吐出するためのエネルギーが液体に付与される圧力室よりも下流側、かつ、前記第1ポンプよりも上流側の所定位置から回収されることを特徴とする構成1に記載の液体吐出装置。
(構成3)
前記所定位置は、前記第1ポンプと前記第2圧力制御室との間に位置することを特徴とする構成2に記載の液体吐出装置。
(構成4)
前記第2循環では、前記供給手段によって負圧を生じさせて液体を回収し、
前記第2循環の際に前記供給手段によって前記第2圧力制御室にかかる負圧値は、前記第1循環の際に前記第1ポンプによって前記第2圧力制御室にかかる負圧値よりも高いことを特徴とする構成2または3に記載の液体吐出装置。
(構成5)
前記第1圧力制御室と前記第2圧力制御室とを接続する流路は、第1ポンプによって前記第1圧力制御室から前記第2圧力制御室へ液体を移送可能な流路を含み、
前記第2循環では、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段における液体は、前記第1循環の際に液体が流れる方向において、前記吐出手段における、前記吐出口から液体を吐出するためのエネルギーが液体に付与される圧力室よりも上流側、かつ、前記第1ポンプよりも下流側の所定位置から回収されることを特徴とする構成1に記載の液体吐出装置。
(構成6)
前記所定位置は、前記第1ポンプと前記第1圧力制御室との間に位置することを特徴とする構成5に記載の液体吐出装置。
(構成7)
前記供給手段は、
液体を貯留する貯留手段と、
前記貯留手段に貯留される液体および回収される液体を、前記第1圧力制御室へ移送可能な第2ポンプと、を有することを特徴とする構成1から6のいずれか1つに記載の液体吐出装置。
(構成8)
前記供給手段は、
前記第1循環が実行される際には、前記貯留手段に貯留された液体の前記第1圧力制御室への移送が許容され、かつ、回収される液体の流入が規制され、
前記第2循環が実行される際には、前記貯留手段に貯留された液体の前記第1圧力制御室への移送が規制され、かつ、回収される液体の流入が許容されることを特徴とする構成7に記載の液体吐出装置。
(構成9)
前記供給手段は、回収される液体を貯留可能な貯留部をさらに備え、
前記第2循環では、回収されて前記供給手段に流入する液体は、前記貯留部に流入した後に、前記第2ポンプによって前記貯留部から前記第1圧力制御室に移送されることを特徴とする構成7に記載の液体吐出装置。
(構成10)
前記第2循環では、回収されて前記供給手段に流入する液体は、前記貯留手段に流入するとともに、前記第2ポンプによって前記貯留手段における液体が前記第1圧力制御室に移送されることを特徴とする構成7に記載の液体吐出装置。
(構成11)
前記第1圧力制御室および前記第2圧力制御室は、
負圧に制御される室内の圧力を制御する圧力制御機構と、
前記室内の圧力に応じて前記室内の体積を変動させる変動膜と、を有することを特徴とする構成1から10のいずれか1つに記載の液体吐出装置。
(構成12)
前記圧力制御機構は、
前記室内に液体を流入させるためのオリフィスと、
前記室内からの液体の流出によって所定の圧力以下となると前記オリフィスを開放して前記室内に液体が流入できるようにし、前記室内への液体の流入によって前記所定の圧力を上回ると前記オリフィスを閉塞して前記室内に液体が流入できないようにする弁と、
前記室内の体積を広げる方向に前記変動膜を付勢するバネと、を有することを特徴とする構成11に記載の液体吐出装置。
(構成13)
前記バネが伸長したときの前記第2圧力制御室の前記室内の体積は、第2循環によるインクの流れによって、前記第2圧力制御室から前記第1圧力制御室までに生じる液体の含有材料の沈降を解消可能な液体の量に対応することを特徴とする構成12に記載の液体吐出装置。
(構成14)
前記第1圧力制御室と前記吐出手段との間、および前記第2圧力制御室と前記吐出手段との間の少なくとも一方には、液体に生じた気泡を貯留可能な気泡貯留手段が配置されることを特徴とする構成1から13のいずれか1つに記載の液体吐出装置。
(構成15)
前記第1循環は、前記吐出口から液体を吐出する動作中に実行されることを特徴とする構成1から14のいずれか1つに記載の液体吐出装置。
(構成16)
前記第2循環は、前記吐出口から液体を吐出する動作を実行しない時間が所定時間を超過したタイミングで実行されることを特徴とする請求項1から15のいずれか1つに記載の液体吐出装置。
(構成17)
前記所定時間は、使用する液体において、含有材料が沈降し始める時間以降であり、かつ、生じた沈降が前記第2循環によって解消できなくなる時間よりも一定時間だけ前となる時間であることを特徴とする構成16に記載の液体吐出装置。
(構成18)
前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段は、液体を循環するための流路と共に液体吐出ヘッドに一体的に設けられることを特徴とする請求項1から17のいずれか1つに記載の液体吐出装置。
(構成19)
前記液体吐出ヘッドは、所定方向に沿って移動しながら前記吐出手段における前記吐出口から液体を吐出することを特徴とする構成18に記載の液体吐出装置。
(構成20)
前記液体吐出装置は、複数の液体を吐出可能であり、
前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、前記吐出手段、および前記供給手段は、複数の液体のそれぞれに対して設けられ、
前記循環制御手段は、すべての液体に対して前記第1循環を実行するとともに、所定の液体に対して前記第2循環を実行することを特徴とする構成1から19のいずれか1つに記載の液体吐出装置。
(構成21)
前記所定の液体は、含有材料の沈降が生じる液体であることを特徴とする構成20に記載の液体吐出装置。
(構成22)
第1負圧に制御される第1圧力制御室と、
前記第1圧力制御室に流路を介して接続され、前記第1負圧よりも低圧となる第2負圧に制御される第2圧力制御室と、
前記第1圧力制御室から供給される液体を吐出口から吐出可能であるとともに、前記吐出口から吐出されなかった液体を前記第2圧力制御室に回収可能な吐出手段と、を有し、
前記第1圧力制御室および前記第2圧力制御室における圧力差を利用して、液体を、前記第1圧力制御室から前記吐出手段および前記第2圧力制御室を通って前記第1圧力制御室に戻す第1循環と、
前記第1圧力制御室に対して液体が供給されつつ、前記第1圧力制御室および前記第2圧力制御室がそれぞれ対応する負圧に制御されることなく、前記第1圧力制御室、前記第2圧力制御室、および前記吐出手段における液体が回収される第2循環と、を実行可能であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【符号の説明】
【0099】
10 記録装置
20 インク供給ユニット
302 記録素子基板
322 循環ポンプ
508 第1圧力制御室
528 第2圧力制御室
542、544 流路
図1
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