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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016798
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】排気ガス冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/29 20160101AFI20240131BHJP
   F02M 26/06 20160101ALI20240131BHJP
   F02M 26/28 20160101ALI20240131BHJP
【FI】
F02M26/29
F02M26/06
F02M26/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023093663
(22)【出願日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】22186965
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515191442
【氏名又は名称】ヴィンタートゥール ガス アンド ディーゼル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ シュタイガー
【テーマコード(参考)】
3G062
【Fターム(参考)】
3G062AA05
3G062ED08
(57)【要約】
【課題】大型内燃機関用の排気ガス冷却装置1及び内燃機関を提供すること。
【解決手段】排気ガス冷却装置1は、予冷却噴射チューブ2と、流出チューブ3と、吸収器ユニット4とを備える。吸収器ユニット4は、高さh、最大幅w、及び最大長さlを有し、最大長さlは最大幅wよりも長い。排気ガス冷却装置1は、吸収器ユニット4の長さlに沿ってテーパ状で、予冷却噴射チューブ2及び吸収器ユニット4と流体的に接続された流入デフレクタ・ハウジング6、並びに、吸収器ユニットの長さlに沿ってテーパ状で、吸収器ユニット4及び流出チューブ3と流体的に接続された流出デフレクタ・ハウジング7をさらに備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予冷却噴射チューブ(2)と、
流出チューブ(3)と、
高さ(h)、最大幅(w)、及び最大長さ(l)を有し、前記最大長さ(l)が前記最大幅(w)よりも長い、吸収器ユニット(4)と、
前記吸収器ユニット(4)の前記長さ(l)に沿ってテーパ状で、前記予冷却噴射チューブ(2)及び前記吸収器ユニット(4)と流体的に接続された流入デフレクタ・ハウジング(6)と、
前記吸収器ユニット(4)の前記長さ(l)に沿ってテーパ状で、前記吸収器ユニット(4)及び前記流出チューブ(3)と流体的に接続された流出デフレクタ・ハウジング(7)と
を備える大型内燃機関(100)用の排気ガス冷却装置(1)。
【請求項2】
前記吸収器ユニットが、前記吸収器ユニットの前記長さ(l)に沿って並列に配置された少なくとも1つの単体の吸収器(5)、好ましくは少なくとも2つの単体の吸収器(5)を備える、請求項1に記載の排気ガス冷却装置(1)。
【請求項3】
前記単体の吸収器(5)が矩形の流れ領域を備える、又は並列に配置されたいくつかの単体の吸収器(5)が円形の流れ領域を備える、請求項2に記載の排気ガス冷却装置(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの水ノズル(8)が前記予冷却噴射チューブ(2)に配置されている、請求項1から3までの少なくとも一項に記載の排気ガス冷却装置(1)。
【請求項5】
前記予冷却噴射チューブ(2)がJ字形状である、請求項1から4までの少なくとも一項に記載の排気ガス冷却装置(1)。
【請求項6】
前記テーパ状の流入デフレクタ・ハウジング(6)の開口径(14)が、前記排気ガスの流路に沿って小さくなっている、請求項1から5までの少なくとも一項に記載の排気ガス冷却装置(1)。
【請求項7】
前記テーパ状の流出デフレクタ・ハウジング(7)の開口径(15)が、前記排気ガスの流路の反対方向に小さくなっている、請求項1から6までの少なくとも一項に記載の排気ガス冷却装置(1)。
【請求項8】
前記流入デフレクタ・ハウジング(6)が前記吸収器ユニット(4)の下方に配置され、及び/又は、前記流出デフレクタ・ハウジング(7)が前記吸収器ユニット(4)の上方に配置される、請求項1から7までの少なくとも一項に記載の排気ガス冷却装置(1)。
【請求項9】
前記吸収器ユニット(4)が冷却層(9)を備える、請求項1から8までの少なくとも一項に記載の排気ガス冷却装置(1)。
【請求項10】
前記吸収器ユニット(4)が少なくとも1つの水噴霧ノズル(10)を備え、前記水噴霧ノズル(10)がコモン・レール(11)によって接続されることが好ましく、前記吸収器ユニット(4)がいくつかの単体の吸収器と、単体の各吸収器に対して少なくとも1つの水噴霧ノズルとを備えることが好ましい、請求項1から9までの少なくとも一項に記載の排気ガス冷却装置(1)。
【請求項11】
前記流出チューブ(3)がデミスタ(12)を備える、請求項1から10までの少なくとも一項に記載の排気ガス冷却装置(1)。
【請求項12】
冷却水戻りライン(13)が前記流入デフレクタ・ハウジング(6)に、好ましくは最も低い地点で接続される、請求項1から11までの少なくとも一項に記載の排気ガス冷却装置(1)。
【請求項13】
少なくとも200mmの内径(102)を有する少なくとも1つのシリンダ(101)を備え、請求項1から12までの少なくとも一項に記載の排気ガス冷却装置(1)を備える内燃機関(100)、すなわち大型船舶用機関又は定置機関、好ましくは2行程機関又は2行程クロス・ヘッド機関。
【請求項14】
前記内燃機関(100)が少なくとも1つのターボ過給機(102)を備え、前記ターボ過給機(103)がタービン(104)及び圧縮機(105)を備え、前記内燃機関(100)が、前記シリンダ(101)の排気出口(108)と空気入口(109)との間に流体的に配置された少なくとも低圧EGR経路(107)を有する排気ガス再循環用のシステム(106)をさらに備え、排気ガスが、前記ターボ過給機(103)の前記タービン(104)を経由して案内可能であり、前記排気ガスの少なくとも一部が、前記ターボ過給機(103)の前記圧縮機(105)を通って前記シリンダ(101)の前記空気入口(109)に案内可能であり、前記排気ガス冷却装置(1)が前記低圧EGR経路(107)に配置された、請求項13に記載の内燃機関(100)。
【請求項15】
前記排気ガス冷却装置(1)が、前記シリンダ・ジャケット及び/又は機関フレーム及び/又は機関プラットフォームに取り付けられた、請求項14に記載の内燃機関(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の排気ガス冷却装置及び内燃機関に関する。
【0002】
本発明は、好ましくは、シリンダの内径が少なくとも200mmの大型の舶用若しくは船用機関又は定置機関のような内燃機関に関する。機関は、2行程機関又は2行程クロス・ヘッド機関であることが好ましい。機関は、ディーゼル機関又はガス機関、二元燃料機関又は多種燃料機関とすることができる。このような機関では、自己着火又は強制着火に加えて、液体燃料及び又は気体燃料の燃焼も可能である。
【0003】
内燃機関は、長手方向掃気式2行程機関とすることができる。
【0004】
内燃機関という用語はまた、燃料の自己着火によって特徴付けられるディーゼル・モードだけでなく、燃料の点火によって特徴付けられるオットー・モード、又は両者を混合したモードで運転することができる大型機関を指す。さらに、内燃機関という用語は、特に、燃料の自己着火が別の燃料の点火のために使用される二元燃料機関及び大型機関を含む。
【0005】
機関速度は、特に4行程機関では800RPM未満が好ましく、特に2行程機関では、低速エンジンの呼称を示す200RPM未満がより好ましい。
【0006】
燃料は、ディーゼル油若しくは舶用ディーゼル油、又は重油、又はエマルジョン、又はスラリー、又はメタノール、又はエタノール、及び液化天然ガス(LNG:liquid natural gas)、液化石油ガス(LPG:liquid petrol gas)などの気体とすることができる。
【0007】
さらに可能な燃料としては、要求に応じて、LBG(Liquefied Biogas、液化バイオガス)、生物燃料(例えば、藻類又は海藻から作られた油)、アンモニア、水素、CO2からの合成燃料(例えば、パワー・ツー・ガス(Power-to-Gas)又はパワー・ツー・リキッド(Power-to-Liquid)によって作られる)を加えることができる。
【背景技術】
【0008】
大型船、特に貨物輸送用の船舶は、通常、内燃機関、特にディーゼル機関及び/又はガス機関、主に2行程クロス・ヘッド機関によって動力を得る。
【0009】
ガス/空気混合物の反応性及びメタン・スリップを減少させるために、例えば欧州特許出願公開第3722572(A1)号に示されるように、排気ガス再循環(EGR:exhaust gas recirculation)、特に低圧排気ガス再循環(EGR)を行うことが知られている。排気ガスの一部はシリンダ内に再循環され、一方、排気ガスの別の部分は煙突に案内されて環境中に放出される。
【0010】
高圧EGR経路が排気マニホールドと吸気マニホールドとの間に概ね直接挿入されるのに対し、低圧EGR経路はターボ過給機のタービン下流で分岐され、再循環される排気ガスを新気とともにターボ過給機の圧縮機を通るように案内することができる。
【0011】
典型的には、低圧EGR経路は低圧EGR冷却装置を備える。低圧EGRクーラは、機関の近くに又は機関自体に取り付けるには大きすぎるサイズを有することがある。
【0012】
EGRクーラがシリンダ・ブロックの外側に配置されると、他の補機類との干渉の問題が生じる。さらに、重量物の支持強度を解決しておかねばならない。
【0013】
欧州特許第2853726(B1)号は、低圧クーラを小型化することができる特定の機関設計を開示している。
【0014】
特開2000248936(A2)号は、設置スペースが小さいEGRクーラを有する機関を開示している。EGRクーラは、機関本体の後端部の近くに配置される。EGRクーラは、機関本体の一部分と吸気管の一部分とに結合された単一の取付ステーによって支持される。
【0015】
しかしながら、EGRクーラがかなりの体積と重量を有するとき、機関自体が大きくなり、狭い機関室にコンパクトに設置することができない。特に、低圧EGRクーラは低圧で低速であるため、水を垂らして冷却する冷却吸収器は、機関の長辺に取り付けることができないほど大きなサイズを有する。吸収器は、機関と機関室壁との間で利用可能なスペースを超える。
【0016】
米国特許第10,100,787(B2)号及びドイツ特許出願公開第102014115453(A1)号は、熱交換器として動作し、EGRガスが案内されて通る、並列に配置されたチャネルを有するEGRクーラを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3722572(A1)号
【特許文献2】欧州特許第2853726(B1)号
【特許文献3】特開2000248936(A2)号
【特許文献4】米国特許第10,100,787(B2)号
【特許文献5】ドイツ特許出願公開第102014115453(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、知られている欠点を回避する排気ガス冷却装置及び内燃機関を提供するという課題に基づいており、特に、機関取付けのEGR冷却装置を有する機関を提供するために、配置変更が容易なEGR冷却装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。
【0020】
本発明によれば、大型内燃機関用の排気ガス冷却装置は、予冷却噴射チューブと、流出チューブと、吸収器ユニットとを備える。
【0021】
予冷却噴射チューブは排気ガス入口を備え、流出チューブは排気ガス出口を備える。吸収器ユニットは、予冷却噴射チューブと流出チューブとの間に流体的に配置される。
【0022】
標準的なチューブ・タイプの冷却吸収器は直径が1~6mである。吸収器ユニットは、高さ、最大幅、及び最大長さを有し、最大長さは最大幅よりも長い。最大幅は、同等の標準的なチューブ・タイプの吸収器の直径の50%未満であることが好ましい。最大幅は3mより狭いことが好ましい。
【0023】
流れ領域は、排気ガスが流れる主流方向に垂直な断面の領域である。吸収器ユニット又は単体の吸収器の流れ領域は、吸収器ユニット又は単体の吸収器の幅と長さにわたる平面に平行であり、吸収器ユニットを通る流れ方向は高さの方向に平行である。
【0024】
排気ガス冷却装置は、吸収器ユニットの長さに沿ってテーパ状の流入デフレクタ・ハウジングをさらに備える。流入デフレクタ・ハウジングは、予冷却噴射チューブ及び吸収器ユニットと流体的に接続される。
【0025】
流入デフレクタ・ハウジングのテーパ状の形態は、流入デフレクタ・ハウジング内の第1の主流方向から吸収器ユニット内の第2の主流方向へガスの主流方向を変えるために提供することができ、第2の主流方向は、第1の主流方向に対して垂直であることが好ましい。
【0026】
流入デフレクタ・ハウジングの流れ領域は、吸収器ユニットの長さにわたって、流入デフレクタ・ハウジングを通る主流方向に小さくしてもよい。
【0027】
排気ガス冷却装置は、吸収器ユニットの長さに沿ってテーパ状の流出デフレクタ・ハウジングをさらに備える。流出デフレクタ・ハウジングは、吸収器ユニット及び流出チューブと流体的に接続される。
【0028】
流出デフレクタ・ハウジングのテーパ状の形態は、吸収器ユニット内の第2の主流方向から流出デフレクタ・ハウジング内の第3の主流方向へガスの主流方向を変えるために提供することができ、第2の主流方向は、第3の主流方向に対して垂直であることが好ましい。
【0029】
流出デフレクタ・ハウジングの流れ領域は、吸収器ユニットの長さにわたって、流出デフレクタ・ハウジングを通る主流方向に大きくしてもよい。流入デフレクタ・ハウジング及び流出デフレクタ・ハウジングはそれぞれ吸収器ユニットに隣接して配置される。
【0030】
流入デフレクタ・ハウジングのテーパ状の形態により、吸収器ユニットの流れ領域への排気ガスの流れを均質にすることができ、一方、流出デフレクタ・ハウジングのテーパ状の形態により、吸収器ユニットの流れ領域からの排気ガスの流れを均質にすることができる。これはまた、排気ガスの圧力が低いとき、例えば、低圧排気ガス再循環システムにおいて適用される。
【0031】
したがって、非対称な流れ領域を有する吸収器ユニットに対しても、排気ガスの圧力を均等に分布させることができる。この文脈では、非対称な流れ領域とは、最大幅が最大長さより小さいため、流れ領域の円対称性又は二次対称性を有さない流れ領域を意味する。
【0032】
非対称な流れ領域を有する吸収器ユニットでは、クーラの配置に対してより多様性がある。冷却に必要な流れ領域は、十分狭い幅で実現することができ、機関の周り及び/又は機関と機関室の壁との間で利用可能なスペースに適合させることができる。
【0033】
予冷却噴射チューブ、流出チューブ、吸収器ユニット、流入デフレクタ・ハウジング、及び流出デフレクタ・ハウジングは別個の構造部品であることが好ましく、排気ガスが最初に予冷却噴射チューブを通り、次いで流入デフレクタ・ハウジングを通り、吸収器ユニットを通り、流出デフレクタ・ハウジングを通り、最後に流出チューブを通って流れる限り、これらの各構造部品は、互いに対して選択可能な向きで組み合わせることができる。したがって、排気ガス冷却装置は、特定の空間条件に適合させることができる。
【0034】
予冷却噴射チューブ、流入デフレクタ・ハウジング、流出デフレクタ・ハウジング、吸収器ユニットの壁、及び流出チューブは、酸性の冷却水に耐えるようにステンレス鋼又はめっき鋼から作られてもよい。壁の厚さは3~8mmとすることができる。
【0035】
これに代えて、壁はまた、100℃までの温度に耐えることができる合成材料で作ることができる。
【0036】
吸収器ユニットは、少なくとも1つの単体の吸収器を備えることができる。吸収器ユニットは、吸収器ユニットの長さに沿って並列に配置された少なくとも2つの単体の吸収器を備えることが好ましい。
【0037】
吸収器ユニットの総流れ領域は、単体の吸収器の流れ領域によって定められる。
【0038】
単体の吸収器は、典型的には、閉鎖壁を有する。
【0039】
並列のいくつかの単体の吸収器は、同一の機能タイプのものであってもよく、及び/又は、それぞれが同一の流れ領域及び同一の高さを有する同一の形状、好ましくは円筒形であってもよい。
【0040】
高さは0.5~5m、長さは2~10m、及び直径は0.5~3mの範囲とすることができる。
【0041】
並列に配置されたいくつかの単体の吸収器では、吸収器ユニットの幅は、典型的には、単体の吸収器の幅によって与えられる。吸収器ユニットの長さは、いくつかの単体の吸収器の長さの合計と単体の吸収器間の距離によって与えられる。
【0042】
単体の吸収器は、矩形の流れ領域を有する円筒の形状を備えてもよい。
【0043】
並列に配置されたいくつかの単体の吸収器はそれぞれ、円形又は矩形の流れ領域を有する円筒の形状を備えてもよい。
【0044】
単体の吸収器は、吸収器ユニットの幅が吸収器ユニットの長さよりも狭い限り、任意の流れ領域の形状、例えば楕円形を有してもよい。
【0045】
矩形の流れ領域は、吸収器ユニット内に、より大きな流れ領域をもたらすことができる。円形又は楕円形の流れ領域は、耐圧性を向上させることができ、これは、シリンダ内で失火が発生し、クーラ内の圧力が0.5barまで上昇した場合に必要となることがある。
【0046】
吸収器ユニット、特に各単体の吸収器は冷却層を備えてもよい。冷却層は、バルク材として提供されるステンレス鋼の圧延シート又はストリップを備えてもよい。ステンレス鋼は、典型的には、排気ガス中に含まれる可能性のあるいかなる腐食性の汚染物質にも抗する。
【0047】
排気ガスはバルク材料を通って流れることができ、その熱を圧延シートに放出する。
【0048】
少なくとも1つの水ノズルが予冷却噴射チューブに配置される。ノズルは、予冷却噴射チューブの内壁に噴霧するように配置されることが好ましい。したがって、管を通って流れる排気ガスは管に熱を放出し、その管は水によって冷却される。
【0049】
排気は、約230℃~280℃の温度から、予冷却噴射チューブに沿って約80~90℃の温度に冷却することができることが好ましい。その長さは冷却能力によっており、吸収器ユニットの高さ以上が好ましい。
【0050】
予冷却噴射チューブは、排気ガスを導き、冷却水を案内するようにJ字形状を有することが好ましい。予冷却噴射チューブ及び流出チューブは、典型的には、円形断面を有する。
【0051】
その直径は吸収器ユニットの幅に等しいことが好ましい。
【0052】
テーパ状の流入デフレクタ・ハウジングの開口径は、排気ガスの流路に沿って小さくなり、その結果、圧力は吸収器ユニットの長さに沿ってほぼ一定のままである一方、より多くの排気が流入デフレクタ・ハウジングから吸収器ユニットへ出ていくことが好ましい。
【0053】
並列の単体の吸収器のそれぞれに同様の量の排気ガスを案内することができる。
【0054】
テーパ状の流出デフレクタ・ハウジングの開口径は、排気ガスの流路の反対方向に小さくなる、すなわち、排気ガスの流路に沿って大きくなることが好ましい。したがって、圧力は吸収器ユニットの長さに沿ってほぼ一定のままである一方、より多くの排気が吸収器ユニットから流出デフレクタ・ハウジングに加えられる。
【0055】
流入デフレクタ・ハウジングは吸収器ユニットの下方に配置され、及び/又は、流出デフレクタ・ハウジングは吸収器ユニットの上方に配置されることが好ましい。したがって、排気ガスは下から上に吸収器ユニットを通って流れる。これは、吸収器ユニット内に冷却用の水が供給されている場合に特に有利である。
【0056】
吸収器ユニットは、少なくとも1つの水噴霧ノズルを備えてもよい。吸収器ユニットは、並列に配置されたいくつかの単体の吸収器と、各単体の吸収器に対して少なくとも1つの水噴霧ノズルとを備えることが好ましい。
【0057】
噴霧ノズルは冷却層の上方に配置され、冷却層に向けられていることが好ましい。したがって、排気ガスから熱を吸収する冷却層は水によって冷却される。冷却水の温度によって、排気ガスを十分冷却することができる。特に、噴霧ノズルは、吸収器ユニットの壁に向かないように配置される。というのは、この場合、冷却水は壁から離れて流れるからである。排気ガスは、吸収器ユニット内で80~90℃の温度から30~35℃の温度に冷却することができる。
【0058】
噴霧ノズルは、直径1~2mmの液滴を有する雨のような水シャワーを生成することが好ましい。
【0059】
複数の噴霧ノズルはコモン・レールによって接続されてもよい。コモン・レールは、予冷却噴射チューブに冷却水をやはり供給する給水管から分岐してもよい。
【0060】
流出チューブはデミスタを備えてもよい。デミスタは、排気ガス中に含まれる水滴の大きさを、好ましくは40ミクロン未満の直径まで小さくする。
【0061】
冷却水戻りラインは流入デフレクタ・ハウジングに、好ましくは最も低い地点で接続されてもよい。流入デフレクタ・ハウジングのテーパ状の形態により、水を冷却水戻りラインに案内することができる。
【0062】
予冷却噴射チューブ及び吸収器ユニットからの冷却水は、流入デフレクタ・ハウジングに集めることができ、冷却水戻りラインに案内することができる。
【0063】
冷却水戻りラインは,循環水タンクに流体的に接続されてもよい。循環水は、適切な温度にされてもよく、特に冷却されてもよく、及び/又は、洗浄されてもよく、予冷却噴射チューブ及び/又は吸収器ユニットの冷却水として再び使用されてもよい。
【0064】
本発明によれば、内燃機関、すなわち大型船舶用機関又は定置機関は2行程機関又は2行程クロス・ヘッド機関であることが好ましい。本内燃機関は、少なくとも200mmの内径を有する少なくとも1つのシリンダを備える。
【0065】
本内燃機関は上記の排気ガス冷却装置を備える。
【0066】
本内燃機関は、少なくとも1つのターボ過給機を備えることが好ましく、ターボ過給機はタービン及び圧縮機を備える。
【0067】
本内燃機関は、シリンダの排気出口と空気入口との間に流体的に配置された少なくとも低圧EGR経路を有する排気ガス再循環用のシステムをさらに備えてもよい。低圧EGR経路によって、排気ガスはターボ過給機のタービンを経由して案内可能であってもよい。排気ガスの少なくとも一部は、ターボ過給機の圧縮機を通ってシリンダの空気入口に案内可能であってもよい。本排気ガス冷却装置は、タービンと圧縮機との間の低圧EGR経路に配置することができる。
【0068】
本排気ガス冷却装置は、シリンダ・ジャケット及び/又は機関フレーム及び/又は機関プラットフォームに取り付けることができる。
【0069】
シリンダ・ジャケットはシリンダの保持構造体である。機関プラットフォームは、シリンダ・ジャケットに接続される。シリンダ・ジャケット、機関フレーム、及び機関プラットフォームは、安定性を与えるために、通常、鋳鉄から作られる。
【0070】
したがって、本排気ガス冷却装置は、船又は機関ハウスの一部ではなく、「機関自体に」取り付けることができる。
【0071】
本発明のさらに有利な態様を、例示的な実施例及び図によって以下に説明する。図は概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】内燃機関の概略図である。
図2】排気ガス冷却装置の第1の実例の第1の概略側面図である。
図3】排気ガス冷却装置の第1の実例の第2の概略側面図である。
図4】排気ガス冷却装置の第1の実例の概略斜視図である。
図5】排気ガス冷却装置の第2の実例の概略斜視図である。
図6】排気ガス冷却装置の第3の実例の概略斜視図である。
図7】排気ガス冷却装置の第4の実例の概略斜視図である。
図8】排気ガス冷却装置の第2の実例を有する内燃機関の第1の実例の第1の概略斜視図である。
図9】内燃機関の第1の実例の第2の概略斜視図である。
図10】排気ガス冷却装置の第2の実例を有する内燃機関の第2の実例の第1の概略斜視図である。
図11】内燃機関の第2の実例の第2の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1は内燃機関100の概略図である。
【0074】
内燃機関100は、少なくとも200mmの内径102を有する少なくとも1つのシリンダ101を備える。
【0075】
内燃機関100は、タービン104及び圧縮機105を有するターボ過給機103を備える。内燃機関100は、シリンダ101の排気出口108と空気入口109との間に流体的に配置された低圧EGR経路107を有する排気ガス再循環(EGR)用のシステム106をさらに備える。排気ガスは、ターボ過給機103のタービン104を経由して案内される。排気ガスの一部は、新気FAも吸引するターボ過給機103の圧縮機105を通ってシリンダ101の空気入口109に案内される。
【0076】
新気、又は新気と再循環された排気との混合物は、掃気レシーバ110に案内される。往復動ピストンが低い位置にあるとき、新気、又は新気と再循環された排気との混合物は、シリンダ101に入ることができる。
【0077】
EGR弁112がEGR経路107に配置される。EGR経路107内の圧力は、背圧弁113によって調整することができる。
【0078】
排気ガス冷却装置1は、低圧EGR経路107に、この実例ではEGR弁112の下流に配置される。
【0079】
図2は、排気ガス冷却装置1の第1の実例の第1の概略側面図である。
【0080】
排気ガス冷却装置1は、J字形状の予冷却噴射チューブ2を備える。2つの水ノズル8が予冷却噴射チューブ2に配置される。排気ガス冷却装置1は、デミスタ12を有する流出チューブ3を備える。排気ガス冷却装置1は吸収器ユニット4をさらに備える。
【0081】
排気ガスは、排気ガス冷却装置1の予冷却噴射チューブ2に入り、吸収器ユニット4を通り、流出チューブ3を通った後に排気ガス冷却装置1を出る。
【0082】
吸収器ユニット4は、高さh、最大幅w(図6参照)、及び最大長さlを有し、最大長さlは最大幅wよりも長い。
【0083】
排気ガス冷却装置1は、吸収器ユニット4の長さlに沿ってテーパ状の流入デフレクタ・ハウジング6を備え、流入デフレクタ・ハウジング6は、予冷却噴射チューブ2及び吸収器ユニット4と流体的に接続される。テーパ状の流入デフレクタ・ハウジング6の鉛直方向の開口径14は、排気ガスの流路に沿って小さくなっている。
【0084】
この実例では、予冷却噴射チューブ2の流出端16は、吸収器ユニット4に接続されるように広くされている。システムの最も低い位置は冷却水戻りシステムに接続される。
【0085】
排気ガス冷却装置1は、吸収器ユニット4の長さlに沿ってテーパ状の流出デフレクタ・ハウジング7を備える。流出デフレクタ・ハウジング7は、吸収器ユニット4及び流出チューブ3と流体的に接続される。テーパ状の流出デフレクタ・ハウジング7の鉛直方向の開口径15は、排気ガスの流路の反対方向に小さくなっている。開口径15は、排気ガスの流路に沿って大きくなっている。
【0086】
流入デフレクタ・ハウジング6は、吸収器ユニット4の下方に配置され、流出デフレクタ・ハウジング7は、吸収器ユニット4の上方に配置される。
【0087】
吸収器ユニット4は、吸収器ユニット4の長さlに沿って並列に配置された4つの単体の吸収器5を備える。
【0088】
単体の各吸収器5は冷却層9を備える。単体の各吸収器5に対して、冷却層9に水を噴霧するために水噴霧ノズル10が配置される。水噴霧ノズル10はコモン・レール11によって接続される。
【0089】
吸収器ユニット4及び予冷却噴射チューブ2の冷却水を集めるための冷却水戻りライン13は、流入デフレクタ・ハウジング6に最も低い地点で接続される。
【0090】
図3は、排気ガス冷却装置1の第1の実例の第2の概略側面図である。排気ガス冷却装置1は、内燃機関100と機関室の壁(図示せず)との間に排気ガス冷却装置1を配置することができるように、狭い幅2を有するいくつかの単体の吸収器を有するほっそりとした設計である。
【0091】
図4は、排気ガス冷却装置1の第1の実例の一部の概略斜視図である。排気ガス冷却装置1は、円形の流れ領域を有する4つの単体の吸収器5を備える。
【0092】
テーパ状の流入デフレクタ・ハウジング6とテーパ状の流出デフレクタ・ハウジング7は、予冷却噴射チューブ2と流出チューブ3が互いに隣接して配置されるような向きに配置される。
【0093】
図5は、排気ガス冷却装置1の第2の実例の概略斜視図である。テーパ状の流入デフレクタ・ハウジング6とテーパ状の流出デフレクタ・ハウジング7は、予冷却噴射チューブ2と流出チューブ3が吸収器ユニット4に対して互いに反対側に配置されるような向きに配置される。
【0094】
図6は、排気ガス冷却装置1の第3の実例の概略斜視図である。高さh、長さl、及び幅wを有する吸収器ユニット4は、矩形の流れ領域を有する単体の吸収器5を1つだけ備える。
【0095】
図7は、排ガス冷却装置1の第4の実例の概略斜視図である。吸収器ユニット4は、それぞれ矩形の流れ領域を有して並列に配置された2つの単体の吸収器5を備える。
【0096】
図8は、排気ガス冷却装置1の第2の実例を有する内燃機関100の第1の実例の一部の第1の概略斜視図である。
【0097】
図9は、内燃機関100の第1の実例の一部の第2の概略斜視図である。排気ガス冷却装置1は、機関の自由端又は駆動端において、機関プラットフォームに、又は支持体によって機関ハウジングに固定され、吸収器ユニット4(図8参照)の長さlは、機関のクランク軸の方向17を横切る方向に向けられる。
【0098】
図10は、排気ガス冷却装置1の第2の実例を有する内燃機関100の第2の実例の一部の第1の概略斜視図である。
【0099】
図11は、内燃機関100の第2の実例の一部の第2の概略斜視図である。排気ガス冷却装置1の第2の実例は、ターボ過給機ユニットに近くの機関1の長辺に配置され、吸収器ユニット4の長さlは、クランク軸の方向17(図10参照)に沿う向きに配置される。排気ガス冷却装置1は、プラットフォーム111に、又は機関ハウジングの支持体(図には明示されていない)によって取り付けられてもよい。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
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図10
図11
【外国語明細書】