(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167982
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】受水槽の耐震構造
(51)【国際特許分類】
E03B 11/12 20060101AFI20241128BHJP
E03B 11/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E03B11/12
E03B11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084341
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】500179459
【氏名又は名称】エース消毒株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】高坂 敏行
(57)【要約】
【課題】安価な受水槽の耐震構造。
【解決手段】バルーンを、風船体の上下に連結紐を固定し、さらに、空気注入口を前記風船体のいずれかの位置に備えた構成としておく。前記バルーンの連結紐を相互に連結して、複数のバルーンを繋ぎ合わせた連結体とし、前記連結体を前記受水槽の水面上に内周に沿って配置して緩衝構造となしておく。別の構成として、バルーンを、風船体の上下いずれか一方に連結紐を固定し、さらに、空気注入口を前記風船体のいずれかの位置に備えた構成とする。前記バルーンの連結紐を前記FRPの繋構造を利用して受水槽の天板と側板の形成するコーナ部に複数吊り下げて緩衝構造となす。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FRPパネルを繋ぎ合わせて構成された受水槽が地震によって破壊されることを防止する受水槽の耐震構造であって、
風船体の上下に連結紐を固定し、さらに、空気注入口を前記風船体のいずれかの位置に備えたバルーンと、
前記バルーンの連結紐を相互に連結して、複数のバルーンを繋ぎ合わせた連結体と、
前記連結体が前記受水槽の水面上に内周に沿って配置された緩衝構造と
を備えたことを特徴とする受水槽の耐震構造。
【請求項2】
FRPパネルを繋ぎ合わせて構成された受水槽が地震によって破壊されることを防止する受水槽の耐震構造であって、
風船体の上下いずれか一方に連結紐を固定し、さらに、空気注入口を前記風船体のいずれかの位置に備えたバルーンと、
前記バルーンの連結紐を前記FRPの繋構造を利用して受水槽の天板と側板の形成するコーナ部に複数吊り下げた緩衝構造と、
を備えたことを特徴とする受水槽の耐震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受水槽に関し、特に、受水槽の耐震構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビル・マンション・学校・病院等では、水道局からの水道管を直接各利用者の配管に接続したのでは、利用者の多い時間帯では水圧が弱くなったり、極端な場合は水が出なくなったりすることから、水道管を通って送られてきた水を一旦受水槽に貯めておき、その後に各利用者に供給することが行われている。
【0003】
これによって、使用量の変動に耐えることができ、各利用者に安定した水の供給ができることになる。
【0004】
図3は受水槽の内部を示す図である。FRPのパネル21は4辺にフランジ22が設けられており、当該フランジ22を利用して相互のパネルを、ボルト23で繋ぎ合わせる構造になっている。受水槽の容積が大きい場合は内部に複数本の支柱24を立てて補強する構成となっている。
【0005】
このようにFRPのパネル21で構成されていても、水が溜ってる状態で強い外力が加わると、内部の水が大きく波打つので、当該波は受水槽20が壊われることがある。ここで強い外力としては地震が考えられ、現実に東日本大震災で震度6弱以上の揺れがあった地域では多数の受水槽の天井部分が吹き飛ぶ事故が発生している。
【0006】
実開昭51-89309号公報には、地震時に飲料水が欠乏することを想定して大型の貯水槽を設けることを提唱している。地震発生時には前記貯水槽で水の揺れが生じ、当該貯水槽を破壊する恐れがあるところから、格子状の振動防止板を貯水槽内部の所定の高さ位置に水平に配置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1をFRPで構成された受水槽に適用しようとすると、FRPの天井を張る前に、受水槽の外部で組み立てた振動防止板を所定の位置に水平に張り渡す必要があり、既設の受水槽には適用できないことになる。
【0009】
既設の受水槽に当該振動防止板を設置しようとする場合には、槽内を空にして槽内部に人が入って組み立て作業をすることになるが、鉄板を使用する場合は溶接等を槽内ですることになり危険性を伴い、またプラスチックの材料を使用する場合であっても接着剤等の揮発性の薬剤を使用することから、人体に悪影響を及ぼすことになる。
【0010】
本発明は上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって既設の受水槽にも簡単に取付けることができ、人体に悪影響を及ぼさない受水槽の耐震構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、FRPパネルを繋ぎ合わせて構成された受水槽が地震によって破壊されることを防止する受水槽の耐震構造に関する。
【0012】
バルーンを、風船体の上下に連結紐を固定し、さらに、空気注入口を前記風船体のいずれかの位置に備えた構成としておく。前記バルーンの連結紐を相互に連結して、複数のバルーンを繋ぎ合わせた連結体とし、前記連結体を前記受水槽の水面上に内周に沿って配置して緩衝構造となしておく。
【0013】
また、別の構成として、バルーンを、風船体の上下いずれか一方に連結紐を固定し、さらに、空気注入口を前記風船体のいずれかの位置に備えた構成とする。
【0014】
前記バルーンの連結紐を前記FRPの繋構造を利用して受水槽の天板と側板の形成するコーナ部に複数吊り下げて緩衝構造となす。
【発明の効果】
【0015】
地震等で受水槽の水面に大きな波が発生したとき、水圧がバルーンを押しつぶし、発生した波のエネルギーを吸収することになるので、受水槽自体の破壊は免れることになる。また、既設の受水槽にもコストを掛けずに適用できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
【0018】
バルーン1の風船体10はゴム等の伸縮性を持つ素材で形成され、ボール等に使用されている空気注入口11を持っている。当該バルーン1の風船体10は空気を入れない限りは縮んだ状態を保っており、使用時には、前記空気注入口11からコンプレッサー等で空気を注入して膨張させておく。膨張した状態のバルーン1の風船体10は径10~30cmの球形あるいは、径10~30cm、高さ10~30cmの円柱形となる。
【0019】
このバルーン1の風船体10は強い外圧に対応して形状を変更できる程度の伸縮性を持つ素材、あるいは強い外圧で破裂する程度の素材、例えばゴムで形成されている。ここで外圧とは、地震に伴って受水槽20内の水が振動し、波打って受水槽20の壁や天井に当たる水の圧力を意味する。
【0020】
更に、前記バルーン1の風船体10の上部と下部に、連結紐12が固定されており、後述するように相互のバルーンを連結するのに利用される。
【0021】
図2は前記バルーン1を受水槽20の内部に配置した状態を示すものである。
【0022】
バルーンは、前記連結紐12で相互に複数結びあわされて連結体が構成され、当該連結体は、以下に説明するように地震時に発生する波の緩衝材として、受水槽の内部周壁に沿って配置される。稼働時には受水槽20には当然水が満たされているのであるから、前記バルーン1は水面wに浮いた状態となる。
【0023】
前記連結体のバルーン1の個数は問われないが、少なくとも、受水槽20の内部周壁を1周する程度は必要であり、渦巻き状に2周、3周してもかまわない。
【0024】
以上のように受水槽20内にバルーン1を配置した状態で、地震が発生し、内部に貯めた水が振動すると、波が発生することになる。この波が受水槽20の側板や天板に強い外力を加え、前記連結体を構成するバルーン1が縮み、あるいは破裂し、これによって、受水槽20の天井に係る圧力が緩和されることになる。
【0025】
従って、前記のように配置されたバルーン1の連結体は発生する波の緩衝材となる。
【0026】
尚、上記ではバルーン1の相互を連結した緩衝材を用いることで説明したが、前記連結紐12をバルーンの上下のいずれか一方にのみ固定しておき、受水槽20の側板と天板を連結するボルトを利用して、前記側板と天板で構成されるコーナに沿って複数吊り下げる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 バルーン
11 空気注入口
10 風船体
12 連結紐
20 受水槽
21 パネル
22 フランジ
23 ボルト
24 支柱
w 水面