(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167986
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】気密カバー
(51)【国際特許分類】
H02G 3/08 20060101AFI20241128BHJP
H02G 3/12 20060101ALI20241128BHJP
H02G 3/02 20060101ALI20241128BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H02G3/08 080
H02G3/12
H02G3/02
H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084349
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】592217738
【氏名又は名称】ネグロス電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】今野 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠太
【テーマコード(参考)】
5E087
5G357
5G361
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087HH01
5E087LL04
5E087LL05
5E087LL12
5E087MM05
5E087MM09
5E087MM12
5E087QQ03
5E087RR13
5G357CA02
5G357CB02
5G357CC01
5G357CC05
5G357CD07
5G357CE03
5G361AA02
5G361AB09
5G361AC03
5G361AC09
(57)【要約】
【課題】異なる電線サイズに対応しながら高い気密性を保持することができる気密カバーを提供する。
【解決手段】開口部を備えた有底箱状のカバー本体20を設ける。カバー本体20の開口部の開口縁にフランジ部10を設ける。カバー本体20の底部から外側に突出するケーブル挿入部30を設ける。ケーブル挿入部30に筒状の外壁31を形成する。外壁31の突出方向の先端側から内側に向けて突出する内壁32を形成する。外壁31と内壁32との間に間隙部40を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁部、床、天井等に装着される配線ボックスに組み込む気密カバーにおいて、
前記配線ボックスの内部に収納され、開口部を備えた有底箱状のカバー本体と、カバー本体の開口部の開口縁から周囲に設けられたフランジ部と、カバー本体から突出するケーブル挿入部と、が一体に成形され、
ケーブル挿入部は、筒状の外壁と、外壁の突出方向の先端側から内側に向けて突出する内壁との二重構造を成し、外壁と内壁との間に間隙部を設けたことを特徴とする気密カバー。
【請求項2】
建築物の壁、床、天井等に設置されるコンセントやスイッチの気密性を上げるための気密カバーにおいて、
開口部を備えた有底箱状のカバー本体と、カバー本体の開口部の開口縁から周囲に設けられたフランジ部と、カバー本体から突出するケーブル挿入部と、が一体に成形され、
ケーブル挿入部は、筒状の外壁と、外壁の先端側から内側に向けて突出する内壁との二重構造を成し、外壁と内壁との間に間隙部を設けたことを特徴とする気密カバー。
【請求項3】
前記内壁の突出方向の先端側にケーブル差込用の底部を形成した請求項1または2記載の気密カバー。
【請求項4】
前記ケーブル挿入部の前記外壁の外側に補強リブを設けた請求項1または2記載の気密カバー。
【請求項5】
前記フランジ部は、鋼板枠に軟質合成樹脂の被覆材をインサート成形した構成で、前記フランジ部に形成するビス挿入口を被覆材で閉塞した請求項1または2記載の気密カバー。
【請求項6】
前記ケーブル挿入部の前記内壁の内側にすり鉢状のケーブル導入面を形成した請求項1または2記載の気密カバー。
【請求項7】
前記フランジ部に重合する絶縁枠フランジ部と、前記開口部の内側に挿入される突起部とを備える絶縁枠体を、前記フランジ部と絶縁枠フランジ部が重合するように前記カバー本体の開口部側に配置したときに絶縁枠体の突起部に嵌合する嵌合凹部を前記カバー本体に形成した請求項1または2記載の気密カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームのスイッチ・コンセント等に組み込んで浮遊塵埃の流入を防ぐ気密カバーに係り、電線サイズの兼用化を実現しつつ気密性を保つことができる気密カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームの配線器具に使用する気密カバーとして、例えば特許文献1乃至3に記載の構成が提案されている。
【0003】
特許文献1の気密カバーは、配線貫通部にカバーの内側に向けて螺旋状に縮径する螺旋状部27を設けたものである。この螺旋状部27は、螺旋状段差面29aおよび螺旋状傾斜面29bを含む螺旋状段差部29を有し、螺旋状段差部29の螺旋状段差面29aおよび螺旋状傾斜面29bを、それぞれ先端側に向けて徐々に連続して薄肉に形成している。そして螺旋状部27の先端側に突破り部28を形成したものである。
【0004】
特許文献2に記載の気密カバーは、配線ボックス11内に配置する本体部22から膨出するように形成された気密カバー21を備え、この気密カバー21には本体部22の内部に向かって膨出する引込み部26が形成されている。そしてケーブル31を本体部22内に引込み後、引込み部26が本体部22の外部に向かって膨出するように引込み部26の膨出方向を切換える切換工程を行い、続いてこの引込み部26の内側に気密充填材41を支持させ、引込み部26とケーブル31との間を気密充填材41で充填し、気密性を確保する構成を備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6455952号公報
【特許文献2】特許第5336308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところがこれら従来の気密カバーは、いずれも異なる電線サイズに対応しながら高い気密性を保持するには次の課題があった。
【0007】
すなわち、特許文献1に記載の気密カバーは、配線を貫通させる螺旋状部27に設けた螺旋状段差部29の螺旋状段差面29aおよび螺旋状傾斜面29bを、それぞれ先端側に向けて徐々に薄肉に形成し、最も薄くなった先端部の突破り部28から配線を貫通する構成である。
【0008】
このため、螺旋状部27の配線を貫通する突破り部28周辺の肉厚は極めて薄く形成されていることから、螺旋状部27に配線16を挿入する際に、突破り部28周辺の肉薄の螺旋状段差面29aや螺旋状傾斜面29bの一部を突き破るおそれがある。この場合、螺旋状段差面29aや螺旋状傾斜面29bの破断された段差面や傾斜面が配線16の側面に密着し難い形状になるので気密性を保つことが困難になる。
【0009】
特許文献2に記載の気密カバーは、引込み部26の内側に気密充填材41を支持させ、引込み部26とケーブル31との間に充填した気密充填材41で気密性を確保する構成である。したがって、ケーブル31のサイズに合わせて引込み部26と気密充填材41を選択する必要があるので異なる電線サイズに対応することは困難である。しかも、ケーブル31を本体部22内に引込み後、引込み部26の膨出方向を切換える切換工程が必要なので作業においても手間を要する構成になっている。
【0010】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく創出されたもので、異なる電線サイズに対応しながら高い気密性を保持することができる気密カバーの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、建築物の壁部、床、天井等に装着される配線ボックスPに組み込む気密カバーにおいて、
前記配線ボックスPの内部に収納され、開口部を備えた有底箱状のカバー本体20と、カバー本体20の開口部の開口縁から周囲に設けられたフランジ部10と、カバー本体20から外側に突出するケーブル挿入部30と、が一体に成形され、
ケーブル挿入部30は、筒状の外壁31と、外壁31の突出方向の先端側から内側に向けて突出する内壁32との二重構造を成し、外壁31と内壁32との間に間隙部40を設けたことにある。
【0012】
第2の手段は、建築物の壁、床、天井等に設置されるコンセントやスイッチの気密性を上げるための気密カバーにおいて、
開口部を備えた有底箱状のカバー本体20と、カバー本体20の開口部の開口縁から周囲に設けられたフランジ部10と、カバー本体20から突出するケーブル挿入部30と、が一体に成形され、
ケーブル挿入部30は、筒状の外壁31と、外壁31の突出方向の先端側から内側に向けて突出する内壁32との二重構造を成し、外壁31と内壁32との間に間隙部40を設けたことにある。
【0013】
第3の手段は、前記内壁32の突出方向の先端側にケーブル差込用の底部33を形成したものである。
【0014】
第4の手段は、前記ケーブル挿入部30の前記外壁31の外側に補強リブ34を設けている。
【0015】
第5の手段の前記フランジ部10は、鋼板枠12に軟質合成樹脂の被覆材11をインサート成形した構成で、フランジ部10に形成するビス挿入口12Aを被覆材11で閉塞したものである。
【0016】
第6の手段は、前記ケーブル挿入部30の前記内壁32の内側にすり鉢状のケーブル導入面32Aを形成している。
【0017】
第7の手段は、前記フランジ部10に重合する絶縁枠フランジ部Q2と、前記開口部の内側に挿入される突起部Q1とを備える絶縁枠体Qを、前記フランジ部10と絶縁枠フランジ部Q2が重合するように前記カバー本体20の開口部側に配置したときに絶縁枠体Qの突起部Q1に嵌合する嵌合凹部21を前記カバー本体20に形成したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、ケーブル挿入部30は、筒状の外壁31と、外壁31の先端側から内側に向けて突出する内壁32との二重構造を成し、外壁31と内壁32との間に間隙部40を設けたことにより、異なる電線サイズに対応しながら高い気密性を保持することが可能になったものである。また、ケーブルが大きく傾いた場合でも内壁32が可動し動きを追従することでケーブルとの隙間が生じるのを防ぐことが可能となった。
【0019】
また、ケーブル挿入部30がカバー本体20の外側に突出していると、ケーブル挿通時にケーブル挿入部30を指でつまんで差し込むことができる。しかも、カバー本体20内部にケーブル挿入部30を収納していないので、その分カバー本体20内の空間を確保してケーブルを収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】本発明のケーブル挿入部を示す断面図である。
【
図5】本発明に装着する絶縁枠体の突起部を示す要部拡大側面図である。
【
図6】本発明のフランジ部内の鋼板枠を示す切欠き斜視図である。
【
図7】本発明の他のケーブル挿入部を示す斜視図である。
【
図8】本発明の他のケーブル挿入部を示す斜視図である。
【
図10】本発明の他の使用状態を示す分解斜視図である。
【
図11】本発明カバーにケーブルを挿通した状態を示す断面図である。
【
図12】本発明カバーにケーブルを挿通した要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明カバーは、例えばクリーンルームのスイッチ・コンセント等に組み込んで使用する気密カバーで、例えば建築物の壁部、床、天井等に装着される配線ボックスPに組み込んで使用する。
【0022】
本発明カバーの主要構成は、フランジ部10とカバー本体20とケーブル挿入部30とが軟質PVC等の軟質合成樹脂で一体に形成されたものである(
図1参照)。
【0023】
フランジ部10は、カバー本体20の開口部の周囲に設けられた部位で、ケーブル挿入部30は、カバー本体20の底部から外側に突出する部位である(
図1参照)。
【0024】
図示のフランジ部10は、鋼板枠12を軟質合成樹脂の被覆材11にインサート成形した構成である(
図6参照)。そして、フランジ部10に形成されるビス挿入口12Aをこの被覆材11で閉塞する。すなわち、鋼板枠12の前面と(
図1参照)、鋼板枠12の背面とを被覆材11で被覆している(
図2参照)。この結果、配線器具R用のボディビスR1をビス挿入口12Aに挿入した場合(
図9参照)、ボディビスR1に被覆材11が食い込んでビス挿入口12Aの気密性を高めることができる。
【0025】
カバー本体20は、開口部を備えた有底箱状の部位で、配線ボックスPの内側に挿入する。図示のカバー本体20は、開口部の上下に嵌合凹部21を形成している(
図1参照)。この嵌合凹部21は、カバー本体20の開口部側に絶縁枠体Qを配置する際に使用する(
図10参照)。この絶縁枠体Qは、フランジ部10に重合する絶縁枠フランジ部Q2と、開口部の内側に挿入される突起部Q1とを備えた枠体である(
図5参照)。そして、絶縁枠体Qの突起部Q1を嵌合凹部21に嵌合した状態で絶縁枠体Qを固定することができる。
【0026】
ケーブル挿入部30は、カバー本体20の外側に突出した状態を成している(
図2参照)。ケーブルSは、ケーブル挿入部30の突出方向からカバー本体20の内部に挿通する(
図11参照)。図示のケーブル挿入部30は、筒状の外壁31と、外壁31の突出方向の先端側から内側に向けて突出する内壁32との二重構造を成している(
図3参照)。そして、外壁31と内壁32との間に間隙部40を設けた構造である。つまり、外壁31はカバー本体20の底部からカバー本体20の外側に向け筒状に突出し、内壁32はその突出した外壁31の先端から連続して、外壁31が形成する筒の内側方向かつカバー本体20の底部方向に折り返して突出した構造をなしており、外壁31と内壁32とで間隙部40を隔てた二重構造を形成している。図示例では6個のケーブル挿入部30を形成している(
図4参照)。このケーブル挿入部30の数や位置は任意に設定することができる。
【0027】
ケーブル挿入部30の間隙部40は、底部33を貫通するケーブルの径が太くなった場合でも、内壁32が外壁31側に変形するので異なった径に適応する(
図11参照)。このとき内壁32が変形しやすいように内壁32の厚みを外壁31より薄く形成することが好ましい(
図3参照)。この内壁32は、底部33を貫通するケーブルの角度が大きく傾いても内壁32がケーブル側面に密着して気密性を保持する。
【0028】
図示例では内壁32の内側に、すり鉢状のケーブル導入面32Aを形成している(
図3参照)。このケーブル導入面32Aはシール材35を塗布する面であり、すり鉢状に形成することで密封性を高めるシール材35の塗布を容易にしている(
図12参照)。また、ケーブルSを通す際にも、ケーブルSの先端を底部33に誘導する形状になっているので、ケーブルSを通し易く、施工性も向上する。尚、ケーブル導入面32Aの形状は図示例に限らず任意に変更することができる。
【0029】
内壁32の突出方向の先端側にケーブル差込用の底部33を形成している(
図3参照)。この底部33にケーブルを貫通させるため、底部33の厚みを内壁32の厚みより薄く形成している。更に、この底部33の周囲に筒状のケーブル挿通部32Bを形成している。このケーブル挿通部32Bは、ケーブルの径より狭くすることでケーブルとの密着性を高めることができる。また、ケーブル挿通部32BがないとケーブルSが底部33を貫通した際の亀裂が外壁31の先端まで進行しやすいが、筒状のケーブル挿通部32Bがあることによって、ケーブル挿入部30とケーブルSが面で接することになるので、少しの亀裂程度で気密性が下がることはない。特にケーブル挿通部32Bは亀裂に強く、ケーブルSとの密着性が上がるため、内壁32の厚みより厚い方が望ましい。尚、ケーブル挿通部32Bの形状は図示例に限らず任意に変更することができる。
【0030】
また、ケーブル挿入部30は、
図7に示すごとく、ケーブル挿入部30の外壁31の外側に補強リブ34を設けることで、底部33にケーブルを差し込んだときに、ケーブル挿入部30がカバー本体20側に埋没するのを防ぐことができる。また、この補強リブ34の他に、カバー本体20の形状を任意に変更することも可能である(
図8参照)。
【0031】
上述した実施形態においては、カバー本体20を配線ボックスPの内側に挿入する態様を示したが、配線ボックスPを使用せずスイッチ等を取り付ける開口部に本発明カバーを直接装着する態様でもよい。
また、上述した実施形態においては、ケーブル挿入部30に底部33が形成された態様を示したが、底部33がない態様でもよい。
また、上述した実施形態においては、ケーブル挿入部30がカバー本体20の底部から外側に突出する態様を示したが、カバー本体20の側面から外側に突出する態様でもよい。この場合、外壁31はカバー本体20の側面からカバー本体20の外側に向け筒状に突出し、内壁32はその突出した外壁31の先端から連続して、外壁31が形成する筒の内側方向かつカバー本体20の側面方向に折り返して突出した構造をなしており、外壁31と内壁32とで間隙部40を隔てた二重構造を形成している。
また、上述した実施形態においては、ケーブル挿入部30がカバー本体20の外側に突出する態様を示したが、カバー本体20の内側に突出する態様でもよい。この場合、外壁31はカバー本体20からカバー本体20の内側に向け筒状に突出し、内壁32はその突出した外壁31の先端から連続して、外壁31が形成する筒の内側方向かつカバー本体20の方向に折り返して突出した構造をなしており、外壁31と内壁32とで間隙部40を隔てた二重構造を形成している。
なお、カバー本体20は、開口部を備えた有底箱状の部材で、カバー本体20の内側とは箱の内部側を意味し、カバー本体20の外側とは箱の外部側を意味する。
【0032】
本発明は、次のケーブル挿入構造体も含む。
2つの空間を隔てる隔壁において、気密性を保ちつつケーブルを貫通させるための軟質合成樹脂で形成されたケーブル挿入構造体であって、
前記隔壁から一方の空間に向け筒状に突出した外壁と、
前記外壁の突出した先端から連続して、前記外壁が形成する筒の内側方向かつ前記隔壁方向に折り返して突出した内壁と、を備え、
前記外壁と前記内壁との間に間隙空間を設けたことを特徴とするケーブル挿入構造体。
【0033】
尚、本発明カバーは、図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で自由に設計変更することができる。
【符号の説明】
【0034】
P 配線ボックス
Q 絶縁枠体
Q1 突起部
Q2 絶縁枠フランジ部
R 配線器具
R1 ボディビス
S ケーブル
10 フランジ部
11 被覆材
12 鋼板枠
12A ビス挿入口
20 カバー本体
21 嵌合凹部
30 ケーブル挿入部
31 外壁
32 内壁
32A ケーブル導入面
32B ケーブル挿通部
33 底部
34 補強リブ
35 シール材
40 間隙部