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特開2024-167994作業支援システム、作業支援方法、および、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167994
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】作業支援システム、作業支援方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20241128BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084364
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峯邑 隆司
(72)【発明者】
【氏名】大石 淳也
(72)【発明者】
【氏名】会津 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】小杉 真哉
(72)【発明者】
【氏名】荒木 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】黄 静君
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】複数の作業工程の作業を行う作業者に対して高い利便性の作業支援を実行する。
【解決手段】実施形態の作業支援システムは、複数の作業工程の作業を行う作業者を撮影する撮影カメラから撮影画像を取得する取得部と、過去の直近の前記作業工程について、前記撮影画像の特徴量と、作業を行う見本作業者を予め撮影することで得られた見本撮影画像の特徴量と、に所定以上の相関があるか否かを判定する判定部と、作業中の前記作業者によって視認可能な表示部に前記見本撮影画像を表示させ、前記判定部によって前記所定以上の相関があると判定された場合、次の前記作業工程の前記見本撮影画像を前記表示部に表示させ、前記判定部によって前記所定以上の相関がないと判定された場合、コマ送り操作が行われたときに、次の前記作業工程の前記見本撮影画像を前記表示部に表示させる制御部と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業工程の作業を行う作業者を撮影する撮影カメラから撮影画像を取得する取得部と、
過去の直近の前記作業工程について、前記撮影画像の特徴量と、作業を行う見本作業者を予め撮影することで得られた見本撮影画像の特徴量と、に所定以上の相関があるか否かを判定する判定部と、
作業中の前記作業者によって視認可能な表示部に前記見本撮影画像を表示させ、
前記判定部によって前記所定以上の相関があると判定された場合、次の前記作業工程の前記見本撮影画像を前記表示部に表示させ、
前記判定部によって前記所定以上の相関がないと判定された場合、コマ送り操作が行われたときに、次の前記作業工程の前記見本撮影画像を前記表示部に表示させる制御部と、を備える作業支援システム。
【請求項2】
前記判定部は、過去の直近の前記作業工程について、少なくとも1枚以上の前記撮影画像の特徴量と、少なくとも1枚以上の前記見本撮影画像の特徴量と、に所定以上の相関があるか否かを判定する、請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項3】
前記判定部は、過去の直近の前記作業工程について、少なくとも2枚以上の前記撮影画像の特徴量と、少なくとも2枚以上の前記見本撮影画像の特徴量と、を用いて、撮影順を含めて所定以上の相関があるか否かを判定する、請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項4】
前記判定部は、過去の直近の前記作業工程について、前記撮影画像の特徴量と、前記見本撮影画像の特徴量と、に所定以上の相関があるか否かを判定する場合に、両画像の所定部分を用いて判定する、請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記判定部によって前記所定以上の相関がないと判定された場合、相関の低い理由を前記表示部に表示させる、請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記判定部によって前記所定以上の相関があると判定された場合、チェックシートデータの該当の作業項目に電子的なマーキングを行う、請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項7】
取得部が、複数の作業工程の作業を行う作業者を撮影する撮影カメラから撮影画像を取得する取得ステップと、
判定部が、過去の直近の前記作業工程について、前記撮影画像の特徴量と、作業を行う見本作業者を予め撮影することで得られた見本撮影画像の特徴量と、に所定以上の相関があるか否かを判定する判定ステップと、
制御部が、作業中の前記作業者によって視認可能な表示部に前記見本撮影画像を表示させ、
前記判定ステップによって前記所定以上の相関があると判定された場合、次の前記作業工程の前記見本撮影画像を前記表示部に表示させ、
前記判定ステップによって前記所定以上の相関がないと判定された場合、コマ送り操作が行われたときに、次の前記作業工程の前記見本撮影画像を前記表示部に表示させる制御ステップと、を含む作業支援方法。
【請求項8】
コンピュータを、
複数の作業工程の作業を行う作業者を撮影する撮影カメラから撮影画像を取得する取得部と、
過去の直近の前記作業工程について、前記撮影画像の特徴量と、作業を行う見本作業者を予め撮影することで得られた見本撮影画像の特徴量と、に所定以上の相関があるか否かを判定する判定部と、
作業中の前記作業者によって視認可能な表示部に前記見本撮影画像を表示させ、
前記判定部によって前記所定以上の相関があると判定された場合、次の前記作業工程の前記見本撮影画像を前記表示部に表示させ、
前記判定部によって前記所定以上の相関がないと判定された場合、コマ送り操作が行われたときに、次の前記作業工程の前記見本撮影画像を前記表示部に表示させる制御部と、して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、作業支援システム、作業支援方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場などにおいて、作業者が複数の作業工程からなる一連の作業やタスク(以下、複数の作業工程の作業)を行う場合がある。その場合、新人作業者による作業を支援するために、例えば、熟練作業者(ベテラン作業者)による作業を撮影した動画を表示させ、新人作業者がその動画を見ながら作業するという手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-17283号公報
【特許文献2】国際公開第2017/150293号公報
【特許文献3】特開2018-92478号公報
【特許文献4】特開2012-216221号公報
【特許文献5】特開2001-331513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の従来技術では、動画を普通に表示させると、一連の作業工程が連続的に表示される。しがたって、例えば、作業中の新人作業者が次の作業工程の内容を知りたいと思ったときには、動画でのその作業工程の表示はすでに終わってしまっている場合がある。
【0005】
その対策として、新人作業者が、動画を現在の作業工程の部分で停止させた後、次の作業工程を把握したいタイミングになったらコマ送りの操作をする、という手法もある。しかしながら、その手法では、新人作業者は、作業中に、コマ送りの操作を作業工程が終わるたびに行う必要があり、利便性の点で問題があった。
【0006】
そこで、本発明の実施形態は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の作業工程の作業を行う作業者に対して高い利便性の作業支援を実行することができる作業支援システム、作業支援方法、および、プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の作業支援システムは、複数の作業工程の作業を行う作業者を撮影する撮影カメラから撮影画像を取得する取得部と、過去の直近の前記作業工程について、前記撮影画像の特徴量と、作業を行う見本作業者を予め撮影することで得られた見本撮影画像の特徴量と、に所定以上の相関があるか否かを判定する判定部と、作業中の前記作業者によって視認可能な表示部に前記見本撮影画像を表示させ、前記判定部によって前記所定以上の相関があると判定された場合、次の前記作業工程の前記見本撮影画像を前記表示部に表示させ、前記判定部によって前記所定以上の相関がないと判定された場合、コマ送り操作が行われたときに、次の前記作業工程の前記見本撮影画像を前記表示部に表示させる制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の作業支援システムの全体構成の概要を示す図である。
図2図2は、実施形態の作業場の様子を示す図である。
図3図3は、実施形態のスマートフォンにおける表示画面例を示す図である。
図4図4は、実施形態における表示画面のコマ送りタイミングの決定に関する説明図である。
図5図5は、比較例(コマ送りのタイミング制御をしない場合)における表示画像の遷移例を示す図である。
図6図6は、実施形態(コマ送りのタイミング制御をする場合)における表示画像の第1の遷移例を示す図である。
図7図7は、実施形態における表示画像の第2の遷移例を示す図である。
図8図8は、実施形態における作業モデル動画の撮影および編集に関する処理を示すフローチャートである。
図9図9は、実施形態における作業者の作業モニタリングおよび自動コマ送りエラー発生時に関する処理を示すフローチャートである。
図10図10は、実施形態において、作業モデル動画と作業者の両方を表示する場合の表示画面例を示す図である。
図11図11は、実施形態において、作業モデル動画と天井カメラによる熟練作業者の撮影画像の両方を表示する場合の表示画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を用いて、本発明の作業支援システム、作業支援方法、および、プログラムの実施形態について説明する。
【0010】
実施形態の理解を容易にするために、あらためて従来技術について詳述する。カントリーリスクを回避することや円安の進行などにより、日本国内での生産回帰、工場回帰の潮流がある。一方、工場の現場では、多能工化が長年にわたる課題だが、作業者が新たに学ぶことに関し、作業長からの口頭でのT.T.(Technology Transfer:技術移転)と紙マニュアルに長年依存してきた。
【0011】
例えば、新人作業者に作業内容を覚えてもらうために、作業長が各作業工程を新人に逐一T.T.するのがこれまでの工場現場における教え方であった。新人作業者は、紙マニュアルにしたがい一通り教わる。その後、自分でやってみるが、最初は作業ミスが多発し、そのたびに作業長が教え直すことをしていた。
【0012】
作業工程数が多い作業では、一旦学習後であっても、作業ミスが発生しやすい。新人作業者には、一見似ていても、作業内容が少しずつ異なる場合、紙マニュアルによる自習も難しかった。活字離れが言われて久しい中、紙マニュアルがわかりにくいことや、とっつきにくいことなどが原因と考えられる。
【0013】
新人作業者は、作業工程が1つ進むたびに紙マニュアルをいちいち確認すればよいが、時間がかかり面倒であって、実行し続けることは難しい。むしろ、時間に追われ、紙マニュアルを確認せず、思い込みで適当に作業を進めてしまう傾向にある。結果的に、作業もれ、確認もれによる作業ミスから、製品品質の維持、向上に課題が発生してしまう。
【0014】
さらに、紙のチェックシートへの記入という作業がある。作業者が、作業工程終了後に、工具を筆記具にいちいち持ち替えて記入する必要があり、手間と時間を必要としていた。この場合も、作業者は、工程終了ごとにいちいち紙にチェックをつけるべきところを、まとめて後でチェックを記入するなど、手間を惜しむことが発生しかねなかった。
【0015】
また、従来からある技術として、AR(拡張現実=Augmented Reality)がある。ARを適用した民生品としてヒットした例として、スマホ用ゲームの「ポケモン(登録商標)GO」がある。スマホ画面内で目の前の風景に重なってゲームに出てくるキャラクターが表示されることで、あたかも「ポケモンが現実世界に現れたかのような実在感」が出てくる。また、GPS(Global Positioning System)による位置情報を利用することで、画面上のCG(Computer Graphics)だけで完結するゲームと比べてけた違いの広がりや没入感を生み出し、世界中でヒットした。
【0016】
このようなARを利用したARメガネなど、特殊眼鏡を通して見える現実の風景に重畳して、説明や指示を出すことで、観光冊子や紙のマニュアルなどをいちいち見なくても状況を理解し、次の行動の選択実行をすることができる。例えば、参考文献として、特開2021-51620号公報などがある。
【0017】
Virtualな世界であるVR(Virtual Reality:仮想現実)や、Microsoft(登録商標)のHoloLensなどのPC(Personal Computer)とディスプレイを一体化することでユーザの視界を解析して行うMR(Mixed Reality)といったものを含め、xRealityと総称される。いずれもユーザの視認する世界とデジタル映像とを融合する技術であり、技術の台頭と進歩の著しい分野である。これらの新技術の導入には、リアルタイム応答のための高価なHW(ハードウエア),SW(ソフトウエア)のリソースを必要とする。また、専用のゴーグルを通して現実世界を見ることなどにより、作業者によっては酔いやすい。また、視野角が足りない場合がある。これらハードルにより、導入しにくい現場も多い。
【0018】
また、紙マニュアルに代えて、熟練作業者(見本作業者の例)の作業動画を撮影し、それを新人作業者が見て学習する方法もある。このような作業モデル動画を普通に流すと一連の作業工程が一度に流れてしまう。このため、作業中の新人作業者は、一番知りたい次の作業工程を把握しにくい。結局、動画であってもほぼコマ送りをして次の作業工程の指示を確認することになってしまう。作業中に、コマ送りの操作を、作業工程数だけ行う必要があり煩わしく、余分な時間もかかってしまう。
【0019】
例えば、K1サイズの基板の受け入れ検査と調整を100作業工程、2時間弱で行うとする。1日8時間で、4枚の基板の調整をする。1工程に1つの作業指示の画面を出すとすれば、1つの作業工程ごとに1回のコマ送りを必要とするので、1日の間に、4×100回=400回も動画のコマ送り操作をしなければならないことになる。
【0020】
紙マニュアルから脱却し、紙マニュアル類により付随的に発生していた作業者の作業性、正確性の低下を改善することが必要である。それには、単に動画を撮影して作業者に見せればよいというものではなく、作業モデル動画を適切なタイミングで見れるようにする仕組みを導入する必要がある。以下の実施形態では、天井設置の画像センサ(天井カメラ)と、作業者に近接設置のカメラとの2つの撮影デバイスによる撮影環境を考える。
【0021】
導入に際しては、いくつかの工夫がある。1つ目は、画像センサの設置位置である。作業現場においては、作業上、安全上の観点から、最も設置しやすい場所は天井部である。天井設置の画像センサで作業モデル動画を作成できる場合もあるが、操作パネルに関する操作など、天井からは視野の影になり、作業モデル動画を作成できない場合も多い。
【0022】
操作パネルに関する操作を撮影するには、作業台に近接設置したカメラによる撮影をする必要がある。多くは作業者の背後、または、斜め後方に設置したカメラにより、操作状況を撮影する必要がある。作業空間に障害物を常設できない観点から、作業モデル動画の撮影に用いたカメラは、その撮影時に一時的に設置できるが、その後の新人作業者による作業時には、撤去しなければならない。その場合、新人作業者の撮影をしようと思うと、天井設置の画像センサにより実施することになる。
【0023】
2つ目は、熟練作業者による作業を作業モデル動画として撮影した後、その作業モデル動画を適切に表示する方法である。撮影した時刻や作業者が異なり、くわえて撮影時の画像サイズや撮影方向、fps(frames per second)の異なる2種類の撮影画像がある。撮影されたそれぞれの作業者は、同一作業手順に従い同じような動きをしているが、完全に一致はしていない。この2種類の撮影画像の同期した画面表示をしたい。
【0024】
例えば、熟練作業者の動画を、三脚に設置されたカメラやスマホによって24fps~60fpsで撮影し、学習用の作業モデル動画とする。しかしながら、作業者の背後あるいは作業机に設置したカメラは、作業性、安全性の観点から常に設置しておくことはできないことが大半である。その後に新人作業者が作業する際には、一時的に設置していただけの、三脚に設置されたカメラやスマホはとり外す。
【0025】
一方、見守り用の天井カメラで新人作業者の作業状況を撮影することが可能である。新人作業者の作業速度はその技量に依存し、また天井カメラのfpsがスマホのfpsと異なる場合もある。新人作業者の動きを天井カメラで撮影し、リアルタイムでその動きを見守る一方、事前に撮影している熟練作業者による動画を、作業モデル動画として、適切なタイミングで表示していきたという要望がある。紙マニュアルから作業モデル動画への切り替えにより、多くの利点を見出すことができる。
【0026】
このような事情の下で、以下に、複数の作業工程の作業を行う作業者に対して高い利便性の作業支援を実行することができる技術について説明する。
【0027】
(概要)
まず、実施形態の概要について説明する。熟練作業者による作業を学習用の作業モデル動画として三脚に設置された後方カメラ(スマホなど)で撮影する一方、天井カメラでも同時並行で撮影する。そして、新人作業者による作業を天井カメラで撮影して得た画像から、例えば手の動き、体の向きや位置、工具や計測器の状態などの特徴的な情報(以下、特徴量ともいう。)を抽出する。
【0028】
また、天井カメラにより既に撮影した、同一の作業をしている熟練作業者の特徴量と比較することで、新人作業者が現在どの作業工程を行っているかなどを把握することができる。どの作業工程を行っているかがわかれば、作業モデル動画で示すべき次の作業工程がわかるので、新人作業者に示すべき動画を決定することができる。これにより、新人作業者は動画のコマ送りすることなく、次の作業工程を確認できる。
【0029】
新人作業者は、作業モデル動画と同様の動作をしていれば、自動でコマ送りになるので、手動でコマ送りするのに比べて手間が減る。また、このようなことを繰り返すうちに、新人作業者は自然に作業モデル動画と同じ動作をするようになり、習熟度が上がる。そして、作業もれや、確認もれ、作業ミスなどがあると手動コマ送りが必要となるので、新人作業者は、作業モデル動画と違った動作をなるべくしないようになり、製品品質の安定につながる。
【0030】
また、手動コマ送りの回数をカウントすることで、習熟度を測ったり、新人作業者が作業ミスをしやすい作業工程を把握したりできるので、それらに基づいて作業モデル動画を改善できる。また、対象者は、新人作業者に限定されない。例えば、熟練作業者でも自己流の動作になってしまっている可能性があり、自分のやってきた作業が作業モデル動画における動作と一致しているか確認することに利用できる。
【0031】
また、指定した所定の場所に製品を置いたり、計測器で所定の操作ボタンを押したりしたときなどの工程の終了時に、作業者が動画閲覧用のデバイス上でチェックボタンを押したり、あるいは、天井カメラによる撮影画像の画像処理により、工程終了を確認することができる。そして、そのときに、人手によらず、完了した作業内容をシステムで判断して、電子チェックシートのチェック処理を行う。これにより、紙のチェックシートを利用する必要がなくなり、作業工程完了時の電子チェックシート上でのチェック実施を行うことができ、作業者の作業性、正確性の向上を図ることができる。
【0032】
(システム構成)
図1は、実施形態の作業支援システム1の全体構成の概要を示す図である。作業支援システム1は、天井カメラ2と、後方カメラ3と、スマートフォン5と、サーバ10と、を備える。
【0033】
スマートフォン5は、作業中の作業者4(例えば新人作業者)によって視認可能な表示部の例である。スマートフォン5は、作業モデル動画(静止画も含む。)を、ブラウザや専用アプリにより表示する。作業モデル動画は、後述する編集によって文字、音声、マーカなどの処理を加えることで、閲覧する作業者4の作業性を向上させる。なお、表示部は、スマートフォンに限定されず、タブレット端末、PCなどであってもよい。
【0034】
天井カメラ2は、作業者4が作業を行う場所の上方の天井に設置され、広い撮影エリアを有する。天井カメラ2による撮影範囲を撮影エリアAとする。後方カメラ3は、作業者4が作業を行う場合のその作業者4の後方に設置され、天井カメラ2と比べて撮影範囲が狭く、作業者4の作業を近接撮影する。後方カメラ3は、熟練作業者による作業を作業モデル動画(見本撮影画像)として撮影する機器である。
【0035】
近接設置の後方カメラ3を用意する理由は、多くの作業は手元作業であり、天井カメラ2では、作業対象の計測器6(図3)の操作手順などが撮影視野の中に入らないことなどである。後方カメラ3の撮影領域である撮影エリアBは、天井カメラ2による撮影領域である撮影エリアAと一部重なっている。後方カメラ3は、常設できない場合が多いため、作業モデル動画の撮影時のみ設置する使い方を想定する。天井カメラ2および後方カメラ3により撮影した画像は、サーバ10に伝送される。
【0036】
サーバ10は、コンピュータ装置であり、クラウドサーバであってもよいし、あるいは、オンプレで設置されたサイト固有のものであってもよい。サーバ10は、記憶部11と、入力部12と、表示部13と、通信部14と、処理部15と、を備える。
【0037】
記憶部11は、情報を記憶する手段であって、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などから構成される。記憶部11は、天井カメラ2による撮影画像、後方カメラ3による撮影画像、編集後の作業モデル動画などの各種情報を記憶する。
【0038】
入力部12は、情報を入力する手段であって、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどである。
【0039】
表示部13は、情報を表示する手段であって、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などである。
【0040】
通信部14は、外部装置と通信するための通信インターフェースである。
【0041】
処理部15は、各種演算処理を行う手段であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。処理部15は、機能構成として、取得部151と、判定部152と、分析部153と、制御部154と、を備える。
【0042】
取得部151は、各種構成から各種情報を取得する。取得部151は、例えば、天井カメラ2や後方カメラ3から撮影画像を取得する。
【0043】
判定部152は、各種判定を実行する。例えば、判定部152は、過去の直近の作業工程について、作業者4による作業の撮影画像の特徴量と、熟練作業者による作業を予め撮影することで得られた作業モデル動画の特徴量と、に所定以上の相関があるか否かを判定する。
【0044】
例えば、判定部152は、過去の直近の作業工程について、少なくとも1枚以上の撮影画像の特徴量と、少なくとも1枚以上の作業モデル動画の特徴量と、に所定以上の相関があるか否かを判定する。
【0045】
また、判定部152は、過去の直近の作業工程について、少なくとも2枚以上の撮影画像の特徴量と、少なくとも2枚以上の作業モデル動画の特徴量と、を用いて、撮影順を含めて所定以上の相関があるか否かを判定するようにしてもよい。
【0046】
また、判定部152は、過去の直近の作業工程について、撮影画像の特徴量と、作業モデル動画の特徴量と、に所定以上の相関があるか否かを判定する場合に、両画像の所定部分(例えば、作業者の手元部分)を用いて判定するようにしてもよい。
【0047】
分析部153は、各種分析を実行する。例えば、分析部153は、作業者4による手動のコマ送り操作(コマ戻し操作も含む。)などに基づいて、分析を行う。例えば、作業工程ごとに、手動のコマ送り操作の回数に基づいて、習熟度などの評価を行う。例えば、手動のコマ送り操作の回数が少ないほど習熟度が高いと評価し、手動のコマ送り操作の回数が多いほど習熟度が低いと評価する。
【0048】
制御部154は、スマートフォン5に作業モデル動画を表示させる。また、制御部154は、判定部152によって両画像間に所定以上の相関があると判定された場合、自動的なコマ送りを行うことで、次の作業工程の作業モデル動画をスマートフォン5に表示させる。
【0049】
また、制御部154は、判定部152によって両画像間に所定以上の相関がないと判定された場合、作業者4によって手動のコマ送り操作が行われたときに、次の作業工程の作業モデル動画をスマートフォン5に表示させる。
【0050】
また、制御部154は、判定部152によって両画像間に所定以上の相関がないと判定された場合、相関の低い理由をスマートフォン5に画像、文字表示、光の点滅などで表示させるようにしてもよい。
【0051】
また、制御部154は、判定部152によって両画像間に所定以上の相関があると判定された場合、チェックシートデータの該当の作業項目に電子的なマーキングを行うようにしてもよい。あるいは、音声認識機能を処理部15で実現できるようにしてもよい。これにより、例えば、両手がふさがっている作業者4が発する音声を認識し、電子的なマーキング処理や、スマートフォン5に表示する画面の変更などをできるようにしてもよい。
【0052】
図2は、実施形態の作業場の様子を示す図である。作業場において、天井カメラ2は天井に設置され、後方カメラ3は三脚31によって作業者4の後方に設置されている。天井カメラ2と後方カメラ3による撮影画像は、サーバ10に伝送される。
【0053】
熟練作業者による作業時の作業モデル動画の収集の際、後方カメラ3は、作業机の上に配置する場合もあるが、通常、作業者4の背後か斜め後ろ、あるいは後ろ上方の近接位置に配置する。作業者4による作業対象の操作パネル(計測器6など)などの詳細部分の画像の収集が必要なためである。
【0054】
また、後方カメラ3は、作業者4による作業時には、作業上、安全上、常設できず、作業モデル動画の撮影後に撤去することが想定される。作業モデル動画を撮影する場合、天井カメラ2と後方カメラ3とのマルチカメラ撮影を行う。両カメラのfpsが異なる場合であっても、両カメラの撮影時刻情報を用いることで、同期表示などを行うことができる。なお、新人教育あるいは再訓練などの、作業者の実務の際は、天井カメラ2のみで撮影する。
【0055】
図3は、実施形態のスマートフォン5における表示画面例を示す図である。領域R1には、天井カメラ2による天井からの作業机の見下ろし画像が映っている。作業者40(作業者4)は、作業対象である計測器6の前にいる。作業モデル動画を表示するスマートフォン5は、計測器6の左隣に置かれている。マイナスドライバー71、プラスドライバー72を所定の位置に収容している工具置台7が、作業者40の画面右上に置かれている。画面には、作業者40の手41も映っている。
【0056】
また、領域R2には、後方カメラ3により過去に撮影した動画(作業モデル動画)が映っている。計測器6が大きく映っており、操作状況を確認しやすい状態になっている。作業モデル動画撮影時の熟練作業者の手91も映っており、熟練作業者がどのボタンを押して操作したのかが確認できる。
【0057】
また、画面下方にはボタン51が映っている。ボタン51は、タッチパネルとなっていて、操作可能である。ボタン51は、動画コマ送り/コマ戻し(巻き戻し)用のボタンを含む。作業者40は、ボタン51を操作することで、動画のコマ送り、コマ戻しなどの操作を行うことができる。
【0058】
スマートフォン5は、作業者40が作業モデル動画の視認とスマートフォン5の操作をしやすいように、作業机の上など、タッチパネル操作が容易で、かつ、画面を見やすい位置に置かれている。この例では、領域R1の画像が天井カメラ2による現時刻の撮影画像であり、領域R2の画像が過去に撮影した作業モデル動画で操作手順などを示す。作業者40は、領域R2における画像やコメントを見ることで、作業内容や注意事項を確認、認識することができる。なお、ボタン51については、図示のものに限定されず、どの画像を表示させるかを適宜操作できるようなボタンを含んでいてもよい。
【0059】
図4は、実施形態における表示画面のコマ送りタイミングの決定に関する説明図である。作業者40が閲覧できるように、スマートフォン5において、領域R1に作業者40の現在の状況の画面を表示し、領域R2に過去に撮影した熟練作業者の操作画像(作業モデル動画)を表示している。
【0060】
その一方、バックグラウンドの処理として、領域R3に示す熟練作業者9による作業を作業モデル動画として天井カメラ2で撮影したときの画像と、領域R1に示す作業者40の現在の状況の画面とを照合している。前提として、領域R1、R3の両方で、計測器6と工具置台7が同じ位置に配置されているようにする。そうすることで、領域R1、R3の両画像の照合が可能となる。一方、作業者40の左前方に置かれているスマートフォン5と、熟練作業者9の左前方に置かれているスマートフォン5は、必ずしも同じ位置である必要性はない。スマートフォン5は、作業内容に直接的に関係する物体ではないからである。
【0061】
図5は、比較例(コマ送りのタイミング制御をしない場合)における表示画像の遷移例を示す図である。図5では、左から右に向かって、時間が経過したときの画面を表している。図5および以降の図を用いて、各画像の時間経過と作業モデルの編集の手順について説明する。図5において、(a)の画像群(M1-1~M1-5)、(b)の画像群(M2-1~M2-5)は、事前に熟練作業者9について撮影したもので、(a)が天井カメラ2による撮影画像で、(b)は後方カメラ3による撮影画像である。例えば、M1-1とM2-1は、横軸の位置が同じであり、同じ時刻の撮影画像であることを示している。
【0062】
(c)は、作業用の画像マニュアル(作業モデル動画)である。これは、(b)の画像(M2-1~M2-5)に、作業指示、注意点などのコメントを追加した画像群(MM2-1~MM2-5)である。この画像群には、作業者4が、画像のコマ送り、コマ戻しなどをできるように、タッチパネル上にボタン51がついている。つまり、作業者4が必要に応じて次の作業内容などを確認するためにコマ送り、コマ戻しなどができるようになっている。この例では、画像の右上部分に、作業工程に合わせた作業番号A01~A05を付けている。
【0063】
そして、作業者4による作業時に、作業机に置いておいたスマートフォン5で(c)の画像群を自動コマ送りで流した際に天井カメラ2で撮影した画面が、(d)のF1-1~F1-4である。(a)の熟練作業者9についてのM1-1~M1-5に比べて、動作が遅く、作業が遅れている。つまり、作業者4は、同じ時間内に、同じ数の作業工程を処理できていないことがわかる。
【0064】
具体的には、以下の通りである。作業者4は、F1-1の時点で計測器6の前に座り、F1-2の時点で計測器6の電源ボタンを入れている。その後、作業者4は、ドライバーを見つけるのに時間がかかり作業遅れが発生している。つまり、F1-3について、工具置台7からプラスドライバー72を取り出す作業工程で時間がかかっている。この間、(c)の動画では、MM2-3の時点で「蓋を開けるため、プラスドライバーを手元に移動。」と表示され、MM2-4の時点で「被測定ボックスの蓋のネジをはずす。」と表示されているが、作業者4による作業はこれに追い付いていない。
【0065】
つまり、作業者4が、F1-4の時点で手元にプラスドライバー72を持ってきたときには、(c)の動画ではMM2-5の画面で「被測定ボックスにケーブルを刺す。」という表示が行われている。したがって、この時点で、(c)のMM2-4の画面における「被測定ボックスの蓋のネジをはずす。」という表示になっていなければ、作業者4は正しい作業工程を認識できない。
【0066】
すなわち、動画を単に流すだけでは、作業者4は、熟練作業者9と同じ速度で全作業工程を進められない限り、自分の作業の進捗に合わせて動画を確認できないことになる。結果的に、作業者4は、作業工程ごとに動画のコマ送りをする方法で作業を進めていかざるを得ない。あるいは、動画でいちいち次の作業工程を確認せずに、思い込みで作業を進めてしまう可能性もある。
【0067】
なお、これらの一連の画像は、いわゆる静止画群であってもよいし、あるいは、30fps~60fps程度のいわゆる動画と呼ばれるフレームレートの画像であってもよい。天井カメラ2による撮影レートと、三脚31に設置された後方カメラ3の撮影レートとが異なる場合、動画から、静止画群の撮影タイミングに合わせて間引きした画像により生成した画像を使ってもよい。間引きして画像生成をする際は、作業指示、留意点を画像に記載したコメント、あるいは、音声などの通知手段をつかい、作業工程ごとに間引きした画像群を再編集するようにしてもよい。
【0068】
図6は、実施形態(コマ送りのタイミング制御をする場合)における表示画像の第1の遷移例を示す図である。(a)と(b)は図5と同じである。(c)の作業モデル動画の編集の際、「一時停止マーカ」(一時停止させるための印)を設定する。一時停止マーカは、ある作業工程と次の作業工程の間や、モニターしている天井カメラ2により、例えばドライバーの置かれた工具置台7に手を伸ばすときなどの、作業の進捗を示す特異な動きを確認できた際に、解除することでコマ送りをするために設定する。
【0069】
例えば、(c)において、MM2-1から、MM2-2、MM2-3と自動でコマが送られていたが、「一時停止マーカ1」により、コマ送りが一時的に停止する。作業者4は、「蓋を開けるため、右端のプラスドライバを手元に移動。」とい作業指示を目視確認し、プラスドライバー72を取りに右手(2つの手41の右側)を伸ばす作業行動を行う(F1-3)。天井カメラ2の撮影画像によりその作業行動(F1-3)が確認されると、作業指示に従った動きを作業者4が行ったとして、制御部154は「一時停止マーカ1」を解除する。そして、作業者4が見るスマートフォン5には、(c)のMM2-3からコマ送りがされ、次のMM2-4が表示される。作業者4は、MM2-4に書かれている作業指示である「被測定ボックスの蓋のネジをはずす。」を読み、次の作業工程の内容を理解する。作業者4は、プラスドライバー72を手41に持ち、被測定ボックス(=観測、調整を行う製品のこと。)のネジを外す(図示せず)。ネジを外す作業が完了したところで(F1-4)一時停止マーカ2を解除し、MM2-4からMM2-5にコマ送りがされる。作業者4は、次の作業指示である「被測定ボックスにケーブルを刺す。」を確認する。
【0070】
このようにして、作業者4が、熟練作業者の作業行動(M1-1~M1-5)と同じ行動をすると、(c)の作業モデル動画のコマ送りが自動でされる。作業者4は、一連の作業を繰り返すうち、(c)の作業モデル動画と同じ動きをするほうが、コマ送り操作を自分自身でいちいち行わなくて済むことを知る。これにより、作業者4は、コマ送り操作を手動でする時間をなくすことができることを自然に認識する。したがって、作業者4は、次第に自動コマ送りに慣れ、熟練作業者の作業行動と同じ動きをするようになる。
【0071】
また、作業者4が作業手順通りに作業を行わず、ミスをした場合には、どのようにすればよいか作業指示を出すようにする。例えば、再度指示を出す画像表示をする。例えば、(c)のMM2-3に「右側の」の前に「最も」を追記し、プラスドライバー72の置き場所をより明確に表示する。また、例えば、天井カメラ2による作業ミスの画面を表示し、正しい作業内容を表示するなどの方法でもよい。
【0072】
例えば、ミスの例では、作業者4はプラスドライバー72とマイナスドライバー71を取り間違えやすいことがわかったとする。一方、天井カメラ2の画像の解像度ではドライバーの種類までは形状で識別できないことがある。しかし、天井カメラ2の解像度を上げる必要はない。端的な手段では、例えば、作業指示中の文言追加という方法で作業ミスの発生を防止する。また、画像を使う他の防止策(工具色、空の置台などの利用)でもよい。後述の図9のフローチャートにてこの流れを示す。
【0073】
図7は、実施形態における表示画像の第2の遷移例を示す図である。図7を参照して、コマ送り停止時の工程を示す画像のコマの流れについて説明する。具体的には、一時停止マーカの解除方法と、作業者4が一時停止マーカを解除できないときの対応策の提示方法の例について述べる。
【0074】
(a)が作業モデル動画編集後の、作業者4が見る作業モデル動画である。(b)は、天井カメラ2で撮影した、作業者4の動きである。まず、これらの(a)、(b)について述べる。
【0075】
MM2-2での「測定器(計測器6)の電源をいれる」との作業指示にしたがい、作業者4は作業をする。F1-2には、作業者4が計測器6の電源を入れている様子が映っている。この場合、作業者40の手41が計測器6の電源のあたりにあるので、判定部152は、そのあたりの部分を指定領域(所定部分)として、この指定領域に手41がきたら電源を投入したと判定できる。
【0076】
次に、作業者4は、MM2-3で「蓋を開けるため、右端のプラスドライバーを手元に移動。」という作業指示を確認する。作業者4は、プラスドライバー72を見つけるのに時間がかかり、作業遅れが発生する。F1-3-1で、作業者40が手41を工具置台7に近づけていることがわかる。
【0077】
判定部152は、作業者40がプラスドライバー72を取るために手を伸ばしたと判定し、制御部154は、一時停止マーカ1を解除して、MM2-4に、自動でコマ送りする。しかしながら、F1-3-2からわかるように、作業者4はMM2-3の作業指示の「蓋を開けるため、右端のプラスドライバーを手元に移動する。」に従っていない。すなわち、工具置台7からプラスドライバー72が取り出されていない。作業者4が所定の行動をしていないため、「一時停止マーカ2」が解除されず、次のMM2-4の画面が表示されたままの状態となっている。(a)、(b)は、作業者4がミスをした例となっている。
【0078】
次に、(c)、(d)で、このミスに対応する例を示す。途中までは(a)、(b)と同様である。F1-3で、作業者4の手41が工具置台7に近づいたため、MM2-3の「蓋を開けるため、右端のプラスドライバーを手元に移動。」の作業指示に従ったとして、一時停止マーカ1を解除して、MM2-4に自動コマ送りをする。
【0079】
しかし、天井カメラ2による次のF1-4の画像が確認できないため、一時停止マーカ2が解除できない。解除できない状態が所定時間継続したため、判定部152は作業者4が作業停止状態になっていると判定して、制御部154は天井カメラ2による事前撮影画像の1つである、M1-4(図5図6のM1-4と同様)を表示する。これにより、作業者4は、プラスドライバー72を手41にとることが必要だとあらためて理解し、プラスドライバー72を手元に持ってくる。これが天井カメラによる画像(F1-4)で確認され、次のMM2-5の画面に自動コマ送りされる。
【0080】
このようにして、作業者4のミスへの対応を実装することで、作業者4が混乱することなく、作業を進めやすくなる。
【0081】
図8は、実施形態における作業モデル動画の撮影および編集に関する処理を示すフローチャートである。ここでは、図1に示す環境で、熟練作業者よる作業を作業モデル動画として撮影することなどを前提とする。
【0082】
ステップS1において、判定部152は、作業モデル動画の撮影環境は整っているか否かを判定し、Yesの場合はステップS2に進み、Noの場合はステップS1に戻る。ステップS1では、例えば、天井カメラ2、および、三脚31に設置された後方カメラ3などの準備が整っている場合、Yesと判定する。
【0083】
ステップS2において、取得部151は、天井カメラ2および後方カメラ3による作業者4の撮影画像を取得する。
【0084】
次に、ステップS5において、制御部154は、動画のコマ送り処理を実現するための「開始/停止マーキング(一時停止マーキング)」を、1つの作業指示とその次の作業指示の間で、天井カメラ2による画像によって作業者4の作業動作の確認をする場合に設定する。なお、「開始/停止マーキング」は、所定時間の間だけコマ送りを停止する「一時停止マーキング」としてもよい。
【0085】
また、比較領域(指定領域)の設定は、設定した領域への所定のアクション(例えば、手がその領域内に入る、工具置台7から所定の工具が取り出されている状態になっているなど)が実施されたかを、天井カメラ2による画像で確認するためである。
【0086】
次に、ステップS6において、判定部152は、「開始/停止マーキング」、「比較領域指定」が設定できたか否かを判定し、Yesの場合はステップS7に進み、Noの場合はステップS4に進む。
【0087】
ステップS4において、制御部154は、収集した画像群では、設定できない部分があったとして、撮影環境を主とした修正作業実施がされたことを確認し、ステップS1に戻る。
【0088】
ステップS7において、制御部154は、天井カメラ2による撮影画像群と、三脚31に設置された後方カメラ3による撮影画像群を編集して作成した作業モデル動画とのリンク動作を設定する。
【0089】
次に、ステップS8において、判定部152は、リンク動作は適正、あるいは、微調整で対応可能か否かを判定し、Yesの場合はステップS9に進み、Noの場合は再撮影が必要なのでステップS4に進む。
【0090】
ステップS9において、制御部154は、「微調整実施」にて、時間調整にかかわるもの、例えば、一時停止マーカが設定された場合の最大停止時間をデフォルト値から変える場合の設定や、その後のコマ送りされて表示されるエラー処理画面の指定、作業指示の記載、音声や光を使う場合の設定が実施されたことを確認する。また、その他、各コマへの番号振りや、コマ送り/巻き戻し機能の設定などが行われる。このようにして、一連の作業モデル動画(画像群)とするための各設定、微調整が完了する。
【0091】
次に、ステップS10において、取得部151は、作業モデル動画の実施例の収集を開始する。例えば、天井カメラ2による画像を収集する。
【0092】
次に、ステップS11において、判定部152は、実施作業例を収集できたか否か、つまり、天井カメラ2による作業者4(新人作業者)の作業画像を収集できたか否かを判定し、Yesの場合はステップS12に進み、Noの場合は撮影した動画、撮影環境に不備があったとしてステップS4に進む。
【0093】
次に、ステップS12において、分析部153は、統計分析を実行する。例えば、画像収集した作業者4(新人作業者)が作業モデル動画に基づいて作業を実施したか否かに関する統計分析を行う。具体的には、例えば、作業工程ごとに、手動コマ送りの回数をカウントすることで、習熟度を測ることができるとともに、作業者4が作業ミスをしやすい作業工程を把握できる。
【0094】
次に、ステップS13において、制御部154は、分析結果に基づき修正点への対応が行われたことを確認する。例えば、分析結果に基づき、作業モデル動画にコメント追加などの改善が行われる。
【0095】
次に、ステップS14において、制御部154は、実施作業例の収集を完了するか否かを判定し、Yesの場合は作業モデル動画の作成完了として処理を終了し、Noの場合は改善継続を行うとしてステップS4に進む。
【0096】
なお、ステップS11以降は、実際のデータ収集およびその分析結果に基づく修正に関わるもので、必要に応じて繰り返し実施するようにしてもよい。また、フローチャートにおいて、図1中の記憶部11へのデータ書き込み/読み出しについての記載は省略している。また、対象となる作業者4は、新人作業者に限定されず、該当の作業に未熟な作業者全般である。つまり、本実施形態の技術は、新人作業者の教育だけでなく、多能工化の際の教育、ベテラン作業者の作業品質維持/改善のための再教育など、マニュアルに従った作業環境の促進の全般に活用できる。
【0097】
図9は、実施形態における作業者4の作業モニタリングおよび自動コマ送りエラー発生時に関する処理を示すフローチャートである。これまで説明してきた自動コマ送りが正常に動作しない場合に、天井カメラ2の画像によって作業者4の現在の状態を確認するとともに、エラー発生時の処理を行う手順を示している。
【0098】
まず、ステップS20において、判定部152は、自動コマ送りエラー時に教示・指示を出すように設定されているか否かを判定し、Yesの場合はステップS21に進み、Noの場合は処理を終了する。
【0099】
ステップS21において、判定部152は、対象の作業工程について、作業モデル動画に、開始/停止マーキング、比較領域指定があるか否かを判定し、Yesの場合はステップS22に進み、Noの場合はステップS34に進む。
【0100】
ステップS34において、制御部154は、次の作業工程(トリガー)のモニタリングに移り、ステップS21に戻る。
【0101】
ステップS22において、制御部154は、天井カメラ2による作業者4の作業モニタリングを実施する。
【0102】
次に、ステップS23において、判定部152は、作業者4の「コマ送り/戻し」操作の検出があったか否かを判定し、Yesの場合はステップS24に進み、Noの場合はステップS26に進む。なお、この検出は、天井カメラ2による画像に基づく推定であってもよいし、あるいは、「コマ送り/戻し」の操作コマンドの有無の確認であってもよい。
【0103】
ステップS24において、判定部152は、作業者4が作業場から離席していない状態か否かを判定し、Yesの場合はステップS25に進み、Noの場合はステップS26に進む。
【0104】
ステップS25において、判定部152は、各作業工程の設定作業時間を超過したか否かを判定し、Yesの場合は所定時間オーバとしてステップS26に進み、Noの場合は所定時間内としてステップS22に戻って作業モニタリングを継続する。
【0105】
ステップS26において、制御部154は、天井カメラ2による画像に基づく作業者4の現在の状態確認を行う。
【0106】
次に、ステップS27において、制御部154は、表示動画モデル番号を確認する。
【0107】
次に、ステップS28において、判定部152は、表示動画モデル番号と現在の状態の不整合を確認し、Yesの場合はステップS29に進み、Noの場合はステップS34に進む。ステップS28では、具体的には、例えば、天井カメラ2による画像に基づいて、作業者4が想定の作業をせず、不整合、すなわち、サーバ10による自動コマ送りができない状態にあるか否かを確認する。ステップS28でYesであれば、不整合があるとして、次のステップS29を実施する。ステップS28でNoであれば、なんらかの理由により自動コマ送りのトリガーが掛からない状態にあると判断する。作業を継続するため、一旦ステップS34に進む。これは、自動コマ送りは動作しないが、作業者4による手動コマ送りがされると想定しての処理である。自動コマ送りの判断をする画像に問題があり、後の改善を必要とする部分となる。
【0108】
ステップS29において、制御部154は、エラー時の教示・指示を行う。具体的には、例えば、天井カメラ2でモニタリングした場合、作業者4が適切な作業行動をしていないため、自動コマ送りが動作していない場合の処理を行う。すなわち、前出の以前撮影した熟練作業者の天井カメラ2による作業状況の提示を行う(図7の(c)のM1-4)。また、文言によるエラー作業時の対処方法の表示などを行ってもよい。
【0109】
次に、ステップS30において、制御部154は、作業者4の作業モニタリングを行い、作業者4がエラー時の教示・指示に対してどういう対応をしたかを確認する。
【0110】
次に、ステップS31において、判定部152は、作業者4の状態整合し、かつ、自動コマ送り動作稼働か否かを判定し、Yesの場合はステップS33に進み、Noの場合はステップS32に進む。
【0111】
ステップS32において、判定部152は、自動コマ送り動作回数Nが所定回数N0以下か否かを判定し、Yesの場合はステップS26に戻って作業者4の現状確認をし、Noの場合はステップS34に進んで次の作業工程のモニタリングに移る。
【0112】
なお、ステップS31でYes(進捗整合)となっているなら、作業者4は所定の作業行動をしたことで、コマ送り動作が行われた場合であるので、次に、ステップS33に移る。そして、ステップS33において、判定部152は、動画を終了するかを判定し、Yesの場合は作業モデル動画の最後に達しているということなので処理を終了し、Noの場合は作業モデル動画の最後に達していないということなのでステップS34に進む。
【0113】
次に、図10は、実施形態において、作業モデル動画と作業者4の両方を表示する場合の表示画面例を示す図である。作業者4(新人作業者)が作業内容を確認するために、図3に示すような表示例を用いることができることをすでに説明した。図10では、別な表示例について説明する。
【0114】
図10において、領域R13では、前述の、事前に撮影した熟練作業者による近接撮影動画(後方カメラ3による動画)が表示される。また、領域R12には、事前に撮影した熟練作業者9による天井カメラ2による画像が表示される。そして、領域R11には、作業者4が現在作業しているところを天井カメラ2で撮影した画像が表示される。
【0115】
このように、図10は、熟練作業者と作業者4の作業状態を比べて表示する例である。なお、画像処理により、両作業者の作業状態を重畳して表示し、手の動きの違いなどがより明瞭になるようにしてもよい。
【0116】
次に、図11は、実施形態において、作業モデル動画と天井カメラ2による熟練作業者の撮影画像の両方を表示する場合の表示画面例を示す図である。これは、天井カメラ2による作業者4の作業状態を示した図3の例と異なり、天井カメラ2により過去に撮影した熟練作業者の作業の様子と、作業モデル動画の両方を表示した例である。領域R22は、図10の領域R13と同様である。領域R21は、図10の領域R12と同様である。
【0117】
これにより、作業者4に対して、撮影されているという精神的な負担をかけないようにすることができる。また、作業モデル動画を大きく表示するために、天井カメラ2による過去、現在の画像を表示せず、作業モデル動画のみを表示するようにしてもよい。
【0118】
なお、この場合、バックグラウンドの処理として、領域R21に示す熟練作業者9による作業画像と、領域R23に示す作業者40による現在の作業画像と、を照合することで、作業者40による作業の妥当性を判定できる。
【0119】
このように、本実施形態の作業支援システム1によれば、新人作業者(作業者4)がある作業工程の作業をした場合に、熟練作業者の作業と相関の高い作業となっていたときには作業モデル動画を自動的にコマ送りさせ、そうでないときには新人作業者に作業モデル動画のコマ送り操作をさせる。これにより、新人作業者に対して高い利便性の作業支援を実行することができる。つまり、新人作業者は、コマ送りの手間を減らすよう、自然と熟練作業者の動作と同じ動作をするようになり、習熟度が上がっていくとともに、コマ送りの手間が減る。
【0120】
また、事後的に、新人作業者がどの作業工程で失敗しやすいかを特定(統計分析)することで、作業モデル動画へのコメント追加や工程見直しなどの改善を行うことができる。
【0121】
また、コマ送りを手動操作により行った回数を数えることによって、新人作業者の習熟度を定量的に測ることができる。
【0122】
また、作業工程が多く、従来の紙マニュアルでは、チェック漏れが発生してしまうような作業に対しても、チェックを実施したか否かの確認ができる。
【0123】
また、例えば、過去の直近の作業工程について、少なくとも1枚以上の撮影画像の特徴量と、少なくとも1枚以上の作業モデル動画の特徴量と、に所定以上の相関があるか否かを判定することで、作業モデル動画の自動的なコマ送りをするか否かを決定できる。
【0124】
また、過去の直近の作業工程について、少なくとも2枚以上の撮影画像の特徴量と、少なくとも2枚以上の作業モデル動画の特徴量と、を用いて、撮影順を含めて所定以上の相関があるか否かを判定することで、1枚同士の画像からだけでは誤判定が起きやすい場合でも、誤判定を抑制できる。
【0125】
また、過去の直近の作業工程について、撮影画像の特徴量と、作業モデル動画の特徴量と、に所定以上の相関があるか否かを判定する場合に、両画像の所定部分を用いて判定することで、例えば、手で装置の所定箇所の操作をしたか否かなどを高精度で判定できる。
【0126】
また、所定以上の相関がないと判定された場合、相関の低い理由を、画像、文字表示、光の点滅などで表示させることで、新人作業者に相関を上げる対策を促すことができる。
【0127】
また、所定以上の相関があると判定された場合、チェックシートデータの該当の作業項目に電子的なマーキングを行うことで、新人作業者が手作業でマーキングする手間を省くことができる。
【0128】
また、上述の実施形態では、撮影手段として、天井カメラ2と後方カメラ3の2つを用いたが、これに限定されず、いずれかの一方のみを用いるようにしてもよい。例えば、作業内容の詳細を天井カメラ2だけで撮影可能であれば、後方カメラ3は不使用としてもよい。
【0129】
また、例えば、作業内容の詳細を後方カメラ3だけで撮影可能であれば、天井カメラ2は不使用とし、作業者4(新人作業者)による作業も後方カメラ3で撮影するようにすればよい。
【0130】
また、本実施形態の作業支援システム1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0131】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0132】
例えば、作業場のレイアウト変更を行う場合は、作業モデル動画とリンクする天井カメラ2による画像を再撮影によって取得するようにすればよい。その場合、状況によっては、作業モデル動画自体は再撮影不要である。
【符号の説明】
【0133】
1…作業支援システム、2…天井カメラ、3…後方カメラ、4…作業者、5…スマートフォン、10…サーバ、11…記憶部、12…入力部、13…表示部、14…通信部、15…処理部、151…取得部、152…判定部、153…分析部、154…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11