IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三和合板株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-化粧板の製造装置 図1
  • 特開-化粧板の製造装置 図2
  • 特開-化粧板の製造装置 図3
  • 特開-化粧板の製造装置 図4
  • 特開-化粧板の製造装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167997
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】化粧板の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B27D 5/00 20060101AFI20241128BHJP
   B32B 37/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B27D5/00
B32B37/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084369
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】522405565
【氏名又は名称】三和合板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(72)【発明者】
【氏名】高松 守
(72)【発明者】
【氏名】原田 和典
【テーマコード(参考)】
2B002
4F100
【Fターム(参考)】
2B002AA03
2B002AA04
2B002AA10
2B002BB04
2B002BB12
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK25A
4F100AK25C
4F100AK36A
4F100AK36C
4F100AK41A
4F100AK41C
4F100AK42
4F100AK51A
4F100AK51C
4F100AP00B
4F100AT00
4F100BA05
4F100BA06
4F100CB00D
4F100CB00E
4F100DD01
4F100DG10A
4F100DG10C
4F100EH46
4F100EJ17
4F100EJ53
4F100EJ54
4F100EJ82A
4F100EJ82C
4F100GB08
4F100GB81
4F100HB31A
4F100HB31C
4F100JB14A
4F100JB14C
4F100JB14D
4F100JB14E
4F100JC00
4F100JK01
4F100JK10
4F100JK12
(57)【要約】
【課題】基材の両面に化粧面を有する化粧板を安価に製造できるようにする。
【解決手段】塗布手段7,8により、PETフィルム52,62のマット面と反対の重合面に紫外線硬化特性を有する紫外線硬化樹脂が塗布され、隙間なく連なった状態で搬送される複数のPB2が上面側、下面側ローラ51,61により上下に挟持される所定の挟持位置において、重合手段5,6により、紫外線硬化樹脂が塗布されたPETフィルム52,62の重合面がPB2の上面及び下面それぞれに重なるように重合され、目止め手段9,10により、PETフィルム52,62の重合面に塗布された紫外線硬化樹脂が硬化されて基材の上面及び下面それぞれに目止め層が形成され、目止め層に樹脂系塗料を含浸した含浸紙123,133が重ね合わされて貼着される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂系塗料を含浸した含浸紙を基材に貼着して成る化粧板を製造する化粧板の製造装置において、
長尺の木質板から成り所定長さの複数の基材を、材間がほぼ隙間なく連なった状態に配列して所定の搬送方向に搬送する材間調整手段と、
前記材間調整手段により搬送される前記複数の基材を所定の挟持位置で上下に挟持するように配設された上面側ローラ及び下面側ローラを有し、長尺で光沢のないマット面を有する樹脂フィルムを、前記上面側ローラ及び前記下面側ローラによる前記挟持位置において前記複数の基材の上面及び下面それぞれに前記マット面の反対側の重合面が重なるように重合する上面側及び下面側の重合手段と、
上面側及び下面側の前記重合手段の前記搬送方向の上流側において、上面側及び下面側の前記樹脂フィルムそれぞれの前記重合面に少なくとも紫外線硬化特性による接着性を有する紫外線硬化樹脂を塗布する上面側及び下面側の塗布手段と、
上面側及び下面側の前記塗布手段の前記搬送方向の下流側において、上面側及び下面側の前記樹脂フィルムの前記重合面に塗布された前記紫外線硬化樹脂を硬化することにより、前記複数の基材の上面及び下面に前記紫外線硬化樹脂から成る目止め層をそれぞれ形成して前記基材から上面側及び下面側の前記樹脂フィルムを剥離する上面側及び下面側の目止め手段と、
上面側及び下面側の前記目止め手段それぞれの前記搬送方向の下流側に設けられ、前記基材の上面側及び下面側の前記目止め層に前記樹脂系塗料を含浸させた含浸紙を重ね合わせる上面側及び下面側の含浸手段と
を備えることを特徴とする化粧板の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧板の製造装置において、
上面側及び下面側の前記塗布手段は、上面側及び下面側の前記重合手段の前記搬送方向の上流側において、前記基材の幅にわたり前記紫外線硬化樹脂を供給して上面側及び下面側の紫外線硬化樹脂溜まり部を形成し、上面側及び下面側の前記紫外線硬化樹脂溜まり部それぞれを前記樹脂フィルムが通過することにより前記紫外線硬化樹脂を上面側及び下面側の前記樹脂フィルムそれぞれの前記重合面に塗布するものであり、
供給される前記紫外線硬化樹脂が前記基材の幅以上に広がることを規制して前記基材の幅に留めおく規制手段を有することを特徴とする化粧板の製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化粧板の製造装置において、
上面側及び下面側の前記目止め層に貼着される前記含浸紙の少なくとも一方は、前記樹脂系塗料が含浸される前の前記紙材に所定デザインが印刷されて成ることを特徴とする化粧板の製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の化粧板の製造装置において、
前記樹脂系塗料は電子線硬化特性を有するものであり、
前記所定デザインが印刷された前記含浸紙に電子線を照射する電子線照射手段を更に備えることを特徴する化粧板の製造装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の化粧板の製造装置において、
上面側及び下面側の前記含浸手段の前記搬送方向の下流側に配設され、上面側及び下面側の前記目止め層に重ね合わされた前記含浸紙の少なくとも一方に所定デザインを印刷する印刷手段を備えることを特徴とする化粧板の製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の化粧板の製造装置において、
前記樹脂系塗料は紫外線硬化特性または電子線硬化特性を有するものであり、
前記印刷手段により前記所定デザインが印刷された前記含浸紙に紫外線を照射する紫外線照射手段または電子線を照射する電子線鯉照射手段を更に備えることを特徴する化粧板の製造装置。
【請求項7】
請求項1に記載の化粧板の製造装置において、
上面側及び下面側の前記含浸手段の前記搬送方向の下流側において、連なった状態の複数の前記基材を前記材間において前記所定長さで分離する分離手段を更に備えることを特徴とする化粧板の製造装置。
【請求項8】
請求項1に記載の化粧板の製造装置において、
上面側及び下面側の前記含浸手段は、
前記基材の幅にわたり前記樹脂系塗料を供給して上面側及び下面側の樹脂系塗料溜まり部を形成し、上面側及び下面側の前記樹脂系塗料溜まり部を前記基材が通過することにより、前記基材の上面及び下面に貼着された前記含浸紙に前記樹脂系塗料を含浸させるものであり、上面側及び下面側の前記樹脂系塗料溜まり部に供給される前記樹脂系塗料が前記基材の幅以上に広がることを規制して前記基材の幅に留めおく他の規制手段を有することを特徴とする化粧板の製造装置。
【請求項9】
請求項1に記載の化粧板の製造装置において、
前記紫外線硬化樹脂及び前記樹脂系塗料は、バイオマス化が50%以上であることを特徴とする化粧板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂系塗料を含浸した含浸紙を基材に貼着して成る化粧板を製造する化粧板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧板は、パーティクルボード(PB)やMDFなどのチップボードや木質繊維板の基材表面に所定の印刷が施された化粧紙を熱圧により貼着することによって、化粧面を有する化粧板が製造される(例えば、特許文献1参照)。このとき、メラミン樹脂を充填した槽中に含浸紙を浸漬(いわゆるどぶ漬け)することによりメラミン樹脂を含浸させ、メラミン樹脂を含浸させた含浸紙を乾燥させて基材上面に重ね、低圧で熱圧成型した低圧メラミン化粧板と、メラミン樹脂を含浸した含浸紙及びフェノール樹脂を含浸したクラフト含浸紙のみを積層して高圧で熱圧成型する厚さ1mmほどの高圧メラミン化粧板がよく知られており、これらメラミン化粧板は上面硬度が高く、対汚染性、耐摩耗性、耐熱性、耐水性に優れ、傷付きにくいことから、低圧メラミン化粧板は家具材や内装材等に使用され、薄い高圧メラミン化粧板は家具やドアの面材、棚やカウンターの面材等に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-140629公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の化粧板は、上記したようなメラミン樹脂やフェノール樹脂等の石油由来の樹脂を含浸、乾燥、熱圧着(180~220℃)して使用するため、製造プロセスの電気使用量が膨大で問題視されている。また、マイクロプラスチック問題の原因ともなり、近年叫ばれている持続可能な開発目標いわゆるSDGsの趣旨に反することになり、環境破壊の抑止を妨げる要因となっている。さらに、高コストである上に、熱圧着時に付着した含浸紙のメラミン樹脂を除去する作業が必要になり、手間がかかり、多くの電力を消費し廃棄物も多く発生するという問題もある。この問題は、低圧、高圧メラミン化粧板に限らず、樹脂シートや紙シートを熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂により基材に貼着しただけの従来の化粧板にも当てはまる。
【0005】
また、低圧メラミン化粧板は、両面が同時に化粧面(印刷によるデザイン面及び無地の鏡面や艶消し面を含む)に仕上げることが可能であるが、グラビア印刷等により所定デザインを予め印刷した含浸紙をメラミン樹脂充填槽にどぶ漬けしてメラミン樹脂を含浸し乾燥する設備と、含浸紙を基材の両面に重ねて低圧で熱圧着成型する設備という大掛かりな設備が必要になり、上記したように高コストで熱圧時に付着した含浸紙のメラミン樹脂を除去作業が必要という問題は依然として残るため、より安価で環境重視の時代に即した両面に化粧面を有する化粧板の製造手法の開発が望まれる。
【0006】
この発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、基材の両面に化粧面を有する化粧板を可能な限り環境に則し、かつ安価に製造できるようにすることを目的とする。特に、従来の低圧メラミン化粧板のような熱圧着(熱圧プレス)なしで、含浸紙にバイオマス樹脂を含浸しただけのものを最小エネルギコストであるLED等による紫外線または電子線照射の工程により、0.1~0.5秒という瞬時にバイオマス樹脂の硬化と接着を同時に行うようにし、両面に化粧面を有する化粧板を安価に製造可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る化粧板の製造装置は、樹脂系塗料を含浸した含浸紙を基材に貼着して成る化粧板を製造する化粧板の製造装置において長尺の木質板から成り所定長さの複数の基材を、材間がほぼ隙間なく連なった状態に配列して所定の搬送方向に搬送する材間調整手段と、前記材間調整手段により搬送される前記複数の基材を所定の挟持位置で上下に挟持するように配設された上面側ローラ及び下面側ローラを有し、長尺で光沢のないマット面を有する樹脂フィルムを、前記上面側ローラ及び前記下面側ローラによる前記挟持位置において前記複数の基材の上面及び下面それぞれに前記マット面の反対側の重合面が重なるように重合する上面側及び下面側の重合手段と、上面側及び下面側の前記重合手段の前記搬送方向の上流側において、上面側及び下面側の前記樹脂フィルムそれぞれの前記重合面に少なくとも紫外線硬化特性による接着性を有する紫外線硬化樹脂を塗布する上面側及び下面側の塗布手段と、上面側及び下面側の前記塗布手段の前記搬送方向の下流側において、上面側及び下面側の前記樹脂フィルムの前記重合面に塗布された前記紫外線硬化樹脂を硬化することにより、前記複数の基材の上面及び下面に前記紫外線硬化樹脂から成る目止め層をそれぞれ形成して前記基材から上面側及び下面側の前記樹脂フィルムを剥離する上面側及び下面側の目止め手段と、上面側及び下面側の前記目止め手段それぞれの前記搬送方向の下流側に設けられ、前記基材の上面側及び下面側の前記目止め層に前記樹脂系塗料を含浸させた含浸紙を重ね合わせる上面側及び下面側の含浸手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、上面側及び下面側の塗布手段により、上面側及び下面側の樹脂フィルムそれぞれのマット面と反対側の重合面に少なくとも紫外線硬化特性による接着性を有する紫外線硬化樹脂が塗布され、隙間なく連なった状態で搬送手段により搬送される複数の基材が上面側ローラ及び下面側ローラにより上下に挟持される所定の挟持位置において、上面側及び下面側の重合手段により、紫外線硬化樹脂が塗布された樹脂フィルムのマット面と反対側の重合面が基材の上面及び下面それぞれに重なるように重合され、上面側及び下面側の目止め手段により、上面側及び下面側の樹脂フィルムのマット面と反対側の重合面に塗布された紫外線硬化樹脂が硬化されて基材の上面及び下面それぞれに目止め層が形成される。そのため、仮に複数の基材の材間に僅かでも隙間が生じても、上面側の塗布手段により塗布される紫外線硬化樹脂が連続する基材の材間に浸入し下面側の目止め層が受け皿となって材間の隙間が埋められるので、搬送手段により搬送される複数の基材を連なった状態のまま搬送することができ、その後に含浸紙を貼着する際に安定して含浸紙を貼着することができる。
【0009】
さらに、上面側及び下面側の目止め手段により、目止め層が形成された基材から上面側及び下面側の樹脂フィルムを剥離した後、上面側及び下面側の含浸手段により、基材の上面側及び下面側の目止め層に樹脂系塗料を含浸した含浸紙を重ね合わせるため、樹脂系塗料として電子線硬化特性または紫外線硬化特性を有するものを含浸紙に含浸させ、基材の上面及び下面それぞれに樹脂系塗料を含浸した含浸紙を重ね合わせて電子線照射装置による電子線や紫外線LED(波長405nm)による紫外線を照射することによって、目止め層のマット面(微細な凹凸面)のアンカー効果により電子線硬化特性または紫外線硬化特性を有する樹脂系塗料の密着性の悪さをカバーすることができ、低消費電力で樹脂系塗料を硬化させて含浸紙を強固に接着することが可能になり、SDGsの趣旨に反することなく環境破壊の抑止に寄与することができる上、基材の表面及び裏面の両面を同じ工程で化粧面(印刷によるデザイン面及び無地の鏡面や艶消し面を含む)に仕上げることが可能になり、基材の表裏の両面に化粧面を有する化粧板を、環境に則してかつ安価に製造することができる。
【0010】
また、例えば目止め層なしで直接含浸紙を基材に貼着しようとしても不可能であり、目止め層を基材の両面に形成することで、基材に染み込んだ紫外線硬化樹脂の表面が紫外線によって固まり、樹脂が湿気硬化特性も有するならば基材に染み込んだ樹脂が湿気により固まり、しかも目止め層のマット面が微細な凸凹面に仕上げられていることから、重合された含浸紙を硬化させると同時に接着することが可能になる。
【0011】
また、上面側及び下面側の前記塗布手段は、上面側及び下面側の前記重合手段の前記搬送方向の上流側において、前記基材の幅にわたり前記紫外線硬化樹脂を供給して上面側及び下面側の紫外線硬化樹脂溜まり部を形成し、上面側及び下面側の前記紫外線硬化樹脂溜まり部それぞれを前記樹脂フィルムが通過することにより前記紫外線硬化樹脂を上面側及び下面側の前記樹脂フィルムそれぞれの前記重合面に塗布するものであり、供給される前記紫外線硬化樹脂が前記基材の幅以上に広がることを規制して前記基材の幅に留めおく規制手段を有していてもよい。
【0012】
こうすると、上面側及び下面側の重合手段の搬送方向の上流側に形成された上面側及び下面側の紫外線硬化樹脂溜まり部を樹脂フィルムが通過することにより、上面側及び下面側の樹脂フィルムそれぞれのマット面と反対側の重合面に紫外線硬化樹脂が塗布され、規制手段により紫外線硬化樹脂が基材の幅以上に広がることが規制されて基材の幅に留めおかれるため、紫外線LED(例えば、波長405nm)を用いて紫外線硬化樹脂を硬化することで、上面側及び下面側の目止め手段により低消費電力で基材の上面及び下面に目止め層を形成することができ、SDGsの趣旨に反することなく環境破壊の抑止に寄与することができる。
【0013】
また、上面側及び下面側の前記目止め層に貼着される前記含浸紙の少なくとも一方は、前記樹脂系塗料が含浸される前の前記紙材に所定デザインが印刷されて成るとよい。さらに、前記樹脂系塗料は電子線硬化特性を有するものであり、前記所定デザインが印刷された前記含浸紙に電子線を照射する電子線照射手段を更に備えるとよい。
【0014】
こうすると、樹脂系塗料が含浸される前に含浸紙に所定デザインが印刷されていても、樹脂系塗料に電子線硬化特性を有するものを使用することによって、紫外線硬化樹脂のように印刷用インクの特定の色により電子線が遮蔽されることはなく、電子線が樹脂系塗料の深くまで届くことから、電子線により樹脂系塗料を十分に硬化させると同時に、両面の含浸紙それぞれの電子線を照射する面と反対側の面にまで電子線が届いて両含浸紙それぞれを上面側及び下面側の目止め層に強固に密着させることができる。
【0015】
また、上面側及び下面側の前記含浸手段の前記搬送方向の下流側に配設され、上面側及び下面側の前記目止め層に重ね合わされた前記含浸紙の少なくとも一方に所定デザインを印刷する印刷手段を備えるようにしてもよい。このとき、前記樹脂系塗料は紫外線硬化特性または電子線硬化特性を有するものであり、前記印刷手段により前記所定デザインが印刷された前記含浸紙に紫外線を照射する紫外線照射手段または電子線を照射する電子線鯉照射手段を更に備えるとよい。
【0016】
こうすると、基材の目止め層に重ね合わされた後の含浸紙に印刷手段により所定デザインを印刷し、紫外線照射手段により紫外線または電子線鯉照射手段による電子線が含浸紙に照射されることで、含浸紙に含浸された樹脂系塗料を硬化して含浸紙を基材に貼着することができるので、印刷すべきデザインを変更する必要が生じた場合であっても、容易にデザイン変更を行うことが可能になる。ここで、印刷手段とは、いわゆるデジタル印刷機が相当する。
【0017】
また、上面側及び下面側の前記含浸手段の前記搬送方向の下流側において、連なった状態の複数の前記基材を前記材間において前記所定長さで分離する分離手段を更に備えるとよい。こうすると、所定長さで基材を分離して所定デザインが施された化粧板を製造することができる。
【0018】
また、上面側及び下面側の前記含浸手段は、前記基材の幅にわたり前記樹脂系塗料を供給して上面側及び下面側の樹脂系塗料溜まり部を形成し、上面側及び下面側の前記樹脂系塗料溜まり部を前記基材が通過することにより、前記基材の上面及び下面に貼着された前記含浸紙に前記樹脂系塗料を含浸させるものであり、上面側及び下面側の前記樹脂系塗料溜まり部に供給される前記樹脂系塗料が前記基材の幅以上に広がることを規制して前記基材の幅に留めおく他の規制手段を有するのが望ましい。
【0019】
こうすると、上面側及び下面側の含浸手段の搬送方向の上流側に形成された上面側及び下面側の樹脂系塗料溜まり部を基材が通過することにより、基材の上面側及び下面側の含浸紙それぞれに樹脂系塗料が含浸され、他の規制手段により樹脂系塗料が基材の幅以上に広がることが規制されて基材の幅に留めおかれるため、電子線或いは紫外線(例えば、波長405nm)を照射して樹脂系塗料を硬化することで、低消費電力で基材の上面及び下面それぞれに上面側及び下面側の含浸紙を貼着することができ、従来のどぶ漬け方式に比べて環境に則しており、SDGsの趣旨に反することなく環境破壊の抑止に寄与することができる。
【0020】
また、前記紫外線硬化樹脂及び前記樹脂系塗料は、バイオマス化が50%以上である前記紫外線硬化樹脂及び前記樹脂系塗料は、バイオマス化が50%以上であるのが望ましい。これにより、設備費用を大幅に軽減することができ、電気消費量と石油由来樹脂の使用量を抑制し、環境に優しい製造プロセスと製品を提供することが可能になり、SDGsの趣旨に合致する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、表裏両面に化粧面を有する化粧板を製造する場合に、従来の低圧メラミン化粧板を製造する場合のような、含浸紙にメラミン樹脂をどぶ漬けにより含浸し乾燥する設備と、含浸紙を基材の両面に重ねて低圧で熱圧成型する設備という大がかりな2つの設備を設ける必要がなく、しかも両設備間での素材の輸送も不要となって輸送コストを軽減でき、基材の表面及び裏面の両面を同じ一連の作業工程で化粧面に仕上げることができるため、基材の表裏の両面に化粧面を有する化粧板を、安価な構成の設備により製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る化粧板の製造装置の一実施形態の概略構成図である。
図2図1の一部の斜視図である。
図3図1の他の一部の斜視図である。
図4図1の動作説明用フローチャートである。
図5】化粧板の製造途中での異なる状態における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明に係る化粧板の製造装置の一実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。
【0024】
本実施形態における化粧板の製造装置Mは、図1に示すように構成されている。図1において、1は所定長さの基材であるパーティクルボード(以下、PBという)2の積み重ねた状態でストックし1枚ずつ押し出すように搬送ラインに投入する投入機、3は投入されたPB2の上下面の汚れを取るクリーナ、4は材間調整手段であり、投入機1から投入される複数のPB2の図1中に矢印で示す搬送方向に平行な両側に沿って複数配設されてPB2の搬送方向への流れをガイドするガイドローラと、PB2の少なくとも下面の数か所に真空吸着してPB2の姿勢を制御する吸着手段と、各PB2の材間距離を計測するセンサとを備え、各PB2の材間がほぼゼロの状態に各PB2の姿勢を調整し、各PB2が連なった状態に配列して搬送する。
【0025】
5,6は上面側及び下面側の重合手段であり、PB2を挟んで上下に対向する位置に上面側ローラ51及び下面側ローラ61をそれぞれ備える。そして、上面側の重合手段5は、長尺で光沢のないマット面を有する樹脂フィルムであるPET(ポリエチレン)フィルム52が巻回された第1フィルムロール53をさらに備え、上面側ローラ51により、第1フィルムロール53から繰り出されるPETフィルム52のマット面と反対側の重合面がPB2の上面に重合される。
【0026】
下面側の重合手段6は、長尺で光沢のないマット面を有する樹脂フィルムであるPETフィルム62が巻回された第2フィルムロール63と、第2フィルムロール63から繰り出されたPETフィルム62をガイドするガイドローラ64と、バックアップローラ65及びコンマローラ66により構成されガイドローラ64によりガイドされたPETフィルム62をバックアップローラ65とコンマローラ66との間に挟持する周知のコンマヘッドコータ67とを更に備え、下面側ローラ61により、第2フィルムロール63から繰り出されてガイドローラ64及びコンマヘッドコータ67によりガイドされるPETフィルム62のマット面と反対側の重合面が、PB2の下面に重合される。
【0027】
図1において、7は上面側の重合手段5の図1中に矢印で示す搬送方向の上流側において、上面側のPETフィルム52の重合面に、紫外線硬化特性による接着性を有する紫外線硬化樹脂を塗布する上面側の塗布手段であり、詳細には図2に示すように構成されている。
【0028】
図2に示すように、上面側の塗布手段7は、紫外線硬化特性による接着性を有する紫外線硬化樹脂が充填された充填槽71と、上面側の重合手段5の上流側において、PB2の幅にわたり充填槽71から紫外線硬化樹脂を供給して上面側の紫外線硬化樹脂溜まり部72を形成する複数の供給パイプ73とを備え、上面側の紫外線硬化樹脂溜まり部72を上面側のPETフィルム52が通過することにより紫外線硬化樹脂を上面側のPETフィルム52のマット面に塗布する。ここで、紫外線硬化樹脂溜まり部72に供給される紫外線硬化樹脂がPB2の幅以上に広がることを規制してPB2の幅に留めおく規制手段としての一対の規制板75が、PB2の幅よりも若干短い間隔で設けられており、上面側ローラ51の上流側のPB2、両規制板75,75及びPB2に重ねられるPETフィルム52により囲まれる領域に、紫外線硬化樹脂溜まり部72が形成される。なお、供給パイプ73の先端部分には電磁弁が設けられ、紫外線硬化樹脂の供給停止中は電磁弁が閉じられて紫外線硬化樹脂の漏れが防止されている。
【0029】
図1において、8は下面側の重合手段6の図1中に矢印で示す搬送方向の上流側において、下面側のPETフィルム62の重合面に、紫外線硬化特性を有する紫外線硬化樹脂を塗布する下面側の塗布手段であり、詳細には図3に示すように構成されている。
【0030】
図3に示すように、下面側の塗布手段8は、紫外線硬化特性を有する紫外線硬化樹脂が充填された充填槽81と、下面側の重合手段6を構成するコンマヘッドコータ67の上流側においてバックアップローラ65とコンマローラ66との間にPB2の幅にわたり充填槽81から紫外線硬化特性による接着性を有する紫外線硬化樹脂を供給して下面側の紫外線硬化樹脂溜まり部82を形成する複数の供給パイプ83とを備え、下面側の紫外線硬化樹脂溜まり部82を下面側のPETフィルム62が通過することにより紫外線硬化樹脂を下面側のPETフィルム62の重合面に塗布する。なお、図3中の実線矢印は下面側ローラ61及びバックアップローラ65の常時の回転方向を示し、コンマローラ66は回転せずに静止し不定期に回転するようになっている。なお、供給パイプ83の先端部分には電磁弁が設けられ、紫外線硬化樹脂の供給停止中は電磁弁が閉じられて紫外線硬化樹脂の漏れが防止されている。
【0031】
ここで、供給される紫外線硬化樹脂がPB2の幅以上に広がることを規制してPB2の幅に留めおく規制手段としてのバックアップローラ65の長さ方向の規制板84及び一対の規制板85を有する。なお、規制板84はPB2の幅以上の長さを有し、両規制板85はPB2の幅よりも若干短い間隔で配設されている。そして、規制板84、両規制板85,85、及び、バックアップローラ65とコンマローラ66とにより挟持されるPETフィルム62で囲まれる領域に、紫外線硬化樹脂溜まり部82が形成される。
【0032】
ここで、紫外線硬化樹脂は紫外線硬化特性のほかに湿気硬化特性を兼ね備えていてもよく、このような紫外線硬化樹脂として、バイオマス化が50%以上のもので、例えば、アクリル系樹脂、酢ビ系樹脂、ラテックス系樹脂、ゴム系樹脂、ビニルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂やこれらの各種変形樹脂、また、これらの樹脂と尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、イソシアネート系樹脂等を用いるとよい。
【0033】
紫外線硬化特性のある樹脂としては、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどのオリゴマーやポリマーを単独または混合させたものに、反応性モノマーを適宜加えたものを主成分とし、活性エネルギー線を紫外線とするため、光重合開始剤が添加したものであって50%以上バイオマス化したものが好ましい。
【0034】
また、湿気硬化特性のある樹脂としては、主にイソシアネート系化合物が好適であり、イソシアネート系化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等のイソシアネートモノマー、並びにこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパンのアダクト体等のポリイソシアネート誘導体、並びにこれらイソシアネートモノマーまたはポリイソシアネート誘導体のブロック体等が好ましい。このように、紫外線硬化樹脂が紫外線硬化特性に加えて湿気硬化特性を有すると、日本のような湿度の高い環境下では、後述する紫外線照射手段により100%硬化させなくても湿気により紫外線硬化樹脂を自然に100%硬化させることもできる。なお、70%以上バイオマス化したイソシアネートを用いるのが好ましい。
【0035】
図1において、9,10は上面側及び下面側の目止め手段であり、それぞれ紫外線LEDから成る上面側及び下面側の紫外線照射手段9a,10aと、PETフィルム52,62それぞれを剥離する上面側及び下面側の剥離手段9b,10bとを備える。
【0036】
紫外線照射手段9a,10aは、上面側及び下面側の塗布手段7,8それぞれの図1中に矢印で示す搬送方向の下流側において、上面側及び下面側のPETフィルム52,62の重合面(マット面と反対側の面)に塗布された紫外線硬化樹脂に紫外線(例えば、波長405nm)を照射して紫外線硬化樹脂を硬化し、連なったPB2の上面及び下面に紫外線硬化樹脂から成る目止め層をそれぞれ形成する。このとき、連なったPB2の材間に僅かな隙間が生じても、上面側の塗布手段7により塗布される紫外線硬化樹脂が、連なったPB2の材間に浸入して瞬間硬化し、下面側の目止め層が受け皿となって材間の隙間が確実に埋まり、しかも下面側の目止め層により紫外線硬化樹脂の流れ落ちが防止されるため、搬送される複数のPB2を連なった状態のまま搬送することができ、後の工程において含浸紙を貼着する際に安定して含浸紙を貼着することができる。
【0037】
上面側及び下面側の剥離手段9b,10bはそれぞれ、ガイドローラ9b1,10b1と、巻取ローラ9b2,10b2とを有し、目止め層が形成された後のPB2の上面及び下面から、上面側及び下面側のPETフィルム52,62それぞれを剥離して巻取ローラ9b2,10b2に巻き取って回収する。なお、回収されたPETフィルム52,62はフィルムメーカーに引き取られてリサイクル利用されるので、SDGsの趣旨に反しない。
【0038】
図1において、12、13は上面側及び下面側の含浸手段であり、PB2を挟んで上下に対向する位置に上面側ローラ121及び下面側ローラ131をそれぞれ備え、上面側及び下面側の目止め手段9,10の図1中に矢印で示す搬送方向の下流側にそれぞれ設けられ、PB2の上面側及び下面側にそれぞれ形成された目止め層に、電子線硬化特性を有する樹脂系塗料を含浸した含浸紙を重ね合わせる。このとき、例えば含浸紙として、予め所定デザインが印刷されたものを使用することにより、上面に印刷による所定デザインを有し下面は印刷の無い化粧面を同時に形成することができる。
【0039】
電子線硬化特性を有する樹脂系塗料として、バイオマス化が50%以上のもので、例えば、ロジン系アクリレートをはじめとする特殊変性アクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等を含むもの用いるとよい。
【0040】
上面側の含浸手段12は、含浸紙ロール122に巻回された含浸紙123をPB2の上面の目止め層に重ね合わせるものであり、図2に示す上記の上面側の重合手段5及び塗布手段7と同様の構成を有する。すなわち、電子線硬化特性による接着性を有する樹脂系塗料が充填された樹脂系塗料充填槽(図示省略)と、当該含浸手段12の上流側において、PB2の幅にわたり樹脂系塗料充填槽から樹脂系塗料を供給して上面側の樹脂系塗料溜まり部124を形成する複数の供給パイプ(図示省略)とを備え、上面側の樹脂系塗料溜まり部124を上面側の含浸紙123が通過することにより樹脂系塗料を上面側の含浸紙123に塗布する。
【0041】
ここで、図2中の規制板75と同様、上面側の含浸手段12は、樹脂系塗料溜まり部124に供給される樹脂系塗料がPB2の幅以上に広がることを規制してPB2の幅に留めおく他の規制手段としての一対の規制板を有し、これら両規制板はPB2の幅よりも若干短い間隔で配設されている。
【0042】
下面側の含浸手段13は、含浸紙ロール132に巻回された含浸紙133をPB2の下面の目止め層に重ね合わせるものであり、図3に示す上記の下面側の重合手段6及び塗布手段8と同様の構成を有する。
【0043】
すなわち、下面側の含浸手段13は、含浸紙ロール132から繰り出された含浸紙133をガイドするガイドローラ134と、バックアップローラ135及びコンマローラ136により構成されガイドローラ134によりガイドされた含浸紙133をバックアップローラ135とコンマローラ136との間に挟持する周知のコンマヘッドコータ137と、電子線硬化特性による接着性を有する樹脂系塗料が充填された充填槽(図示省略)と、バックアップローラ135とコンマローラ136との間にPB2の幅にわたり充填槽から樹脂系塗料を供給して下面側の樹脂系塗料溜まり部138を形成する複数の供給パイプ(図示省略)とを備え、下面側の樹脂系塗料溜まり部138を下面側の含浸紙133が通過することにより樹脂系塗料を下面側の含浸紙133に塗布する。
【0044】
このとき、供給される樹脂系塗料がPB2の幅以上に広がることを規制してPB2の幅に留めおく他の規制手段としてのバックアップローラ135の長さ方向に長尺の規制板及び一対の規制板を有する。なお、バックアップローラ135の長さ方向の規制板はPB2の幅以上の長さを有し、一対の規制板はPB2の幅よりも若干短い間隔で配設されている。
【0045】
そして、上面側及び下面側の含浸手段12,13は、従来の低圧メラミン化粧板の製造におけるどぶ漬けによる樹脂系塗料の含浸ではないため、含浸・乾燥のための設備も構成が簡単になるなどの利点を有する。
【0046】
図1において、15,16は上面側及び下面側のフィルム重畳手段であり、PB2を挟んで上下に対向する位置に上面側ローラ151及び下面側ローラ161をそれぞれ備え、上面側及び下面側の含浸手段12,13の図1中に矢印で示す搬送方向の下流側にそれぞれ設けられ、PB2の上面側及び下面側にそれぞれ重ね合わされた含浸紙123,133にそれぞれに、樹脂フィルムであるPETフィルムを重畳する。ここで、含浸紙123,133に重畳されるPETフィルムが重畳面側にマット面を有していると、アンカー効果により含浸紙123,133にPETフィルムを積層して樹脂を硬化させることで互いに密着させることができ、従来のアンカー効果を得るための研磨作業が不要になり、より簡単な工程になる。なお、PETフィルムの含浸紙123,133との重畳面と反対面がマット面を有していても有していなくてもよく、マット面を有する場合にはそのマット面がPB2の上面側及び下面側に位置するように重畳してPB2の上面及び下面を艶消し面とすることができ、マット面を有しない場合にはPB2の上面及び下面を鏡面とすることができる。このとき、紫外線硬化樹脂も電子硬化樹脂も酸素疎外の問題から、通常は窒素ガス雰囲気中での硬化を必要としていたが、本実施形態ではPETフィルムを含浸紙123,133に重畳することにより樹脂塗膜を空気から遮断できるので、窒素雰囲気中での硬化を行う必要がなく、しかも研磨処理などを行わなくても平面性良くPETフィルムを多重に積層することが可能になる。
【0047】
上面側のフィルム重畳手段15は、第3フィルムロール152に巻回されたPETフィルム153を繰り出してPB2の上面の含浸紙123に重ね合わせるものであり、図2に示す上記の上面側の重合手段5及び塗布手段7と同様の構成を有する。すなわち、電子線硬化特性を有する電子線硬化樹脂が充填された充填槽(図示省略)と、当該フィルム重畳手段15の上流側において、PB2の幅にわたり充填槽から電子線硬化樹脂を供給して上面側の電子線硬化樹脂溜まり部154を形成する複数の供給パイプ(図示省略)とを備え、上面側の電子線硬化樹脂溜まり部154を上面側のPETフィルム153が通過することにより電子線硬化樹脂を上面側のPETフィルム153に塗布する。
【0048】
ここで、図2中の規制板75と同様、上面側のフィルム重畳手段15は、電子線硬化樹脂溜まり部154に供給される電子線硬化樹脂がPB2の幅以上に広がることを規制してPB2の幅に留めおく別の規制手段としての一対の規制板を有し、これら両規制板はPB2の幅よりも若干短い間隔で配設されている。
【0049】
下面側のフィルム重畳手段16は、第4フィルムロール162に巻回されたPETフィルム163を繰り出してPB2の下面の含浸紙133に重ね合わせるものであり、図3に示す上記の下面側の重合手段6及び塗布手段8と同様の構成を有する。このとき、最初に含浸紙133の下面から電子線硬化樹脂を含浸してローラでプレスし、更に上面からも含浸して再度ローラでプレスすることにより、最低量の樹脂の含浸で脱気すると同時に余分な樹脂をすべてローラで掃きとるようにする。
【0050】
すなわち、下面側のフィルム重畳手段16は、第4フィルムロール162から繰り出されたPETフィルム163をガイドするガイドローラ164と、バックアップローラ165及びコンマローラ166により構成されガイドローラ164によりガイドされたPETフィルム163をバックアップローラ165とコンマローラ166との間に挟持する周知のコンマヘッドコータ167と、電子線硬化特性を有する電子線硬化樹脂が充填された充填槽(図示省略)と、バックアップローラ165とコンマローラ166との間にPB2の幅にわたり充填槽から電子線硬化特性を有する電子線硬化樹脂を供給して下面側の電子線硬化樹脂溜まり部168を形成する複数の供給パイプ(図示省略)とを備え、下面側の電子線硬化樹脂溜まり部168を下面側のPETフィルム163が通過することにより電子線硬化樹脂を下面側のPETフィルム163に塗布する。
【0051】
このとき、供給される電子線硬化樹脂がPB2の幅以上に広がることを規制してPB2の幅に留めおく他の規制手段としてのバックアップローラ165の長さ方向に長尺の規制板及び一対の規制板を有する。なお、バックアップローラ165の長さ方向の規制板はPB2の幅以上の長さを有し、一対の規制板はPB2の幅よりも若干短い間隔で配設されている。
【0052】
そして、電子線硬化樹脂が電子線硬化特性を有するため、含浸紙123に予め印刷によるデザインが施されていても、電子線硬化樹脂を電子線照射により硬化させる際に、紫外線硬化樹脂のように印刷用インクの特定の色により電子線が遮蔽されることはなく、電子線硬化樹脂の深くまで電子線が届いて電子線硬化樹脂が十分に硬化する。
【0053】
図1において、17,18は上面側及び下面側の保護層形成手段であり、それぞれ上面側及び下面側の電子線照射手段17a,18aと、PETフィルム153,163それぞれを剥離する上面側及び下面側の剥離手段17b,18bとを備える。
【0054】
上面側及び下面側の電子線照射手段17a,18aは、上面側及び下面側のフィルム重畳手段15,16それぞれの図1中に矢印で示す搬送方向の下流側において、上面側及び下面側のPETフィルム153,163に塗布された電子線硬化樹脂に電子線を照射して電子線硬化樹脂を硬化し、連なったPB2の上面及び下面に電子線硬化樹脂から成る保護層をそれぞれ形成する。
【0055】
上面側及び下面側の剥離手段17b,18bはそれぞれ、ガイドローラ17b1,18b1と、巻取ローラ17b2,18b2とを有し、保護層が形成された後のPB2の上面及び下面から、上面側及び下面側のPETフィルム153,163それぞれを剥離して巻取ローラ17b2,18b2に巻き取って回収する。なお、回収されたPETフィルム153,163は、PETフィルム52,62と同様、フィルムメーカーに引き取られてリサイクル利用されるので、SDGsの趣旨に反しない。また、従来の化粧板では、樹脂シートの表層に形成される保護層の薄い部分に対して、電子線照射による硬化が行われる場合があるが、本実施形態では含浸紙123,133全部を固化した上に従来のようなプレスなしで接着することも可能になる。る
【0056】
図1において、20は上面側の保護層形成手段17の下流側に設けられ上下面に含浸紙123,133が積層され電子線硬化樹脂から成る保護層が形成された状態のPB2を所定長さで切断するカッター及びこれを上下動させるアクチュエータを備える分離手段であり、分離手段20により、PB2が所定長さに分離されて化粧板Bが形成される。
【0057】
次に、化粧板Bを製造する手順について、図4及び図5を参照して説明する。尚、図4はフローチャート、図5は製造途中での異なる状態における側面図である。
【0058】
図4のフローチャートに示すように、材間調整手段4により、複数の基材であるPB2の材間W(図5(a)参照)をほぼゼロの状態にして複数のPB2を連なった状態で搬送し(ステップS1)、重合手段5,6より、PB2の上面及び下面に目止め層L1,L2(図5(b)参照)をそれぞれ同じ工程で形成し(ステップS2)、PB2の上面及び下面の目止め層L1,L2それぞれに、電子線硬化特性を有する樹脂系塗料を含浸した含浸紙123,133(図5(c)参照)を同じ工程で貼着し(ステップS3)、PB2の上面及び下面の含浸紙123,133に電子線硬化樹脂から成る保護層L3,L4(図5(d)参照)を同じ工程で形成し(ステップS4)、上面及び下面に含浸紙123,133及び保護層L3,L4が積層形成された状態の連なったPB2を所定長さで分離し(ステップS5)、所定長の化粧板Bを形成して一連の工程を終える。
【0059】
このとき、上面側の含浸紙123に予め所定デザインを印刷したものを使用することで、上面側は所定デザインが施された化粧面を有し下面側は鏡面或いは艶消し面の無地面を有する化粧板Bが少ない工程数で安価に製造される。なお、下面側の含浸紙133にも所定デザインを印刷したものを使用すれば、上下両面に化粧面を有する化粧板Bを製造できる。
【0060】
したがって、上記した実施形態によれば、上面側及び下面側の塗布手段7,8により、上面側及び下面側のPETフィルム52,62それぞれのマット面と反対の重合面に紫外線硬化特性を有する紫外線硬化樹脂が塗布され、隙間なく連なった状態で搬送される複数のPB2が上面側ローラ51及び下面側ローラ61により上下に挟持される所定の挟持位置において、上面側及び下面側の重合手段5,6により、紫外線硬化樹脂が塗布されたPETフィルム52,62の重合面がPB2の上面及び下面それぞれに重なるように重合され、上面側及び下面側の目止め手段9,10により、上面側及び下面側のPETフィルム52,62のマット面と反対側の重合面に塗布された紫外線硬化樹脂が硬化されて基材の上面及び下面それぞれに目止め層が形成されるため、複数のPB2の材間に僅かでも隙間が生じても、上面側の塗布手段7により塗布される紫外線硬化樹脂が連続するPB2の材間に浸入し下面側の目止め層が受け皿となって材間の隙間が埋められるので、搬送される複数のPB2を連なった状態のまま搬送することができ、その後に含浸紙123,133を貼着する際に安定して含浸紙を貼着することができる。
【0061】
さらに、上面側及び下面側の目止め手段9,10により、目止め層が形成されたPB2から上面側及び下面側のPETフィルム52,62を剥離した後、上面側及び下面側の塗布手段7,8により、PB2の上面側及び下面側の目止め層に樹脂系塗料を含浸した含浸紙123,133を重ね合わせるため、樹脂系塗料として例えば電子線硬化特性を有するものを含浸紙123,133に含浸させ、PB2の上面及び下面それぞれに樹脂系塗料を含浸した含浸紙123,133を重ね合わせて電子線を照射することによって、低消費電力で樹脂系塗料を硬化させて含浸紙123,133を強固に接着することが可能になり、SDGsの趣旨に反することなく環境破壊の抑止に寄与することができる上、基材の表面及び裏面の両面を同じ工程で化粧面に仕上げることが可能になり、基材の表裏の両面に化粧面を有する化粧板を、少ない工程数で安価に製造することができる。
【0062】
また、樹脂系塗料が含浸される前に含浸紙123.133に所定デザインが印刷されていても、樹脂系塗料に電子線硬化特性を有するものを使用することによって、紫外線硬化樹脂のように印刷用インクの特定の色により電子線が遮蔽されることはなく、電子線が樹脂系塗料の深くまで届くことから、電子線により樹脂系塗料を十分に硬化させると同時に両面の含浸紙123.133まで届いて両含浸紙123.133それぞれを上面側及び下面側の目止め層L1,L2に強固に密着させることができる。さらに、電子線照射樹脂と紫外線硬化樹脂は組成的には同じものであるが、樹脂単独で硬化したものは靭性がなく割れ易いが、含浸紙123,133に含浸することにより靱性が飛躍的に向上して高硬度で割れにくくなる。
【0063】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0064】
例えば、上記した実施形態では、上面側の含浸紙123に予め所定デザインを印刷したものを使用する場合について説明したが、他の実施形態として、含浸紙123,133のいずれにも印刷は施さず、上面側及び下面側の含浸手段12,13の図1中に矢印で示す搬送方向の下流側であってフィルム重畳手段15,16の上流側において、含浸紙にインクジェットプリンタなどの印刷手段により印刷するようにしてもよい。こうすると、印刷すべきデザインを変更する必要が生じた場合であっても、容易にデザイン変更を行うことが可能である。
【0065】
この場合、上流側、下流側のフィルム重畳手段15,16においてPETフィルム153,163に紫外線硬化特性による接着性を有する紫外線硬化樹脂を塗布して印刷を施した含浸紙123,133にPETフィルム153,163を重畳し、紫外線照射手段としての紫外線LEDによる紫外線を照射してPETフィルム153,163の紫外線硬化樹脂を硬化させればよい。なお、後工程における印刷は、上面側の含浸紙123、或いは、下面側の含浸紙133のいずれか一方にのみ行うようにしてもよい。
【0066】
また、紫外線硬化特性及び湿気硬化特性を有する樹脂系塗料は、バイオマス化が50%以上であれば、上記したものに限定されるものではない。さらに、紫外線硬化樹脂及び電子線硬化樹脂は、バイオマス化が50%以上であれば、上記したものに限定されるものではない。
【0067】
また、PETフィルム52,62,153,163に代えて、紫外線が透過可能なその他の樹脂フィルムを積層するようにしてもよい。
【0068】
そして、樹脂系塗料を含浸した含浸紙を基材に貼着して成る化粧板を製造する化粧板の製造装置に本発明を広く適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
M …化粧板の製造装置
2 …PB(パーティクルボード/基材)
4 …材間調整手段
5,6…上面側、下面側の重合手段
7,8…上面側、下面側の塗布手段
9,10…上面側、下面側の目止め手段
9a,10a…上面側、下面側の紫外線照射手段
9b,10b…上面側、下面側の剥離手段
12,13…上面側、下面側の含浸手段
52,62…PETフィルム(樹脂フィルム)
72,82…紫外線硬化樹脂溜まり部
75,84,85…規制板(規制手段)
123,133…含浸紙
W …材間
L1,L2…目止め層
B …化粧板
図1
図2
図3
図4
図5