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  • 特開-ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167999
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16D 28/00 20060101AFI20241128BHJP
   F16D 27/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F16D28/00 Z
F16D27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084371
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下薗 和年
(72)【発明者】
【氏名】上原 弘樹
(57)【要約】
【課題】締結要素を有するユニットにおいて、プレートの潤滑効率の向上とピストン構造の軽量化とを両立する。
【解決手段】ユニットは、クラッチハブと、クラッチドラムと、複数のプレートと、ピストンと、を有する締結要素を備え、前記ピストンは、中心軸を含む断面視において前記クラッチハブに近づくほど内径が大きくなる第1傾斜面と、前記中心軸を含む断面視において前記クラッチハブに近づくほど内径が大きくなる第2傾斜面と、を有し、前記第1傾斜面は、前記第2傾斜面よりも前記クラッチハブに近い位置に配置され、前記中心軸に対する前記第2傾斜面の傾斜角度は、前記中心軸に対する前記第1傾斜面の傾斜角度よりも小さく、前記第2傾斜面は、径方向視において、前記締結要素が締結状態である場合と前記締結要素が解放状態である場合との両方でシャフトの油孔と対向するように軸方向長が設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油孔を有するシャフトの外周に位置するクラッチハブと、
前記クラッチハブの外周に位置するクラッチドラムと、
前記クラッチハブと前記クラッチドラムとの間に設けられた複数のプレートと、
前記シャフトの外周に位置し、前記複数のプレートを軸方向に押圧するピストンと、
を有する締結要素を備え、
前記ピストンは、中心軸を含む断面視において前記クラッチハブに近づくほど内径が大きくなる第1傾斜面と、前記中心軸を含む断面視において前記クラッチハブに近づくほど内径が大きくなる第2傾斜面と、を有し、
前記第1傾斜面は、前記第2傾斜面よりも前記クラッチハブに近い位置に配置され、
前記中心軸に対する前記第2傾斜面の傾斜角度は、前記中心軸に対する前記第1傾斜面の傾斜角度よりも小さく、
前記第2傾斜面は、径方向視において、前記締結要素が締結状態である場合と前記締結要素が解放状態である場合との両方で前記シャフトの前記油孔と対向するように軸方向長が設定されている、
ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のユニットであって、
前記ピストンに軸方向の付勢力を付与する付勢部材を有し、
前記付勢部材は、前記ピストンの外周に位置する、
ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のユニットであって、
前記ピストンは、その外周側から支持されており、前記シャフトから離間して配置されている、
ユニット。
【請求項4】
請求項1に記載のユニットであって、
前記ピストンを外周側から支持する軸受を有し、
前記軸受は、径方向視において、前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面と重ならない位置に配置されている、
ユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のユニットであって、
前記ピストンは、非油圧式の駆動源を駆動力として軸方向に移動する、
ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から3には、締結要素の複数のプレートに潤滑油を供給する潤滑油供給構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-99189号公報
【特許文献2】特開2006-10074号公報
【特許文献3】特開2009-127721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
締結要素を有するユニットにおいては、プレートの潤滑効率の向上とピストン構造の軽量化とが求められている。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、締結要素を有するユニットにおいて、プレートの潤滑効率の向上とピストン構造の軽量化とを両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、油孔を有するシャフトの外周に位置するクラッチハブと、前記クラッチハブの外周に位置するクラッチドラムと、前記クラッチハブと前記クラッチドラムとの間に設けられた複数のプレートと、前記シャフトの外周に位置し、前記複数のプレートを軸方向に押圧するピストンと、を有する締結要素を備え、前記ピストンは、中心軸を含む断面視において前記クラッチハブに近づくほど内径が大きくなる第1傾斜面と、前記中心軸を含む断面視において前記クラッチハブに近づくほど内径が大きくなる第2傾斜面と、を有し、前記第1傾斜面は、前記第2傾斜面よりも前記クラッチハブに近い位置に配置され、前記中心軸に対する前記第2傾斜面の傾斜角度は、前記中心軸に対する前記第1傾斜面の傾斜角度よりも小さく、前記第2傾斜面は、径方向視において、前記締結要素が締結状態である場合と前記締結要素が解放状態である場合との両方で前記シャフトの前記油孔と対向するように軸方向長が設定されている、ユニットが提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、ピストンの移動位置に関わらず第2傾斜面と油孔とが対向するので、油孔から放出される潤滑油をクラッチハブ側にガイドすることができ、潤滑効率を向上することができる。また、クラッチハブに近い第1傾斜面を所望の角度に設定することにより、クラッチハブの所望の位置へ潤滑油をガイドすることができ、潤滑効率を向上することができる。ここで、ピストンに全面が一定の角度の傾斜面を設けた場合は、油孔に近づくほどピストンの径方向厚が大きくなってピストンの重量が増加する。これに対して、上記態様では、油孔近辺の第2傾斜面の傾斜角度をクラッチハブ側に位置する第1傾斜面の傾斜角度よりも小さくしている。これにより、ピストンの径方向厚を小さくできるので、ピストンを軽くすることができる。よって、上記態様によれば、締結要素を有するユニットにおいて、プレートの潤滑効率の向上とピストン構造の軽量化とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係るユニットの要部の断面を示す概略構成図である。
図2図2は、締結要素が締結状態である場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るユニット100の要部の断面を示す概略構成図である。具体的には、図1は、中心軸CLを含むユニット100の断面図である。「中心軸CLを含む断面」とは、中心軸CLと平行、且つ、中心軸CLを通る断面である。
【0011】
図1に示すように、ユニット100は、ハウジング1内に、シャフト2、締結要素3、歯車機構4、等を収容した動力伝達ユニットである。
【0012】
本実施形態では、ハウジング1は、複数のケースから構成される。図1には、ハウジング1を構成する3つのケース(ケース11、ケース12、ケース13)が示されている。ハウジング1を構成するケースの数はこれに限られない。ハウジング1は、例えば、単体のケースで構成してもよい。
【0013】
シャフト2は、ベアリング50を介して一端がハウジング1に回転自在に支持されている。シャフト2は、中心軸CLを中心として回転する回転軸である。シャフト2は、動力源(図示せず)から回転が入力される入力要素として機能する。動力源は、例えば、モータやエンジンである。
【0014】
締結要素3は、シャフト2の外周に位置するクラッチハブ31と、クラッチハブ31の外周に位置するクラッチドラム34と、クラッチハブ31とクラッチドラム34との間に挟まれて互い違いに配置される複数の内側プレート32及び複数の外側プレート33と、シャフト2の外周に位置し、プレート32、33を軸方向に押圧するピストン35と、を備える。「要素Aが要素Bの外周に位置する」とは、要素Aが要素Bの径方向外側に位置することを意味し、「要素Aが要素Bの内周に位置する」とは、要素Aが要素Bの径方向内側に位置することを意味する。
【0015】
クラッチハブ31は、平板環状の基部31aと、基部31aの内縁からピストン35側に向かって伸びる内側円筒部31bと、基部31aの外縁からピストン35側に向かって伸びる外側円筒部31cと、を有する。
【0016】
クラッチハブ31は、内側円筒部31bがシャフト2の外周にスプライン嵌合する。これにより、クラッチハブ31とシャフト2とが相対回転不能になっている。
【0017】
外側円筒部31cの外周には複数の内側プレート32がスプライン嵌合する。内側プレート32は、外側円筒部31cに対して軸方向に相対変位可能かつ相対回転不能になっている。
【0018】
クラッチドラム34は、平板環状の基部34aと、基部34aの内縁からピストン35とは反対側に向かって伸びる内側円筒部34bと、基部34aの外縁からピストン35側に向かって伸びる外側円筒部34cと、を有する。
【0019】
クラッチドラム34の内側円筒部34bは、ベアリング51を介して、その外周がハウジング1に回転自在に支持されている。
【0020】
外側円筒部34cの内周には、複数の外側プレート33及びピストン35がスプライン嵌合する。複数の外側プレート33及びピストン35は、外側円筒部34cに対して軸方向に相対変位可能かつ相対回転不能になっている。ピストン35は、プレート32、33をクラッチドラム34の基部34aとの間に挟むように配置されている。
【0021】
また、外側円筒部34cの内周には、ピストン35及びプレート32、33をクラッチドラム34の基部34aとの間に挟むように、リテーナ36が設けられる。
【0022】
リテーナ36は、平板環状の基部36aと、基部36aの内縁からピストン35とは反対側に向かって伸びる円筒部36bと、を有する。
【0023】
リテーナ36の円筒部36bは、軸受としてのベアリング52を介して、その外周がハウジング1の内側に設けられた中間壁14に回転自在に支持されている。すなわち、クラッチドラム34及びリテーナ36は、ベアリング52を介して、中間壁14に回転自在に支持されている。
【0024】
ピストン35は、平板環状の押圧部35aと、押圧部35aの内縁からプレート32、33とは反対側に向かって伸びる円筒部35bと、を有する。
【0025】
ピストン35の円筒部35bは、リテーナ36の円筒部36bよりも小径であって、リテーナ36の円筒部36bの内周側を通りケース12の近傍まで延伸している。
【0026】
ピストン35の円筒部35bは、ブッシュ53を介して、その外周がリテーナ36の円筒部36bに軸方向に摺動可能に支持されている。リテーナ36は外周からベアリング52によって支持されているので、ピストン35も、ベアリング52によって外周から支持されていると言える。
【0027】
また、ピストン35の円筒部35bは、ベアリング54を介して、ピストン35を軸方向に駆動する非油圧式の駆動源としてのアクチュエータ40に回転自在に支持されている。アクチュエータ40は、中間壁14に支持されている。
【0028】
非油圧式の駆動源としては、例えば、モータの回転運動をピストンの往復運動に変換する方式、電磁ソレノイド等を用いて直接的にピストンを往復運動させる方式、等がある。
【0029】
本実施形態では、ピストン35の外周であってピストン35の押圧部35aとリテーナ36との間に、ピストン35に軸方向の付勢力を付与する付勢部材としてのリターンスプリング37が設けられている。アクチュエータ40が非作動の状態では、リターンスプリング37の付勢力によってピストン35がプレート32、33に向かって軸方向に押し出される。これにより、内側プレート32と外側プレート33とが押し付けられて相対回転不能になり、締結要素3が締結状態となる。
【0030】
アクチュエータ40を作動させた状態では、ピストン35がリターンスプリング37を圧縮しながらアクチュエータ40側に向かって軸方向に移動する。これにより、内側プレート32と外側プレート33とが離間して相対回転可能になり、締結要素3が解放状態となる。なお、図1では、締結要素3は解放状態である。
【0031】
歯車機構4は、クラッチドラム34の内側円筒部34bに接続されている。よって、締結要素3が締結状態である場合は、シャフト2の回転が締結要素3を介して歯車機構4に伝達される。ユニット100は、歯車機構4が出力要素となるように構成してもよいし、歯車機構4から回転が伝達される他の要素が出力要素となるように構成してもよい。
【0032】
続いて、プレート32、33に潤滑油を供給する潤滑油供給構造について説明する。
【0033】
図1に示すように、シャフト2には、ユニット100の各部に潤滑油を供給するための油路2aが設けられている。潤滑油は、シャフト2の一端側から供給される。図1の矢印は、潤滑油の流れを示している。
【0034】
締結要素3のプレート32、33は、シャフト2の油孔2bから放出された潤滑油により潤滑される。油孔2bは、クラッチハブ31と嵌合するスプラインを避けて設けられている。
【0035】
油孔2bから放出された潤滑油は、図1に矢印で示すように、ピストン35に設けられた第1傾斜面35c及び第2傾斜面35dにガイドされる。これにより、潤滑油が、クラッチハブ31の外側円筒部31cの内周面に向かって流れる。
【0036】
クラッチハブ31の外側円筒部31cには、周方向に複数の貫通孔(図示せず)が設けられており、これら複数の貫通孔を通過した潤滑油によってプレート32、33が潤滑される。
【0037】
以下、第1傾斜面35c及び第2傾斜面35dについて詳しく説明する。
【0038】
第1傾斜面35c及び第2傾斜面35dは、ピストン35の円筒部35bの内周側であってクラッチハブ31側の端部に形成されている。
【0039】
第1傾斜面35cは、クラッチハブ31に近づくほど内径が大きくなるように形成されており、第2傾斜面35dよりもクラッチハブ31に近い位置に配置されている。
【0040】
第2傾斜面35dは、クラッチハブ31に近づくほど内径が大きくなるように形成されており、第1傾斜面35cのクラッチハブ31とは反対側の端部に連続している。
【0041】
また、図1に示すように、中心軸CLに対する第2傾斜面35dの傾斜角度βは、中心軸CLに対する第1傾斜面35cの傾斜角度αよりも小さくなるように設定されている。
【0042】
図2は、締結要素3が締結状態である場合を示す図である。なお、図2は、図1と同様に、中心軸CLを含むユニット100の断面図である。
【0043】
図2に示すように、第2傾斜面35dは、締結要素3が締結状態である場合においても、径方向視において、シャフト2の油孔2bと対向するように軸方向長が設定されている。
【0044】
そのため、矢印で示すように、締結要素3が締結状態である場合も、締結要素3が解放状態である場合と同様に、油孔2bから放出される潤滑油をクラッチハブ31側にガイドすることができる。
【0045】
このように、ピストン35の移動位置に関わらず第2傾斜面35dと油孔2bとを対向させることにより、油孔2bから放出される潤滑油をクラッチハブ31側にガイドすることができ、潤滑効率を向上することができる。
【0046】
また、クラッチハブ31に近い第1傾斜面35cを所望の傾斜角度に設定することにより、クラッチハブ31の所望の位置へ潤滑油をガイドすることができ、潤滑効率を向上することができる。すなわち、クラッチハブ31の外側円筒部31cに設けられた貫通孔を狙って潤滑油を流すようにすることで、潤滑効率を向上することができる。なお、外側円筒部31cの先端部は、内周側に張り出すように形成されている。これにより、クラッチハブ31に供給された潤滑油を外側円筒部31cの内周に溜めることができる。
【0047】
ここで、ピストン35に全面が一定の角度の傾斜面を設けた場合は、図2に二点鎖線で示すように、油孔2bに近づくほどピストン35の径方向厚が大きくなってピストン35の重量が増加する。これに対して、本実施形態では、油孔2b近辺の第2傾斜面35dの傾斜角度βをクラッチハブ31側に位置する第1傾斜面35cの傾斜角度αよりも小さくしている。これにより、ピストン35の径方向厚を小さくできるので、ピストン35を軽くすることができる。よって、本実施形態によれば、締結要素3を有するユニット100において、プレート32、33の潤滑効率の向上とピストン構造の軽量化とを両立することができる。
【0048】
なお、第2傾斜面35dにおける傾斜角度βが第1傾斜面35cにおける傾斜角度αよりも小さいということは、逆に言えば、第1傾斜面35cにおける傾斜角度αが第2傾斜面35dにおける傾斜角度βよりも大きいということを意味する。そのようにすることにより、クラッチハブ31側においてシャフト2とピストン35との距離を大きくすることができる。これにより、シャフト2とピストン35との間の潤滑油の通過量を増やすことができるので、潤滑効率の向上を行うことができるとも言える。すなわち、本発明の一態様は、クラッチハブ31の所望の位置へ潤滑油をガイドする目的にかえて、あるいは、当該目的と併用して、シャフト2とピストン35との間の潤滑油の通過量を増やすことができ、潤滑効率の向上を行うことができるとも言える。
【0049】
また、本実施形態では、ピストン35を付勢する付勢部材(リターンスプリング37)が、ピストン35の外周に配置されている。仮に、ピストン35の内周に、すなわち、ピストン35とシャフト2との間に付勢部材を配置した場合は、付勢部材が潤滑油の流れを阻害するおそれがある。この点、本実施形態では、付勢部材が潤滑油の流れを阻害することがないので、潤滑効率を向上することができる。
【0050】
また、本実施形態では、ピストン35は、その外周側から支持されている。これにより、ピストン35は、シャフト2から離間して配置されている。仮に、ピストン35を支持する部材(軸受等)がピストン35の内周側に配置されている場合は、ピストン35を支持する部材が潤滑油の流れを阻害するおそれがある。この点、本実施形態では、ピストン35を支持する部材が潤滑油の流れを阻害することがないので、潤滑効率を向上することができる。
【0051】
また、本実施形態では、ピストン35を外周から支持する軸受としてのベアリング52は、図1図2に示すように、径方向視において、第1傾斜面35c及び第2傾斜面35dと重ならない位置に配置されている。第1傾斜面35c及び第2傾斜面35dを設けた位置はピストン35の径方向厚が小さく(薄く)なるので、ピストン35の剛性が低下する。この点、本実施形態では、第1傾斜面35c及び第2傾斜面35dを設けた位置を避けて軸受を配置しているので、ピストン35の支持剛性を担保することができる。
【0052】
また、本実施形態では、ピストン35を駆動する駆動源としてのアクチュエータ40が非油圧式である。そのため、回転軸(シャフト2)からの油圧供給が必要な油圧式のピストンとは異なり、シャフト2とピストン35とを近接させる必要がない。よって、上述したような、ピストン35を付勢する付勢部材がピストン35の外周に配置される構成や、ピストン35が外周側から支持されてシャフト2から離間して配置される構成を採用しやすくなる。つまり、レイアウト自由度の高さを得ることができる。
【0053】
以下、本発明の実施形態に係るユニット100の主な作用効果についてまとめて説明する。
【0054】
(1)ユニット100は、油孔2bを有するシャフト2の外周に位置するクラッチハブ31と、クラッチハブ31の外周に位置するクラッチドラム34と、クラッチハブ31とクラッチドラム34との間に設けられた複数のプレート32、33と、シャフト2の外周に位置し、複数のプレート32、33を軸方向に押圧するピストン35と、を有する締結要素3を備える。ピストン35は、中心軸CLを含む断面視においてクラッチハブ31に近づくほど内径が大きくなる第1傾斜面35cと、中心軸CLを含む断面視においてクラッチハブ31に近づくほど内径が大きくなる第2傾斜面35dと、を有し、第1傾斜面35cは、第2傾斜面35dよりもクラッチハブ31に近い位置に配置され、中心軸CLに対する第2傾斜面35dの傾斜角度βは、中心軸CLに対する第1傾斜面35cの傾斜角度αよりも小さく、第2傾斜面35dは、径方向視において、締結要素3が締結状態である場合と締結要素3が解放状態である場合との両方でシャフト2の油孔2bと対向するように軸方向長が設定されている。
【0055】
これによれば、ピストン35の移動位置に関わらず第2傾斜面35dと油孔2bとが対向するので、油孔2bから放出される潤滑油をクラッチハブ31側にガイドすることができ、潤滑効率を向上することができる。また、クラッチハブ31に近い第1傾斜面35cを所望の角度に設定することにより、クラッチハブ31の所望の位置へ潤滑油をガイドすることができ、潤滑効率を向上することができる。ここで、ピストン35に全面が一定の角度の傾斜面を設けた場合は、油孔2bに近づくほどピストン35の径方向厚が大きくなってピストン35の重量が増加する。これに対して、本実施形態では、油孔2b近辺の第2傾斜面35dの傾斜角度βをクラッチハブ31側に位置する第1傾斜面35cの傾斜角度αよりも小さくしている。これにより、ピストン35の径方向厚を小さくできるので、ピストン35を軽くすることができる。よって、本実施形態によれば、締結要素3を有するユニット100において、プレート32、33の潤滑効率の向上とピストン構造の軽量化とを両立することができる。
【0056】
(2)ユニット100は、ピストン35に軸方向の付勢力を付与するリターンスプリング37を有し、リターンスプリング37は、ピストン35の外周に位置する。
【0057】
仮に、リターンスプリング37がピストン35の内周側に配置されている場合は、リターンスプリング37が潤滑油の流れを阻害するおそれがある。この点、本実施形態では、リターンスプリング37が潤滑油の流れを阻害することがないので、潤滑効率を向上することができる。
【0058】
(3)ピストン35は、その外周側から支持されており、シャフト2から離間して配置されている。
【0059】
仮に、ピストン35を支持する部材(軸受等)がピストン35の内周側に配置されている場合は、ピストン35を支持する部材が潤滑油の流れを阻害するおそれがある。この点、本実施形態では、ピストン35を支持する部材が潤滑油の流れを阻害することがないので、潤滑効率を向上することができる。
【0060】
(4)ピストン35を外周側から支持するベアリング52を有し、ベアリング52は、径方向視において、第1傾斜面35c及び第2傾斜面35dと重ならない位置に配置されている。
【0061】
第1傾斜面35c及び第2傾斜面35dを設けた位置はピストン35の径方向厚が小さく(薄く)なるので、ピストン35の剛性が低下する。この点、本実施形態では、第1傾斜面35c及び第2傾斜面35dを設けた位置を避けてベアリング52を配置しているので、ピストン35の支持剛性を担保することができる。
【0062】
(5)ピストン35は、非油圧式のアクチュエータ40を駆動力として軸方向に移動する。
【0063】
これによれば、シャフト2からの油圧供給が必要な油圧式のピストンとは異なり、シャフト2とピストン35とを近接させる必要がない。よって、上述したような、ピストン35を付勢する付勢部材がピストン35の外周に配置される構成や、ピストン35が外周側から支持されてシャフト2から離間して配置される構成を採用しやすくなる。つまり、レイアウト自由度の高さを得ることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0065】
例えば、上記実施形態では、締結要素3は、付勢部材(リターンスプリング37)を備えることで、アクチュエータ40が非作動の場合に締結状態となる。しかしながら、アクチュエータ40を作動させた場合に締結要素3が解放状態となるようにしてもよい。また、付勢部材を用いずに締結状態と解放状態とを切り替え可能とする構成を採用してもよい。また、ピストン35を駆動する駆動源は油圧式であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
100 ユニット
2 シャフト
2b 油孔
3 締結要素
31 クラッチハブ
32 内側プレート(プレート)
33 外側プレート(プレート)
34 クラッチドラム
35 ピストン
35c 第1傾斜面
35d 第2傾斜面
37 リターンスプリング(付勢部材)
40 アクチュエータ(駆動源)
52 ベアリング(軸受)
CL 中心軸
α 傾斜角度
β 傾斜角度
図1
図2