(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016800
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】波動歯車装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20240131BHJP
G01L 3/14 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
F16H1/32 B
G01L3/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094393
(22)【出願日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2022119108
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023001354
(32)【優先日】2023-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雅士
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA43
3J027GB03
3J027GC07
3J027GC08
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE01
3J027GE14
3J027GE30
(57)【要約】
【課題】波動歯車装置の外歯歯車のダイヤフラムに歪ゲージが貼り付けられている場合において、歪ゲージのリード線、配線パターンの断線を防止すること。
【解決手段】波動歯車装置1では、外歯歯車3のダイヤフラム33に伝達トルク検出用の歪ゲージ11が貼り付けられている。歪ゲージ11の配線が、ダイヤフラム33直上ではなく、波動発生器4による撓みの影響を受けない外歯歯車3のボス34に固定した基板取付部品として機能するエンドプレート7の上で行われるように、当該エンドプレート7に、歪ゲージ配線用の配線、半田付け部が形成されたFPC12が配置される。外歯歯車3の撓み変形に起因して発生する応力が、歪ゲージリード線、配線パターン、半田付け部に作用しないので、それらの断線が防止される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性の内歯歯車と、
前記内歯歯車にかみ合い可能なカップ形状あるいはシルクハット形状をした可撓性の外歯歯車と、
前記外歯歯車を非円形に撓めて前記内歯歯車に対して部分的にかみ合わせている波動発生器と、
前記外歯歯車を介して伝達される伝達トルクの検出に用いる複数の歪ゲージと、
前記歪ゲージの間を接続する配線パターンおよび前記歪ゲージから引き出される歪ゲージリード線が接続される半田ランドを備えた配線基板と、
を備え、
前記外歯歯車は、
半径方向に撓み可能な円筒状胴部と、
前記円筒状胴部の外周面に形成された外歯と、
前記円筒状胴部の一端から半径方向に延び、前記歪ゲージが取り付けられているダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの外周縁あるいは内周縁に形成された剛性のボスと、
を備えている波動歯車装置において、
前記外歯歯車の前記ボスに取り付けた基板取付け部品を備え、
前記基板取付け部品に、前記配線基板が取り付けられていることを特徴とする波動歯車装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記配線基板は、
軸方向において前記円筒状胴部とは反対側から前記ダイヤフラムに対峙する位置に配置されているか、または、
前記軸方向において前記円筒状胴部とは反対側から、前記基板取付け部品を挟み、前記ダイヤフラムに対峙する位置に配置されている波動歯車装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記歪ゲージは、前記歪ゲージリード線の引き出し側が前記ボスの側を向く姿勢で、前記ダイヤフラムに取り付けられている波動歯車装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記ダイヤフラムに取り付けた前記歪ゲージと、前記基板取付け部品に取り付けた前記配線基板の前記半田ランドとの間には、前記歪ゲージリード線が、弛みのある状態で、架け渡されている波動歯車装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記配線基板は、フレキシブルプリント配線基板またはリジッドプリント配線基板である波動歯車装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記外歯歯車はシルクハット形状をしており、前記ダイヤフラムが、前記円筒状胴部の軸方向の一端から半径方向の外方に延び、当該ダイヤフラムの前記外周縁に円環形状をした前記ボスが形成されており、
前記ボスは、前記軸方向において前記円筒状胴部とは反対側を向くボス端面を備えており、
前記基板取付け部品は、前記ボスの前記ボス端面に前記軸方向から取り付けられている波動歯車装置。
【請求項7】
請求項6において、更に、
入力軸と、
前記入力軸の一方の軸端部を、軸受を介して、回転自在の状態で支持するエンドプレートと、
を備えており、
前記エンドプレートは、前記基板取付け部品であり、前記ボスの前記ボス端面に取り付けられており、
前記エンドプレートは、
前記軸方向において前記ダイヤフラムとは反対側を向くプレート端面と、
前記プレート端面に形成され、前記ダイヤフラムの側に窪む円環状の凹状端面と、
前記エンドプレートを前記軸方向に貫通して前記凹状端面に開口する配線穴と、
を備えており、
前記配線基板は前記凹状端面に配置されたフレキシブルプリント配線基板であり、
前記歪ゲージは、前記歪ゲージリード線の引き出し側が前記ボスの側を向く姿勢で、前記ダイヤフラムに取り付けられており、
前記ダイヤフラムに取り付けた前記歪ゲージと、前記凹状端面に取り付けた前記フレキシブルプリント配線基板の前記半田ランドとの間には、前記歪ゲージリード線が、弛みのある状態で前記配線穴を介して架け渡されている波動歯車装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記基板取付け部品は、前記ボスの前記ボス端面に取り付けたプレートであり、
前記プレートは、
前記軸方向において前記ダイヤフラムとは反対側を向くプレート端面と、
前記プレートを前記軸方向に貫通して前記プレート端面に開口する配線穴と、
を備えており、
前記配線基板は、前記プレート端面に配置されたフレキシブルプリント配線基板であり、
前記歪ゲージは、前記歪ゲージリード線の引き出し側が前記ボスの側を向く姿勢で、前記ダイヤフラムに取り付けられており、
前記ダイヤフラムに取り付けた前記歪ゲージと、前記プレート端面に取り付けた前記フレキシブルプリント配線基板の前記半田ランドとの間には、前記歪ゲージリード線が、弛みのある状態で前記配線穴を介して架け渡されている波動歯車装置。
【請求項9】
請求項6において、更に、
入力軸と、
前記入力軸の一方の軸端部を、軸受を介して、回転自在の状態で支持するエンドプレートと、
前記基板取付け部品である円環状のスペーサと、
を備えており、
前記ボスの前記ボス端面には、前記スペーサを挟み、前記軸方向からエンドプレートが取り付けられており、
前記配線基板は、前記スペーサに取り付けられ、前記軸方向から前記ダイヤフラムに対峙しているリジッドプリント配線基板であり、
前記歪ゲージは、前記歪ゲージリード線の引き出し側が前記ボスの側を向く姿勢で、前記ダイヤフラムに取り付けられており、
前記ダイヤフラムに取り付けた前記歪ゲージと、前記基板取付け部品に取り付けた前記リジッドプリント配線基板の前記半田ランドとの間には、前記歪ゲージリード線が、弛みのある状態で、前記軸方向に架け渡されている波動歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性の外歯歯車のダイヤフラムに貼り付けた伝達トルク検出用の歪ゲージを備えた波動歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歪ゲージ式のトルク検出装置を備えたカップ型波動歯車装置、シルクハット型波動歯車装置は、特許文献1~4に提案されている。波動歯車装置において、トルク検出のために外歯歯車のダイヤフラム表面に歪ゲージを貼り、ダイヤフラム表面に直に配線を行った場合、波動発生器の回転に伴うダイヤフラム変形で歪ゲージリード線が繰り返し引っ張られる。この結果、フレキシブルプリント配線基板(FPC)に歪ゲージリード線を半田付けした箇所で断線が多発する。半田付け付近のリード線が半田食われにより硬化し、応力集中で断線しやすくなるものと考えられる。
【0003】
特許文献1においては、歪ゲージを、カップ形状あるいはシルクハット形状の外歯歯車におけるダイヤフラムとボスとに跨る状態に貼り付けて、歪ゲージから引き出されるリード線、歪ゲージ間等を繋ぐ配線パターンの断線を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3512160号公報
【特許文献2】特許第3644558号公報
【特許文献3】特許第4569990号公報
【特許文献4】特開2004-45378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、可撓性の外歯歯車のダイヤフラムに歪ゲージが貼り付けられている場合における歪ゲージのリード線、配線パターンの断線を、より確実に防止できるようにした波動歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カップ形状あるいはシルクハット形状をした可撓性の外歯歯車を備え、当該外歯歯車のダイヤフラムに伝達トルク検出用の歪ゲージが配置された構成の波動歯車装置において、歪ゲージの配線基板を、外歯歯車のダイヤフラムの表面に直に配置せず、波動発生器による撓みの影響を受けない外歯歯車のボスに固定した基板取付け部品に配置するようにしている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の波動歯車装置では、波動発生器の回転に伴う変形の影響を受けない外歯歯車のボスに固定した基板取付け部品に配置した配線基板上で、配線、半田付けが行われれる。当該基板取付け部品に配置した配線基板にはダイヤフラムの変形に起因する応力が作用しない。よって、本発明によれば、可撓性の外歯歯車のダイヤフラムに歪ゲージが貼り付けられている場合における歪ゲージのリード線、配線パターン、半田付け部の劣化、断線を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明を適用した実施の形態1に係る波動歯車装置の概略縦断面図である。
【
図2】(A)は外歯歯車のダイヤフラムにおける歪ゲージの貼り付け位置および歪ゲージ番号を示す説明図、(B)はフレキシブルプリント配線基板および配線パターンの端子番号を示す説明図、(C)は歪ゲージブリッジ回路を示す回路図である。
【
図3】(A)は直交2軸型歪ゲージの貼り付け位置を示す説明図、(B)は2軸平面配置用の歪ゲージの貼り付け位置を示す説明図である。
【
図4】本発明を適用した実施の形態2に係る波動歯車装置の概略縦断面図である。
【
図5】本発明を適用した実施の形態3に係る波動歯車装置の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は本発明を適用した実施の形態1に係る波動歯車装置を示す概略縦断面図である。波動歯車装置1は、剛性の内歯歯車2と、この内側に同軸に配置された可撓性の外歯歯車3と、この内側に同軸に嵌め込まれた楕円状輪郭の波動発生器4と、内歯歯車2および外歯歯車3を相対回転自在の状態で支持している主ベアリング5(クロスローラベアリング)と、入力軸6と、軸方向の一方の側である第1の側に配置されたエンドプレート7と、軸方向の他方の側である第2の側に配置されたエンドプレート8とを備えている。入力軸6の両側の軸端部は、それぞれ、入力軸ベアリング9a、9b(ボールベアリング)を介して、エンドプレート7、8によって支持されている。また、波動歯車装置1には伝達トルク検出用のトルク検出部10が付設されている。
【0010】
外歯歯車3はシルクハット形状をしており、外歯31が形成されている円筒状胴部32と、この円筒状胴部32の第1の側の端に連続して半径方向の外方に延びるダイヤフラム33と、この外周縁に形成されている円環状のボス34とを備えている。外歯31が形成されている円筒状胴部32における第2の側の端は開口端となっており、この開口端の側の部分が、外歯31が形成されている外歯形成部である。外歯形成部の内側に同軸に嵌め込まれた波動発生器4によって、円筒状胴部32は楕円形状に撓められ、外歯31が内歯歯車2の内歯21に対して部分的にかみ合っている。波動発生器4は、入力軸6に取り付けた一定幅のカム板41と、このカム板41の楕円状外周面に嵌めたウエーブベアリング42とを備えている。
【0011】
主ベアリング5は、半径方向においては、外歯歯車3の円筒状胴部32の外周を取り囲む状態に配置されており、軸方向においては、外歯歯車3のダイヤフラム33およびボス34と、内歯歯車2との間に配置されている。内歯歯車2を挟み、その第1の側に主ベアリング5の内輪51が配置され、第2の側にエンドプレート8が配置されており、これら三部材が内歯歯車2を挟み同軸状態で締結固定されている。また、外歯歯車3のボス34を挟み、その第1の側にエンドプレート7が配置され、第2の側に主ベアリング5の外輪52が配置されており、これらの三部材がボス34を挟み同軸状態で締結固定されている。
【0012】
トルク検出部10は、外歯歯車3のダイヤフラム33に取り付けた複数組の歪ゲージ11、エンドプレート7(基板取付け部品)に取り付けたフレキシブルプリント配線基板12(FPC)、歪ゲージ11とFPC12との間に架け渡した歪ゲージリード線13、FPC12から外部に引き出されているケーブル配線14、歪ゲージ11の検出信号に基づき伝達トルクを算出する信号処理回路(図示せず)等から構成される。
【0013】
入力軸6の回転に伴って波動発生器4が回転すると、両歯車2、3のかみ合い位置が円周方向に移動し、両歯車の歯数差に応じた相対回転が両歯車の間に生じる。例えば、エンドプレート7に固定した外歯歯車3の側が固定側とすると、内歯歯車2が回転し、ここに固定されているエンドプレート8が出力軸部として機能して、不図示の負荷部材の側に減速回転が出力される。
【0014】
図2(A)は外歯歯車3のダイヤフラム33における歪ゲージ11の貼り付け位置を示す説明図である。
図2(B)はFPC12および配線パターンの端子番号を示す説明図、
図2(C)は歪ゲージ11および配線パターンによって構成される歪ゲージブリッジ回路を示す回路図である。
【0015】
トルク検出部10の歪ゲージ11は、外歯歯車3のダイヤフラム33において、円筒状胴部32の内周面に繋がっている第1の側を向く内側端面35に接着剤により貼り付けられている。歪ゲージ11のそれぞれが配置されている部位は、配線保護のためにコーティング剤によって覆われたコーティング剤塗布部16(
図1参照)となっている。
【0016】
歪ゲージ11は、
図2(A)に示すように、直交2軸型の歪ゲージであり、2枚の歪ゲージ素子のそれぞれが、ゲージベース111と、そのベース表面に所定のパターンで形成された金属箔からなる抵抗線部分112と、抵抗線部分112をゲージリード線に接続するためのゲージリード端子部113とを備えている。
【0017】
本例の歪ゲージ11は、ダイヤフラム33の内側端面35において、その円筒状胴部32に繋がる円形内周縁部分36よりも、ボス34に繋がる円形外周縁部分37の側に近い位置において、2枚の歪ゲージ素子が半径線rに対して左右に45°傾斜した状態に配置されている。また、歪ゲージ11は、そのゲージリード端子部113の側(ゲージリード端子の引き出し側)が、ボス側である円形外周縁部分37の側(半径方向の外側)を向く姿勢で配置されている。
【0018】
歪ゲージ11は、外歯歯車3の撓みに起因する出力変動補償のために、同一円周上に複数枚貼り付けられている。本例では、8組の歪ゲージ11が、円周方向に45°の等角度間隔でダイヤフラム33の内側端面35に貼り付けられている。
【0019】
FPC12は、
図2(B)に示すように、一定幅の円環形状をした片面フレキシブル基板からなる。このFPC12は、
図1に示すように、エンドプレート7における第1の側(軸方向における円筒状胴部32とは反対側)を向くプレート端面71に形成した一定深さの円環状の凹状端面72に取り付けられている。FPC12からは第1の側にケーブル配線14が引き出されている。
【0020】
FPC12において、歪ゲージ11のそれぞれに対応する部位121には、リード線接続用の半田ランド部122、および歪ゲージ間等を接続する配線パターン123、外部に引き出されるケーブル配線14を接続するための外部引き出し配線用の半田ランド部124が形成されている。
【0021】
本例では、歪ゲージ11をボス側の円形外周縁部分37に寄せた位置に配置してある。また、エンドプレート7には軸方向に貫通して凹状端面72に開口する配線穴73が形成されている。歪ゲージ11のゲージリード端子部113と、FPC12の側の対応する接続端子である半田ランド部122との間を結ぶ歪ゲージリード線13は、弛みを持たせた状態で、エンドプレート7の配線穴73を経由させて、これらの部位113、122の間に架け渡されている。
【0022】
なお、
図2(C)に示すように、歪ゲージ11は、FPC12上の配線パターン123によって接続されて、歪ゲージブリッジ回路を構成している。
図2(C)に示す符号A
1、A
2~H
1、H
2は、それぞれ、
図2(A)において同一符号で示す位置にある8組の2軸直交型の歪ゲージ11のそれぞれを示す。また、
図2(C)における歪ゲージ11のそれぞれの間の配線パターン123は、
図2(B)において同一符号で示すFPC端子(半田ランド部122)の間を繋ぐ配線パターンである。
【0023】
このように構成した歪ゲージ11、FPC12を含むトルク検出部10は、次のような作用効果を奏する。
(1)波動発生器4の回転に伴う変形の影響を受けない外歯歯車3のボス34が固定されているエンドプレート7に、歪ゲージ11の配線パターン123、半田ランド部122が形成されたFPC12が配置されている。これらの配線パターン123、半田ランド部122には、ダイヤフラム33の変形に起因する応力が作用しない。ダイヤフラム33の撓みに起因して、引張力がFPC12に作用することがなく、FPC12の断線が起きにくく、歪ゲージリード線13、配線パターン123、半田付け部の断線を防止できる。
(2)外歯歯車3のダイヤフラム33における変位量が、ボス34に繋がっている円形外周縁部分の部位では実質的に零であり、ここから、円筒状胴部32に向けて増加していることに鑑みて、歪ゲージ11の歪ゲージリード線13の引き出し側がボス34の側を向く状態で、歪ゲージ11をダイヤフラム33に貼り付けてある。ゲージリード端子部113から引き出される歪ゲージリード線13は、ダイヤフラム33の撓みによって大きく引っ張られることがなく、その断線が起こりにくい。これにより、歪ゲージ11から引き出される歪ゲージリード線13が断線しにくくなる。
(3)歪ゲージ11から引き出される歪ゲージリード線13は、十分な余長を取って弛ませた状態で、FPC12の端子(半田ランド部122)に半田付けされる。歪ゲージ11が貼り付けられているダイヤフラム33の撓みによって、歪ゲージリード線13に大きな引張力が作用しても、弛みの部分が引張力を緩和させるので、歪ゲージリード線13に断線が起きにくい。
【0024】
(歪ゲージの別の例および貼り付け位置)
図3は歪ゲージ11の別の例および貼り付け位置を示す説明図である。
図3(A)に示す歪ゲージ11Aは、基本構成は歪ゲージ11と同一であるが、そのゲージリード端子部113の側において、ゲージベース111を、ダイヤフラム33の円形外周縁部分37に沿った円弧形状にカットしてある。これにより、歪ゲージ11Aを、ボス34の側により接近させた位置に配置してある。これにより、歪ゲージ11Aから引き出されるゲージリード線は、ダイヤフラム33の撓みによる影響がより小さくなり、断線が起きにくい。
【0025】
図3(B)は、歪ゲージ11として、2軸平面配置用の歪ゲージ11Bを使用した場合の例を示してある。この場合においても、歪ゲージ11Bのゲージリード端子部の側を、ボス側の円形外周縁部分に向ける。また、歪ゲージ11Bを、可能な限り、円形外周縁部分に接近した位置に貼り付ける。この場合においても、直交2軸型の歪ゲージ11、11Aの場合と同様に、ゲージリード線の断線が起きにくいという作用効果が得られる。
【0026】
[実施の形態2]
図4は、実施の形態2に係る波動歯車装置を示す概略縦断面図である。波動歯車装置200は、剛性の内歯歯車220と、この内側に同軸に配置された可撓性の外歯歯車230と、この内側に同軸に嵌め込まれた楕円状輪郭の波動発生器240と、内歯歯車220および外歯歯車230を相対回転自在の状態で支持している主ベアリング250(クロスローラベアリング)と、中空入力軸260と、伝達トルク検出用のトルク検出部310とを備えている。
【0027】
外歯歯車3はシルクハット形状をしており、外歯231が形成されている円筒状胴部232と、この円筒状胴部232の第1の側の端に連続して半径方向の外方に延びるダイヤフラム233と、この外周縁に形成されている円環状のボス234とを備えている。外歯231が形成されている円筒状胴部232における第2の側の端は開口端となっており、この開口端の側の部分が、外歯231が形成されている外歯形成部である。外歯形成部の内側に同軸に嵌め込まれた波動発生器240によって、円筒状胴部232は楕円形状に撓められ、外歯231が内歯歯車220の内歯221に対して部分的にかみ合っている。波動発生器240は、中空入力軸260の外周面に一体形成されたカム板部241と、このカム板部241の楕円状外周面に嵌めたウエーブベアリング242とを備えている。
【0028】
主ベアリング250は、半径方向においては、外歯歯車230の円筒状胴部の外周を取り囲む状態に配置されており、軸方向においては、外歯歯車230のダイヤフラム233およびボス234と、内歯歯車220との間に配置されている。主ベアリング250の内輪251と、この第2の側に位置する内歯歯車220とが、同軸状態で締結固定されている。主ベアリング250の外輪252と、この第1の側に位置するボス234とが、同軸状態で締結固定されている。
【0029】
トルク検出部310は、外歯歯車230のダイヤフラム233に取り付けた複数組の歪ゲージ311を備えている。また、トルク検出部310は、外歯歯車230のボス234において、軸方向において円筒状胴部232とは反対側を向く(第1の側を向く)ボス端面235に取り付けた基板取付け用の金属円板312(基板取付け部品)と、この金属円板312における第1の側を向く円板表面に取り付けたフレキシブルプリント配線基板313(FPC)とを備えている。歪ゲージ311とFPC313との間には、金属円板312に形成した配線穴312aを介して、弛みのある状態で、歪ゲージリード線314が架け渡されている。金属円板312は、例えば、厚さ0.3mm程度のSUS板である。FPC313からは、第1の側にケーブル配線315が外部に引き出されており、ここを介して、歪ゲージ311の検出信号が不図示の信号処理回路(図示せず)に供給されて、伝達トルクの検出が行われる。
【0030】
中空入力軸260の回転に伴って波動発生器240が回転すると、両歯車220、230のかみ合い位置が円周方向に移動し、両歯車の歯数差に応じた相対回転が両歯車の間に生じる。例えば、外歯歯車230の側を固定側とすると、内歯歯車220が回転し、不図示の負荷部材の側に減速回転が出力される。
【0031】
なお、外歯歯車230のダイヤフラム233における歪ゲージ311の構成、貼り付け位置、FPC313の構成は、
図1、2に示す場合と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0032】
このように構成した歪ゲージ311、FPC313を含むトルク検出部310においても、実施の形態1の場合と同様な作用効果が得られる。すなわち、波動発生器240の回転に伴う変形の影響を受けない外歯歯車230のボス234に固定されている金属円板312の上に、歪ゲージ311の配線パターン、半田ランド部が形成されたFPC313が配置されているので、これらの配線パターン、半田ランド部には変形に起因する応力が作用しない。ダイヤフラム233の撓みに起因して、引張力がFPC313に作用することがなく、FPC313の断線が起きにくく、歪ゲージリード線、配線パターン、半田付け部の断線を防止できる。
【0033】
[実施の形態3]
図5は実施の形態3に係るシルクハット型の波動歯車装置を示す概略縦断面図である。 波動歯車装置400では、フレキシブルプリント配線基板の代わりに、リジッドプリント配線基板(以下、PCBという)を用いてトルク検出部が構成されている。
【0034】
波動歯車装置400は、剛性の内歯歯車420と、この内側に同軸に配置された可撓性の外歯歯車430と、この内側に同軸に嵌め込まれた楕円状輪郭の波動発生器440と、内歯歯車420および外歯歯車430を相対回転自在の状態で支持している主ベアリング450(クロスローラベアリング)と、中空入力軸460と、軸方向の一方の側に配置されたエンドプレート470と、軸方向の他方の側に配置されたエンドプレート480とを備えている。中空入力軸460の両側の軸端部は、それぞれ、ボールベアリング491、492を介して、エンドプレート470、480によって支持されている。
【0035】
外歯歯車430はシルクハット形状をしており、外歯431が形成されている円筒状胴部432と、この一端に連続して半径方向の外方に延びるダイヤフラム433と、この外周縁に形成されている円環状のボス434とを備えている。円筒状胴部432は波動発生器440によって楕円形状に撓められ、外歯431が内歯歯車420の内歯421に対して部分的にかみ合っている。波動発生器440は、中空入力軸460に一体形成された一定幅のカム板441と、このカム板441の楕円状外周面に嵌めたウエーブベアリング442とを備えている。
【0036】
波動歯車装置400には伝達トルク検出用のトルク検出部510が付設されている。トルク検出部510は、外歯歯車430のダイヤフラム433に取り付けた複数組の歪ゲージ511、PCB(リジッドプリント配線基板)512、ケーブル配線(図示せず)、歪ゲージ511の検出信号に基づき伝達トルクを算出する信号処理回路(図示せず)等から構成される。なお、トルク検出部510の歪ゲージ511の貼り付け位置、配線パターン等は、例えば、実施の形態1における場合(
図3参照)と同一とすることができる。
【0037】
本例の波動歯車装置400では、一定厚さの円環状スペーサ610を、外歯歯車430のボス434と、エンドプレート470との間に挟み、この状態で、外輪452、ボス434、円環状スペーサ610およびエンドプレート470を同軸に締結固定してある。円環状スペーサ610を配置することにより、外歯歯車430のダイヤフラム433とエンドプレート470との間に形成されるスペース620を広くしている。このスペース620に、円環状のPCB512を配置し、当該PCB512の外周側部分を、外歯歯車430のボス434に固定してある。PCB512と、外歯歯車430のダイヤフラム433の内側端面435に貼り付けた歪ゲージ511との間に、ゲージリード線513が架け渡される。
【0038】
このように構成した歪ゲージ511、PCB512を含むトルク検出部510においても、実施の形態1の場合と同様な作用効果が得られる。すなわち、波動発生器440の回転に伴う変形の影響を受けない外歯歯車430のボス434に固定されているPCB512の上に、歪ゲージ511の配線パターン、半田ランド部が形成されているので、これらの配線パターン、半田ランド部には変形に起因する応力が作用しない。ダイヤフラム433の撓みに起因して、引張力がPCB512に形成された配線パターン、半田ランド部に作用することがないので、歪ゲージリード線、配線パターン、半田付け部の断線を防止できる。
【0039】
[その他の実施の形態]
上記の実施の形態は、本発明をシルクハット形状の外歯歯車を備えた波動歯車装置に適用したものである。本発明は、カップ形状の外歯歯車を備えた波動歯車装置にも同様に適用可能である。この場合、カップ形状の外歯歯車は、半径方向に撓み可能な円筒状胴部の一端から半径方向の内方にダイヤフラムが延びており、ダイヤフラムの内周縁に、円環状あるいは円盤状の剛性のボスが形成されている。ボスに取り付けた基板取付け用部品に、FPCなどの配線基板が取り付けられる。
【符号の説明】
【0040】
1 波動歯車装置
2 内歯歯車
3 外歯歯車
4 波動発生器
5 主ベアリング
6 入力軸
7 エンドプレート
8 エンドプレート
9a、9b 入力軸ベアリング
10 トルク検出部
11、11A、11B 歪ゲージ
12 フレキシブルプリント配線基板(FPC)
13 歪ゲージリード線
14 ケーブル配線
16 コーティング剤塗布部
21 内歯
31 外歯
32 円筒状胴部
33 ダイヤフラム
34 ボス
35 内側端面
36 円形内周縁部分
37 円形外周縁部分
41 カム板
42 ウエーブベアリング
51 内輪
52 外輪
71 プレート端面
72 凹状端面
73 配線穴
113 ゲージリード端子部
121 部位
122 半田ランド部
123 配線パターン
124 半田ランド部
200 波動歯車装置
220 内歯歯車
230 外歯歯車
231 外歯
232 円筒状胴部
233 ダイヤフラム
234 ボス
240 波動発生器
241 カム板部
242 ウエーブベアリング
250 主ベアリング
260 中空入力軸
310 トルク検出部
311 歪ゲージ
312 金属円板(基板取付け部品)
312a 配線穴
313 フレキシブルプリント配線基板(FPC)
314 歪ゲージリード線
315 ケーブル配線
400 波動歯車装置
420 内歯歯車
421 内歯
430 外歯歯車
431 外歯
432 円筒状胴部
433 ダイヤフラム
434 ボス
435 内側端面
440 波動発生器
441 カム板
442 ウエーブベアリング
450 主ベアリング
452 外輪
460 中空入力軸
470 エンドプレート
480 エンドプレート
491、492 ボールベアリング
510 トルク検出部
511 歪ゲージ
512 PCB(リジッドプリント配線基板)
513 ゲージリード線
610 円環状スペーサ
620 スペース
A1、A2~H1,H2 歪ゲージ
r 半径線