(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168001
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電柱切断撤去方法およびこの方法に用いる補助具
(51)【国際特許分類】
E02D 13/00 20060101AFI20241128BHJP
B66C 1/42 20060101ALI20241128BHJP
B66C 1/14 20060101ALI20241128BHJP
E04H 12/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E02D13/00 Z
B66C1/42 B
B66C1/14
B66C1/42 M
E04H12/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084373
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】岡安 良王
【テーマコード(参考)】
2D050
3F004
【Fターム(参考)】
2D050AA02
2D050DB03
2D050DB08
2D050EE04
2D050EE14
3F004LA05
3F004LB01
3F004LB03
(57)【要約】
【課題】電柱撤去作業において、切断位置および把持位置を適切に設定することができ、効率の良い撤去作業を行うことができるようにする。
【解決手段】 電柱切断撤去方法が、把持式穴掘建柱車の把持側フックから補助具150を介して電柱切断機を吊り下げる吊り下げステップと、補助具が撤去対象電柱の側方近傍を上下に延び、電柱切断機が撤去対象電柱の上下方向所定位置の近傍に位置するように把持装置を移動させる移動ステップと、電柱切断機が補助具により吊り下げられたまま、電柱切断機を撤去対象電柱に取り付ける取付ステップと、補助具を把持側係止具から取り外す取外しステップと、把持側係止具から補助具を取り外した高さ位置において把持部により撤去対象電柱を把持する把持ステップと、電柱切断機により撤去対象電柱を切断する切断ステップと、電柱切断機により切断された撤去対象電柱の上部を、把持部により把持したまま、撤去対象電柱の下部から取り外す撤去ステップと、を有する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車両上に旋回、起伏および伸縮自在なブームを有し、前記ブームの先端に電柱を把持可能な把持部を有した把持装置を設けて構成され、前記把持部に把持側係止具が設けられている把持式作業車と、
電柱に着脱自在に取り付け可能であり、電柱切断用のカッターを備えた電柱切断機と、
前記把持側係止具に着脱自在に係止される補助具被係止部を上部に備え、前記電柱切断機を吊り下げるための切断機吊り部を下部に備え、前記補助具被係止部から前記切断機吊り部まで繋いで延びる吊りワイヤを備えた補助具と、を用い、建柱された電柱を切断して撤去する電柱切断撤去方法であって、
前記補助具被係止部を前記把持側係止具に係止させ、前記切断機吊り部により前記電柱切断機を吊り下げ、前記把持式作業車の前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げる吊り下げステップと、
前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げた状態で、前記補助具が建柱状態の撤去対象電柱の側方近傍において上下に延び、前記電柱切断機が前記撤去対象電柱の上下方向所定位置の近傍に位置するように、前記ブームの作動を制御して前記把持装置を移動させる移動ステップと、
前記電柱切断機が前記補助具により吊り下げられたまま、前記上下方向所定位置の近傍において、前記電柱切断機を前記撤去対象電柱に取り付ける取付ステップと、
前記補助具を前記把持側係止具から取り外す取外しステップと、
前記把持側係止具から前記補助具を取り外した高さ位置において前記把持部により前記撤去対象電柱を把持する把持ステップと、
前記撤去対象電柱に取り付けられた前記電柱切断機により、前記撤去対象電柱を切断する切断ステップと、
前記電柱切断機により切断された前記撤去対象電柱の上部を、前記把持部により把持したまま、前記ブームの作動を制御して、前記撤去対象電柱の下部から取り外す撤去ステップと、を有する電柱切断撤去方法。
【請求項2】
前記移動ステップが、
前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げた状態で、前記補助具が撤去対象電柱の側方近傍において上下に延び、前記電柱切断機の前記カッターが前記撤去対象電柱の重心位置を示すマークと横方向に対向するように、前記ブームの作動を制御して前記把持装置を移動させる第1移動ステップと、
前記カッターが前記撤去対象電柱の重心位置を示すマークと横方向に対向する位置から所定量だけ上方に移動させるように、前記ブームの作動を制御して前記把持装置を移動させる第2移動ステップと、を有することを特徴とする請求項1に記載の電柱切断撤去方法。
【請求項3】
前記所定量が、前記撤去対象電柱の重心位置から前記撤去対象電柱の寸法上の中央位置までの長さに対応する長さであることを特徴とする請求項2に記載の電柱切断撤去方法。
【請求項4】
前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げた状態において、前記把持部から前記電柱切断機のカッターまでの上下方向長さが、前記電柱切断機のカッターにより切断された前記撤去対象電柱の上部の長さの半分となるように、前記補助具の長さが設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電柱切断撤去方法。
【請求項5】
前記取外しステップにおいて前記補助具が取り外された前記把持側係止具に、前記撤去対象電柱に掛け回された係止補助ロープを係止する係止ステップを有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電柱切断方法。
【請求項6】
請求項1に記載の電柱切断撤去方法に用いられる補助具であって、
前記把持側係止具に着脱自在に係止される前記補助具被係止部と、前記電柱切断機と係止可能な前記切断機吊り部と、前記補助具被係止部および前記切断機吊り部を繋いで延びる前記吊りワイヤとから構成される補助具。
【請求項7】
前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げた状態において、前記把持部から前記電柱切断機のカッターまでの上下方向長さが、前記電柱切断機のカッターにより切断された前記撤去対象電柱の上部の長さの半分となるように、前記補助具の長さが設定されることを特徴とする請求項6に記載の補助具。
【請求項8】
前記撤去対象電柱が長さの異なる複数種類あり、
これら複数種類の撤去対象電柱に対応して、複数の前記補助具被係止部を有し、
前記複数の補助具被係止部を所定間隔をおいて接続するとともに、最も下側に位置する前記補助具被係止部に前記切断機吊り部を繋いで構成されることを特徴とする請求項7に記載の補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱等の柱状物を把持可能な把持式作業車を用いて行う電柱切断撤去方法およびこの方法に用いる補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
車体上に旋回動自在に設けられた旋回台と、旋回台に起伏動および伸縮動自在に設けられたブームと、ブームに装着されて電柱を建て入れるための建柱穴を掘削するオーガ装置と、ブームの先端部に設けられて電柱などの柱状物を把持する把持装置とを備えた把持式の穴掘建柱車が知られている(例えば、特許文献1を参照)。穴掘建柱車を用いて地面に建柱穴を掘削する際には、オーガ装置をブームの先端部から吊り下げた状態でブームを適宜作動させ、オーガ装置を所定の掘削位置で回転動させることで、所定の深さの建柱穴を形成することができる。建柱穴の掘削が終了した後は、オーガ装置を引き上げてブームの側面に格納するとともに、ブームの先端部に設けられた把持装置により電柱を把持し、電柱を把持した状態でブームを適宜作動させることで上記掘削された建柱穴に当該電柱を直接建て入れることができるようになっている。このような把持装置を備えた穴堀建柱車では、電柱をウィンチやクレーンなどを用いて吊り下げて作業を行う場合と比べて、一連の建柱作業を効率的に行うことができる。なお、オーガ装置を備えないで把持装置のみを備えた作業車も存在するため、これらを総称して把持式作業車と称して説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
把持式作業車は、このように電柱を建て入れするときに用いられるだけでなく、古くなった電柱を撤去する作業にも用いることができる。従来の電柱撤去作業は、クレーン車や、穴掘り建柱車のクレーン装置を用いて電柱をワイヤにより吊り下げた状態とし、電柱を地面から引き抜き、引き抜いた電柱をクレーン車などで吊り下げて撤去するという作業が一般的に行われていた。しかし、電柱をワイヤにより吊り下げた状態では電柱が斜めになるため、その取扱が難しいという問題があった。このようなことから把持式作業車により電柱を把持して撤去するという作業が行われることも実用化されてきている。このとき、把持装置により電柱の重心位置近傍を把持するのが望ましいが、重心位置近傍を把持するための把持位置決めに工夫を要するという課題がある。
【0005】
また、電柱撤去作業に際して、電柱切断機を用いて電柱を途中部分で切断し、切断した上側部分を把持式作業車で把持して運搬して撤去するという作業が行われることもある。このような撤去作業において、電柱切断機による切断位置の位置決めに工夫が必要であり、切断した上部側の電柱の重心位置近傍を把持装置により把持するときの把持位置決めにも工夫が必要であるという課題がある。
【0006】
本発明は、電柱切断機を用いて電柱を途中部分で切断し、切断した電柱の上側部分を把持式作業車で把持して運搬して撤去するという電柱撤去作業において、切断位置および把持位置を適切に設定することができ、効率の良い撤去作業を行うことができるような電柱切断撤去方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明はまた、この電柱切断撤去方法を用いる場合において、切断位置および把持位置を適切に設定することができ、効率の良い撤去作業を行うことができるようにする補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る電柱切断撤去方法は、走行可能な車両上に旋回、起伏および伸縮自在なブームを有し、前記ブームの先端に電柱を把持可能な把持部を有した把持装置を設けて構成され、前記把持部に把持側係止具(例えば、実施形態におけるグリッパ80の下面に取り付けられた把持側フック65)が設けられている把持式作業車(例えば、実施形態における把持式穴掘建柱車1)と、電柱に着脱自在に取り付け可能であり、電柱切断用のカッターを備えた電柱切断機と、前記把持側係止具に着脱自在に係止される補助具被係止部(例えば、実施形態における上部リング151)を上部に備え、前記電柱切断機を吊り下げるための切断機吊り部(例えば、実施形態における切断機支持ワイヤ156、157、158およびそれらの下端に設けられている吊りフック156c、157c、158c)を下部に備え、前記補助具被係止部から前記切断機吊り部まで繋いで延びる吊りワイヤ(例えば、実施形態における吊りワイヤ155)を備えた補助具と、を用い、建柱された電柱を切断して撤去する方法である。
【0009】
この電柱切断撤去方法は、前記補助具被係止部を前記把持側係止具に係止させ、前記切断機吊り部により前記電柱切断機を吊り下げ、吊りワイヤを介して前記把持式作業車の前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げる吊り下げステップ(例えば、実施形態における第1の作業ステップ)と、前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げた状態で、前記補助具が撤去対象電柱の側方近傍において上下に延び、前記電柱切断機が前記撤去対象電柱の上下方向所定位置の近傍に位置するように、前記ブームの作動を制御して前記把持装置を移動させる移動ステップ(例えば、実施形態における第2および第3の作業ステップ)と、前記電柱切断機が前記補助具により吊り下げられたまま、前記上下方向所定位置の近傍において、前記電柱切断機を前記撤去対象電柱に取り付ける取付ステップ(例えば、実施形態における第4の作業ステップ)と、前記補助具を前記把持側係止具から取り外す取外しステップ(例えば、実施形態における第5の作業ステップ)と、前記把持側係止具から前記補助具を取り外した高さ位置において前記把持部により前記撤去対象電柱を把持する把持ステップ(例えば、実施形態における第6の作業ステップ)と、前記撤去対象電柱に取り付けられた前記電柱切断機により、前記撤去対象電柱を切断する切断ステップ(例えば、実施形態における第8の作業ステップ)と、前記電柱切断機により切断された前記撤去対象電柱の上部を、前記把持部により把持したまま、前記ブームの作動を制御して、前記撤去対象電柱の下部から取り外す撤去ステップ(例えば、実施形態における第9の作業ステップ)と、を有する。
【0010】
前記電柱切断撤去方法において、好ましくは、前記移動ステップが、前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げた状態で、前記補助具が撤去対象電柱の側方近傍において上下に延び、前記電柱切断機の前記カッターが前記撤去対象電柱の重心位置を示すマーク(例えば、実施形態における重心位置マークPM)と横方向に対向するように、前記ブームの作動を制御して前記把持装置を移動させる第1移動ステップ(例えば、実施形態における第2の作業ステップ)と、前記カッターが前記撤去対象電柱の重心位置を示すマークと横方向に対向する位置から所定量だけ上方に移動させるように、前記ブームの作動を制御して前記把持装置を移動させる第2移動ステップ(例えば、実施形態における第3の作業ステップ)と、を有する。
【0011】
前記電柱切断撤去方法において、好ましくは、第2移動ステップにより把持装置を移動させる前記所定量が、前記撤去対象電柱の重心位置から前記撤去対象電柱の寸法上の中央位置までの長さに対応する長さである。
【0012】
前記電柱切断撤去方法において、好ましくは、前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げた状態において、前記把持部から前記電柱切断機のカッターまでの上下方向長さが、前記電柱切断機のカッターにより切断される前記撤去対象電柱の上部の長さの半分となるように、前記補助具の長さが設定される。
【0013】
前記電柱切断撤去方法において、好ましくは、前記取外しステップにおいて前記補助具が取り外された前記把持側係止具に、前記撤去対象電柱に掛け回された係止補助ロープ(例えば、実施形態におけるナイロンスリングNS)を係止する係止ステップ(例えば、実施形態における第7の作業ステップ)を有する。
【0014】
一方、本発明に係る補助具は、上述の電柱切断撤去方法に用いられる補助具であって、前記把持側係止具に着脱自在に係止される前記補助具被係止部と、前記電柱切断機と係止可能な前記切断機吊り部と、前記補助具被係止部および前記切断機吊り部を繋いで延びる前記吊りワイヤとから構成される。
【0015】
前記補助具において、好ましくは、前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げた状態において、前記把持部から前記電柱切断機のカッターまでの上下方向長さが、前記電柱切断機のカッターにより切断された前記撤去対象電柱の上部の長さの略半分となるように、前記補助具の長さが設定される。
【0016】
前記補助具において、好ましくは、前記撤去対象電柱が長さの異なる複数種類あり、これら複数種類の撤去対象電柱に対応して、複数の前記補助具被係止部を有し、前記複数の補助具被係止部を所定間隔をおいて接続するとともに、最も下側に位置する前記補助具被係止部に前記切断機吊り部を繋いで構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電柱切断撤去方法によれば、前記把持式作業車の前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げる吊り下げステップと、このように前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げた状態で、前記補助具が撤去対象電柱の側方近傍において上下に延び、前記電柱切断機が前記撤去対象電柱の上下方向所定位置の近傍に位置するように、前記ブームの作動を制御して前記把持装置を移動させる移動ステップとを行い、さらに、前記電柱切断機が前記補助具により吊り下げられたまま、前記上下方向所定位置の近傍において、前記電柱切断機を前記撤去対象電柱に取り付ける取付ステップと、前記補助具を前記把持側係止具から取り外す取外しステップとを行った後に、前記把持側係止具から前記補助具を取り外した高さ位置において前記把持部により前記撤去対象電柱を把持する把持ステップを行えば、前記電柱切断機により切断される前記撤去対象電柱の上部の例えば中央部を前記把持部により把持させることができる。このため、続いて前記撤去対象電柱に取り付けられた前記電柱切断機により、前記撤去対象電柱を切断する切断ステップを行えば、前記電柱切断機により切断された前記撤去対象電柱の上部の中央部を前記把持部により把持したまま、前記ブームの作動を制御して、前記撤去対象電柱の下部から取り外す撤去ステップを行うことができる。すなわち、前記把持部は、切断分離された前記撤去対象電柱の上部の中央部を把持するため、安定した把持が可能で、撤去作業も安定して行うことができる。
【0018】
前記電柱切断撤去方法において、前記移動ステップが、前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げた状態で、前記電柱切断機の前記カッターが前記撤去対象電柱の重心位置を示すマークと横方向に対向するように前記把持装置を移動させる第1移動ステップと、この位置から前記カッターが所定量だけ上方に移動させるように、前記ブームの作動を制御して前記把持装置を移動させる第2移動ステップとを有するのが好ましい。このようにすれば、電柱に設けられている重心位置を示すマークを目視確認しながら前記補助具により吊り下げた前記電柱切断機のカッターの位置合わせを簡単に行うことができる。さらに、電柱の重心位置と電柱の長さ方向の中央位置との相違長さは予め分かっているため、例えば、この相違長さ分だけ前記補助具により吊り下げた前記電柱切断機のカッターの位置を移動させれば、前記カッターを電柱の長さ方向の中央位置と簡単に対向させることができ、電柱の長さ方向の中央位置をカッターにより正確に切断することができる。
【0019】
前記電柱切断撤去方法において、第2移動ステップにより把持装置を移動させる前記所定量が、前記撤去対象電柱の重心位置から前記撤去対象電柱の寸法上の中央位置までの長さに対応する長さであるのが好ましく、これにより、前記第2移動ステップにより移動された前記電柱切断機のカッターが、前記撤去対象電柱の寸法上の中央位置と対向し、電柱の中央位置をカッターにより正確に切断することができる。
【0020】
前記電柱切断撤去方法において、前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げた状態において、前記把持部から前記電柱切断機のカッターまでの上下方向長さが、前記電柱切断機のカッターにより切断された前記撤去対象電柱の上部の長さの半分となるように、前記補助具の長さを設定するのが好ましい。これにより、前記電柱切断機のカッターにより電柱の長さ方向の中央位置を正確に切断することができるとともに、切断した電柱の上部の略中央部を前記把持部により把持するように前記把持部を簡単に位置決めすることができる。
【0021】
前記電柱切断撤去方法において、前記取外しステップで前記補助具が取り外された前記把持側係止具に、前記撤去対象電柱に掛け回された係止補助ロープを係止する係止ステップを有するのが好ましい。これにより、前記把持装置により電柱を把持した状態でその把持力が低下したような場合でも、係止補助ロープにより電柱を係止保持することができ、前記把持装置から電柱が外れ落ちることを確実に防止して、安全性を高くすることができる。
【0022】
一方、本発明に係る補助具は、前記把持側係止具に着脱自在に係止される前記補助具被係止部と、前記電柱切断機と係止可能な前記切断機吊り部と、前記補助具被係止部および前記切断機吊り部を繋いで延びる前記吊りワイヤとから構成され、上述の電柱切断撤去方法に用いられることにより、上述した方法の効果を達成することができる。
【0023】
前記補助具において、前記把持側係止具から前記補助具を介して前記電柱切断機を吊り下げた状態において、前記把持部から前記電柱切断機のカッターまでの上下方向長さが、前記電柱切断機のカッターにより切断された前記撤去対象電柱の上部の長さの略半分となるように、前記補助具の長さが設定されるのが好ましい。このように構成される前記補助具を前記電柱切断撤去方法に用いれば、前記電柱切断機のカッターにより電柱の長さ方向の中央位置を正確に切断することができるとともに、切断した電柱の上部の略中央部を前記把持部により把持するように簡単に位置決めすることができる。
【0024】
前記補助具において、前記撤去対象電柱が長さの異なる複数種類あり、これら複数種類の撤去対象電柱に対応して、複数の前記補助具被係止部を有し、前記複数の補助具被係止部を所定間隔をおいて接続するとともに、最も下側に位置する前記補助具被係止部に前記切断機吊り部を繋いで構成されるのが好ましい。これにより、一つの補助具だけで、複数種類の電柱に対して前記電柱切断撤去方法を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る電柱切断撤去方法に用いられる把持式作業車の具体的な実施形態となる把持式穴掘建柱車の側面図である。
【
図3】上記把持式穴掘建柱車の使用状態を示す側面図である。
【
図4】上記把持式穴掘建柱車の機能ブロック図である。
【
図5】上記把持式穴掘建柱車を用いて、撤去対象の電柱を切断撤去する方法の第1の作業ステップを示す概略説明図である。
【
図6】上記把持式穴掘建柱車を用いて、撤去対象の電柱を切断撤去する方法の第2の作業ステップを示す概略説明図である。
【
図7】上記把持式穴掘建柱車を用いて、撤去対象の電柱を切断撤去する方法の第3の作業ステップを示す概略説明図である。
【
図8】上記把持式穴掘建柱車を用いて、撤去対象の電柱を切断撤去する方法の第4の作業ステップを示す概略説明図である。
【
図9】上記把持式穴掘建柱車を用いて、撤去対象の電柱を切断撤去する方法の第5、第6および第7の作業ステップを示す概略説明図である。
【
図10】上記把持式穴掘建柱車を用いて、撤去対象の電柱を切断撤去する方法の第8および第9の作業ステップを示す概略説明図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る補助具の構成を示す説明図である。
【
図12】本発明の異なる実施形態に係る補助具の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。まず、本発明に係る電柱切断撤去方法に用いられる把持式作業車である把持式穴掘建柱車1について、
図1~
図3を参照して説明する。
【0027】
把持式穴掘建柱車1は、
図1に示すように、車体2の前部に運転キャビン7を有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪5により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2の前後左右の四箇所には、車体2を持ち上げ支持するためのジャッキ9が配設されている。各ジャッキ9は、その内部に設けられたジャッキシリンダ(図示せず)を作動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、それにより車体2全体を安定させた状態とする。ジャッキ9の作動操作は、車体2の後部に設けられたジャッキ操作装置(図示せず)の操作により行われる。
【0028】
車体2における運転キャビン7後方の架装領域には、旋回モータ14(
図4を参照)により駆動されて上下軸回りに水平旋回動自在に構成された旋回台12が設けられている。旋回台12には、ブーム13の基端部が上下方向に揺動自在(起伏動自在)に取り付けられている。
【0029】
ブーム13は、
図3に示すように、旋回台12側から順に、基端ブーム13a、中間ブーム13bおよび先端ブーム13cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ15(
図4を参照)の伸縮動により、ブーム13を軸方向(長手方向)に伸縮動させることができる。また、基端ブーム13aと旋回台12との間には起伏シリンダ16が跨設されており、起伏シリンダ16を伸縮動させることにより、ブーム13全体を上下面(垂直面)内で起伏動させることができる。
【0030】
ブーム13には、基端ブーム13aと先端ブーム13cとに選択的に連結可能なオーガサポート17が取り付けられている。オーガサポート17には、連結棒部材27が左右方向に揺動自在に枢結されている。連結棒部材27には、建柱穴の掘削を行うためのオーガ装置20が前後方向に揺動自在に枢結されている。これにより、オーガ装置20は、オーガサポート17に対して、前後左右に揺動自在に吊り下げられた状態とすることができる。オーガ装置20は、油圧により回転動するオーガモータ22(
図4を参照)と、オーガモータ22により軸回りに回転されるオーガスクリュー(アースオーガ)25とを有して構成されている。
【0031】
基端ブーム13aの側面には、オーガサポート17を基端ブーム13aに連結した状態で、オーガ装置20を格納状態で保持するオーガ格納装置18が配設されている。オーガ装置20は、オーガサポート17に連結棒部材27を介して垂直面内で上下方向に揺動可能に取り付けられており、オーガ装置20をオーガ格納装置18により基端ブーム13aの側方に沿って格納した格納位置と、オーガ装置20をオーガ格納装置18から外して(オーガサポート17を先端ブーム13cに連結し)オーガスクリュー25を地面に向けて垂下させた作業位置との間で揺動させることが可能である。なお、オーガ装置20は、作業位置にある状態において、オーガスクリュー25がブーム13の姿勢の如何に関わらず重力方向(鉛直方向)に沿った垂直姿勢をとるように、ブーム13の先端部に対して連結棒部材27を支点に前後方向および左右方向に揺動自在に吊り下げられている。
【0032】
オーガ装置20を使用するときは、
図3のIに示すように、オーガサポート17を先端ブーム13cに連結させて、オーガ格納装置18から外したオーガ装置20を作業位置に揺動させた状態(オーガスクリュー25を地面に対して略垂直姿勢にした状態)で、オーガモータ22の回転駆動によりオーガスクリュー25を回転動させながらブーム13の倒伏動と縮小動とを連動させて直線的に下方へ移動させることで、建柱穴の掘削作業が可能である。
【0033】
オーガ装置20を使用しないときは、
図1および
図2に示すように、オーガサポート17を基端ブーム13aに連結させて、オーガ装置20をオーガ格納装置18により基端ブーム13aの側方に沿った格納位置に格納保持する。オーガ装置20が格納位置にある状態においては、後述の把持装置50を用いて、
図3のIIに示すように、電柱(
図3に符号Pで示す:以下同様)の建柱作業や抜柱作業、障害物の移設作業などの各種の作業を行うことができるようになっている。
【0034】
先端ブーム13cの先端部には、アームブラケット19が固定されている。アームブラケット19には、例えば電柱や樹木などの対象物(柱状物)を把持する把持装置50が取り付けられている。把持装置50は、アームブラケット19に上下方向に揺動(屈伸動)自在に取り付けられたアーム51と、アーム51の先端部に上下方向に揺動(縦首振り)自在に取り付けられた第1ジョイント部材60と、第1ジョイント部材60に左右方向に揺動(横首振り)自在に取り付けられた第2ジョイント部材70と、第2ジョイント部材70に回転自在に取り付けられたグリッパ80とを備えて構成される。アーム51、アームシリンダ55、第1ジョイント部材60、第2ジョイント部材70、後述の縦首振りシリンダ62、横首振りシリンダ71(
図4を参照)、グリッパモータ79(
図4を参照)などにより、グリッパ80の把持部81の姿勢を変化させることができ、この機構を支持機構と称する。
【0035】
アーム51は、軸方向(長手方向)の一端部がアームブラケット19に枢結され、軸方向(長手方向)の他端部が第1ジョイント部材60に枢結されている。アームブラケット19とアーム51との間には、アームシリンダ55が取り付けられている。アームシリンダ55のロッド側端部は、アームブラケット19に枢結され、ボトム側端部は、第1ジョイント部材60に枢結されている。アームシリンダ55を伸縮動させることで、アーム51をアームブラケット19に対して上下方向に揺動(屈伸動)させることができる。
【0036】
第1ジョイント部材60は、先端側が開放された上下二股状に形成されており、二股状の両端部に第2ジョイント部材70が枢結されている。第1ジョイント部材60とアーム51との間には、縦首振りシリンダ62が設けられている。縦首振りシリンダ62を伸縮動させることで、第1ジョイント部材60をアーム51に対して上下方向に揺動(縦首振り動)させることができるようになっている。
【0037】
第2ジョイント部材70は、第1ジョイント部材60によって上下から挟まれるように支持されている。また、第1ジョイント部材60の上端部には、横首振りシリンダ71(
図4参照)が設けられている。横首振りシリンダ71(
図4参照)を伸縮動させることで、第2ジョイント部材70を第1ジョイント部材60に対して左右方向に揺動(横首振り動)させることができるようになっている。
【0038】
第2ジョイント部材70にはグリッパ80が回転自在に取り付けられている。両者の間にはグリッパモータ79(
図4参照)が取り付けられており、グリッパモータ79(
図4参照)によりグリッパ80を第2ジョイント部材70に対して回転させることができるようになっている。グリッパ80は、対象物を把持する左右一対の把持部81と、左右一対の把持部81を開閉動させるグリッパシリンダ99(
図4参照)とを備えて構成される。グリッパモータ79(
図4参照)によりグリッパ80を第2ジョイント部材70に対して回転させれば、左右一対の把持部81の向きを変更調整することができる。グリッパ80の下面に把持側フック65が取り付けられている。
【0039】
以上のように構成された把持装置50は、オーガ装置20をオーガ格納装置18により基端ブーム13aの側方に沿った格納位置に格納保持した状態で、
図3のIIに示すように、電柱Pを把持して建柱作業や抜柱作業、障害物の移設作業などの各種の作業を行うようになっている。把持装置50の左右一対の把持部81により電柱Pを把持するのであるが、この把持は把持部81と電柱Pの摩擦力により行う構成であるため、このときの把持力が低下すると摩擦力が小さくなって電柱Pが下方に移動するなど把持が不十分となるおそれがある。このため、グリッパ80の下面に取り付けられている把持側フック65に、電柱Pにかけ回したナイロンスリングNS(ナイロン製のロープ)を掛け、電柱の落下防止を確実に行えるようにしている。
【0040】
車体2における旋回台12の側部には、各作業装置(旋回台12、ブーム13、オーガ装置20、把持装置50)の作動を操作するための操作席30が設けられている。操作席30の前方には、作業者が座ったままの姿勢で操作が可能な操作装置31が配設されている。操作装置31には、ブーム13の旋回動および起伏動を行なわせるための操作を行うブーム旋回起伏操作レバー32a、ブーム13の伸縮動およびアーム51の屈伸動を行なわせるための操作を行うブーム伸縮屈伸操作レバー32b、オーガスクリュー25の回転動を行なわせるための操作を行うオーガ操作レバー32c、把持部81の縦首振り動を行なわせるための操作を行う把持部縦首振り操作レバー32d、把持部81の横首振り動を行なわせるための操作を行う把持部横首振り操作レバー32e、把持部81の回転動を行なわせるための操作を行う把持部回転操作レバー32f、把持部81の開閉動を行わせるための操作を行う把持部開閉操作レバー32gなどが設けられている(
図4参照)。
【0041】
各操作レバーの操作に応じて対応するアクチュエータを作動させる制御が行われる。具体的には、ブーム旋回起伏操作レバー32aの操作に応じてブーム13の旋回動および起伏動を行わせ、ブーム伸縮屈伸操作レバー32bの操作に応じてブーム13の伸縮動およびアーム51の屈伸動を行わせ、オーガ操作レバー32cの操作に応じてオーガスクリュー25の回転動を行わせ、把持部縦首振り操作レバー32dの操作に応じて把持部81の縦首振り動を行わせ、把持部横首振り操作レバー32eの操作に応じて把持部81の横首振り動を行わせ、把持部回転操作レバー32fの操作に応じて把持部81の回転動を行わせ、把持部開閉操作レバー32gの操作に応じて把持部81の開閉動を行わせるように、各アクチュエータの駆動制御がなされる。
【0042】
ここで、旋回台12、ブーム13、オーガ装置20、把持装置50などの作動を行わせるために、
図4に示すように、操作装置31からの操作信号を受けて、旋回モータ14、伸縮シリンダ15、起伏シリンダ16、オーガモータ22、アームシリンダ55、縦首振りシリンダ62、横首振りシリンダ71、グリッパモータ79、グリッパシリンダ99(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも呼称する)の作動を制御するコントローラ100と、油圧アクチュエータを駆動するための作動油を供給する油圧ユニット110とを備える。なお、本実施形態では油圧シリンダ、油圧モータ等の油圧アクチュエータを用いているが、これに代えて電動アクチュエータ等を用いても良い。
【0043】
操作装置31の操作により出力された操作信号は、コントローラ100に入力される。コントローラ100は、その操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット110(制御バルブ112)に出力する。
【0044】
油圧ユニット110は、作動油を吐出する油圧ポンプ111と、油圧ポンプ111から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ112を有して構成される。油圧ポンプ111は、車両のエンジンからPTO機構(図示せず)を介して取り出した動力により駆動される。制御バルブ112は、旋回モータ14に対応する電磁比例制御バルブV1、伸縮シリンダ15の作動制御用の電磁比例制御バルブV2、起伏シリンダ16の作動制御用の電磁比例制御バルブV3、オーガモータ22の作動制御用の電磁比例制御バルブV4、アームシリンダ55の作動制御用の電磁比例制御バルブV5、縦首振りシリンダ62の作動制御用の電磁比例制御バルブV6、横首振りシリンダ71の作動制御用の電磁比例制御バルブV7、グリッパモータ79の作動制御用の電磁比例制御バルブV8、グリッパシリンダ99の作動制御用の電磁比例制御バルブV9を有している。制御バルブ112は、コントローラ100からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V9の開度を電磁駆動制御して、油圧ポンプ111から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの作動方向及び作動速度を制御する(旋回台12、ブーム13、オーガ装置20、把持装置50の作動方向及び作動速度を制御する)。
【0045】
作動制御部102は、各操作レバー32a~32gが操作されると、各操作レバー32a~32gの操作に応じて各油圧アクチュエータをそれぞれ独立して作動させる。具体的には、ブーム旋回起伏操作レバー32aが前方(操作しているオペレータを基準とした前後左右方向:以下同様)に傾倒操作されたときは、起伏シリンダ16を縮小動させてブーム13を倒伏させ、ブーム旋回起伏操作レバー32aが後方に傾倒操作されたときは、起伏シリンダ16を伸長動させてブーム13を起仰させる。ブーム伸縮屈伸操作レバー32bが前方に傾倒操作されたときは、伸縮シリンダ15を伸長動させてブーム13を伸長させ、ブーム伸縮屈伸操作レバー32bが後方に傾倒操作されたときは、伸縮シリンダ15を縮小動させてブーム13を縮小させる。ブーム旋回起伏操作レバー32aが左方に傾倒操作されたときは、旋回モータ14を正回転させてブーム13(旋回台12)を左回り方向に旋回動させ、ブーム旋回起伏操作レバー32aが右方に傾倒操作されたときは、旋回モータ14を逆回転させてブーム13(旋回台12)を右回り方向に旋回動させる。
【0046】
オーガ装置20を用いるときにおいて、オーガ操作レバー32cが前方に傾倒操作されたときは、オーガモータ22を逆回転させてオーガスクリュー25を逆転方向に回転させ、オーガ操作レバー32cが後方に傾倒操作されたときは、オーガモータ22を正回転させてオーガスクリュー25を正転方向に回転させる。
【0047】
把持装置50を用いるときにおいて、ブーム伸縮屈伸操作レバー32bが左方に傾倒操作されたときは、アーム51をブーム13の先端部に対して下方に屈伸動させ、ブーム伸縮屈伸操作レバー32bが右方に傾倒操作されたときは、アーム51をブーム13の先端部に対して上方に屈伸動させる。把持部縦首振操作レバー32dが前方に傾倒操作されたときは、縦首振りシリンダ62を伸長動させて把持部81を下方に揺動(縦首振り動)させ、把持部縦首振り操作レバー32dが後方に傾倒操作されたときは、縦首振りシリンダ62を縮小動させて把持部81を上方に揺動(縦首振り動)させる。把持部横首振り操作レバー32eが左方に傾倒操作されたときは、横首振りシリンダ71を伸長動させて把持部81を左方に揺動(横首振り動)させ、把持部縦首振り操作レバー32eが右方に傾倒操作されたときは、横首振りシリンダ71を縮小動させて把持部81を右方に揺動(横首振り動)させる。把持部回転操作レバー32fが前方に傾倒操作されたときは、グリッパモータ79を正回転させて把持部81を右回りに回転させ、把持部回転操作レバー32fが後方に傾倒操作されたときは、グリッパモータ79を逆転させて把持部81を左回りに回転させる。把持部開閉操作レバー32gが前方に傾倒操作されたときは、グリッパシリンダ99を縮小動させて把持部81を閉方向(対象物を把持する方向)に作動させ、把持部開閉操作レバー32gが後方に傾倒操作されたときは、グリッパシリンダ99を伸長動させて把持部81を開方向(対象物の把持を解放する方向)に作動させる。
【0048】
次に、本実施形態の把持式穴掘建柱車1を用いた電柱切断撤去作業について、
図5~
図12を参照して説明する。以下においては、建柱された状態の電柱Pの上部PUを電柱切断機160を用いて切断し、切断された上部側電柱PUを把持式穴掘建柱車1の把持装置50により把持して撤去する作業について順に説明する。
【0049】
まず、
図5を参照して、撤去対象となる電柱Pについて説明する。現在使用されている電柱Pとしては、その大きさが複数種類ある。例えば、全長A1が16m、14m、12mのものが現在一般的に用いられているが、ここでは、全長A1=16mの電柱Pが
図5のように地面に建柱されている場合を例にして説明する。建柱作業などに際して電柱Pを持ち上げるときに、その重心位置近傍を把持したり、ワイヤ掛けして支持したりすることが必要であることもあり、電柱Pにはその重心位置を示す重心位置マークPMが円周上の二箇所に設けられている。電柱Pは、下部が太く、上端に向かって緩やかに細くなる円錐形状をしており、重心位置は寸法上の中央位置に対して下方にズレた位置にある。例えば、全長A1=16mの電柱の場合、寸法上の中央位置CP(上端から全長A1の半分の長さA2=8mの位置)に対して、重心位置マークPMは中央位置CPから寸法A3だけ下方に位置する。この寸法A3は、例えば1.4mである。なお、以下の説明で用いるため、電柱Pの中央位置CPより上側の上部側電柱PUの寸法上の中央位置(上端からの距離A5=4m、中央位置からの距離A4=4mとなる位置)を上側中央位置UCPとして示している。
【0050】
以下、この電柱Pを撤去する作業について説明するが、この撤去作業は、電柱切断機160を用いて電柱Pを中央位置CPにおいて切断し、この切断した電柱Pの上部側電柱PUを把持装置50により把持して撤去するように行われる。この撤去作業は、把持装置50により電柱切断機160を吊り下げて行われるが、そのために、
図11に示す補助具150が用いられる。補助具150は、上部リング151と、上部リング151に繋がって延びる吊りワイヤ155と、吊りワイヤ155の下端に繋がって設けられた下部リング152と、下部リング152に繋がる3本の切断機支持ワイヤ156、157、158とから構成される。
【0051】
上部リング151は、把持装置50を構成するグリッパ80の下面に取り付けられた把持側フック65に係止されて使用される。吊りワイヤ155は、上部リング151との連結部155aと、下部リング152との連結部155bと、両連結部155a、155bを繋ぐ連結ワイヤ155cとから構成される。3本の切断機支持ワイヤ156、157、158は、下部リング152との連結部156a、157a、158aと、連結部156a、157a、158aにそれぞれ繋がる連結ワイヤ156b、157b、158bと、連結ワイヤ156b、157b、158bの下端にそれぞれ取り付けられた吊りフック156c、157c、158cとから
図11に示すように構成される。
【0052】
電柱Pを切断する電柱切断機160は、電柱Pを切断するカッター部165を備え、
図8に示すように、取付具168により電柱Pに着脱可能に取り付けられる構成である。また、その上面の3箇所に支持部161を有し、補助具150の3本の切断機支持ワイヤ156、157、158の吊りフック156c、157c、158cを支持部161に係止できるようになっている。このため、例えば
図5に示すように、把持装置50から補助具150を介して電柱切断機160を水平に吊り下げることができる。
【0053】
電柱切断撤去作業に際してはまず、補助具150の3本の切断機支持ワイヤ156、157、158の吊りフック156c、157c、158cを、電柱切断機160の3箇所の支持部161にそれぞれ係止する。さらに、
図5に示すように、把持装置50を構成するグリッパ80の下面に取り付けられた把持側フック65に上部リング151を係止する。この結果、電柱切断機160が補助具150を介して把持装置50により吊り下げられた状態となる(第1の作業ステップ)。
【0054】
このように吊り下げた状態において、グリッパ80(把持部81)の上下方向の中心位置から電柱切断機160のカッター165までの距離B1が、電柱Pの中央位置CPより上側の上部側電柱PUの上下寸法の半分の長さ(上端からの距離A5=4m、中央位置からの距離A4=4mの長さであり、全長A1の1/4の長さ)となるように、補助具150の上下長さB2(上部リング151の上端から吊りフック156c、157c、158cの下端までの長さ)を設定している。このことから分かるように、補助具150の上下長さB2に、グリッパ80(把持部81)の上下方向の中心位置から把持側フック65までの上下長さB4と、電柱切断機160における支持部161からカッター165までの上下長さB3とを加えた長さB1が、上部側電柱PUの上下寸法の半分の長さ(上端からの距離A5=4m、中央位置からの距離A4=4mの長さ)となる。
【0055】
次に、ブーム13の起伏、伸縮、旋回動制御を行って把持装置50を移動させ、補助具150を介して吊り下げた電柱切断機160のカッター165が、
図6に示すように、重心位置マークPMと対向するように位置させる(第2の作業ステップ)。上述のように電柱Pの外周表面に重心位置マークPMが設けられているので、カッター165が重心位置マークPMと横方向に対向するように、作業者がブーム13の起伏、伸縮、旋回動制御を行って目視で位置調整を行う。
【0056】
そして、ブーム13の起伏、伸縮、旋回動制御を行って把持装置50を上方に移動させ、補助具150を介して吊り下げた電柱切断機160のカッター165が、
図7に示すように、電柱Pの寸法上の中央位置CPと対向するように位置させる(第3の作業ステップ)。電柱Pの中央位置CPは重心位置マークPMの上方1.4mにあるので、作業者がブーム13の起伏、伸縮、旋回動制御を行って位置調整を行う。この位置調整の多少の誤差は許容できるが、スケールなどを用いて測定して位置合わせしても良い。
【0057】
上述のように、グリッパ80(把持部81)の上下方向の中心位置から電柱切断機160のカッター165までの距離B1が、電柱Pの中央位置CPより上側の上部側電柱PUの上下寸法の半分の長さ(上端からの距離A5=4m、中央位置からの距離A4=4mの長さ)となるように、補助具150の上下長さB2を設定しているので、電柱切断機160のカッター165が電柱Pの中央位置CPと対向するように位置させると、グリッパ80(把持部81)は上部側電柱PUの上側中央位置UCPと対向する。
【0058】
そして、補助具150により吊り下げた状態の電柱切断機160を、
図8に示すように、取付具168により電柱Pに取り付ける(第4の作業ステップ)。この作業は、例えば、図示しない高所作業車を用い、高所作業車の作業台に搭乗した作業者により行われる。電柱切断機160が補助具150により吊り下げられた状態で、電柱切断機160のカッター165が、
図7に示すように、電柱Pの寸法上の中央位置CPと対向するように位置しているため、この位置で取付具168により電柱Pに取り付けられた電柱切断機160のカッター165は、電柱Pの中央位置CPと対向し、この中央位置CPで電柱Pを切断するようになる。
【0059】
次に、把持装置50の把持側フック65から補助具150を取り外す(第5の作業ステップ)。この作業は、ブーム13の起伏、伸縮、旋回動制御を行って把持装置50を少しだけ下方に移動させ、上部リング151を把持側フック65から外して行う。なお、把持側フック65から取り外した補助具150は電柱切断機160に係止したままとしても良く、
図9に示すように、電柱切断機160から取り外しても良い。
【0060】
そして、ブーム13の起伏、伸縮、旋回動制御を行って把持装置50を電柱Pの方に近づけるように横移動させ、
図9に示すように、グリッパ80の把持部81により電柱Pを把持する(第6の作業ステップ)。上述のように、グリッパ80(把持部81)は上部側電柱PUの上側中央位置UCPと対向しており、このまま横方向移動して電柱Pを把持するため、グリッパ80の把持部81は上側中央位置UCPにおいて上部側電柱PUを把持する。
【0061】
なお、上記のように補助具150を取り外した状態の把持側フック65に、
図9に示すように、ナイロンスリングNS(ナイロン製のロープ)を上部側電柱PUに掛け回して係止する(第7の作業ステップ)。把持部81による電柱Pの把持は把持部81と電柱Pの摩擦力により行う構成であるため、このときの把持力が低下すると摩擦力が小さくなって電柱Pが下方に移動するなど把持が不十分となるおそれがある。このため、把持側フック65に、電柱Pにかけ回したナイロンスリングNSを掛け、把持部81の把持力が低下しても電柱の保持を確実に行えるようにして、二重安全性を担保している。
【0062】
次に、電柱切断機160のカッター165により電柱Pを切断する(第8の作業ステップ)。上述のように、取付具168により電柱Pに取り付けられた電柱切断機160のカッター165は、電柱Pの中央位置CPと対向しており、この中央位置CPで電柱Pを切断することになる。なお、カッター165は取付具168より上に位置しており、電柱切断機160は切断された電柱の切断位置より下側において建柱された電柱に取り付けられたままの状態で残る。この電柱切断機160は後で取り外される。
【0063】
この結果、電柱Pは中央位置CPで上下に二分割されるので、
図10に示すように、グリッパ80の把持部81が上側中央位置UCPにおいて上部側電柱PUを把持したまま、把持ブーム13の起伏、伸縮、旋回動制御を行って、上部側電柱PUを所望の場所に搬送し、上部側電柱PUの撤去が完了する(第9の作業ステップ)。上述のように電柱Pは上側が細くなる円錐形状であるため、上部側電柱PUの重心位置は上側中央位置UCPより少し下側に位置する。このため、把持部81は、上部側電柱PUを、その重心位置より少し上側で把持することになり、上部側電柱PUを直立状態で把持するときに安定して把持することができる。
【0064】
この後、電柱切断機160を電柱Pから取り外し、残された建柱状態の電柱P(下半分の電柱)は、引抜機などにより引き抜いて撤去される。この撤去作業についての説明は省略する。
【0065】
以上においては、補助具150は、16mの長さの電柱Pを、上下方向の中央位置CPにおいて切断するようにその寸法を設定しているが、中央位置CPより下側もしくは上側において切断し、切断された上部側電柱の中央部を把持するように補助具150の寸法を設定しても良い。また、以上においては、16mの長さの電柱Pの切断撤去する場合を説明したが、14mや12mの長さの電柱Pについても同様であり、補助具150の長さを電柱の長さに合わせて設定すれば良い。
【0066】
補助具150を電柱の長さに対応して複数種類用いるという代わりに、16m、14m、12mの全てに対応可能とするように、
図12に示すような補助具250を用いることもある。この補助具250は、第1上部リング251、第1吊りワイヤ256、第2上部リング252、第2吊りワイヤ257、第3上部リング253、第3吊りワイヤ258、下部リング254を有し、下部リング254には、3本の切断機支持ワイヤ156、157、158が繋がる。下部リング254に3本の切断機支持ワイヤ156、157、158が繋がる構成は、
図11の補助具150と同一である。
【0067】
この補助具250においては、第1上部リング251の上端から吊りフック156c、157c、158cの下端までの長さC1が16mの長さの電柱Pに用いる長さに設定される。すなわち、長さC1は、上述した補助具150の上下長さB2(上部リング151の上端から吊りフック156c、157c、158cの下端までの長さ)と同一長さとなる。第2上部リング252の上端から吊りフック156c、157c、158cの下端までの長さC2が14mの長さの電柱Pに用いる長さに設定され、第3上部リング253の上端から吊りフック156c、157c、158cの下端までの長さC3が12mの長さの電柱Pに用いる長さに設定される。この補助具250は、16mの長さの電柱Pに用いるときには第1上部リング251を把持装置50の把持側フック65に係止して用い、14mの長さの電柱Pに用いるときには第2上部リング252を把持装置50の把持側フック65に係止して用い、12mの長さの電柱Pに用いるときには第3上部リング253を把持装置50の把持側フック65に係止して用いる。本発明では電柱を2分割する内容について説明したが、電柱を3分割するような補助具長さとすれば、電柱を3分割することも可能である。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0069】
上記実施形態では、車体2上の操作席30に操作装置31が設けられているが、この構成に限定されるものではなく、例えば、操作装置31を有線式または無線式のリモコン操作装置(可搬型の操作装置)により構成してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、エンジンの動力をPTO機構(パワーテイクオフ機構)によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の穴堀建柱車を例示したが、この構成に限定されるものではなく、電気駆動型(バッテリ駆動型)の穴掘建柱車や、その両者を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の穴掘建柱車であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 把持式穴掘建柱車 2 車体
12 旋回台 13 ブーム
20 オーガ装置 31 操作装置
50 把持装置 51 アーム
55 アームシリンダ 60 第1ジョイント部材
65 把持側フック 62 縦首振りシリンダ
70 第2ジョイント部材 71 横首振りシリンダ
80 グリッパ 81 把持部
100 コントローラ 101 位置算出部
102 作動制御部 103 オーガ傾斜判定部
104 把持判定部 125 把持部荷重検出器
126 グリッパシリンダ圧力検出器 150 補助具
151 上部リング 152 下部リング
155 吊りワイヤ 156、157、158 切断機支持ワイヤ
160 電柱切断機 161 支持部
165 カッター部 168 取付具
250 補助具 P 電柱
PM 重心位置マーク PU 上部側電柱
CP 中央位置 UCP 上部中央位置
NS ナイロンスリング