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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168008
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20241128BHJP
   H01L 33/54 20100101ALI20241128BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20241128BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/54
H01L23/12 J
H01L23/12 Q
H01L23/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084381
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝明
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA42
5F142AA58
5F142BA32
5F142CA02
5F142CD02
5F142CD32
5F142CF03
5F142CG04
5F142CG23
5F142FA03
5F142FA16
5F142FA42
(57)【要約】
【課題】金属コアを挿入した繊維強化樹脂基板を用いた半導体発光装置であって、繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じるのを防止する。
【解決手段】本発明の半導体発光装置は、基板と、基板上に搭載された半導体発光素子と、半導体発光素子の周囲を充填するように基板上に配置された樹脂製レンズとを有する。基板は、板状の繊維強化樹脂製基材と、基材を厚さ方向に貫通する貫通孔と、貫通孔内に配置された金属コアと、金属コアと貫通孔の内壁との間を充填する接着用樹脂と、金属コアの上面を覆う金属パターンとを含む。半導体発光素子は、金属パターンの金属コアの直上領域にダイボンディングされている。基板の上面には、貫通孔の開口の縁と接着用樹脂との境界線を覆う被覆層が配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、基板上に搭載された半導体発光素子と、前記半導体発光素子の周囲を充填するように前記基板上に配置された樹脂製レンズとを有し、
前記基板は、板状の繊維強化樹脂製基材と、前記基材を厚さ方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔内に配置された金属コアと、前記金属コアと前記貫通孔の内壁との間を充填する接着用樹脂と、前記金属コアの上面を覆う金属パターンとを含み、
前記半導体発光素子は、前記金属パターンの前記金属コアの直上領域にダイボンディングされ、
前記基板の上面には、前記貫通孔の開口の縁と前記接着用樹脂との境界線を覆う被覆層が配置されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記金属パターンの縁は、前記貫通孔の開口の縁と前記接着用樹脂との境界線よりも外側まで延伸され、前記金属パターンは、前記境界線を覆う前記被覆層を兼用していることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記被覆層は、前記境界線に沿って配置された環状パターンであることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記金属コアの上面形状は四角形であり、前記貫通孔の開口は、円形であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項5】
請求項2に記載の半導体発光装置であって、前記金属パターンの上面形状は、円形であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記繊維強化樹脂製基材は、ガラス繊維強化エポキシ樹脂基板であり、前記接着用樹脂は、エポキシ樹脂であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記金属パターンは、銅であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体発光装置であって、前記金属パターンの表面には、金メッキが施されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項9】
請求項3に記載の半導体発光装置であって、前記被覆層は、金属、樹脂、および、セラミック粒子を含有する樹脂のうちいずれかによって形成されていることを特徴とする半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線が設けられた樹脂基板上に半導体発光素子をダイボンティングした半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂基板上に配線パターンを形成し、その上に半導体発光素子(LED素子)をダイボンディングし、LED素子の周囲をレンズ形状の樹脂で充填した半導体発光装置が例えば特許文献1等により知られている。
【0003】
また、半導体発光装置のLED素子の熱を、半導体発光装置が実装される実装基板に対して効率よく伝導して放熱するために、LED素子を搭載する基板として、銅インレイ基板が用いられている。銅インレイ基板は、LED素子がダイボンティングされる領域の基板に、厚さ方向に貫通孔が設けられ、銅コア(銅インレイ)を挿入して固定した構造(非特許文献1)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-261041号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】https://www.showanet.jp/product/5/#sec5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
繊維強化樹脂基板の場合、繊維強化樹脂基板に空けられた貫通孔に銅コア(銅インレイ)を挿入した後、銅コアの周囲にプリプレグ(未硬化の接着用樹脂材料)を注入し、その後プリプレグを硬化させ、銅コアと繊維強化樹脂金とを接着用樹脂材料によって接着した構造となる。
【0007】
このような構造の繊維強化樹脂基板を用いて半導体発光装置を製造する場合、銅コア上に、AuSnはんだ等のダイアタッチ材を塗布してLED素子を接着固定する工程(素子接着固定工程)において、ダイアタッチ材の熱によって繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じることがあることがある。
【0008】
また、LED素子を接着固定した基板上にインサート成形によって、樹脂によりレンズを成形する工程(レンズ成形工程)においても、レンズ樹脂をインサートする前段階の予備加熱の際に、その熱によって繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じることがある。
【0009】
繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じる原因の一つとしては、繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との熱膨張係数の差が考えられる。また、別の原因として、繊維強化樹脂基板に含有されている水分が、熱により気化して、強化繊維に沿って繊維強化樹脂基板に設けられた貫通孔の壁面に到達し、接着用樹脂材料と境界から外部に抜ける際に剥離を生じさせている可能性も考えられる。
【0010】
繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じた場合、レンズ成形工程において、レンズ樹脂をインサート成形する段階で、硬化していないレンズ樹脂が、繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料間の剥離部に進入し、基板裏面へ漏れる。基板の裏面にレンズ樹脂が漏れた場合、所定の形状のレンズが成形されないだけでなく、基板裏面の実装電極パターンに樹脂が付着し、実装時の妨げになる、等の問題が発生する。
【0011】
本発明の目的は、金属コアを挿入した繊維強化樹脂基板を用いた半導体発光装置であって、繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の半導体発光装置は、基板と、基板上に搭載された半導体発光素子と、半導体発光素子の周囲を充填するように基板上に配置された樹脂製レンズとを有する。基板は、板状の繊維強化樹脂製基材と、基材を厚さ方向に貫通する貫通孔と、貫通孔内に配置された金属コアと、金属コアと貫通孔の内壁との間を充填する接着用樹脂と、金属コアの上面を覆う金属パターンとを含む。半導体発光素子は、金属パターンの金属コアの直上領域にダイボンディングされている。基板の上面には、貫通孔の開口の縁と接着用樹脂との境界線を覆う被覆層が配置されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板上面の繊維強化樹脂基材と接着用樹脂材料との境界線を被覆層が覆っているため、繊維強化樹脂基材と接着用樹脂材料との境界で剥離が生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)および(b)は、実施形態1の半導体発光装置1の断面図および下面図である。
図2】実施形態1の半導体発光装置1の斜視図である。
図3】(a)および(b)は、実施形態1の半導体発光装置1からレンズ30を取り除いた状態の上面図およびA-A断面図。
図4】(a)~(g)は、実施形態1の半導体発光装置1の製造工程を示すA-A断面図。
図5】(h)~(j)は、実施形態1の半導体発光装置1の製造工程を示すA-A断面図。
図6】(k)~(l)は、実施形態1の半導体発光装置1の製造工程を示すA-A断面図。
図7】(m)~(n)は、実施形態1の半導体発光装置1の製造工程を示すA-A断面図。
図8】(a)および(b)は、実施形態2の半導体発光装置からレンズ30を取り除いた状態の上面図およびB-B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態の半導体発光装置について以下に説明する。
【0016】
<<実施形態1>>
実施形態1の半導体発光装置1の構成について図1図3を用いて説明する。図1(a)、(b)は、半導体発光装置1の断面図および下面図である。図2は、半導体発光装置1の斜視図である。図3(a)、(b)は、半導体発光装置1から樹脂製レンズ30を取り除いた状態の上面図およびA-A断面図である。なお、図3(a)においては、金属で形成されたパターンの上面を明確にするため、ハッチングを付している。
【0017】
図1図3に示すように、半導体発光装置1は、基板10と、基板10上に搭載された半導体発光素子20と、樹脂製のレンズ30とを備えて構成される。樹脂製のレンズは、半導体発光素子20の周囲を覆い封止するように基板10上に配置されている。
【0018】
レンズ30は、周囲に鍔を備えたドーム状であり、半導体発光素子20が発する光に対して透明な、例えばシリコーン樹脂によって形成されている。鍔の外形は、基板10の外形にほぼ一致した四角形である。レンズ30は半導体発光素子20の出射する光を透光する材料ならよく、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等を用いることもできる。
【0019】
基板10は、板状の繊維強化樹脂製の基材11と、金属コア12と、接着用樹脂13とを含む。基材11には、厚さ方向に貫通する貫通孔11aが設けられ、貫通孔11aの中央に柱状の金属コア12が配置されている。ここでは、金属コア12の上面形状は四角形であり、貫通孔11aの開口の形状は、円形である。
【0020】
接着用樹脂13は、金属コア12と貫通孔11aの内壁との間を充填している。
【0021】
金属コア12の材質は、例えば銅である。繊維強化樹脂製基材11は、例えばガラス繊維強化エポキシ樹脂(FR4:Flame Retardant Type 4)を用い、接着用樹脂13は、例えばエポキシ樹脂を用いる。銅の熱膨張係数は、17.7×10-6/℃、ガラス繊維強化エポキシ樹脂(FR4)基材の主平面方向の熱膨張係数は、14.0×10-6/℃、エポキシ樹脂の熱膨張係数は、4.5~6.5×10-5/℃である。
【0022】
基板10の上面には、金属コア12の上面を覆う金属パターン50が配置されている。半導体発光素子20は、金属パターン50の金属コア12の直上領域にダイアタッチ材等の接合層21を介してダイボンディングされている。金属パターン50は、例えば、銅(Cu)層であり、表面にニッケル(Ni)又は/及び金(Au)メッキ等の耐腐食性または高反射率の金属メッキが施されていてもよい。接合層21としては、例えば、導電性の金錫合金(Au-Sn)層を用いる。
【0023】
基板10の上面には、貫通孔11aの開口の縁と接着用樹脂13との境界線18を覆う被覆層が配置されている。本実施形態では、金属パターン50が、境界線18を覆い、被覆層を兼用している。
【0024】
具体的には、金属パターン50の上面形状は、円形であり、金属パターン50の縁が、貫通孔11aの開口の縁と接着用樹脂13との境界線18よりも外側まで延伸され、これにより金属パターン50が境界線18を覆っている。
【0025】
また、円形の金属パターン50の周囲には、円環状の配線パターン60が配置されている。円環状の配線パターン60の内周と金属パターン50の縁との間に間隙が設けられている。
【0026】
円環状の配線パターン60の外周には、180度の間隔を開けて突起状の2つのボンディングパッド63が設けられている。2つのボンディングパッド63は、2本のボンディングワイヤ40により半導体発光素子20の同一極性の上面電極にそれぞれ接続されている。
【0027】
また、円環状の配線パターン60の外周の1箇所には、基材11を貫通する導電ビア64が配置され、導電ビア64の上面は、円環状の配線パターン60に電気的に接続されている。
【0028】
導電ビア64の下面は、基板10の裏面に設けられた実装電極(カソード)93に電気的に接続されている。
【0029】
また、基材11の上面には、基材11の4辺のうち対向する2辺に近傍に、レンズ30形成時の成形金型を密着させるために用いる帯状の金属パターン70が配置されている。
【0030】
一方、基板10の裏面には、互いに連結された実装電極(アノード)91,92が設けられている。実装電極(アノード)92は、金属コア12の下面と接し、両者は電気的に導通している。
【0031】
これにより、実装電極(カソード)93と、実装電極(アノード)91との間に電流を供給することにより、半導体発光素子20に電流を供給することができ、半導体発光素子20を発光させることができる。半導体発光素子20が発した光は、レンズ30により集光されて外部に出射される。
【0032】
本実施形態1では、金属パターン50が貫通孔11aの開口の縁と接着用樹脂13との境界線18を覆って、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11の両者の上面と密着しているため、製造工程において、熱が接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11を加わった場合でも、接着用樹脂13が貫通孔11aの開口の内壁から剥離するのを抑制することができる。
【0033】
特に金属パターン50を銅で形成した場合、銅は伸びがよいという機械的性質(展延性)を有するため、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11の境界面で破断せずに両者を繋ぐことがき、境界面での剥離を防止することができる。また、金属パターン50の破断を防止できる。
【0034】
これにより、半導体発光装置1の製造工程において、硬化していない状態のレンズ30の樹脂が、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11の境界面を通過することがなく、硬化していない樹脂が基板10の裏面に達して実装電極91~93に付着するのを防止することができる。
【0035】
また、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11の境界面で剥離が生じた場合であっても、基板10の上面の接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11の境界線18上を金属パターン50が覆っているため、硬化していないレンズ30の樹脂が、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11の境界面に入るのを金属パターン50が防止する。
【0036】
また、本実施形態では、貫通孔11aを円形にしたことにより、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11の境界面において、応力を等価に分散できるので剥離を防止できる。なお、金属コア12と接着用樹脂13の境界面は、金属コア12の熱膨張係数より接着用樹脂13熱膨張係数が大きいので剥離は抑制される。
【0037】
次に、本実施形態の半導体発光装置の製造工程について、図4図7を用いて以下説明する。
<ステップS1:コア形成工程>
まず、金属コア12を形成するため、図4(a)のように、金属コア12の厚さと同等の厚さの銅基材112を用意し、上面に支持フィルム(樹脂フィルム)113を貼る。
【0038】
銅基材112の下面に金属コア12となる部分を覆うマスクを設けて、銅基材112が露出した部分をエッチングで除去し、図4(b)のように支持フィルム113で支持された金属コア12を作製する。
【0039】
<ステップS2:穴あけ工程>
一方、基材110として成型済のガラス繊維強化エポキシ樹脂基材を用意する(図4(c))。基材110は、幅が図1図3の半導体発光装置の基材11と同等の幅であり、長手方向に複数の基材11が連続した形状である。基材110の下面に被覆フィルム(樹脂フィルム)114を貼る(図4(d))。
【0040】
基材110には、一単位の基材11の領域ごとに、金属コア12を挿入するための貫通孔11aと、導電ビア64を形成するための貫通孔(不図示)を型抜き又は切削加工により形成する。
【0041】
<ステップS3:重ね合せ工程>
図4(e)のように、ステップS1で作製した金属コア12を、ステップS2で作製した一単位の基材11ごとの貫通孔11aの中心に、位置合わせして挿入する。
【0042】
<ステップS4:プリプレグ貼り合せ工程>
図4(f)のように、ステップS3で金属コア12が挿入された貫通孔11aの下面を覆うように、基材110の下面の被覆フィルム114の下に、硬化前のエポキシ樹脂製の層(プリプレグ層115)を貼り合わせる。
【0043】
<ステップS5:圧入・硬化工程>
図4(g)のように、プレス機で加圧して、プリプレグ層115を、基材110の貫通孔11aの内壁と金属コア12の外壁との間隙116に圧入した後、加熱してプリプレグ層115を硬化させる。これにより、金属コア12と基材110の内壁とをエポキシ樹脂製の接着用樹脂13により接着する。
【0044】
<ステップS6:フィルム除去工程>
図5(h)のように、金属コア12の支持フィルム113を剥離するとともに、基材110の下面の被覆フィルム114をその下面の硬化したプリプレグ層115と共に剥離し、除去する。
【0045】
<ステップS7:メッキ工程>
図5(i)のように、無電解メッキおよび電界メッキを行い、基材110の上面と下面にそれぞれ銅層150、190を形成する。同時に、基材110の導電ビア用の貫通孔に銅層が充填され、導電ビア64が形成される。
【0046】
<ステップS8:配線電極形成工程>
図5(j)のように、基材110の上面と下面の銅層150、190の表面にそれぞれマスクを形成し、不要部をエッチングして除去する。
【0047】
これにより、基材110の上面に、一単位の基材11の領域ごとに金属パターン50と、円環状の配線パターン60と、一対の帯状の金属パターン70が形成されるとともに、基材11の裏面には、実装電極91,92,93が形成される。帯状の金属パターン70は、基材110上の複数単位の基材11にわたって連続している。
【0048】
金属パターン50は、金属コア12の上面を覆うとともに、貫通孔11aの開口の縁と接着用樹脂13との境界線18も覆うように形成する。
【0049】
その後、金属パターン50、配線パターン69、金属パターン70、および、実装電極91,92,93の表面に、Ni及びAuをこの順にメッキを施す。
【0050】
<ステップS9:素子実装工程>
(ダイボンディング)
金属パターン50上に、ダイアタッチ材としてAu-Snゾルダーペーストはんだを塗布する。
【0051】
ゾルダーペーストはんだ上に半導体発光素子20をマウントする。
【0052】
リフロー炉で所定の温度及び時間(例えば310℃で40秒)で加熱してAu-Snを溶融及び固化させて接合層21を形成し、接合層21により半導体発光素子20を金属パターン50に接合する(図6(k)参照)。
【0053】
(ワイヤボンディング)
また、図6(k)のように、半導体発光素子20の2つの上面電極(不図示)と対応する配線パターン60の2つのボンディングパッド63とをボンディングワイヤ(例えば、金ワイヤ)40で接続する。
【0054】
<ステップS10:金型セット工程>
図6(l)のように、半導体発光素子20を実装した基板10を樹脂成型機(インサート成形機)の金型160にセットする。金型160内の空間は、基材110の前後方向については連通している。金型160の幅方向の両端の縁を帯状の金属パターン70に密着させる。
【0055】
金型160を145℃に加熱して基板10内に含まれているガス成分を脱ガスする。
【0056】
<ステップS11:レンズ形成工程>
図7(m)のように、金型160の空間部にレンズ30用の樹脂130を注入し、例えば120秒(キュアタイム)保持して硬化する。
【0057】
このとき、金型160および樹脂130の熱が、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11に伝導するが、基材11の上面の接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11との境界線18は、金属パターン50により覆われているため、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11との境界面で剥離は生じない。
【0058】
よって、硬化前の樹脂130は液体状であるが、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11の境界面では、入り込まず、基材11の裏面にも到達しない。
【0059】
また、万一、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11との境界面において剥離が生じた場合であっても、基材11の上面の接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11との境界線18は、金属パターン50により覆われているため、硬化前の樹脂130が、剥離した接着用樹脂13と基材11との境界面に入り込むことはない。
【0060】
樹脂材料の注入後、例えば150℃2時間(アフターキュア)加熱してレンズ用樹脂130を完全硬化させる。これにより、半導体発光素子20の周囲の空間を充填し、かつ、表面が所望のレンズ形状のレンズ30をトランスファーモールドにより形成することができる。
【0061】
なお、トランスファーモールドに限らず、圧縮成形や、射出成形によりレンズ30を成形することも可能である。
【0062】
<ステップS12:個片化工程>
図7(n)のように、基材11およびレンズ30を、半導体発光装置1の各単位の境界線においてダイシングブレード140で切断し、個片化する。これにより、半導体発光装置1を製造することができる。
【0063】
このように、実施形態1の半導体発光装置1は、繊維強化樹脂製基材11と接着用樹脂13との境界線を金属パターン50が覆っているため、繊維強化樹脂基板と接着用樹脂材料との境界面で剥離が生じるのを防止することができる。また、万一、剥離が生じた場合でも、剥離した境界面の上は、金属パターン50で覆われている。
【0064】
レンズ30の形成工程において、繊維強化樹脂製基材11と接着用樹脂13との境界面に未硬化の樹脂が入り込むことがなく、未硬化の樹脂が基材11の裏面に達することもない。
【0065】
よって、設計通りの形状のレンズ30を成形することができる。また、基板10の裏面の実装電極91,92,93に樹脂が付着することがなく、半導体発光装置1を実装基板上に実装する際の歩留まりを向上させることができる。
【0066】
<<比較例>>
比較例として、金属パターン50を、接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11との境界線18を覆わない形状として、他の条件は同様にして、半導体発光装置を製造したところ、基板10の下面に樹脂が漏れていることが確認された。
【0067】
また、比較例の接着用樹脂13と繊維強化樹脂製の基材11との境界面を確認したところ、ステップS9の素子実装工程の後に、境界面の剥離が確認された。
【0068】
<<実施形態2>>
実施形態2の半導体発光装置について図8(a),(b)を用いて説明する。図8(a)、(b)は、実施形態2の半導体発光装置から樹脂製レンズ30を取り除いた状態の上面図および断面図である。
【0069】
図8(a)のように、実施形態2の半導体発光装置は、半導体発光素子20が搭載される金属パターン250を備えている。金属パターン250は、形状が、角を丸くした四角形であり、金属パターン250は、基材11と接着用樹脂13との境界線18を覆っていない。この点において、金属パターン250は、実施形態1の金属パターン50とは異なっている。
【0070】
また、実施形態2では、基板10の基材11と接着用樹脂13との境界線18を覆う被覆層として、境界線18に沿うように所定の幅の環状パターン80が配置されている。
【0071】
環状パターン80は、金属、樹脂、およびセラミック粒子を含有する樹脂のうちいずれかによって形成されている。ただし、図8(a)、(b)のように環状パターン80によって、円環状の配線パターン60と、金属パターン250が電気的に導通するのを防ぐため、環状パターン80が両者に接触する位置関係である場合には、非導電性の材料(樹脂、ガラス繊維やセラミック粒子を含有する樹脂)によって形成する。
【0072】
図8(a)、(b)に示した例では、円環状の配線パターン60の内周61に180度の間隔を開けて突起状の2つのボンディングパッド63を設けている。このため、境界線18を覆う環状パターン80が、ボンディングパッド63と金属パターン250の両者に接している。よって、環状パターン80は、非導電性の材料により形成されている。
【0073】
なお、環状パターン80を形成する樹脂は、どのような樹脂であってもよい。例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂などを用いることができる。また、樹脂にフィラー(添加物)を添加する場合、AlやTiOの数μm~数十μmのセラミック粒子又はガラス短繊維を好適に用いることができる。フィラーを添加することで樹脂の破断強度を向上できる。
【0074】
環状パターン80を樹脂で形成する場合、スクリーン印刷により、環状パターン80の形状に未硬化の樹脂を塗布する。その後、加熱して樹脂を硬化させることにより環状パターン80を形成することができる。
【0075】
また、環状パターン80を金属で形成する場合、材質としては、銅が好適であるが。なお、銅以外の金属を用いることもできる。
【0076】
金属製の環状パターン80を形成する場合、実施形態1の図5(i),(k)のステップS7,S8と同様に形成すればよい。
【0077】
実施形態2の半導体発光装置のレンズ30等の他の構成は、実施形態1の半導体発光装置と同様であるので、説明を省略する。
【0078】
実施形態2の半導体発光装置は、基材11と接着用樹脂13との境界線18が環状パターン80で覆われているため、実施形態1と同様に、基材11と接着用樹脂13との境界面の剥離を防止できる。よって、レンズ30の形成工程において、繊維強化樹脂製基材11と接着用樹脂13との境界面に未硬化の樹脂が入り込むことがなく、未硬化の樹脂が基材11の裏面に達することもない。
【0079】
したがって、設計通りの形状のレンズ30を成形することができる。また、基板10の裏面の実装電極91,92,93に樹脂が付着することがなく、半導体発光装置1を実装基板上に実装する際の歩留まりを向上させることができる。
【0080】
なお、上述してきた実施形態1,2では、半導体発光素子20の周囲を充填する樹脂の表面をレンズ30の形状にしているが、必ずしもレンズ30の形状でなくてもよく、半導体発光素子20の周囲を封止する構造であればよい。
【0081】
上述してきた実施形態1、2の半導体発光装置は、一般用の光源、分析機等の観測用光源等に用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 半導体発光装置
10 基板
11 基材
11a 貫通孔
12 金属コア
13 接着用樹脂
18 境界線
20 半導体発光素子
21 接合層
30 レンズ
40 ボンディングワイヤ
50 金属パターン
60 配線パターン
61 内周
63 ボンディングパッド
64 導電ビア
69 配線パターン
70 金属パターン
80 環状パターン
91 実装電極(アノード)
92 実装電極(アノード)
93 実装電極(カソード)
110 基材
112 銅基材
113 支持フィルム
114 被覆フィルム
115 プリプレグ層
116 間隙
130 樹脂
150 銅層
160 金型
250 金属パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8