(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168009
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】放射線撮影システム、放射線撮影システムの作動方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20241128BHJP
A61B 6/10 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61B6/00 320R
A61B6/10 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084385
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】石成 裕
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA34
4C093CA35
4C093FA18
4C093FA59
(57)【要約】
【課題】電波干渉による送信遅延のリスクを低減し、無効曝射のリスクを低減できる放射線撮影システムを提供する。
【解決手段】放射線を曝射する放射線発生装置と、放射線発生装置を制御する制御装置と、曝射された放射線を検知し、放射線画像を生成する放射線撮影装置とを備え、放射線撮影装置は、放射線の曝射停止に関わる信号を無線送信する第一の通信モードと、放射線の曝射停止に関与しない少なくとも一つの信号を無線送信する第二の通信モードを有し、第一の通信モードでの通信は、第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信を含む、放射線撮影システム。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を曝射する放射線発生装置と、
前記放射線発生装置を制御する制御装置と、
前記曝射された放射線を検知し、放射線画像を生成する放射線撮影装置と、
を備え、
前記放射線撮影装置は、前記放射線の曝射停止に関わる信号を無線送信する第一の通信モードと、前記放射線の曝射停止に関与しない少なくとも一つの信号を無線送信する第二の通信モードを有し、
前記第一の通信モードでの通信は、前記第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信を含む、放射線撮影システム。
【請求項2】
前記放射線撮影装置は、
第一のアンテナと第二のアンテナとを有し、
前記第一のアンテナを用いて前記第一の通信モードでの通信を行い、
前記第二のアンテナを用いて前記第二の通信モードでの通信を行う、請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
前記放射線撮影装置は、前記第一のアンテナ及び前記第二のアンテナを用いて前記第一の通信モードでの通信を行う、請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
前記第一の通信モードでの通信は、前記第一のアンテナを用いた、前記第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信と、前記第二のアンテナを用いた、前記第二の通信モードでの通信と同等の電力での通信とを含む、請求項3に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
前記放射線撮影装置は、前記第一の通信モードにおいて、前記第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信を行った後に、前記第二の通信モードと同等の電力での通信を行う、請求項4に記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
前記放射線撮影装置は、前記第一の通信モードにおいて、前記第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信と前記第二の通信モードと同等の電力での通信とを同時に行う、請求項4に記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記放射線撮影装置は、前記第一の通信モードにおいて、前記第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信と前記第二の通信モードと同等の電力での通信とを交互に行う、請求項4に記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
前記放射線撮影システムは、自動露出制御により放射線撮影を制御可能であり、
前記放射線撮影装置は、前記検知した放射線の線量が閾値に達したか否かを判定する判定部を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項9】
前記放射線撮影システムは、自動露出制御により放射線撮影を制御可能であり、
前記制御装置は、前記放射線撮影装置が検知した放射線の線量が閾値に達したか否かを判定する判定部を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項10】
前記第一の通信モードの通信と、前記第二の通信モードは同一の通信方式である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項11】
前記第一の通信モードの通信方式がIEEE802.11規格での通信を含む、請求項10に記載の放射線撮影システム。
【請求項12】
前記第一の通信モードでの通信は第一の通信周波数帯域での通信を含み、
前記第二の通信モードでの通信は前記第一の通信周波数帯域とは異なる第二の通信周波数帯域での通信を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項13】
前記第一の通信周波数帯域は2.4GHz帯の通信周波数帯域を含む、請求項12に記載の放射線撮影システム。
【請求項14】
放射線を曝射する放射線発生装置と、前記放射線発生装置を制御する制御装置と、前記曝射された放射線を検知し、放射線画像を生成する放射線撮影装置と、を備える放射線撮影システムの作動方法であって、
前記放射線撮影装置により、第一の通信モードで前記放射線の曝射停止に関わる信号を無線送信することと、
前記放射線撮影装置により、第二の通信モードで前記放射線の曝射停止に関与しない少なくとも一つの信号を無線送信することと、
を含み、
前記第一の通信モードでの通信は、前記第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信を含む、放射線撮影システムの作動方法。
【請求項15】
コンピュータによって実行されると、該コンピュータに請求項14に記載の放射線撮影システムの作動方法の各工程を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影システム、放射線撮影システムの作動方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体にX線を照射し、透過したX線強度分布を画像化するX線撮影システムが医療分野などで広く使われている。近年では、X線撮影システムは、X線を画像信号へ変換するセンサ部がバッテリで駆動し、無線で画像信号を通信する可搬型X線センサと組み合わせて使用されることもある。また、照射中のX線量を測定し、X線量が所定値に達したらX線の照射を停止させる、自動露出制御(AEC:Auto Exposure Control)機能を有するX線撮影システムも知られている。さらに、これらを組み合わせ、X線量が所定値に達したら無線通信しX線の照射を停止させる、AEC機能を有する可搬型X線センサも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信を用いてAEC機能を実現する場合、X線の曝射停止信号が遅延すると、所望のX線量でX線曝射を停止することができず、所望の画像が得られなくなり、無効曝射となってしまう場合がある。これに対し、特許文献1では、自動露出制御に関わるAEC信号を高速通信で通信することで遅延を減少させようとする技術が開示されている。
【0005】
一方で、無線通信を行う装置の近隣に別の無線装置があると、電波干渉を起こしてしまい、送信遅延が生じる可能性がある。ここで、高出力(高電力)で無線通信を行う場合には電波干渉による送信遅延のリスクが高くなることがある。一般に高速通信の無線通信は高出力での無線通信となるため、曝射停止信号を高速通信等により高出力で無線通信する場合には、電波干渉による送信遅延のリスクが高くなってしまうことがある。
【0006】
そこで、本開示の一実施態様は、電波干渉による送信遅延のリスクを低減し、無効曝射のリスクを低減できる放射線撮影システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施態様に係るX線撮影システムは、放射線を曝射する放射線発生装置と、前記放射線発生装置を制御する制御装置と、前記曝射された放射線を検知し、放射線画像を生成する放射線撮影装置とを備え、前記放射線撮影装置は、前記放射線の曝射停止に関わる信号を無線送信する第一の通信モードと、前記放射線の曝射停止に関与しない少なくとも一つの信号を無線送信する第二の通信モードを有し、前記第一の通信モードでの通信は、前記第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施態様によれば、電波干渉による送信遅延のリスクを低減し、無効曝射のリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一の実施形態に係るX線撮影システムの概要図である。
【
図2】第一の実施形態に係るセンサの概略図である。
【
図3】第一の実施形態に係るX線撮影に関わるセンサパネル及び電気部品の概略図である。
【
図4】通信遅延リスクに係るX線撮影システムの概要図である。
【
図5】第一の実施形態に係るX線撮影システムの無線通信に関わるフローチャートである。
【
図6】第一の実施形態に係るX線撮影システムの無線通信に関わるタイミングチャートである。
【
図7】第二の実施形態に係るセンサの概略図である。
【
図8】第二の実施形態に係るX線撮影システムの無線通信に関わるタイミングチャートである。
【
図9】第三の実施形態に係るセンサの概略図である。
【
図10】第三の実施形態に係るX線撮影システムの無線通信に関わるフローチャートである。
【
図11】第三の実施形態に係るX線撮影システムの無線通信に関わるタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示を実施するための例示的な実施形態を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、本開示が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、図面において、同一であるか又は機能的に類似している要素を示すために図面間で同じ参照符号を用いる。また、各図面において説明上重要ではない構成要素、部材、及び処理の一部は省略して表示する場合がある。
【0011】
なお、以下では、放射線の一例としてX線を用いた放射線撮影システムについて説明する。ただし、放射線は、X線であってもよいし、ほかの放射線であってもよい。以下の実施形態において、放射線という用語は、例えば、X線及びγ線等の電磁放射線、並びにα線、β線、粒子線、陽子線、重イオン線、及び中間子線等の粒子放射線を含むことができる。
【0012】
(第一の実施形態)
以下、本開示の第一の実施形態に係る、医療用画像診断装置などに応用される放射線撮影システムの一例として機能するX線撮影システム及びその作動方法について、
図1乃至
図6を用いて説明する。
図1は本実施形態に係るX線撮影システムの概要図である。
【0013】
本実施形態に係るX線撮影システムには、センサ102と、X線源103と、曝射制御装置104と、AP(アクセスポイント)105と、PC(パーソナルコンピュータ)106と、IF(インターフェース)ユニット107とが設けられている。センサ102は、被検者101を透過したX線を検知し、検知したX線に基づいてX線画像を生成するX線撮影装置の一例として機能する。X線源103は、例えば管球等を含み、曝射制御装置104による制御に基づいてX線を照射する放射線照射装置の一例として機能する。曝射制御装置104は、X線源103へ高圧電流を供給することにより、X線源103の動作を制御し、X線源103によるX線の照射の開始及び停止を制御することができる。
【0014】
AP105は、無線通信でデータの送受信を行うことができるとともに、有線通信でもデータの送受信を行うことができる。PC106は、取得した画像の画像処理や表示、及び撮影情報の入力を行うことができる。IFユニット107は、AP105及びPC106などの各機器間の情報のやり取りや、曝射制御装置104へ曝射開始を示す情報や曝射停止を示す情報を送信することができる。
【0015】
また、曝射制御装置104には、曝射スイッチ108が接続されている。被検者101が所定の位置において所定の姿勢になったときに、検査技師などの操作者が曝射スイッチ108を操作することで、曝射制御装置104にX線の照射開始を示す信号が送信され、X線照射の開始を指示することができる。なお、X線の照射開始を示す信号の入力方法は曝射スイッチ108の操作に限られず、PC106の操作や不図示のタブレット端末の操作等、所望の構成に応じた方法を用いてよい。
【0016】
次に、
図2(a)及び
図2(b)を用いて本実施形態に係るX線撮影システムのセンサ102を説明する。
図2(a)は、本実施形態に係るセンサ102の断面の概略図である。なお、
図2(a)には、X線の入射方向が矢印を用いて示されている。
【0017】
センサ102には、X線入射面側から、X線透過性が良く剛性の高い、CFRP(炭素繊維複合材料)などの材質でできた入射面板201、及びX線入射面側からの衝撃を内部へ伝えにくくする、発泡体などで形成される衝撃吸収部材202が設けられている。
【0018】
センサ102には、衝撃吸収部材202の次に、蛍光体203が貼りつけられたセンサパネル204が設けられている。蛍光体203は、入射したX線を可視光へと変換する、例えばCsIやGOSを含むことができる。センサパネル204は、蛍光体203が発した光を検知し、2次元画像を形成する電気信号を生成する。
【0019】
センサパネル204は、例えばマグネシウム合金やアルミニウム合金、ステンレスなどの鋼材、又はCFRPなどの剛性の高い素材で形成された支持基台205に不図示の粘着剤などで貼り付けられている。さらに、支持基台205には、センサパネル204を駆動させ、2次元画像を形成する電気信号を画像化し、2次元画像データへの変換などを行う、各種電気基板206が取り付けられている。各種電気基板206は、センサパネル204に、不図示のFFC(Flexible Flat Cable)等で接続されることができる。
【0020】
また、センサ102において、上述の各種構成部品は、入射面板201と不図示の粘着剤などにより接着された前面筐体207と、前面筐体207と不図示のねじなどにより取り外し可能に締結された背面筐体208とによって覆われている。
【0021】
図2(b)は、センサ102を背面筐体208が無い状態で、X線入射面と逆側から見た際の概要図である。上述の通り、
図2(b)に示されるセンサ102の背面側には、センサ102を機能させるための各種電気基板206が配置されており、各種電気基板206やセンサパネル204に電力を供給するためのバッテリ209も着脱可能な形で配置されている。
【0022】
さらに、センサ102の内部には、撮影画像データや各種情報などを無線通信用の信号へと変換する無線モジュール210と、無線通信用の信号を外部へ送信するためのアンテナ211とが設けられている。ここで、無線モジュール210とアンテナ211は、2.4GHz帯及び5GHz帯での無線LAN通信が可能なものとすることができる。
【0023】
背面筐体208においてアンテナ211の近傍には開口があり、開口を塞ぐように不図示の樹脂などの誘電体部品が取り付けられている。電波は誘電体部品により塞がれている部分を透過できるので、センサ102は本部分を介して外部と無線通信を行うことができる。上述のような構成により、センサ102は、無線通信でAP105と通信することができる。そのため、センサ102は、AP105及びIFユニット107を介することで、PC106と画像データや撮影に関する情報などのやり取りを行ったり、曝射制御装置104に曝射停止に関わる信号を送信したりすることができる。
【0024】
次に、
図3を用いて本実施形態に係るX線撮影システムにおけるセンサ102の駆動の仕組みを説明する。
図3は、本実施形態に係るセンサ102に含まれるセンサパネル204及び電気部品の概略図である。センサパネル204には、複数の行及び複数の列を構成するように配された、X線画像データを取得するための複数の画素が設けられている。
【0025】
以下の説明では、センサパネル204における複数の画素が配置された領域を撮像領域とする。複数の画素は、X線画像を取得するための複数の撮像画素301と、X線の照射をモニタするための検知画素302とを含む。X線の照射中に露出制御を行うための検出部として、検知画素302が使用される。つまり、本実施形態では、露出制御を行うための検出部が撮像領域に配される。
【0026】
撮像画素301は、X線を電気信号に変換する変換素子303、及び列信号線304と変換素子303との間に配されたスイッチ305を含む。検知画素302は、X線を電気信号に変換する変換素子306、及び検知信号線307と変換素子306との間に配されたスイッチ308を含む。検知画素302は、複数の撮像画素301の一部と同じ列に配される。
【0027】
本実施形態において、変換素子303及び変換素子306は、蛍光体203によってX線から変換された光を電気信号に変換する光電変換素子で構成される。
【0028】
スイッチ305及びスイッチ308は、例えば、非晶質シリコン又は多結晶シリコンなどの半導体で活性領域が構成された薄膜トランジスタ(TFT)を含む。本実施形態において、活性領域には、多結晶シリコンが用いられうる。
【0029】
センサ102には、複数の列信号線304及び複数の駆動線309が設けられている。それぞれの列信号線304は、撮像領域における複数の列のうちの1つの列に対応する。それぞれの駆動線309は、撮像領域における複数の行のうちの1つの行に対応する。駆動線309は、駆動用回路310によって駆動される。
【0030】
変換素子303の2つの電極のうち一方は、スイッチ305の主電極の一方に接続され、変換素子303の2つの電極のうち他方は、バイアス線311に接続される。ここで、バイアス線311は、列方向に沿って延在し、列方向に配された複数の変換素子303の電極に共通に接続される。バイアス線311には、素子用電源回路312からバイアス電圧Vsが供給される。電源制御部313には、不図示のDC/DCコンバータ及び素子用電源回路312などが設けられている。電源制御部313は、バッテリ209から電圧供給を受け、アナログ回路用電源と駆動制御や無線通信などを行うためのデジタル回路用電源とを生成する。
【0031】
1つの列を構成する複数の撮像画素301のスイッチ305の主電極の他方は、列信号線304に接続される。1つの行を構成する複数の撮像画素301のスイッチ305の制御電極は、共通の駆動線309に接続される。複数の列信号線304は、読出用回路314に接続される。ここで、読出用回路314には、検知部315、マルチプレクサ316、及びアナログデジタル変換器(AD変換器)317が設けられている。
【0032】
複数の列信号線304のそれぞれは、読出用回路314に配された複数の検知部315のうち対応する検知部315に接続される。ここで、1つの列信号線304は、1つの検知部315に対応する。検知部315は、例えば、差動増幅器を含む。マルチプレクサ316は、複数の検知部315を所定の順番で選択し、選択した検知部315からの信号をAD変換器317に供給する。AD変換器317は、供給された信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0033】
変換素子306の2つの電極のうち一方は、スイッチ308の主電極の一方に接続され、変換素子306の2つの電極のうち他方は、バイアス線311に接続される。スイッチ308の主電極の他方は、検知信号線307に接続される。スイッチ308の制御電極は、駆動線318に接続される。
【0034】
センサ102には、1つの検知信号線307が配されてもよいし、
図3に示されるように、複数の検知信号線307が配されてもよい。1つの検知信号線307には、1又は複数の検知画素302が接続される。駆動線318は、駆動用回路319によって駆動される。1つの駆動線318には、1又は複数の検知画素302が接続される。検知信号線307は、読出用回路320に接続される。読出用回路320には、検知部321、マルチプレクサ322、及びAD変換器323が設けられている。
【0035】
複数の検知信号線307のそれぞれは、読出用回路320の複数の検知部321のうち対応する検知部321に接続される。ここで、1つの検知信号線307は、1つの検知部321に対応する。検知部321は、例えば、差動増幅器を含む。マルチプレクサ322は、複数の検知部321を所定の順番で選択し、選択した検知部321からの信号をAD変換器323に供給する。AD変換器323は、供給された信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0036】
読出用回路320(AD変換器323)の出力は、信号処理部324に供給され、信号処理部324によって処理される。信号処理部324は、読出用回路320(AD変換器323)の出力に基づいて、センサ102に対するX線の照射を示す情報を出力する。具体的には、信号処理部324は、例えば、センサ102に入射したX線の照射を検知したり、X線の照射量及び/又は積算照射量を算出したりすることができる。算出されたX線の照射量及び/又は積算照射量は露出制御に用いられることができる。
【0037】
制御部325は、信号処理部324から出力された情報やPC106から出力された制御コマンドに基づいて、駆動用回路310,319及び読出用回路314,320などのセンサ102の各構成要素を制御することができる。
【0038】
図3では説明のために、電源制御部313、駆動用回路310,319、読出用回路314,320、信号処理部324、及び制御部325がセンサパネル204と同一面上にあるように表現されている。これに対し、
図2(b)に示される電気基板206上にこれらの各構成要素があってもよい。
【0039】
また、上記では説明のために、線量検知のための検知画素302と、画像データ生成のための撮像画素301とを異なるものと説明しているが、これらは同一であってもよい。つまり、変換素子306は変換素子303と、スイッチ308はスイッチ305と、検知信号線307は列信号線304と、駆動線318と駆動線309は同一であってもよい。また、読出用回路320は読出用回路314と共通であってもよく、駆動用回路319は駆動用回路310と共通であってもよい。
【0040】
次に、センサ102を用いたX線撮影システムのAECの動作について説明する。当該AECでは、センサ102におけるX線検知領域に入射したX線が検知され、検知されたX線の線量(到達線量)の積算値である積算照射量が演算され、積算照射量が撮影条件等から算出された適正線量に達するかが判定される。積算照射量が適正線量に達すると判定されると、曝射停止信号が無線通信を介して曝射制御装置104に送信され、曝射停止信号に基づいてX線源103によるX線の照射が停止される。上述のような仕組みによりAECを行う場合、無線通信の遅延は適切な露出制御の妨げとなり、所望の画像が得られないリスク及び無効曝射のリスクを増加させてしまう。
【0041】
次に、
図4を用いて、本実施形態に係る通信遅延リスクを減少させる仕組みを説明する。
図1では、X線撮影に関わる最低限の構成を説明したが、一般にX線撮影システムのある病院では他の無線機器が多数存在する。例えば、
図4で示すように、医師や看護師の使用するタブレットなどの端末401、X線撮影室まで行けない患者などに使用する回診車402、及びこれらと通信するためのX線撮影室外にある別のアクセスポイント403などが存在する場合がある。
【0042】
前述の通り、本実施形態に係るセンサ102内の無線モジュール210とアンテナ211は、周辺機器と5GHz帯での無線LAN通信及び2.4GHz帯での無線LAN通信を行うことができる。一般的に無線通信では、出力(電力)が高いほど通信のロスが減り、高速での通信を行える。そのため、データ量の多い通信等では出力が高い無線通信が望まれることがある。これに対し、無線LANによる通信では、通信する前に、同一の周波数帯域(チャネル)で他の機器が通信していないかを確認するキャリアセンス(Carrier Sense)が行われる。他の機器が同一のチャネルを使用している場合には、無線機器はデータ送信を待機する必要がある。そのため、多数の無線機器が同一のチャネルを近接空間で使用していると、データ送信の待機が発生しやすくなり、無線通信に遅延が発生しやすくなる。
【0043】
一方で、無線機器が低出力で無線通信を行うと、キャリアセンスが不要となる場合がある。このことから、低出力で無線通信を行うことにより、送信遅延のリスクを低減させることができる。
【0044】
次に、
図5及び
図6を用いて、本実施形態に係る無線通信について説明する。
図5は、本実施形態に係る一連の処理を示すフローチャートである。
図6は、本実施形態に係るX線撮影システムの無線通信に関わるタイミングチャートである。
図6に示されるグラフでは横軸は時間経過、縦軸は無線通信出力を表しており、ひし形模様部は5GHz帯での通信、格子型模様部は2.4GHz帯での通信を表している。
【0045】
まず、操作者が、PC106に線量、最大照射時間、管電流、管電圧、X線をモニタすべき領域であるX線検知領域(ROI)、及び部位情報などの撮影条件に関する撮影情報を入力する。PC106は、ステップS501において、入力された撮影情報を、センサ102及び曝射制御装置104へ送信する。このとき、センサ102は、
図6に示されるように、2.4GHz帯において高出力PHで信号送信を行う第二の通信モードで、高速な通信を行う。
【0046】
次に、ステップS502において、撮影準備が完了したと判断した操作者により曝射スイッチ108が押下されると、曝射制御装置104による制御に従ってX線源103がX線を照射する。照射されたX線は、被検者101を透過してセンサ102に入射する。
【0047】
ステップS503において、センサ102は、X線検知領域(ROI)に入射したX線を検知画素302により検知し、検知した線量(到達線量)の積算値である積算照射量を信号処理部324により演算する。また、制御部325は、操作者が入力した部位情報や撮影条件などから適正線量を算出する。制御部325は、信号処理部324から出力された積算照射量を示す情報に基づいて、積算照射量(検知線量)が閾値である適正線量に達したか否かを判定する。例えば、制御部325は、積算照射量が適正線量以上になった否かを判定する。
【0048】
ステップS503において、制御部325により、積算照射量が閾値である適正線量に達したと判定されると、処理はステップS504に移行する。一方で、積算照射量が適正線量に達していないと判定されると、ステップS503での処理が繰り返される。
【0049】
ステップS504では、制御部325は、X線の照射を停止させるタイミングを示す曝射停止信号を生成する。ここで、制御部325は、積算照射量と適正線量に基づいてX線の照射を停止させるタイミングを決定してよい。センサ102は、無線モジュール210及びアンテナ211を介して曝射制御装置104に曝射停止信号を送信し、X線照射の停止を通知する。このとき、制御部325は、無線モジュール210に遅延リスクが低い低出力PLでの曝射停止信号を生成させる。無線モジュール210により曝射停止信号が生成されると、センサ102は、アンテナ211を介して、2.4GHz帯において低出力PLで信号送信を行う第一の通信モードで、曝射停止信号の送信を行う。曝射制御装置104は、送信された曝射停止信号に基づき、X線源103からのX線の照射を停止させる。
【0050】
その後、ステップS505において、センサ102は、被検者101を透過したX線に基づいて取得したX線画像をPC106へ送信する。ここで、取得された画像のデータ量は大きいため、センサ102は、
図6に示されるように、2.4GHz帯において高出力PHで信号通信を行う第二の通信モードで画像データの送信を行い、高速な通信を行う。
【0051】
上記のように、本実施形態に係るX線撮影システムは、自動露出制御(AEC)により放射線撮影を制御可能な放射線撮影システムの一例として機能することができる。本実施形態に係るX線撮影システムは、X線源103と、曝射制御装置104と、センサ102とを備える。X線源103は、放射線を曝射する放射線発生装置の一例として機能することができる。曝射制御装置104は、放射線発生装置を制御する制御装置の一例として機能することができる。センサ102は、曝射された放射線を検知し、放射線画像を生成する放射線撮影装置の一例として機能することができる。また、センサ102は、放射線の曝射停止に関わる信号として曝射停止信号を無線送信する第一の通信モードと、放射線画像のデータや撮影情報を無線送信する第二の通信モードを有する。すなわち、放射線画像のデータや撮影情報は、放射線の曝射停止に関与しない信号を意味する。第一の通信モードでの通信は、第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信を含む。
【0052】
当該構成により、本実施形態に係るX線撮影システムは、曝射停止に関わる信号を低出力で送信することができる。このため、他機器の電波の影響に基づく信号の再送が発生しにくいため、無線でのAEC撮影時にも通信遅延のリスクを低減でき、所望の画像が得られないリスクを低減でき、無効曝射のリスクを低減することができる。
【0053】
また、センサ102は、検知した放射線の線量が閾値に達したか否かを判定する判定部の一例として機能することができる制御部325を有する。この場合には、制御部325が、検知した放射線の線量である積算照射量が閾値である適正線量に達したか否かを判定し、センサ102が曝射停止信号を曝射制御装置104に送信する。そのため、センサ102は曝射停止に関わる信号として曝射停止信号を送信すればよいため、曝射停止に関わる信号を少ない容量で送信でき、曝射停止に関わる信号の送信量の増加を抑えることができ、通信に係る処理負荷を低減することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、センサ102が、検知したX線量が閾値である適正線量に達したか否かを判定し、曝射停止に関わる信号として曝射停止信号を送信している。しかしながら、X線量が閾値に達した否かの判定を行う構成はこれに限られることはない。例えば、センサ102が、検出結果として所定の時間ごとの到達線量を曝射停止に関わる信号として第一の通信モードで曝射制御装置104へ送信し、曝射制御装置104が到達線量の積算値を算出し、適正線量に達したか否かを判定してもよい。この場合には、センサ102が検知した放射線量が閾値に達したか否かを判定する判定部は曝射制御装置104に設けられることになる。
【0055】
なお、第一の通信モードの通信と第二の通信モードは、同一の通信方式であってよく、例えばIEEE802.11規格での通信を含んでよい。また、第一の通信モードでの通信周波数帯域(第一の通信周波数帯域)は2.4GHz帯の通信周波数帯域を含んでよい。
【0056】
また、本実施形態では、センサ102は、第二の通信モードにおいて、2.4GHz帯での通信を行ったが、5GHz帯での通信を行ってもよい。この場合でも、低出力での信号通信を行う第一の通信モードで曝射停止に関わる信号を送信することで、通信遅延のリスクを低減でき、所望の画像が得られないリスクを低減でき、無効曝射のリスクを低減することができる。
【0057】
(第二の実施形態)
次に、本開示の第二の実施形態を、
図7及び
図8を用いて説明する。本実施形態に係るX線撮影システムの構成、センサの駆動の仕組み、及び一連の処理に関しては、第一の実施形態と同様であるため、同じ参照符号を用いて説明を省略する。まず、本実施形態のX線撮影システムのセンサ102の構成を、
図7を用いて説明する。センサ102の断面の構造は、
図2(a)に示される第一の実施形態に係るセンサ102の断面の構造と同等であるため説明を省略する。
図7は、センサ102を背面筐体208が無い状態で、X線入射面と逆側から見た際の概要図である。
【0058】
本実施形態に係るセンサ102にはアンテナII701が設けられており、無線モジュール210にはアンテナ211だけでなく、アンテナII701が接続されている。アンテナ211及びアンテナII701は双方とも、無線モジュール210からの信号を受け、2.4GHz帯及び5GHz帯での通信が可能なものである。
【0059】
背面筐体208においてアンテナ211及びアンテナII701の双方の近傍には各々開口があり、開口を塞ぐように不図示の樹脂などの誘電体部品が取り付けられている。電波は誘電体で塞がれている部分を透過できるので、センサ102は本部分を介して外部と無線通信を行うことができる。
【0060】
次に、
図5及び
図8を用いて、本実施形態に係る無線通信について第一の実施形態に係る無線通信との違いを中心に説明する。
図8は、本実施形態に係るX線撮影システムの無線通信に関わるタイミングチャートであり、各アンテナの通信を時系列ごとに表している。
図8に示されるグラフでは横軸は時間経過、縦軸は無線通信出力を表しており、ひし形模様部は5GHz帯での通信、格子型模様部は2.4GHz帯での通信を表している。
【0061】
ステップS501では、PC106が、第一の実施形態と同様に、線量、最大照射時間、管電流、管電圧、X線をモニタすべき領域であるX線検知領域(ROI)、及び部位情報などの撮影条件を含む撮影情報をセンサ102及び曝射制御装置104に送信する。このとき、センサ102は、
図8に示されるように、アンテナII701を介して、5GHz帯において高出力PHで信号送信を行う第二の通信モードで通信を行う。
【0062】
ステップS502及びステップS503での処理は第一の実施形態に係るステップS502及びステップS503での処理と同様なので説明を省略する。ステップS504では、制御部325は、無線モジュール210に遅延リスクが低い低出力PL、且つ、2.4GHz帯での曝射停止信号を生成させる。無線モジュール210により曝射停止信号が生成されると、センサ102は、
図8に示されるように、アンテナ211を介して、2.4GHz帯において低出力PLで信号送信を行う第一の通信モードで、曝射停止信号の送信を行う。
【0063】
ステップS505では、取得された画像のデータ量は大きいため、センサ102は、
図8に示されるように、アンテナII701を介して、5GHz帯において高出力PHで信号通信を行う第二の通信モードで、画像データの送信を行う。
【0064】
上記のように、本実施形態に係るセンサ102は、第一のアンテナの一例として機能するアンテナ211と第二のアンテナの一例として機能するアンテナII701とを有する。また、センサ102は、アンテナ211を用いて第一の通信モードでの通信を行い、アンテナII701を用いて第二の通信モードでの通信を行う。なお、第一の通信モードでの通信は第一の通信周波数帯域での通信を含み、第二の通信モードでの通信は第一の通信周波数帯域とは異なる第二の通信周波数帯域での通信を含むことができる。
【0065】
当該構成であっても、低出力での信号通信を行う第一の通信モードで曝射停止に関わる信号を送信することで、所望の画像が得られないリスクを低減し、無効曝射のリスクを低減することができる。さらに、複数のアンテナを使用することで、アンテナごとに使用する周波数帯域及び出力を分けることができ、AECの曝射停止に関わる通信以外の通信を、例えば、より高速な5GHz帯で通信することができる。
【0066】
なお、本実施形態でも、センサ102が、検出結果として所定の時間ごとの到達線量を曝射停止に関わる信号として第一の通信モードで曝射制御装置104へ送信し、曝射制御装置104が到達線量の積算値を算出し、適正線量に達したか否かを判定してもよい。この場合には、センサ102が検知した放射線量が閾値に達したか否かを判定する判定部は曝射制御装置104に設けられることになる。
【0067】
(第三の実施形態)
本開示の第三の実施形態を、
図9乃至
図11を用いて説明する。X線撮影システムの構成、及びセンサの駆動の仕組みに関しては第一の実施形態と同様であるため、同じ参照符号を用いて説明を省略する。まず、本実施形態のX線撮影システムに係るセンサ102の構成を、
図9を用いて説明する。センサ102の断面の構造は、
図2(a)に示される第一の実施形態に係るセンサ102の断面の構造と同等であるため説明を省略する。
図9は、センサ102を背面筐体208が無い状態で、X線入射面と逆側から見た際の概要図である。
【0068】
本実施形態では、無線モジュール210にはアンテナ211が接続されている。また、センサ102には、無線モジュールII901及びアンテナII701が設けられており、無線モジュールII901にはアンテナII701が接続されている。アンテナ211及びアンテナII701はそれぞれ異なる無線モジュールから信号を受けるため、無線モジュールにおいて周波数帯域及び出力を切り替える必要がなく、且つ、同時に複数の出力での通信を行うこともできる。
【0069】
第二の実施形態と同様に、背面筐体208においてアンテナ211及びアンテナII701の双方の近傍には各々開口があり、開口を塞ぐように不図示の樹脂などの誘電体部品が取り付けられている。電波は、誘電体で塞がれている部分を透過できるので、センサ102は、本部分を介して外部と無線通信を行うことができる。
【0070】
次に、
図10乃至
図11(c)を用いて、本実施形態の無線通信について説明する。
図10は、本実施形態に係る一連の処理を示すフローチャートである。
図11(a)乃至
図11(c)は、本実施形態に係るX線撮影システムの無線通信に関わるタイミングチャートであり、各アンテナを用いた無線通信を時系列ごとに表している。
図11(a)乃至
図11(c)に示されるグラフでは横軸は時間経過、縦軸は無線通信出力を表しており、ひし形模様部は5GHz帯での通信、格子型模様部は2.4GHz帯での通信を表している。
【0071】
ステップS501では、PC106が、第一の実施形態と同様に、線量、最大照射時間、管電流、管電圧、X線をモニタすべき領域であるX線検知領域(ROI)、及び部位情報などの撮影条件を含む撮影情報をセンサ102及び曝射制御装置104に送信する。このとき、センサ102は、
図11(a)に示されるように、アンテナII701を介して、5GHz帯において高出力PHで信号送信を行う第二の通信モードで信号通信を行う。
【0072】
ステップS502及びステップS503での処理は第一の実施形態に係るステップS502及びステップS503での処理と同様なので説明を省略する。ステップS503において、制御部325により、積算照射量が閾値である適正線量に達したと判定されると、処理はステップS1004に移行する。
【0073】
ステップS1004では、センサ102は、
図11(a)に示されるように、2.4GHz帯における低出力PLでの信号送信と5GHz帯における高出力PHでの信号送信とを行う第一の通信モードで、曝射停止信号の送信を行う。具体的には、まず、制御部325が、無線モジュール210に遅延リスクが低い低出力PL、且つ、2.4GHz帯での曝射停止信号を生成させる。無線モジュール210により曝射停止信号が生成されると、センサ102は、アンテナ211を介して、2.4GHz帯において低出力PLで曝射停止信号の送信を行う。また、アンテナ211を介した通信が終わると、制御部325は、無線モジュールII901に高出力PH、且つ、5GHz帯での曝射停止信号を生成させる。無線モジュールII901により曝射停止信号が生成されると、センサ102は、アンテナII701を介して、5GHz帯において高出力PHで曝射停止信号の送信を行う。
【0074】
ステップS505では、取得された画像のデータ量は大きいため、センサ102は、
図11(a)に示されるように、アンテナII701を介して、5GHz帯において高出力PHで信号通信を行う第二の通信モードで画像データの送信を行う。
【0075】
上記のように、本実施形態に係るセンサ102は、アンテナ211及びアンテナII701を用いて第一の通信モードでの通信を行うことができる。この場合、第一の通信モードでの通信は、アンテナ211を用いた、第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信と、アンテナII701を用いた、第二の通信モードでの通信と同等の電力での通信とを含むことができる。より具体的には、センサ102は、第一の通信モードにおいて、第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信を行った後に、第二の通信モードと同等の電力での通信を行うことができる。
【0076】
当該構成であっても、低出力での信号通信を行う第一の通信モードで曝射停止に関わる信号を送信することで、所望の画像が得られないリスクを低減し、無効曝射のリスクを低減することができる。さらに、低出力での信号送信と高出力での信号送信により途切れなく曝射停止信号を送信できるため、低出力での信号送信がエラーとなった場合にも、所望の画像が得られないリスクを低減し、無効曝射のリスクを低減することができる。また、複数のアンテナを使用することで、アンテナごとに使用する周波数帯域及び出力を分けることができ、AECの曝射停止に関わる通信以外の通信をより高速な5GHz帯で通信することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、制御部325は、アンテナ211での通信が終わってから、無線モジュールII901、アンテナII701を介して高出力PH、且つ、5GHz帯での曝射停止信号を生成、送信させた。これに対し、制御部325は無線モジュール210から送信する停止信号と、無線モジュールII901から送信する停止信号を同時に生成してもよい。この場合には、先に無線モジュール210及びアンテナ211を介して停止信号を送信し、その通信が終わったことを確認してから、無線モジュールII901及びアンテナII701を介して停止信号を送信させることができる。
【0078】
また、本実施形態では、センサ102が低出力での曝射停止信号の送信の後に途切れなく高出力PHでの曝射停止信号を送信する例を提示した。これに対して、センサ102は、
図11(b)に示されるように、第一の通信モードにおいて、低出力PLでの曝射停止信号と高出力PHでの曝射停止信号をオーバーラップするようなタイミングで送信してもよい。この場合には、センサ102は、第一の通信モードにおいて、第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信と第二の通信モードと同等の電力での通信とを交互に行うことができる。当該構成でも、上記と同様の効果を奏することができる。また、曝射停止信号の途切れのリスクを減らすことができる。
【0079】
さらに、センサ102は、
図11(c)に示されるように、第一の通信モードにおいて、低出力PLでの曝射停止信号と高出力PHでの曝射停止信号を同じタイミングで送信してもよい。この場合には、センサ102は、第一の通信モードにおいて、第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信と第二の通信モードと同等の電力での通信とを同時に行うことができる。当該構成でも、上記と同様の効果を奏することができる。また、2.4GHz帯での通信と5GHz帯での通信の好適な性能を双方とも得ることができ、通信遅延のリスクをさらに低減し、所望の画像が得られないリスクを低減し、無効曝射のリスクを低減することができる。
【0080】
なお、本実施形態でも、センサ102が、検出結果として所定の時間ごとの到達線量を曝射停止に関わる信号として第一の通信モードで曝射制御装置104へ送信し、曝射制御装置104が到達線量の積算値を算出し、適正線量に達したか否かを判定してもよい。この場合には、センサ102が検知した放射線量が閾値に達したか否かを判定する判定部は曝射制御装置104に設けられることになる。
【0081】
また、第一乃至第三の実施形態では、放射線撮影装置の一例として機能するセンサ102は、蛍光体を用いて放射線を一旦可視光に変換し、光電変換素子により可視光を電気信号に変換する間接変換型の検知器とした。これに対し、放射線撮影装置は、入射した放射線を電気信号に直接変換する直接変換型の検知器としてもよい。
【0082】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。コンピュータは、1つ又は複数のプロセッサ若しくは回路を有し、コンピュータ実行可能命令を読み出し実行するために、分離した複数のコンピュータ又は分離した複数のプロセッサ若しくは回路のネットワークを含みうる。
【0083】
プロセッサ又は回路は、中央演算処理装置(CPU)、マイクロプロセッシングユニット(MPU)、グラフィクスプロセッシングユニット(GPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はフィールドプログラマブルゲートウェイ(FPGA)を含みうる。また、プロセッサ又は回路は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、データフロープロセッサ(DFP)、又はニューラルプロセッシングユニット(NPU)を含みうる。
【0084】
上記開示は、以下の構成、方法、及びプログラムを含む。
(構成1)
放射線を曝射する放射線発生装置と、
前記放射線発生装置を制御する制御装置と、
前記曝射された放射線を検知し、放射線画像を生成する放射線撮影装置と、
を備え、
前記放射線撮影装置は、前記放射線の曝射停止に関わる信号を無線送信する第一の通信モードと、前記放射線の曝射停止に関与しない少なくとも一つの信号を無線送信する第二の通信モードを有し、前記第一の通信モードでの通信は、前記第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信を含む、放射線撮影システム。
(構成2)
前記放射線撮影装置は、
第一のアンテナと第二のアンテナとを有し、
前記第一のアンテナを用いて前記第一の通信モードでの通信を行い、
前記第二のアンテナを用いて前記第二の通信モードでの通信を行う、構成1に記載の放射線撮影システム。
(構成3)
前記放射線撮影装置は、前記第一のアンテナ及び前記第二のアンテナを用いて前記第一の通信モードでの通信を行う、構成2に記載の放射線撮影システム。
(構成4)
前記第一の通信モードでの通信は、前記第一のアンテナを用いた、前記第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信と、前記第二のアンテナを用いた、前記第二の通信モードでの通信と同等の電力での通信とを含む、構成3に記載の放射線撮影システム。
(構成5)
前記放射線撮影装置は、前記第一の通信モードにおいて、前記第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信を行った後に、前記第二の通信モードと同等の電力での通信を行う、構成4に記載の放射線撮影システム。
(構成6)
前記放射線撮影装置は、前記第一の通信モードにおいて、前記第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信と前記第二の通信モードと同等の電力での通信とを同時に行う、構成4に記載の放射線撮影システム。
(構成7)
前記放射線撮影装置は、前記第一の通信モードにおいて、前記第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信と前記第二の通信モードと同等の電力での通信とを交互に行う、構成4に記載の放射線撮影システム。
(構成8)
前記放射線撮影システムは、自動露出制御により放射線撮影を制御可能であり、
前記放射線撮影装置は、前記検知した放射線の線量が閾値に達したか否かを判定する判定部を有する、構成1乃至7のいずれかに記載の放射線撮影システム。
(構成9)
前記放射線撮影システムは、自動露出制御により放射線撮影を制御可能であり、
前記制御装置は、前記放射線撮影装置が検知した放射線の線量が閾値に達したか否かを判定する判定部を有する、構成1乃至7のいずれかに記載の放射線撮影システム。
(構成10)
前記第一の通信モードの通信と、前記第二の通信モードは同一の通信方式である、構成1乃至9のいずれかに記載の放射線撮影システム。
(構成11)
前記第一の通信モードの通信方式がIEEE802.11規格での通信を含む、構成10に記載の放射線撮影システム。
(構成12)
前記第一の通信モードでの通信は第一の通信周波数帯域での通信を含み、
前記第二の通信モードでの通信は前記第一の通信周波数帯域とは異なる第二の通信周波数帯域での通信を含む、構成1乃至11のいずれかに記載の放射線撮影システム。
(構成13)
前記第一の通信周波数帯域は2.4GHz帯の通信周波数帯域を含む、構成12に記載の放射線撮影システム。
(方法1)
放射線を曝射する放射線発生装置と、前記放射線発生装置を制御する制御装置と、前記曝射された放射線を検知し、放射線画像を生成する放射線撮影装置と、を備える放射線撮影システムの作動方法であって、
前記放射線撮影装置により、第一の通信モードで前記放射線の曝射停止に関わる信号を無線送信することと、
前記放射線撮影装置により、第二の通信モードで前記放射線の曝射停止に関与しない少なくとも一つの信号を無線送信することと、
を含み、
前記第一の通信モードでの通信は、前記第二の通信モードでの通信よりも小さい電力での通信を含む、放射線撮影システムの作動方法。
(プログラム1)
コンピュータによって実行されると、該コンピュータに方法1に記載の放射線撮影システムの作動方法の各工程を実行させる、プログラム。
【0085】
以上、実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の各実施形態は、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0086】
102:センサ(放射線撮影装置)、103:X線源(放射線発生装置)、104:曝射制御装置(制御装置)、325:制御部(判定部)