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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168010
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】加工装置及び加工方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/44 20060101AFI20241128BHJP
   B65H 45/12 20060101ALI20241128BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20241128BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B29C70/44
B65H45/12
B29C43/12
B29C70/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084386
(22)【出願日】2023-05-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、「グリーンイノベーション基金事業/次世代航空機の開発(航空機主要構造部品の複雑形状・飛躍的軽量化開発)」に係る「航空機主要複合材構造部品の軽量化・生産高レート化・複雑形状化」に関する助成研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】種市 順平
【テーマコード(参考)】
3F108
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
3F108AB01
3F108BA02
3F108BA07
4F204AC03
4F204AD16
4F204AG28
4F204AH31
4F204AJ08
4F204AM28
4F204FA01
4F204FA13
4F204FB01
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ37
4F205AC03
4F205AD16
4F205AG28
4F205AH31
4F205AJ08
4F205AM28
4F205HA09
4F205HA23
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HF30
4F205HK03
4F205HK04
(57)【要約】
【課題】メンブレンを被加工物に好適に密着させることを目的とする。
【解決手段】側面と上面とを有し、側面と上面との接続部に積層体が設置される一対の第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20と、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の間にZ軸方向に突出するように配置されるウェッジブロック30と、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20及びウェッジブロック30を覆うメンブレン40と、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20が離間するように移動させる駆動部と、を備える。メンブレン40は、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の移動に応じて引っ張られる。ウェッジブロック30は、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の移動に応じて突出長さが短くなるように移動する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被加工物に対して曲げ加工を施す加工装置であって、
第1面と前記第1面の端部から曲折又は湾曲して延びる第2面とを有し、前記第1面と前記第2面との接続部に前記被加工物が設置され、所定方向に並んで配置される一対のマンドレルブロックと、
一対の前記マンドレルブロックの間に前記マンドレルブロックの前記第2面から前記所定方向と交差する交差方向に突出するように配置されるウェッジブロックと、
前記マンドレルブロックに設置された状態の前記被加工物、前記マンドレルブロック及び前記ウェッジブロックを覆うメンブレンと、を備え、
一対の前記マンドレルブロックは、前記マンドレルブロック同士が前記所定方向に離間するように、一方又は両方の前記マンドレルブロックが前記所定方向に移動可能とされ、
前記メンブレンは、前記マンドレルブロックの前記所定方向の移動に応じて前記所定方向に引っ張られ、
前記ウェッジブロックは、前記マンドレルブロックの前記所定方向の移動に応じて、前記第2面からの突出長さが短くなるように前記交差方向に移動する加工装置。
【請求項2】
一対の前記マンドレルブロックは、前記第2面から曲折して前記ウェッジブロックの移動方向に延びる第1傾斜面を有し、
前記ウェッジブロックは、前記第1傾斜面と面接触する第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜面は、前記ウェッジブロックの移動方向に向かうにしたがって他方の前記マンドレルブロックに近づくように傾斜している請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
一対の前記マンドレルブロックは、第1マンドレルブロックと、前記第1マンドレルブロックと前記所定方向に並んで配置される第2マンドレルブロックとを有し、
前記第1マンドレルブロックは、前記第2マンドレルブロック側の面に前記所定方向に突出する第1凸部を有し、
前記第2マンドレルブロックは、前記第1マンドレルブロック側の面に前記所定方向に突出する第2凸部を有し、
前記第1凸部と前記第2凸部とは、前記所定方向から見た際に重複しないように配置されている請求項1または請求項2に記載の加工装置。
【請求項4】
板状の被加工物に対して曲げ加工を施す加工方法であって、
第1面と前記第1面の端部から曲折又は湾曲して延びる第2面とを有し、所定方向に並んで配置される一対のマンドレルブロックに対して、前記第1面と前記第2面との接続部に前記被加工物を設置する被加工物設置工程と、
一対の前記マンドレルブロックの間に前記マンドレルブロックの前記第2面から前記所定方向と交差する交差方向に突出するように、ウェッジブロックを設置するウェッジブロック設置工程と、
前記マンドレルブロックに設置された状態の前記被加工物、前記マンドレルブロック及び前記ウェッジブロックを覆うようにメンブレンを設置する設置工程と、
一対の前記マンドレルブロックが前記所定方向に離間するように、一方又は両方の前記マンドレルブロックを前記所定方向に移動させる移動工程と、を備え、
前記移動工程は、前記マンドレルブロックの前記所定方向の移動に応じて前記マンドレルブロックが前記メンブレンを前記所定方向に引っ張り、
前記移動工程は、前記ウェッジブロックが、前記マンドレルブロックの前記所定方向の移動に応じて、前記第2面からの突出長さが短くなるように前記交差方向に移動する加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加工装置及び加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機等に用いられる部品として、長手方向と直交する面で切断した際の断面が所定の断面形状(例えば、L字型やC字型等)とされる長尺部品(例えば、ストリンガ)がある。このような部品を製造する方法の1つとして、複合材料である繊維強化シートを積層した平板状の積層体に対して、折り曲げる加工を施すことで製造する方法が知られている。この方法では、積層体に対して曲げ加工を施す際に、積層体の全面を均等に圧迫するために、成形型に設置された積層体を柔軟で面内方向に伸縮性を有するメンブレンで覆い、メンブレンと成形型との間を真空引きする場合がある。この方法では、適切に積層体に密着するようにメンブレンを制御することが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
特許文献1では、積層体をメンブレンで覆うとともに、真空引きによって曲げ賦形を行う方法が開示されている。この方法では、積層体の上下方向の両側にメンブレンを配置し、さらに成形型から離れた位置にメンブレンを支持する部位を設ける。また、積層体の下側に配置されるメンブレンの張力により、上側に配置されるメンブレンを成形型の上面側から下側に向かって連続的に密着させるように制御している。
【0004】
また、特許文献2では、積層体をメンブレンで覆うとともに、曲げられる部分を支持する板を機械的に降下させながらメンブレンと成形型の間を真空引きする方法が開示されている。この方法では、支持板の位置によってメンブレンが密着する位置を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第10016949号明細書
【特許文献2】米国特許第11313089号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、真空引きによるメンブレンの張力のみによってメンブレンを制御しているので、メンブレンを好適に制御することができずに、メンブレンを積層体に密着させることができない場合があった。
また、特許文献2の記載の方法は、真空引きのためのポンプや配管などの設備を設けるとともに、支持板を降下させる機構を設ける必要があり、構造が複雑化し、コストの増大や整備性の低下を招来する可能性があった。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、メンブレンを被加工物に好適に密着させることができる加工装置及び加工方法を提供することを目的とする。
また、構造を簡素化することができる加工装置及び加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の加工装置及び加工方法は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る加工装置は、板状の被加工物に対して曲げ加工を施す加工装置であって、第1面と前記第1面の端部から曲折又は湾曲して延びる第2面とを有し、前記第1面と前記第2面との接続部に前記被加工物が設置され、所定方向に並んで配置される一対のマンドレルブロックと一対の前記マンドレルブロックの間に前記マンドレルブロックの前記第2面から前記所定方向と交差する交差方向に突出するように配置されるウェッジブロックと、前記マンドレルブロックに設置された状態の前記被加工物、前記マンドレルブロック及び前記ウェッジブロックを覆うメンブレンと、を備え、一対の前記マンドレルブロックは、前記マンドレルブロック同士が前記所定方向に離間するように、一方又は両方の前記マンドレルブロックが前記所定方向に移動可能とされ、前記メンブレンは、前記マンドレルブロックの前記所定方向の移動に応じて前記所定方向に引っ張られ、前記ウェッジブロックは、前記マンドレルブロックの前記所定方向の移動に応じて、前記第2面からの突出長さが短くなるように前記交差方向に移動する。
【0009】
本開示の一態様に係る加工方法は、板状の被加工物に対して曲げ加工を施す加工方法であって、第1面と前記第1面の端部から曲折又は湾曲して延びる第2面とを有し、所定方向に並んで配置される一対のマンドレルブロックに対して、前記第1面と前記第2面との接続部に前記被加工物を設置する被加工物設置工程と、一対の前記マンドレルブロックの間に前記マンドレルブロックの前記第2面から前記所定方向と交差する交差方向に突出するように、ウェッジブロックを設置するウェッジブロック設置工程と、前記マンドレルブロックに設置された状態の前記被加工物、前記マンドレルブロック及び前記ウェッジブロックを覆うようにメンブレンを設置する設置工程と、一対の前記マンドレルブロックが前記所定方向に離間するように、一方又は両方の前記マンドレルブロックを前記所定方向に移動させる移動工程と、を備え、前記移動工程は、前記マンドレルブロックの前記所定方向の移動に応じて前記マンドレルブロックが前記メンブレンを前記所定方向に引っ張り、前記移動工程は、前記ウェッジブロックが、前記マンドレルブロックの前記所定方向の移動に応じて、前記第2面からの突出長さが短くなるように前記交差方向に移動する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、メンブレンを被加工物に好適に密着させることができる。
また、本開示によれば、構造を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態に係る複合材構造体を示す斜視図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る加工装置を示す斜視図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る加工装置の要部を示す斜視図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る加工装置の要部を示す模式的な平面図である。
図5】本開示の第1実施形態に係る加工装置を示す模式的な正面図である。
図6】本開示の第1実施形態に係る加工装置を示す模式的な正面図である。
図7】本開示の第1実施形態に係る加工装置を示す模式的な正面図である。
図8】本開示の第1実施形態に係る加工装置を示す模式的な正面図である。
図9】本開示の第2実施形態に係る加工装置を示す模式的な正面図である。
図10】本開示の第3実施形態に係る加工装置を示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る加工装置及び加工方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態について、図1から図8を用いて説明する。以下の説明において、マンドレルブロックが移動する方向をX軸方向と称する。また、ウェッジブロックが移動する方向をZ軸方向と称する。また、X軸方向及びZ軸方向と直交する方向をY軸方向と称する。また、以下の説明では、Z軸方向が上下方向とされているので、Z軸方向を上下方向と称する場合もある。
【0014】
本実施形態に係る賦形装置は、例えばプリプレグ等の樹脂を含浸した繊維シート3(図1参照)を積層して形成される板状の積層体(図5等参照)1から、複合材構造体2(図1参照)を製造する際に用いられる。具体的には、積層体1に対して曲げ加工を施して、所定の形状に賦形する際に用いられる。複合材構造体2としては、例えば、航空機の胴体や主翼等に利用されるストリンガ等が挙げられる。なお、積層体1を形成する材料は、上記材料に限定されない。例えば、繊維のみで樹脂を含まない繊維シート(ドライシート)によって積層体を形成してもよい。
【0015】
[複合材構造体]
図1に示すように、本実施形態に係る複合材構造体2は、長尺状の部材である。複合材構造体2は、長手方向の断面(長手方向と直交する面で切断した際の断面)の形状がT字型とされている。複合材構造体2は、長手方向に沿って直線状に延在しており、長手方向の断面が一様の形状とされている。
複合材構造体2は、長手方向の断面の形状がL字型の2つの複合材構造体2Aを接合することで製造される。本実施形態では、板状の積層体1を、長手方向の断面の形状がL字型の複合材構造体2Aに加工する装置及び加工方法について説明する。
【0016】
[加工装置]
図2に示すように、加工装置5は、積層体1が設置される一対のマンドレルブロック(第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20)と、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20との間に配置されるウェッジブロック30と、第1マンドレルブロック10、第2マンドレルブロック20及びウェッジブロック30を覆うメンブレン40と、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20を移動させる駆動装置(駆動部)と、を備える。
【0017】
第1マンドレルブロック10は、図2に示すように、第2マンドレルブロック20とX軸方向(所定方向)に並んで配置されている。第1マンドレルブロック10は、図3及び図4に示すように、第2マンドレルブロック20から遠い側の部分である基部11と、基部11の第2マンドレルブロック20側の面である対向面11aから突出する複数の第1凸部12と、を一体的に有する。対向面11aは、Y軸方向及びX軸方向によって規定される平面とされている。
【0018】
基部11は、図5に示すように、積層体1が設置される。基部11は、図3及び図5に示すように、第2マンドレルブロック20から遠い側の面(すなわち、対向面11aとは反対側の面)である側面(第1面)11bと、側面11bの上端部から第2マンドレルブロック20の方向に湾曲して延びる上面(第2面)11cと、を有する。積層体1は、第1マンドレルブロック10の側面11b、上面11c及び側面11bと上面11cとの接続部11dに亘って設置される。側面11bは、Y軸方向及びX軸方向によって規定される平面とされている。また、上面11cは、Y軸方向及びX軸方向によって規定される平面とされている。また、接続部11dは、湾曲面とされている。
【0019】
複数の第1凸部12は、図3及び図4に示すように、Y軸方向に沿って等間隔で並んで配置されている。第1凸部12は、櫛の歯状に並んでいる。
第1凸部12は、図3及び図5に示すように、基部11の上面11cのX軸方向の端部から曲折して斜め下方に延びるマンドレル傾斜面(第1傾斜面)12aと、マンドレル傾斜面12aの下端から曲折して下方に延びる鉛直面12bと、を有している。マンドレル傾斜面12aは、ウェッジブロック30の移動方向(下方)に向かうにしたがって第2マンドレルブロック20に近づくように傾斜している。マンドレル傾斜面12aは、平面とされている。鉛直面12bは、Y軸方向及びX軸方向によって規定される平面とされている。
【0020】
第2マンドレルブロック20は、加工装置5のX軸方向及びY軸方向の中心点を中心として、第1マンドレルブロック10と点対称となるように構成されている。
第2マンドレルブロック20は、図2に示すように、第1マンドレルブロック10とX軸方向(所定方向)に並んで配置されている。第2マンドレルブロック20は、図4に示すように、第1マンドレルブロック10から遠い側の部分である基部21と、基部21の第1マンドレルブロック10側の面である対向面21aから突出する複数の第2凸部22と、を一体的に有する。対向面21aは、Y軸方向及びX軸方向によって規定される平面とされている。
【0021】
基部21は、図5に示すように、積層体1が設置される。基部21は、図3及び図5に示すように、第1マンドレルブロック10から遠い側の面(すなわち、対向面21aとは反対側の面)である側面(第1面)21bと、側面21bの上端部から第1マンドレルブロック10の方向に湾曲して延びる上面(第2面)21cと、を有する。積層体1は、第2マンドレルブロック20の側面21b、上面21c及び側面21bと上面21cとの接続部21d(図5参照)に亘って設置される。側面21bは、Y軸方向及びX軸方向によって規定される平面とされている。また、上面21cは、Y軸方向及びX軸方向によって規定される平面とされている。また、接続部21dは、湾曲面とされている。
【0022】
複数の第2凸部22は、図3及び図4に示すように、Y軸方向に沿って等間隔で並んで配置されている。第2凸部22は、櫛の歯状に並んでいる。
第2凸部22は、図3及び図5に示すように、基部21の上面21cのX軸方向の端部から曲折して斜め下方に延びるマンドレル傾斜面(第1傾斜面)22aと、マンドレル傾斜面22aの下端から曲折して下方に延びる鉛直面22bと、を有している。マンドレル傾斜面22aは、ウェッジブロック30の移動方向(下方)に向かうにしたがって第1マンドレルブロック10に近づくように傾斜している。マンドレル傾斜面22aは、平面とされている。鉛直面22bは、Y軸方向及びX軸方向によって規定される平面とされている。
【0023】
第1凸部12と第2凸部22とは、図4に示すように、X軸方向から見た際に重複しないように配置されている。すなわち、第1凸部12と第2凸部22とは、Y軸方向にずれるように配置されている。
また、第1凸部12のY軸方向の長さは、隣接する第2凸部22同士の離間距離よりも短い。これにより、第1凸部12は、隣接する第2凸部22同士の間に挿入可能とされている。また、第2凸部22のY軸方向の長さは、隣接する第1凸部12同士の離間距離よりも短い。これにより、第2凸部22は、隣接する第1凸部12同士の間に挿入可能とされている。また、第1凸部12のX軸方向の長さと、第2凸部22のX軸方向の長さとは略同一とされている。
【0024】
また、第1マンドレルブロック10と第2マンドレルブロック20とは、第1マンドレルブロック10の基部11と第2マンドレルブロック20の基部21とが最も近付いた状態(図5に示す状態)において、基部11と基部21との離間距離D1が、後述するウェッジブロック30の下面30aのX軸方向の長さL1よりも短い。
【0025】
ウェッジブロック30は、図2に示すように、Y軸方向に延在する長尺状の部材である。ウェッジブロック30は、Y軸方向の断面が台形状の部材である。ウェッジブロック30は、第1マンドレルブロック10と第2マンドレルブロック20との間に設けられている。ウェッジブロック30は、図5に示すように、第1マンドレルブロック10の基部11の上面11cからZ軸方向(交差方向)に突出するように配置される。また、ウェッジブロック30は、第2マンドレルブロック20の基部21の上面21cからZ軸方向(交差方向)に突出するように配置される。
【0026】
ウェッジブロック30は、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20側の面である下面30aと、下面30aとは反対側の面である上面30bと、下面30aと上面30bとを接続するウェッジ傾斜面(第2傾斜面)30cとを有する。
【0027】
下面30aのX軸方向の長さは、上面30bのX軸方向の長さよりも短い。下面30aは、平面とされている。下面30aは、Y軸方向及びX軸方向によって規定される平面とされている。
上面30bは、平面とされている。上面30bは、Y軸方向及びX軸方向によって規定される平面とされている。
一対のウェッジ傾斜面30cは、上面30bから下面30aに向かうにしたがってウェッジ傾斜面30c同士が近づくように傾斜している。ウェッジ傾斜面30cは、平面とされている。ウェッジ傾斜面30cの水平面に対する傾斜角度は、マンドレル傾斜面12aの水平面に対する傾斜角度と同一とされている。
【0028】
メンブレン40は、X軸方向の伸縮性を有する材料(例えば、シリコンゴム等)で形成されている。メンブレン40は、積層体1、第1マンドレルブロック10、第2マンドレルブロック20及びウェッジブロック30を上方及び側方から覆っている。メンブレン40は、X軸方向の一端部が第1マンドレルブロック10の側面11bの下端部に固定されている。また、メンブレン40は、X軸方向の他端部が第2マンドレルブロック20の側面21bの下端部に固定されている。
【0029】
駆動装置は、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20をX軸方向に移動させる。
【0030】
[加工方法]
次に、本実施形態に係る加工装置5を用いた積層体1の加工方法について図5から図8を用いて説明する。
まず、図5に示すように、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の各々に積層体1を設置する。積層体1は、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20に設置される段階で、曲げ加工を施される箇所が予備的に湾曲されている。積層体1は、曲げ加工を施す箇所(以下、「湾曲部」と称する。)を各マンドレルブロックの接続部11d,21dと当接又は近接するように設置される。このとき、積層体1は、湾曲部よりも一側が各マンドレルブロックの側面11b,21bと面接触している。また、積層体1は、湾曲部よりも他側が各マンドレルブロックの上面11c,21cから離間している。
【0031】
このとき、第1マンドレルブロック10と第2マンドレルブロック20とは、第1凸部12が第2凸部22同士の間に挿入されるとともに、第2凸部22が第1凸部12同士の間に挿入され、第1マンドレルブロック10の基部11と第2マンドレルブロック20の基部21とが最も近付いた状態とされている。詳細には、第1マンドレルブロック10と第2マンドレルブロック20とは、基部11と基部21との離間距離D1が、ウェッジブロック30の下面30aのX軸方向の長さL1よりも短くなるように配置されている。
【0032】
次に、第1マンドレルブロック10の上面11cと第2マンドレルブロック20の上面21cとに跨るようにウェッジブロック30を配置する。ウェッジブロック30の下面30aは、第1マンドレルブロック10の上面11c及び第2マンドレルブロック20の上面21cと接触している。この時、ウェッジブロック30は、第1マンドレルブロック10の上面11c及び第2マンドレルブロック20の上面21cから所定の高さL2突出している。
【0033】
次に、積層体1、第1マンドレルブロック10、第2マンドレルブロック20及びウェッジブロック30を上方及び側方からメンブレン40で覆う。また、X軸方向の一端部を第1マンドレルブロック10の側面11bの下端部に固定するとともに、X軸方向の他端部を第2マンドレルブロック20の側面21bの下端部に固定する。メンブレン40は、この状態で、少し弛むか自然長とされる。すなわち、面内の張力が0とされている。
このとき、第1マンドレルブロック10の上面11c及び第2マンドレルブロック20の上面21cとメンブレン40との間には、空間が形成される。この空間に積層体1の一部が配置された状態となる。積層体1の一部とは、曲げ加工が施される際に、各マンドレルブロックに押し付けられるように移動する部分である。
【0034】
次に、図5の矢印で示すように、駆動装置によって第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20をX軸方向に離間するように移動させる。これにより、メンブレン40がX軸方向に引っ張られ、張力が増大する。
移動開始からしばらくは、ウェッジブロック30は、第1マンドレルブロック10の上面11c及び第2マンドレルブロック20の上面21cの上に載置された状態を維持する。メンブレン40は、X軸方向に引っ張られるので、張力が増大し続ける。ウェッジブロック30は、メンブレン40の張力によって下方に押圧される。
【0035】
第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20がX軸方向への移動を続けると、図6に示すように、基部11と基部21との離間距離D2が、ウェッジブロック30の下面30aのX軸方向の長さL1よりも長くなる。
基部11と基部21との離間距離D2が、ウェッジブロック30の下面30aのX軸方向の長さL1よりも長くなると、図7に示すように、ウェッジブロック30が第1マンドレルブロック10のマンドレル傾斜面12aと第2マンドレルブロック20のマンドレル傾斜面22aとの間の隙間に入り込む。ウェッジブロック30が隙間に入り込むと、第1マンドレルブロック10のマンドレル傾斜面12a及び第2マンドレルブロック20のマンドレル傾斜面22aと、ウェッジブロック30のウェッジ傾斜面30cとが当接する。
【0036】
この状態で、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20がX軸方向への移動を続けると、ウェッジブロック30の自重及びメンブレン40の押圧力によって、ウェッジブロック30が下方に移動する(図7の破線矢印参照)。このとき、ウェッジブロック30は、ウェッジ傾斜面30cがマンドレル傾斜面12a,22a上を摺動するように移動する。また、ウェッジブロック30の下方への移動に伴って、ウェッジブロック30の突出長さL2も徐々に減少する。このように、ウェッジブロック30は、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20のX軸方向の移動に応じて、突出長さL2が短くなるようにZ軸方向に移動する。
【0037】
第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20が所定距離移動すると、駆動装置は第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の移動を停止する。このとき、積層体1は、メンブレン40と密着するとともに、第1マンドレルブロック10の上面11c及び第2マンドレルブロック20の上面21cと当接している。
【0038】
このようにして、2つの板状の積層体1に対して曲げ加工を施して、長手方向の断面形状がL字型の複合材構造体2Aを同時に2つ製造する。長手方向の断面形状がT字型の複合材構造体2を製造する場合には、2つの断面形状L字型の複合材構造体2Aを接合する(図1参照)。
【0039】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、ウェッジブロック30が、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の上面11c,21cからX軸方向と交差するZ軸方向に突出するように配置される。これにより、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20及びウェッジブロック30を覆うメンブレン40は、ウェッジブロック30によって持ち上がられる分、一部の領域で第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の上面11c,21cと離間する。また、本実施形態では、ウェッジブロック30が、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20のX軸方向の移動に応じて突出長さL2が短くなるように設けられている。これにより、駆動装置によって一対の第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20が離間するように移動すると、ウェッジブロック30の突出長さL2が短くなる。ウェッジブロック30の突出長さL2が短くなると、ウェッジブロック30に持ち上げられているメンブレン40が第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の上面11c,21cに近づくように移動する。また、一対の第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20が離間するように移動しているので、メンブレン40は、X軸方向に引っ張られることとなり第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の移動に応じて張力を増大させる。これにより、メンブレン40が、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20に設置されている積層体1に密着するとともに、積層体1を第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の接続部11d,21dに押し付ける。第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の接続部11d,21dに押し付けられた積層体1は、接続部11d,21dの形状に応じた形状に賦形される。このようにして、積層体1に対して曲げ加工が施すことができる。
【0040】
また、本実施形態では、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20及びウェッジブロック30を移動させることで、メンブレン40を積層体1及び第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20に密着させている。換言すれば、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20及びウェッジブロック30によってメンブレン40の運動(移動や変形態様)を制御している。すなわち、メンブレン40の運動を別の部材で制御している。これにより、メンブレン40の運動を別の部材で制御しない場合(例えば、真空引きによる力のみでメンブレン40を制御する場合)と比較して、より確実にメンブレン40を積層体1に密着させることができる。したがって、好適に積層体1に対して曲げ加工を施すことができる。
【0041】
また、本実施形態では、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20のX軸方向の移動及びウェッジブロック30のZ軸方向への移動(すなわち、ブロックの直線運動)のみによって、メンブレン40で積層体1を第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20に押し付け、積層体1に対して曲げ加工を施している。これにより、例えば、吸引装置等を設けてメンブレン40とブロックとの間の空間を真空引きする場合と比較して、構造を簡素化することができる。したがって、コストを低減することができる。また、整備性を向上させることができる。
また、真空引きする場合には、外周に設けるシール構造の不良などが原因の品質不良のリスクも増大する。一方、本実施形態では、シール構造を設ける必要がないので、シール構造の不良に起因する品質不良を防止することができる。
【0042】
本実施形態では、ウェッジブロック30がマンドレル傾斜面12a,22aと面接触するウェッジ傾斜面30cを有する。これにより、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20がX軸方向に移動し、ウェッジブロック30がメンブレン40によって押圧されると、ウェッジブロック30のウェッジ傾斜面30cがマンドレル傾斜面12a,22a上を摺動する。このようにして、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20のX軸方向の移動に応じて、ウェッジブロック30をZ軸方向に移動させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の移動に応じて、ウェッジブロック30がZ軸方向に移動する。このように、ウェッジブロック30を移動させる駆動機構を設けることなく、ウェッジブロック30をZ軸方向に移動させることができる。したがって、ウェッジブロック30を移動させる駆動機構を設ける場合と比較して、部品点数を低減し、構造を簡素化することができる。
【0044】
本実施形態では、第1凸部12と第2凸部22とは、X軸方向から見た際に重複しないように配置されている。これにより、第1マンドレルブロック10と第2マンドレルブロック20とをより近接させることができる。したがって、加工装置5を小型化することができる。
【0045】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態について、図9を用いて説明する。
本実施形態では、本実施形態の加工装置105は、第1実施形態に係る加工装置5を、X軸方向及びY軸方向によって規定される面を基準としてZ軸方向に対称となるように2つ組み合わせた点で第1実施形態と異なっている。したがって、同一の構造については同一の符号を付してその説明は省略する。
本実施形態に係るメンブレン140は、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20に固定されていない。メンブレン140は、無端状に形成されている。
【0046】
このように構成することで、積層体1に対して曲げ加工を施して、断面形状がC字型の複合材構造体を製造することができる。
【0047】
〔第3実施形態〕
次に、本開示の第3実施形態について、図10を用いて説明する。
本実施形態では、本実施形態の加工装置205は、第1実施形態に係る加工装置5を、点対称となるように2つ組み合わせた点で第1実施形態と異なっている。したがって、同一の構造については同一の符号を付してその説明は省略する。
本実施形態では、加工装置5がX軸方向に2つ並ぶとともに、一方の加工装置5の上下が反転している。また、両方の加工装置5の第1マンドレルブロック10が固定されており、第2マンドレルブロック20のみがX軸方向に移動する。
また、積層体1は、2つの加工装置5の間に配置される。
【0048】
このように構成することで、積層体1に対して曲げ加工を施して、断面形状がS字型の複合材構造体を製造することができる。
【0049】
なお、本開示は、上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、マンドレル傾斜面12a,22aが平面である例について説明したが、本開示はこれに限定されない。マンドレル傾斜面12a,22aは、湾曲面であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の両方がX軸方向に移動する例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20のどちらか一方がX軸方向に移動し、他方が固定されていてもよい。
【0051】
また、上記第1実施形態では、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20の両方に積層体1を設置する例について説明したが、本開示はこれに限定されない。第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20のどちらか一方のみに積層体1を設置してもよい。この場合には、積層体1を設置しない方のマンドレルブロックには、本来、積層体1が設置される場所に、曲げ加工後の積層体の形状と同形状のダミー部材を配置してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、駆動装置が第1マンドレルブロック10及び/又は第2マンドレルブロック20をX軸方向に移動させる例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、駆動装置は、ウェッジブロック30を下方に移動させてもよい。この場合には、第1マンドレルブロック10及び/又は第2マンドレルブロック20は、X軸方向に移動可能とされている。すなわち、第1マンドレルブロック10及び/又は第2マンドレルブロック20は、X軸方向の移動が許容されている。この構成では、ウェッジブロック30の下方へ移動すると、ウェッジブロック30によって第1マンドレルブロック10及び/又は第2マンドレルブロック20が押圧される。ウェッジブロック30と第1マンドレルブロック10及び/又は第2マンドレルブロック20とは、傾斜面(マンドレル傾斜面12a等)同士が接触している。このため、ウェッジブロック30からの押圧力が、第1マンドレルブロック10及び第2マンドレルブロック20に伝達される際に、X軸方向への押圧力に変換される。これにより、ウェッジブロック30の下方への移動によって、第1マンドレルブロック10及び/又は第2マンドレルブロック20がX軸方向に移動し、第1マンドレルブロック10と第2マンドレルブロック20とが離間する。
【0053】
以上説明した実施形態に記載の加工装置及び加工方法は、例えば以下のように把握される。
本開示に第1態様に係る加工装置は、板状の被加工物(1)に対して曲げ加工を施す加工装置(5)であって、第1面(11b)と前記第1面の端部から曲折又は湾曲して延びる第2面(11c)とを有し、前記第1面と前記第2面との接続部(11d)に前記被加工物が設置され、所定方向(X軸方向)に並んで配置される一対のマンドレルブロック(10,20)と一対の前記マンドレルブロックの間に前記マンドレルブロックの前記第2面から前記所定方向と交差する交差方向(Z軸方向)に突出するように配置されるウェッジブロック(30)と、前記マンドレルブロックに設置された状態の前記被加工物、前記マンドレルブロック及び前記ウェッジブロックを覆うメンブレン(40)と、を備え、一対の前記マンドレルブロックは、前記マンドレルブロック同士が前記所定方向に離間するように、一方又は両方の前記マンドレルブロックが前記所定方向に移動可能とされ、前記メンブレンは、前記マンドレルブロックの前記所定方向の移動に応じて前記所定方向に引っ張られ、前記ウェッジブロックは、前記マンドレルブロックの前記所定方向の移動に応じて、前記第2面からの突出長さが短くなるように前記交差方向に移動する。
【0054】
上記構成では、ウェッジブロックが、マンドレルブロックの第2面から所定方向と交差する交差方向に突出するように配置される。これにより、マンドレルブロック及びウェッジブロックを覆うメンブレンは、ウェッジブロックによって持ち上がられる分、一部の領域でマンドレルブロックの第2面と離間する。また、上記構成では、ウェッジブロックが、マンドレルブロックの所定方向の移動に応じて突出長さが短くなるように設けられている。これにより、一対のマンドレルブロックが離間するように移動すると、ウェッジブロックの突出長さが短くなる。ウェッジブロックの突出長さが短くなると、ウェッジブロックに持ち上げられているメンブレンがマンドレルブロックの第2面に近づくように移動する。また、一対のマンドレルブロックが離間するように移動しているので、メンブレンは、所定方向に引っ張られることとなりマンドレルブロックの移動に応じて張力を増大させる。これにより、メンブレンが、マンドレルブロックに設置されている被加工物に密着するとともに、被加工物をマンドレルブロックの接続部に押し付ける。マンドレルブロックの接続部に押し付けられた被加工物は、接続部の形状に応じた形状に賦形される。このようにして、被加工物に対して曲げ加工が施すことができる。
【0055】
また、上記構成では、マンドレルブロック及びウェッジブロックを移動させることで、メンブレンを被加工物及びマンドレルブロックに密着させている。換言すれば、マンドレルブロック及びウェッジブロックによってメンブレンの運動(移動や変形態様)を制御している。すなわち、メンブレンの運動を別の部材で制御している。これにより、メンブレンの運動を別の部材で制御しない場合(例えば、真空引きによる力のみでメンブレンを制御する場合)と比較して、より確実にメンブレンを被加工物に密着させることができる。したがって、好適に被加工物に対して曲げ加工を施すことができる。
【0056】
また、上記構成では、マンドレルブロックの所定方向の移動及びウェッジブロックの交差方向への移動(すなわち、ブロックの直線運動)のみによって、メンブレンで被加工物をマンドレルブロックに押し付け、被加工物に対して曲げ加工を施している。これにより、例えば、吸引装置等を設けてメンブレンとブロックとの間の空間を真空引きする場合と比較して、構造を簡素化することができる。したがって、コストを低減することができる。また、整備性を向上させることができる。
【0057】
また、本開示の第2態様に係る加工装置は、上記第1態様において、一対の前記マンドレルブロックは、前記第2面から曲折して前記ウェッジブロックの移動方向に延びる第1傾斜面(12a)を有し、前記ウェッジブロックは、前記第1傾斜面と面接触する第2傾斜面(30c)を有し、前記第1傾斜面は、前記ウェッジブロックの移動方向に向かうにしたがって他方の前記マンドレルブロックに近づくように傾斜している。
【0058】
上記構成では、ウェッジブロックが第1傾斜面と面接触する第2傾斜面を有する。これにより、マンドレルブロックが所定方向に移動し、ウェッジブロックがメンブレンによって押圧されると、ウェッジブロックの第2傾斜面が第1傾斜面上を摺動する。このようにして、マンドレルブロックの所定方向の移動に応じて、ウェッジブロックを交差方向に移動させることができる。
【0059】
また、上記構成では、マンドレルブロックの移動に応じて、ウェッジブロックが交差方向に移動する。このように、ウェッジブロックを移動させる駆動機構を設けることなく、ウェッジブロックを交差方向に移動させることができる。したがって、ウェッジブロックを移動させる駆動機構を設ける場合と比較して、部品点数を低減し、構造を簡素化することができる。
【0060】
また、本開示の第3態様に係る加工装置は、上記第1態様または第2態様において、一対の前記マンドレルブロックは、第1マンドレルブロック(10)と、前記第1マンドレルブロックと前記所定方向に並んで配置される第2マンドレルブロック(20)とを有し、前記第1マンドレルブロックは、前記第2マンドレルブロック側の面に前記所定方向に突出する第1凸部(12)を有し、前記第2マンドレルブロックは、前記第1マンドレルブロック側の面に前記所定方向に突出する第2凸(22)部を有し、前記第1凸部と前記第2凸部とは、前記所定方向から見た際に重複しないように配置されている。
【0061】
上記構成では、第1凸部と第2凸部とは、所定方向から見た際に重複しないように配置されている。これにより、第1マンドレルブロックと第2マンドレルブロックとをより近接させることができる。したがって、加工装置を小型化することができる。
【0062】
本開示の第1態様に係る加工方法は、板状の被加工物(1)に対して曲げ加工を施す加工方法であって、第1面(11b)と前記第1面の端部から曲折又は湾曲して延びる第2面(11c)とを有し、所定方向(X軸方向)に並んで配置される一対のマンドレルブロック(10,20)に対して、前記第1面と前記第2面との接続部(11d)に前記被加工物を設置する被加工物設置工程と、一対の前記マンドレルブロックの間に前記マンドレルブロックの前記第2面から前記所定方向と交差する交差方向(Z軸方向)に突出するように、ウェッジブロック(30)を設置するウェッジブロック設置工程と、前記マンドレルブロックに設置された状態の前記被加工物、前記マンドレルブロック及び前記ウェッジブロックを覆うようにメンブレン(40)を設置する設置工程と、一対の前記マンドレルブロックが前記所定方向に離間するように、一方又は両方の前記マンドレルブロックを前記所定方向に移動させる移動工程と、を備え、前記移動工程は、前記マンドレルブロックの前記所定方向の移動に応じて前記マンドレルブロックが前記メンブレンを前記所定方向に引っ張り、前記移動工程は、前記ウェッジブロックが、前記マンドレルブロックの前記所定方向の移動に応じて、前記第2面からの突出長さが短くなるように前記交差方向に移動する。
【符号の説明】
【0063】
1 :積層体
2 :複合材構造体
2A :複合材構造体
3 :繊維シート
5 :加工装置
10 :第1マンドレルブロック
11 :基部
11a :対向面
11b :側面
11c :上面
11d :接続部
12 :第1凸部
12a :マンドレル傾斜面
12b :鉛直面
20 :第2マンドレルブロック
21 :基部
21a :対向面
21b :側面
21c :上面
21d :接続部
22 :第2凸部
22a :マンドレル傾斜面
22b :鉛直面
30 :ウェッジブロック
30a :下面
30b :上面
30c :ウェッジ傾斜面
40 :メンブレン
105 :加工装置
140 :メンブレン
205 :加工装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10