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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168017
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 71/02 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A01B71/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084395
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】倉田 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】小山 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋形 祐汰
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 智之
【テーマコード(参考)】
2B041
【Fターム(参考)】
2B041AA03
2B041AB05
2B041AC02
2B041AC20
2B041CA03
2B041CA16
2B041EA02
2B041EA23
2B041EB11
2B041EC10
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性の向上を図ることができる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機は、中央作業部及び延長作業部を備え、中央作業部は駆動側係合体25を有し、延長作業部は従動側係合体35を有する。また、駆動側係合体25は、駆動側ベース部材41と、この駆動側ベース部材41とは別体で耐摩耗性を有した動力伝達用の駆動側接触部材42とを有する。同様に、従動動側係合体35は、従動側ベース部材71と、この従動側ベース部材71とは別体で耐摩耗性を有した動力伝達用の従動側接触部材72とを有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央作業部と、
前記中央作業部に設けられた延長作業部とを備え、
前記中央作業部は、駆動側係合体を有し、
前記延長作業部は、前記駆動側係合体と係合する従動側係合体を有し、
前記駆動側係合体及び前記従動側係合体の少なくともいずれか一方は、
ベース部材と、
前記ベース部材とは別体で耐摩耗性を有した動力伝達用の接触部材とを有する
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前記接触部材は、前記ベース部材に着脱可能に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
前記接触部材は、少なくとも板状の接触部を有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の農作業機。
【請求項4】
中央作業部と、
前記中央作業部に設けられた延長作業部とを備え、
前記中央作業部は、駆動側係合体を有し、
前記延長作業部は、前記駆動側係合体と係合する従動側係合体を有し、
前記駆動側係合体は、
駆動側ベース部材と、
前記駆動側ベース部材とは別体で耐摩耗性を有した動力伝達用の駆動側接触部材とを有し、
前記従動側係合体は、
従動側ベース部材と、
前記従動側ベース部材とは別体で耐摩耗性を有した動力伝達用の従動側接触部材とを有する
ことを特徴とする農作業機。
【請求項5】
前記駆動側接触部材は、前記駆動側ベース部材に着脱可能に取り付けられ、
前記従動側接触部材は、前記従動側ベース部材に着脱可能に取り付けられている
ことを特徴とする請求項4記載の農作業機。
【請求項6】
前記駆動側ベース部材は、第1駆動側案内面及び第2駆動側案内面を有し、
前記従動側接触部材は、前記第1駆動側案内面によって案内される第1従動側案内面を有し、
前記従動側ベース部材は、前記第2駆動側案内面によって案内される第2従動側案内面を有する
ことを特徴とする請求項4又は5記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性の向上を図ることができる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、例えばトラクタ等の走行車の後部に連結される中央作業部と、この中央作業部に回動可能に設けられた延長作業部とを備えている。また、中央作業部は駆動側係合体(駆動側クラッチ爪)を有し、延長作業部はその駆動側係合体と係脱可能に係合する従動側係合体(従動側クラッチ爪)を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-189289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、このような農作業機においては、例えば駆動側係合体や従動側係合体の耐摩耗性の向上が望まれている。
【0006】
本発明の課題の一つは、耐摩耗性の向上を図ることができる農作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る農作業機は、中央作業部と、前記中央作業部に設けられた延長作業部とを備え、前記中央作業部は、駆動側係合体を有し、前記延長作業部は、前記駆動側係合体と係合する従動側係合体を有し、前記駆動側係合体及び前記従動側係合体の少なくともいずれか一方は、ベース部材と、前記ベース部材とは別体で耐摩耗性を有した動力伝達用の接触部材とを有するものである。
【0008】
また、本発明の実施形態に係る農作業機は、中央作業部と、前記中央作業部に設けられた延長作業部とを備え、前記中央作業部は、駆動側係合体を有し、前記延長作業部は、前記駆動側係合体と係合する従動側係合体を有し、前記駆動側係合体は、駆動側ベース部材と、前記駆動側ベース部材とは別体で耐摩耗性を有した動力伝達用の駆動側接触部材とを有し、前記従動側係合体は、従動側ベース部材と、前記従動側ベース部材とは別体で耐摩耗性を有した動力伝達用の従動側接触部材とを有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、耐摩耗性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る農作業機の側面図である。
図2】同上農作業機の中央作業部の駆動側係合体の斜視図である。
図3】同上駆動側係合体の斜視図である。
図4】同上駆動側係合体の正面図である。
図5】同上駆動側係合体の側面図である。
図6】同上農作業機の延長作業部の従動側係合体の斜視図である。
図7】同上従動側係合体の正面図である。
図8】同上従動側係合体の側面図である。
図9】同上両係合体が互いに係合した状態の斜視図である。
図10】同上両係合体が互いに係合した状態の側面図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る農作業機の延長作業部の従動側係合体の斜視図である。
図12】同上従動側係合体の正面図である。
図13】同上従動側係合体の側面図である。
図14】本発明の第3の実施形態に係る農作業機の延長作業部の従動側係合体の斜視図である。
図15】同上従動側係合体の正面図である。
図16】同上従動側係合体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施形態について図1ないし図10を参照して説明する。
【0012】
図1において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、そのトラクタの走行により水田等の圃場を前方(進行方向)に移動しながら代掻作業等の農作業を行う代掻機(ハロー)である。
【0013】
農作業機1は、例えば折畳み可能な3分割構造の折畳み作業機で、トラクタの後部の3点リンク部(農作業機装着装置)に着脱可能に連結(装着)される中央作業部2と、この中央作業部2の左右方向両端部に回動中心軸(折畳用軸)5を中心として上下方向に回動可能に設けられた延長作業部3と、この延長作業部3を中央作業部2に対して上下方向に回動させる回動駆動手段である電動油圧シリンダ(図示せず)とを備えている。
【0014】
そして、左右の延長作業部3の各々は、いずれも伸縮可能な電動油圧シリンダの伸縮動作に基づいて、展開方向への回動(略180度の回動)により展開状態(展開作業状態)となり、折畳方向への回動(略180度の回動)により折畳状態(折畳非作業状態)となる。
【0015】
それゆえ、この農作業機1は、中央作業部2のみで作業を行う状態と、中央作業部2と左右両方の展開状態の延長作業部3とで作業を行う状態と、中央作業部2と左右いずれか一方のみの展開状態の延長作業部3とで作業を行う状態とに選択的に切換可能となっている。なお、左右一対の延長作業部3は、左右対称の構成である。
【0016】
中央作業部2は、トラクタの後部の3点リンク部に着脱可能に連結される機体(中央機体)11と、この機体11の下部に回転可能に設けられ、所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体(中央耕耘体)12と、機体11の後部に上下方向に回動可能に設けられ、耕耘体12の後方で整地作業をする整地体(中央整地体)13とを備えている。
【0017】
機体11は、トラクタの後部の3点リンク部に着脱可能に連結される3点連結部16を左右方向中央部に有している。3点連結部16は、例えばトラクタの3点リンク部に予め装着されたクイックカプラ(オートヒッチ)を介して、トラクタの3点リンク部に連結される。そして、その3点連結部16は、クイックカプラの上部フックと係脱可能に係合する上部ピン17を有したトップマスト18と、クイックカプラの下部フックと係脱可能に係合する下部ピン19を有した左右一対のロワアーム20とを有している。
【0018】
また、機体11は、トラクタのPTO軸にジョイントを介して接続される入力軸21を有し、この入力軸21に入力された動力(トラクタ側からの動力)に基づいて耕耘体12が回転して耕耘作業をする。
【0019】
耕耘体12は、トラクタ側からの動力に基づいて駆動回転する左右方向の耕耘軸(駆動軸)23と、この耕耘軸23に着脱可能に取り付けられた複数の耕耘爪24とを有している。
【0020】
そして、耕耘軸23の左右方向両端部には、当該耕耘軸23と一体となって駆動回転する動力伝達用の駆動側係合体(駆動側クラッチ爪)25がスプライン嵌合等により取り付けられている。なお、例えばゴムカバー等のカバー部材26が駆動側係合体25に取り付けられている。
【0021】
整地体13は、機体11の耕耘カバー部の後端部に上下方向に回動可能に取り付けられた第1整地体(均平板)28と、この第1整地体28の下端部に上下方向に回動可能に取り付けられた第2整地体(レーキ)29とを有している。
【0022】
延長作業部3は、中央作業部2の機体11に対して回動中心軸5を中心として上下方向に回動可能な機体(延長機体)31と、この機体31の下部に回転可能に設けられ、延長作業部3の展開状態時に中央作業部2の耕耘体12と一体となって所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体(延長耕耘体)32と、機体31の後部に上下方向に回動可能に設けられ、延長作業部3の展開状態時に中央作業部2の整地体13と一体となって耕耘体32の後方で整地作業をする整地体(延長整地体)33とを備えている。
【0023】
耕耘体32は、中央作業部2の耕耘体12側からの動力に基づいて従動回転する左右方向の耕耘軸(従動軸)36と、この耕耘軸36に着脱可能に取り付けられた複数の耕耘爪37とを有している。
【0024】
そして、耕耘軸36の内端部のフランジ部分には、中央作業部2の駆動側係合体25と係脱可能に係合して従動回転する動力伝達用の従動側係合体(従動側クラッチ爪)35がボルト止め等により取り付けられている。なお、例えばゴムカバー等のカバー部材34が耕耘軸36の内端部のフランジ部分に取り付けられている。
【0025】
整地体33は、機体31の耕耘カバー部の後端部に上下方向に回動可能に取り付けられた第1整地体(均平板)38と、この第1整地体38の下端部に上下方向に回動可能に取り付けられた第2整地体(レーキ)39とを有している。なお、第2整地体39の外端部には、補助整地板40が回動可能に設けられている。
【0026】
ここで、まず、中央作業部2の駆動側係合体(中央側係合体)25の具体的な構成について図2ないし図5を参照して説明する。
【0027】
駆動側係合体25は、例えば耕耘軸23の軸芯を通る水平な左右方向の回転中心軸線X1を中心として所定方向に回転するベース部材である駆動側ベース部材41と、この駆動側ベース部材41とは別体で耐摩耗性を有した硬質な複数(6つ)の動力伝達用の接触部材である駆動側接触部材42とを有している。
【0028】
なお、駆動側接触部材42は、例えば金属製の駆動側ベース部材41と同じ金属材料からなるものであるが、その駆動側ベース部材41とは別部品(交換可能な交換部品)であり、しかも、その駆動側ベース部材41のうち焼き入れ部分(表面部)以外の部分よりも硬度の高い金属製の部材(例えば焼き入れ部材等)からなるものである。つまり、この駆動側接触部材42は、駆動側ベース部材41の少なくとも一部よりも硬質な部材である。なお、駆動側接触部材42は、例えば駆動側ベース部材41を構成する材料(例えば金属材料等)よりも硬質の材料(ベース部材とは異なる材料、材質等)で構成してもよい。
【0029】
そして、駆動側ベース部材41よりも耐摩耗性に優れた駆動側接触部材42は、取付手段(取付部材)43によって駆動側ベース部材41に着脱可能に取り付けられている。取付手段43は、例えばボルト46、ばね座金47及び平座金48からなるものである。なお、取付手段43は、図示したボルト止めには限定されず、例えばピン止め等でもよく任意である。
【0030】
駆動側ベース部材41は、例えば回転中心軸線X1を中心とする略円筒状のベース部51と、このベース部51の外周側に径方向外方に向かって一体(別体にしてもよい)に突設され、周方向(回転方向)に互いに等間隔をおいて並ぶ突出状の複数の取付部52とを有している。つまり、この駆動側ベース部材41は、ベース部51と、このベース部51に一体に突設された複数の取付部52とで構成されている。
【0031】
ベース部51は、耕耘軸23が挿入される軸用孔(例えばスプライン孔)53を中央に有している。ベース部51のうちその軸用孔53に臨んだ内周面には、耕耘軸23の凸部分(図示せず)と嵌合する凹部分54が形成されている。
【0032】
取付部52は、平面状の取付面56を回転方向前面に有し、この取付面56には駆動側接触部材42が当接面57に当接した状態で取付手段43により取り付けられている。
【0033】
また、取付部52は、略三角平面状に形成された傾斜状の第1駆動側案内面58aを回転方向前側に有し、この回転方向前方を向いた第1駆動側案内面58aには駆動側接触部材42の接触面62と同一面上に位置する連続面59が連設されている。また、この取付部52は、回転方向後方を向いた傾斜状の第2駆動側案内面58bを回転方向後側に有している。
【0034】
さらに、取付部52は、回転方向前後面に貫通して形成された貫通孔である取付用孔60を有し、この取付用孔60には取付手段43のボルト46の軸部が挿脱可能に挿入されている。この取付用孔60の回転方向前側の開口端は、取付面56で開口している。
【0035】
なお、図5に示す状態において、駆動側ベース部材41の第1駆動側案内面58aは、側面視で水平な回転中心軸線X1に対して所定の傾斜角度αをもって傾斜した傾斜方向に沿って位置する。その傾斜角度αは、例えば略55度である。
【0036】
駆動側接触部材42は、例えば厚さ一定の平板状の接触部61を有している。つまり、この駆動側接触部材42は、所定厚さ以上の板状の接触部61のみで構成された板状の部材(硬質部材)である。なお、接触部61の厚さ寸法は、例えば略6mmである。また、この接触部61は、例えば五角形の平板状に形成されている。
【0037】
接触部61は、平面状の接触面(動力伝達面)62を回転方向前面に有し、この接触面62が耕耘軸23の駆動回転時に後述の従動側接触部材72の接触面92と面状に接触して動力伝達が行われる。また、接触部61の略中央部には、ねじ孔部63が回転方向前後面に貫通して形成されている。そして、そのねじ孔部63には取付手段43のボルト46の軸部が螺合されている。
【0038】
次いで、延長作業部3の従動側係合体(延長側係合体)35の具体的な構成について図6ないし図8を参照して説明する。
【0039】
従動側係合体35は、例えば耕耘軸36の軸芯を通る水平な左右方向の回転中心軸線X2を中心として所定方向に回転するベース部材である従動側ベース部材71と、この従動側ベース部材71とは別体で耐摩耗性を有した硬質な複数(6つ)の動力伝達用の接触部材である従動側接触部材72とを有している。
【0040】
なお、従動側接触部材72は、例えば金属製の従動側ベース部材71と同じ金属材料からなるものであるが、その従動側ベース部材71とは別部品(交換可能な交換部品)であり、しかも、その従動側ベース部材71のうち焼き入れ部分(表面部)以外の部分よりも硬度の高い金属製の部材(例えば焼き入れ部材等)からなるものである。つまり、この従動側接触部材72は、従動側ベース部材71の少なくとも一部よりも硬質な部材である。なお、従動側接触部材72は、例えば従動側ベース部材71を構成する材料(例えば金属材料等)よりも硬質の材料(ベース部材とは異なる材料、材質等)で構成してもよい。
【0041】
そして、従動側ベース部材71よりも耐摩耗性に優れた従動側接触部材72は、取付手段(取付部材)73によって従動側ベース部材71に着脱可能に取り付けられている。取付手段73は、例えばロールピン(スプリングピン)75である。なお、取付手段73は、図示したピン止めには限定されず、例えばボルト止め等でもよく任意である。
【0042】
従動側ベース部材71は、例えば回転中心軸線X2を中心とする略円板状のベース部81と、このベース部81のうち駆動側係合体25と対向する側の面に一体(別体にしてもよい)に突設され、周方向(回転方向)に互いに等間隔をおいて並ぶ突出状の複数の取付部82とを有している。つまり、この従動側ベース部材71は、ベース部81と、このベース部81に一体に突設された複数の取付部82とで構成されている。
【0043】
ベース部81は、耕耘軸36の内端部のフランジ部分の嵌め合い突部(一部)が挿入される軸用孔83を中央に有し、かつ複数の取付用孔であるボルト用孔84を外周側に有している。
【0044】
取付部82は、平面状の取付面86を回転方向後面に有し、この取付面86には従動側接触部材72が取付手段73により取り付けられている。また、取付部82は、回転方向前後面に貫通して形成された貫通孔である取付用孔90を有し、この取付用孔90には取付手段73であるロールピン75が挿脱可能に挿入(嵌入)されている。この取付用孔90の回転方向後側の開口端は、取付面86で開口している。
【0045】
従動接触部材72は、例えば厚さ一定の平板状の接触部91を有している。つまり、この従動側接触部材72は、所定厚さ以上の板状の接触部91のみで構成された板状の部材(硬質部材)である。なお、接触部91の厚さ寸法は、例えば略3.5mmである。また、この接触部91は、例えば矩形の平板状に形成されている。
【0046】
接触部91は、平面状の接触面(動力伝達面)92を回転方向後面(回転方向とは反対側の面)に有し、この接触面92が耕耘軸23の駆動回転時に駆動側接触部材42の接触面62と面状に接触して動力伝達が行われる。また、接触部91の略中央部には、孔部93が回転方向前後面に貫通して形成されている。そして、その孔部93にはロールピン75が挿脱可能に挿入(嵌入)されている。
【0047】
さらに、接触部91の先端面には、中央作業部2に対する延長作業部3の展開方向への回動時において第1駆動側案内面58aと接触した場合にその第1駆動側案内面58aによって案内される回転方向後方を向いた傾斜状の第1従動側案内面95aが形成されている。そして、図8に示す状態において、従動接触部材72の第1従動側案内面95aは、側面視で水平な回転中心軸線X2に対して所定の傾斜角度βをもって傾斜した傾斜方向に沿って位置する。その傾斜角度βは、第1駆動側案内面58aの傾斜角度αと同じ角度(略同じ角度を含む)である。
【0048】
また、従動側ベース部材71の取付部82には、中央作業部2に対する延長作業部3の展開方向への回動時において第2駆動側案内面58bと接触した場合にその第2駆動側案内面58bによって案内される回転方向前方を向いた傾斜状の第2従動側案内面95bが形成されている。なお、回転中心軸線X1,X2に対する各案内面58a,58b,95a,95bの傾斜角度は、いずれも同じである。
【0049】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0050】
例えば圃場において最大の作業幅で代掻作業(耕耘整地作業)をする場合には、左右の延長作業部3を折畳状態から展開状態に切り換える。
【0051】
すなわち、電動油圧シリンダの伸び動作により、中央作業部2に対して左右の延長作業部3を回動中心軸5を中心として展開方向へ略180度回動させると、左右の延長作業部3は、中央作業部2の左右両側方に位置して所望の展開状態となる。
【0052】
このとき、各延長作業部3の従動側係合体35が中央作業部2の左右の駆動側係合体25に向かって接近し、それらの接触部材42,72の両接触面62,92同士が互いに近接対向した状態となる。
【0053】
そして、中央作業部2の耕耘体12の耕耘軸(駆動軸)23がトラクタ側からの動力に基づいて駆動回転すると、両係合体25,35が互いに係合して、各駆動側接触部材42の接触面62と各従動側接触部材72の接触面92とが互いに面接触することで、中央作業部2側から延長作業部3側への動力伝達が行われ、その結果、延長作業部3の耕耘体32の耕耘軸(従動軸)36が従動回転する。
【0054】
この際、動力伝達状態のクラッチである両係合体25,35は、接触部材42,72のみが互いに接触している(図9及び図10参照)。なお、このように接触部材42,72の接触(当接)のみで動力伝達が行われるのが好ましいが、例えば接触部材42,72の一部がベース部材41,71の一部に部分的に接触するようにしてもよい。
【0055】
こうして、耕耘軸23,36が所定方向に回転することにより、中央作業部2の耕耘体12と左右の展開状態の延長作業部3の耕耘体32とで耕耘作業が行われ、その後方で、整地体13,33により整地作業が行われる。
【0056】
そして、農作業機1によれば、駆動側係合体25及び従動側係合体35の少なくともいずれか一方、すなわち例えば両方が、ベース部材41,71と、当該ベース部材41,71とは別体で耐摩耗性を有した動力伝達用の接触部材42,72とを有するため、駆動側係合体25及び従動側係合体35の耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0057】
すなわち例えば、一体物のクラッチ爪(駆動側係合体、従動側係合体)の場合には、接触部(表面部)を焼き入れによりその硬度を高くできるものの、焼き入れ深さが例えば2mm程度しか入らず、焼き入れ部分が摩耗して終わるとその後の摩耗速度が急激に上がるという不具合が生じるが、本実施形態に係る駆動側係合体25及び従動側係合体35では、そのような不具合が発生せず、クラッチ爪の摩耗軽減を図ることができ、よって耐摩耗性の向上を適切に図ることができる。
【0058】
また、耐摩耗性を有した硬質部材である接触部材42,72は、対応するベース部材41,71に着脱可能に取り付けられているため、互いに接触した接触部材42,72の接触部61,91がその間に入り込んだ土の研磨作用等により摩耗して薄くなった場合には、その薄くなった接触部材42,72を新品に交換すればよく、ベース部材41,71の交換は不要であることから、交換時のコスト低減を図ることができる。
【0059】
なお、農作業機1の延長作業部3の従動側係合体35は、例えば図11ないし図13に示すものでもよい。
【0060】
この従動側係合体35の従動側接触部材72は、図6に示すものとは異なり、軸状の取付部101が接触部91のうち接触面92とは反対側の面に一体に突設されている。つまり、この従動側接触部材72は、所定厚さ以上の板状の接触部91と、この接触部91に一体に突設された取付部101とを有して構成されている。そして、従動側接触部材72の取付部101は、従動側ベース部材71の取付部82の取付用孔90に挿脱可能に挿入(嵌入)されて取り付けられている。
【0061】
つまり、この従動側係合体35では、ロールピン等の取付手段73を用いることなく、従動側接触部材72が従動側ベース部材71の取付部82に着脱可能に取り付けられている。なお同様に、例えば駆動側接触部材の板状の接触部に軸状の取付部を設けて、取付ボルト等を用いることなく駆動側接触部材を駆動側ベース部材に着脱可能に取り付けた構成等でもよい。
【0062】
また、農作業機1の延長作業部3の従動側係合体35は、例えば図14ないし図16に示すものでもよい。
【0063】
この従動側係合体35の従動側接触部材72は、図6に示すものとは異なり、接触部91が円板状に形成されている。また、従動側ベース部材71の取付部82には、貫通孔90´に連通した円形状の埋込用孔(連通孔)103が形成されている。そして、その埋込用孔103内に接触部91が嵌脱可能に嵌合されて埋め込まれており、この接触部91の接触面92が取付部82の回転方向後面と同一面上に位置している。
【0064】
つまり、この従動側係合体35でも、ロールピン等の取付手段73を用いることなく、従動側接触部材72が従動側ベース部材71の取付部82に着脱可能に取り付けられている。なお同様に、例えば駆動側ベース部材の取付部に埋込用孔を設けて、取付ボルト等を用いることなく駆動側接触部材を埋込用孔内に埋め込むようにして駆動側ベース部材に着脱可能に取り付けた構成等でもよい。
【0065】
また、この図14ないし図16に示す従動側係合体35においては、第1従動側案内面95aは、従動側接触部材72ではなく、従動側ベース部材71の取付部82に形成されている。
【0066】
なお、互いに係合して動力を伝達する駆動側係合体及び従動側係合体の両方が、いずれもベース部材及び接触部材を有する構成には限定されず、例えば駆動側係合体及び従動側係合体のいずれか一方のみがベース部材及び接触部材を有する構成でもよい。
【0067】
また、別部材の接触部材(硬化層)がベース部材に対して着脱可能な構成には限定されず、例えば接触部材をベース部材の取付部に溶接等により固定的に取り付けた構成、接触部材をベース部材の取付部の埋込用孔に埋込固定した構成、接触部材をベース部材の取付部の嵌合用孔に嵌合固定した構成等でもよい。
【0068】
さらに、接触部材や接触部の形状は任意であり、板状には限定されず、例えば円柱状、四角等の角柱状、直方体状等でもよい。
【0069】
また、接触部材は、ベース部材の少なくとも一部よりも摩耗しにくい耐摩耗性のある硬質な部材であればよく、その素材(材料)も任意である。
【0070】
さらに、接触部材をベース部材に取り付けるための取付手段(取付部材)は、例えばボルトやピン(ロールピン、溝付きピン、ノックピン等)を用いたものには限定されず、それ以外のものでもよいが、例えばベース部材の少なくとも一部よりも硬質な取付手段(耐摩耗性を有した硬質なピン等の取付部材)を用いることで、駆動側係合体や従動側係合体の耐摩耗性の向上をより一層適切に図ることができる。
【0071】
なお、本発明のいくつかの実施形態及びその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 農作業機
2 中央作業部
3 延長作業部
25 駆動側係合体
35 従動側係合体
41 駆動側ベース部材(ベース部材)
42 駆動側接触部材(接触部材)
58a 第1駆動側案内面
58b 第2駆動側案内面
61,91 接触部
71 従動側ベース部材(ベース部材)
72 従動側接触部材(接触部材)
95a 第1従動側案内面
95b 第2従動側案内面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図16