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特開2024-168019オープンシールド工法用コンクリート函体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168019
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】オープンシールド工法用コンクリート函体
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20241128BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E21D9/06 331
E21D11/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084398
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(71)【出願人】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】日浦 正一
(72)【発明者】
【氏名】小谷 幸玄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】村澤 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】近田 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元晶
【テーマコード(参考)】
2D054
2D155
【Fターム(参考)】
2D054AB05
2D054AC16
2D155BA01
2D155BB03
2D155GC04
2D155LA06
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】推進反力が大きく受ける条件で使用され、壁厚が小さく接続端面が平滑面であるオープンシールド工法用のコンクリート函体だけでなく、通常の印籠型の開削用コンクリート函体や耐震性能を有する個々の函体に可撓性を持たせたコンクリート函体でもコンクリート函体の接続端面やその近傍にクラックや割れなどが生ずることなく敷設できる、オープンシールド工法用コンクリート函体を提供する。
【解決手段】オープンシールド機1の推進ジャッキの推進反力を押角8を介して受けるコンクリート函体4であって、前記押角8が当接する鋼製板体18aをコンクリート函体4の内側に設ける支持部材18bで支承してコンクリート函体4の前端の内方に設置した。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンシールド機の推進ジャッキの推進反力を押角を介して受けるコンクリート函体であって、前記押角が当接する鋼製板体をコンクリート函体内側に設ける支持部材で支承してコンクリート函体前端の内方に設置したことを特徴とするオープンシールド工法用コンクリート函体。
【請求項2】
押角が当接する鋼製板体は支持部材に直交する請求項1記載のオープンシールド工法用コンクリート函体。
【請求項3】
押角が当接する鋼製板体はコンクリート函体の前端より前方へ出るように配置する請求項1および請求項2記載のオープンシールド工法用コンクリート函体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市街地に上下水道、地下道等の地下構造物を施工するオープンシールド工法およびそれに使用するコンクリート函体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
開削工法で使用する連結部が形成されたコンクリート函体をオープンシールド工法でも使用できるようにしたもので、推進ジャッキによる押し出しのための荷重を受けてもクラックの発生や角部のかけることを防止できるオープンシールド工法用コンクリート函体として下記特許文献のものがある。
【特許文献1】特許第5960785号公報
【0003】
これは図9図10に示すように、コンクリート函体4は鉄筋コンクリート製で、に左側版4a、右側版4bと上床板4cと下床板4dとからなるもので、前後面を開口4eとして開放されている略角筒状であり、前後端部のうち後端部に連結部116が形成され、他端部に被連結部117が形成される。
【0004】
前記連結部116は、後方に向けて段差を有する薄肉部116aを形成した略角筒状の雄形部材であり、被連結部117は、内周の長さが連結部116の外周の長さより長い略角筒状であり、連結部116の薄肉部116aの外周面に嵌着可能な凹部117aを内周に形成した雌形部材である。
【0005】
前記プレスバー(押角)110はコンクリート函体4の前端部の前記被連結部117の雌形部材に嵌合により着脱させることができるものとして、鋼材であるH形鋼を使用した。
【0006】
H形鋼118のフランジ119、120のうち、片側のフランジ119の半分を欠如させて、欠如しないフランジ120を雌形部材の前端面覆い板とし、残り(ウエブ121とフランジ119)の半分を雌形部材の内周への係合部とする。
【0007】
この雌形部材の内周への係合部となる部分は、その上下がコンクリート函体4の雌形部材の内周のアール状の角部へ係合するようにアール状に切欠いている。
【0008】
この係合部に対して前記フランジ120の前面にこれよりも上下に長い鋼板を当接板125として重合させた。当接板125は上下に突出するものであり、上方への突出長はコンクリート函体4の上床板4cよりも上に出るもので、ここに吊り用鋼材122を設ける。
【0009】
また、前記雌形部材の内周への係合部となるウエブ121に、コンクリート函体4の左側版4a、右側版4bの内側面への係合部材23を横向きに取り付けた。該係合部材123には短尺なH形鋼を利用する。
【0010】
さらに、係合部材123にはチャンネル材によるカンヌキ受け124を設ける。
【0011】
プレスバー(押角)110はコンクリート函体4の前端部の前記被連結部117の雌形部材に嵌合により着脱させることができるものとして、左右に1本ずつ組としてあるもので、前記カンヌキ受け124はコンクリート函体4の内方に向けて対向し、ここにカンヌキとしてパイプ等を渡して嵌合状態を強固にすることができる。
【0012】
次に使用法を説明する。前記のように、プレスバー(押角)110はシールドジャッキの推進力を分散させ、コンクリート函体4に伝達させるためのものである。
【0013】
オープンシールド機を使用するオープンシールド工法は、掘削機でフロント機の前面又は上面から土砂を掘削しかつ排土してシールド機を前進させ、前記第1番目のコンクリート函体4の前に第2番目のコンクリート函体4をテール部内に吊り降す。以下、同様の掘進及びコンクリート函体4のセット工程を繰り返して、順次コンクリート函体4を縦列に地中に埋設する。
【0014】
プレスバー(押角)110はテール部内に吊り降すコンクリート函体4の前側に、吊り降す前か、吊り降した後にセットするものであり、テール部の前進は推進ジャッキ(シールドジャッキ)を伸ばしてコンクリート函体4を反力にこれを行うが、その際、プレスバー110はコンクリート函体4の前端面の前記雌形部材に嵌合させ、フランジ120が薄肉部である凹部117aの外側の表面を覆うので、推進ジャッキによる押し出しのための荷重を受けてもクラックの発生や角部のかけることを防止できる。
【0015】
オープンシールド機の推進後は、カンヌキ受け124からカンヌキを外し、コンクリート函体4から脱して上方に吊り上げ、次のコンクリート函体4へのセットに備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1では、前記鋼製枠体であるプレスバーの平滑面側をオープンシールド機側に向け、シールドジャッキからの推進反力を受けることになるため、前記開削用コンクリート函体の凹部側断面全体でオープンシールド機の推進反力を受けることができる。したがって、オープンシールド機を使用して開削用印籠型のコンクリート函体を敷設することが可能となる。
【0017】
しかし、印籠型の開削用コンクリート函体はその凹部側の端面に別のコンクリート函体の凸部の端面を嵌め込むに当たって、所定の目地間隔を確保できるように、凹部端面先端部と凸部端面先端部が当接せず、一定の間隔を保持している状態となるよう製作される。
【0018】
そのため、特に凹部端面での鉛直方向の寸法精度や鉛直面の平滑状態までは考慮されていない。したがって、前記鉛直方向や面凹凸などの平滑状態によっては、鋼製枠体プレスバーと凹部の製作精度等によっては鋼製枠体プレスバーに一部に非接触となる部分が生じて接触箇所に推進反力による局部応力が発生・集中し、接触箇所にクラックやコンクリートの割れが生じてしまう場合が想定される。
【0019】
つまり、オープンシールド機推進反力が鋼製枠体プレスバーを介して前記コンクリート函体の凹部接触部全体に均等にその反力が分散されず、クラック等が生じる可能性が大きくなる。
【0020】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、推進反力が大きく受ける条件で使用され、壁厚が小さく接続端面が平滑面であるオープンシールド工法用のコンクリート函体だけでなく、通常の印籠型の開削用コンクリート函体や耐震性能を有する個々の函体に可撓性を持たせたコンクリート函体でもコンクリート函体の接続端面やその近傍にクラックや割れなどが生ずることなく敷設できる、オープンシールド工法用コンクリート函体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、オープンシールド機の推進ジャッキの推進反力を押角を介して受けるコンクリート函体であって、前記押角が当接する反力伝達部材をコンクリート函体内側に設ける支持部材で支承してコンクリート函体前端に設置したことを要旨とするものである。
【0022】
請求項1記載の本発明によれば、コンクリート函体内側に設ける支持部材で支承した反力伝達部材が押角に当接するので、前記押角の後面は前記先頭のコンクリート函体の前面の両側版端面には当接せずにシールドジャッキの伸長に伴う推進反力が前記コンクリート函体に伝達される。
【0023】
すなわち、オープンシールド機の推進反力は、テール部の先頭のコンクリート函体の両側壁端面には作用せず、前記先頭のコンクリート函体内面の支持部材でコンクリート内部後方へ伝達される。
【0024】
したがって、大きな推進反力が作用すると想定される条件に対して比較的壁厚の小さいコンクリート函体や、印籠型の開削用コンクリート函体でも側版端面部のクラックや割れなどの心配がなく、オープンシールド機の推進に伴う推進反力を確実に先頭のコンクリート函体に伝達することができる。
【0025】
請求項2記載の本発明は、押角が当接する鋼製板体は支持部材に直交することを要旨とするものである。
【0026】
請求項2記載の本発明によれば、押角が当接する鋼製板体と支持部材の相互の向きを考慮したものであり、鋼製板体は押角を介してシールドジャッキの伸長に伴う推進反力を十分に受けることができ、その力を反力伝達部材である支持部材に伝えて、コンクリート函体により受け止めることができる。
【0027】
請求項3記載の本発明は、押角が当接する鋼製板体はコンクリート函体の前端より前方へ出るように配置することを要旨とするものである。
【0028】
請求項3記載の本発明によれば、押角が当接する鋼製板体はテール部内の先頭のコンクリート函体前面の両側版面より前面に位置するので、前記押角の後面は前記先頭のコンクリート函体の前面の両側版端面には当接しないことを確実に確保できる。
【発明の効果】
【0029】
以上述べたように本発明のオープンシールド工法用コンクリート函体は、推進反力が大きく受ける条件で使用され、壁厚が小さく接続端面が平滑面であるオープンシールド工法用のコンクリート函体だけでなく、通常の印籠型の開削用コンクリート函体や耐震性能を有する個々の函体に可撓性を持たせたコンクリート函体でもコンクリート函体の接続端面やその近傍にクラックや割れなどが生ずることなく敷設できるものである。
【0030】
したがって、コンクリート函体端面やその近傍のクラックや割れが生じることなく、所定の目地間隔を保持して、かつ、大きな推進反力が作用すると想定される条件に対して比較的壁厚の小さい接続端面が平滑なコンクリート函体や印籠型の開削用コンクリート函体を、安全かつ確実に敷設することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明のオープンシールド工法用コンクリート函体の1実施形態を示す横断平面図である。
図2図1のA-A線矢視図である。
図3】本発明のオープンシールド工法用コンクリート函体の1実施形態を示す縦断側面図である。
図4】本発明のオープンシールド工法用コンクリート函体とその後方のコンクリート函体間のジョイント部の接続部材の取り付け状況を示す横断平面図である。
図5】本発明のオープンシールド工法用コンクリート函体とその後方のコンクリート函体間のジョイント部の接続部材の取り付け状況を示す縦断側面図である。
図6】本発明のオープンシールド工法用コンクリート函体の正面図である。
図7図6のA部拡大図である。
図8】オープンシールド工法用のコンクリート函体の斜視図である。
図9】従来例を示す横断平面図である。
図10】従来例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。尚、各図は印籠型の開削用コンクリート函体の場合を示しているが、図示の各部材については接続端面が平滑なコンクリート函体についても同様に適用できるので、図は省略する。
【0033】
図1は本発明のオープンシールド工法用コンクリート函体の1実施形態を示す横断平面図で、図中1はオープンシールド機で、左右の側壁板とこれら側壁板に連結する底版とから成る上面を開口したフロント部1aおよび、前記フロント部1aと同様に左右の側版、底版から成り上面を開口したテール部1bで構成されるシールド機である。
【0034】
前記オープンシールド機1の左右の先端刃口には前方に向けて伸長するスライド土留板6を装着し、また、フロント部1aの後端からテール部1bに向けて伸長する推進ジャッキ(図示せず)を後方に向け上下に並べて配設されている。
【0035】
前記オープンシールド機1はフロント部1の後端にテール部1bが嵌入して相互の嵌合部で中折れ部2を形成して曲線施工が可能とした。
【0036】
図中18は反力伝達部材であり、これはオープンシールド機1のテール部1bに吊下ろす先頭のコンクリート函体4へ設けるもので、押角8(プレスバー)の後面の当接する平板状の鋼製板体18aと、その後面から後方へ突き出し前記先頭のコンクリート函体4の両側壁の内面に当接する支持部材18bから成り、鋼製板体18aはコンクリート函体内側に設ける支持部材18bで支承される。
【0037】
このように、反力伝達部材18は鋼製板体18aと支持部材18bとの分割部材の集合体とする。
【0038】
前記押角8が当接する鋼製板体18aは支持部材18bに直交するように設けられ、フランジ等で補強される。
【0039】
支持部材18bは溝形鋼またはH型鋼によるもので、コンクリート函体4の内面の各面の横架される所定の位置に予め設置されたインサートに固定用ボルト20を挿入して堅固に固定される。
【0040】
また、前記押角が当接する鋼製板体18aはコンクリート函体4の前端と同じ面一で設けてもよいが、コンクリート函体4の前端より少し前方へ出るように配置する。
【0041】
このようにして、オープンシールド機1の推進において推進ジャッキが伸長し、押角8を後方へ向けて押し付けると、前記押角8の後面は前記反力伝達部材18の前記鋼製板体18aに押し当てられる。
【0042】
そして、反力伝達部材18である鋼製板体18aおよび支持部材18bを介して前記反力伝達部材18を固定した固定用ボルト20とインサート19から、前記先頭のコンクリート函体4の内部から後方へ向けて伝達され、さらに各ジョイント部に横架・固定された接続部材21を介して順次、後方へ伝達される。テール部の先頭のコンクリート函体4の両側壁端面には作用しない。
【0043】
以上の推進反力の伝達メカニズムにより、大きな推進反力が作用すると想定される条件などに対して比較的壁厚の小さいコンクリート函体や、印籠型の開削用コンクリート函体を押角8に当接する先頭のコンクリート函体4として敷設しても、その側版端面部にクラックや割れなどが生じる危険がなく、オープンシールド機1を用いて、それらのコンクリート函体へ安全に推進反力を伝達することができる。
【0044】
また、反力伝達部材18は分割部材の集合体とすることで据え付けた函体4への反力伝達部材18の固定作業をクレーン等の荷役機械を用いる事無く、人力作業で行うことが出来る。図中27は反力伝達部材18の分割部材同士の接合用ボルトである。
【0045】
先頭のコンクリート函体4以下、後続のコンクリート函体4同士の接続目地には接続部材21としてH型鋼や溝形鋼を設置した。
【0046】
接続部材21は先頭のコンクリート函体4の後方の端面に接するコンクリート函体4とのジョイント部および、その後方の各コンクリート函体4の内面の頂版、側版、底版の各ジョイント部で所定の目地間隔を保持して、接続部材21をジョイント部に横架するようにして、設置される。前記接続部材21は固定用ボルト20を挿入する孔が設けられている。前記接続部材21は、コンクリート函体内面の各面の横架される所定の位置に予め設置されたインサート19に固定用ボルト20を挿入して堅固に固定される。
【0047】
以上より、前記推進反力は各コンクリート函体4間のジョイント部の接続端面には伝達されないので、接続端面部でのクラックや割れの生じる危険はない。
また、印籠型の開削用函体でも安全に敷設することが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1…オープンシールド機 1a…フロント部
1b…テール部 2…中折れ部
3…推進ジャッキ(シールドジャッキ)
4…コンクリート函体 4a…左側版
4b…右側版 4c…頂版
4d…底版 4e…開口
4f…ハンチ部 6…スライド土留板
8…プレスバー(押角) 9…止水バー
14…シース孔 17…裏込注入材
18…反力伝達部材 18a…鋼製板体
18b…支持部材 19…インサート
20…固定用ボルト 21…接続部材
24…グラウト孔 27…反力伝達部材接合ボルト
30…目地
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10