(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168025
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】自動車用熱マネージメントシステム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20241128BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/22 651A
B60H1/22 671
B60H1/32 613B
B60H1/32 613C
B60H1/32 613E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084408
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】薛 シュン
(72)【発明者】
【氏名】関谷 禎夫
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】米田 広
(72)【発明者】
【氏名】川村 浩伸
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211BA02
3L211BA23
3L211CA12
3L211DA22
3L211DA23
3L211DA24
3L211DA26
3L211DA29
3L211DA48
3L211EA83
3L211GA22
3L211GA23
3L211GA24
3L211GA26
(57)【要約】
【課題】電気機器の温度を常に適温範囲内に維持しながら、適切な空調運転を行うことが可能な自動車用熱マネージメントシステムを提供する。
【解決手段】冷媒を圧縮する圧縮機11と、前記冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器51と、前記冷媒と車室内の空気との間で熱交換を行わせる第1室内熱交換器61と、前記冷媒と第1電気機器700との間で熱交換を行わせて第1電気機器700の温度を調整する機器温調用熱交換器71と、前記冷媒の減圧および流量制御を行う複数の膨張弁15,16,17と、複数の膨張弁15,16,17を制御する制御装置400とを備えた自動車用熱マネージメントシステム1において、機器温調用熱交換器71の接続先を圧縮機11の吐出口または吸込口に切替可能な切替装置13を備え、制御装置400は、前記車室内の空調負荷に基づいて、切替装置13を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器と、
前記冷媒と車室内の空気との間で熱交換を行わせる第1室内熱交換器と、
前記冷媒と第1電気機器との間で熱交換を行わせて前記第1電気機器の温度を調整する機器温調用熱交換器と、
前記室外熱交換器、前記第1室内熱交換器および前記機器温調用熱交換器に流入する前記冷媒の減圧および流量制御を行う複数の膨張弁と、
前記複数の膨張弁を制御する制御装置とを備えた自動車用熱マネージメントシステムにおいて、
前記機器温調用熱交換器の接続先を前記圧縮機の吐出口または吸込口に切替可能な切替装置を備える
前記制御装置は、前記第1電気機器の温度に基づいて、前記切替装置を制御する
ことを特徴とする自動車用熱マネージメントシステム。
【請求項2】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器と、
前記冷媒と車室内の空気との間で熱交換を行わせる第1室内熱交換器と、
前記冷媒と第1電気機器との間で熱交換を行わせて前記第1電気機器の温度を調整する機器温調用熱交換器と、
前記室外熱交換器、前記第1室内熱交換器および前記機器温調用熱交換器に流入する前記冷媒の減圧および流量制御を行う複数の膨張弁と、
前記複数の膨張弁を制御する制御装置とを備えた自動車用熱マネージメントシステムにおいて、
前記室外熱交換器、前記第1室内熱交換器および前記機器温調用熱交換器に前記複数の膨張弁を介して接続され、前記冷媒の気液分離を行うとともに前記冷媒の余剰分を一時的に蓄えるレシーバと、
前記圧縮機の吐出口を前記室外熱交換器に接続しかつ前記圧縮機の吸込口を前記第1室内熱交換器に接続する第1切換位置、または前記圧縮機の吐出口を前記第1室内熱交換器に接続しかつ前記圧縮機の吸込口を前記室外熱交換器に接続する第2切換位置に切換可能な四方切換弁とを備え、
前記制御装置は、前記車室内の空調負荷に基づいて、前記四方切換弁を制御する
ことを特徴とする自動車用熱マネージメントシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車用熱マネージメントシステムにおいて、
前記四方切換弁と前記レシーバとの間で前記室外熱交換器と直列に取り付けられた第2室内熱交換器を備える
ことを特徴とする自動車用熱マネージメントシステム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の自動車用熱マネージメントシステムにおいて、
前記室外熱交換器を通過する風量を制御する第1シャッタ装置を備える
ことを特徴とする自動車用熱マネージメントシステム。
【請求項5】
請求項3に記載の自動車用熱マネージメントシステムにおいて、
前記第1室内熱交換器を通過する風量を制御する第1シャッタ装置と、
前記第2室内熱交換器を通過する風量を制御する第2シャッタ装置とを備える
ことを特徴とする自動車用熱マネージメントシステム。
【請求項6】
請求項3に記載の自動車用熱マネージメントシステムにおいて、
前記第1電気機器は、バッテリであり、
前記自動車用熱マネージメントシステムは、前記バッテリから電力供給を受ける第2電気機器と前記冷媒との間で熱交換を行わせて前記第2電気機器を冷却する機器冷却用熱交換器と、
前記機器冷却用熱交換器に流入する前記冷媒の減圧および流量制御を行う膨張弁とを備え、
前記制御装置は、前記車室内の暖房時に、前記第1電気機器および前記第2電気機器から回収される熱量と前記車室内の空調負荷とに基づいて、前記四方切換弁を制御する
ことを特徴とする自動車用熱マネージメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用熱マネージメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
1つの冷媒回路を用いて、少なくとも空気調和とバッテリ(電気機器)の温調とを行う自動車用熱マネージメントシステムは、特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1には、「バッテリの一時的な加熱要求に対応できる自動車用温調システムを提供する。前記自動車用温調システムは、冷媒回路と、前記冷媒回路の冷媒の流れを制御する制御部を備える。前記冷媒回路は、空気調和用の蒸発器および放熱器との間に、前記バッテリの温調を行うバッテリ熱交換器、および前記バッテリ熱交換器の両側に配置される2つの減圧器を含む、バッテリ温調用冷媒路を有し、2つの前記減圧器のうち少なくとも暖房運転時に前記バッテリ熱交換器の上流側となる前記減圧器は、開度可変式の膨張弁である。前記制御部は、所定条件成立時、前記放熱器からの高圧冷媒を前記バッテリ熱交換器に流して前記バッテリを暖める始動モードを実行する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された自動車用温調システムでは、バッテリを暖める始動モードを実行する時、空気調和用の放熱器に送風するファンを停止するため、車室を暖房することはできない問題があった。
【0006】
一方、たとえ車室を暖房するために前記ファンを運転させたとしても、特許文献1に記載された自動車用温調システムでは、空気調和用の放熱器とバッテリ熱交換器が直列に設置されているため、流れる冷媒量が同じとなり、それぞれの熱交換量、ひいては空調の吹出温度とバッテリの温度を的確に制御することは困難である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気機器の温度を常に適温範囲内に維持しながら、適切な空調運転を行うことが可能な自動車用熱マネージメントシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器と、前記冷媒と車室内の空気との間で熱交換を行わせる第1室内熱交換器と、前記冷媒と第1電気機器との間で熱交換を行わせて前記第1電気機器の温度を調整する機器温調用熱交換器と、前記室外熱交換器、前記第1室内熱交換器および前記機器温調用熱交換器に流入する前記冷媒の減圧および流量制御を行う複数の膨張弁と、前記複数の膨張弁を制御する制御装置とを備えた自動車用熱マネージメントシステムにおいて、前記機器温調用熱交換器の接続先を前記圧縮機の吐出口または吸込口に切替可能な切替装置を備え、前記制御装置は、前記第1電気機器の温度に基づいて、前記四方切換弁を制御するものとする。
【0009】
また、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器と、前記冷媒と車室内の空気との間で熱交換を行わせる第1室内熱交換器と、前記冷媒と第1電気機器との間で熱交換を行わせて前記第1電気機器の温度を調整する機器温調用熱交換器と、前記室外熱交換器、前記第1室内熱交換器および前記機器温調用熱交換器に流入する前記冷媒の減圧および流量制御を行う複数の膨張弁と、前記複数の膨張弁を制御する制御装置とを備えた自動車用熱マネージメントシステムにおいて、前記室外熱交換器、前記第1室内熱交換器および前記機器温調用熱交換器に前記複数の膨張弁を介して接続され、前記冷媒の気液分離を行うとともに前記冷媒の余剰分を一時的に蓄えるレシーバと、前記圧縮機の吐出口を前記室外熱交換器に接続しかつ前記圧縮機の吸込口を前記第1室内熱交換器に接続する第1切換位置、または前記圧縮機の吐出口を前記第1室内熱交換器に接続しかつ前記圧縮機の吸込口を前記室外熱交換器に接続する第2切換位置に切換可能な四方切換弁とを備え、前記制御装置は、前記車室内の空調負荷に基づいて、前記四方切換弁を制御するものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気機器を常に適温範囲内に維持しながら、適切な空調運転を行うことが可能な自動車用熱マネージメントシステムを提供することができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステムを示す概略構成図。
【
図2】第1の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステムの「冷房+機器冷却モード」における冷媒の流れを示す概略構成図。
【
図3】第1の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステムの「暖房+機器冷却モード」における冷媒の流れを示す概略構成図。
【
図4】第1の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステムの「暖房+機器温調モード」における冷媒の流れを示す概略構成図。
【
図5】第1の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステムの第1の変形例を示す概略構成図。
【
図6】第1の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステムの第2の変形例を示す概略構成図。
【
図7】第1の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステムの第3の変形例を示す概略構成図。
【
図8】本発明の第2の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステムの「冷房+機器冷却モード」における冷媒の流れを示す概略構成図。
【
図9】第2の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステムの「再熱除湿+機器冷却モード」と、「除湿暖房+機器冷却モード(A)」における冷媒の流れを示す概略構成図。
【
図10】第2の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステムの「除湿暖房+機器冷却モード(B)」における冷媒の流れを示す概略構成図。
【
図11】第2の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステムの「除湿暖房+機器温調モード」における冷媒の流れを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図中、同等の要素には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例0014】
図1は、本発明の第1の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステム1を示す概略構成図である。この自動車用熱マネージメントシステム1は、車室内の空調、ならびに、バッテリ700(第1電気機器)およびバッテリ700に接続されたモータジェネレータ800(第2電気機器)の温度調整を行う。
【0015】
バッテリ700は、例えば電気エネルギの蓄積および放出が可能な複数のリチウムイオン電池から構成される。リチウムイオン電池は、パフォーマンスや寿命が温度の影響を大きく受ける特徴がある。具体的には、リチウムイオン電池内部の化学反応は温度が高いほど活発になるため、高温下での利用はバッテリ700の劣化を促進してしまう。そして、最高許容温度を超えると、異常発熱による発煙や発火、本体の変形などの不具合にもつながる。その一方で、低温時にリチウムイオン電池の内部抵抗が増加するため、出力や容量は低下し、航続距離や加速性能等に悪影響を与える。また、冷えた状態で急速充電を行うと、リチウム金属の電析が起こりやすくなり、急激な劣化を引き起こす可能性がある。上述の理由から、状況に応じて加熱、または、冷却を行い、バッテリ700を常に適温に維持することが望ましい。
【0016】
モータジェネレータ800は、インバータ(図示せず)を介して、バッテリ700に接続された電気機器の1つであり、電気エネルギと運動エネルギとの間の変換を行う役割を果たす。具体的には、モータジェネレータ800は、走行用駆動力を提供するモータとして機能する時、インバータから供給された電気エネルギによって回転動力を発生し、駆動輪を駆動する。その一方で、車両の減速中や降坂走行時にジェネレータとして機能し、駆動輪から伝達された運動エネルギを電力エネルギに変換し、インバータを介してバッテリ700を充電する。モータジェネレータ800は、作動時に発熱し、高温になると電気回路の劣化が進行しやすいので、冷却が必要である。
【0017】
自動車用熱マネージメントシステム1は、
図1に示したように、冷媒回路(実線で示す)と、前記冷媒回路とバッテリ700との間に熱を移動させるための第1熱媒体回路(破線で示す)と、前記冷媒回路とモータジェネレータ800との間に熱を移動させるための第2熱媒体回路(点線で示す)と、熱マネージメントシステムの動作をコントロールする制御装置400と、を備える。
【0018】
前記冷媒回路は、作動媒体として、例えばR1234yfやR134aを用いる。この冷媒回路は主に、冷媒を圧縮する圧縮機11と、冷媒の流れ方向を制御する四方切換弁12および三方切換弁13と、冷媒の気液分離をするとともに余剰冷媒を一時的に蓄えるレシーバ14と、外気と冷媒との間で熱交換を行わせる室外熱交換器51と、車室に供給する空気を冷媒と熱交換させ温・湿度を調節するための室内熱交換器61(第1室内熱交換器)と、バッテリ700の温度調整をするための機器温調用熱交換器71と、モータジェネレータ800を冷却するための機器冷却用熱交換器81と、冷媒の減圧および流量制御の作用を発揮する膨張弁15,16,17,18と、から構成される。なお、膨張弁15,16,17,18を全閉にすると、冷媒の流れを阻止することができる。
【0019】
四方切換弁12は、4つの接続口を有する。接続口の一つ目は冷媒配管103を介して、圧縮機11の吐出口に、二つ目は冷媒配管102と分岐継手161と冷媒配管101とを介して、圧縮機11の吸込口に、三つ目は冷媒配管105を介して、室外熱交換器51に、四ツ目は冷媒配管104を介して、分岐継手163に、つながる。
【0020】
分岐継手163は、互いに連通する3つの接続口を有し、それぞれに四方切換弁12につながる冷媒配管104と、室内熱交換器61につながる冷媒配管106と、三方切換弁13につながる冷媒配管132とが、取り付けられている。分岐継手163は、冷媒配管106と、冷媒配管132を流れる冷媒を分流、もしくは、合流させる役割を果たす。
【0021】
三方切換弁13は、3つの接続口を有する。接続口の一つ目は前記のように分岐継手163を介して、四方切換弁12に、二つ目は冷媒配管107を介して、機器温調用熱交換器71に、三つ目は冷媒配管131を介して、分岐継手162に、つながる。
【0022】
分岐継手162は、三方切換弁13につながる冷媒配管132と、機器冷却用熱交換器81につながる冷媒配管108と、冷媒配管110とを結ぶ。前記冷媒配管110のもう一方は、分岐継手161に接続しており、四方切換弁12につながる冷媒配管102と、圧縮機11の吸込口につながる冷媒配管101と、連通する。分岐継手162と分岐継手161は、冷媒配管108と、冷媒配管131と、冷媒配管102とを流れる冷媒を合流させ、圧縮機11の吸込口に導く役割を果たす。なお、冷媒配管102の途中に、分岐継手161から四方切換弁12への逆流を防止する逆止弁21を備えている。
【0023】
三方切換弁13は、機器温調用熱交換器71の接続先を圧縮機11の吐出口または吸込口に切替可能な切替装置を構成している。また、四方切換弁12は、圧縮機11の吐出口を室外熱交換器51に接続しかつ圧縮機11の吸込口を室内熱交換器61に接続する第1切換位置(
図2に示す)、または圧縮機11の吐出口を室内熱交換器61に接続しかつ圧縮機11の吸込口を室外熱交換器51に接続する第2切換位置(
図3に示す)に切換可能である。
【0024】
レシーバ14は、内部で冷媒の気液分離を行った上で、液冷媒のみを膨張弁15,16,17,18に送り出す役割を果たす。また、自動車用熱マネージメントシステム1の運転状態が変動するにつれて、必要な冷媒量が変化するので、余分な冷媒を液として蓄える機能も、レシーバ14が兼ね備えている。
【0025】
室外熱交換器51は、一般的に自動車の最前部に配置され、熱交換器内を流れる冷媒を、車速風、あるいは、後述する室外ファン501によって送られてきた外気と熱交換させ、外気から吸熱、もしくは、外気へ放熱する役割を果たす。
【0026】
また、室外熱交換器51の前方または後方に、室外ファン501やシャッタ装置502(第1シャッタ装置)を備えることが多い。室外ファン501は、車速風が十分に供給されない場合、例えば停車時や低速走行時に稼働し、室外熱交換器51を通過する風量を増加させる。その一方で、シャッタ装置502は、その開口面積を制御することによって、通風抵抗、ひいては風量を調節することができる。
【0027】
室外熱交換器51と、レシーバ14との間に設けられた膨張弁15は、室外熱交換器51内を流れる冷媒の圧力や流量を調節する機能を有し、室外熱交換器51と室外側冷媒経路を形成する。
【0028】
室内熱交換器61は、一般的に空調ケーシングの中に配置され、室内ファン(図示せず)等とともに、空調装置を構成する。前記空調装置は、吹出空気の温度・湿度・風量・配風の調整、および内外気の切替によって、窓ガラスの防曇や車室内の快適性を保つ役割を果たす。この吹出空気の温・湿度調整は、室内熱交換器61で中を流れる冷媒と、前記室内ファンから送られてきた空気との間で、熱交換を行わせることによって実現できる。なお、室内熱交換器61に供給される空気は、車室内を循環する内気と、車室外から導入される外気のどちらか一方、または両方の混合物、である。
【0029】
室内熱交換器61と、レシーバ14との間に設けられた膨張弁16は、室内熱交換器61内を流れる冷媒の圧力や流量を調節する機能を有し、室内熱交換器61と室内側冷媒経路を形成する。
【0030】
機器温調用熱交換器71の役割は、熱交換器内を流れる冷媒を、後述する第1熱媒体と熱交換させることによって、バッテリ700と冷媒回路との間の熱移動を実現することにある。機器温調用熱交換器71内を流れる冷媒の圧力や流量は、機器温調用熱交換器71とレシーバ14との間に設けられた膨張弁17によって、制御される。機器温調用熱交換器71と膨張弁17から、機器温調用冷媒経路が形成される。
【0031】
機器冷却用熱交換器81の役割は、熱交換器内を流れる冷媒を、後述する第2熱媒体と熱交換させることによって、モータジェネレータ800と冷媒回路との間の熱移動を実現することにある。機器冷却用熱交換器81内を流れる冷媒の圧力や流量は、機器冷却用熱交換器81とレシーバ14との間に設けられた膨張弁18によって、制御される。機器冷却用熱交換器81と膨張弁18から、機器冷却用冷媒経路が形成される。
【0032】
上記第1熱媒体回路は、作動媒体として、例えばエチレングリコール水溶液を主成分とする不凍液を用いる。この第1熱媒体回路では、破線で示すように、機器温調用熱交換器71と、第1熱媒体を循環させるポンプ907と、温調対象となるバッテリ700の熱交換部とが、水配管より順次接続されている。前記バッテリ700の熱交換部は、例えば複数のリチウムイオン電池の間に設置された、第1熱媒体を流す伝熱管群である。なお、回路を循環する第1熱媒体の流量は、ポンプ907の回転数によって変更できる。
【0033】
上記第2熱媒体回路は、作動媒体として、例えばエチレングリコール水溶液を主成分とする不凍液を用いる。この第2熱媒体回路では、点線で示すように、機器冷却用熱交換器81と、第2熱媒体を循環させるポンプ908と、冷却対象となるモータジェネレータ800の熱交換部とが、水配管より順次接続されている。前記モータジェネレータ800の熱交換部は、例えばウォータージャケットである。なお、第1熱媒体回路と同様に、第2熱媒体の流量は、ポンプ908の回転数によって変更できる。
【0034】
自動車用熱マネージメントシステム1の動作をコントロールする制御装置400には、種々のセンサ、例えば車室内温度を検出する温度センサ等、が接続されている。この制御装置400は、それらのセンサから得た情報に基づき演算を実行し、圧縮機11等のコンポーネント(制御対象機器)に対して指令信号を生成し出力する。
【0035】
次に、本実施例の自動車用熱マネージメントシステム1の動作について説明する。この自動車用熱マネージメントシステム1は、車室内の空調、ならびに、バッテリ700およびバッテリ700に接続された電気機器、例えばモータジェネレータ800の温度調整を行う。
【0036】
主な運転モードは、「冷房+機器冷却モード」と、「暖房+機器冷却モード」と、「暖房+機器温調モード」と、の3つに大別できる。以下、
図2~
図4に沿って、運転モード毎に詳細に説明する。なお、
図2~
図4では、運転モードの切り替えに使用する四方切換弁12と、三方切換弁13における冷媒の流通経路を、実線で示す。
【0037】
図2に、車室内を冷房するとともに、バッテリ700およびモータジェネレータ800の冷却を行う、「冷房+機器冷却モード」における冷媒の流れを示す。このモードにおいては、圧縮機11の吐出口は、凝縮器として機能する室外熱交換器51と連通し、圧縮機11の吸込口は、蒸発器として機能する室内熱交換器61と、機器温調用熱交換器71と、機器冷却用熱交換器81と、につながる。
【0038】
冷媒は、矢印で示すように、圧縮機11によって圧縮され、高圧高温のガス状態で吐出された後、冷媒配管103と、四方切換弁12と、冷媒配管105とを順次に経て、室外熱交換器51に流入する。室外熱交換器51内で、冷媒は車速風、あるいは、室外ファン501によって送られてきた外気に熱を放出し凝縮する。そして、高圧中温となった冷媒は、全開状態の膨張弁15を経由して、レシーバ14に入る。
【0039】
レシーバ14内で、室外熱交換器51で凝縮しきれなかった冷媒ガスが分離された後、液冷媒のみが、室内熱交換器61と膨張弁16からなる室内側冷媒経路と、機器温調用熱交換器71と膨張弁17からなる機器温調用冷媒経路と、機器冷却用熱交換器81と膨張弁18からなる機器冷却用冷媒経路と、へ流れる。
【0040】
室内側冷媒経路に流れる液冷媒は、膨張弁16を通過する際に減圧され、低圧低温の気液二相状態に変化する。そして、冷媒は室内熱交換器61内で、上記室内ファンにより供給された空気から熱を奪い蒸発し、低圧低温のガス状態となってから、冷媒配管106と、冷媒配管104と、四方切換弁12と、冷媒配管102とを順に経て、分岐継手161に至る。
【0041】
機器温調用冷媒経路に流れる液冷媒は、膨張弁17で減圧された後、機器温調用熱交換器71内で、ポンプ907により供給された第1熱媒体から熱を吸収し蒸発する。そして、冷媒は、冷媒配管107と、三方切換弁13と、冷媒配管131とを経て、分岐継手162に至る。
【0042】
機器冷却用冷媒経路に流れる液冷媒は、膨張弁18で減圧された後、機器冷却用熱交換器81内で、ポンプ908により供給された第2熱媒体から熱を吸収し蒸発する。そして、冷媒は、冷媒配管108を経て、分岐継手162に至る。
分岐継手162で、前記機器温調用冷媒経路からの流れと、前記機器冷却用冷媒経路からの流れは合流し、冷媒配管110を通過した後、分岐継手161で、さらに前記室内側冷媒経路からの流れと合流してから、冷媒配管101を経て、再び圧縮機11に吸い込まれる。
【0043】
その一方で、第1熱媒体回路においては、ポンプ907により循環される第1熱媒体は、上記バッテリ700の熱交換部を通過する際に、バッテリ700から熱を吸収し、温度が上昇する。そして、第1熱媒体は、機器温調用熱交換器71に入り、中で冷媒と熱交換を行い冷却される。
【0044】
第2熱媒体回路においては、ポンプ908により循環される第2熱媒体は、上記モータジェネレータ800の熱交換部を通過する際に、モータジェネレータ800から熱を吸収し、温度が上昇する。そして、第2熱媒体は、機器冷却用熱交換器81に入り、中で冷媒と熱交換を行い冷却される。
【0045】
なお、バッテリ700の冷却が不要となる運転条件では、ポンプ907を停止するとともに、膨張弁17を全閉にして、機器温調用冷媒経路への冷媒流れを阻止すればよい。また、冷房を行わない場合、膨張弁16を全閉にして、バッテリ700とモータジェネレータ800を冷却するための経路のみに冷媒を供給すればよい。すなわち、稼働を必要としない冷媒経路に対しては、その経路に配置された膨張弁を全閉にして、冷媒流れを遮断すればよい。
【0046】
上述のように、車室内の空調をするための冷媒経路と、バッテリ700の温調をするための冷媒経路と、モータジェネレータ800を冷却するための冷媒経路とは、レシーバ14と圧縮機11との間で並列に設置されているため、それぞれの冷媒流量を、膨張弁16、17、18で個別に調節できる。したがって、室内熱交換器61と、機器温調用熱交換器71と、機器冷却用熱交換器81における熱交換量、ひいては、空調の吹出温度と、バッテリ700の温度と、モータジェネレータ800の温度を、的確に制御することが可能となる。
【0047】
また、室内熱交換器61と、機器温調用熱交換器71と、機器冷却用熱交換器81とを直列に設置する冷媒回路に比べて、上述した並列配置のほうが冷媒の圧力損失が低いため、圧縮機11の消費電力の削減に寄与できる。
【0048】
さらに、室外側冷媒経路と、室内側冷媒経路と、機器温調用冷媒経路と、機器冷却用冷媒経路とは、レシーバ14を介して接続されているため、液冷媒のみを膨張弁に送り出すことができる。これにより、二相状態での冷媒分配に生じやすい気液組成の変動を回避し、安定な制御を実現可能である。
【0049】
図3に、車室内を暖房するとともに、バッテリ700およびモータジェネレータ800の冷却を行う、「暖房+機器冷却モード」における冷媒の流れを示す。このモードにおいては、圧縮機11の吐出口は、凝縮器として機能する室内熱交換器61と連通し、圧縮機11の吸込口は、蒸発器として機能する室外熱交換器51と、機器温調用熱交換器71と、機器冷却用熱交換器81と、につながる。
【0050】
圧縮機11から吐出された冷媒は、矢印で示すように、冷媒配管103と、四方切換弁12と、冷媒配管104と、冷媒配管106とを順次に経て、室内熱交換器61に流入する。室内熱交換器61内で、冷媒は車室内へ供給する空気に熱を放出し凝縮した後、全開状態の膨張弁16と、レシーバ14とを通過し、以下に述べる3つの流れに分かれる。
【0051】
レシーバ14から室外側冷媒経路に流れる液冷媒は、膨張弁15で減圧された後、室外熱交換器51内で外気から熱を吸収し蒸発する。そして、冷媒は冷媒配管105と、四方切換弁12と、冷媒配管102とを経て、分岐継手161に到達する。
【0052】
レシーバ14から機器温調用冷媒経路に流れる液冷媒は、膨張弁17で減圧された後、機器温調用熱交換器71内で第1熱媒体から吸熱し、蒸発する。そして、冷媒は冷媒配管107と、三方切換弁13と、冷媒配管131とを経て、分岐継手162に到達する。
【0053】
レシーバ14から機器冷却用冷媒経路に流れる液冷媒は、膨張弁18で減圧された後、機器冷却用熱交換器81内で第2熱媒体から吸熱し、蒸発する。そして、冷媒は冷媒配管108を経て、分岐継手162で機器温調用冷媒回路からの流れと合流する。
【0054】
前記合流した冷媒は、冷媒配管110を通過した後、分岐継手161で、さらに室外側冷媒経路からの流れと合流してから、再び圧縮機11に吸い込まれる。
【0055】
なお、第1熱媒体、ならびに、第2熱媒体は、先述したように、温度変化をしながら、それぞれの回路を循環する。
【0056】
「暖房+機器冷却モード」においても、「冷房+機器冷却モード」と同様に、膨張弁開閉の組み合わせによって、様々な運転パターンがある。例えば、急速充電時に、機器冷却冷媒経路に配置された膨張弁18を全閉にするとともに、バッテリ700の温度に基づき、膨張弁17の開度を調節する。この場合、膨張弁16を全開にした上で、バッテリ700からの回収熱量と暖房負荷のバランス、すなわち、外気からの吸熱を必要とするかどうかに応じて、膨張弁15を制御する。具体的には、吸熱が必要な場合に膨張弁15を開き、吸熱が不要な場合に膨張弁15を閉じる。これにより、バッテリ700を冷却しながら、バッテリ700から回収した熱および外気から吸収した熱を有効に利用して車室内を暖房できる。
【0057】
上述のように、「暖房+機器冷却モード」では、空調負荷、ならびに、バッテリ700とモータジェネレータ800のそれぞれに必要な冷却能力に応じて、冷媒流量を個別に制御し、空調の吹出温度と、バッテリ700の温度と、モータジェネレータ800の温度とを適切に保つことができる。
【0058】
また、バッテリ700とモータジェネレータ800から回収した熱を、暖房に利用するので、外気からの吸熱量が少なくなり、蒸発器内を流れる冷媒の圧力、すなわち蒸発圧力の上昇を期待できる。これにより、圧縮機11の消費電力が減少するとともに、室外熱交換器51への着霜が抑制され、高効率の運転が継続できる時間が長くなる。
【0059】
図4に、車室内を暖房するとともに、バッテリ700の加熱、およびモータジェネレータ800の冷却を行う、「暖房+機器温調モード」における冷媒の流れを示す。このモードにおいては、圧縮機11の吐出口は、凝縮器として機能する室内熱交換器61、および機器温調用熱交換器71と連通し、圧縮機11の吸込口は、蒸発器として機能する室外熱交換器51、および機器冷却用熱交換器81につながる。
【0060】
圧縮機11から吐出された冷媒は、矢印で示すように、冷媒配管103と、四方切換弁12と、冷媒配管104とを順次に経てから、分岐継手163で、室内側冷媒経路への流れと、三方切換弁13への流れと、の2つに分かれる。
【0061】
室内側冷媒経路に流れる冷媒は、室内熱交換器61内で、車室内へ供給する空気に熱を放出し凝縮した後、全開状態の膨張弁16を経由して、レシーバ14に至る。
【0062】
一方で、三方切換弁13に流れる冷媒は、三方切換弁13と、冷媒配管107を経由して、機器温調用熱交換器71に流入する。機器温調用熱交換器71内で、冷媒は第1熱媒体に熱を放出した後、全開状態の膨張弁17を通過し、レシーバ14に至る。
【0063】
レシーバ14に入った冷媒は、ガスが分離された後、液冷媒のみが室外側冷媒経路と、機器冷却用冷媒経路と、へ流れる。
【0064】
室外側冷媒経路に流れる液冷媒は、膨張弁15で減圧された後、室外熱交換器51内で外気から熱を吸収し蒸発する。そして、冷媒は冷媒配管105と、四方切換弁12と、冷媒配管102とを経て、分岐継手161に到達する。
【0065】
機器冷却用冷媒経路に流れる液冷媒は、膨張弁18で減圧された後、機器冷却用熱交換器81内で第2熱媒体から吸熱し蒸発する。そして、冷媒は冷媒配管108と、分岐継手162と、冷媒配管110とを経て、分岐継手161で、室外側冷媒経路からの流れと合流してから、再び圧縮機11に吸い込まれる。
【0066】
その一方で、第1熱媒体回路においては、ポンプ907により循環される第1熱媒体は、上記バッテリ700の熱交換部を通過する際に、バッテリ700に熱を加えるにつれて、温度が低下する。そして、第1熱媒体は機器温調用熱交換器71に流入し、中で冷媒との熱交換によって加熱される。
【0067】
第2熱媒体回路においては、ポンプ908により循環される第2熱媒体は、上記モータジェネレータ800の熱交換部を通過する際に、モータジェネレータ800から熱を吸収する。そして、温度が上昇した第2熱媒体は、機器冷却用熱交換器81内で、冷媒との熱交換によって冷却される。
【0068】
これにより、モータジェネレータ800の冷却と、バッテリ700の加熱と、車室内の暖房を同時に行うことができる。もちろん、冷間始動時に、特に低温環境下で、バッテリ700が持つ本来の性能を早く発揮させるために、バッテリ700の温度が所定の値に達するまで、膨張弁16を全閉にして、圧縮機11からの高温冷媒をすべて機器温調用熱交換器71に提供してもよい。
【0069】
「暖房+機器温調モード」では、モータジェネレータ800の冷却に伴って得た熱を、バッテリ700の加熱と車室内の暖房に有効利用するので、圧縮機11の消費電力の削減に貢献できる。
【0070】
また、高温冷媒を分流する分岐継手163を、三方切換弁13と、室内熱交換器61の近くに配置するとともに、圧縮機11の吐出口から分岐継手163までの冷媒配管を1つにまとめることによって、外気に触れる面積が減り、熱損失を軽減することができる。
【0071】
さらに、冷媒配管102の途中に、分岐継手162から四方切換弁12への逆流を防止する逆止弁21を備えているため、膨張弁15を全閉にする、すなわち、室外側冷媒経路を稼働しない時に、特に低温環境下で、室外熱交換器51への冷媒のたまり込みを防ぐことができる。
【0072】
以上では、自動車用熱マネージメントシステム1の3つの運転モード、および本実施例によって得られる効果について説明した。実運用では、3つの運転モードが、状況に応じて選択的に実行されることになる。
【0073】
例えば、冬季の冷間始動時に「暖房+機器温調モード」に入り、バッテリ700の加熱と車室内の暖房を行う。そして、バッテリ700の温度は、車の走行に伴って上昇し、一定の値を超え、冷却が必要になったら、三方切換弁13を操作し、「暖房+機器冷却モード」に切り替える。
【0074】
図5は、第1の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステム1の第1の変形例を示す概略構成図である。ここでは、三方切換弁13の代わりに、2つの電磁弁31,32を用いて、それらの開閉を変更することによって、冷媒の流れ方向を制御する。すなわち、電磁弁31,32は、機器温調用熱交換器71の接続先を圧縮機11の吐出口または吸込口に切替可能な切替装置を構成している。
【0075】
具体的には、「冷房+機器冷却モード」、および「暖房+機器冷却モード」においては、電磁弁31を全閉にするとともに、電磁弁32を全開にして、機器温調用冷媒経路からの冷媒を圧縮機11の吸込口に導く。その一方で、「暖房+機器温調モード」においては、電磁弁32を全閉にした上で、電磁弁31を開き、圧縮機11から吐出された高温冷媒の一部を機器温調用冷媒経路へ流す。なお、3つの運転モードにおける冷媒の流れや得られる効果が
図1~
図4に示した実施例と同じであるため、説明を省略する。
【0076】
図6は、第1の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステム1の第2の変形例を示す概略構成図である。
図1~
図4に示した実施例では、バッテリ700と冷媒回路との間で、第1熱媒体を介して間接的に熱交換させる。これに対して、本実施例では、バッテリ700の熱交換部に冷媒を流し、バッテリ700と直接に熱交換を行わせる方法をとる。
【0077】
これにより、第1熱媒体回路に生じる熱損失を回避するとともに、機器温調用熱交換器71とポンプ907、ならびにそれらを結ぶ水配管が不要になり、システムの小型化や軽量化に貢献できる。
【0078】
ただし、バッテリ700の熱交換部の構造によって、結露発生の恐れがある場合、例えばバッテリ700と三方切換弁13の間に、膨張弁27を増設することが好ましい。その理由は、バッテリ700を通過する冷媒の温度を、上流側の膨張弁17と、下流側の膨張弁27との開度で、調節できるようになるからである。
【0079】
図7は、第1の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステム1の第3の変形例を示す概略構成図である。本実施例は、三方切換弁13と圧縮機11の吐出口との間の配管方法を変更した例である。ここでは、圧縮機11の吐出口と四方切換弁12を結ぶ冷媒配管103の途中に、分岐継手164を設けた。したがって、圧縮機11から吐出された高温冷媒の分流は、四方切換弁12に入る前に行うこととなる。
【0080】
これにより、上記の「冷房+機器冷却モード」と、「暖房+機器冷却モード」と、「暖房+機器温調モード」との3つの運転モードの他に、車室内を冷房するとともに、バッテリ700の加熱、およびモータジェネレータ800の冷却を行う、「冷房+機器温調モード」もできるようになる。
【0081】
この場合、圧縮機11から吐出される高温冷媒は、
図7中の矢印で示すように、分岐継手164で、四方切換弁12への流れと、三方切換弁13への流れ、の2つに分かれる。
【0082】
四方切換弁12に流れる冷媒は、四方切換弁12と冷媒配管105を通過した後、室外熱交換器51内で外気へ熱を放出し凝縮する。そして、冷媒は全開状態の膨張弁15を経由して、レシーバ14に至る。
【0083】
一方で、三方切換弁13に流れる冷媒は、三方切換弁13と冷媒配管107を通過した後、機器温調用熱交換器71内で第1熱媒体に熱を放出し凝縮する。そして、冷媒は全開状態の膨張弁17を経由して、レシーバ14に至る。
【0084】
レシーバ14を出た冷媒流れの1つは、室内側冷媒経路に入り、膨張弁16で減圧された後、室内熱交換器61内で車室内へ提供する空気から熱を奪い蒸発する。そして、冷媒は冷媒配管106と、四方切換弁12と、冷媒配管102とを順に経て、分岐継手161に到達する。
【0085】
レシーバ14を出た冷媒流れのもう1つは、機器冷却冷媒経路に入り、膨張弁18で減圧された後、機器冷却用熱交換器81内で第2熱媒体から熱を吸収し蒸発する。そして、冷媒は冷媒配管108と、冷媒配管110を経て、分岐継手161で、前記室内側冷媒経路からの流れと合流してから、再び圧縮機11に吸い込まれる。
【0086】
以上では、本発明の第1の実施例に係る自動車用熱マネージメントシステム1の構成と動作について説明した。本実施例によれば、車室内の空調をするための冷媒経路と、バッテリ700の温調をするための冷媒経路と、モータジェネレータ800を冷却するための冷媒経路と、を流れる流量を個別に調節できるので、バッテリ700と、モータジェネレータ800を常に適温範囲内に維持しながら、適切な空調運転を同時にすることが可能となる。また、バッテリ700やモータジェネレータ800の冷却に伴って回収した熱を、車室暖房に有効利用するので、圧縮機11の消費電力の削減に貢献するとともに、室外熱交換器51への着霜が抑制され、特に低温環境下で、高効率の運転が継続できる時間が長くなることも期待できる。
【0087】
なお、本実施例では、電気機器としてバッテリ700とモータジェネレータ800を例にとり説明したが、自動車に搭載する他の電気機器、例えばインバータも本発明の適用対象とする。
【0088】
(まとめ)
第1の実施例では、冷媒を圧縮する圧縮機11と、前記冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器51と、前記冷媒と車室内の空気との間で熱交換を行わせる第1室内熱交換器61と、前記冷媒と第1電気機器700との間で熱交換を行わせて第1電気機器700の温度を調整する機器温調用熱交換器71と、室外熱交換器51、第1室内熱交換器61および機器温調用熱交換器71に流入する前記冷媒の減圧および流量制御を行う複数の膨張弁15,16,17と、複数の膨張弁15,16,17を制御する制御装置400とを備えた自動車用熱マネージメントシステム1において、機器温調用熱交換器71の接続先を圧縮機11の吐出口または吸込口に切替可能な切替装置13,31,32を備え、制御装置400は、第1電気機器700の温度に基づいて、切替装置13,31,32を制御する。
【0089】
以上のように構成した第1の実施例によれば、切替装置13,31,32により、機器温調用熱交換器71における冷媒の流れ方向を室内熱交換器61における冷媒の流れ方向から独立して制御できるため、第1電気機器700の温度を常に適温範囲内に維持しながら、適切な空調運転を行うことが可能となる。
【0090】
また、第1の実施例では、冷媒を圧縮する圧縮機11と、前記冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器51と、前記冷媒と車室内の空気との間で熱交換を行わせる第1室内熱交換器61と、前記冷媒と第1電気機器700との間で熱交換を行わせて第1電気機器700の温度を調整する機器温調用熱交換器71と、室外熱交換器51、第1室内熱交換器61および機器温調用熱交換器71に流入する前記冷媒の減圧および流量制御を行う複数の膨張弁15,16,17とを備えた自動車用熱マネージメントシステム1において、室外熱交換器51、第1室内熱交換器61および機器温調用熱交換器71に複数の膨張弁15,16,17を介して接続され、前記冷媒の気液分離を行うとともに前記冷媒の余剰分を一時的に蓄えるレシーバ14と、圧縮機11の吐出口を室外熱交換器51に接続しかつ圧縮機の吸込口を第1室内熱交換器61に接続する第1切換位置、または圧縮機11の吐出口を第1室内熱交換器61に接続しかつ圧縮機11の吸込口を室外熱交換器51に接続する第2切換位置に切換可能な四方切換弁12とを備え、制御装置400は、前記車室内の空調負荷に基づいて、四方切換弁12を制御する。
【0091】
以上のように構成した第1の実施例によれば、四方切換弁12により、室内熱交換器61における冷媒の流れ方向を機器温調用熱交換器71における冷媒の流れ方向から独立して制御できるため、第1電気機器700の温度を常に適温範囲内に維持しながら、適切な空調運転を行うことが可能となる。
【0092】
また、第1の実施例における自動車用熱マネージメントシステムは、室外熱交換器51を通過する風量を制御する第1シャッタ装置502を備える。これにより、室外熱交換器51における熱交換量を制御することが可能となる。
本実施例は、第1の実施例と比較して、室外熱交換器51と膨張弁15との間に、第2室内熱交換器62を加えた点で異なる。第2室内熱交換器62は、第1室内熱交換器61と同じく、空調ケーシングの中に配置され、室内ファン(図示せず)等とともに、空調装置を構成する。また、それぞれの室内熱交換器を通過する風量、ひいては熱交換量を制御するために、第2シャッタ装置601および第3シャッタ装置602を備えている。
本実施例の自動車用熱マネージメントシステム2は、第1の実施例と同様に、車室内の空調、ならびに、バッテリ700とモータジェネレータ800の温度調整を、同時に行うことができる。これに加えて、冷房運転以外での空気除湿や、冷媒回路内の熱バランス調整が、機能として追加される。
主な運転モードは、「冷房+機器冷却モード」と、「再熱除湿+機器冷却モード」と、「除湿暖房+機器冷却モード(A)」と、「除湿暖房+機器冷却モード(B)」と、「除湿暖房+機器温調モード」と、の5つに大別できる。
前記再熱除湿とは、室内温度を一定に維持しながら、湿度だけを下げる空調運転の一種である。この場合、湿度の高い空気を一旦冷やして湿気を取り除いた後、その温度が下がった空気を加熱し、適温に調整してから室内へ供給する。
また、「除湿暖房+機器冷却モード(A)」とは、バッテリ700とモータジェネレータ800から回収した熱が、車室を暖房するのに必要なエネルギを上回って、余剰分を外気に放出する運転モードである。これに対して、「除湿暖房+機器冷却モード(B)」とは、回収熱だけで暖房能力を満たさずに、外気からの吸熱を必要とする運転モードである。
第1室内熱交換器61は、通過する空気を冷却し、湿気を取り除く役割を果たす。空気から除去される水の量は、第1室内熱交換器61内を流れる冷媒の圧力や風量に左右されるので、膨張弁16、または、第2シャッタ装置601の開度で調節できる。なお、暖房時に除湿が不要になる、例えば窓ガラスが曇る恐れがない条件では、膨張弁16を全閉にし、室内側冷媒経路への冷媒流れを阻止するとともに、第2シャッタ装置601を閉じて、空気流れを遮断すればよい。
第2室内熱交換器62は、通過する空気を加熱する役割を果たす。車室内へ供給する空気の温度は、上記室内ファンの回転数や、第3シャッタ装置602の開度による風量制御で調節できる。
室外熱交換器51は、車速風、あるいは、室外ファン501によって供給される外気と、中を流れる冷媒との間で熱交換を行わせることによって、上記冷媒回路の余剰熱を排出する役割を果たす。室外熱交換器51における熱交換量は、室外ファン501の回転数、または、シャッタ装置502の開度で制御可能である。
ただし、室外熱交換器51に霜が付いた場合、前記熱エネルギの余剰を室外熱交換器51の加熱に利用し、霜を融かすことが考えられる。この場合、室外ファン501を停止した上で、シャッタ装置502を全閉にし、外気への放熱を抑制することが望ましい。この除湿暖房と除霜の同時運転を実現することによって、クリアな視界および乗客の快適性を確保した上で、システムの運転効率を向上させることが期待できる。
したがって、車室内へ供給する空気の温度は第1室内熱交換器61で、湿度は第2室内熱交換器62で、調節することになる。また、バッテリ700とモータジェネレータ800から回収した熱だけで暖房能力を満たさない本運転モードでは、室外熱交換器51内で冷媒が外気から熱を吸収し、その熱エネルギの不足を補うことができる。
以上のように構成した第2の実施例によれば、バッテリ700およびモータジェネレータ800を常に適温範囲内に維持しながら、車室内の温度のみならず湿度も調節することが可能となる。
また、第2の実施例における自動車用熱マネージメントシステム2は、第1室内熱交換器61を通過する風量を制御する第2シャッタ装置601と、第2室内熱交換器62を通過する風量を制御する第3シャッタ装置602とを備える。これにより、第1室内熱交換器61および第2室内熱交換器62における熱交換量を制御することが可能となる。
また、第2の実施例では、第1電気機器700は、バッテリ700であり、自動車用熱マネージメントシステム2は、バッテリ700から電力供給を受ける第2電気機器800と冷媒との間で熱交換を行わせて第2電気機器800を冷却する機器冷却用熱交換器81と、機器冷却用熱交換器81に流入する前記冷媒の減圧および流量制御を行う膨張弁18とを備え、制御装置400は、車室内の暖房時に、バッテリ700(第1電気機器)およびモータジェネレータ800(第2電気機器)から回収される熱量と前記車室内の空調負荷とに基づいて、四方切換弁12を制御する。これにより、車室内の暖房時に、バッテリ700やモータジェネレータ800の冷却に伴って回収した熱を有効利用し、圧縮機11の消費電力の削減に貢献するとともに、室外熱交換器51への着霜を抑制する、または、除霜を行うことが可能となる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明をわかりやすく説明するために示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。