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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168028
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241128BHJP
   G05F 1/70 20060101ALI20241128BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H02M7/48 R
G05F1/70 L
H02M7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084411
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 満喜
【テーマコード(参考)】
5H006
5H420
5H770
【Fターム(参考)】
5H006CA01
5H006CB01
5H006CB08
5H006CC02
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC05
5H420BB16
5H420CC04
5H420DD04
5H420EB38
5H420FF03
5H420FF04
5H420FF07
5H420FF24
5H770BA13
5H770CA02
5H770CA10
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA03W
5H770LA03W
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】配電線の交流電圧を安定化させることが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】無停電電源装置6は、配電線4から受ける交流電力を直流電力に変換するコンバータ11と、直流電力を交流電力に変換して負荷8に供給するインバータ13と、配電線4の交流電圧VSが変化した場合に、配電線4の交流電圧VSの変化分ΔVSを補償するための無効電力を配電線4から吸収するようにコンバータ11を制御する制御装置15とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線から受ける交流電力を直流電力に変換する順変換器と、
直流電力を交流電力に変換して第1の負荷に供給する逆変換器と、
前記配電線の交流電圧が変化した場合に、前記配電線の交流電圧の変化分を補償するための無効電力を前記配電線から吸収するように前記順変換器を制御する制御装置とを備える、電力変換装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記配電線の交流電圧が低下または上昇した場合に、前記配電線の交流電圧を上昇または低下させるための進相または遅相の無効電力を吸収するように前記順変換器を制御する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記配電線に第2の負荷が接続されており、
前記第2の負荷の消費電力の変化によって前記配電線の交流電圧が変化する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
定格電圧と前記配電線の交流電圧との偏差を求め、
その偏差に基づいて前記無効電力を求め、
求めた前記無効電力を吸収するように前記順変換器を制御する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
予め定められた周期で前記配電線の交流電圧を検出し、
前回検出した交流電圧と今回検出した交流電圧との偏差を求め、
その偏差に基づいて前記無効電力を求め、
求めた前記無効電力を吸収するように前記順変換器を制御する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記配電線は、交流電源と前記順変換器との間に接続され、
前記交流電源の健全時には、前記順変換器によって生成される直流電力が電力貯蔵装置に蓄えられるとともに前記逆変換器によって交流電力に変換され、
前記交流電源の停電時には、前記順変換器の運転が停止されるとともに、前記電力貯蔵装置の直流電力が前記逆変換器によって交流電力に変換される、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関し、特に、順変換器と逆変換器とを備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開2011-55570号公報には、配電線から受ける交流電力を直流電力に変換する順変換器と、直流電力を交流電力に変換して第1の負荷に供給する逆変換器と、配電線に接続された第2の負荷で消費される無効電力を順変換器から配電線に供給させて力率を1にする制御装置とを備える電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-55570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の電力変換装置では、第2の負荷の消費電力が変動した場合に配電線の交流電圧が変動し、電力系統に悪影響が及ぶという問題があった。
【0005】
それゆえに、本開示の主たる目的は、配電線の交流電圧を安定化させることが可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電力変換装置は、配電線から受ける交流電力を直流電力に変換する順変換器と、直流電力を交流電力に変換して第1の負荷に供給する逆変換器と、配電線の交流電圧が変化した場合に、配電線の交流電圧の変化分を補償するための無効電力を配電線から吸収するように順変換器を制御する制御装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る電力変換装置では、配電線の交流電圧が変化した場合に、配電線の交流電圧の変化分を補償するための無効電力を配電線から吸収するように順変換器を制御する。したがって、配電線の交流電圧を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施の形態1に従う電力系統の要部を示す回路ブロック図である。
図2図1に示す無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図3図2に示すコンバータおよびインバータの構成を示す回路図である。
図4図1に示す制御装置の構成を示すブロック図である。
図5図4に示す制御回路の構成を示すブロック図である。
図6図5に示す制御部32の構成を示すブロック図である。
図7図6に示す交流電圧制御部およびリミッタの動作を示す図である。
図8】本開示の実施の形態2に従う電力系統に含まれる制御部の要部を示す回路ブロック図である。
図9図8に示す交流電圧制御部およびリミッタの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は、本開示の実施の形態1に従う電力系統の要部を示す回路ブロック図である。この電力系統では、実際には三相交流電圧が供給されるが、図面および説明の簡単化を図るため、図1では一相交流電圧に関連する部分のみが示されている。図1において、この電力系統は、商用交流電源1、送電線2、連系変圧器3、配電線4、負荷5,8、無停電電源装置6、およびバッテリ7を備える。
【0010】
商用交流電源1は、商用周波数の交流電力を送電線2に供給する。送電線2は、連系変圧器3を介して配電線4に接続される。負荷5(第2の負荷)は、配電線4から受ける交流電力によって駆動される。
【0011】
無停電電源装置6(電力変換装置)は、商用交流電源1の健全時には、配電線4から受ける交流電力を一旦、直流電力に変換し、その直流電力をバッテリ7に蓄えるとともに、商用周波数の交流電力に変換して負荷8に供給する。バッテリ7(電力貯蔵装置)は、直流電力を貯える。バッテリ7の代わりにコンデンサが接続されていても構わない。負荷8(第1の負荷)は、無停電電源装置6から供給される交流電力によって駆動される。
【0012】
また無停電電源装置6は、商用交流電源1の停電時には、バッテリ7の直流電力を商用周波数の交流電力に変換して負荷8に供給する。したがって、商用交流電源1の停電が発生した場合でも、バッテリ7に直流電力が貯えられている期間は、負荷8の運転を継続することができる。
【0013】
さらに無停電電源装置6は、負荷5の消費電力の変化によって配電線4の交流電圧VSが変化した場合には、その変化分を補償するための無効電力を配電線4から吸収して、配電線4の交流電圧VSを安定化させる。
【0014】
すなわち、無停電電源装置6は、配電線4の交流電圧VSが低下した場合には、進相無効電力を配電線4から吸収して、配電線4の交流電圧VSを上昇させる。また、無停電電源装置6は、配電線4の交流電圧VSが上昇した場合には、遅相無効電力を配電線4から吸収して、配電線4の交流電圧VSを低下させる。
【0015】
なお、進相無効電力を配電線4から吸収することは、遅相無効電力を配電線4に供給することと同義である。また、遅相無効電力を配電線4から吸収することは、進相無効電力を配電線4に供給することと同義である。
【0016】
図2は、無停電電源装置6の構成を示す回路ブロック図である。図2において、この無停電電源装置6は、交流入力端子T1、バッテリ端子T2、および交流出力端子T3を備える。交流入力端子T1は、配電線4から商用周波数の交流電力を受ける。バッテリ端子T2は、バッテリ7に接続される。交流出力端子T3は、負荷8に接続される。
【0017】
なお、この無停電電源装置は、実際には3本の配電線4から三相交流電圧VU,VV,VWを受け、負荷8に三相交流電圧を供給するが、図面および説明の簡単化を図るため、図2では一相交流電圧VSに関連する部分のみが示されている。交流電圧VSは、三相交流電圧VU,VV,VWのうちのいずれかの交流電圧(たとえばVU)に対応している。
【0018】
この無停電電源装置6は、さらに、スイッチS1~S3、コンデンサC1~C3、リアクトルL1~L3、電流検出器CD1~CD3、コンバータ11、直流ラインDL、双方向チョッパ12、インバータ13、操作部14、および制御装置15を備える。
【0019】
スイッチS1およびリアクトルL1は、交流入力端子T1とコンバータ11の交流ノード11aとの間に直列接続される。スイッチS1は、制御装置15によって制御される。商用交流電源1から交流電力が正常に供給されている場合(商用交流電源1の健全時)には、スイッチS1はオンされる。商用交流電源1からの交流電力が正常に供給されなくなった場合(商用交流電源1の停電時)には、スイッチS1はオフされる。
【0020】
電流検出器CD1は、配電線4とコンバータ11の間に流れる電流Iiを検出し、その検出値を示す信号Iifを制御装置15に出力する。交流入力端子T1に現れる交流入力電圧VSの瞬時値は、制御装置15によって検出される。制御装置15は、交流入力電圧VSの検出値に基づいて、停電が発生したか否かを判別する。また、制御装置15は、交流入力電圧VSの検出値に基づいて、コンバータ11などを制御する。
【0021】
コンデンサC1は、スイッチS1とリアクトルL1の間のノードN1と、中性点NPとの間に接続される。コンデンサC1およびリアクトルL1は、交流フィルタを構成する。この交流フィルタは、低域通過フィルタであり、商用周波数の交流電力を通過させ、コンバータ11で発生するスイッチング周波数の信号が配電線4に通過することを防止する。
【0022】
コンバータ11は、複数のトランジスタおよび複数のダイオードを含む周知のものであり、制御装置15によって制御される。商用交流電源1の健全時には、コンバータ11は、交流ノード11aが受ける交流電力を直流電力に変換して直流ノード11bに出力する。直流ノード11bは、直流ラインDLに接続されている。コンバータ11の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。商用交流電源1の停電時には、コンバータ11の運転は停止される。
【0023】
またコンバータ11は、商用交流電源1の健全時において負荷5の消費電力が変動して配電線4の交流電圧VSが低下または上昇した場合には、交流ノード11aから進相または遅相無効電力を吸収して、配電線4の交流電圧VSを上昇または低下させる。このとき、コンバータ11は、自励式SVC(Static Var Compensator)の主回路として動作する。
【0024】
コンデンサC1、リアクトルL1、およびコンバータ11は、交流電力を直流電力に変換する順変換器を構成する。コンデンサC2は、直流ラインDLに接続され、直流ラインDLの電圧を平滑化させる。直流ラインDLに現れる直流電圧VDの瞬時値は、制御装置15によって検出される。
【0025】
制御装置15は、商用交流電源1の健全時には、直流ラインDLの直流電圧VDが参照電圧VDRになり、かつ配電線4の交流電圧VSの振幅VSAが参照電圧VSRになるようにコンバータ11を制御し、商用交流電源1の停電時には、コンバータ11の運転を停止させる。なお、配電線4の交流電圧VSの振幅VSAが参照電圧VSRになっている場合には、交流電圧VSの実効値は定格電圧になっている。
【0026】
直流ラインDLは双方向チョッパ12の高電圧側ノード12aに接続され、双方向チョッパ12の低電圧側ノード12bはリアクトルL2およびスイッチS2を介してバッテリ端子T2に接続される。スイッチS2は、無停電電源装置の使用時にオンされ、たとえば無停電電源装置およびバッテリ7のメンテナンス時にオフされる。リアクトルL2は、双方向チョッパ12とバッテリ7の間に流れる電流Ibを平滑化する。
【0027】
双方向チョッパ12は、複数のトランジスタおよび複数のダイオードを含む周知のものであり、制御装置15によって制御される。双方向チョッパ12は、商用交流電源1の健全時には、直流ラインDLから受ける直流電力をバッテリ7に蓄え、商用交流電源1の停電時には、バッテリ7の直流電力を直流ラインDLに供給する。
【0028】
双方向チョッパ12は、直流電力をバッテリ7に蓄える場合には、直流ラインDLの直流電圧VDを降圧してバッテリ7に与える。また、双方向チョッパ12は、バッテリ7の直流電力をインバータ13に供給する場合は、バッテリ7の端子間電圧VBを昇圧して直流ラインDLに出力する。
【0029】
電流検出器CD2は、双方向チョッパ12とバッテリ7の間に流れる電流Ibを検出し、その検出値を示す信号Ibfを制御装置15に出力する。バッテリ端子T2に現れるバッテリ7の端子間電圧VBの瞬時値は、制御装置15によって検出される。
【0030】
制御装置15は、商用交流電源1の健全時には、バッテリ電圧VBが参照電圧VBRになるように双方向チョッパ12を制御し、商用交流電源1の停電時には、直流ラインDLの直流電圧VDが参照電圧VDRになるように双方向チョッパ12を制御する。
【0031】
インバータ13は、複数のトランジスタおよび複数のダイオードを含む周知のものであり、制御装置15によって制御される。インバータ13は、直流ラインDLから直流ノード13aを介して受ける直流電力を商用周波数の交流電力に変換して交流ノード13bに出力する。インバータ13の出力電圧は所望の値に制御可能になっている。
【0032】
インバータ13の交流ノード13bはリアクトルL3を介してスイッチS3の一方端子(ノードN2)に接続され、スイッチS3の他方端子は交流出力端子T3に接続される。コンデンサC3は、ノードN2と中性点NPとの間に接続される。
【0033】
リアクトルL3およびコンデンサC3は、交流フィルタを構成する。この交流フィルタは、低域通過フィルタであり、インバータ13で生成される商用周波数の交流電力を交流出力端子T3に通過させ、インバータ13で発生するスイッチング周波数の信号が交流出力端子T3に通過することを防止する。インバータ13、リアクトルL3、およびコンデンサC3は、直流電力を交流電力に変換する逆変換器を構成する。
【0034】
スイッチS3は、制御装置15によって制御され、無停電電源装置6の運転時などにオンされ、無停電電源装置6の運転停止時などにオフされる。交流出力端子T3に現れる交流出力電圧VOの瞬時値は、制御装置15によって検出される。
【0035】
電流検出器CD3は、インバータ13と負荷8の間に流れる電流Ioを検出し、その検出値を示す信号Iofを制御装置15に与える。制御装置15は、交流出力電圧VOが正弦波状の参照電圧VORになるようにインバータ13を制御する。
【0036】
操作部14は、無停電電源装置6の使用者によって操作される複数のボタン、種々の情報を表示する画像表示部などを含む。使用者が操作部14を操作することにより、種々の電圧VDR,VBR,VORを設定したり、無停電電源装置6の電源をオンおよびオフしたり、無停電電源装置6を自動運転させたり、手動運転させることが可能となっている。
【0037】
また、制御装置15は、交流入力電圧VS、交流入力電流Ii、直流電圧VD、バッテリ電圧VB、バッテリ電流Ib、交流出力電圧VO、交流出力電流Io、参照電圧VDR,VBR,VOR、操作部14からの信号などに基づいて無停電電源装置6全体を制御する。
【0038】
図3は、コンバータ11およびインバータ13の構成を示す回路図である。図1および図2では、三相交流電圧のうちの一相交流電圧に関連する部分のみを示したが、図3では、三相交流電圧に関連する部分が示されている。また、図2では、正側の直流ラインDLのみを示したが、図3では、負側の直流ラインDLnも示されている。
【0039】
図3において、コンバータ11は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)Q1~Q6およびダイオードD1~D6を含む。IGBTは、スイッチング素子を構成する。IGBTQ1~Q3のコレクタはともに直流ノード11bを介して正側の直流ラインDLに接続され、それらのエミッタはそれぞれ交流ノード11a,11c,11dに接続される。
【0040】
交流ノード11a,11c,11dは、商用交流電源1から供給される三相交流電圧にそれぞれ対応して設けられている。IGBTQ4~Q6のコレクタはそれぞれ交流ノード11a,11c,11dに接続され、それらのエミッタはともに負側の直流ラインDLnに接続される。ダイオードD1~D6は、それぞれIGBTQ1~Q6に逆並列に接続される。コンデンサC2は、直流ラインDL,DLn間に接続されている。
【0041】
IGBTQ1,Q4はそれぞれゲート信号A1,B1によって制御され、IGBTQ2,Q5はそれぞれゲート信号A2,B2によって制御され、IGBTQ3,Q6はそれぞれゲート信号A3,B3によって制御される。ゲート信号B1,B2,B3は、それぞれゲート信号A1,A2,A3の反転信号である。
【0042】
IGBTQ1~Q3は、それぞれゲート信号A1,A2,A3が「H」レベルにされた場合にオンし、それぞれゲート信号A1,A2,A3が「L」レベルにされた場合にオフする。IGBTQ4~Q6は、それぞれゲート信号B1,B2,B3が「H」レベルにされた場合にオンし、それぞれゲート信号B1,B2,B3が「L」レベルにされた場合にオフする。
【0043】
ゲート信号A1,B1,A2,B2,A3,B3の各々は、パルス信号列であり、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。ゲート信号A1,B1の位相とゲート信号A2,B2の位相とゲート信号A3,B3の位相とは、基本的には120度ずつずれている。ゲート信号A1,B1,A2,B2,A3,B3は、制御装置15によって生成される。
【0044】
ゲート信号A1,B1,A2,B2,A3,B3によってIGBTQ1~Q6の各々を所定のタイミングでオンおよびオフさせるとともに、IGBTQ1~Q6の各々のオン時間を調整することにより、交流ノード11a,11c,11dに与えられる三相交流電圧を所望の直流電圧VD(コンデンサC2の端子間電圧)に変換することが可能となっている。
【0045】
逆に、ゲート信号A1,B1,A2,B2,A3,B3によってIGBTQ1~Q6の各々を所定のタイミングでオンおよびオフさせるとともに、IGBTQ1~Q6の各々のオン時間を調整することにより、直流電圧VDを所望の位相および振幅の三相交流電圧に変換して交流ノード11a,11c,11dに出力することが可能となっている。
【0046】
換言すると、ゲート信号A1,B1,A2,B2,A3,B3によってIGBTQ1~Q6の各々を所定のタイミングでオンおよびオフさせるとともに、IGBTQ1~Q6の各々のオン時間を調整することにより、所望の極性(正または負)の有効電力を交流ノード11a,11c,11dから吸収するとともに、所望の極性(遅相または進相)の無効電力を交流ノード11a,11c,11dから吸収することが可能となっている。
【0047】
インバータ13は、IGBTQ11~Q16およびダイオードD11~D16を含む。IGBTは、スイッチング素子を構成する。IGBTQ11~Q13のコレクタはともに直流ノード13aを介して正側の直流ラインDLに接続され、それらのエミッタはそれぞれ交流ノード13b,13c,13dに接続される。
【0048】
交流ノード13b,13c,13dは、負荷8に供給される三相交流電圧にそれぞれ対応して設けられている。IGBTQ14~Q16のコレクタはそれぞれ交流ノード13b,13c,13dに接続され、それらのエミッタはともに負側の直流ラインDLnに接続される。ダイオードD11~D16は、それぞれIGBTQ11~Q16に逆並列に接続される。
【0049】
IGBTQ11,Q14はそれぞれゲート信号X1,Y1によって制御され、IGBTQ12,Q15はそれぞれゲート信号X2,Y2によって制御され、IGBTQ13,Q16はそれぞれゲート信号X3,Y3によって制御される。ゲート信号Y1,Y2,Y3は、それぞれゲート信号X1,X2,X3の反転信号である。
【0050】
IGBTQ11~Q13は、それぞれゲート信号X1,X2,X3が「H」レベルにされた場合にオンし、それぞれゲート信号X1,X2,X3が「L」レベルにされた場合にオフする。IGBTQ14~Q16は、それぞれゲート信号Y1,Y2,Y3が「H」レベルにされた場合にオンし、それぞれゲート信号Y1,Y2,Y3が「L」レベルにされた場合にオフする。
【0051】
ゲート信号X1,Y1,X2,Y2,X3,Y3の各々は、パルス信号列であり、PWM信号である。ゲート信号X1,Y1の位相とゲート信号X2,Y2の位相とゲート信号X3,Y3の位相とは、基本的には120度ずつずれている。ゲート信号X1,Y1,X2,Y2,X3,Y3は、制御装置15によって生成される。
【0052】
たとえば、IGBTQ11,Q15がオンすると、直流ラインDLがIGBTQ11を介して交流ノード13bに接続されるとともに、交流ノード13cがIGBTQ15を介して直流ラインDLnに接続され、交流ノード13b,13c間に正電圧が出力される。
【0053】
また、IGBTQ12,Q14がオンすると、直流ラインDLがIGBTQ12を介して交流ノード13cに接続されるとともに、交流ノード13bがIGBTQ14を介して直流ラインDLnに接続され、出力ノード13b,13c間に負電圧が出力される。
【0054】
ゲート信号X1,Y1,X2,Y2,X3,Y3によってIGBTQ11~Q16の各々を所定のタイミングでオンおよびオフさせるとともに、IGBTQ11~Q16の各々のオン時間を調整することにより、直流ラインDL,DLn間の直流電圧VDを三相交流電圧に変換して交流ノード13b,13c,13dに出力することが可能となっている。
【0055】
図4は、制御装置15の要部を示すブロック図である。図4において、制御装置15は、電圧検出器21~24、停電検出器25、および制御回路26を含む。電圧検出器21は、配電線4から受ける交流入力電圧VSの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号VSfを停電検出器25および制御回路26に出力する。電圧検出器22は、負荷8に供給される交流出力電圧VOの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号VOfを制御回路26に出力する。
【0056】
電圧検出器23は、直流ラインDLの直流電圧VDの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号VDfを制御回路26に出力する。電圧検出器24は、バッテリ7の端子間電圧VBの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号VBfを制御回路26に出力する。
【0057】
停電検出器25は、電圧検出器21の出力信号VSfに基づいて商用交流電源1の停電が発生しているか否かを検出し、その検出結果を示す信号φ25を制御回路26に出力する。商用交流電源1が健全である場合には、信号φ25は「H」レベルにされる。商用交流電源1の停電が発生している場合には、信号φ25は「L」レベルにされる。
【0058】
たとえば、停電検出器25は、交流入力電圧VSが下限値よりも高い場合には、商用交流電源1は健全であると判定し、信号φ25を「H」レベルにする。また、停電検出器25は、交流入力電圧VSが下限値よりも低い場合には、商用交流電源1の停電が発生したと判定し、信号φ25を「L」レベルにする。
【0059】
電流検出器CD1~CD3(図1)の出力信号Iif,Ibf,Iofは、制御回路26に与えられる。制御回路26は、電圧検出器21~24の出力信号VSf,VOf,VDf,VBf、停電検出器25の出力信号φ25、電流検出器CD1~CD3の出力信号Iif,Ibf,Iof、操作部14からの信号に基づいて、スイッチS1~S3、コンバータ11、双方向チョッパ12、およびインバータ13を制御する。
【0060】
図5は、制御回路26の要部を示すブロック図である。図5において、制御回路26は、制御部31~34および通信回線35を含む。制御部31~34および操作部14は、通信回線35によって互いに接続されている。制御部31~34は、通信回線35を介して種々の信号を授受し、互いに連携して無停電電源装置6全体を制御する。
【0061】
制御部31は、停電検出器25の出力信号φ25と、操作部14からの信号とに基づいて、スイッチS1~S3を制御する。信号φ25が「H」レベルである場合(商用交流電源1の健全時)には、制御部31は、スイッチS1~S3をオンさせる。
【0062】
信号φ25が「L」レベルである場合(商用交流電源1の停電時)には、制御部31は、スイッチS1をオフさせるとともに、スイッチS2,S3をオン状態に維持する。また、制御部31は、操作部14からの信号に従って、手動運転動作時にスイッチS1~S3の各々を個別にオンおよびオフさせる。
【0063】
制御部32は、電圧検出器21,23の出力信号VSf,VDfと、電流検出器CD1の出力信号Iifと、停電検出器25の出力信号φ25と、操作部14からの信号とに基づき、ゲート信号A1~A3,B1~B3(図3)を生成してコンバータ11を制御する。
【0064】
信号φ25が「H」レベルである場合(商用交流電源1の健全時)には、制御部32は、信号VSf,VDf,Iifに基づいて、直流ラインDLの直流電圧VDが参照電圧VDRになり、かつ交流入力電圧VSの振幅VSAが参照電圧VSRになるようにコンバータ11を制御する。
【0065】
信号φ25が「L」レベルである場合(商用交流電源1の停電時)には、制御部32は、コンバータ11の運転を停止させる。このとき、ゲート信号A1~A3,B1~B3がともに「L」レベルにされて、コンバータ11のIGBTQ1~Q6(図3)がともにオフされる。また、制御部32は、操作部14からの信号に従って、手動運転動作時にはコンバータ11を起動または停止させる。
【0066】
制御部33は、電圧検出器23,24の出力信号VDf,VBfと、電流検出器CD2の出力信号Ibfと、停電検出器25の出力信号φ25と、操作部14からの信号とに基づいて、双方向チョッパ12を制御する。
【0067】
信号φ25が「H」レベルである場合(商用交流電源1の健全時)には、制御部33は、信号VBf,Ibfに基づいて、バッテリ電圧VBが参照電圧VBRになるように双方向チョッパ12を制御する。
【0068】
信号φ25が「L」レベルである場合(商用交流電源1の停電時)には、制御部33は、信号VBf,Ibfに基づいて、直流ラインDLの直流電圧VDが参照電圧VDRになるように双方向チョッパ12を制御する。また、制御部33は、操作部14からの信号に従って、手動運転動作時に双方向チョッパ12を起動または停止させる。
【0069】
制御部34は、電圧検出器21,22の出力信号VSf,VOfと、電流検出器CD3の出力信号Iofと、停電検出器25の出力信号φ25と、操作部14からの信号とに基づき、ゲート信号X1~X3,Y1~Y3(図3)を生成してインバータ13を制御する。
【0070】
制御部34は、信号VSfに同期して動作し、信号VOf,Iofに基づいて、交流出力電圧VOが正弦波状の参照電圧VORになるようにインバータ13を制御する。また、制御部34は、操作部14からの信号に従って、インバータ13を運転または停止させる。
【0071】
ここで、図1図5に示した電力系統の動作について説明する。商用交流電源1(図1)の健全時には、商用交流電源1から送電線2、連系変圧器3、および配電線4を介して負荷5および無停電電源装置6に交流電力が供給される。負荷5は、配電線4から受ける交流電力によって駆動される。
【0072】
無停電電源装置6は、配電線4から受ける交流電力を一旦、直流電力に変換してバッテリ7に貯えるとともに、その直流電力を交流電力に再変換して負荷8に供給する。負荷8は、無停電電源装置6から供給される交流電力によって駆動される。
【0073】
すなわち、無停電電源装置6では、停電検出器25(図4)の出力信号φ25が「H」レベルにされ、制御部31(図5)によってスイッチS1(図2)がオンされるとともにスイッチS2,S3がオン状態に維持される。
【0074】
また、制御部32(図5)によってコンバータ11が運転され、配電線4から受ける交流電力がコンバータ11(図2図3)によって直流電力に変換されて直流ラインDLに供給される。このとき制御部32は、直流ラインDLの直流電圧VDが参照電圧VDRになり、かつ配電線4の交流電圧VSの振幅VSAが参照電圧VSRになるように、ゲート信号A1~A3,B1~B3(図3)を生成してコンバータ11を制御する。
【0075】
また、制御部33(図5)によって双方向チョッパ12(図2)が運転され、コンバータ11によって生成される直流電力が双方向チョッパ12によってバッテリ7に貯えられる。このとき制御部33は、バッテリ電圧VBが参照電圧VBRになるように双方向チョッパ12を制御する。
【0076】
また、制御部34(図5)によってインバータ13(図2)が運転され、コンバータ11によって生成される直流電力がインバータ13によって交流電力に変換されて負荷8に供給される。このとき制御部34は、負荷8に印加される交流電圧VOが正弦波状の参照電圧VORになるように、ゲート信号X1~X3,Y1~Y3(図3)を生成してインバータ13を制御する。
【0077】
商用交流電源1(図1)の停電時には、商用交流電源1から送電線2に対する交流電力の供給が停止され、負荷5の運転が停止される。無停電電源装置6は、バッテリ7の直流電力を交流電力に変換して負荷8に供給する。したがって、バッテリ7に直流電力が貯えられている期間は、負荷8の運転を継続することができる。
【0078】
すなわち、無停電電源装置6では、停電検出器25(図4)の出力信号φ25が「L」レベルにされ、制御部31(図5)によってスイッチS1(図2)がオフされて、配電線4とコンバータ11の間が電気的に遮断される。
【0079】
また、制御部32(図5)によってコンバータ11の運転が停止される。このとき制御部32は、すべてのゲート信号A1~A3,B1~B3(図3)を「L」レベルにして、コンバータ11のIGBTQ1~Q6をオフさせる。
【0080】
また、制御部33(図5)によって双方向チョッパ12(図2)が運転され、バッテリ7の直流電力が双方向チョッパ12および直流ラインDLを介してインバータ13に供給される。このとき制御部33は、直流ラインDLの直流電圧VDが参照電圧VDRになるように双方向チョッパ12を制御する。
【0081】
また、制御部34(図5)によってインバータ13(図2)が運転され、バッテリ7から双方向チョッパ12および直流ラインDLを介して供給される直流電力がインバータ13によって交流電力に変換されて負荷8に供給される。このとき制御部34は、負荷8に印加される交流電圧VOが正弦波状の参照電圧VORになるようにインバータ13を制御する。
【0082】
次に、コンバータ11の制御方法について、より詳細に説明する。図6は、制御部32の構成を示すブロック図である。図6において、制御部32は、直流電圧指令部41、減算器42,46,53,56、直流電圧制御部43、リミッタ44,55、電流成分検出部45、有効電流制御部47、交流電圧指令部51、振幅検出部52、交流電圧制御部54、無効電流制御部57、座標変換部58、およびPWM制御部59を含む。
【0083】
直流電圧指令部41は、直流ラインDL(図2)の直流電圧VDの目標値である参照電圧VDRを生成する。減算器42は、参照電圧VDRと、電圧検出器23の出力信号VDfによって示される直流ラインDLの直流電圧VDとの偏差ΔVD=VDR-VDを求める。
【0084】
直流電圧制御部43は、減算器42によって求められる偏差ΔVDに応じた値の有効電流指令値Idcを生成する。直流電圧制御部43は、たとえば、偏差ΔVDを比例演算または比例積分演算することによって有効電流指令値Idcを求める。リミッタ44は、有効電流指令値Idcの大きさを所定値以下の範囲内に制限して有効電流指令値Idc1を生成する。
【0085】
電流成分検出部45は、電流検出器CD1(図2)の出力信号Iifによって示される交流電流Iiと、電圧検出器21の出力信号VSfによって示される配電線4の交流電圧VSとに基づいて、交流電流Iiのうちの有効電流Idおよび無効電流Iqを検出する。
【0086】
減算器46は、リミッタ44によって生成される有効電流指令値Idc1と、電流成分検出部45によって検出される有効電流Idとの偏差ΔId=Idc1-Idを求める。
【0087】
有効電流制御部47は、減算器46によって求められる偏差ΔIdに応じた値の有効電流制御値Vdcを生成する。有効電流制御部47は、たとえば、偏差ΔIdを比例演算または比例積分演算することにより有効電圧制御値Vdcを求める。
【0088】
交流電圧指令部51は、配電線4(図1図2)の交流電圧VSの振幅の目標値である参照電圧VSRを生成する。振幅検出部52は、電圧検出器21(図4)の出力信号VSfによって示される配電線4の交流電圧VSの振幅VSAを検出する。減算器53は、参照電圧VSRと、振幅検出部52によって検出される配電線4の交流電圧VSの振幅VSAとの偏差ΔVS=VSR-VSAを求める。
【0089】
交流電圧制御部54は、減算器53によって求められる偏差ΔVSに応じた値の無効電流指令値Iqcを生成する。交流電圧制御部54は、たとえば、偏差ΔVSを比例演算または比例積分演算することによって無効電流指令値Iqcを求める。リミッタ55は、無効電流指令値Iqcの大きさを所定値以下の範囲内に制限して無効電流指令値Iqc1を生成する。
【0090】
図7は、交流電圧制御部54およびリミッタ55の動作を示す図である。図7において、横軸は減算器53によって求められる偏差ΔVSを示し、縦軸はリミッタ55によって生成される無効電流指令値Iqc1を示している。
【0091】
交流電圧制御部54によって生成される無効電流指令値Iqcは、図7中の点線で示されるように、偏差ΔVSの大きさに比例して増大する。リミッタ55によって生成される無効電流指令値Iqc1は、図7中の実線で示されるように、所定範囲内に制限される。すなわち、-α≦ΔVS≦αの場合にはIqc1=Iqcとされ、α<ΔVSの場合にはIqc1=βとされ、ΔVS<-αの場合にはIqc1=-βとされる。
【0092】
再び図6を参照して、減算器56は、リミッタ55によって生成される無効電流指令値Iqc1と、電流成分検出部45によって検出される無効電流Iqとの偏差ΔIq=Iqc1-Iqを求める。
【0093】
無効電流制御部57は、減算器56によって求められる偏差ΔIqに応じた値の無効電流制御値Vqcを生成する。無効電流制御部57は、たとえば、偏差ΔIqを比例演算または比例積分演算することにより無効電圧制御値Vqcを求める。
【0094】
座標変換部58は、電圧検出器21(図4)の出力信号VSfによって示される配電線4の交流電圧VSに基づいて、有効電圧制御値Vdcおよび無効電圧制御値Vqcを交流電圧制御値VUc,VVc,VWcに二相/三相変換する。
【0095】
PWM制御部59は、停電検出器25の出力信号φ25が「H」レベルである場合(商用交流電源1の健全時)には、交流電圧制御値VUc,VVc,VWcに従ってそれぞれゲート信号A1,B1、ゲート信号A2,B2、およびゲート信号A3,B3(図3)を生成する。
【0096】
この場合、コンバータ11(図3)は、PWM制御部59によって生成されるゲート信号A1~A3,B1~B3によって駆動され、三相交流電圧VU,VV,VWを交流ノード11a,11c,11dに出力する。なお、配電線4の交流電圧VSは、三相交流電圧VU,VV,VWのうちのいずれか1つの交流電圧(たとえばVU)に対応している。
【0097】
またPWM制御部59は、停電検出器25の出力信号φ25が「L」レベルである場合(商用交流電源1の停電時)には、すべてのゲート信号A1~A3,B1~B3を「L」レベルにしてコンバータ11の運転を停止させる。この場合、コンバータ11に含まれるすべてのIGBTQ1~Q6はオフ状態に維持される。
【0098】
次に、図6で示した制御部32の動作について説明する。直流電圧指令部41によって参照電圧VDRが生成され、減算器42によって参照電圧VDRと直流ラインDLの直流電圧VDとの偏差ΔVD=VDR-VDが求められる。
【0099】
直流電圧制御部43によって偏差ΔVDに応じた値の有効電流指令値Idcが生成され、リミッタ44によって有効電流指令値Idcの大きさが所定値以下の範囲内に制限されて有効電流指令値Idc1が生成される。
【0100】
電流成分検出部45により、配電線4とコンバータ11との間に流れる交流電流Iiに含まれる有効電流Idおよび無効電流Iqが検出される。減算器46によって有効電流指令値Idc1と有効電流Idとの偏差ΔId=Idc1-Idが求められ、有効電流制御部47によって偏差ΔIdに応じた値の有効電圧制御値Vdcが求められる。
【0101】
また、交流電圧指令部51によって参照電圧VSRが生成され、振幅検出部52によって配電線4の交流電圧VSの振幅VSAが検出され、減算器53によって参照電圧VSRと振幅VSAの偏差ΔVS=VSR-VSAが求められる。
【0102】
交流電圧制御部54によって偏差ΔVSに応じた値の無効電流指令値Iqcが生成され、リミッタ55によって無効電流指令値Iqcの大きさが所定値β以下の範囲内に制限されて無効電流指令値Iqc1が生成される。
【0103】
減算器56によって無効電流指令値Iqc1と無効電流Iqとの偏差ΔIq=Iqc1-Iqが求められ、無効電流制御部57によって偏差ΔIqに応じた値の無効電圧制御値Vqcが求められる。
【0104】
座標変換部58により、交流電圧VSに基づいて有効電圧制御値Vdcおよび無効電圧制御値Vqcが交流電圧制御値VUc,VVc,VWcに二相/三相変換される。
【0105】
停電検出器25の出力信号φ25が「H」レベルである場合(商用交流電源1の健全時)には、PWM制御部59により、交流電圧制御値VUc,VVc,VWcに従ってゲート信号A1~A3,B1~B3(図3)が生成され、コンバータ11が運転される。
【0106】
停電検出器25の出力信号φ25が「L」レベルである場合(商用交流電源1の停電時)には、PWM制御部59により、全てのゲート信号A1~A3,B1~B3が「L」レベルにされてコンバータ11の運転が停止される。
【0107】
商用交流電源1の健全時において、直流ラインDLの直流電圧VDが参照電圧VDRよりも低下した場合には、偏差ΔVDが正方向に増大し、有効電流制御値Idcが正方向に増大する。さらに、有効電流制御値Idc1が正方向に増大し、偏差ΔIdが正方向に増大し、有効電圧制御値Vdcが正方向に増大する。これにより、配電線4からコンバータ11に吸収される正の有効電流Idが増大し、直流ラインDLの直流電圧VDが上昇する。
【0108】
逆に、直流ラインDLの直流電圧VDが参照電圧VDRよりも上昇した場合には、偏差ΔVDが負方向に増大し、有効電流制御値Idcが負方向に増大する。さらに、有効電流制御値Idc1が負方向に増大し、偏差ΔIdが負方向に増大し、有効電圧制御値Vdcが負方向に増大する。
【0109】
これにより、配電線4からコンバータ11に吸収される負の有効電流Idが増大し、直流ラインDLの直流電圧VDが低下する。したがって、直流ラインDLの直流電圧VDは参照電圧VDRに維持される。
【0110】
また、商用交流電源1の健全時において負荷5の消費電力が増大し、配電線4の交流電圧VSの振幅VSAが参照電圧VSRよりも低下した場合には、偏差ΔVSが正方向に増大し、無効電流制御値Iqcが正方向に増大する。さらに、無効電流制御値Iqc1が正方向に増大し、偏差ΔIqが正方向に増大し、無効電圧制御値Vqcが正方向に増大する。これにより、配電線4からコンバータ11に吸収される進相の無効電流Iqが増大し、配電線4の交流電圧VSの振幅VSAが上昇する。
【0111】
逆に、負荷5の消費電力が減少し、あるいは負荷5から配電線4に回生電力が供給されて、配電線4の交流電圧VSの振幅VSAが参照電圧VSRよりも上昇した場合には、偏差ΔVSが負方向に増大し、無効電流制御値Iqcが負方向に増大する。さらに、無効電流制御値Iqc1が負方向に増大し、偏差ΔIqが負方向に増大し、無効電圧制御値Vqcが負方向に増大する。これにより、配電線4からコンバータ11に吸収される遅相の無効電流Iqが増大し、配電線4の交流電圧VSの振幅VSAが低下する。したがって、交流電圧VSの振幅VSAは参照電圧VSRに維持される。
【0112】
以上のように、この実施の形態1では、配電線4の交流電圧VSが変化した場合に、配電線4の交流電圧VSの変化分を補償するための無効電力を配電線4から吸収するようにコンバータ11を制御する。したがって、配電線4の交流電圧VSを安定化させることができる。
【0113】
[実施の形態2]
実施の形態1では、配電線4の交流電圧VSが変化した場合に、その変化分を補償するための無効電力を配電線4から吸収するようにコンバータ11を制御した。しかし、たとえば交流電圧VSが低下した状態が継続すると、コンバータ11に流れる無効電力が過大になる恐れがある。この実施の形態2では、この問題の解決が図られる。
【0114】
図8は、本開示の実施の形態2に従う電力系統に含まれる制御部32Aの要部を示すブロック図であって、図6と対比される図である。図8を参照して、制御部32Aが制御部32(図6)と異なる点は、交流電圧制御部54およびリミッタ55がクロック発生部61、ラッチ回路62,63、減算器64、交流電圧制御部65、極性判定部66、およびリミッタ67で置換されている点である。
【0115】
クロック発生部61は、所定周波数のクロック信号CLKを生成する。ラッチ回路62は、振幅検出部52(図6)によって検出される配電線4の交流電圧VSの振幅VSAを、クロック信号CLKの立ち上りエッジに応答して取り込み、取り込んだ振幅VSAを振幅VSA1として保持および出力する。
【0116】
ラッチ回路63は、ラッチ回路62から出力されている振幅VSA1を、クロック信号CLKの立ち下がりエッジに応答して取り込み、取り込んだ振幅VSA1を振幅VSA2として保持および出力する。
【0117】
減算器64は、前回の検出値である振幅VSA2と今回の検出値である振幅VSA1との偏差ΔVSA=VSA2-VSA1を求める。交流電圧制御部65は、減算器64によって求められる偏差ΔVSAに応じた値の無効電流指令値Iqcを生成する。交流電圧制御部54は、たとえば、偏差ΔVSAを比例演算または比例積分演算することによって無効電流指令値Iqcを求める。
【0118】
極性判定部66は、減算器53(図6)によって求められる偏差ΔVSの極性(正または負)を判定し、判定結果を示す信号φ66を出力する。偏差ΔVSが正である場合には、信号φ66は「H」レベルにされる。偏差ΔVSが負である場合には、信号φ66は「L」レベルにされる。リミッタ67は、無効電流指令値Iqcの大きさを所定範囲内に制限して無効電流指令値Iqc1を生成する。リミッタ67の制限範囲は、信号φ66によって変更される。
【0119】
図9は、交流電圧制御部65およびリミッタ67の動作を示す図である。図9において、(A)は偏差ΔVSが正の場合を示し、(B)は偏差ΔVSが負の場合を示している。また、(A)(B)の各々において、横軸は減算器64によって求められる偏差ΔVSAを示し、縦軸はリミッタ67によって生成される無効電流指令値Iqc1を示している。
【0120】
交流電圧制御部65によって生成される無効電流指令値Iqcは、図9(A)(B)中の点線で示されるように、偏差ΔVSAの大きさに比例して増大する。ΔVS>0である場合には図9(A)中の実線で示されるように、無効電流指令値Iqcはリミッタ67によって制限されて無効電流指令値Iqc1とされる。すなわち、0≦ΔVSA≦αの場合にはIqc1=Iqcとされ、α<ΔVSAの場合にはIqc1=βとされ、ΔVSA<0の場合にはIqc=0とされる。
【0121】
ΔVS>0かつΔVSA<0である場合にIqc1=0とするのは、今回の検出値VSA1が前回の検出値VSA2よりも上昇している場合(ΔVSA<0)であっても、配電線4の交流電圧VSの振幅VSAが参照電圧VSRよりも低い場合(ΔVS>0)には、交流電圧VSの振幅VSAを低下させる必要がないからである。
【0122】
逆に、ΔVS<0である場合には図9(B)中の実線で示されるように、無効電流指令値Iqcはリミッタ67によって制限されて無効電流指令値Iqc1とされる。すなわち、-α≦ΔVSA≦0である場合にはIqc1=Iqcとされ、ΔVSA<-αである場合にはIqc=-βとされ、0<ΔVSAである場合にはIqc=0とされる。
【0123】
ΔVS<0かつ0<ΔVSAである場合にIqc1=0とするのは、今回の検出値VSA1が前回の検出値VSA2よりも低下している場合(0<ΔVSA)であっても、配電線4の交流電圧VSの振幅VSAが参照電圧VSRよりも高い場合(ΔVS<0)には、交流電圧VSの振幅VSAを上昇させる必要がないからである。
【0124】
リミッタ67によって生成される無効電流指令値Iqc1は、減算器56(図6)に与えられる。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0125】
以上のように、この実施の形態2では、所定周期で配電線4の交流電圧VSの振幅VSAを検出し、前回の検出値である振幅VSA2と今回の検出値である振幅VSA1との偏差ΔVSA=VSA2-VSA1を求め、その偏差ΔVSAに応じた値の無効電流Iqをコンバータ11に吸収させる。したがって、交流電圧VSの振幅VSAが変化した場合だけ無効電流Iqをコンバータ11に吸収させるので、実施の形態1と比べ、コンバータ11に吸収させる無効電力を小さくすることができる。
【0126】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0127】
1 商用交流電源、2 送電線、3 連系変圧器、4 配電線、5,8 負荷、6 無停電電源装置、7 バッテリ、T1 交流入力端子、T2 バッテリ端子、T3 交流出力端子、S1~S3 スイッチ、C1~C3 コンデンサ、L1~L3 リアクトル、CD1~CD3 電流検出器、11 コンバータ、DL,DLn 直流ライン、12 双方向チョッパ、13 インバータ、14 操作部、15 制御装置、Q1~Q6,Q11~Q16 IGBT、D1~D6,D11~D16 ダイオード、21~24 電圧検出器、25 停電検出器、26 制御回路、31~34 制御部、35 通信回線、41 直流電圧指令部、42,46,53,56,64 減算器、43 直流電圧制御部、44,55,67 リミッタ、45 電流成分検出部、47 有効電流制御部、51 交流電圧指令部、52 振幅検出部、54,65 交流電圧制御部、57 無効電流制御部、58 座標変換部、59 PWM制御部、61 クロック発生部、62,63 ラッチ回路、66 極性判定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9