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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168030
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】速度測定装置及び速度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/36 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G01P3/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084413
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 久利
(72)【発明者】
【氏名】古谷 雅
(57)【要約】
【課題】測定対象物が合焦点に配置されているか否かを把握できる速度測定装置を提供する。
【解決手段】光を測定対象物10に照射するための照明光学系31の光軸を挟んで対称的に配置された第1及び第2のシャッター35、36と、光を照射された測定対象物10からの反射光を受光する結像レンズ40を通過した反射光を受光する光検出器アレイ50と、結像レンズ40の光軸を挟んで対称的な光検出器アレイ50の第1及び第2の受光領域55、56のそれぞれから第1及び第2の受光強度を受信し、第1及び第2の受光強度の差に基づき、合焦位置からの測定対象物10のズレを測定するズレ測定部301と、光検出器アレイ50で受光された反射光を空間フィルタリングして得られる信号の周波数に基づき、測定対象物10の速度を測定する速度測定部302と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を測定対象物に照射するための照明光学系と、
前記照明光学系の光軸を挟んで対称的に配置された第1のシャッター及び第2のシャッターと、
前記光を照射された前記測定対象物からの反射光を受光する結像レンズと、
前記結合レンズを通過した前記反射光を受光する光検出器アレイと、
前記結像レンズの光軸を挟んで対称的な前記光検出器アレイの第1の受光領域及び第2の受光領域のそれぞれから第1の受光強度及び第2の受光強度を受信し、前記第1の受光強度及び前記第2の受光強度の差に基づき、前記結像レンズの合焦点からの前記測定対象物のズレを測定するズレ測定部と、
前記光検出器アレイで受光された前記反射光を空間フィルタリングして得られる信号の周波数に基づき、前記測定対象物の速度を測定する速度測定部と、
を備える、速度測定装置。
【請求項2】
前記ズレ測定部が前記第1の受光強度を受信する際、前記第1のシャッターが開き、前記第2のシャッターが閉じ、
前記ズレ測定部が前記第2の受光強度を受信する際、前記第2のシャッターが開き、前記第1のシャッターが閉じる、
請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項3】
前記速度測定部が前記測定対象物の速度を測定する際、前記第1のシャッター及び前記第2のシャッターが開く、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項4】
前記測定対象物が前記結像レンズの合焦点に配置されている場合、前記第1のシャッターを通過した光による前記測定対象物から反射光が前記第1の受光領域で受光され、前記第2のシャッターを通過した光による前記測定対象物から反射光が前記第2の受光領域で受光され、前記第1の受光強度及び前記第2の受光強度が等しくなるよう、前記照明光学系、前記第1のシャッター、前記第2のシャッター、前記結像レンズ、及び前記光検出器アレイが配置されている、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項5】
前記第1のシャッター及び前記第2のシャッターが、前記照明光学系の光軸に対して垂直である、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項6】
前記第1の受光領域及び前記第2の受光領域が、前記結像レンズの光軸に対して垂直である、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項7】
前記第1のシャッター及び前記第2のシャッターの境界が、前記第1の受光領域及び前記第2の受光領域の境界と平行である、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項8】
光を測定対象物に照射するための照明光学系と、前記照明光学系の光軸を挟んで対称的に配置された第1のシャッター及び第2のシャッターと、前記光を照射された前記測定対象物からの反射光を受光する結像レンズと、前記結合レンズを通過した前記反射光を受光する光検出器アレイと、を備える速度測定装置を用意することと、
前記結像レンズの光軸を挟んで対称的な前記光検出器アレイの第1の受光領域及び第2の受光領域のそれぞれから第1の受光強度及び第2の受光強度を測定し、前記第1の受光強度及び前記第2の受光強度の差に基づき、前記結像レンズの合焦点からの前記測定対象物のズレを測定することと、
前記光検出器アレイで受光された前記反射光を空間フィルタリングして得られる信号の周波数に基づき、前記測定対象物の速度を測定することと、
を含む、速度測定方法。
【請求項9】
前記結像レンズの合焦点からの前記測定対象物のズレがなくなるよう、前記速度測定装置と前記測定対象物の相対距離を補正することをさらに含む、請求項8に記載の速度測定方法。
【請求項10】
前記結像レンズの合焦点からの前記測定対象物のズレを測定する際に、
前記第1のシャッターを開き、前記第2のシャッターを閉じて、前記第1の受光強度を測定し、
前記第2のシャッターを開き、前記第1のシャッターを閉じて、前記第2の受光強度を測定する、
請求項8に記載の速度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度測定装置及び速度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の移動速度を非接触で測定する方法が提案されている。非特許文献1は、測定対象の不規則な模様を空間フィルタに投影し、光電変換して得られた信号から特定の周期信号を抽出して、測定対象物の速度を求めることを記載している。空間フィルタを用いる速度測定方法において、速度を正確に測定するためには、空間フィルタ上に測定対象物の像が結像している必要がある。
【0003】
特許文献1は、速度測定のためのレンズと測定対象物との間の距離を検出する手段を有する速度計測装置を開示しており、距離を検出する手段の具体例として、超音波を利用した距離センサを開示している。特許文献2は、距離計測手段を有する速度計測装置を開示しており、距離計測手段の具体例として、速度計測のための光学系とは別の光学系で、被速度検出物で正規反射した光を受光器で受光し、受光強度が適切な範囲内であるか判断すること、あるいは被速度検出物で正規反射した光をラインセンサで受光し、被速度検出物の高さ情報を得ることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-223357号公報
【特許文献2】特開平1-202668号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yoshihisa Aizu, Toshimitsu Asakura, Spatial Filtering Velocimetry: Fundamentals and Applications (Springer Series in Optical Sciences, 116), 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、測定対象物が合焦点に配置されているか否かを把握できる速度測定装置及び速度測定方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る速度測定装置は、光を測定対象物に照射するための照明光学系と、照明光学系の光軸を挟んで対称的に配置された第1のシャッター及び第2のシャッターと、光を照射された測定対象物からの反射光を受光する結像レンズと、結合レンズを通過した反射光を受光する光検出器アレイと、結像レンズの光軸を挟んで対称的な光検出器アレイの第1の受光領域及び第2の受光領域のそれぞれから第1の受光強度及び第2の受光強度を受信し、第1の受光強度及び第2の受光強度の差に基づき、結像レンズの合焦点からの測定対象物のズレを測定するズレ測定部と、光検出器アレイで受光された反射光を空間フィルタリングして得られる信号の周波数に基づき、測定対象物の速度を測定する速度測定部と、を備える。
【0008】
上記の速度測定装置において、ズレ測定部が第1の受光強度を受信する際、第1のシャッターが開き、第2のシャッターが閉じ、ズレ測定部が第2の受光強度を受信する際、第2のシャッターが開き、第1のシャッターが閉じてもよい。
【0009】
上記の速度測定装置において、速度測定部が測定対象物の速度を測定する際、第1のシャッター及び第2のシャッターが開いてもよい。
【0010】
上記の速度測定装置において、測定対象物が結像レンズの合焦点に配置されている場合、第1のシャッターを通過した光による測定対象物から反射光が第1の受光領域で受光され、第2のシャッターを通過した光による測定対象物から反射光が第2の受光領域で受光され、第1の受光強度及び第2の受光強度が等しくなるよう、照明光学系、第1のシャッター、第2のシャッター、結像レンズ、及び光検出器アレイが配置されていてもよい。
【0011】
上記の速度測定装置において、第1のシャッター及び第2のシャッターが、照明光学系の光軸に対して垂直であってもよい。
【0012】
上記の速度測定装置において、第1の受光領域及び第2の受光領域が、結像レンズの光軸に対して垂直であってもよい。
【0013】
上記の速度測定装置において、第1のシャッター及び第2のシャッターの境界が、第1の受光領域及び第2の受光領域の境界と平行であってもよい。
【0014】
本発明の態様に係る速度測定方法は、光を測定対象物に照射するための照明光学系と、照明光学系の光軸を挟んで対称的に配置された第1のシャッター及び第2のシャッターと、光を照射された測定対象物からの反射光を受光する結像レンズと、結合レンズを通過した反射光を受光する光検出器アレイと、を備える速度測定装置を用意することと、結像レンズの光軸を挟んで対称的な光検出器アレイの第1の受光領域及び第2の受光領域のそれぞれから第1の受光強度及び第2の受光強度を測定し、第1の受光強度及び第2の受光強度の差に基づき、結像レンズの合焦点からの測定対象物のズレを測定することと、光検出器アレイで受光された反射光を空間フィルタリングして得られる信号の周波数に基づき、測定対象物の速度を測定することと、を含む。
【0015】
上記の速度測定方法が、結像レンズの合焦点からの測定対象物のズレがなくなるよう、速度測定装置と測定対象物の相対距離を補正することをさらに含んでいてもよい。
【0016】
上記の速度測定方法において、結像レンズの合焦点からの測定対象物のズレを測定する際に、第1のシャッターを開き、第2のシャッターを閉じて、第1の受光強度を測定し、第2のシャッターを開き、第1のシャッターを閉じて、第2の受光強度を測定してもよい。
【0017】
上記の速度測定方法において、測定対象物の速度を測定する際、第1のシャッター及び第2のシャッターを開いてもよい。
【0018】
上記の速度測定方法において、測定対象物が結像レンズの合焦点に配置されている場合、第1のシャッターを通過した光による測定対象物から反射光が第1の受光領域で受光され、第2のシャッターを通過した光による測定対象物から反射光が第2の受光領域で受光され、第1の受光強度及び第2の受光強度が等しくなるよう、照明光学系、第1のシャッター、第2のシャッター、結像レンズ、及び光検出器アレイが配置されていてもよい。
【0019】
上記の速度測定方法において、第1のシャッター及び第2のシャッターが、照明光学系の光軸に対して垂直であってもよい。
【0020】
上記の速度測定方法において、第1の受光領域及び第2の受光領域が、結像レンズの光軸に対して垂直であってもよい。
【0021】
上記の速度測定方法において、第1のシャッター及び第2のシャッターの境界が、第1の受光領域及び第2の受光領域の境界と平行であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、測定対象物が合焦点に配置されているか否かを把握できる速度測定装置及び速度測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施形態に係る速度測定装置を示す模式的側面図である。
図2図2は、実施形態に係る光検出器アレイを示す模式図である。
図3図3は、実施形態に係る測定対象物の結像レンズからの距離と、第1の受光強度I1及び第2の受光強度I2と、の関係を示す模式的なグラフである。
図4図4は、実施形態に係る測定対象物の結像レンズからの距離と、第1の受光強度I1及び第2の受光強度I2の差と、の関係を示す模式的なグラフである。
図5図5は、実施形態に係る速度測定装置が備える回路の模式図である。
図6図6は、実施形態に係る速度測定装置が備える回路のタイミングチャートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0025】
実施形態に係る速度測定装置は、図1に示すように、光を測定対象物10に照射するための照明光学系31と、照明光学系31の光軸を挟んで対称的に配置された第1のシャッター35及び第2のシャッター36と、光を照射された測定対象物10からの反射光を受光する結像レンズ40と、結像レンズ40を通過した反射光を受光する光検出器アレイ50と、を備える。
【0026】
実施形態に係る速度測定装置は、さらに、結像レンズ40の光軸を挟んで対称的な光検出器アレイ50の第1の受光領域55及び第2の受光領域56のそれぞれから第1の受光強度及び第2の受光強度を受信し、第1の受光強度及び第2の受光強度の差に基づき、結像レンズ40の合焦点からの測定対象物10のズレを測定するズレ測定部301と、光検出器アレイ50で受光された反射光を空間フィルタリングして得られる信号の周波数に基づき、測定対象物10の速度を測定する速度測定部302と、を備える。ズレ測定部301と速度測定部302は、例えば、中央演算処理装置(CPU)300に含まれる。
【0027】
測定対象物10の表面には微細な凹凸があってもよい。測定対象物10の表面には模様があってもよい。測定対象物10は、被測定面に対して平行に移動する。測定対象物10は、速度測定装置に対して相対的に移動する。例えば、速度測定装置が静置され、測定対象物10が移動してもよいし、測定対象物10が静置され、速度測定装置が移動してもよい。速度測定装置が静置され、測定対象物10が移動する場合、測定対象物10の例としては、フィルム、及び不織布等が挙げられるが、特に限定されない。測定対象物10が静置され、速度測定装置が移動する場合、測定対象物10の例としては、路面が挙げられるが、特に限定されない。
【0028】
実施形態に係る速度測定装置は、測定対象物10に光を照射する光源30をさらに備えていてもよい。光源30としては、レーザー及び発光ダイオード(LED)が使用可能であるが、特に限定されない。光源30は点光源であってもよいし、面光源であってもよい。光の強度は、例えば、一定である。
【0029】
照明光学系31は、例えば、光源30が発した光を平行光にする第1のレンズ32と、第1のシャッター35及び第2のシャッター36を通過した光が通過する第2のレンズ33と、を備えていてもよい。照明光学系31の光軸は、例えば、測定対象物10と斜めに交わる。結像レンズ40の光軸は、例えば、測定対象物10と直角に交わる。照明光学系31の光軸と、結像レンズ40の光軸と、は、非平行であり、一点で交わる。照明光学系31の光軸と結像レンズ40の光軸との交点は、合焦点であり、測定対象物10が合焦点にある場合、光検出器アレイ50上に測定対象物10の像が結像する。測定対象物10が合焦点からずれている場合、光検出器アレイ50上の測定対象物10の像がぼやける。
【0030】
第1のシャッター35及び第2のシャッター36は、照明光学系31の光軸に対して垂直である。第1のシャッター35及び第2のシャッター36は、それぞれ、開閉可能である。ズレ測定部301が合焦点からの測定対象物10のズレを測定する場合、第1のシャッター35が開く場合は第2のシャッター36が閉じる。また、第2のシャッター36が開く場合は第1のシャッター35が閉じる。速度測定部302が測定対象物10の速度を測定する場合、第1のシャッター35及び第2のシャッター36の両方が開く。例えば、第1のシャッター35と測定対象物10との間の距離は、第2のシャッター36と測定対象物10との間の距離よりも短い。
【0031】
光検出器アレイ50は、図2に示すように、縞状に配置された複数の光検出器52A、52B、52C・・・を備える。複数の光検出器52A、52B、52C・・・のそれぞれは、画素であり得る。複数の光検出器52A、52B、52C・・・のそれぞれは、フォトダイオード等の光電変換素子であり得る。縞状に配置された複数の光検出器52A、52B、52C・・・は、空間フィルタをなしている。
【0032】
図1に示す光検出器アレイ50の第1の受光領域55及び第2の受光領域56は、結像レンズ40の光軸に対して垂直である。第1のシャッター35及び第2のシャッター36の境界と、光検出器アレイ50の第1の受光領域55及び第2の受光領域56の境界と、は、平行である。図2に示す複数の光検出器52A、52B、52C・・・は二つのグループに分けられ、第1のグループの複数の光検出器は第1の受光領域55に含まれ、第2のグループの複数の光検出器は第2の受光領域56に含まれる。
【0033】
第1の受光領域55に含まれる複数の光検出器のそれぞれには、第1の受光強度I1の信号S1を取得するための信号線151が接続されている。第1の受光領域55に含まれる複数の光検出器のそれぞれと、信号線151と、の間には、スイッチが設けられていてもよい。信号線151には、第1の受光強度I1の信号S1を増幅するための増幅器161が設けられていてもよい。第2の受光領域56に含まれる複数の光検出器のそれぞれには、第2の受光強度I2の信号S2を取得するための信号線152が接続されている。第2の受光領域56に含まれる複数の光検出器のそれぞれと、信号線152と、の間には、スイッチが設けられていてもよい。信号線152には、第2の受光強度I2の信号S2を増幅するための増幅器162が設けられていてもよい。
【0034】
例えば、照明光学系31の光軸に対して第1のシャッター35が位置する側と、結像レンズ40の光軸に対して第1の受光領域55が位置する側は同じである。例えば、照明光学系31の光軸に対して第2のシャッター36が位置する側と、結像レンズ40の光軸に対して第2の受光領域56が位置する側は同じである。
【0035】
測定対象物10が合焦点にあり、第2のシャッター36が閉じている場合、開いている第1のシャッター35を通過し、測定対象物10上で反射した光は、第1の受光領域55で受光される。測定対象物10が合焦点にあり、第1のシャッター35が閉じている場合、開いている第2のシャッター36を通過し、測定対象物10上で反射した光は、第2の受光領域56で受光される。
【0036】
ズレ測定部301は、第1のシャッター35を開き、第2のシャッター36を閉じる。この場合、ズレ測定部301は、第1の受光領域55に含まれる複数の光検出器と信号線151の間のスイッチを接続し、第2の受光領域56に含まれる複数の光検出器と信号線152の間のスイッチを切断し、第1の受光領域55に含まれる複数の光検出器から第1の受光強度I1の信号S1を受信し、第2の受光領域56に含まれる複数の光検出器から第2の受光強度I2の信号S2を受信しない。
【0037】
また、ズレ測定部301は、第2のシャッター36を開き、第1のシャッター35を閉じる。この場合、ズレ測定部301は、第2の受光領域56に含まれる複数の光検出器と信号線152の間のスイッチを接続し、第1の受光領域55に含まれる複数の光検出器と信号線151の間のスイッチを切断し、第2の受光領域56に含まれる複数の光検出器から第2の受光強度I2の信号S2を受信し、第1の受光領域55に含まれる複数の光検出器から第1の受光強度I1の信号S1を受信しない。
【0038】
ズレ測定部301は、第1の受光強度I1と第2の受光強度I2の差を受信する。ここで、測定対象物10が合焦点にある場合、第1のシャッター35を通過し、測定対象物10上で反射した光と、第2のシャッター36を通過し、測定対象物10上で反射した光と、の境界は、光検出器アレイ50の第1の受光領域55と第2の受光領域56の境界と一致する。そのため、図3に示すように、第2のシャッター36を閉じ第1のシャッター35を開いているときの第1の受光強度I1と、第1のシャッター35を閉じ第2のシャッター36を開いているときの第2の受光強度I2と、は等しくなるため、図4に示すように、第1の受光強度I1と第2の受光強度I2の差はゼロになる。
【0039】
測定対象物10が合焦点よりも結像レンズ40に近い場合、例えば、第1の受光強度I1が第2の受光強度I2より大きくなり、第2の受光強度I2と第1の受光強度I1の差はゼロにならず、負の値をとり得る。測定対象物10が合焦点よりも結像レンズ40から遠い場合、例えば、第2の受光強度I2が第1の受光強度I1より大きくなり、第2の受光強度I2と第1の受光強度I1の差はゼロにならず、正の値をとり得る。
【0040】
図1に示すズレ測定部301は、例えば、下記(1)式に示すような、測定対象物10の結像レンズ40からの距離xと、第1の受光強度I1と第2の受光強度I2の差yと、の関係を記憶する。
x=f(y) (1)
ズレ測定部301は、例えば、測定対象物10の結像レンズ40からの距離xと、第1の受光強度I1と第2の受光強度I2の差yと、の関係と、第1の受光強度I1と第2の受光強度I2の差の測定値と、に基づいて、測定対象物10の結像レンズ40からの距離の測定値xmを算出する。
【0041】
ズレ測定部301は、さらに、結像レンズ40から合焦点までの距離xrと、結像レンズ40から測定対象物10までの距離の測定値xmと、の差に基づき、結像レンズ40の合焦点からの測定対象物10のズレを算出する。ズレ測定部301は、例えば、結像レンズ40の合焦点からの測定対象物10のズレを、出力装置402に出力する。出力装置402としては、例えば、表示装置が使用可能である。出力装置402に出力されたズレに基づいて、当該ズレがなくなるよう、速度測定装置と測定対象物10の相対距離を補正することにより、測定対象物10の速度を正確に測定することが可能である。
【0042】
実施形態に係る速度測定装置は、光検出器アレイ50とズレ測定部301の間に、図5に示すズレ測定用回路500を備えていてもよい。ズレ測定用回路500は、第1の受光強度I1の信号S1が入力される第1のサンプル&ホールド回路501と、第2の受光強度I2の信号S2が入力される第2のサンプル&ホールド回路502と、を備える。第1のサンプル&ホールド回路501の出力は、スイッチSW3を介してオペアンプ503に接続されている。第2のサンプル&ホールド回路502の出力は、スイッチSW4を介してオペアンプ503に接続されている。オペアンプ503の出力には、スイッチSW5を介して増幅器504が接続されている。
【0043】
ズレ測定用回路500の動作を、図6に示すタイミングチャートを参照して説明する。ズレ測定部301は、第1のシャッター35を開き、第2のシャッター36を閉じる。また、ズレ測定部301は、第1の受光領域55に含まれる複数の光検出器と信号線151の間のスイッチを接続し、第2の受光領域56に含まれる複数の光検出器と信号線152の間のスイッチを切断する。さらに、ズレ測定部301は、第1のサンプル&ホールド回路501のスイッチSW1とスイッチSW3、SW4を接続し、スイッチSW2、SW5を切断する。これにより、第1のサンプル&ホールド回路501に、第1の受光強度I1の信号S1が入力され、コンデンサ511に第1の受光強度I1の信号S1が蓄積される。次に、ズレ測定部301は、第1のサンプル&ホールド回路501のスイッチSW1を切断する。これにより、コンデンサ511に第1の受光強度I1の信号S1が保持される。
【0044】
次に、ズレ測定部301は、第2のシャッター36を開き、第1のシャッター35を閉じる。また、ズレ測定部301は、第2の受光領域56に含まれる複数の光検出器と信号線152の間のスイッチを接続し、第1の受光領域55に含まれる複数の光検出器と信号線151の間のスイッチを切断する。さらに、ズレ測定部301は、第2のサンプル&ホールド回路502のスイッチSW2を接続する。これにより、第2のサンプル&ホールド回路502に、第2の受光強度I2の信号S2が入力される。
【0045】
次に、ズレ測定部301は、スイッチSW5を接続する。これにより、第1の受光強度I1の信号S1と第2の受光強度I2の信号S2との差分信号SDが、オペアンプ503から増幅器504に出力され、増幅器504で増幅された差分信号SDは、ズレ測定部301に出力される。また、差分信号SDは、コンデンサ505に蓄積される。次に、ズレ測定部301は、スイッチSW5を切断する。これにより、コンデンサ505に差分信号SDが保持される。
【0046】
次に、ズレ測定部301は、スイッチSW3とスイッチSW4のそれぞれを、抵抗を介してグランドに接続する。これにより、コンデンサ511、521に保持されていた信号が消失し、第1の受光強度I1の信号S1と第2の受光強度I2の信号S2がゼロにリセットされる。ズレ測定部301は、差分信号SDを再度取得する場合は、ズレ測定用回路500に上記の動作を繰り返させる。
【0047】
図1に示す速度測定部302は、空間フィルタ法により、速度を測定する。速度測定部302は、図2に示す縞状に並んでいる複数の光検出器52A、52B、52C・・・のうち、例えば奇数番号の光検出器から出力された信号SOと、偶数番号の光検出器から出力された信号SEと、の差動出力を受信する。例えば、奇数番号の光検出器には、信号線153が接続されている。奇数番号の光検出器に接続する信号線153には、スイッチが設けられていてもよい。例えば、偶数番号の光検出器には、信号線154が接続されている。偶数番号の光検出器に接続する信号線154には、スイッチが設けられていてもよい。
【0048】
速度測定部302が速度を測定する際には、奇数番号の光検出器に接続する信号線153に設けられたスイッチと、偶数番号の光検出器に接続する信号線154に設けられたスイッチが接続され、第1の受光領域55に含まれる複数の光検出器と信号線151の間のスイッチと、第2の受光領域56に含まれる複数の光検出器と信号線152の間のスイッチが切断される。
【0049】
ズレ測定部301がズレを測定する際は、奇数番号の光検出器に接続する信号線153に設けられたスイッチと、偶数番号の光検出器に接続する信号線154に設けられたスイッチが切断される。
【0050】
速度測定部302が速度を測定する際、奇数番号の光検出器から出力された信号SOの周波数は、測定対象物10の速度と、奇数番号の光検出器のピッチに比例する。偶数番号の光検出器から出力された信号SEの周波数は、奇数番号の光検出器から出力された信号SOの周波数と同じであり、偶数番号の光検出器から出力された信号SEの位相は、奇数番号の光検出器から出力された信号SOの位相の逆相である。
【0051】
信号線153、154には、奇数番号の光検出器から出力された信号SOと、偶数番号の光検出器から出力された信号SEと、の差分信号を出力するオペアンプ163が接続されている。速度測定部302は、例えば、オペアンプ163から差分信号を受信する。差分信号においては、奇数番号の光検出器から出力された信号SOが含むバイアス成分と、偶数番号の光検出器から出力された信号SEが含むバイアス成分が除去される。また、差分信号の振幅は、奇数番号の光検出器から出力された信号SOの振幅の2倍であり、偶数番号の光検出器から出力された信号SEの振幅の2倍である。
【0052】
図1に示す速度測定部302は、例えば、差分信号を所定の時間蓄積し、蓄積した差分信号を高速フーリエ変換(FFT)処理して、周波数スペクトル(振幅スペクトル)を算出する。周波数スペクトルにおいて、ゼロ付近を除いて振幅のピークを与える正の周波数が、差分信号の周波数Fである。なお、スペクトルはパワースペクトルでもよい。
【0053】
速度測定部302は、例えば下記(2)式を用いて、測定対象物10の速度V1を算出する。
V1=FP/M (2)
ここで、Pは、奇数番号の光検出器のピッチであり、偶数番号の光検出器のピッチである。Mは、結像レンズ40による倍率である。なお、速度V1の算出には、信号の周波数Fの代わりに信号の周期を用いてもよい。
【0054】
上記のように本発明を実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、図1に示す速度測定部302が、奇数番号の光検出器から出力された信号SOと、偶数番号の光検出器から出力された信号SEと、の差分信号の周波数を算出し、差分信号の周波数に基づいて、測定対象物10の速度V1を算出する例を説明した。
【0055】
これに対し、差分信号を算出せず、奇数番号の光検出器から出力された信号SOのみに基づいて信号の周波数を算出し、当該信号の周波数に基づいて、測定対象物10の速度V1を算出してもよい。あるいは、偶数番号の光検出器から出力された信号SEのみに基づいて信号の周波数を算出し、当該信号の周波数に基づいて、測定対象物10の速度V1を算出してもよい。ただし、差分信号を用いたほうが、バイアス成分が除去されるため、測定精度は高くなる。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0056】
10・・・測定対象物、30・・・光源、31・・・照明光学系、32・・・第1のレンズ、33・・・第2のレンズ、35・・・第1のシャッター、36・・・第2のシャッター、40・・・結像レンズ、50・・・光検出器アレイ、52・・・光検出器、55・・・第1の受光領域、56・・・第2の受光領域、151、152、153、154・・・信号線、161、162・・・増幅器、163・・・オペアンプ、301・・・ズレ測定部、302・・・速度測定部、402・・・出力装置、500・・・ズレ測定用回路、501・・・第1のホールド回路、502・・・第2のホールド回路、503・・・オペアンプ、504・・・増幅器、505・・・コンデンサ、511・・・コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6