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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168032
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】化粧料塗布具
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20241128BHJP
   A45D 34/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A45D34/04 510Z
A45D34/00 510Z
A45D34/04 510A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084416
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】京極 悠佑
(57)【要約】
【課題】まつ毛を確実に上向きにカールさせることができると共に、同時にカールアップした状態のまつ毛に対して一定量のマスカラ液などの液体化粧液を塗布することができる操作性に優れた化粧料塗布具を提供する。
【解決手段】化粧料収容室1bを形成した軸筒1の前端部に、軸筒の長手方向に沿って配置されると共に、化粧料収容室からの化粧料を受けて当該化粧料を含浸した状態で保持する可撓性を有する塗布体4と、軸筒の一部から分岐して、自由端側が塗布体の長手方向に沿って対峙した状態で配置され、かつ、弾性変形により自由端側が塗布体の長手方向に沿って接触可能なまつ毛押さえ部材3とが備えられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料収容室を形成した軸筒の前端部に、軸筒の長手方向に沿って配置されると共に、前記化粧料収容室からの化粧料を受けて当該化粧料を含浸した状態で保持する可撓性を有する塗布体と、
前記軸筒の一部から分岐して、自由端側が前記塗布体の長手方向に沿って対峙した状態で配置され、かつ、弾性変形により前記自由端側が前記塗布体の長手方向に沿って接触可能なまつ毛押さえ部材と、
を備えたことを特徴とする化粧料塗布具。
【請求項2】
前記塗布体は、軸筒の前端部に設けられた塗布体収容部に収容されると共に、塗布体の前記まつ毛押さえ部材に対向する部分が、前記塗布体収容部から前記長手方向に沿って一定幅をもって露出された状態で配置され、
前記まつ毛押さえ部材の前記塗布体に接触する接触部が棒状体を構成して、前記棒状体による接触部の幅寸法W1と、前記塗布体収容部から露出された塗布体の幅寸法W2が、ほぼ同一寸法に構成されている請求項1に記載の化粧料塗布具。
【請求項3】
前記まつ毛押さえ部材に対向する塗布体収容部の背面側には、軸方向に沿って複数の櫛歯体がほぼ等間隔に配置されている請求項1又は2に記載の化粧料塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、まつ毛を例えば上向きにカールさせると同時に、カールした状態のまつ毛に対してマスカラ液などの液体化粧液を塗布することができる化粧料塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
まつ毛の化粧には、一般にビューラーを用いてまつ毛をカールさせることで、まつ毛を上向かせるステップと、続いて上向きにカールされたまつ毛に、マスカラ液などの液体化粧液を塗布することで、カールされたまつ毛を保持させる2ステップの化粧操作が必要となる。
そこで、前記した2ステップの化粧操作を、一つの化粧具によって実現させようとする試みが提案されている。
【0003】
特許文献1には、マスカラ液の収容部を内蔵した軸筒の先端部側に、軸に対して垂直に伸びる複数の櫛歯が備えられ、マスカラ液の収容部から櫛歯の根元部分に連通する導管を介して、マスカラ液が櫛歯に導かれるように構成したマスカラ塗布具が開示されている。
そして、櫛歯の根元部分のマスカラ液の吐出口を閉じることができるブラシ押え部が備えられて、このブラシ押え部はまつ毛押さえ用部材として利用することができことが記載されている。
【0004】
一方、特許文献2には、キャップ状になされた把手部にピンセット状に成形された二股状の柄部が取り付けられ、柄部の両自由端側には対向するようにして、それぞれに櫛歯を有する塗布部を備えた化粧用具が開示されている。二股状の柄部を閉じた状態で、柄部をマスカラ液が収容された細長い容器内に挿入することで、柄部先端の塗布部にはマスカラ液が保持される。
この状態で容器から前記化粧用具を引き抜き、櫛歯を有する前記塗布部で、まつ毛を挟むことで、まつ毛に対してマスカラ液を塗布することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-280523号公報
【特許文献2】特開2010-99141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されたマスカラ塗布具によると、ブラシ押え部がマスカラ液の吐出口を開閉するように構成されており、ブラシ押え部を開けて軸筒後端部に配置された回転部を回動させることで、塗布部にマスカラ液を押し出し、この状態でブラシ押え部と櫛歯との間でまつ毛を挟むことによって、まつ毛にマスカラ液が塗布されるように作用する。
【0007】
これによると、まつ毛にマスカラ液を塗布するにあたっては、ブラシ押え部を開いてマスカラ液の吐出口を開放し、軸筒後端部の回転部を回動させることで、塗布部にマスカラ液を押し出す操作が必要である。従って、不慣れな場合には塗布部にマスカラ液を押し出した際や、化粧中においてマスカラ液が液ダレを起こすという不具合が生じ易い。
すなわち、この種の化粧料塗布具においては、前記したようにマスカラ液の押し出し操作をすることなく、まつ毛に対するマスカラ液の塗布量は、常に一定の状態でなされることが望まれる。
【0008】
一方、特許文献2に開示された化粧用具においては、二股状の柄部を閉じた状態で、柄部をマスカラ液が収容された細長い容器内に挿入することで、柄部先端の塗布部にマスカラ液が保持される。これによると、化粧中において柄部先端の塗布部を、マスカラ液が収容された細長い容器内に数度にわたり出し入れする操作が必要になるなど、使い勝手の悪い問題を有している。
そして、特許文献1及び2に開示された化粧用具のいずれにおいても、複数の櫛歯を配列させることで塗布部を構成しており、従って櫛歯による塗布部のマスカラ液等の保持量は一定せず、また櫛歯によるまつ毛の安定したカール操作も期待することは難しい。
【0009】
この発明は、斯かる実情に鑑みてなされたものであり、まつ毛を確実に上向きにカールさせることができると共に、同時にカールアップした状態のまつ毛に対して一定量のマスカラ液などの液体化粧液を塗布することができる操作性に優れた化粧料塗布具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る化粧料塗布具は、化粧料収容室を形成した軸筒の前端部に、軸筒の長手方向に沿って配置されると共に、前記化粧料収容室からの化粧料を受けて当該化粧料を含浸した状態で保持する可撓性を有する塗布体と、前記軸筒の一部から分岐して、自由端側が前記塗布体の長手方向に沿って対峙した状態で配置され、かつ、弾性変形により前記自由端側が前記塗布体の長手方向に沿って接触可能なまつ毛押さえ部材とを備えたことを特徴とする。
【0011】
この場合、前記塗布体は、軸筒の前端部に設けられた塗布体収容部に収容されると共に、塗布体の前記まつ毛押さえ部材に対向する部分が、前記塗布体収容部から前記長手方向に沿って一定幅をもって露出された状態で配置され、前記まつ毛押さえ部材の前記塗布体に接触する接触部が棒状体を構成して、前記棒状体による接触部の幅寸法W1と、前記塗布体収容部から露出された塗布体の幅寸法W2が、ほぼ同一寸法に構成されていることが望ましい。
【0012】
加えて、好ましい実施の形態においては、前記塗布体収容部から露出された部分の塗布体が内側に湾曲し、当該塗布体に対峙する棒状体による塗布体への接触部が外側に湾曲した構成が採用される。
さらに、まつ毛押さえ部材部材に対向する塗布体収容部の背面側には、軸方向に沿って複数の櫛歯体がほぼ等間隔に配置されていることが望ましい。
そして、まつ毛押さえ部材は、可撓性の樹脂素材により構成され、その基端部が前記軸筒に装着されて取り付けられた構成を好適に採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
前記した化粧料塗布具によると、軸筒の化粧料収容室から供給される化粧料を含浸した状態の可撓性を有する塗布体と、この塗布体の長手方向に沿って対峙し、弾性変形により塗布体の長手方向に沿って接触するまつ毛押さえ部材が備えられる。
従って、塗布体とまつ毛押さえ部材との間に、まつ毛を挟むことにより、まつ毛は、まつ毛押さえ部材と可撓性を有する塗布体との間に挟まれて、まつ毛押さえ部材の外周面に沿って上向きにカールされる。
【0014】
上向きにカールした状態のまつ毛には、塗布体に含浸した状態の一定量のマスカラ液などの液体化粧液が塗布される。
従って、この発明に係る化粧料塗布具によると、まつ毛を確実に上向きにカールさせることができると共に、同時にカールアップした状態のまつ毛に対して一定量のマスカラ液などの液体化粧液を塗布することができるので、操作性に優れた化粧料塗布具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明に係る化粧料塗布具の全体構成を示した斜視図であり、(A)はキャップを装着した状態を示し、(B)はキャップを外した状態を示す。
図2】キャップを装着した状態の化粧料塗布具の全体構成を示し、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は左側面図、(D)は中央断面図である。
図3】キャップを外した状態の化粧料塗布具を示し、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は左側面図である。
図4】同じくキャップを外した状態の化粧料塗布具を示し、(A)は中央断面図、(B)は底面図である。
図5】まつ毛押さえ部材の自由端側を弾性変形させた状態を示し、(A)は正面図、(B)は中央断面図である。
図6】化粧料塗布具の部品展開図を示し、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は中央断面図である。
図7】塗布体収容部の単品構成を示し、(A)は先端部側を手前にした斜視図、(B)は基端部側を手前にした斜視図、(C)は上面図、(D)は正面図、(E)は左側面図、(F)は右側面図、(G)は中央断面図、(H)は底面図、(I)は底面側から見た斜視図である。
図8】まつ毛押さえ部材の単品構成を示し、(A)は先端部側を手前にした斜視図、(B)は基端部側を手前にした斜視図、(C)は上面図、(D)は正面図、(E)は左側面図、(F)は右側面図、(G)は中央断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明に係る化粧料塗布具について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。この化粧料塗布具は、図1(A)に示すように軸筒1の前端部にキャップ2が装着されて、その外郭が細長い円柱状を構成している。また、軸筒1におけるキャップ2の装着位置には、棒状のまつ毛押さえ部材3を一体に成型した円筒状の支持体3Aが、軸筒1に嵌合されて取り付けられている。
また、キャップ2を外した図1(B)に示すように、軸筒1の前端部には塗布体4を収容した塗布体収容部5が、軸筒1の長手方向に沿って突出した状態で取り付けられており、前記キャップ2は、前記塗布体4及び塗布体収容部5を覆うようにして、軸筒1に着脱可能に装着される。
【0017】
前記軸筒1は、図2図4図5に断面図で示したように、ほぼ円筒状に形成されて、軸筒1のほぼ後半部を占める長さを有する蓋体6が、軸筒1の後端開口側から挿入されて閉塞している。
図6に示されているように、蓋体6には尾端部に円盤状の鍔部6aが形成されており、この鍔部6aのわずかに前方寄にはリング状の凸部6bが形成されている。そして、リング状の凸部6bが軸筒1の後部開口内に内向きに形成されたリング状の凸部1a〔図5参照〕を乗り越えることで、前記鍔部6aが軸筒1の後端部に当接した状態で装着される。
【0018】
前記蓋体6は、長手方向の中央部に対して前端部の径がわずかに大きくなされて大径部6c〔図5参照〕を形成し、この大径部6cには軸方向に沿って複数条の環状突起6d〔図6参照〕が形成されている。この複数条の環状突起6dは、軸筒1の前半部に形成される後述する化粧料収容室1bを後部側で封止する封止体として機能する。
なお、図5に示すように軸筒1は、その内径が後半部に対して前半部がわずかに小さく成形されており、前記蓋体1に形成された複数条の環状突起6dは、後半部側から向かって前半部の内径がわずかに小さく成形された部分において、軸筒1内を封止し、その前半部に化粧料収容室1bを形成している。
【0019】
軸筒1の前半部の化粧料収容室1b内には、化粧料としてマスカラ液などの液体化粧液を含んだ中綿7が収容されている。この中綿7は、化粧料収容室1bの室内空間に対応して円柱体形状に成形されている。
化粧料収容室1bの前端部には、図5に示すように開口1cが施された隔壁1dが形成されており、前記中綿7は、その前端部が前記隔壁1dに当接し、後端部が前記蓋体6の前端部に当接した状態で、化粧料収用室1b内に収容されている。
【0020】
軸筒1に形成された前記隔壁1dの先には、軸筒1に比較して径を細くした短小な円筒部1eが、軸筒1と一体に成形されており、この円筒部1eの外周面には、一端部が天面によって封止された前記したキャップ2の他端部側の開口縁が装着される。
なお、この円筒体の前記隔壁1dに近い外周面には、リング状の凸部1fが形成されている。これは前記キャップ2の開口縁内に内向きに形成された図示せぬリング状の凸部が乗り越えることで、軸筒1の前端部に対して、キャップ2がクリック感をもって着脱されるように作用する。
また円筒部1eの内周面には、塗布体4を収容した塗布体収容部5の基端部(後述する円筒状の支持体5a)が装着されて、塗布体収容部5は軸筒1と同一の軸方向に沿って、軸筒1の前端部に配置される。
【0021】
塗布体収容部5の単品構成が、図7に示されている。この塗布体収容部5はその基端部が円筒状に成形されて、塗布体収容部5の支持体5aを構成している。この支持体5aの尾端部外周面には、尾端部に向かって外径が徐々に縮小するテーパー部5bが形成されると共に、テーパー部5bに隣接して、環状凹部5cが周に沿って形成されている。
さらに、支持体5aの周に沿って180度対向する位置には、一対の面そぎ部5dが形成されている。
前記テーパー部5bは、塗布体収容部5の支持体5aを、軸筒1の前端部に形成された円筒部1eに挿入する際のガイドとして機能し、前記環状凹部5cは、軸筒1の円筒部1e内の一部に係止することで、塗布体収容部5の抜け止めとして機能する。また、一対の面そぎ部5dは、軸筒1に対する塗布体収容部5側の軸回りを阻止するように機能する。
【0022】
塗布体収容部5には、図7(G)に示すように軸方向に沿って塗布体4の収容室5eが形成されており、この収容室5eはその上面に沿って形成されたスリット状の開口5fによって、上部が開放されている。
従って、収容室5eに収容された塗布体4は、スリット状の開口5fを介して、塗布体収容部5の長手方向に沿って一定幅をもって露出された状態で配置される。
また、塗布体収容部5の背面側には、軸に直交する方向に円弧状に湾曲した複数の櫛歯体5gが、軸方向に沿ってほぼ等間隔に形成されており、各櫛歯体5gの間から収容室5eに収容された塗布体4の一部が露出されている。
【0023】
前記塗布体4は、可撓性を有し化粧料としてのマスカラ液などの液体化粧液を、含浸した状態で保持することができる素材、好ましくはフェルト材により構成されている。
この塗布体4は、図6に単品構成で示されているように、塗布体収容部5のスリット状開口5fに沿って配置される塗布部4a、円筒状の支持体5a内に収容される中継部4b、軸筒1内の開口1cを介して中綿7に差し込まれるくさび形の接触部4cを備える。
従って、中綿7に保持されたマスカラ液などの液体化粧液は、毛管現象により前記塗布体4の塗布部4aに供給されて、液体化粧液を含浸した状態で保持した状態になされる。
【0024】
図8は、まつ毛押さえ部材3を単品構成で示している。このまつ毛押さえ部材3は、すでに説明したとおり、円筒状の支持体3Aに対して、自由端側が棒状に形成されたまつ毛押さえ部材3を一体に成形することで構成されており、この支持体3Aとまつ毛押さえ部材3は弾性変形が可能な樹脂素材により構成されている。
円筒状の支持体3Aには、軸方向に沿って内径が等しい装着孔3dが施されており、前記した軸筒1の前端部に、支持体3Aの装着孔3dを被せるようにして嵌合させることで、まつ毛押さえ部材3を軸筒1に取り付けることができる。
これにより、まつ毛押さえ部材3の自由端側を、塗布体収容部5に収容された塗布体4の長手方向に沿って対峙した状態で配置することができる。
【0025】
まつ毛押さえ部材3は、支持体3A側から自由端側に向かって、平行部3a、屈曲部3b、塗布体への接触部3cを有する。
平行部3aは、支持体3Aから分岐して軸筒1の軸方向に沿って平行した状態に成形されており、これは図8(C)に示すように支持体3A側から先に向かって、徐々に幅を狭くするように構成されている。
平行部3aに続く屈曲部3bは、図8(D)に示すように大きくS字状に屈曲されて、自由端側を塗布体収容部5側に近づけるように成形されている。
屈曲部3bに続く塗布体への接触部3cは、塗布体収容部5の長手方向に沿って配置され、この接触部3cは棒状体(丸棒)を構成している。
【0026】
従って、まつ毛押さえ部材3を指先で押えて、塗布体収容部5に向かって弾性変形させることで、塗布体収容部5に収容されて塗布体収容部5のスリット状開口5fから露出する塗布体4に対して、丸棒状の接触部3cを塗布体4の露出部分の長手方向に沿って、隙間なく接触させることができる。
この場合、図3及び図7図8に示すように、棒状体による塗布体4への接触部3cの幅寸法W1と、塗布体収容部5のスリット状開口5fから露出された塗布体4の幅寸法W2は、ほぼ同一寸法に構成されている。そして、図5に示すように、塗布体収容部5のスリット状開口5fから露出された部分の塗布体4が、僅かに内側に湾曲し、この塗布体4に対峙する棒状体による塗布体への接触部3cが、僅かに外側に湾曲している。
【0027】
以上のように構成したこの発明に係る化粧用塗布具によると、まつ毛を、塗布体収容部5とまつ毛押さえ部材3との間に位置させて、まつ毛押さえ部材3を指先で押えて弾性変形させることで、まつ毛を、塗布体収容部5のスリット状開口5fに露出する塗布体4と、まつ毛押さえ部材3の塗布体接触部3cとの間で挟むことができる。
この状態で化粧用塗布具をわずかに回動させながら上に引き上げるように操作することで、まつ毛を上向きにカールアップさせることができ、同時にまつ毛に対して塗布体4からの液体化粧液を塗布することができる。
【0028】
また、この発明に係る化粧用塗布具によると、すでに説明したとおり、塗布体収容部5のスリット状開口5fから露出された部分の塗布体4が、僅かに内側に湾曲し、この塗布体4に対峙する棒状体による塗布体への接触部3cが、僅かに外側に湾曲している〔図5参照〕ので、まぶたの直下に沿って下向きに生えるまつ毛の大部分を、僅かに内側に湾曲する塗布体収容部5が受けて、棒状体による塗布体接触部3cとの間で、まつ毛を無理なく挟むことができる。
【0029】
さらに、すでに説明したとおり、まつ毛押さえ部材3の棒状体による塗布体4への接触部3cの幅寸法W1と、塗布体収容部5から露出された塗布体4の幅寸法W2は、ほぼ同一寸法に構成されているので、まつ毛は棒状体(丸棒)による塗布体4への接触部3cの周側面に沿って効果的にカールアップされることになる。
なお、塗布体収容部5の背面側には軸方向に沿って、複数の櫛歯体5gが形成されているので、必要に応じてカールアップされたまつ毛を、櫛歯5gによって梳かして整形し、櫛歯体5g間に配置された塗布体4によって、さらに整形したまつ毛に液体化粧液を塗布することができる。
【0030】
なお、塗布体4に含浸させる液体化粧液は、少なくとも、有機顔料と、リン酸エステル又はその塩と、アクリル酸アルキル共重合体又はその塩、並びに、被膜形成剤を固形分換算で合計1.0~20質量%と、水とを含有するものが好適である。
【0031】
前記有機顔料としては、メイクアップ化粧料などの液体化粧液で用いられている有機顔料であれば、特に限定されるものでない。なお、補色として、無機顔料を適宜量含有してもよいものである。前記有機顔料の含有量は、発色性、保存安定性、使用性などの点から、液体化粧液全量に対して、0.1~20質量%であることが望ましい。この有機顔料の含有量が0.1質量%未満では、有機顔料の特徴である発色が薄くなり、一方、20質量%超過では、製品形態での保存安定性に乏しくなり、好ましくない。
【0032】
前記リン酸エステル又はその塩としては、化粧品原料として用いられているリン酸エステル系界面活性剤であれば、特に限定されるものでなく、HLB値が5~17のリン酸エステル系界面活性剤の使用が望ましい。HLB値が5~17のリン酸エステル系界面活性剤を用いることにより、顔料の使用感、保存安定性などが更に良好となる。なお、「HLB値」は、川上法〔HLB値=7+11.7log(MW/MO)、MW:親水部分の式量の総和、MO:親油部分の式量の総和〕からHLB値を算出した。前記リン酸エステル又はその塩の合計含有量は、保存安定性、使用性などの点から、液体化粧液全量に対して、0.05~1.2質量%とすることが望ましい。このリン酸エステル又はその塩の合計含有量が0.05質量%未満では、保存安定性が悪化することとなり、一方、1.2質量%超過では、後述する皮膜形成樹脂となるアクリル酸アルキル共重合体又はその塩を増やしても耐水性を発現することができず、表面張力の低下により製品形態での液もれなど品質不良を引き起こすことが若干あり、好ましくない。
【0033】
前記アクリル酸アルキル共重合体又はその塩としては、前記アクリル酸アルキル共重合体又はその塩の中に、少なくとも1種類以上の(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)共重合体を含むことが望ましい。これらのアルカリ可溶型アクリル樹脂などのアクリル酸アルキル共重合体又はその塩の含有量は、前記有機顔料の分散安定性、化粧持ちなどの点から、前記の有機顔料対アルカリ可溶型アクリル樹脂などのアクリル酸アルキル共重合体又はその塩の比率は固形分換算で4:1~1:1であり、液体化粧液全量に対して、固形分換算で0.5~10質量%が望ましい。このアルカリ可溶型アクリル樹脂などのアクリル酸アルキル共重合体又はその塩の含有量が0.5質量%未満では、有機顔料の沈降・凝集が起きやすく、発色も不十分、及び、十分な化粧持ちを発揮させるための被膜形成が上手く行われない。一方、10質量%を超えると化粧料の粘度が上昇しやすくなり、使用の際に不具合を来たすこととなる。
【0034】
また、前記アルカリ可溶型アクリル樹脂などのアクリル酸アルキル共重合体又はその塩の分散剤に加えて、被膜形成剤を併用することが好ましい。被膜形成剤としては、前記アルカリ可溶型アクリル樹脂などのアクリル酸アルキル共重合体又はその塩の分散剤以外のものとなる、例えば、アクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらのアルキルエステル又は誘導体、スチレン、酢酸ビニルの中の1種又は2種以上のモノマーから選択されてなる共重合体のエマルジョン樹脂などが挙げられる。これらの被膜形成剤の含有量は、使用性、化粧持ちなどの点から、液体化粧液全量に対して、固形分換算で0.5~15質量%が望ましい。この被膜形成剤の含有量が0.5質量%未満では、十分な化粧持ちを発揮させるための被膜形成が上手く行われない。一方、15質量%を超えると、化粧料の粘度が上昇しやすくなり、使用の際に不具合を来たすこととなる。
【0035】
これらのアクリル酸アルキル共重合体又はその塩、並びに、被膜形成剤の合計含有量は、顔料の分散安定性、化粧持ちなどの点から、液体化粧液全量に対して、合計で、固形分換算で1.0~20質量%が望ましい。このアクリル酸アルキル共重合体又はその塩の合計含有量が1.0%未満であると、発色、使用性及び化粧持ちが不十分、また製品形態で縦置きした際、色相差やカスレが生じ安くなる。一方、20%を超えると、経時安定性に影響するようになり、好ましくない。
【0036】
なお、前記の効果を損なわない範囲で溶剤、増粘剤、上記以外の各種界面活性剤(POEアルキルエーテル)、防腐剤(フェノキシエーテル、パラベン類)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、還元防止剤、キレート剤、油性成分、香料、動植物抽出物などを適宜量含有することができる。また、液体化粧液の残部(残分)は、水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、水道水等)で調整される。
【0037】
前記液体化粧液の溶剤は、特に限定されず、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、フェノキシエタノール等の少なくとも1種が挙げられる。
【0038】
用いることができる増粘剤としては、塗布性、保存安定性、顔料の沈降抑制などの点から、キサンタンガム、アクリル系増粘剤、セルロース系増粘剤、ビニル系増粘剤、ベントナイトなどの粘土鉱物などの少なくとも1種が挙げられる。
【0039】
pHは、アクリル酸アルキル共重合体などのアルカリ可溶樹脂により調整され、溶解性確保、皮膚刺激性を抑える点などから、ガラス電極を用いてpHを測定した際のpHが6~9の範囲であることが好ましい。
【0040】
また、液体化粧液は、使用性、肌とのなじみ、製造上の利便性の点などから、コーンプレート型粘度計を用いて、温度25℃、ずり速度192/sの条件で粘度を測定した際の粘度値が2~65mPa・sが好ましい。
【0041】
更に、使用性、肌とのなじみ、塗布具等における液保持性の点などから、プレート法を用いて、25℃、白金プレートで表面張力を測定した際の表面張力が30mN/m以上であることが望ましい。表面張力が30mN/m未満であると、描線が肌上でのにじみが大きくなり、収納する塗布具等からの垂れ落ちなどが生じやすくなり、好ましくないものとなる。
【0042】
前記の液体化粧液の調製は、上記有機顔料と、リン酸エステル又はその塩と、アクリル酸アルキル共重合体又はその塩、並びに、被膜形成剤を固形分換算で合計1.0~20質量%と、水などの各成分を上記好ましい各含有量の範囲等で配合し均一に撹拌・混合することにより、製造することができ、上記粘度範囲、表面張力となるように調整することが好ましい。
【0043】
このように構成される液体化粧液は、リン酸エステル又はその塩と、アクリル酸アルキル共重合体又はその塩とを所定量含有することで、塗膜の発色性や保存安定性に優れ、かつ耐水性や化粧もちなどの使用性が良好な液体化粧液を得ることができる。
【0044】
以上の説明から明らかなとおり、この発明に係る化粧用塗布具によると、前記した発明の効果の欄に記載のとおり、まつ毛を確実に上向きにカールさせることができると共に、同時にカールアップした状態のまつ毛に対して一定量のマスカラ液などの液体化粧液を塗布することができるので、操作性に優れた化粧料塗布具を提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 軸筒
1a リング状凸部
1b 化粧料収容室
1c 開口
1d 隔壁
1e 円筒部
1f リング状凸部
2 キャップ
3 まつ毛押さえ部材
3A 支持体
3a 平行部
3b 屈曲部
3c 接触部(棒状体)
3d 装着孔
4 塗布体
4a 塗布部
4b 中継部
4c 中綿への接触部
5 塗布体収容部
5a 支持体
5b テーパー部
5c 環状凹部
5d 面そぎ部
5e 塗布体収容室
5f スリット状開口
5g 櫛歯体
6 蓋体
6a 鍔部
6b リング状凸部
6c 大径部
6d 環状突起(封止体)
7 中綿
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8