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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168035
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】コイルデバイス及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20241128BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20241128BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20241128BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H02M3/155 Y
H01F27/00 R
H01F37/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084419
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 椋太
【テーマコード(参考)】
5E070
5H730
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070CB13
5E070DA18
5H730AS04
5H730BB14
5H730ZZ11
5H730ZZ12
5H730ZZ17
(57)【要約】
【課題】内層に配置されたコイルパターンの温度上昇を抑制可能なコイルデバイス及び電力変換装置の提供。
【解決手段】コアと、前記コアを周回する第一コイルパターンが配置された表層と、前記コアを周回し前記第一コイルパターンに電気的に直列に接続された第二コイルパターンが配置された内層とを有する多層配線基板と、を備え、前記第二コイルパターンは、同一のパターン長で比較すると、前記第一コイルパターンよりも低い電気抵抗を有する、コイルデバイス。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、
前記コアを周回する第一コイルパターンが配置された表層と、前記コアを周回し前記第一コイルパターンに電気的に直列に接続された第二コイルパターンが配置された内層とを有する多層配線基板と、を備え、
前記第二コイルパターンは、同一のパターン長で比較すると、前記第一コイルパターンよりも低い電気抵抗を有する、コイルデバイス。
【請求項2】
前記第二コイルパターンは、前記第一コイルパターンよりも厚いパターン厚を有する、請求項1に記載のコイルデバイス。
【請求項3】
前記第二コイルパターンは、前記第一コイルパターンよりも広いパターン幅を有する、請求項1に記載のコイルデバイス。
【請求項4】
前記第二コイルパターンは、前記第一コイルパターンよりも短いパターン長を有する、請求項1に記載のコイルデバイス。
【請求項5】
前記第二コイルパターンは、前記第一コイルパターンよりも少ないターン数を有する、請求項4に記載のコイルデバイス。
【請求項6】
前記多層配線基板は、前記表層と前記内層とを接続し、かつ、前記第一コイルパターンに導電的に接続されないビアを有し、
前記第二コイルパターンは、前記ビアに熱的に接続された、請求項1に記載のコイルデバイス。
【請求項7】
前記ビアは、前記第二コイルパターンに導電的に接続された、請求項6に記載のコイルデバイス。
【請求項8】
前記ビアは、前記多層配線基板を貫通するスルーホールビアであり、
前記内層は、第一内層と第二内層を含み、
前記第二コイルパターンは、前記第一内層に配置された第一内層パターンと、前記第二内層に配置された第二内層パターンとを含み、
前記第一内層パターンは、前記スルーホールビアに導電的に接続されず、前記第二内層パターンは、前記スルーホールビアに導電的に接続されず又は導電的に接続された、請求項6に記載のコイルデバイス。
【請求項9】
前記ビアは、前記多層配線基板の平面視で、前記第一コイルパターンと前記第二コイルパターンとの間の隙間に配置された、請求項6に記載のコイルデバイス。
【請求項10】
前記表層は、第一表層と、前記第一表層とは反対側の第二表層とを含み、
前記内層は、第一内層と第二内層を含み、
前記第一コイルパターンは、前記第一表層に配置された第一表層パターンと、前記第二表層に配置された第二表層パターンとを含み、
前記第二コイルパターンは、前記第一内層に配置された第一内層パターンと、前記第二内層に配置された第二内層パターンとを含み、
前記第一表層パターンは、同一のパターン長で比較すると、前記第一内層パターンよりも低い電気抵抗を有し、または、前記第二表層パターンは、同一のパターン長で比較すると、前記第二内層パターンよりも低い電気抵抗を有する、請求項1に記載のコイルデバイス。
【請求項11】
前記第一内層パターンは、前記第一表層パターンに電気的に直列に接続され、前記第二表層パターン及び前記第二内層パターンに導電的に接続されず、
前記第二内層パターンは、前記第二表層パターンに電気的に直列に接続され、前記第一表層パターン及び前記第一内層パターンに導電的に接続されない、請求項10に記載のコイルデバイス。
【請求項12】
前記第一表層パターン及び前記第一内層パターンは、一次側巻線を構成し、
前記第二表層パターン及び前記第二内層パターンは、二次側巻線を構成する、請求項11に記載のコイルデバイス。
【請求項13】
前記第二コイルパターンは、前記多層配線基板の平面視で、前記第一コイルパターンと重ならずに沿って延伸する部分を有する、請求項1に記載のコイルデバイス。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のコイルデバイスと、前記コイルデバイスに流れる電流を制御するスイッチング素子と、を備える、電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイルデバイス及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層された複数の絶縁層と、各層間に配置されるコイルパターンとを備える積層インダクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-130117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイルパターンは、電流が流れることで発熱する。しかし、内層に配置されたコイルパターンは、その発熱がコイルパターン内部にこもりやすく、温度上昇しやすい。
【0005】
本開示は、内層に配置されたコイルパターンの温度上昇を抑制可能なコイルデバイス及び電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様では、
コアと、
前記コアを周回する第一コイルパターンが配置された表層と、前記コアを周回し前記第一コイルパターンに電気的に直列に接続された第二コイルパターンが配置された内層とを有する多層配線基板と、を備え、
前記第二コイルパターンは、同一のパターン長で比較すると、前記第一コイルパターンよりも低い電気抵抗を有する、コイルデバイスが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、内層に配置されたコイルパターンの温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の電力変換装置の一例を示す回路図である。
図2】一実施形態の電力変換装置に使用されるコイルデバイスの一例を示す俯瞰図である。
図3】第1実施形態のコイルデバイスに使用される多層配線基板の第一層と第二層の上面図(平面図)である。
図4】第1実施形態のコイルデバイスに使用される多層配線基板の第三層と第四層の上面図(平面図)である。
図5】多層配線基板の第1断面構成例を示す断面図である。
図6】多層配線基板の第2断面構成例を示す断面図である。
図7】多層配線基板の第3断面構成例を示す断面図である。
図8】多層配線基板の第4断面構成例を示す断面図である。
図9】第2実施形態のコイルデバイスに使用される多層配線基板の第一層と第二層の上面図(平面図)である。
図10】第2実施形態のコイルデバイスに使用される多層配線基板の第三層と第四層の上面図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、一実施形態の電力変換装置の一例を示す回路図である。図1に例示する電力変換装置1は、インダクタ2、半導体スイッチ素子3、ダイオード4及びコンデンサ5を備える昇圧チョッパ回路である。
【0011】
半導体スイッチ素子3は、不図示の制御回路からの制御信号に従ってオンとオフを繰り返すことで、インダクタ2に流れる電流を制御する。半導体スイッチ素子3の具体例として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、BJT(Bipolar Junction Transistor)などの半導体スイッチング素子が挙げられる。図1は、半導体スイッチ素子3がMOSFETの場合を例示する。
【0012】
電力変換装置1の各電流経路には、配線インダクタンス20が発生し得る。インダクタ2には、寄生容量2aが発生し得る。
【0013】
電力変換装置1は、直流電圧源7から供給される電力を昇圧して負荷6に供給する。回路動作は、以下の通りである。
【0014】
半導体スイッチ素子3をオンすると、インダクタ2の両端には、直流電圧源7の電圧Vinにほぼ等しい電圧が印加され、直流電圧源7→インダクタ2→半導体スイッチ素子3→直流電圧源7の経路で電流が流れる。このインダクタ2に流れる電流ILは、次第に増加する。
【0015】
次に、半導体スイッチ素子3をオフすると、直流電圧源7→インダクタ2→ダイオード4→コンデンサ5→直流電圧源7の経路で電流が流れ、インダクタ2の両端には、コンデンサ5の電圧Eと直流電圧源7の電圧Vinとの差分が印加される。後述の原理により、通常動作時は、Vin<Eの状態にあるので、電流ILは減少する。半導体スイッチ素子3のオン・オフの時比率を制御することにより、電流ILを任意の値にできる。負荷6の消費する電力よりも入力電力を大きくすれば、差電力はコンデンサ5に蓄積され、電圧Eは上昇する。負荷6の消費する電力よりも入力電力を小さくすれば、差電力はコンデンサ5の放電により供給されるので、電圧Eは低下する。この方法により、電圧Eを電圧Vinより高い任意の値とできる。
【0016】
一方、半導体スイッチ素子3をスイッチングさせずにオフを継続しても、直流電圧源7→インダクタ2→ダイオード4→コンデンサ5→直流電圧源7の電流経路は存在するので、電圧Eは電圧Vinを定常的に下回らない。
【0017】
電力変換装置1において、インダクタ2の寄生容量2aは、図1に示すようにインダクタ2と並列接続されるキャパシタンスとして表される。半導体スイッチ素子3のオン・オフ切り替え時に、寄生容量2aに印加される電圧は変化するので、寄生容量2aにおいて電荷は充放電される。充放電された電荷は、オン状態の半導体スイッチ素子3を経由するため、半導体スイッチ素子3の損失が増大する。また、寄生容量2aは配線インダクタンス20と共振回路を形成しているため、印加電圧の急峻な変化に伴い共振現象が発生し、電磁ノイズが増加する要因となる。
【0018】
図2は、一実施形態の電力変換装置に使用されるコイルデバイスの一例を示す俯瞰図である。コイルデバイス8は、電力変換装置1のうち、インダクタ2に適用される。なお、本開示の技術は、他の回路構成を持つ電力変換装置におけるインダクタやトランスにも適用できる。
【0019】
コイルデバイス8は、磁性体により形成された磁性コア10と、磁性コア10を周回するプレーナコイルが形成された多層配線基板9と、を備える。
【0020】
磁性コア10は、多層配線基板9に形成された一又は複数の孔13(図2の場合、孔13a,13b,13c)を貫通し、閉ループを形成する。磁性コア10は、中脚10aと、第1外脚10bと、第2外脚10cとを有する。中脚10aは、第1外脚10bと第2外脚10cとの間に位置し、孔13aを貫通する。第1外脚10bは、中脚10aに対して一方の側方に位置し、孔13bを貫通する。第2外脚10cは、中脚10aに対して他方の側方に位置し、孔13cを貫通する。図示の磁性コア10は、EEコア又はEIコアである。しかし、コアの種類は、これらに限られず、例えば、EERコア、PQコア、UUコア、UIコアなどでもよい。
【0021】
多層配線基板9は、複数枚の基板が積み重なる積層体である。各基板は、セラミックなどの絶縁体により形成されている。
【0022】
図3図4及び図5は、多層配線基板9を示す図であり、四層基板の場合を例示する。図3は、第1実施形態のコイルデバイスに使用される多層配線基板9の第一層と第二層の上面図(平面図)であり、説明の便宜上、第二層を透過的に示している。図4は、第1実施形態のコイルデバイスに使用される多層配線基板9の第三層と第四層の上面図(平面図)であり、説明の便宜上、第三層及び第四層を透過的に示している。図5は、多層配線基板の第1断面構成例を示す断面図であり、図3及び図4におけるA-A'断面図である。
【0023】
多層配線基板9は、磁性コア10を貫通させるための孔13(13a,13b,13c)と、孔13aの周囲に形成されるコイルパターン11(11a,11b,11c,11d)と、多層配線基板9の厚さ方向に延伸するビア12(12a,12b,12c,12d)とを備える。
【0024】
図5において、多層配線基板9は、コイルパターン11aが配置された第一層31と、コイルパターン11bが配置された第二層32と、コイルパターン11cが配置された第三層33と、コイルパターン11dが配置された第四層34とを有する。第一層31は、多層配線基板の第一表層の一例である。第二層32は、多層配線基板の第一内層の一例である。第三層33は、多層配線基板の第二内層の一例である。第四層34は、多層配線基板の第二表層の一例である。第四層34は、第一層31とは反対側に面する外層である。
【0025】
図3において、コイルパターン11aは、第一表層パターンの一例であり、磁性コア10の中脚10aが挿入される孔13aを1ターン以上で周回する。コイルパターン11aは、多層配線基板9の平面視において、端子41に接続される一端からビア12aに接続される他端まで時計回りに外側から内側に延伸する渦巻き状の導体パターンである。端子41は、インダクタ2の一端2c(図1)に相当する。ビア12aは、第一層31と第二層32とを少なくとも導電的に接続するビアである。
【0026】
図3において、コイルパターン11bは、第一内層パターンの一例であり、磁性コア10の中脚10aが挿入される孔13aを1ターン以上で周回する。コイルパターン11bは、多層配線基板9の平面視において、ビア12aに接続される一端からビア12bに接続される他端まで時計回りに内側から外側に延伸する渦巻き状の導体パターンである。ビア12bは、第二層32と第三層33とを少なくとも導電的に接続するビアである。コイルパターン11bは、コイルパターン11aに電気的に直列に接続されている。
【0027】
図4において、コイルパターン11cは、第二内層パターンの一例であり、磁性コア10の中脚10aが挿入される孔13aを1ターン以上で周回する。コイルパターン11cは、多層配線基板9の平面視において、ビア12bに接続される一端からビア12dに接続される他端まで時計回りに外側から内側に延伸する渦巻き状の導体パターンである。ビア12dは、第三層33と第四層34とを少なくとも導電的に接続するビアである。コイルパターン11cは、コイルパターン11bに電気的に直列に接続されている。
【0028】
図4において、コイルパターン11dは、第二表層パターンの一例であり、磁性コア10の中脚10aが挿入される孔13aを1ターン以上で周回する。コイルパターン11dは、多層配線基板9の平面視において、ビア12dに接続される一端から端子42に接続される他端まで時計回りに内側から外側に延伸する渦巻き状の導体パターンである。端子42は、インダクタ2の他端2b(図1)に相当する。コイルパターン11dは、コイルパターン11cに電気的に直列に接続されている。
【0029】
図3において、最上層である第一層31に形成されたコイルパターン11aと、第一層31と隣り合う第二層32に形成されたコイルパターン11bとは、互いに交差する箇所を除いて、上面視で重なり合わないように配置される。コイルパターン11bは、多層配線基板9の平面視で、コイルパターン11aと重ならずに沿って延伸する部分を有する。同様に、図4において、最下層である第四層34に形成されたコイルパターン11dと、第四層34と隣り合う第三層33に形成されたコイルパターン11cとは、互いに交差する箇所を除いて、上面視で重なり合わないように配置される。コイルパターン11cは、多層配線基板9の平面視で、コイルパターン11dと重ならずに沿って延伸する部分を有する。
【0030】
多層配線基板9に配置された隣り合う層のコイルパターン間には、寄生容量2a(図1)に相当する寄生容量Cが発生する。
【0031】
寄生容量Cは、
C=ε×(S/d ・・・式(1)
と表される。ここで、εはコイルパターン間の誘電率(絶縁材により変わる)、Sはコイルパターンが平面視で重なり合う面積、dはコイルパターン間の距離を表す。
【0032】
したがって、隣り合う層のコイルパターン間の重なり合う面積Sができるだけ小さくなるように、隣り合う層のコイルパターンを対向配置することで、寄生容量Cを低減できる。これにより、寄生容量Cにおける電荷の充放電に伴う電力損失と、共振現象による電磁ノイズを抑制できる。
【0033】
図3において、多層配線基板9は、第一層31と第二層32とを接続し、かつ、コイルパターン11aに導電的に接続されない複数のビア12cを有する。ビア12cは、多層配線基板9の平面視で、第一層31のコイルパターン11aと第二層32のコイルパターン11bとの間の隙間51に配置されている。ビア12cは、第二層のコイルパターン11bと多層配線基板9の第一層31の表面とを接続する。ビア12cは、コイルパターン11bに熱的に接続され、図5の場合、コイルパターン11bに導電的に接続されている。ビア12cにより、内層部のコイルパターン11bの発熱が多層配線基板9の表面に伝熱しやすくなり、内層部のコイルパターン11bの温度上昇を抑制できる。
【0034】
図4において、多層配線基板9は、第三層33と第四層34とを接続し、かつ、コイルパターン11dに導電的に接続されない複数のビア12eを有する。ビア12eは、第三層33のコイルパターン11cと第四層34のコイルパターン11dとの間の隙間52に配置されている。ビア12eは、第三層33のコイルパターン11cと多層配線基板9の第四層34の表面とを接続する。ビア12eは、コイルパターン11cに熱的に接続され、図5の場合、コイルパターン11cに導電的に接続されている。ビア12eにより、内層部のコイルパターン11cの発熱が多層配線基板9の表面に伝熱しやすくなり、内層部のコイルパターン11cの温度上昇を抑制できる。
【0035】
図6は、多層配線基板の第2断面構成例を示す断面図であり、図3及び図4におけるA-A'の断面図である。多層配線基板9は、図6に示す断面を有してもよい。内層部のコイルパターン11b,11cの箔厚が、表層のコイルパターン11a,11dの箔厚よりも厚い点が、図5の断面構成と異なる。
【0036】
コイルパターンの電気抵抗Rと発熱量Pは、
R=ρ×(l/(d×w)) ・・・式(2)
P=R×I ・・・式(3)
と表される。ここで、ρは電気抵抗率(パターンの材質により変わる)、lはコイルパターンの長さ、dはパターン箔厚、wはパターン幅、Iはパターンに流れる電流である。
【0037】
式(2)及び式(3)によれば、内層部のコイルパターン11bは、表層のコイルパターン11aよりも厚いパターン厚を有することで、同じパターン厚の場合に比べて、電気抵抗R及び発熱量Pを低減できる。これにより、表層と比較して放熱性能が低い内層部のコイルパターン11bの温度上昇を抑制できる。同様に、内層部のコイルパターン11cは、表層のコイルパターン11dよりも厚いパターン厚を有することで、同じパターン厚の場合に比べて、電気抵抗R及び発熱量Pを低減できる。これにより、表層と比較して放熱性能が低い内層部のコイルパターン11cの温度上昇を抑制できる。
【0038】
図7は、多層配線基板の第3断面構成例を示す断面図であり、図3及び図4におけるA-A'の断面図である。多層配線基板9は、図7に示す断面を有してもよい。内層部のコイルパターン11b,11cのパターン幅が、表層のコイルパターン11a,11dのパターン幅よりも広い点が、図5の断面構成と異なる。
【0039】
式(2)及び式(3)によれば、内層部のコイルパターン11bは、表層のコイルパターン11aよりも広いパターン幅を有することで、同じパターン幅の場合に比べて、電気抵抗R及び発熱量Pを低減できる。これにより、表層と比較して放熱性能が低い内層部のコイルパターン11bの温度上昇を抑制できる。同様に、内層部のコイルパターン11cは、表層のコイルパターン11dよりも広いパターン幅を有することで、同じパターン幅の場合に比べて、電気抵抗R及び発熱量Pを低減できる。これにより、表層と比較して放熱性能が低い内層部のコイルパターン11cの温度上昇を抑制できる。
【0040】
なお、内層部のコイルパターンは、表層のコイルパターンに比べて、厚いパターン厚を有し且つ広いパターン幅を有することで、内層部のコイルパターンの温度上昇を抑制する効果が高まる。
【0041】
このように、図6又は図7に示す断面構成を有することで、内層に配置された第二コイルパターンは、同一のパターン長(換言すれば、同一の単位長さ)で比較すると、表層に配置された第一コイルパターンよりも低い電気抵抗を有する。したがって、内層に配置された第二コイルパターンの温度上昇を抑制できる。
【0042】
なお、図3において、内層に配置されたコイルパターン11bは、表層に配置されたコイルパターン11aよりも短いパターン長を有する。図3の場合、コイルパターン11bのターン数は、約2ターンであり、コイルパターン11aのターン数は、約3ターンである。よって、式(2)及び式(3)によれば、図6又は図7に示す断面構成を有する図3において、内層部のコイルパターン11bは、表層のコイルパターン11aよりも短いパターン長を有することで、同じパターン長の場合に比べて、電気抵抗R及び発熱量Pを低減できる。
【0043】
図8は、多層配線基板の第3断面構成例を示す断面図であり、図3及び図4におけるA-A'の断面図である。多層配線基板9は、図8に示す断面を有してもよい。なお、図8では明示されていないが、内層部のコイルパターンは、表層のコイルパターンに比べて、厚いパターン厚を有し、又は、広いパターン幅を有してもよい。
【0044】
多層配線基板9の表層と内層とを接続し、かつ、表層のコイルパターンに導電的に接続されないビアは、多層配線基板9を貫通するスルーホールビア12fでもよい。スルーホールビア12fは、第一層31、第二層32、第三層33及び第四層34を貫通するサーマルビアである。図8に示す形態では、内層部のコイルパターン11b,11cは、スルーホールビア12fと絶縁ギャップを介して熱的に接続される(導電的には接続されていない)。これにより、全層を貫通するスルーホールビア12fにより、内層部のコイルパターン11b,11cの放熱性能を維持する。
【0045】
なお、内層部のコイルパターン11b,11cのうち、一方は、スルーホールビア12fに導電的に接続されないが、他方は、スルーホールビア12fに導電的に接続されてもよい。
【0046】
図9は、第2実施形態のコイルデバイスに使用される多層配線基板の第一層と第二層の上面図(平面図)であり、説明の便宜上、第二層を透過的に示している。図10は、第2実施形態のコイルデバイスに使用される多層配線基板の第三層と第四層の上面図(平面図)であり、説明の便宜上、第三層及び第四層を透過的に示している。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
【0047】
上記の第1実施形態は、コイルデバイスがインダクタ2に適用可能な構造である。これに対し、第2実施形態は、コイルデバイスがトランスに適用可能な構造である。
【0048】
図9において、コイルパターン11aは、第一表層パターンの一例であり、磁性コア10の中脚10aが挿入される孔13aを1ターン以上で周回する。コイルパターン11aは、多層配線基板9の平面視において、端子43に接続される一端からビア12aに接続される他端まで時計回りに外側から内側に延伸する渦巻き状の導体パターンである。端子43は、トランスの一次側巻線の一端に相当する。ビア12aは、第一層31と第二層32とを少なくとも導電的に接続するビアである。
【0049】
図9において、コイルパターン11bは、第一内層パターンの一例であり、磁性コア10の中脚10aが挿入される孔13aを1ターン以上で周回する。コイルパターン11bは、多層配線基板9の平面視において、ビア12aに接続される一端から端子44に接続される他端まで時計回りに内側から外側に延伸する渦巻き状の導体パターンである。端子44は、トランスの一次側巻線の他端に相当する。コイルパターン11bは、コイルパターン11aに電気的に直列に接続されるが、コイルパターン11c及びコイルパターン11dに導電的に接続されない。コイルパターン11a及びコイルパターン11bは、トランスの一次側巻線を構成する。
【0050】
図10において、コイルパターン11cは、第二内層パターンの一例であり、磁性コア10の中脚10aが挿入される孔13aを1ターン以上で周回する。コイルパターン11cは、多層配線基板9の平面視において、端子45に接続される一端からビア12dに接続される他端まで反時計回りに外側から内側に延伸する渦巻き状の導体パターンである。端子45は、トランスの二次側巻線の一端に相当する。ビア12dは、第三層33と第四層34とを少なくとも導電的に接続するビアである。コイルパターン11cは、コイルパターン11a及びコイルパターン11bに導電的に接続されない。
【0051】
図10において、コイルパターン11dは、第二表層パターンの一例であり、磁性コア10の中脚10aが挿入される孔13aを1ターン以上で周回する。コイルパターン11dは、多層配線基板9の平面視において、ビア12dに接続される一端から端子46に接続される他端まで反時計回りに内側から外側に延伸する渦巻き状の導体パターンである。端子46は、トランスの二次側巻線の他端に相当する。コイルパターン11dは、コイルパターン11cに電気的に直列に接続されているが、コイルパターン11a及びコイルパターン11bに導電的に接続されない。コイルパターン11c及びコイルパターン11dは、トランスの二次側巻線を構成する。
【0052】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、内層に配置された第二コイルパターンは、同一のパターン長(換言すれば、同一の単位長さ)で比較すると、表層に配置された第一コイルパターンよりも低い電気抵抗を有する。これにより、内層に配置された第二コイルパターンの温度上昇を抑制できる。
【0053】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0054】
例えば、コイルデバイスは、コモンモードフィルタなどのフィルタに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 電力変換装置
2 インダクタ
2a 寄生容量
3 半導体スイッチ素子
4 ダイオード
5 コンデンサ
6 負荷
7 直流電圧源
8 コイルデバイス
9 多層配線基板
10 磁性コア
11a,11b,11c,11d コイルパターン
12 ビア
13 孔
14 絶縁ギャップ
20 配線インダクタンス
31 第一層
32 第二層
33 第三層
34 第四層
41,42 端子
51,52 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10