(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168036
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】衝撃緩和装置及び車両
(51)【国際特許分類】
B60R 21/08 20060101AFI20241128BHJP
B60R 21/11 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B60R21/08 C
B60R21/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084421
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中安 雅之
(57)【要約】
【課題】ユーザーを保護するための新規な技術を提供する。
【解決手段】衝撃緩和装置は、折り畳まれた折畳状態から展開された展開状態へ移行し得る衝撃吸収体と、衝撃吸収体の一端側に設けられる第1磁性体と、衝撃吸収体の他端側であって、折畳状態において第1磁性体と対向する位置に設けられる第2磁性体と、第1磁性体及び第2磁性体のうち一方の磁性体と接続され、当該一方の磁性体と他方の磁性体との間に斥力を生じさせるように前記一方の磁性体を制御する制御部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた折畳状態から展開された展開状態へ移行し得る衝撃吸収体と、
前記衝撃吸収体の一端側に設けられる第1磁性体と、
前記衝撃吸収体の他端側であって、前記折畳状態において前記第1磁性体と対向する位置に設けられる第2磁性体と、
前記第1磁性体及び前記第2磁性体のうち一方の磁性体と接続され、当該一方の磁性体と他方の磁性体との間に斥力を生じさせるように前記一方の磁性体を制御する制御部と、
を備える衝撃緩和装置。
【請求項2】
前記衝撃吸収体は蛇腹状の構造、又は筒体を側方に並置した構造を有する
請求項1に記載の衝撃緩和装置。
【請求項3】
前記衝撃吸収体は直線的に展開する
請求項2に記載の衝撃緩和装置。
【請求項4】
前記衝撃吸収体は扇状に展開する
請求項2に記載の衝撃緩和装置。
【請求項5】
前記制御部と接続され、衝撃を感知又は予測した結果を示す信号、又は前記制御部が衝撃を感知若しくは予測するための信号を、前記制御部へ出力するセンサーを備える
請求項1に記載の衝撃緩和装置。
【請求項6】
前記一方の磁性体は鉄芯を有する電磁石であり、
前記他方の磁性体は永久磁石である
請求項1に記載の衝撃緩和装置。
【請求項7】
前記折畳状態において前記永久磁石は前記鉄芯と吸着する
請求項6に記載の衝撃緩和装置。
【請求項8】
前記折畳状態において、前記制御部は、前記電磁石と前記永久磁石とが吸着するように前記電磁石の極性を制御する
請求項6に記載の衝撃緩和装置。
【請求項9】
前記衝撃緩和装置は、車両の天井部と側壁部との境界近傍に搭載され、前記展開状態において、前記車両の乗員と前記側壁部との間に展開される
請求項1から8の何れか一項に記載の衝撃緩和装置。
【請求項10】
請求項9に記載の衝撃緩和装置を、前記天井部と前記側壁部との境界近傍に搭載する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃緩和装置及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の側突用エアバッグ装置が提案されていた(例えば特許文献1)。本装置は、隔壁の後端がインフレータの上下寸法範囲内に位置し、その隔壁の後端とインフレータとを離間させることにより連通部を形成しているため、エアバッグの後端部はインフレータにより立体的に保形され、連通部は最初からある程度開いた状態が確保されるので、ガスが連通部から胸部保護室へ供給され易く、エアバッグ全体の展開速度が向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の技術は、ユーザーを保護するための新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の態様により上記課題を解決する。すなわち、本開示に係る技術の要旨は以下の通りである。
(態様1)
折り畳まれた折畳状態から展開された展開状態へ移行し得る衝撃吸収体と、
前記衝撃吸収体の一端側に設けられる第1磁性体と、
前記衝撃吸収体の他端側であって、前記折畳状態において前記第1磁性体と対向する位置に設けられる第2磁性体と、
前記第1磁性体及び前記第2磁性体のうち一方の磁性体と接続され、当該一方の磁性体と他方の磁性体との間に斥力を生じさせるように前記一方の磁性体を制御する制御部と、
を備える衝撃緩和装置。
(態様2)
前記衝撃吸収体は蛇腹状の構造、又は筒体を側方に並置した構造を有する
態様1に記載の衝撃緩和装置。
(態様3)
前記衝撃吸収体は直線的に展開する
態様2に記載の衝撃緩和装置。
(態様4)
前記衝撃吸収体は扇状に展開する
態様2に記載の衝撃緩和装置。
(態様5)
前記制御部と接続され、衝撃を感知又は予測した結果を示す信号、又は前記制御部が衝撃を感知若しくは予測するための信号を、前記制御部へ出力するセンサーを備える
態様1から4の何れか一つに記載の衝撃緩和装置。
(態様6)
前記一方の磁性体は鉄芯を有する電磁石であり、
前記他方の磁性体は永久磁石である
態様1から5の何れか一つに記載の衝撃緩和装置。
(態様7)
前記折畳状態において前記永久磁石は前記鉄芯と吸着する
態様6に記載の衝撃緩和装置。
(態様8)
前記折畳状態において、前記制御部は、前記電磁石と前記永久磁石とが吸着するように前記電磁石の極性を制御する
態様6に記載の衝撃緩和装置。
(態様9)
前記衝撃緩和装置は、車両の天井部と側壁部との境界近傍に搭載され、前記展開状態において、前記車両の乗員と前記側壁部との間に展開される
態様1から8の何れか一つに記載の衝撃緩和装置。
(態様10)
態様9に記載の衝撃緩和装置を、前記天井部と前記側壁部との境界近傍に搭載する車両。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ユーザーを保護するための新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、車両に設置された衝撃緩和装置を説明するための図である。
【
図2】
図2は、衝撃緩和装置の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、衝撃緩和装置の動作の一例を説明するための模式的な図である。
【
図4】
図4は、衝撃緩和装置の変形例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る衝撃緩和装置の動作を説明するための模式的な図である。
【
図6】
図6は、衝撃緩和装置の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係る保護装置及びその作動方法を説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0009】
本実施形態に係る衝撃緩和装置は、折り畳まれた折畳状態から展開された展開状態へ移行し得る衝撃吸収体と、衝撃吸収体の一端側に設けられる第1磁性体と、衝撃吸収体の他端側であって、折畳状態において第1磁性体と対向する位置に設けられる第2磁性体と、第1磁性体及び第2磁性体のうち一方の磁性体と接続され、当該一方の磁性体の極性を、他方の磁性体との間に斥力を生じさせるように変化させる制御部(制御装置)とを備える。
【0010】
衝撃緩和装置は、折り畳まれた衝撃吸収体を展開させることで、ユーザーを保護することができる。また、磁性体の反発により衝撃吸収体を展開させることができる、新規な衝撃緩和装置を実現できる。
【0011】
<実施形態>
図1は、車両に設置された衝撃緩和装置を説明するための図である。衝撃緩和装置1は、例えば車両2の側壁部と天井部との境界付近に搭載され、車両2の衝突時には側壁部と乗員との間に展開する。また、衝撃緩和装置1は衝撃吸収体を有し、車両2の衝突時に乗員の頭部が車両の構造部や構造部に付属した部品等に当接したときの衝撃を緩和する。衝
撃緩和装置1は、例えば、側面扉21(21A、21B)の一部であってウィンドウ22(22A、22B)の上方に搭載されていてもよいし、ルーフ23の一部であって側面扉21の近傍に搭載されていてもよい。また、車両2は、衝撃緩和装置1のほかに、制御装置3、センサー4及び電源5を備える。制御装置3は、ECU(Electronic Control Unit)等のコンピュータである。制御装置3は、例えば車両2に搭載されたバッテリーであ
る電源5と接続される。すなわち、制御装置3は、イグニッション電源、アクセサリ電源又は常時電源から給電される。また、制御装置3は、センサー4から受信する信号に基づいて車両2に対する衝突を検知又は予測し、衝撃緩和装置1を動作させる。センサー4は、例えば加速度センサーや、レーダー、LiDAR(Light Detection and Ranging)、
カメラ等である。センサー4も電源5から給電され、計測した情報を電気信号に変換して出力したり、撮像した画像データを出力したりする。
【0012】
図2は、衝撃緩和装置1の一例を示す斜視図である。
図2の(A)は、衝撃吸収体11が折り畳まれた折畳状態(第1状態とも呼ぶ)を示す。
図2の(B)は、衝撃吸収体11が展開された展開状態(第2状態とも呼ぶ)を示す。衝撃緩和装置1は、衝撃吸収体11(11A、11B、11C)と、第1端12と、第2端13と、第1磁性体14(14A、14B)と、第2磁性体15(15A、15B)と、制限部16(16A、16B、16C)とを備える。また、衝撃吸収体11は、ひも状の制限部16を挿通させるための複数の貫通孔17(17A、17B、17C)を有する。衝撃緩和装置1は、衝撃吸収体11が折り畳まれた折畳状態から、第1端12と第2端13とが離隔し衝撃吸収体11が展開方向へ引き伸ばされた展開状態へ移行する。
【0013】
衝撃吸収体11は、衝撃を吸収する材料や構造から成っている。例えば、衝撃吸収体11は、シリコーン樹脂、天然ゴム、及び軟質プラスチックなどの弾性を有した材料で形成されたものであってもよい。また、衝撃吸収体11は、発泡スチロールや発泡ポリウレタンなどの発泡材料や、樹脂製のスポンジ、シート内に気体を封止した気泡緩衝材、シート内にジェルを封止したジェルシートなど、構造的に衝撃を吸収するように形成されたものであってもよい。また、衝撃吸収体11は、
図1に示すように折り畳まれた折畳状態と、
図2に示すように展開された展開状態へ移行し得る。衝撃吸収体11は、例えば、シート状の部材を蛇腹状に折り畳んだ構造であってもよい。そして、衝撃吸収体11は、例えば車両2の衝突時に乗員と車両2との間に展開され、乗員及び車両2と接触して弾性変形又は塑性変形し、衝撃を吸収する。
図2の(B)の例では、第1端12と第2端13とが略平行のまま衝撃吸収体11が直線的に展開している。
【0014】
折畳状態においては、例えば
図2の(A)に示すように衝撃吸収体11は蛇腹状に折り畳まれている。すなわち、シート状の衝撃吸収体11が山折り及び谷折りの繰り返し構造を有する。衝撃吸収体11は、山折り及び谷折りの折り目によって区画される領域が連続する連続方向の一端側が、第1端12と接続されている。そして、連続方向の他端側は、第2端13と接続されている。また、第1端12には第1磁性体14が接続され、第2端13には第2磁性体15が接続されている。なお、
図2の例では衝撃緩和装置1は、3つの衝撃吸収体11A、11B及び11Cを含む。そして、衝撃吸収体11Aと衝撃吸収体11Bとの間に第1磁性体14A及び第2磁性体15Aが配置され、衝撃吸収体11Bと衝撃吸収体11Cとの間に第1磁性体14B及び第2磁性体15Bが配置されている。ただし、衝撃吸収体11、第1磁性体14及び第2磁性体15の数は
図2の例には限定されない。例えば、衝撃吸収体11は、折畳状態において貫通孔を形成するように、折り目によって区画される領域の各々に打ち抜かれた窓部を設け、貫通孔に対応する位置に第1磁性体14及び第2磁性体15が配置されるようにしてもよい。
【0015】
第1端12、第2端13は、それぞれ衝撃吸収体11の一端側の端部、他端側の端部を補強する。また、第1端12は、第1磁性体14を衝撃吸収体11の一端側に保持する。
なお、第1端12を設けずに、第1磁性体14は、衝撃吸収体11の一端側に直接接続されていてもよい。また、第2端13は、第2磁性体15を衝撃吸収体11の他端側に保持する。なお、第2端13を設けずに、第2磁性体15は、衝撃吸収体11の他端側に直接的に接続されていてもよい。また、第1端12及び第2端13の材質は特に限定されない。
【0016】
第1磁性体14は、第1端12を介して衝撃吸収体11の一端側の端部に設けられる。第2磁性体15は、第2端13を介して衝撃吸収体11の他端側の端部に設けられる。第1磁性体14及び第2磁性体15のうち、例えば、一方の磁性体は電磁石であり、他方の磁性体は永久磁石である。電磁石は、例えば鉄芯等の磁性材料の周囲にコイルを巻いて形成される。また、
図1に示した制御装置3と接続され、コイルへの通電時に磁力を発生させる。永久磁石は、例えば、ネオジム磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等であってもよい。
【0017】
図3は、衝撃緩和装置1の動作の一例を説明するための模式的な図である。
図3の(A)は、折畳状態の衝撃緩和装置1を示す。
図3の(B)は、展開状態の衝撃緩和装置1を示す。
図3の例では、第1磁性体14は電磁石であり、第2磁性体15は永久磁石である。第1磁性体14は、折畳状態においては例えば制御装置3から給電されず、第1磁性体14の芯材に第2磁性体15が吸着している。また、制御装置3は、センサー4からの信号に応じて第1磁性体14に給電し、第1磁性体14及び第2磁性体15の対向する極性同士が同一の極性になるように第1磁性体14を磁化させる。
図3の(B)の例では、対向する極性がN極になっている。なお、第1磁性体14及び第2磁性体15の極性は、
図3の例とは逆であってもよい。そして、展開状態においては、
図3の(B)に矢印で示すように第1磁性体14及び第2磁性体15の間に生じる斥力により、衝撃吸収体11を展開させる。展開が開始された衝撃吸収体11は、制限部16によって展開が制限されるまで重力により展開する。
【0018】
制限部16は、ひも状の部材であり、所定の繊維材料、金属ワイヤー等で形成される。また、制限部16は、衝撃吸収体11に設けられた複数の貫通孔17を通り、その一端側は第1端12と接続され、その他端側は第2端13と接続されている。なお、複数の貫通孔17は、折畳状態においてほぼ直線状になるように、衝撃吸収体11の折り目により区画される複数の領域において、互いに対応する位置に設けられた貫通孔である。制限部16の長さは、衝撃吸収体11を平面状に展開した場合の上述した連続方向の長さよりも短い。よって、制限部16は、衝撃吸収体11が所定の長さ以上に展開することを制限する。すなわち、制限部16は、展開状態において、衝撃吸収体11を、所定程度の角度で山折り及び谷折りにされた状態に維持させる。衝撃吸収体11は、展開状態においても蛇腹構造の山部及び谷部を有するため、乗員の頭部が衝突した場合に山部及び谷部が潰れる方向に加わる力に対してある程度の強度を維持しながら、同時にクッション性も有する。以上のように、衝撃吸収体11は、その材質及び構造によって衝撃を吸収する。なお、制限部16は、折畳状態において衝撃吸収体11と共に折り畳まれる。
【0019】
図1、
図3に示した制御装置3は、例えばマイクロコントローラを備えるECUである。制御装置3は、センサー4から受信する信号に基づいて車両2に対する衝突を検知又は予測し、衝撃緩和装置1を動作させる。例えば、制御装置3は、加速度センサーであるセンサー4から所定の閾値を超える加速度を検知したことを示す信号を受信した場合に、衝撃緩和装置1を作動させる。また、制御装置3は、カメラであるセンサー4から画像データを受信し、既存の解析手法に基づいて衝突の可能性を予測するようにしてもよい。この場合は、制御装置3は、衝突の可能性が所定の閾値を超えると判断したとき、衝突が発生する前の段階で衝撃緩和装置1を作動させる。センサー4が、レーダー、LiDAR、その他のセンサーである場合も、制御装置3は、既存の手法により衝突の検知又は予測を行
うことができる。
【0020】
図1、
図3に示したセンサー4は、例えば所定の計測値を示すデータ又は画像データ等を継続的に出力する装置である。すなわち、センサー4は、制御装置3が衝撃を感知若しくは予測するための信号を制御装置3へ出力する。なお、センサー4は、何らかのセンサーが出力するデータに基づいて衝突を検知又は予測するセンサーユニットであってもよい。すなわち、センサー4が衝突の検知又は予測を行い、結果を表す情報を制御装置3へ出力してもよい。この場合、制御装置3は、センサー4が出力する情報に応じて衝撃緩和装置1の制御を行う。
【0021】
以上のような衝撃緩和装置1によれば、特に車両2の側面に対する衝突から乗員を保護することができる。磁力の反発により駆動させる構成によれば、例えばエアバッグのようにガス発生器を用いる必要がない。このように、乗員を保護するための小型で軽量な装置を提供することができる。
【0022】
<変形例>
図4は、衝撃緩和装置1Aの変形例を示す斜視図である。
図4の(A)は、衝撃吸収体11Aが折り畳まれた折畳状態を示す。
図4の(B)は、衝撃吸収体11Aが展開された展開状態を示す。衝撃緩和装置1Aは、衝撃吸収体11Dと、第1端12Aと、第2端13Aと、第1磁性体14Cと、第2磁性体15Cとを備える。なお、上述した実施形態と対応する構成要素には対応する符号を付し、説明を省略する。
【0023】
衝撃緩和装置1Aは、第1端12A、第2端13A、及び折畳状態における衝撃吸収体11Dが延在する延在方向の一端側に第1磁性体14C及び第2磁性体15Cが配置されている。また、衝撃吸収体11Dは、延在方向の他端側に、山折り及び谷折りに折り畳まれた領域の各々が重なり合う面同士で互いに接着された接着部111を備える。また、接着部111は、第1端12Aの接着部121及び第2端13Aの接着部131とそれぞれ接着されている。接着部111、接着部121及び接着部131は、衝撃吸収体11Dの展開を抑制する制限部として機能する。
【0024】
展開状態においては、衝撃吸収体11Dの延在方向の一端側に設けられた第1磁性体14C及び第2磁性体15Cの各々の対向する極性同士が同一の極性になるように制御され、第1磁性体14C及び第2磁性体15Cの間に生じる斥力により、衝撃吸収体11Dが展開される。本変形例に係る衝撃吸収体11Dは、扇(扇子)状に展開する。すなわち、第2磁性体15Cが円弧を描くように、接着部131を中心に第2端13Aが回動すると共に、衝撃吸収体11Dが引き伸ばされる。
【0025】
変形例に係る衝撃緩和装置1Aも、衝撃吸収体11Dの延在方向の一端を、衝撃吸収体11Dが展開しないように固定しておくことにより、展開状態においても蛇腹構造の山部及び谷部維持している。よって、乗員の頭部が衝撃吸収体11Dに衝突した場合に山部及び谷部が潰れる方向に加わる力に対する強度が向上する。なお、この変形例でも接着部131に対して第2端13Aが所定の角度以上に展開しないよう、制限部を設けてもよい。例えば制限部は
図2(B)のように衝撃吸収体11の貫通孔17を通る紐であってもよいし、展開したときに第2端13Aと衝突するストッパを接着部131に取りつけてもよい。
【0026】
<磁性体の変形例>
図5は、変形例に係る衝撃緩和装置1の動作を説明するための模式的な図である。第1磁性体14は、折畳状態において、制御装置3からの給電により、第1磁性体14及び第2磁性体15の各々の対向する極性同士が異なる極性になるように磁化するようにしても
よい。
図5の(A)の例では、第1磁性体14の先端部分がS極に、第2磁性体15の先端部分がN極になっている。第1磁性体14は、例えばイグニッション電源又はアクセサリ電源から給電され、車両2の走行中の揺れ等によって、制御装置3の制御によらずに衝撃吸収体11が展開されることを抑制する。すなわち、本変形例では、第1磁性体14及び第2磁性体15の対向する極性同士が異なる極性になるように第1磁性体14を磁化させることで、より強力に第1磁性体14と第2磁性体15とを吸着させている。
【0027】
なお、衝撃緩和装置1を展開させる場合の動作は
図3の例と同様である。制御装置3は、センサー4からの信号に応じて第1磁性体14のコイルに流れる電流の向きを反転させ、第1磁性体14及び第2磁性体15の各々の対向する極性同士が同一の極性になるように第1磁性体14を磁化させる。
図5の(B)の例では、対向する極性がN極になっている。なお、第1磁性体14及び第2磁性体15の極性は、逆であってもよい。
【0028】
<衝撃吸収体の変形例>
図6は、衝撃緩和装置の変形例を示す斜視図である。なお、上述した実施形態と対応する構成要素には対応する符号を付し、説明を省略する。
図6は、衝撃吸収体11が展開された展開状態を示す。衝撃緩和装置1Bは、衝撃吸収体11(11E、11F、11G)と、第1端12と、第2端13と、第1磁性体14(14A、14B)と、第2磁性体15(15A、15B)とを備える。本変形例に係る衝撃吸収体11(11E、11F、11G)は、ハニカム構造になっている。すなわち、衝撃吸収体11は、展開状態において、衝撃吸収体11の展開方向と、第1端12及び第2端13の延在方向とに垂直な方向に貫通する、略正六角形の貫通孔を複数有する。なお、衝撃吸収体11は、正六角形以外の断面形状の角筒体または円筒体等の筒体を、その側方に(すなわち、筒体の貫通孔が略平行になるように)並置した形状としてもよく、並置された筒体の間には間隙が設けられていてもよい。また、衝撃吸収体11の材質は、形状記憶効果を有するゴムやエラストマーにであってもよい。本変形例によっても、乗員の頭部が衝撃吸収体11に衝突した場合に衝撃が加わる方向に対する、衝撃吸収体11の強度を向上させることができる。ただし、衝撃吸収体11はその厚さ方向(即ち貫通孔が貫通する方向)に十分な弾性力を有することで、乗員の頭部への衝撃を緩和させる。
【0029】
<その他>
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。例えば、ハニカム構造を有する衝撃吸収体11を
図4で示すように扇状に展開させるようにしてもよい。
【0030】
また、第1磁性体14及び第2磁性体15を両方とも永久磁石としてもよい。この場合、衝撃緩和装置1の作動時には、制御装置3による制御により、一方の永久磁石の極性の向きが逆になるように当該一方の永久磁石の姿勢を180度回転させる駆動部を設ける。このようにしても、一方の永久磁石と他方の永久磁石との間に斥力を生じさせ、衝撃吸収体11を展開させることができる。
【0031】
また、衝撃緩和装置1は、例えば追突の衝撃を緩和するために車両2の後方に展開したり、いわゆるファーサイド用のエアバッグのように側面衝突時にユーザーを基準として衝突とは反対側に展開したりして、
図1で示した車両2の設置個所以外の部分において、ユーザーを保護するために搭載されてもよい。また、衝撃緩和装置1は、車両2以外の乗り物やアトラクション設備等において、ユーザーを保護するために搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1、1A、1B:衝撃緩和装置
11(11A~11D):衝撃吸収体
12、12A:第1端
13、13A:第2端
14(14A~14C):第1磁性体
15(15A~15C):第2磁性体
16:制限部
2:車両
3:制御装置
4:センサー
5:電源