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特開2024-168038電線の端子接合構造及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168038
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電線の端子接合構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/58 20060101AFI20241128BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20241128BHJP
   H01R 31/06 20060101ALI20241128BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20241128BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20241128BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01R4/58 C
H01R4/62 A
H01R31/06 Z
H01R4/18 A
H01R43/048 Z
H01R43/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084425
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 哲治
【テーマコード(参考)】
5E051
5E063
5E085
【Fターム(参考)】
5E051LA02
5E051LB10
5E063CC05
5E085BB02
5E085BB03
5E085BB06
5E085BB12
5E085CC03
5E085CC09
5E085DD03
5E085DD14
5E085FF01
5E085HH06
5E085HH13
5E085HH34
5E085JJ36
(57)【要約】
【課題】異なる材料で構成された電線とバスバが高い強度で接合された端子接合構造を得る。
【解決手段】この端子接合構造1は、電線10、バスバ20、中間端子30で構成され、電線10とバスバ20が中間端子30を介して接合される。電線10は、銅又は銅合金で構成された芯線11が絶縁性の被覆層12で被覆されて構成される。バスバ20は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成される。この端子接合構造1においては、電線10が固定された状態の中間端子30が、バスバ20に固定される際、バスバ固定部33、34が、楔構造としてバスバ20に埋め込まれる。バスバ20と中間端子30との間の接続は異種の金属同士(銅とアルミニウム)の接合となるが、バスバ20と中間端子30との間も強固に接合される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体で構成された芯線が絶縁性の被覆層で覆われた構成を具備する電線と、バスバとが電気的に接続された構成を具備する、電線の端子接合構造であって、
一部が前記バスバに固定されると共に、他の一部に前記芯線が固定された中間端子を介して前記芯線とバスバとが電気的に接続され、
前記中間端子は、
前記バスバとは異なる材料で構成され、
前記バスバの表面と略平行に形成された基部と、
前記基部から前記バスバの表面側に局所的に突出したバスバ固定部と、
を具備し、
前記バスバ固定部が前記バスバの表面から前記バスバに埋め込まれ、かつ前記基部が前記バスバと当接した状態で前記中間端子が前記バスバに固定されたことを特徴とする、電線の端子接合構造。
【請求項2】
前記中間端子は銅又は銅合金で構成され、前記バスバはアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されたことを特徴とする請求項1に記載の、電線の端子接合構造。
【請求項3】
前記中間端子において、
前記バスバの表面と平行な方向における一方の端部側で前記芯線は前記中間端子にカシメ加工によって固定され、他方の端部側に前記バスバ固定部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の、電線の端子接合構造。
【請求項4】
前記中間端子において、
複数の前記バスバ固定部が互いに離間して設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の、電線の端子接合構造。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の電線の端子接合構造の製造方法であって、
前記中間端子に前記芯線をカシメ加工によって固定する電線固定工程と、
前記芯線が固定された前記中間端子における前記バスバ固定部を前記バスバの表面に当接させて前記中間端子と前記バスバとを積層し、前記バスバがある側と反対側で第1電極を前記中間端子と当接させると共に、前記中間端子がある側と反対側で第2電極を前記バスバと当接させ、前記第1電極と前記第2電極の間に電流を流すと共に、前記第1電極と前記第2電極の間の間隔を狭めるように前記第1電極と前記第2電極に圧力を印加することにより、前記バスバ固定部を前記バスバの表面に食い込ませて前記基部を前記バスバの表面に当接させる接合工程と、
を具備することを特徴とする、電線の端子接合構造の製造方法。
【請求項6】
前記基部及び前記バスバ固定部が一体化された前記中間端子を、板状の金属部材を板金加工することによって製造することを特徴とする、請求項5に記載の、電線の端子接合構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の材料で構成された、電線の端子接合構造、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の配線が用いられる電気機器等においては、配線(電線)同士を接続するための様々な端子接合構造(電線の末端の構造)が用いられる。特に、大電力で使用される装置においては、このような端子接合構造には大電流が流され、破壊が発生しにくく電気抵抗が低いことが要求される。一般的には電線としては線状の銅(あるいは銅合金)が用いられ、これに対して、例えば配電盤等への接続に適した形態、機械的強度とされたバスバが、電線の末端に接合されて用いられる。
【0003】
バスバを構成する材料として、電線と同じ銅を用いることもできるが、特許文献1等に記載されるように、低価格化や軽量化、使用しやすさの観点から、アルミニウム(あるいはアルミニウム合金)が用いられる場合もある。この場合、電線とバスバとの間の接合は、銅とアルミニウムという異なる材料同士の接合となり、この接合を長期間にわたり強固に安定して維持させることが要求される。これに対して、これらの材料はいずれも空気中で酸化しやすく、かつ融点が異なるため、このような要求を満たす接合を得ることは容易ではない。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の技術においては、バスバ(アルミニウム)側に屈曲部を設け、この屈曲部に対して電線(銅)の端部を抵抗溶接によって接合することが記載されている。ここでは、これらの接合部分に電流が流されることによる抵抗加熱でこれらが溶融して接合される。特許文献2には、抵抗加熱の代わりに、レーザー光の加熱によってこれらを接合することが記載されている。特許文献3には、電線(銅)側に無塩スズめっきを施し、このめっき層とバスバ(アルミニウム)とを加熱して接合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-15430号公報
【特許文献2】特開2017-139239号公報
【特許文献3】特開2004-335859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アルミニウムの融点は銅の融点よりも低いため、特許文献1に記載の技術においては、接合部分では実際にはバスバ側に電線が埋め込まれたような形態となる。このため、太い電線が用いられた場合には、この部分でバスバ側が実質的に薄くなり、強度が大きく低下した。更に、電線の末端部がこのような接合部になるため、この末端部を支点とするように電線やバスバに力が加わった場合には、接合が容易に破壊された。
【0007】
また、電線とバスバは、実際には、特許文献1に記載の技術においては抵抗加熱によって形成された銅とアルミニウムの金属間化合物、特許文献2に記載の技術においてはレーザー加熱によって形成された同様の金属間化合物を介して接合される。しかしながら、このような金属間化合物は、元となったアルミニウムよりも脆く、破壊されやすい。このため、この観点からも、電線とバスバの間の接合強度は充分ではなかった。この点については、銅の代わりにスズを介した接合を用いる特許文献3に記載の技術においても同様である。すなわち、このように、電線側とバスバ側との間で形成される金属間化合物を用いた接合においては、高い接合強度を得ることは困難であった。
【0008】
更に、特許文献1や特許文献3に記載の技術においては、電線が直接アルミニウム(バスバ)に接合される。この場合には、これらの接触面は細い線状となるため、接触面積は小さく、これらがこの小さな接触面積を介して接合される。この点からも、これらの間の高い接合強度を得ることは困難であった。
【0009】
このため、異なる材料で構成された電線とバスバが用いられた端子接合構造において、電線とバスバとの間における高い接合強度が求められた。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、導体で構成された芯線が絶縁性の被覆層で覆われた構成を具備する電線と、バスバとが電気的に接続された構成を具備する、電線の端子接合構造であって、一部が前記バスバに固定されると共に、他の一部に前記芯線が固定された中間端子を介して前記芯線とバスバとが電気的に接続され、前記中間端子は、前記バスバとは異なる材料で構成され、前記バスバの表面と略平行に形成された基部と、前記基部から前記バスバの表面側に局所的に突出したバスバ固定部と、を具備し、前記バスバ固定部が前記バスバの表面から前記バスバに埋め込まれ、かつ前記基部が前記バスバと当接した状態で前記中間端子が前記バスバに固定されている。
前記中間端子は銅又は銅合金で構成され、前記バスバはアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていてもよい。
前記中間端子において、前記バスバの表面と平行な方向における一方の端部側で前記芯線は前記中間端子にカシメ加工によって固定され、他方の端部側に前記バスバ固定部が設けられていてもよい。
前記中間端子において、複数の前記バスバ固定部が互いに離間して設けられていてもよい。
本発明は、前記端子接合構造の製造方法であって、前記中間端子に前記芯線をカシメ加工によって固定する電線固定工程と、前記芯線が固定された前記中間端子における前記バスバ固定部を前記バスバの表面に当接させて前記中間端子と前記バスバとを積層し、前記バスバがある側と反対側で第1電極を前記中間端子と当接させると共に、前記中間端子がある側と反対側で第2電極を前記バスバと当接させ、前記第1電極と前記第2電極の間に電流を流すと共に、前記第1電極と前記第2電極の間の間隔を狭めるように前記第1電極と前記第2電極に圧力を印加することにより、前記バスバ固定部を前記バスバの表面に食い込ませて前記基部を前記バスバの表面に当接させる接合工程と、を具備する。
前記基部及び前記バスバ固定部が一体化された前記中間端子を、板状の金属部材を板金加工することによって製造してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように構成されているので、異なる材料で構成された電線とバスバが高い強度で接合された端子接合構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る端子接合構造の組立前の分解斜視図である。
図2】実施の形態に係る端子接合構造の斜視図である。
図3】実施の形態に係る端子接合構造の製造方法を示す斜視図である。
図4】実施の形態に係る端子接合構造の製造方法における接合工程を詳細に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る端子接合構造について説明する。図1は、この端子接合構造1の組立前の状態の分解斜視図である。ここで示されるように、この端子接合構造1は、電線10、バスバ20、中間端子30で構成され、電線10とバスバ20が中間端子30を介して接合される。図1においては、実際にこれらが組み合わされて端子接合構造1を構成した場合におけるある1点からみた場合の各々の斜視図が記載されており、図中x方向は、直線状に延伸する電線10の延伸方向であり、後述するように、電線10のx方向正の端部側が中間端子30と接続される。バスバ20はxy方向に広がる表面を具備し、中間端子30は、z方向負側においてバスバ20と接続される。
【0015】
電線10は、銅又は銅合金で構成された芯線11が絶縁性の被覆層12で被覆されて構成される。電線10の主体は芯線11であり、電線10において電気的接続をとられる部分(末端部)では局所的に被覆層12が除去されることにより、芯線11が露出する。なお、図1においては便宜上芯線11は円筒形状に記載されているが、実際には芯線11は、より細い単体の導線が多数撚り合わされて構成された撚り線であってもよい。また、実際には電線10は屈曲性を有し、図1に示された範囲よりも長く、その長さは適宜設定される。こうした構造を具備する電線10は、一般的に知られているものと同一である。
【0016】
また、ここで電線10(芯線11)が電気的に接続されるバスバ20は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成される。ここでは、バスバ20は矩形形状の単純な板状とされるが、実際には、バスバ20の形状は、バスバ20の使用態様に応じて適宜設定され、中間端子30よりも広い平面状の表面を具備する限りにおいて、任意の形状とすることができる。
【0017】
ここで用いられる中間端子30は、芯線11と同様の銅又は銅合金で構成され、x方向及びy方向に沿った表面を有しx方向に長い板状の基部31を具備する。また、中間端子30は、、x方向において、主に、x方向負側で電線10(芯線11)が接続される電線接続部30Aと、x方向正側でバスバ20と接続されるバスバ接続部30Bに区分される。
【0018】
電線接続部30Aにおいては、y方向の両端部側において、z方向正側(上側)に突出する板状の電線固定部32がそれぞれ設けられる。一方、バスバ接続部30Bにおいては、z方向負側(下側)に突出する板状のバスバ固定部33がx方向正側の端部に設けられる。また、これよりもx方向負側のy方向の両端部側において、バスバ固定部33と同様にz方向負側に突出するバスバ固定部34がそれぞれ設けられる。バスバ固定部33と2つのバスバ固定部34はx方向で離間して形成されている。
【0019】
上記のような基部31、2つの電線固定部32、バスバ固定部33、2つのバスバ固定部34は、板状の金属部材を基にして一体化して形成されている。中間端子30は銅又は銅合金で構成され、このような形状の中間端子30を、板状の金属部材を板金加工することによって容易に製造することができる。
【0020】
図2は、これらが組み合わされて形成された端子接合構造1の斜視図である。この端子接合構造1においては、電線10が図1における電線接続部30Aにおいて固定された状態の中間端子30が、図1におけるバスバ接続部30Aにおいてバスバ20に固定される。この際、z方向負側(下側)に突出したバスバ固定部33、34が、楔構造としてバスバ20に埋め込まれる。この場合、電線10(芯線11)と中間端子30(電線接続部30A)間の接合は同種の金属(銅)同士の接合となる、あるいはカシメ加工によって強固に接合されるのに対し、バスバ20と中間端子30(バスバ接続部30B)との間の接続は異種の金属同士(銅とアルミニウム)の接合となり、一般的には強固な接合を得ることは困難である。しかしながら、この端子接合構造1においては、以下に説明するように、このようなバスバ20と中間端子30との間も強固に接合され、電線10とバスバ20との間が中間端子30を介して強固に接合される。
【0021】
また、図2の形態においては、中間端子30における基部31の下面は、バスバ20の上面と面接触する。このため、中間端子30とバスバ20との間の接触面積を大きくし、接触抵抗を充分に低くすることができる。一方、芯線11と中間端子30における電線固定部32の接触面積を大きくすることもできるため、電線10と中間端子30との間の接触抵抗も充分に低くすることができる。このため、この端子接合構造1の電気抵抗を低くすることができる。
【0022】
図3は、端子接合構造1の製造方法を説明する斜視図である。図1図3においては、いずれも同一の一点からみた斜視図が示されている。
【0023】
図3(a)(b)においては、電線10が中間端子30に接続される際の形態が示されている。図3(a)に示されるように、2つの電線固定部32の間に、突出した芯線11を配置した後に、図3(b)に示されるように、内側に向けて電線固定部32を屈曲させることによって、芯線11が中間端子30に対して固定される(電線固定工程)。すなわち、カシメ加工によって芯線11は中間端子30に固定される。この際、電線固定部32のx方向における幅を充分にとることによって、芯線11と中間端子30の間の接触抵抗を低くすることができる。芯線11と中間端子30は同種の材料で構成されるため、異材料間の接合に伴う問題はこの場合には発生しない。更に、芯線11と電線固定部32との間の固定がカシメ加工によって行われれば、芯線11と中間端子30が同種の材料で構成されていない場合でも、強固な接合が得られる。
【0024】
その後、図3(c)に示されるように、図3(b)の状態とされた中間端子30が、バスバ20の上に、バスバ固定部33と2つのバスバ固定部34がバスバ20の表面と当接するように載置される。
【0025】
その後、図3(d)に示されるように、上側から中間端子30に対して第1電極91を、下側からバスバ20に対して第2電極92をそれぞれ当接させる。ここでは、第1電極91、第2電極92は共にz方向を中心軸とした円筒形状とされ、第1電極91は中間端子30の基部31の上面と、第2電極92はバスバ20の下面と、それぞれ充分に広い接触面積で接触する。第1電極91と第2電極92に異なる極性の電圧を印加し、これらを介して中間端子30とバスバ20に電流を流すことができる。これにより、バスバ固定部33、バスバ固定部34とバスバ20の接触部分を抵抗加熱することができる。
【0026】
一方、例えば図3(d)に示された状態で、第1電極91と第2電極92の間を圧縮するような圧力を印加することができる。具体的には、図3(d)に示されたようにバスバ20が第2電極92の上に載置された状態で、第1電極91に対して下向きの圧力を印加することにより、バスバ固定部33、バスバ固定部34とバスバ20の接触部分を抵抗加熱しつつ、中間端子30を下向きに加圧することができる(接合工程)。
【0027】
これによって、図3(e)に示されるように、下向き(z方向負側)に凸形状とされたバスバ固定部33と2つのバスバ固定部34がバスバ20に食い込むことによって、中間端子30とバスバ20とが結合され、第1電極91、第2電極92を除去すれば、図3(f)に示されるように、図2の端子接合構造1が得られる。
【0028】
図4は、図3(d)の状態から図3(e)の状態に至るまでの形状をより詳細に示す、x方向に垂直な断面図である。この図においては、x方向においてバスバ固定部34がある箇所の断面が記載されている。
【0029】
図4(a)には、図3(d)の状態が示され、ここでは、第1電極91と基部31の上面側、第2電極92とバスバ20の下面側、バスバ固定部34の下端とバスバ20とが当接するため、中間端子30とバスバ20に電流を流すことができる。このうち、最も抵抗の高い部分は、接触面積が小さな、バスバ固定部34とバスバ20とが接する箇所である。このため、この電流によって、この部分が抵抗加熱により発熱し、特に、より融点の低いバスバ20側のアルミニウムが溶融する。
【0030】
このため、図4(b)に示されるように、融点が高いバスバ固定部34がバスバ20側に食い込む。この際に、溶融あるいは軟化したアルミニウムはバスバ固定部34を構成する銅との間で金属間化合物を形成し、食い込んだバスバ固定部34の周囲に金属間化合物層40となって排出される。
【0031】
その後、図4(c)に示されるように、最終的に中間端子30の基部31の下面がバスバ20の上面と当接すると共に、図4(b)の場合よりも金属間化合物層40はさらに広がる。なお、図4においてはバスバ固定部34がある箇所の断面が示されているが、バスバ固定部33がある箇所についても同様である。
【0032】
以上のように、加熱によって銅(中間端子30)とアルミニウム(バスバ20)側の間で金属間化合物が形成される点については、特許文献1、2に記載の技術等においても同様である。ここで、特許文献1、2に記載の技術等において形成される接合は、電線とバスバ間におけるこの金属間化合物を介した接合となる。この場合、金属間化合物は脆いため、強固な接合を得ることは困難である。
【0033】
これに対して、図4(c)においては、中間端子30は、主にバスバ固定部34がバスバ20中に食い込む(埋め込まれる)ことによってバスバ20に対して固定される。図4(b)(c)に示されるように、ここでも脆い金属間化合物層40は形成されるが、図4(c)に示されるように、金属間化合物層40はバスバ固定部34が食い込むに従って横方向(外側)に向けて広がる。この際、図4(b)における中間端子30の外側(左側のバスバ固定部34の左側、右側のバスバ固定部34の右側)の金属間化合物層40は、中間端子30とバスバ20の間の接合とは無関係である。
【0034】
一方、図4(b)における中間端子30の内側(左側のバスバ固定部34の右側、右側のバスバ固定部34の左側)の金属間化合物層40は基部31とバスバ20の上面に挟まれるため、これらの間の接合に関わる可能性がある。しかしながら、図3(b)等に示されるように、バスバ固定部33と2つのバスバ固定部34は分離して形成されているため、図4(b)の状態から図4(c)の状態になるに従い、基部31とバスバ20の上面の間の金属間化合物は、バスバ固定部33とバスバ固定部34の間、あるいは図1におけるx方向負側に流れ、基部31の下側から外側に流出する。このため、図4(c)に示されるように、連結後においては基部31とバスバ20の上面との間には、少なくとも厚い金属化合物層40は形成されず、実質的に基部31の下面とバスバ20の上面が面接触した状態が実現される。
【0035】
このため、図4(c)の状態においては、中間端子30は主にバスバ固定部33、34が楔としてバスバ20に打ち込まれることによってバスバ20に対して固定される。これによって、これらの間の接合強度を高くすることができ、かつ、特許文献1等に記載の技術のように、これによってバスバ20側が局所的に薄くなり強度が低下することもない。更に、中間端子30における基部31とバスバ20の間の接触面積を大きくすることができるため、これらの間の接触抵抗を低くすることもできる。
【0036】
なお、図3、4の例では、第1電極91、第2電極92は通電及び加圧のために用いられたが、通電と加圧を別の部材を用いて行ってもよい。この場合、加圧は図3、4における第1電極91、第2電極92と同様の構造体によって行い、通電は、この端子接合構造1が実際に使用される場合と同様に、バスバ20と接続される電極と、電線10(あるいは中間端子30)と接続される電極とを用いて行うことができる。
【0037】
バスバ接続部30Bの具体的な構造は、上記と同様に接合工程が行える限りにおいて、適宜設定することができる。例えば、上記の例においては、中間端子30において、図1に示されたように、下側に向けて突出したバスバ固定部33、34が設けられた。これに対して、その周囲から基部の下側の金属間化合物を図4(c)と同様に除去できるように、局所的に下側(バスバ側)に突出した単体のバスバ固定部を設けてもよい。逆に、より多くのバスバ固定部を互いに離間させて設けてもよく、例えば図1に示されたバスバ固定部34をx方向において複数離間させて設けてもよい。
【0038】
また、図1の例では基部31は細長い平坦な板状とされたが、板状の基部の中に開口を設けてもよく、この開口の周囲にバスバ固定部を設けてもよい。この場合にも、基部における開口を曲げ加工によって形成し、下向きに曲げた部分をバスバ固定部とすることができるため、やはり板金加工でこの中間端子を製造することができる。
【0039】
また、いずれの場合でも、バスバ固定部の下端を鋭角的な形状に加工すれば、前記の接合工程をより容易に行うことができるため、好ましい。
【0040】
電線接続部30Aについても、同様に、前記と異なる構造のものを適宜用いることができる。例えば、図1、2の構造では電線10は中間端子30の上側に固定されるものとしたが、中間端子を上記と同様にバスバに固定することができる限りにおいて、電線が中間端子の下側に固定されていてもよい。この場合の、電線の中間端子に対する固定手法は適宜設定することができる。いずれの場合でもこれらの間は同種の金属同士の接合となるため、この部分では特許文献1に記載の技術等におけるような問題は発生しない。この場合でも、容易に実現することができるカシメ加工を用いて電線を中間端子に固定することが特に好ましい。また、図1の例ではバスバ接続部30Bと電線接続部30Aがx方向で離間して設けられていたが、これらがx方向において重複して設けられていてもよく、これに応じて電線固定部、バスバ固定部の構成、位置を適宜設定することができる。ただし、図1に示されたように、x方向において、電線接続部30A(電線固定部32)を一方の側に、バスバ接続部30B(バスバ固定部33、34)を他方の側に離間して形成した場合には、中間端子30の板金加工による製造が特に容易であり、かつ、図3に示されたような第1電極91、第2電極92を用いた接合工程を容易に行うことができる。
【0041】
また、前記の例では電線(芯線)及び中間端子が銅又は銅合金、バスバがアルミニウム又はアルミニウム合金でそれぞれ構成されるものとした。しかしながら、電線(芯線)及び中間端子とバスバが異なる種類の材料で構成され、これらの間で強固な接合を得ることが容易でない場合には、同様の構造、製造方法が有効であることが明らかである。また、電線(芯線)と中間端子とが同一の材料で構成される必要はなく、少なくとも主成分が共通である同種の材料であればよい。
【0042】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0043】
1 端子接合構造
10 電線
11 芯線(電線)
12 被覆層
20 バスバ
30 中間端子
30A 電線接続部
30B バスバ接続部
31 基部
32 電線固定部
33、34 バスバ固定部
40 金属間化合物層
91 第1電極
92 第2電極
図1
図2
図3
図4