(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168039
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム及び作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20241128BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084426
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 耕平
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015GA03
2D015GB02
2D015GB06
2D015GB07
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】作業効率の向上を図りやすい、作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム及び作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械3の制御方法は、作業機械3の周囲の監視エリアにおける検知対象物を検知する検知部13の検知結果が特定条件を満たし、かつ、作業機械3の操作装置35に対して特定操作が行われた場合に、作業機械3の動作を制限する制限処理を実行すること、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の周囲の監視エリアにおける検知対象物を検知する検知部の検知結果が特定条件を満たし、かつ、前記作業機械の操作装置に対して特定操作が行われた場合に、前記作業機械の動作を制限する制限処理を実行すること、を有する、
作業機械の制御方法。
【請求項2】
前記特定操作は、前記作業機械の走行及び旋回の少なくとも一方に係る操作を含む、
請求項1に記載の作業機械の制御方法。
【請求項3】
前記制限処理は、前記特定操作による操作対象の動作を制限する第1制限処理と、前記操作対象以外の動作を制限する第2制限処理と、を含む、
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【請求項4】
前記第1制限処理は、前記第2制限処理に比べて、前記作業機械の動作を緩やかに制限する、
請求項3に記載の作業機械の制御方法。
【請求項5】
前記特定操作中に、前記検知結果が前記特定条件を満たすと、前記制限処理を実行する、
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【請求項6】
前記特定操作の終了時点から所定時間以内に、前記検知結果が前記特定条件を満たす場合も、前記制限処理を実行する、
請求項5に記載の作業機械の制御方法。
【請求項7】
前記検知結果が前記特定条件を満たす状態で、前記特定操作が開始されると、前記制限処理を実行する、
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【請求項8】
前記検知結果が前記特定条件を満たさなくなってから所定時間以内に、前記特定操作が開始された場合も、前記制限処理を実行する、
請求項7に記載の作業機械の制御方法。
【請求項9】
前記特定操作の開始タイミングと、前記検知結果が前記特定条件を満たすタイミングとの順番に応じて、前記制限処理の内容が異なる、
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【請求項10】
前記制限処理を終了するための解除条件は、前記特定操作の対象とされた前記操作装置の所定操作を含む、
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【請求項11】
ユーザの操作に応じて前記制限処理を無効化することを更に有する、
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【請求項12】
前記制限処理が有効か無効かを示す状態情報を提示することを更に有する、
請求項11に記載の作業機械の制御方法。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法を、
1以上のプロセッサに実行させるための作業機械用制御プログラム。
【請求項14】
作業機械の周囲の監視エリアにおける検知対象物を検知する検知部の検知結果が特定条件を満たし、かつ、前記作業機械の操作装置に対して特定操作が行われた場合に、前記作業機械の動作を制限する制限処理部、を備える、
作業機械用制御システム。
【請求項15】
請求項14に記載の作業機械用制御システムと、
機体と、を備える、
作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲の監視エリアにおける検知対象物を検知する機能を有する作業機械に用いられる、作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム及び作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、作業機械(ショベル)の周囲における人の存否を判定する制御部を備える作業機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。関連技術に係る作業機械においては、作業機械が作業可能状態のときに、作業機械の周囲における人を検出すると、オペレータ(操作者)が作業機械を操作できない作業不可状態を継続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記関連技術では、作業機械の周囲に人が存在する限り、無条件で作業機械が作業不可状態を継続するため、例えば、作業者が周囲で作業している環境で作業機械による作業を行う場合、作業機械が頻繁に作業不可状態となり、作業効率が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、作業効率の向上を図りやすい、作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム及び作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る作業機械の制御方法は、作業機械の周囲の監視エリアにおける検知対象物を検知する検知部の検知結果が特定条件を満たし、かつ、前記作業機械の操作装置に対して特定操作が行われた場合に、前記作業機械の動作を制限する制限処理を実行すること、を有する。
【0007】
本発明の一態様に係る作業機械用制御プログラムは、前記作業機械の制御方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0008】
本発明の一態様に係る作業機械用制御システムは、制限処理部、を備える。前記制限処理部は、作業機械の周囲の監視エリアにおける検知対象物を検知する検知部の検知結果が特定条件を満たし、かつ、前記作業機械の操作装置に対して特定操作が行われた場合に、前記作業機械の動作を制限する。
【0009】
本発明の一態様に係る作業機械は、前記作業機械用制御システムと、機体と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業効率の向上を図りやすい、作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム及び作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る作業機械の全体構成を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る作業機械の油圧回路等を示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る作業機械を上方から見て、作業機械の周囲に設定された監視エリア等を模式的に表す概略平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る作業機械用制御システムにより表示画面が表示される表示装置の概略外観図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る作業機械用制御システムによる検知対象物の検知動作の一例を説明する概略図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る作業機械用制御システムによる検知対象物の検知動作の一例を説明する概略図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る作業機械用制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0013】
(実施形態1)
[1]全体構成
本実施形態に係る作業機械3は、
図1に示すように、走行部31と、旋回部32と、作業部33と、を機体30に備えている。また、作業機械3は、
図2に示すように、作業機械用制御システム1(以下、単に「制御システム1」ともいう)を更に備えている。その他、機体30は、表示装置2及び操作装置35等を更に備えている。
【0014】
本開示でいう「作業機械」は、各種の作業用の機械を意味し、一例として、バックホー(油圧ショベル、ミニショベル等を含む)、ホイルローダー及びキャリア等の作業車両である。作業機械3は、少なくとも吊り作業を含む1つ以上の作業を実行可能に構成された作業部33を備えている。作業機械3は、「車両」に限らず、例えば、作業用船舶、ドローン又はマルチコプター等の作業飛翔体等であってもよい。さらに、作業機械3は建設機械(建機)に限らず、例えば、田植機、トラクタ又はコンバイン等の農業機械(農機)であってもよい。本実施形態では、特に断りが無い限り、作業機械3が吊り機能付き(クレーン機能付き)のバックホーであって、吊り作業の他に、掘削作業、整地作業、溝掘削作業又は積込作業等を作業として実行可能である場合を例に挙げて説明する。
【0015】
また、本実施形態では、説明の便宜上、作業機械3が使用可能な状態での鉛直方向を上下方向D1と定義する。さらに、旋回部32の非旋回状態において、作業機械3(の運転部321)に搭乗したユーザ(オペレータ)から見た方向を基準として、前後方向D2及び左右方向D3を定義する。言い換えれば、本実施形態で用いられる各方向は、いずれも作業機械3の機体30を基準として規定される方向であって、作業機械3の前進時に機体30が移動する方向が「前方」、作業機械3の後退時に機体30が移動する方向が「後方」となる。同様に、作業機械3の右旋回時に機体30の前端部が移動する方向が「右方」、作業機械3の左旋回時に機体30の前端部が移動する方向が「左方」となる。ただし、これらの方向は、作業機械3の使用方向(使用時の方向)を限定する趣旨ではない。
【0016】
作業機械3は、動力源となるエンジンを備えている。作業機械3においては、例えば、エンジンによって油圧ポンプ41(
図2参照)が駆動され、油圧ポンプ41から機体30の各部の油圧アクチュエータ(油圧モータ43及び油圧シリンダ44等を含む)に作動油が供給されることで、機体30が駆動する。また、作業機械3は、例えば、機体30の運転部321に搭乗したユーザ(オペレータ)が、操作装置35の操作レバー351,352(
図2参照)等を操作することにより制御される。
【0017】
本実施形態では、上述したように作業機械3が乗用タイプのバックホーである場合を想定しているので、作業部33は、運転部321に搭乗したユーザ(オペレータ)の操作に従って駆動され、掘削作業等の作業を実行する。ユーザが搭乗する運転部321は、旋回部32に設けられている。
【0018】
走行部31は、走行機能を有し、地面を走行(旋回を含む)可能に構成されている。走行部31は、例えば、左右一対のクローラ311及びブレード312等を有している。走行部31は、クローラ311を駆動するための走行用の油圧モータ43(油圧アクチュエータ)等を更に有する。
【0019】
旋回部32は、走行部31の上方に位置し、走行部31に対して、鉛直方向に沿った回転軸を中心に旋回可能に構成されている。旋回部32は、旋回用の油圧モータ(油圧アクチュエータ)等を有している。旋回部32には、運転部321の他、エンジン及び油圧ポンプ41等が搭載されている。さらに、旋回部32の前端部には、作業部33が取り付けられるブームブラケット322が設けられている。
【0020】
作業部33は、吊り作業を含む作業を実行可能に構成されている。作業部33は、旋回部32のブームブラケット322に支持されており、作業を実行する。作業部33は、バケット331、ブーム332及びアーム333等を有している。作業部33は、各部を駆動するための油圧アクチュエータ(油圧シリンダ44及び油圧モータ等を含む)を更に有する。
【0021】
バケット331は、作業機械3の機体30に取り付けられるアタッチメント(作業具)の一種であって、複数種類のアタッチメントの中から作業の内容に応じて選択される任意の器具からなる。バケット331は、一例として、機体30に対して取り外し可能に取り付けられ、作業の内容に応じて交換される。作業機械3用のアタッチメントとしては、例えば、バケット331の他に、ブレーカ、オーガ、クラッシャ、フォーク、フォーククロー、鉄骨カッタ、アスファルト切削機、草刈機、リッパ、マルチャ、チルトローテータ及びタンパ等の種々の器具がある。作業部33は、駆動装置からの動力により、バケット331を駆動することで作業を実行する。
【0022】
ブーム332は、旋回部32のブームブラケット322にて、回転可能に支持されている。具体的には、ブーム332は、ブームブラケット322にて、水平方向に沿った回転軸を中心に回転可能に支持されている。ブーム332は、ブームブラケット322に支持される基端部から上方に延びる形状を有している。アーム333は、ブーム332の先端に連結されている。アーム333は、ブーム332に対して、水平方向に沿った回転軸を中心に回転可能に支持されている。アーム333の先端には、バケット331が取り付けられる。
【0023】
作業部33は、動力源としてのエンジンからの動力を受けて動作する。具体的には、エンジンによって油圧ポンプ41が駆動され、作業部33の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ44等)に油圧ポンプ41から作動油が供給されることで、作業部33の各部(バケット331、ブーム332及びアーム333)が動作する。
【0024】
本実施形態では特に、作業部33は、ブーム332及びアーム333が個別に回転可能に構成された多関節型の構造を有している。つまり、ブーム332及びアーム333の各々が、水平方向に沿った回転軸を中心に回転することにより、例えば、ブーム332及びアーム333を含む多関節型の作業部33は、全体として伸ばしたり、折りたたんだりする動作が可能である。
【0025】
走行部31及び旋回部32の各々についても、作業部33と同様に、動力源としてのエンジンからの動力を受けて動作する。つまり、走行部31の油圧モータ43及び旋回部32の油圧モータ等に、油圧ポンプ41から作動油が供給されることで、旋回部32及び走行部31が動作する。
【0026】
エンジンは、上述したように各部に動力を供給する動力源として機能する。ここで、エンジンは、油圧ポンプ41等と共に旋回部32に搭載されている。本実施形態では一例として、エンジンはディーゼルエンジンである。エンジンは、燃料タンクから燃料(ここでは軽油)が供給されることにより駆動する。
【0027】
ここで、機体30には、機体30の周辺を撮像するカメラ等、作業機械3の周囲の監視エリアA1(
図3参照)における検知対象物Ob1(
図3参照)を検知するための各種のセンサ類(カメラを含む)が備わっている。本実施形態では一例として、
図3に示すように、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343を含む複数(ここでは3つ)のカメラが、機体30の旋回部32に搭載されている。左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343は、制御システム1に接続されており、各々で撮像された画像を制御システム1に出力する。
図3は、作業機械3を上方から見た平面図であって、作業機械3の周囲に設定された監視エリアA1、検知対象物Ob1、並びに作業機械3の機体30(左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343を含む)を模式的に表している。
【0028】
左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343は、それぞれ旋回部32の運転部321に搭乗したオペレータから見て、左方、右方及び後方となる監視エリアA1を撮像できるように、運転部321を基準に左方、右方及び後方に向けて設置される。つまり、監視エリアA1は、
図3に示すように、複数(ここでは3つ)の小エリアA11,A12,A13を含み、左方カメラ341は、このうち運転部321に搭乗したオペレータから見て左方となる小エリアA11(左方エリア)を撮像する。同様に、右方カメラ342は、運転部321に搭乗したオペレータから見て右方となる小エリアA12(右方エリア)を撮像し、後方カメラ343は、運転部321に搭乗したオペレータから見て後方となる小エリアA13(後方エリア)を撮像する。これにより、オペレータにとって死角となりやすい、側方(左方及び右方)並びに後方を、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343でカバーすることが可能となる。
【0029】
図2では、本実施形態に係る作業機械3の油圧回路及び電気回路(電気的な接続関係)を模式的に示す。
図2では、実線が高圧の(作動油用の)油路、点線が低圧の(パイロット油用の)油路、一点鎖線の矢印が電気信号の経路を示す。さらに、カットオフレバー350とカットオフスイッチ353との間の太線(実線)は、カットオフレバー350とカットオフスイッチ353との間の物理的な連結を示す。
【0030】
図2に示すように、作業機械3は、油圧ポンプ41、油圧モータ43及び油圧シリンダ44に加えて、パイロットポンプ42、リモコン弁45、制御弁46、方向切換弁(コントロールバルブ)47、第1制限部48及び第2制限部49等を備えている。作業機械3は、カットオフレバー350、カットオフスイッチ353、音出力部36、無効化スイッチ37及び圧力センサ38等を更に備えている。
図2では走行部31の油圧モータ43のみ図示しているが、旋回部32の油圧モータについても同様の油圧回路が構成されている。また、
図2では、ブーム332の駆動用の1つの油圧シリンダ44のみ図示しているが、アーム333又はバケット331等の駆動用の油圧シリンダ44についても同様の油圧回路が構成されている。
【0031】
エンジンにより駆動される油圧ポンプ41からの作動油は、走行部31の油圧モータ43、旋回部32の油圧モータ、及び作業部33の油圧シリンダ44等に供給される。これにより、油圧モータ43及び油圧シリンダ44等の油圧アクチュエータが駆動される。
【0032】
油圧モータ43及び油圧シリンダ44等の油圧アクチュエータには、油圧ポンプ41からの作動油の方向及び流量を切換可能なパイロット式の方向切換弁47が設けられている。方向切換弁47は、パイロットポンプ42から入力指令となるパイロット油が供給されて駆動される。
【0033】
ここで、例えば、走行部31の油圧モータ43に対応する方向切換弁47へのパイロット油の供給路には、リモコン弁45が設けられている。リモコン弁45は、操作装置35(操作レバー351)の操作に応じて走行部31の走行操作指令を出力する。走行操作指令は、走行部31の走行動作(前進又は後退等)を指示する。
【0034】
同様に、作業部33の油圧シリンダ44に対応する方向切換弁へのパイロット油の供給路にも、リモコン弁45が設けられている。このリモコン弁45は、操作装置35(操作レバー352)の操作に応じて作業部33の作業操作指令を出力する。作業操作指令は、作業部33の展開動作及び縮小動作等を指示する。さらに、旋回部32の油圧モータに対応する方向切換弁へのパイロット油の供給路にも、リモコン弁が設けられている。このリモコン弁は、操作装置35(操作レバー)の操作に応じて旋回部32の旋回操作指令を出力する。旋回操作指令は、旋回部32の旋回動作(左旋回又は右旋回等)を指示する。
【0035】
さらに、各方向切換弁47へのパイロット油の供給路には、第1制限部48が設けられている。第1制限部48は、第1制御弁481を有している。第1制御弁481は、いずれも電磁式の制御弁(電磁弁)からなり、それぞれリモコン弁45とパイロットポンプ42との間に直列に挿入されている。各第1制御弁481は、制御システム1に接続されており、制御システム1からの制御信号(供給電流)に応じて動作し、パイロットポンプ42からリモコン弁45に供給されるパイロット油の流量を調節する。本実施形態では、第1制限部48は、少なくとも第1制御弁481を閉じることにより、リモコン弁45に供給されるパイロット油の流路を遮断し、当該リモコン弁45に対応する油圧アクチュエータ(油圧モータ43及び油圧シリンダ44等)への油圧ポンプ41からの作動油の供給を停止することが可能である。油圧ポンプ41からの作動油の供給が停止した油圧アクチュエータは駆動不能となり、当該油圧アクチュエータは、操作装置35の操作によらずに、強制的に停止する。
【0036】
このような方向切換弁47、リモコン弁45及び第1制限部48は、走行部31の油圧モータ43及びブーム332の駆動用の油圧シリンダ44だけでなく、旋回部32の油圧モータ及びアーム333又はバケット331等の駆動用の油圧シリンダ44の油圧回路にも設けられている。そのため、例えば操作装置35の操作に応じて、走行部31、旋回部32及び作業部33を動作させることが可能である。
【0037】
さらに、第1制限部48(第1制御弁481)から見てパイロット油の上流側には、カットオフバルブとしての制御弁46が設けられている。制御弁46は、(電磁式)比例制御弁からなり、パイロットポンプ42と複数の第1制御弁481との間に挿入されている。制御弁46は、カットオフスイッチ353を介して電源に接続されており、電源からの供給電流に応じて動作する。ここで、制御弁46は、通電状態、つまり制御信号としての電流が供給されている状態で、パイロット油の流路を遮断し、非通電状態、つまり制御信号としての電流が遮断されている状態で、パイロット油の流路を開放する。そのため、制御弁46に供給電流が供給されることで、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ44等)が駆動不能となり、操作装置35の操作によらずに、油圧アクチュエータが強制的に停止する。
【0038】
カットオフスイッチ353は、カットオフレバー350に連動している。カットオフレバー350は、機体30の運転部321に配置されており、ユーザ(オペレータ)による操作入力を受け付ける。本実施形態では一例として、カットオフレバー350は上下方向D1に沿って操作可能である。カットオフレバー350が可動範囲の上端位置である「上げ位置」にあればカットオフスイッチ353は「オン」であり、カットオフレバー350が可動範囲の下端位置である「下げ位置」にあればカットオフスイッチ353は「オフ」である。そして、カットオフスイッチ353は制御システム1に接続されており、カットオフスイッチ353のオン/オフが制御システム1にて監視されている。
【0039】
したがって、カットオフレバー350が「下げ位置」にあってロック解除状態にあれば、制御弁46が非通電状態となり、操作装置35の操作によって油圧アクチュエータ(油圧シリンダ44等)が駆動する。これに対して、カットオフレバー350が「上げ位置」にあってロック状態にあれば、制御弁46が通電状態となり、操作装置35の操作によらずに油圧アクチュエータが強制的に停止する。そのため、油圧アクチュエータ(油圧モータ43等)を駆動するには、ユーザ(オペレータ)は、カットオフレバー350を「下げ位置」(ロック解除状態)に操作する必要がある。
【0040】
さらに、走行部31、旋回部32及び作業部33のいずれについても、油圧アクチュエータ(油圧モータ43、油圧シリンダ44等)に油圧ポンプ41から作動油が供給されることで動作するので、カットオフレバー350が「上げ位置」(ロック状態)にあれば、走行部31、旋回部32及び作業部33のいずれもが駆動不能となる。つまり、カットオフレバー350が「上げ位置」にあれば、走行部31、旋回部32及び作業部33の全てについて、強制的に駆動不能な状態とされる。
【0041】
要するに、カットオフスイッチ353は、オンのときに作業機械3の動作が制限(禁止を含む)される「ロック状態」にあり、オフのときに作業機械3の動作を制限しない「ロック解除状態」にある。そして、カットオフレバー350が「上げ位置」にあってカットオフスイッチ353がロック状態(オン)にあれば、操作装置35の操作によらずに作業機械3の動作が強制的に制限される。カットオフレバー350は、このように作業機械3の動作をロックする際に操作されるレバーであって、ゲートロックレバーと同義である。また、第1制御弁481及び制御弁46は、本実施形態では、いずれも(電磁式)比例制御弁であることとするが、これに限らず、例えば、流路の開放/遮断を切替可能な開閉弁であってもよい。
【0042】
また、油圧ポンプ41から供給される作動油の流量は固定的ではなく、適宜の手段により変更可能(可変)である。本実施形態に係る作業機械3は、第2制限部49を備えており、第2制限部49にて作動油の流量を調節可能である。本実施形態では一例として、油圧ポンプ41は、駆動軸の1回転に対して吐出する作動油量を変更可能な可変容量形ポンプからなる。
【0043】
第2制限部49は、制御信号入力ポート491と、電磁比例弁492と、を有する。制御信号入力ポート491は、可変容量形ポンプからなる油圧ポンプ41の作動油の吐出量(流量)を調節するための制御信号が入力されるポートである。具体的に、制御信号入力ポート491には、パイロットポンプ42から制御信号となるパイロット油が供給され、パイロット油の供給量(パイロット圧)に応じて油圧ポンプ41の作動油の吐出量が変化する。電磁比例弁492は、制御信号入力ポート491へのパイロット油の供給路上に設けられた電磁式の比例制御弁であって、制御信号入力ポート491に入力されるパイロット圧を調節する。電磁比例弁492は、制御システム1に電気的に接続されており、制御システム1からの制御信号(供給電流)に応じて、制御信号入力ポート491に入力されるパイロット圧を調節し、油圧ポンプ41の作動油の吐出量を変化させる。
【0044】
このように、第2制限部49は、作動油を供給する油圧ポンプ41の流量、及びパイロット圧の少なくとも一方を制御することで、油圧ポンプ41から吐出される作動油の流量を調節可能である。第2制限部49は、油圧ポンプ41から吐出される作動油の流量を、無段階で連続的に変化させてもよいし、段階的(例えば2段階、5段階又は10段階等)に変化させてもよい。本実施形態では、第2制限部49は、少なくとも電磁比例弁492を閉じることにより、制御信号入力ポート491に供給されるパイロット油の流路を遮断し、油圧ポンプ41からの作動油の供給を停止することが可能である。油圧ポンプ41からの作動油の供給が停止すると、走行部31の油圧モータ43、旋回部32の油圧モータ、及び作業部33の油圧シリンダ44等の油圧アクチュエータは全て停止する。
【0045】
操作装置35は、機体30の運転部321に配置されており、ユーザ(オペレータ)による操作入力を受け付けるためのユーザインターフェースである。操作装置35は、例えば、操作レバー351,352を含み、操作レバー351,352に対する操作量に応じてリモコン弁45を制御する。
【0046】
具体的に、操作レバー351は、走行部31の走行動作(前進又は後退等)に関する操作を受け付け、操作装置35は、操作レバー351の操作量に応じて、走行部31の油圧モータ43に対応するリモコン弁45を制御する。操作レバー352は、作業部33の展開動作及び縮小動作等に関する操作を受け付け、操作装置35は、操作レバー352の操作量に応じて、作業部33の油圧シリンダ44に対応するリモコン弁45を制御する。これにより、オペレータは、操作装置35を操作することでリモコン弁45を作動させ、油圧ポンプ41からの作動油の方向及び流量を指示し、作業機械3を動作させることが可能である。
【0047】
圧力センサ38は、各リモコン弁45と方向切換弁47との間のパイロット油の圧力を検出する。圧力センサ38は制御システム1に接続されており、圧力センサ38で検出される圧力を示す圧力検出信号は、制御システム1に入力される。第1制御弁481及び制御弁46がいずれもパイロット油の流路を開放している状態では、圧力センサ38で検出される圧力には、リモコン弁45の作動状態、つまり操作レバー351,352(操作装置35)の操作状態が反映される。
【0048】
制御システム1は、CPU(Central Processing Unit)等の1以上のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の1以上のメモリとを有するコンピュータシステムを主構成とし、種々の処理(情報処理)を実行する。本実施形態では、制御システム1は、作業機械3全体の制御を行う統合コントローラであって、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)からなる。ただし、制御システム1は、統合コントローラと別に設けられていてもよい。制御システム1について詳しくは「[2]制御システムの構成」の欄で説明する。
【0049】
表示装置2は、機体30の運転部321に配置されており、ユーザ(オペレータ)による操作入力を受け付け、ユーザに種々の情報を出力するためのユーザインターフェースである。表示装置2は、例えば、ユーザの操作に応じた電気信号を出力することにより、ユーザによる各種の操作を受け付ける。これにより、ユーザ(オペレータ)は、表示装置2に表示される表示画面Dp1(
図4参照)を視認でき、また、必要に応じて表示装置2を操作することが可能である。
【0050】
表示装置2は、
図2に示すように、制御部21と、操作部22と、表示部23と、を備えている。表示装置2は、制御システム1と通信可能に構成されており、制御システム1との間でデータの授受が可能である。本実施形態では一例として、表示装置2は作業機械3に用いられる専用のデバイスである。
【0051】
制御部21は、制御システム1からのデータに従って、表示装置2を制御する。具体的には、制御部21は、操作部22で受け付けたユーザの操作に応じた電気信号を出力したり、制御システム1で生成される表示画面Dp1を表示部23に表示したりする。
【0052】
操作部22は、表示部23に表示される表示画面Dp1に対するユーザ(オペレータ)による操作入力を受け付けるためのユーザインターフェースである。操作部22は、例えば、ユーザU1(
図4参照)の操作に応じた電気信号を出力することにより、ユーザU1による各種の操作を受け付ける。本実施形態では一例として、操作部22は、
図4に示すように、機械式の複数(ここでは6つ)の押釦スイッチ221~226を含む。これら複数の押釦スイッチ221~226は、表示部23の表示領域の周縁に沿うように、表示領域に近接して(
図4の例では下方に)配置されている。これら複数の押釦スイッチ221~226は、後述する表示画面Dp1に表示される項目に対応付けられており、複数の押釦スイッチ221~226のいずれかが操作されることにより、表示画面Dp1のいずれかの項目が操作(選択)される。
【0053】
また、操作部22は、タッチパネル及び操作ダイヤル等を含んでいてもよい。この場合においても、操作部22に対する操作により、表示画面Dp1のいずれかの項目が操作(選択)されることになる。
【0054】
表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような、ユーザU1(オペレータ)に情報を提示するためのユーザインターフェースである。表示部23は、ユーザに対して各種の情報を表示により提示する。本実施形態では一例として、表示部23は、バックライト付きのフルカラーの液晶ディスプレイであって、
図4に示すように、横方向に長い「横長」の表示領域を有している。
【0055】
表示装置2は、作業機械3を操作するユーザU1(オペレータ)に向けて表示画面Dp1にて種々の情報を提示する。つまり、作業機械3を操作するユーザU1は、表示装置2に表示される表示画面Dp1を見ることで、作業機械3に関連する種々の情報を視覚的に得ることが可能である。一例として、表示装置2に、冷却水温及び作動油温等の作業機械3の稼働状態に関する情報が表示されることで、ユーザU1は、作業機械3の操作に必要な作業機械3の稼働状態に関する情報を、表示装置2で確認することができる。また、表示装置2は、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343にて撮像される作業機械3の周辺画像(監視エリアA1の画像)についても、表示画面Dp1に表示することができる。これにより、ユーザU1(オペレータ)は、作業機械3を操作する際に、例えば、運転部321からの死角となりやすい作業機械3の側方及び後方等の状況を、表示装置2に表示される表示画面Dp1にて確認することができる。
【0056】
音出力部36は、ブザー又はスピーカ等を含み、電気信号を受けて音を出力する。音出力部36は、制御システム1に接続されており、制御システム1からの音制御信号に応じて、ビープ音又は音声等の音を出力する。本実施形態では、音出力部36は、表示装置2と同様に機体30の運転部321に設けられている。音出力部36は、表示装置2と一体に設けられていてもよい。
【0057】
無効化スイッチ37は、ユーザ(オペレータ)による操作入力を受け付けるためのユーザインターフェースである。無効化スイッチ37は、一例として押釦スイッチからなり、制御システム1に接続されており、無効化スイッチ37からの操作信号が制御システム1に出力される。本実施形態では、無効化スイッチ37は、表示装置2と同様に機体30の運転部321に設けられている。無効化スイッチ37は、表示装置2と一体に設けられていてもよく、この場合、例えばタッチパネルにて無効化スイッチ37が具現化されてもよい。
【0058】
また、機体30は、上述した構成に加えて、通信端末、燃料タンク及びバッテリ等を更に備えている。さらには、機体30には、冷却水温センサ、作動油温センサ、エンジンの回転数を計測する回転数計、及び稼働時間を計測するアワーメータ等、機体30の稼働状態を監視するためのセンサ類が備わっている。
【0059】
[2]制御システムの構成
次に、本実施形態に係る制御システム1の構成について、
図2を参照して説明する。制御システム1は、機体30(走行部31、旋回部32及び作業部33等を含む)の各部を制御する。本実施形態では、上述したように、作業機械3の機体30には、作業機械3を駆動するための「駆動部」として、走行部31の油圧モータ43、旋回部32の油圧モータ、及び作業部33の油圧シリンダ44等の油圧アクチュエータが搭載されている。制御システム1は、作業機械3の構成要素であって、機体30等と共に作業機械3を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る作業機械3は、少なくとも制御システム1と、機体30(走行部31、旋回部32及び作業部33を含む)と、を備えている。
【0060】
制御システム1は、
図2に示すように、表示処理部11と、取得処理部12と、検知部13と、制限処理部14と、警報処理部15と、無効化処理部16と、を備えている。本実施形態では一例として、制御システム1は1以上のプロセッサを有するコンピュータシステムを主構成とするので、1以上のプロセッサが作業機械用制御プログラムを実行することにより、これら複数の機能部(表示処理部11等)が実現される。制御システム1に含まれる、これら複数の機能部は、複数の筐体に分散して設けられていてもよいし、1つの筐体に設けられていてもよい。
【0061】
制御システム1は、機体30の各部に設けられたデバイスと通信可能に構成されている。つまり、制御システム1には、少なくとも第1制限部48(第1制御弁481)、第2制限部49(電磁比例弁492)、左方カメラ341、右方カメラ342、後方カメラ343、表示装置2、音出力部36及び無効化スイッチ37等が接続されている。これにより、制御システム1は、第1制限部48、第2制限部49、表示装置2及び音出力部36等を制御したり、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343等の撮像画像を取得したりすることが可能である。ここで、制御システム1は、各種の情報(データ)の授受を、各デバイスと直接的に行ってもよいし、中継器等を介して間接的に行ってもよい。
【0062】
表示処理部11は、作業機械3に関連する情報を含む表示画面Dp1を表示装置2に表示させる表示処理を実行する。具体的には、表示処理部11は、取得処理部12で取得されるデータ等に基づいて表示画面Dp1を生成し、表示装置2を制御することによって、表示画面Dp1を表示装置2の表示部23に表示させる。さらに、表示処理部11は、表示装置2の操作部22が受け付けた操作に応じて動作する。
【0063】
ここで、表示画面Dp1に含まれる作業機械3に関連する情報は、例えば、燃料の残量、冷却水温、作動油温、及び吊り作業時の吊り下げ重量等の、作業機械3の稼働状態に関する稼働情報を含む。つまり、表示処理部11は、作業機械3の稼働状態に関する稼働情報を含む表示画面Dp1を、表示装置2に表示させることができる。さらに、表示画面Dp1に含まれる作業機械3に関連する情報は、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343で撮像される撮像画像を表示画面Dp1に表示させる。つまり、表示処理部11は、作業機械3の周囲の監視エリアA1(各小エリアA11,A12,A13)の撮像画像を含む表示画面Dp1を、表示装置2に表示させることができる。
【0064】
本開示でいう表示画面Dp1等の「画面」は、表示装置2にて表示される映像(画像)を意味し、図像、図形、写真、テキスト及び動画等を含む。すなわち、制御システム1は、例えば、冷却水温及び作動油温等の作業機械3の稼働状態に関する情報を表す図像等を含む表示画面Dp1を、表示装置2に表示させることが可能である。ここで、表示画面Dp1が動画等を含む場合には、表示画面Dp1は一定の映像ではなく、刻一刻と変化する映像を含む。
【0065】
取得処理部12は、作業機械3の周囲の監視エリアA1の撮像画像等、作業機械3に関連する各種のデータを取得する取得処理を実行する。本実施形態では、取得処理部12は、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343の出力を、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343から定期的又は不定期に取得する。つまり、取得処理部12は、作業機械3の周囲の監視エリアA1(各小エリアA11,A12,A13)の画像データ(撮像画像)を取得する。
【0066】
さらに、取得処理部12は、取得処理により、少なくとも操作装置35(操作レバー351,352)の操作状態を表す圧力センサ38からの圧力検出信号、及び無効化スイッチ37の操作状態を含む、作業機械3の各部の動作状態に関する情報を、定期的又は不定期に取得可能である。ここで、取得処理部12は、燃料の残量センサ、冷却水温センサ及び作動油温センサの出力(センサ信号)についても取得可能である。取得処理部12は、各種のデータを、各種センサ等(カメラを含む)から直接的に取得してもよいし、電子制御ユニット等を介して間接的に取得してもよい。取得処理部12で取得されたデータは、例えば、メモリ等に記憶される。
【0067】
検知部13は、機体30の周囲の監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知(検出)する。つまり、検知部13は、監視エリアA1における検知対象物Ob1の存否(有無)を判断し、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在するか否かを表す検知結果を出力する。本実施形態では一例として、検知対象物Ob1は「人」である。つまり、作業機械3が移動し、又は作業機械3の周囲の「人」が移動した結果、作業機械3の周囲の監視エリアA1に「人」が侵入した場合、検知部13は当該「人」を検知対象物Ob1として検知する。監視エリアA1に複数の検知対象物Ob1が存在する場合には、検知部13は、検知対象物Ob1の数(人数)も含めて検知してもよい。
【0068】
本実施形態では、検知部13は、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343の出力(画像データ)に基づいて、監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知する。具体的には、検知部13は、取得処理部12で取得された画像データに対して、画像処理を施すことにより、画像中の特徴量を抽出し、当該特徴量に基づいて、画像に検知対象物Ob1(本実施形態では「人」)が写り込んでいるか否かを判断する。ここで、画像に検知対象物Ob1が写り込んでいる場合、検知部13は、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343のいずれで撮像された画像に検知対象物Ob1が写り込んでいるかを判断する。つまり、検知部13は、左方カメラ341で撮像される小エリアA11、右方カメラ342で撮像される小エリアA12、及び後方カメラ343で撮像される小エリアA13のいずれに検知対象物Ob1が存在するかを区別して、検知対象物Ob1の検知を行う。
【0069】
さらに、本実施形態では、検知部13は、機体30から検知対象物Ob1までの距離についても検知可能である。つまり、検知部13は、画像に検知対象物Ob1が写り込んでいる場合、検知対象物Ob1の画像上での位置に基づいて、機体30から検知対象物Ob1までの距離を算出する。そのため、検知部13では、例えば、機体30からある距離(例えば、2m、3m、4m又は5m等)以内に存在する検知対象物Ob1を検知することが可能である。言い換えれば、検知部13は、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343で撮像される全域を監視エリアA1とするだけでなく、任意に設定される大きさ及び形状の監視エリアA1の検知対象物Ob1を検知することも可能である。
【0070】
制限処理部14は、検知部13の検知結果に基づいて、作業機械3の動作を制限する制限処理を実行する。本実施形態では、制限処理部14は、検知部13の検知結果が特定条件を満たし、かつ、作業機械3の操作装置35に対して特定操作が行われた場合に、制限処理を実行する。すなわち、制限処理部14は、検知部13の検知結果に加え操作装置35の操作状態に基づいて、制限処理を実行する。
【0071】
本開示でいう「制限処理」は、作業機械3の動作に関し、何かしら制限(抑制)する方向に作用する処理を意味する。例えば、制限処理は、作業機械3の走行部31、旋回部32及び作業部33等を制御することで、作業機械3の動作を直接的に制限する処理を含む。一例として、制限処理は、走行部31の走行動作を禁止する(走行動作不能とする)処理、旋回部32の旋回動作を禁止する(旋回動作不能とする)処理、及び作業部33の動作を禁止する(作業不能とする)処理等を含む。これにより、ユーザU1(オペレータ)の操作によらずに、作業機械3の動作を強制的に制限することができる。つまり、作業機械3が動作することによる機体30と検知対象物Ob1との接触を回避できる。
【0072】
本実施形態では、制限処理部14は、第1制限部48と第2制限部49との少なくとも一方を制御する。制限処理部14は、例えば、第1制限部48を作動させ、第1制御弁481を閉じることによって、走行部31の油圧モータ43、旋回部32の油圧モータ、及び作業部33の油圧シリンダ44等の個々の駆動部(油圧アクチュエータ)の動作を制限する。つまり、制限処理部14が第1制限部48を作動させると、第1制御弁481がパイロット油の流路を遮断し、油圧アクチュエータへの油圧ポンプ41からの作動油の供給を停止することにより、油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させる。
【0073】
さらに、制限処理部14は、第2制限部49を作動させ、電磁比例弁492を閉じることによって、走行部31の油圧モータ43、旋回部32の油圧モータ、及び作業部33の油圧シリンダ44等の複数の駆動部(油圧アクチュエータ)の動作を一括して制限する。つまり、制限処理部14が第2制限部49を作動させると、電磁比例弁492が油圧ポンプ41からの作動油の吐出量を制限し、油圧アクチュエータへの油圧ポンプ41からの作動油の供給を停止することにより、油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させる。
【0074】
ここで、制限処理部14が実行する制限処理は、走行部31の走行動作及び旋回部32の旋回動作の少なくとも一方を制限する処理を含む。具体的に、制限処理部14は、第1制御弁481又は電磁比例弁492を閉じて油圧ポンプ41からの作動油の供給を停止することで、少なくとも旋回部32の油圧モータが駆動不能となり、旋回部32の旋回動作中であれば旋回部32が緊急停止し、旋回部32の旋回動作中でなければ旋回部32の旋回動作が禁止される。これにより、ユーザU1(オペレータ)の死角となる監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合に、旋回部32が旋回することによる機体30と検知対象物Ob1との接触を回避できる。
【0075】
警報処理部15は、警報の出力、つまり報知を行う。ここで、警報処理部15は、検知部13の検知結果、つまり機体30の周囲の監視エリアA1における検知対象物Ob1の検知結果に基づく警報の出力(報知)を行う警報処理を実行する。特に、警報処理部15は、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合に警報を出力する。
【0076】
本開示でいう「報知」は、ユーザ(オペレータ)に対して種々の手段で警報を出力することを意味し、例えば、音(音声を含む)、表示(表示灯の点灯を含む)、振動(バイブレーション機能)、他端末への送信又は非一時的記録媒体への書き込み等の手段による警報の出力を含む。ただし、警報処理部15は、基本的には、ユーザ(オペレータ)がリアルタイムで警報を認識可能な態様で報知を行う。本実施形態では一例として、警報処理部15は、機体30の周囲の監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合、表示装置2の表示部23にその旨を表示させ、かつ音出力部36に警報音を出力させる。警報音は、単なるビープ音であってもよいし、「ご注意ください」等の音声であってもよい。さらに、警報内容(表示内容及び警報音)は、検知部13の検知結果(検知対象物Ob1の位置、機体30から検知対象物Ob1までの距離等)に応じて変化してもよい。
【0077】
無効化処理部16は、ユーザU1(オペレータ)の操作に応じて制限処理を無効化する。すなわち、制限処理部14による制限処理は常時有効とされるのではなく、ユーザU1(オペレータ)の操作に応じて、有効/無効の切り替えが可能である。制限処理が有効であれば、検知部13の検知結果が特定条件を満たし、かつ、作業機械3の操作装置35に対して特定操作が行われると、制限処理部14による制限処理が実行される。一方、制限処理が無効であれば、検知部13の検知結果が特定条件を満たし、かつ、作業機械3の操作装置35に対して特定操作が行われたとしても、制限処理部14による制限処理は実行されない。そのため、例えば、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在して検知部13の検知結果が特定条件を満たすとしても、ユーザU1(オペレータ)が検知対象物Ob1の存在を認識した上で、制限処理を無効にすることで、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合でも作業機械3による作業を継続することが可能である。
【0078】
本実施形態では一例として、制限処理に係る機能(制限処理部14)の有効と無効との切り替えは、ユーザU1(オペレータ)が無効化スイッチ37を操作することによって行われる。つまり、制限処理が有効である状態で、ユーザU1が、無効化スイッチ37を操作すると、無効化処理部16は、この操作を受けて、制限処理に係る機能を無効にする。一方、制限処理が無効である状態で、ユーザU1が、無効化スイッチ37を操作すると、無効化処理部16は、この操作を受けて、制限処理に係る機能を有効にする。このように、本実施形態では、無効化処理部16は、ユーザU1の操作に応じて制限処理の有効/無効を切り替える。これにより、例えば、ユーザU1(オペレータ)が検知対象物Ob1の存在を認識したときに、ユーザU1が自らの意思により制限処理を無効にすることで、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合でも作業機械3による作業を継続しやすくなる。
【0079】
ここで、無効化処理部16による制限処理の有効/無効を示す状態情報は、例えば、ユーザ(オペレータ)に対して種々の手段で提示される。状態情報の提示の手段としては、例えば、音(音声を含む)、表示(表示灯の点灯を含む)、振動(バイブレーション機能)、他端末への送信又は非一時的記録媒体への書き込み等の手段を含む。無効化処理部16は、状態情報を、表示装置2の表示部23に表示させ、かつ音出力部36から音出力させることにより、提示する。このように、無効化処理部16は、制限処理が有効か無効かを示す状態情報を提示する。したがって、ユーザU1(オペレータ)においては、制限処理の有効/無効を認識した上で、作業機械3による作業を行うことが可能である。
【0080】
ところで、検知部13は、制御システム1に必須の構成ではない。例えば、制御システム1は、外部の検知部の検知結果を取得し、当該検知結果に基づいて制限処理部14が制限処理を実行するように構成されていてもよい。
【0081】
[3]作業機械の制御方法
以下、
図5~
図7を参照しつつ、主として制御システム1によって実行される作業機械3の制御方法(以下、単に「制御方法」という)の一例について説明する。
【0082】
本実施形態に係る制御方法は、コンピュータシステムを主構成とする制御システム1にて実行されるので、言い換えれば、作業機械用制御プログラム(以下、単に「制御プログラム」という)にて具現化される。つまり、本実施形態に係る制御プログラムは、制御方法に係る各処理を1以上のプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。このような制御プログラムは、例えば、制御システム1及び表示装置2によって協働して実行されてもよい。
【0083】
ここで、制御システム1は、制御プログラムを実行させるための予め設定された特定の開始操作が行われた場合に、制御方法に係る下記の各種処理を実行する。開始操作は、例えば、作業機械3のエンジンの起動操作等である。一方、制御システム1は、予め設定された特定の終了操作が行われた場合に、制御方法に係る下記の各種処理を終了する。終了操作は、例えば、作業機械3のエンジンの停止操作等である。
【0084】
[3.1]制限処理のための条件
ここではまず、本実施形態に係る制御方法、つまり本実施形態に係る制御システム1の動作において、制限処理を実行するための条件(実行条件)について説明する。
【0085】
すなわち、制限処理部14は、検知部13の検知結果が特定条件を満たし、かつ、作業機械3の操作装置35に対して特定操作が行われた場合に、制限処理を実行する。言い換えれば、制限処理は、検知部13の検知結果が特定条件を満たすこと、及び、操作装置35に対して特定操作が行われること、を含む実行条件を満たす場合に、実行される。要するに、検知部13の検知結果が特定条件を満たすことに加えて、プラスアルファの条件(操作装置35に対して特定操作が行われること等)を満たして初めて、実行条件を満たし、制限処理が実行されることになる。
【0086】
本実施形態では、特定条件は、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在することを含む。すなわち、検知部13の検知結果が、作業機械3の周囲の監視エリアA1に検知対象物Ob1(本実施形態では「人」)が存在することを示す場合に、当該検知結果は特定条件を満たすことになる。一方、検知部13の検知結果が、作業機械3の周囲の監視エリアA1に検知対象物Ob1(人)が存在しないことを示す場合に、当該検知結果は特定条件を満たさないことになる。
【0087】
また、特定操作は、作業機械3の走行及び旋回の少なくとも一方に係る操作を含む。すなわち、走行部31の走行動作(前進又は後退等)、及び旋回部32の旋回動作(左旋回又は右旋回等)の少なくとも一方を行うための、操作装置35に対するオペレータの操作が、「特定操作」に含まれている。具体的に、走行部31の走行動作に関する操作を受け付ける操作レバー351の操作と、旋回部32の旋回動作に関する操作を受け付ける操作レバーの操作との少なくとも一方が、特定操作に含まれる。
【0088】
このように、特定操作が、作業機械3の走行及び旋回の少なくとも一方に係る操作を含むことで、検知部13の検知結果が特定条件を満たすことに加え、走行及び旋回の少なくとも一方に係る操作されて初めて、制限処理が実行されることになる。したがって、例えば、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在するだけであれば、作業部33の展開動作及び縮小動作等に関する操作に関しては、制限処理が実行されないことになり、作業部33による作業を継続することが可能となる。
【0089】
本実施形態では一例として、作業機械3の走行及び旋回のうちの走行に係る操作のみが特定操作に含まれることとする。より詳細には、走行動作に関する操作を受け付ける操作レバー351が中立位置(ニュートラルポジション)以外の位置に操作されていることを、特定操作とする。そのため、操作レバー351が中立位置にある限り、たとえ、旋回部32の旋回動作に関する操作を受け付ける操作レバー、又は、作業部33の展開動作及び縮小動作等に関する操作を受け付ける操作レバー352が操作されていても、特定操作はなされていないことになる。
【0090】
以上説明したように、検知部13の検知結果が特定条件を満たすこと(「第1条件」ともいう)と、作業機械3の操作装置35に対して特定操作が行われること(「第2条件」ともいう)と、の2つの条件の両方を満たしたときに初めて、実行条件を満たすことになり、制限処理が実行される。ここにおいて、本実施形態では、これら2つの条件(第1条件及び第2条件)を満たすタイミングについて特に制約はなく、例えば、第1条件が先であっても、第2条件が先であっても、第1条件及び第2条件の両方を満たせば、実行条件を満たすことになる。
【0091】
まず、本実施形態に係る制御方法では、特定操作中に、検知結果が特定条件を満たすと、制限処理を実行する。言い換えれば、先に操作装置35に対して特定操作が行われて第2条件を満たしている状態で、検知部13の検知結果が特定条件を満たすことで第1条件を満たせば、実行条件を満たすことになって、制限処理が実行される。これにより、操作装置35に対して特定操作が行われるタイミングと、検知部13の検知結果が特定条件を満たすタイミングとにずれがあっても、制限処理を実行することが可能となる。
【0092】
さらに、本実施形態に係る制御方法では、特定操作の終了時点から所定時間以内に、検知結果が特定条件を満たす場合も、制限処理を実行する。言い換えれば、先に操作装置35に対して特定操作が行われて第2条件を満たしたものの、操作レバー351が中立位置に復帰する等により特定操作が終了した後、所定時間(一例として数秒)以内に、検知部13の検知結果が特定条件を満たすことで第1条件を満たせば、実行条件を満たすことになって、制限処理が実行される。これにより、操作装置35に対する特定操作の終了後であっても、特定操作の直後に検知部13の検知結果が特定条件を満たせば、制限処理を実行することが可能となる。
【0093】
また、本実施形態に係る制御方法では、検知結果が特定条件を満たす状態で、特定操作が開始されると、制限処理を実行する。言い換えれば、先に検知部13の検知結果が特定条件を満たすことで第1条件を満たしている状態で、操作装置35に対して特定操作が行われて第2条件を満たせば、実行条件を満たすことになって、制限処理が実行される。これにより、検知部13の検知結果が特定条件を満たすタイミングと、操作装置35に対して特定操作が行われるタイミングとにずれがあっても、制限処理を実行することが可能となる。
【0094】
さらに、本実施形態に係る制御方法では、検知結果が特定条件を満たさなくなってから所定時間以内に、特定操作が開始された場合も、制限処理を実行する。言い換えれば、先に検知部13の検知結果が特定条件を満たすことで第1条件を満たしたものの、検知部13で検知対象物Ob1を見失う等により検知結果が特定条件を満たさなくなった後、所定時間(一例として数秒)以内に、操作装置35に対して特定操作が行われて第2条件を満たせば、実行条件を満たすことになって、制限処理が実行される。これにより、検知部13の検知結果が特定条件を満たさなくなった後であっても、その直後に操作装置35に対して特定操作が行われると、制限処理を実行することが可能となる。
【0095】
[3.2]制限処理
次に、本実施形態に係る制御方法の制限処理の詳細について、
図5及び
図6を参照して説明する。
【0096】
本実施形態では、検知部13の検知結果が監視エリアA1に検知対象物Ob1の存在を示す結果であって、かつ、操作装置35(操作レバー351)に対して走行部31の走行動作に関する操作(特定操作)がされると、制限処理部14は、作業機械3の動作を制限する制限処理を実行する。ここで、基本的に、制限処理部14は、第1制限部48と第2制限部49との少なくとも一方を制御して作業機械3の動作を直接的に制限する。
【0097】
具体的に、検知部13の検知結果が監視エリアA1に検知対象物Ob1の存在を示す結果であって、かつ、操作装置35に対して走行部31の走行動作に関する操作がされると、制限処理部14は、第1制限部48を作動させ、所望の駆動部の動作を制限する。一例として、制限処理部14は、制限処理として、走行部31の油圧モータ43に対応する第1制限部48を作動させ、油圧モータ43の回転数を低下させて、走行部31による作業機械3の走行速度を低下させる。この例に限らず、制限処理部14は、例えば、走行部31の油圧モータ43、旋回部32の油圧モータ及び作業部33の油圧シリンダ44のうちの1つ以上の駆動部に対応する第1制限部48を作動させ、当該1つ以上の駆動部を停止させてもよい。
【0098】
一方、たとえ検知部13の検知結果が監視エリアA1に検知対象物Ob1の存在を示す結果であっても、操作装置35(操作レバー351)に対して走行部31の走行動作に関する操作(特定操作)がされなければ、制限処理部14は、制限処理を実行しない。このように、本実施形態に係る制御方法によれば、検知部13の検知結果が特定条件を満たすことに加え、操作装置35に対する特定操作がなされて初めて、制限処理が実行されることになる。したがって、例えば、作業者が周囲で作業している環境で作業機械3による作業を行う場合において、作業機械3が頻繁に作業不可状態となることを回避しやすくなり、作業効率の向上を図りやすい、という利点がある。
【0099】
また、本実施形態に係る制御方法では、制限処理は、特定操作による操作対象の動作を制限する第1制限処理と、操作対象以外の動作を制限する第2制限処理と、を含む。本実施形態では、特定操作による操作対象は走行部31であるので、第1制限処理は走行部31の動作を制限する処理であって、第2制限処理は走行部31以外の旋回部32及び作業部33等の動作を制限する処理である。
【0100】
要するに、検知部13の検知結果が監視エリアA1に検知対象物Ob1の存在を示す結果であって、かつ、操作装置35(操作レバー351)に対して走行部31の走行動作に関する操作(特定操作)がされると、制限処理部14は、走行部31に対する第1制限処理と、旋回部32及び作業部33等に対する第2制限処理と、を実行する。これにより、特定操作による操作対象(本実施形態では一例として走行部31)のみならず、特定操作による操作対象以外についても、その動作を制限することが可能となる。
【0101】
ここで、第1制限処理は、第2制限処理に比べて、作業機械3の動作を緩やかに制限する処理である。例えば、制限処理部14は、第1制限処理として、油圧モータ43の回転数を低下させて走行部31による作業機械3の走行速度を低下させた後に、油圧モータ43を停止させて走行部31を停止させる。あるいは、制限処理部14は、第1制限処理として、油圧モータ43に対応する第1制御弁481を徐々に閉じることにより、油圧モータ43の回転数を緩やかに低下させて走行部31をゆっくりと停止させる。これに対して、制限処理部14は、第2制限処理として、旋回部32の油圧モータ及び作業部33の油圧シリンダ44に対応する第1制御弁481を急峻に閉じることにより、当該油圧モータ及び油圧シリンダ44を停止させ、旋回部32及び作業部33を即座に停止させる。
【0102】
このように、特定操作による操作対象(本実施形態では一例として走行部31)と、それ以外とで、動作を制限する速度に差をつけることで、作業機械3の部位ごとに細やかな制限処理を行うことが可能となる。特に、特定操作による操作対象が走行部31(及び/又は旋回部32)の場合には、走行部31(及び/又は旋回部32)の動作を緩やかに制限することで、作業機械3に搭乗するオペレータに対する衝撃を抑えることが可能となる。
【0103】
また、第2制限処理に関しては、第1制限処理とは異なり、特定操作にかかわらず実行されてもよい。つまり、特定操作による操作対象(本実施形態では一例として走行部31)以外の動作を制限する第2制限処理に関しては、特定操作の有無にかかわらず、検知結果が特定条件を満たした時点で実行されてもよい。この場合、作業機械3において特定操作に関連しない部位の動作に関しては、特定操作の有無にかかわらず制限をかけることが可能となる。
【0104】
さらに、制限処理を終了するための解除条件は、特定操作の対象とされた操作装置35の所定操作を含む。本実施形態では一例として、所定操作は、特定操作の対象である操作レバー351の中立位置への復帰操作である。すなわち、検知部13の検知結果が特定条件を満たし、かつ、操作レバー351に対して走行部31の走行動作に関する操作(特定操作)がなされると、制限処理が実行される。そして、制限処理が実行されると、その後、検知部13の検知結果が特定条件を満たさなくなるだけでは、制限処理は終了しない。つまり、検知部13の検知結果が特定条件を満たさなくなり、かつ操作レバー351の中立位置への復帰するように操作(所定操作)されることにより解除条件を満たすまでは、制限処理が継続する。解除条件を満たすと、制限処理は終了する。
【0105】
これにより、例えば、検知部13が検知対象物Ob1を一時的に見失うことがあっても、直ちに制限処理が解除されることはない。そして、特定操作の対象とされた操作装置35に対して、オペレータが自らの意思で所定操作を行った場合には、制限処理が解除され、作業機械3を用いた作業を再開できることになる。
【0106】
以下に、本実施形態に係る制御方法の具体例を示す。
【0107】
例えば、
図5の左側に示すように、検知対象物Ob1である「人」が監視エリアA1外であって作業機械3の後方に存在する状態で、オペレータが操作装置35(操作レバー351)を操作して、走行部31に後進動作させる場合を想定する。この場合、作業機械3の機体30が後方に移動することで、監視エリアA1も後方に移動するため、
図5の右側に示すように、検知対象物Ob1である「人」が監視エリアA1(小エリアA13)に侵入することになる。これにより、検知部13の検知結果が特定条件を満たし、かつ、操作装置35(操作レバー351)に対する特定操作がされることになり、制限処理が実行される。
【0108】
したがって、
図5の右側の状態では、第1制限処理により、走行部31の走行速度が低下した後に走行部31が停止し、第2制限処理より、旋回部32及び作業部33等が即座に停止する。これにより、検知対象物Ob1である「人」が作業機械3と接触することを回避できる。
【0109】
一方、例えば、
図6の左側に示すように、検知対象物Ob1である「人」が監視エリアA1外であって作業機械3の後方に存在する状態で、オペレータが操作装置35を操作して、旋回部32に左旋回動作させる場合を想定する。この場合、作業機械3の機体30が左旋回することで、監視エリアA1も図中反時計回りに移動するため、
図6の右側に示すように、検知対象物Ob1である「人」が監視エリアA1(小エリアA13)に侵入することになる。これにより、検知部13の検知結果が特定条件を満たすことになるものの、操作装置35に対する特定操作はなされていないため、制限処理は実行されない。
【0110】
したがって、
図6の右側の状態では、第1制限処理及び第2制限処理は行われない。これにより、作業機械3は作業を継続することが可能である。
【0111】
ここで、警報処理部15は、特定操作の有無にかかわらず、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合に、警報を出力する。そのため、
図5(の右側)の状態であっても、
図6(の右側)の状態であっても、警報の出力は行われることになる。
【0112】
[3.3]フローチャート
次に、本実施形態に係る制御方法の主要な処理の流れについて、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0113】
前提として、作業機械3のエンジンの起動操作(イグニッションオン)がされた時点で、制御システム1は、ステップS1以降の処理を開始し、以降、ステップS1~S5の処理を繰り返し実行する。
【0114】
ステップS1では、制御システム1の制限処理部14は、第1条件として検知部13の検知結果が特定条件を満たすか否かの判定を行う。本実施形態では、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在すると、制限処理部14は、検知結果が特定条件を満たすと判断し(S1:Yes)、処理をステップS2に移行させる。一方、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在しなければ、制限処理部14は、検知結果が特定条件を満たさないと判断し(S1:No)、ステップS1を繰り返し実行する。
【0115】
ステップS2では、制御システム1の制限処理部14は、第2条件として操作装置35に対する特定操作の有無の判定を行う。本実施形態では、走行部31の走行動作に関する操作レバー351の操作があると、制限処理部14は、特定操作があると判断し(S2:Yes)、処理をステップS3に移行させる。一方、走行部31の走行動作に関する操作レバー351の操作がなければ、制限処理部14は、特定操作がないと判断し(S2:No)、処理をステップS1に戻す。
【0116】
ステップS3では、制御システム1の制限処理部14は、制限処理を実行する。具体的に、制限処理部14は、第1制限処理として、油圧モータ43の回転数を低下させて走行部31による作業機械3の走行速度を低下させた後に、油圧モータ43を停止させて走行部31を停止させる。また、制限処理部14は、第2制限処理として、旋回部32の油圧モータ及び作業部33の油圧シリンダ44に対応する第1制御弁481を急峻に閉じることにより、当該油圧モータ及び油圧シリンダ44を停止させ、旋回部32及び作業部33を即座に停止させる。
【0117】
ステップS4では、制御システム1の制限処理部14は、特定操作の対象とされた操作装置35に対する所定操作の有無の判定を行う。本実施形態では、走行部31の走行動作に関する操作レバー351を中立位置に復帰させる操作があると、制限処理部14は、所定操作があると判断し(S4:Yes)、処理をステップS5に移行させる。一方、走行部31の走行動作に関する操作レバー351を中立位置に復帰させる操作がなければ、制限処理部14は、所定操作がないと判断し(S4:No)、ステップS4を繰り返し実行する。
【0118】
ステップS5では、制限処理部14は、制限処理を解除し、一連の処理を終了する。
【0119】
制御システム1は、上記ステップS1~S5の処理を繰り返し実行する。ただし、
図7に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
【0120】
以上説明したように、本実施形態に係る制御方法は、作業機械3の周囲の監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知する検知部13の検知結果が特定条件を満たし(S1:Yes)、かつ、作業機械3の操作装置35に対して特定操作が行われた場合に(S2:Yes)、作業機械3の動作を制限する制限処理を実行すること(S3)、を有する。
【0121】
この構成によれば、たとえ検知部13の検知結果が特定条件を満たしても、操作装置35(操作レバー351)に対して特定操作がされなければ、制限処理部14は、制限処理を実行しない。このように、本実施形態に係る制御方法によれば、検知部13の検知結果が特定条件を満たすことに加え、操作装置35に対する特定操作がなされて初めて、制限処理が実行されることになる。したがって、例えば、作業者が周囲で作業している環境で作業機械3による作業を行う場合において、作業機械3が頻繁に作業不可状態となることを回避しやすくなり、作業効率の向上を図りやすい、という利点がある。
【0122】
[3.4]その他の動作
その他の動作として、例えば、特定操作の開始タイミングと、検知結果が特定条件を満たすタイミングとの順番に応じて、制限処理の内容が異なってもよい。
【0123】
すなわち、先に操作装置35に対して特定操作が行われて第2条件を満たしている状態で、検知部13の検知結果が特定条件を満たすことで第1条件を満たす場合と、先に検知部13の検知結果が特定条件を満たすことで第1条件を満たしている状態で、操作装置35に対して特定操作が行われて第2条件を満たす場合とで、制限処理の内容が異なる。一例として、第2条件が先となる前者の場合には、第1条件が先となる後者の場合に比較して、作業機械3の動作を緩やかに制限するように、それぞれの場合における制限処理の内容が設定されていることが好ましい。
【0124】
これにより、例えば、先に操作装置35に対して特定操作が行われている状態で、検知部13の検知結果が特定条件を満たす場合には、作業機械3の動作を緩やかに制限することができ、作業機械3に搭乗するオペレータに対する衝撃を抑えることが可能となる。
【0125】
また、特定条件は、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在することだけでなく、監視エリアA1のうちの操作装置35の特定操作による作業機械3の進行方向に検知対象物Ob1が存在することを含んでもよい。すなわち、例えば、操作レバー351が走行部31を前進動作させるように操作されている場合には、作業機械3の前方に検知対象物Ob1が存在して初めて特定条件を満たすことになり、作業機械3の後方又は側方に検知対象物Ob1が存在しても特定条件を満たさない。
【0126】
[4]変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0127】
本開示における制御システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしての1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、制御システム1に含まれる一部又は全部の機能部は電子回路で構成されていてもよい。
【0128】
また、制御システム1の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていることは制御システム1に必須の構成ではなく、制御システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。反対に、実施形態1において、複数の装置(例えば制御システム1及び表示装置2)に分散されている機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。さらに、制御システム1の少なくとも一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0129】
また、特定操作は、作業機械3の走行及び旋回の少なくとも一方に係る操作を含んでいればよく、走行に係る操作のみに限らず、走行に係る操作に加えて又は代えて、旋回(旋回部32の旋回動作)に係る操作を含んでいてもよい。
【0130】
また、作業機械3の動力源は、ディーゼルエンジンに限らず、例えば、ディーゼルエンジン以外のエンジンであってもよいし、モータ(電動機)、又はエンジンとモータ(電動機)とを含むハイブリッド式の動力源であってもよい。
【0131】
また、操作装置35の操作レバーは、電気式の操作デバイスであって、ユーザ(オペレータ)の操作に応じた電気信号(操作信号)を制御システム1に出力することにより、ユーザによる各種の操作を受け付ける構成であってもよい。この場合、制御システム1は、例えば、リモコン弁45に代えて設けられる制御弁(電磁弁)を、操作装置35(操作レバー)の操作に応じて制御することで、油圧アクチュエータを制御することができる。
【0132】
また、表示装置2は、専用のデバイスに限らず、例えば、ラップトップコンピュータ、タブレット端末又はスマートフォン等の汎用端末であってもよい。さらに、表示部23は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのように、表示画面を直接的に表示する態様に限らず、例えば、プロジェクタのように、投影により表示画面を表示する構成であってもよい。
【0133】
また、操作部22の情報の入力の態様として、押釦スイッチ、タッチパネル及び操作ダイヤル以外の態様を採用してもよい。例えば、操作部22は、キーボード、マウス等のポインティングディバイス、音声入力、ジェスチャ入力又は他の端末からの操作信号の入力等の態様を採用してもよい。
【0134】
また、警報処理部15における警報の出力(情報提示)態様は、表示装置2の表示部23への表示、及び音出力部36からの警報音の出力に限らない。例えば、警報処理部15は、表示装置2の表示部23への表示と、音出力部36からの警報音と、のいずれか一方のみにより警報を出力してもよいし、その他、振動(バイブレーション機能)、他端末への送信若しくは非一時的記録媒体への書き込み等の手段、又はこれらの組み合わせにより警報を出力してもよい。
【0135】
また、機体30の周囲の監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知するためのセンサは、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343に限らず、1つ、2つ又は4つ以上のカメラ(イメージセンサ)を含んでもよい。さらに、例えば、全天球カメラ(360度カメラ)のように作業機械3から見て全方位を撮像可能なカメラにて、監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知してもよい。また、監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知するためのセンサは、カメラに加えて又は代えて、たとえば、人感センサ、ソナーセンサ、レーダ又はLiDAR(Light Detection and Ranging)等のセンサを含んでもよい。ここで、監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知するセンサは、光又は音が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、検知対象物Ob1までの距離を測定する3次元センサであってもよい。
【0136】
また、検知対象物Ob1は、「人」に加えて又は代えて、車両等の移動体(他の作業機械を含む)、壁及び柱等の構造物、植物、動物、段差、溝、若しくはその他の障害物を含んでいてもよい。
【0137】
また、機体30の各部のアクチュエータは、油圧アクチュエータに限らず、例えば、圧縮空気等の空気圧によって駆動される空圧アクチュエータ、若しくは、電力供給によって駆動される電動アクチュエータ、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0138】
〔発明の付記〕
以下、上述の実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0139】
<付記1>
作業機械の周囲の監視エリアにおける検知対象物を検知する検知部の検知結果が特定条件を満たし、かつ、前記作業機械の操作装置に対して特定操作が行われた場合に、前記作業機械の動作を制限する制限処理を実行すること、を有する、
作業機械の制御方法。
【0140】
<付記2>
前記特定操作は、前記作業機械の走行及び旋回の少なくとも一方に係る操作を含む、
付記1に記載の作業機械の制御方法。
【0141】
<付記3>
前記制限処理は、前記特定操作による操作対象の動作を制限する第1制限処理と、前記操作対象以外の動作を制限する第2制限処理と、を含む、
付記1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【0142】
<付記4>
前記第1制限処理は、前記第2制限処理に比べて、前記作業機械の動作を緩やかに制限する、
付記3に記載の作業機械の制御方法。
【0143】
<付記5>
前記特定操作中に、前記検知結果が前記特定条件を満たすと、前記制限処理を実行する、
付記1~4のいずれかに記載の作業機械の制御方法。
【0144】
<付記6>
前記特定操作の終了時点から所定時間以内に、前記検知結果が前記特定条件を満たす場合も、前記制限処理を実行する、
付記5に記載の作業機械の制御方法。
【0145】
<付記7>
前記検知結果が前記特定条件を満たす状態で、前記特定操作が開始されると、前記制限処理を実行する、
付記1~6のいずれかに記載の作業機械の制御方法。
【0146】
<付記8>
前記検知結果が前記特定条件を満たさなくなってから所定時間以内に、前記特定操作が開始された場合も、前記制限処理を実行する、
付記7に記載の作業機械の制御方法。
【0147】
<付記9>
前記特定操作の開始タイミングと、前記検知結果が前記特定条件を満たすタイミングとの順番に応じて、前記制限処理の内容が異なる、
付記1~8のいずれかに記載の作業機械の制御方法。
【0148】
<付記10>
前記制限処理を終了するための解除条件は、前記特定操作の対象とされた前記操作装置の所定操作を含む、
付記1~9のいずれかに記載の作業機械の制御方法。
【0149】
<付記11>
ユーザの操作に応じて前記制限処理を無効化することを更に有する、
付記1~10のいずれかに記載の作業機械の制御方法。
【0150】
<付記12>
前記制限処理が有効か無効かを示す状態情報を提示することを更に有する、
付記11に記載の作業機械の制御方法。
【0151】
<付記13>
付記1~12のいずれかに記載の作業機械の制御方法を、
1以上のプロセッサに実行させるための作業機械用制御プログラム。
【符号の説明】
【0152】
1 作業機械用制御システム
3 作業機械
13 検知部
14 制限処理部
30 機体
35 操作装置
A1 監視エリア
Ob1 検知対象物