(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168041
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】機器操作盤
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20241128BHJP
G08B 23/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G08B17/00 E
G08B17/00 L
G08B23/00 530E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084429
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217021
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 進吾
(72)【発明者】
【氏名】中島 博明
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA37
5C087BB03
5C087BB06
5C087BB74
5C087DD04
5C087DD20
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF03
5C087FF04
5C087FF05
5C087GG08
5C087GG38
5C087GG62
5C087GG66
5C087GG84
5G405AA06
5G405AD04
5G405BA01
5G405CA27
5G405CA29
5G405CA60
5G405EA18
5G405EA31
(57)【要約】
【課題】火災信号を出力した機器に連動して動く連動機器の遅延制御の実行に適した機器操作盤を得る。
【解決手段】複数の火災検出機器と複数の連動機器とが含まれる複数の防災機器を制御する機器操作盤であって、複数の連動機器は、どの火災検出機器に連動して動作するかがあらかじめ連動テーブルとして規定されており、複数の火災検出機器のいずれかから火災信号を受信した場合には、連動テーブルを参照することで、複数の連動機器の中から連動して動く機器を特定して起動させる連動制御を実行する制御処理部を備え、制御処理部は、複数の連動機器のそれぞれについて、連動制御を実行するまでの遅延時間を設定可能であり、設定された遅延時間を用いて連動制御を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災監視エリアに設置された複数の防災機器を制御するであって、
前記複数の防災機器には、火災が発生したことを知らせる火災信号を出力する機器に相当する複数のと、前記火災信号を出力した火災検出機器に連動して動く複数のとが含まれており、前記複数の連動機器は、どの火災検出機器に連動して動作するかがあらかじめ連動テーブルとして規定されており、
前記複数の火災検出機器のいずれかから前記火災信号を受信した場合には、前記連動テーブルを参照することで、前記複数の連動機器の中から前記連動して動く機器を特定して起動させる連動制御を実行する制御処理部
を備え、
前記制御処理部は、前記複数の連動機器のそれぞれについて、連動制御を実行するまでの遅延時間を設定可能であり、設定された前記遅延時間を用いて前記連動制御を実行する
機器操作盤。
【請求項2】
前記複数の連動機器のそれぞれと、前記遅延時間とが対応付けられた遅延時間設定テーブルを記憶する記憶部
をさらに備え、
前記記憶部に記憶されている前記遅延時間設定テーブルは、前記火災信号を発した火災検出機器の設置場所に応じた複数の条件のそれぞれに対して前記遅延時間が設定されており、
前記制御処理部は、前記火災信号を受信した場合には、前記複数の連動機器のそれぞれに関して前記複数の条件のうちのどの条件を採用するかを、前記火災信号を発した火災検出機器の設置場所と複数の連動機器のそれぞれの設置場所との関係に基づいて特定し、前記遅延時間設定テーブルを参照することで、前記複数の連動機器のそれぞれに対して特定された前記条件に対応する遅延時間を抽出し、抽出した前記遅延時間を用いて前記連動制御を実行する
請求項1に記載の機器操作盤。
【請求項3】
前記複数の連動機器のそれぞれと、前記遅延時間とが対応付けられた遅延時間設定テーブルを記憶する記憶部
をさらに備え、
前記記憶部に記憶されている前記遅延時間設定テーブルは、前記複数の連動機器に関する連動元となる火災検出機器のそれぞれに対して前記遅延時間が設定されており、
前記制御処理部は、前記火災信号を受信した場合には、前記遅延時間設定テーブルを参照することで、前記火災信号を出力した連動元の火災検出機器に対応して設定された遅延時間を抽出し、抽出した前記遅延時間を用いて前記連動元の火災検出機器に対応して連動動作を行うすべての連動機器について同一の遅延時間による前記連動制御を実行する
請求項1に記載の機器操作盤。
【請求項4】
前記複数の連動機器のそれぞれと、前記遅延時間とが対応付けられた遅延時間設定テーブルを記憶する記憶部
をさらに備え、
前記記憶部に記憶されている前記遅延時間設定テーブルは、前記複数の連動機器に関する種別ごとに前記遅延時間が設定されており、
前記制御処理部は、前記火災信号を受信した場合には、前記遅延時間設定テーブルを参照することで、前記連動機器の種別ごとに設定された遅延時間を抽出し、抽出した前記遅延時間を用いて前記連動して動く機器に関して種別ごとに同一の遅延時間による前記連動制御を実行する
請求項1に記載の機器操作盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火災監視エリアにおける防災機器を制御する機器操作盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災受信機、発信機、中継器、音響装置、感知器、防排煙機器等を備えて構成され、防火対象である建物内の火災監視エリアで発生する火災を迅速に検知し、消火作業、避難誘導等を行う自動火災報知設備がある(例えば、非特許文献1参照)。自動火災報知設備では、感知器が熱や煙を感知することで、火災受信機に対して火災信号を送信する。
【0003】
火災信号を受信した火災受信機は、火災発生場所に応じて、警報を発し、音響装置を鳴動させ、建物内にいる人に火災の発生を知らせる。さらに、火災信号を受信した火災受信機は、炎あるいは煙の拡大を防ぐために、火災発生場所に応じて、防排煙機器を連動動作させる。
【0004】
このように、火災受信機は、自動火災報知設備に含まれる種々の防災機器に関する集中制御を行う。なお、このような集中制御は、総合操作盤など、その他の設備でも行うことができる。そこで、本開示では、種々の防災機器に関する集中制御を行う火災受信機、総合操作盤などの設備のことを、機器操作盤と総称することとする。
【0005】
種々の防災機器の中には、火災信号を受信した機器操作盤から起動指令が出力されることで、火災信号を出力した機器と連動して動く連動機器群が含まれている。このような連動制御が実施されることで、火災信号の発生に伴って、例えば、防火戸、シャッタなどの防排煙機器を連動で起動させることができ、炎あるいは煙の拡大を防ぐことが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】能美防災株式会社 ホームページ、自動火災報知設備(URL:https://www.nohmi.co.jp/product/materiel/fid.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
工場、物流倉庫などの現場が火災監視エリアの場合には、防排煙機器のような連動機器を動作させる際に、連動機器が直ちに動作しないように、火災信号を受信してからある遅延時間が経過した後に連動機器の起動を行う遅延制御か行われることがある。
【0008】
具体的には、物流倉庫において、コンベアが停止した後にシャッタなどの防排煙機器を動作させたい、といった要望に応えるために、遅延制御が行われることがあり、ユーザの要望に応じて自動火災報知設備をカスタマイズする必要が生じる。
【0009】
現状の自動火災報知設備では、火災信号が検出されると、即座に防排煙機器などの連動制御が行われ、連動機器が動作する構成となっている。従って、遅延制御を行いたい要望に応えるためには、連動機器への起動指令の出力線であるDC24Vラインに、タイマーリレーを追加し、動作の開始を遅延させていた。
【0010】
しかしながら、このような遅延制御を実現するためには、ユーザの現場において後付けでタイマーリレーを組み込む必要がある。従って、後付け作業に伴う手間と費用が発生してしまう。さらに、リレータイマーの材料不足などが発生した場合には、後付け作業が滞ってしまうおそれもある。
【0011】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、火災信号を出力した機器に連動して動く連動機器の遅延制御の実行に適した機器操作盤を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る機器操作盤は、火災監視エリアに設置された複数の防災機器を制御する機器操作盤であって、複数の防災機器には、火災が発生したことを知らせる火災信号を出力する機器に相当する複数の火災検出機器と、火災信号を出力した火災検出機器に連動して動く複数の連動機器とが含まれており、複数の連動機器は、どの火災検出機器に連動して動作するかがあらかじめ連動テーブルとして規定されており、複数の火災検出機器のいずれかから火災信号を受信した場合には、連動テーブルを参照することで、複数の連動機器の中から連動して動く機器を特定して起動させる連動制御を実行する制御処理部を備え、制御処理部は、複数の連動機器のそれぞれについて、連動制御を実行するまでの遅延時間を設定可能であり、設定された遅延時間を用いて連動制御を実行するものである。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、火災信号を出力した機器に連動して動く連動機器の遅延制御の実行に適した機器操作盤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る機器操作盤に相当する火災受信機を含む自動火災報知設備の全体構成図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る機器操作盤としての火災受信機を含む自動火災報知設備の全体構成を示した図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る制御処理部において遅延制御を実施する際に用いられる遅延時間設定テーブルの具体例を示した説明図である。
【
図4】本開示の実施の形態1に係る制御処理部において遅延制御を実施する際に用いられ、1つの機器に対して2種類の遅延時間を割り付け可能な遅延時間設定テーブルの具体例を示した説明図である。
【
図5】本開示の実施の形態1に係る制御処理部においてケース1の遅延制御を実施する際に用いられる遅延時間設定テーブルの具体例を示した説明図である。
【
図6】本開示の実施の形態1に係る制御処理部においてケース2の遅延制御を実施する際に用いられる遅延時間設定テーブルの具体例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の機器操作盤の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る機器操作盤は、タイマーリレーの追加作業を不要とし、所望の遅延時間をデータ設定することにより容易に連動機器の遅延制御を実現できることを技術的特徴とするものである。なお、以下では、機器操作盤の一例を火災受信機として、火災受信機を備えた自動火災報知設備を具体例として、詳細な説明を行うこととする。
【0016】
実施の形態1.
まず始めに、自動火災報知設備の全体像について説明する。
図1は、本開示の実施の形態1に係る機器操作盤に相当する火災受信機を含む自動火災報知設備の全体構成図である。火災受信機10は、信号線SG1を介して、アドレッサブル発信機20、火災感知器31、32、感知器用中継器40、および防排煙制御用中継器50と接続されている。
【0017】
感知器用中継器40には、火災感知器が複数台接続されている。
図1では、感知器用中継器40に対して2台の火災感知器41、42が接続されている場合を例示している。また、防排煙制御用中継器50には、防火戸51、排煙機52、シャッタ53、およびたれ壁54が接続されている。
【0018】
また、火災受信機10は、信号線SG2を介して、音響装置61、62、および音響装置用中継器70と接続されている。さらに、音響装置用中継器70には、音響装置が複数台接続されている。
図1では、音響装置用中継器70に対して2台の音響装置71、72が接続されている場合を例示している。
【0019】
また、火災受信機10は、非常放送盤80とも接続されている。非常放送盤80には、スピーカが複数台接続されている。
図1では、非常放送盤80に対して2台のスピーカ81、82が接続されている場合を例示している。
【0020】
ここで、火災感知器31、32、および火災感知器41、42は、あらかじめ設定されたそれぞれの火災監視エリアにおいて火災の発生を感知する複数の火災感知器に相当する。複数の火災感知器により感知器群が構成される。
【0021】
また、防火戸51、排煙機52、シャッタ53、およびたれ壁54は、複数の火災感知器のそれぞれの感知結果と連動して動作し、火災、煙等の拡散を防止するために機能する複数の防排煙設備に相当する。複数の防排煙設備により、防排煙設備群が構成される。
【0022】
また、音響装置61、62、および音響装置71、72は、あらかじめ設定されたそれぞれの地区において火災の発生を報知する複数の地区音響装置に相当する。複数の地区音響装置により、音響設備群が構成される。
【0023】
また、スピーカ81、82は、あらかじめ設定されたそれぞれの地区において火災の発生、避難誘導などのメッセージ出力を行う複数の放送設備に相当する。複数の放送設備により、放送設備群が構成される。
【0024】
複数の火災感知器のそれぞれは、個々の火災感知器を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。そして、複数の火災感知器のそれぞれは、火災を感知した場合には、自身に割り付けられたアドレス情報を含めた信号として、火災信号を火災受信機10に対して送信することができる。一方、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、所望の火災感知器に対して必要な情報を送信することができる。
【0025】
また、複数の防排煙設備のそれぞれにも、個々の防排煙設備を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。従って、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、所望の防排煙設備を稼働させる起動指令を送信することができる。
【0026】
また、複数の音響装置のそれぞれにも、個々の音響装置を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。従って、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、所望の音響装置を鳴動させる起動指令を送信することができる。
【0027】
さらに、複数の放送設備のそれぞれにも、個々の放送設備を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。従って、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、非常放送盤80を介して、所望の放送設備から所望の音声メッセージを出力させる起動指令を送信することができる。
【0028】
このような構成により、火災受信機10は、あらかじめ決められた種々の火災監視エリアに設置されている複数の火災感知器、およびアドレッサブル発信機20から火災信号を収集する。そして、火災受信機10は、収集した火災信号に基づいて、火災警報を行うとともに、防排煙設備群を作動させることができる。
【0029】
また、火災受信機10は、収集した火災信号に基づいて、警報が必要な地区に設置された音響装置のベルを鳴動させることができ、音声メッセージによる避難誘導が必要な地区に設置された放送設備から所望の音声メッセージを出力させることができる。なお、複数の音響装置のそれぞれ、および複数の放送設備のそれぞれは、どの火災感知器の感知結果と連動して動作するかがあらかじめ規定されている。
【0030】
また、図示は省略しているが、火災受信機10は、収集した火災信号に基づいて、移報信号を出力し、消火設備を起動して消火作業を開始したり、ネットワークを介して上位装置に対して火災信号を伝送したりすることができる。
【0031】
本実施の形態1において、
図1に示した感知器群およびアドレッサブル発信機20は、火災が発生したことを知らせる火災信号を出力する複数の火災検出機器に相当する。また、
図1に示した防排煙設備群、音響設備群、放送設備群に含まれる各防災機器は、火災信号を出力した火災検出機器に連動して、火災受信機10からの起動指令により連動動作をする複数の連動機器に相当する。
【0032】
また、
図1では図示を省略したが、消火設備および上位装置は、火災検出機器から火災信号が収集されることで、火災受信機10からの移報信号(起動指令に相当)により連動動作をする機器に相当する。そこで、本開示においては、消火設備および上位装置についても、火災受信機10からの起動指令により連動動作をする連動機器に含まれる。
【0033】
冒頭でも説明したように、連動機器のうち、特に防排煙機器に関しては、火災信号を受信してからある遅延時間が経過した後に起動を行う遅延制御か行われることがある。本実施の形態1に係る火災受信機10は、遅延制御対象である連動機器への起動指令の出力線であるDC24Vラインにタイマーリレーを追加することなしに、遅延制御を実現できる機能を備えている点に技術的特徴を有している。
【0034】
そこで、以下では、
図2~
図4を用いて、本開示に特有の遅延制御機能について詳細に説明する。
図2は、本開示の実施の形態1に係る機器操作盤としての火災受信機を含む自動火災報知設備の全体構成を示した図である。
【0035】
図2では、各構成に対して以下のような符号を付して分類している。
火災受信機100:機器操作盤の一例であり、制御処理部101および記憶部102を含んで構成される。先の
図1における火災受信機10に相当する。
【0036】
火災検出機器200:火災信号を出力する機器であり、発信器群201および感知器群202を含んで構成される。先の
図1におけるアドレッサブル発信機20および感知器群に相当する。
【0037】
非遅延制御対象の連動機器300:火災信号を出力した火災検出機器200と連動して動く連動機器の中で、遅延制御の対象とならない機器の一例であり、上位装置301、消火設備302、放送設備群303、および音響設備群304を含んで構成される。先の
図1における放送設備群および音響設備群に相当する。
【0038】
遅延制御対象の連動機器400:火災信号を出力した火災検出機器200と連動して動く連動機器の中で、遅延制御の対象となる機器の一例であり、防排煙設備群401を含んで構成される。先の
図1における防排煙設備群に相当する。
【0039】
防排煙制御用中継器500:火災受信機100から出力された起動指令を防排煙設備群401に伝達するための中継器である。先の
図1における防排煙制御用中継器50に相当する。
【0040】
なお、以下では、遅延制御対象の連動機器400を、防排煙設備群401として説明するが、ユーザの火災監視対象に応じて、
図2において非遅延制御対象の連動機器300に含まれている連動機器を、遅延制御対象の連動機器400に含め、遅延制御の対象とすることも可能である。
【0041】
非遅延制御対象の連動機器300および遅延制御対象の連動機器400に含まれている各連動機器は、どの火災検出機器に連動して動作するかが、あらかじめ連動テーブルとして規定されているものとする。
【0042】
遅延制御を実現できる機能は、火災受信機100内の制御処理部101および記憶部102で実現される。そこで、制御処理部101および記憶部102の機能を中心に、以下に説明する。
【0043】
制御処理部101は、火災検出機器200のいずれかから火災信号を受信した場合には、連動テーブルを参照することで、非遅延制御対象の連動機器300および遅延制御対象の連動機器400内の複数の連動機器の中から、連動して動く機器を特定して起動させる連動制御を実行する。
【0044】
制御処理部101は、非遅延制御対象の連動機器300に対しては、連動テーブルを参照して特定した機器に対して、第1の起動指令を直ちに出力することで、連動制御を実行する。
【0045】
一方、制御処理部101は、遅延制御対象の連動機器400に対しては、連動テーブルを参照して特定した機器に対して、0sec以上の値として機器ごとに個別設定された遅延時間を用いて、遅延時間が経過した後に第2の起動指令を出力することで、連動制御を実行する。
【0046】
換言すると、制御処理部101は、遅延制御対象の連動機器400に対しては、連動テーブルによって、連動時間を実行するまでの遅延時間を設定しておくことができる。
【0047】
すなわち、制御処理部101は、複数の連動機器のそれぞれについて、連動制御を実行するまでの遅延時間を0秒以上の値として記憶部102にあらかじめ個別設定可能であり、個別設定された遅延時間を用いて連動制御を実行する機能を有している。
【0048】
なお、
図2に示したように、防排煙制御用中継器500を用いる場合には、制御処理部101から出力された第2の起動指令が、防排煙制御用中継器500によって中継され、第3の起動指令として遅延制御対象の連動機器400に伝達されることとなる。
【0049】
次に、遅延時間の具体的な設定方法について、
図3および
図4を用いて説明する。
図3は、本開示の実施の形態1に係る制御処理部101において遅延制御を実施する際に用いられる遅延時間設定テーブルの具体例を示した説明図である。
【0050】
記憶部102には、防排煙設備群401に含まれるそれぞれの機器と、遅延時間とが対応付けられた遅延時間設定テーブルが、記憶されている。
図3に例示した遅延時間設定テーブルでは、監視対象エリアに設置されている防排煙設備を、階床および防火区画と関連付けて特定し、それぞれの機器に対する遅延時間を個別設定可能としている。
【0051】
このような遅延時間設定テーブルを活用することで、制御処理部101は、いずれかの火災検出機器200から火災信号を受信した場合には、次の手順で起動指令を出力することとなる。
【0052】
<手順1:連動して起動すべき機器の特定処理>
制御処理部101は、火災検出機器200に含まれるいずれかの機器から火災信号を受信した場合には、連動テーブルを参照することで、複数の連動機器の中から連動して起動すべき機器を特定する。なお、連動テーブルは、記憶部102に記載させておくことができる。
【0053】
<手順2:非遅延制御対象の連動機器300に対する起動指令の出力処理>
制御処理部101は、手順1で特定した連動して動くべき機器のうち、非遅延制御対象の連動機器300に含まれる機器に対して、第1の起動指令を出力する。この結果、第1の起動指令を受信した機器は、火災信号に連動して直ちに動作することとなる。
【0054】
<手順3:非遅延制御対象の連動機器300に対する起動指令の出力処理>
制御処理部101は、手順1で特定した連動して動くべき機器のうち、遅延制御対象の連動機器400に含まれる機器に対しては、対応する遅延時間を、遅延時間設定テーブルを参照することで抽出し、遅延時間が経過した後に第2の起動指令を出力する。この結果、第2の起動指令を受信した機器は、火災信号に連動して、遅延時間の経過後に動作することとなる。
【0055】
なお、
図2に示したように、防排煙制御用中継器500を用いる場合には、制御処理部101から出力された第2の起動指令が、防排煙制御用中継器500によって中継され、第3の起動指令として遅延制御対象の連動機器400に伝達される。
【0056】
遅延時間が0.0secとして設定されている機器は、火災信号に連動して直ちに動作することとなる。また、遅延時間が0.0secよりも大きな値として設定されている機器は、火災信号に連動して、所望の遅延時間が経過後に動作することとなる。
【0057】
このようにして、それぞれの遅延制御対象の連動機器400に対して個別に設定可能な遅延時間が規定された遅延時間設定テーブルを記憶部102に記憶させておくことで、制御処理部101は、所望の遅延時間が経過した後に、遅延制御対象の連動機器400を駆動させることができる。
【0058】
この結果、連動機器への起動指令の出力線であるDC24Vラインにタイマーリレーを追加することなしに、連動機器の遅延制御を実行することができる。
【0059】
なお、
図3では、1つの機器に対して1つの遅延時間を割り付け可能な遅延時間設定テーブルを示したが、1つの機器に対して条件に応じて複数の遅延時間を割り付け可能な遅延時間設定テーブルを用いることも可能である。
【0060】
図4は、本開示の実施の形態1に係る制御処理部101において遅延制御を実施する際に用いられ、1つの機器に対して2種類の遅延時間を割り付け可能な遅延時間設定テーブルの具体例を示した説明図である。なお、1つの機器に対して3種類以上の遅延時間を割り付けることも可能である。
【0061】
図4に示した遅延時間設定テーブルでは、遅延制御対象の連動機器400のそれぞれについて、条件Aが成立したときの遅延時間と、条件Bが成立したときの遅延時間の2種類が設定可能となっている。
【0062】
例えば、制御処理部101は、遅延制御対象の連動機器のそれぞれについて、火災信号の出力元の階床が、自身が設置されている階あるいは自身が設置されている階の直下階である場合には、条件Aが成立していると判断し、条件Aが成立いない場合には条件Bが成立したと判断することができる。
【0063】
すなわち、制御処理部101は、複数の連動機器のそれぞれに関して複数の条件のうちのどの条件を採用するかを、火災信号を発した火災検出機器の設置場所と、複数の連動機器のそれぞれの設置場所との関係に基づいて特定し、条件ごとに遅延時間が設定された遅延時間設定テーブルを参照することで、条件に合った遅延時間を抽出することができる。
【0064】
この結果、制御処理部101は、例えば、
図4中の1階Aゾーンに設置されている防火戸に関しては、火災信号の出力元が1階である場合には、条件Aとして設定された遅延時間30.0secを抽出し、火災信号の出力元が2階以上である場合には、条件Bとして設定された遅延時間60.0secを抽出し、遅延制御を実行することができる。
【0065】
このようにして、それぞれの遅延制御対象の連動機器400に対して、複数の条件に対して個別に設定可能な遅延時間が規定された遅延時間設定テーブルを記憶部102に記憶させておくことで、制御処理部101は、それぞれの機器に関して、成立した条件に応じて抽出された所望の遅延時間が経過した後に、遅延制御対象の連動機器400を駆動させることができる。
【0066】
この結果、連動機器への起動指令の出力線であるDC24Vラインにタイマーリレーを追加することなしに、連動機器の遅延制御を実行することができる。さらに、火災の発生場所などの条件に応じて、それぞれの連動機器ごとに所望のタイミングでの遅延制御を実行することができる。
【0067】
なお、
図3および
図4に示した遅延時間設定テーブルでは、単に遅延時間を数値設定する場合を例示したが、このような数値設定に限定されるものではない。例えば、1階のAゾーンにおいてコンベアが使用されているような場合には、コンベアが停止したことを外部から接点信号A1として読み取り、接点信号A1がON状態となった後の経過時間を数値として設定することも考えられる。
【0068】
すなわち、本開示に係る遅延時間設定テーブルは、外部からの信号として得られる条件が成立した後の経過時間を設定することもできる。
【0069】
また、保守点検モードとして動作確認作業を行う際の遅延時間を、通常の監視モードでの遅延時間よりも短く設定して、例えば条件Cとして設定しておくことで、動作確認作業を、より短時間で実施することができる。
【0070】
また、上述した実施の形態1では、制御処理部101から出力する第2の起動指令を、所望の遅延時間が経過した後に出力する場合について説明したが、このような遅延制御に限定されるものではない。
【0071】
図2に示したように、防排煙制御用中継器500を用いる場合には、遅延制御を実行する機能を防排煙制御用中継器500に持たせる構成とすることも可能である。このような構成を採用する場合には、制御処理部101からは遅延時間を持たない形で第2の起動指令を出力し、防排煙制御用中継器500において、第2の起動指令を受信してから遅延時間が経過後に第3の起動指令を転送することとなる。
【0072】
なお、
図3および
図4では、それぞれの連動機器について、個別に遅延時間を設定する場合について説明したが、あるグループごとに、一律の遅延時間を設定できるようにすることも考えられる。そこで、グループごとに遅延時間を設定する具体例として、2つのケースを以下に説明する。
【0073】
<ケース1:連動元の火災検出機器ごとに同じ遅延時間を設定する場合>
各連動機器は、どの火災検出機器と連動して動作するかが、連動テーブルによってあらかじめ規定されていることを説明した。そこで、例えば、連動元のある火災検出機器Aに対して防火戸、排煙機、シャッタの3つの連動機器が連動テーブルとして設定されていた場合を考える。
【0074】
このような場合には、これら3つの連動機器に対して、同じ遅延時間を一律で設定することができるように、遅延時間設定テーブルを作成することが考えられる。換言すると、連動元となる火災検出機器ごとに遅延時間を設定できる遅延時間設定テーブルを参照することで、制御処理部101は、火災が発生したことを知らせる火災信号を出力した連動元の火災検出機器に対応して連動動作を行うすべての連動機器について、同一の遅延時間を用いた連動制御を実行することができる。
【0075】
図5は、本開示の実施の形態1に係る制御処理部101においてケース1の遅延制御を実施する際に用いられる遅延時間設定テーブルの具体例を示した説明図である。
図5に示した遅延時間設定テーブルを用いた場合には、連動元の火災検出機器ごとに遅延時間を設定することができる。
【0076】
図5に示した遅延時間設定テーブルを参照することで、制御処理部101は、例えば、1階のAゾーンに設置された火災感知器が連動元の火災検出機器として火災信号を出力した場合には、連動テーブルによって当該火災感知器に対応付けて連動動作するように設定されているすべての連動機器に関して、一律で10.0秒の遅延時間を用いて遅延制御を実行することとなる。
【0077】
<ケース2:連動機器の種別ごとに同じ遅延時間を設定する場合>
図3、
図4で説明したように、連動制御の対象となる連動機器は、防火戸、排煙機、シャッタ、たれ壁といった種別に分類される。このような種別に関して、例えば、防火戸だけは一律の遅延時間を設定したい場合を考える。
【0078】
このような場合には、連動元の火災検出機器に関係なく、すべての防火戸に対して、同じ遅延時間を一律で設定することができるように、遅延時間設定テーブルを作成することが考えられる。換言すると、連動機器の種別ごとに遅延時間を設定できる遅延時間設定テーブルを参照することで、制御処理部101は、連動機器の種別ごとに同一の遅延時間を用いた連動制御を実行することができる。
【0079】
図6は、本開示の実施の形態1に係る制御処理部101においてケース2の遅延制御を実施する際に用いられる遅延時間設定テーブルの具体例を示した説明図である。
図6に示した遅延時間設定テーブルを用いた場合には、連動機器の種別ごとに遅延時間を設定することができる。
【0080】
図6に示した遅延時間設定テーブルを参照することで、制御処理部101は、例えば、たれ壁を連動機器として動作させる場合に関して、一律で10.0秒の遅延時間を用いて遅延制御を実行することとなる。
【0081】
以上のように、実施の形態1によれば、遅延制御対象の連動機器に関して、起動指令を出力する際の遅延時間を個別設定できる。この結果、火災信号を出力した機器に連動して動く防排煙機器などの連動機器を実施する際に、ハードウェアであるタイマーリレー等の追加作業を不要として、遅延制御を実行できる機器操作盤を実現することができる。
【0082】
また、用途に応じて、複数の条件分けにより、それぞれの連動機器ごとに複数の遅延時間を設定することができる。この結果、タイマーリレーの追加では、1つの遅延時間しか対応できなかったが、成立した条件に応じて、あらかじめ設定された複数の遅延時間の中から、状況に応じて適切な遅延時間を用いて連動機器の遅延制御を行うことができる。
【0083】
さらに、連動元の火災検出機器ごとに同じ遅延時間を設定できる遅延時間設定テーブル、あるいは、連動機器の種別ごとに同じ遅延時間を設定できる遅延時間設定テーブルを用いることで、それぞれの連動機器について個別に遅延時間を設定する代わりに、あるグループごとに一律の遅延時間を用いて遅延制御を行うことができる。
【0084】
特に、
図3~
図6に示した種々の遅延時間設定テーブルに関しては、制御処理部101によってどのテーブルを有効化して参照するかを切り替え設定できるようにしておくことで、ユーザの火災監視対象に応じて適切な遅延時間設定テーブルに基づく遅延制御を行うことが可能となる。
【0085】
従って、本開示に係る機器操作盤を適用することで、種々の監視環境に応じて、適切な防災システムを構築することができる。
【符号の説明】
【0086】
10、100 火災受信機、20 アドレッサブル発信機、31、32、41、42 火災感知器、40 感知器用中継器、50、500 防排煙制御用中継器、51 防火戸、52 排煙機、53 シャッタ、54 たれ壁、61、62、71、72 音響装置、70 音響装置用中継器、80 非常放送盤、81、82 スピーカ、101 制御処理部、102 記憶部、200 火災検出機器、201 発信器群、202 感知器群、300 非遅延制御対象の連動機器、301 上位装置、302 消火設備、303 放送設備群、304 音響設備群、400 遅延制御対象の連動機器、401 防排煙設備群、500 防排煙制御用中継器。