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特開2024-168048木造建築物の躯体構造およびその構築方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168048
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】木造建築物の躯体構造およびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/26 20060101AFI20241128BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E04B1/26 G
E04B1/26 E
E04B1/58 509E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084441
(22)【出願日】2023-05-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】591000757
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 出
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AC24
2E125CA01
2E125CA77
(57)【要約】
【課題】接合金物に頼らずに簡素な構成で垂直材と水平材の接合部の単純化をはかる。
【解決手段】垂直材12と水平材13における互い接合しあう接合部14を組んで構成される躯体構造において、垂直材12および水平材13を、一定幅の平板部51の一部に平面から直角に突出するリブ部52が一体化された異形構造材15で構成する。異形構造材15における平板部51とリブ部52の厚さは同一であり、異形構造材15の接合部14には、他の異形構造材15に接合するための凹凸部14aが添え木53を付して形成する。凹凸部14aのうちの、異形構造材15を切り欠いた形状に形成される一部の凹凸部14aは、異形構造材15における平板部51またはリブ部52の少なくともいずれか一方を平板部51とリブ部52の厚さ単位の長さで切り欠いた形状である。そして、互いに接合しあう凹凸部14aを、互いに補完しあう形に形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直材と水平材における互い接合しあう接合部を組んで構成される躯体構造であって、
垂直材および水平材が、一定幅の平板部の一部に平面から直角に突出するリブ部が一体化された異形構造材で構成され、
前記異形構造材における前記平板部と前記リブ部の厚さが同一であり、
前記異形構造材の接合部に、他の前記異形構造材に接合するための凹凸部が添え木を付して形成され、
前記凹凸部のうちの、前記異形構造材を切り欠いた形状に形成される一部の凹凸部が、前記異形構造材における前記平板部または前記リブ部の少なくともいずれか一方を前記平板部と前記リブ部の厚さ単位の長さで切り欠いた形状であり、
互いに接合しあう前記凹凸部が互いに補完しあう形に形成された
躯体構造。
【請求項2】
前記異形構造材における前記リブ部が前記平板部の幅方向の中間位置に形成された
請求項1に記載の躯体構造。
【請求項3】
前記リブ部の高さが前記平板部の厚さの「1」以上の整数倍である
請求項1または請求項2に記載の躯体構造。
【請求項4】
前記異形構造材における前記平板部の幅と、前記リブ部を有する部分の高さが同一である
請求項1または請求項2に記載の躯体構造。
【請求項5】
前記異形構造材の側面における接合部に接する位置に、接合される他の前記異形構造材の接合角度を直角に規制する直角三角形の直角矯正部材が固定された
請求項1または請求項2に記載の躯体構造。
【請求項6】
請求項5に記載の躯体構造を構築する躯体構造の構築方法であって、
上下方向における下に位置する水平材としての前記異形構造材の接合部どうしを接合するとともに、一部の前記異形構造材に固定されている前記直角矯正部材で互いの直角を出して下枠組み部を構成したのち、
垂直材としての前記異形構造材の下端における接合部を前記下枠組み部の接合部に接合するとともに、一部の前記異形構造材に固定されている前記直角矯正部材で互いの直角を出して垂直支持部を構成し、
その後に、上下方向における上に位置する水平材としての前記異形構造材の接合部どうしを接合するとともに前記垂直支持部の上端の接合部に接合して、一部の前記異形構造材に固定されている前記直角矯正部材で互いの直角を出して上枠組み部を構成する
躯体構造の構築方法。
【請求項7】
垂直材としての前記異形構造材の上下両端の接合部に接する位置に、接合されるすべての水平材である前記異形構造材に接する前記直角矯正部材が固定された
請求項6に記載の躯体構造の構築方法。
【請求項8】
請求項6に記載の躯体構造の構築方法が、下から上へ繰り返し実行される
躯体構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木造建築物の躯体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造建築物の構法のひとつに在来軸組み構法がある。これは、柱などの垂直材と土台や梁などの水平材を組んで躯体を構成するものである。
【0003】
垂直材と水平材の接合等には継手・仕口が利用されるが、その種類は豊富であるうえに、正確な加工が難しい。このため、接合金物を用いての継手・仕口の単純化が行われている(たとえば下記特許文献1など)。
【0004】
つまり、接合金物を用いることによって、複雑で精緻な木材加工を不要している。接合金物を用いると継手・仕口の単純化がはかれ、一定の接合強度が得られる。しかし、多様な接合金物に応じた木材加工は必要である。
【0005】
継手・仕口の単純化よりも進んで、仕口加工を省略できる技術が、下記特許文献2に開示されている。この構成は、一対の通し柱の間に横架材を挟み込んだ状態で横架材と通し柱とを相互に接合するというものである。通し柱は角材からなる複数本の単一柱で構成され、横架材は角材からなる複数本の単一梁で構成されている。
【0006】
このため、仕口加工は不要であるものの、それぞれ複数の角材らかなる横架材と通し柱とを相互に接合するために、多数のボルトナットが必要である。しかも、ボルト留めしなければ組んだ状態が得られないので、接続作業は容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第7089822号公報
【特許文献2】特開平11-100899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、熟練性を要せずに躯体を構成可能にするため、接合金物に頼らずに簡素な構成で垂直材と水平材の接合部の単純化をはかることを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、この発明は下記の躯体構造を提供する。
【0010】
すなわち、その躯体構造は、垂直材と水平材における互い接合しあう接合部を組んで構成される躯体構造であって、垂直材および水平材が、一定幅の平板部の一部に平面から直角に突出するリブ部が一体化された異形構造材で構成される。異形構造材における平板部とリブ部の厚さは同一であり、異形構造材の接合部に、他の異形構造材に接合するための凹凸部が添え木を付して形成される。凹凸部のうちの、異形構造材を切り欠いた形状に形成される一部の凹凸部は、異形構造材における平板部またはリブ部の少なくともいずれか一方を平板部とリブ部の厚さ単位の長さで切り欠いた形状である。そして、互いに接合しあう凹凸部は、互いに補完しあう形に形成されている。つまり、互い接合しあう凹凸部は、隙間なく、かつ過不足なく接合して、一定形状の中実な接合部分を構成する。
【0011】
この構成では、垂直材および水平材として躯体を構成する異形構造材の接合部が互いに接合しあうとき、それら平板部とリブ部と添え木とからなる凹凸部は、互いに補完しあい、組んだ状態が得られる。互いに組み合った凹凸部は、別体の釘やねじ、接合金物等で固定される。そして、凹凸部のうち、異形構造材を切り欠いた形状に形成される一部の凹凸部は、別の凹凸部との組み合わせで得られる部分を含めて、同一厚さの平面部またはリブ部の少なくともいずれか一方を、平面部とリブ部の厚さを単位として切り欠かいた形状である。このため、互い補完し合う形状の凹凸部は、接合態様に応じてパターン化され得る。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、異形構造材が平板部と、平板部とは方向性を異にするリブ部が一体化された構成であり、厚さを同じくする平板部とリブ部の厚さを単位長さとして互い補完しあう凹凸部を形成した構成である。このため、接合部は接合金物等で接合せずとも組んだ状態が得られる。しかも、比較的密な接合ができる。このため、前述のような接合部を有する異形構造材は、ボルト留めしなければ組んだ状態が得られないものとは異なり、接合作業がしやすい。
【0013】
そのうえ、接合部の接合状態は接合金物に頼らない構成である。つまり、接合金物を選ばないので、接合金物に応じた木材加工も不要である。この点でも、接合作業が容易である。
【0014】
そして、異形構造材を用いるとともに、それを構成する平板部とリブ部の厚さを単位長さとして凹凸部を形成しているので、接合箇所に応じた凹凸部を規則的に得ることができ、異形構造材の規格化・部品化が可能である。
【0015】
加えて、接合部の凹凸部は互いに補完しあう形であるので、隙間なしにすべての異形構造材を接合できる。構成された躯体は、異形構造材を構成する平板部とリブ部の双方において、方形状をなす複数の環状部を有することになる。このため、躯体の強度を確保できる。しかも、異形構造材は平板部とリブ部と添え木で構成されるので、長さ方向の全体において横断面を方形とする場合よりも木材の使用量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】躯体構造の斜視図。
図2】躯体構造の分解斜視図。
図3】異形構造材の基本構造を示す斜視図。
図4】凹凸部の斜視図。
図5】直角矯正部材の一部破断斜視図。
図6】直角矯正部材の取付け態様を示す平面図と側面図。
図7】躯体構造の構築過程を示す斜視図。
図8】躯体構造の構築過程を示す斜視図。
図9】水平材と垂直材の接合の仕方を示す側面図。
図10】水平材と垂直材の接合の仕方を示す平面図。
図11】水平材と垂直材の接合の仕方を示す側面図。
図12】水平材と垂直材の接合の仕方を示す一部断面平面図。
図13】水平材と垂直材の接合の仕方を示す側面図。
図14】水平材と垂直材の接合の仕方を示す平面図。
図15】水平材と垂直材の接合の仕方を示す一部断面側面図。
図16】水平材と垂直材の接合の仕方を示す一部断面平面図。
図17】躯体構造の構築過程を示す斜視図。
図18】躯体構造の構築過程を示す斜視図。
図19】躯体構造の構築過程を示す斜視図。
図20】躯体構造の異形構造増による接続状態を示す概略断面図。
図21】躯体構造の異形構造増による接続状態を示す概略断面図。
図22】他の例に係る異形構造材の基本構造を示す斜視図。
図23図22の異形構造材を用いた水平材と垂直材の平面図。
図24図22の異形構造材を用いた水平材と垂直材の接合の仕方を示す側面図。
図25図22の異形構造材からなる垂直材の凹凸部を示す斜視図。
図26図22の異形構造材を用いた平材と垂直材の接合の仕方を示す一部断面平面図。
図27図22の異形構造材を用いた水平材と垂直材の接合の仕方を示す平面図。
図28図22の異形構造材を用いた水平材と垂直材の接合の仕方を示す側面図。
図29図22の異形構造材からなる垂直材の凹凸部を示す斜視図。
図30図22の異形構造材を用いた平材と垂直材の接合の仕方を示す平面図。
図31図22の異形構造材を用いた平材と垂直材の接合の仕方を示す一部断面平面図。
図32】他の例に係る異形構造材の基本構造を示す斜視図。
図33図32の異形構造材を用いた水平材と垂直材の平面図。
図34図32の異形構造材を用いた水平材と垂直材の接合の仕方を示す側面図。
図35図32の異形構造材からなる垂直材の凹凸部を示す斜視図。
図36図32の異形構造材を用いた平材と垂直材の接合の仕方を示す一部断面平面図。
図37図22の異形構造材を用いた平材と垂直材の接合部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0018】
図1に、躯体構造11の1階部分の一例を斜視図で示す。なお、図面では、理解の便宜上、小さめに、言い換えれば、軸となる材料を太めに描いている。
【0019】
躯体構造11は、軸となる垂直材12と水平材13における互い接合しあう接合部14を組んで構成されている。図1に例示の躯体は、2個の立方体の枠を連ねて一体にした形状である。図2に、その躯体構造11の分解斜視図を示す。
【0020】
垂直材12と水平材13には異形構造材15が用いられる。異形構造材15は、図3の(a)に示したように、一定幅wの平板部51の一部にその平面から直角に突出するリブ部52が一体化された構成の材料である。図示例では、平板部51とリブ部52の厚さtを同一にし、横断面形状を「T」字状(T型)とした。すなわち、リブ部52が平板部51の幅方向の中間位置に形成されている。リブ部52の高さhは適宜設定され得るが、平板部51の厚さt(これはリブ部52の厚さtし同じ)の「1」以上の整数倍とするとよい。
【0021】
平板部51の幅wと厚さtは、軸としての垂直材12と水平材13の規模に応じて、つぎのように定めるとよい。垂直材12と水平材13の規模、言い得れば、正方形または長方形の横断面形状を想定した場合に、その一辺の長さを幅wとし、その幅wの値の約数に等しい値を厚さtとする。一例として、厚さtを幅wの3分の1の値とすることができる。この場合、正方形の横断面形状を想定するときは、リブ部52の高さhを厚さtの2倍とする。
【0022】
具体的には、たとえば、異形構造材15を90mm角の軸と同じように使用できるものとする場合には、厚さt×幅wが30mm×90mmの平板部51と、厚さt×高さhが30mm×60mmのリブ部52を一体化する。105mm角の軸と同等する場合には、35mm×105mmの平板部51と35mm×70mmのリブ部52を、120mm角の場合には40mm×120mmの平板部51と40mm×80mmのリブ部52を、150mm角の場合には50mm×150mmの平板部51と50mm×100mmのリブ部52を、180mm角の場合には60mm×180mmの平板部51と60mm×120mmのリブ部52を一体化する。このように、リブ部52の高さhを厚さtの2倍とすると、異形構造材15における平板部51の幅wと、リブ部52を有する部分の高さh2が同一となり、正方形の横断面が想定できる。
【0023】
長方形の横断面を想定する異形構造材15の場合には、前述のようにリブ部52の高さhを厚さtの2倍とするのではなく、1倍とするか、「3」以上の整数倍にするとよい。
【0024】
このような構造を基本とする異形構造材15の接合部14に、凹凸部14aが形成される。凹凸部14aは、他の異形構造材15に対して接合するための構成である。凹凸部14aの形成には、図3の(b)に示したように、添え木53が付される。添え木53は、いわば異形構造材15の基本の横断面形状と想定される横断面形状とのギャップを埋めるものであり、添え木53を付して一体化することによって、添え木53を有する部分の横断面形状が想定される横断面形状、たとえば正方形や長方形となる。
【0025】
平板部51の厚さtはその幅wの3分の1であり、リブ部52の厚さtは平板部51の厚さtと同じ、リブ部52の高さhは、厚さtの1以上の整数倍であるので、添え木53の横断面形状の縦横長さも、それらと同じように、tの値を基準にした値となる。
【0026】
図1図2に示したように図示例の躯体構造11では、異形構造材15の両端部に接合部14が形成されているが、長手方向の中間部等に形成されてもよい。なお、接合部14とは異形構造材15どうしが互いに接合しあう部分であり、接合部14は、異形構造材15の長手方向およびそれに直交する方向において、接合される他の異形構造材15と重なり合う部分である。たとえばL字状の2方接続の場合、接合部14は、接合状態における端から異形構造材15が延びる2方に異形構造材15の幅(平板部51の幅w)と同じ長さ離れた位置までの領域となる。3本の異形構造材15をT字状に接続する3方接続の場合には、接合部14は、接合状態におけるI型をなす2本の異形構造材15に対して直交する1本の異形構造材15における長手方向と直交する方向の長さ(平板部51の幅w)に対応する領域となる。2本の異形構造材15をi型に接続する2方接続の場合には、2本の異形構造材15が互いにかみあっている領域である。
【0027】
凹凸部14aについて説明すると、凹凸部14aには大きく分けて2種類ある。一つは、前述した基本構造の横断面をそのまま露出した、図3の(b)に示した態様である。この場合、添え木53は接合部14に隣接して備えられ、添え木53における凹凸部14aがわの端面は、接合部14に当接する部分となる。添え木53の長さは適宜設定される。
【0028】
凹凸部14aの他の種類は、異形構造材15の基本構造を切り欠いた形状に形成されるものである。この場合、添え木53は、所望形状の凹凸部14aを形成できる位置に備えられる。その位置は、接合部14の領域内である場合と、領域外である場合がある。異形構造材15を切り欠いた形状に形成される一部の凹凸部14aは、異形構造材15における平板部51またはリブ部52の少なくともいずれか一方を平板部51とリブ部52の厚さtを基準(単位長さ)として切り欠いた形状に構成される。ここで言う、平板部51とリブ部52の厚さtを基準(単位長さ)として切り欠いた形状とは、異形構造材15単位ではなく、組み合わされた状態での凹凸部14a単位でのことを指す。つまり、凹凸部14aにおける切欠きに相当する部分54の長さは、凹凸部14aどうしを組合せ状態における長さである。このため、凹凸部14aどうしを突き合わせたりして組み合わせて構成される態様の凹凸部14aの場合に、片方の凹凸部14aに着目すると、その切欠きに相当する部分54の長さが単位長さの半分や、1.5倍などとなることもある。このほか、凹凸部14aの端面についてみると、少なくともその一部が、縦横長さをtとする直角二等辺三角の両端をつなぐ角度の傾きを長手方向に対して有する面となることもある。
【0029】
一部を切り欠いた形状に形成される凹凸部14aの一例を、図4の(a)~(d)に示す。
【0030】
図4(a)の凹凸部14aは、平板部51の端を、縦横長さをtとする直角二等辺三角の両端をつなぐ角度、つまり45度に切り落とした形状にしている。そして、その斜辺に沿って階段状になるようにリブ部52と2本の添え木53を、平板部51とリブ部52の厚さtと同じ長さずつ長手方向にずらした態様で並べた形状である。リブ部52と添え木53の端面は長手方向に対して直角であり、角を斜辺に合わせている。このため、平板部51におけるリブ部52等を有する面には、端の斜辺に沿って、1辺の長さが平板部51とリブ部52の厚さtと同じ直角二等辺三角形の面51a,51b,51cが3つ露出することなる。図中、厚さtとの区別を明確にするため、凹凸部14aを構成する部分の長さを示す表示を、上記の例であれば〈1・t〉というように、厚さtの何倍かを示す「1」以上の数と「・」を用いるとともに、山括弧(〈 〉)で囲って示す。以下同じである。このような凹凸部14aは、水平材13における妻側に配設される水平材13との接合部14に用いられる。
【0031】
図4(b)の凹凸部14aは、(a)の凹凸部14aの場合と同様に、平板部51の端を45度に切り落とした形状とするとともに、その斜辺から1本の添え木53の一部が突出するようにリブ部52と2本の添え木53を並べた形状である。斜辺から一部を突出させる添え木53とリブ部52の端面は面一であり、他の添え木53は、リブ部52の端から平板部51とリブ部52の厚さtと同じ長さだけ、端面よりも後退させた位置に設けられている。そして、リブ部52の端面における一部を突出させる添え木53側の角を斜辺に合わせている。これによって、添え木53の外側の角を中心とした直角二等辺三角の部分が斜辺から突出することになる。また、平板部51におけるリブ部52等を有する面には、平面視で2辺が〈2・t〉の長さの直角二等辺三角と1辺が〈1・t〉の長さの正方形を並べた形状の面51dが露出することになる。このような凹凸部14aは、水平材13における桁側に配設される水平材13のうちの、妻側の水平材13との接合部14に用いられる。
【0032】
図4(c)の凹凸部14aは、(a),(b)の凹凸部14aとは異なり、平板部51の端を長手方向に対して直角にした形状とするとともに、その端面よりも後退した位置にリブ部52と2本の添え木53を並べた形状である。リブ部52と添え木53は、リブ部52の幅方向の中間位置を境に左右対称であり、添え木53は、リブ部52の端面から〈1・t〉の長さ後退させた位置に設けられている。そして、リブ部52の端面は、平板部51の端面から〈0.5・t〉の長さ後退している。これによって、平板部51におけるリブ部52等を有する面には、幅が〈3・t〉の長さで、高さが〈1.5・t〉の長さで、一辺の長さが〈1・t〉の正方形の凹所を有する「凹」字状の51eが露出することになる。このような凹凸部14aは、水平材13における桁側に配設される水平材13のうちの、別の桁側の水平材13との接合部14に用いられる。
【0033】
図4(d)の凹凸部14aは、平板部51の端を長手方向に対して直角にした形状とするとともに、その端面よりも先方にリブ部52と添え木53を迫り出させた形状である。リブ部52と添え木53の先端部は、互いに同一形状であり、高さが〈2・t〉である。これらリブ部52と添え木53は、平板部51の端面から〈1・t〉の長さだけ突出した状態で固定されている。これによって、凹凸部14aの先端には、幅が〈3・t〉で厚さが〈2・t〉、突出長さが〈1・t〉の突片部を有することになる。このような凹凸部14aは、水平材13における妻側に配置される水平材13と平行に設けられる水平材13の接合部14に用いられる。
【0034】
図4(e)の凹凸部14aは、平板部51の端を長手方向に対して直角にした形状とするとともに、その端面と面一の位置と、端面よりも後退した位置にリブ部52と添え木53を並べた形状である。具体的には、リブ部52は、その端面側における平板部51とは反対側の角部分が、高さ方向に〈1・t〉の長さで、長手方向に〈2・t〉の長さの領域にわたって切り欠いた形状であって、段差部52aを有している。添え木53は、高さ方向が〈2・t〉の長さに形成されており、その端面がリブ部52の段差部52aと面一になるように備えられている。リブ部52の端面と平板部51の端面は面一である。これによって、平板部51におけるリブ部52等を有する面には、幅が〈1・t〉の長さで、長さが〈2・t〉の長方形の面51fが2個、リブ部52を挟んで露出することになる。また、リブ部52の端部における平板部51とは反対側の面に、同じく幅が〈1・t〉の長さで、長さが〈2・t〉の長方形の面52bが露出することになる。このような凹凸部14aは、垂直材12における水平材13との接合部14に用いられる。
【0035】
これらのような凹凸部14aのうち互いに接合しあう凹凸部14aは、互いに補完しあう形に形成されている。すなわち、互い接合しあう凹凸部14aは、隙間なく、かつ過不足なく接合して、複数の異形構造材15からなる接合部14に一定形状の中実な接合部分A1,A2(図1参照)を構成する。基本構造の横断面形状がT型であるものの添え木53を有する部分の横断面形状を正方形とする異形構造材15からなる接合部14では、立方体形状の接合部分A1,A2ができる。
【0036】
ここで、図1に例示の躯体における下に位置する水平材13群を下枠組み部11aとする。また、これらの上に建て込まれる垂直材12群を垂直支持部11b、垂直支持部11bの上に位置する水平材13群を上枠組み部11cとして、各部を構成する異形構造材15の接合部14について説明する。
【0037】
下枠組み部11aと上枠組み部11cを構成する異形構造材15は、同一である。共に、妻側の2本の水平材(妻側水平材31)と、桁側の2本ずつ合計4本の水平材(桁側水平材32)と、桁側水平材32どうしの間を接合する、妻側水平材31と平行な水平材(内部水平材33)で構成されている。
【0038】
妻側水平材31の両端の接合部14には、図4の(a)に示した凹凸部14aが形成されている。内部水平材33の両端の接合部14には、図4の(d)に示した凹凸部14aが形成されている。桁側水平材32の一方、すなわち妻側水平材31に接合される接合部14には、図4の(b)に示した凹凸部14aが、他方、すなわち桁側水平材32に接合される接合部14には図4の(c)に示した凹凸部14aが形成されている。
【0039】
垂直支持部11bを構成する異形構造材15は、出隅部に配置される4本の垂直材(出隅部垂直材21)と、桁側の中間部に配置される2本の垂直材(中間部垂直材22)で構成されている。
【0040】
出隅部垂直材21と中間部垂直材22の両端の接合部14には、図4の(e)に示した凹凸部14aが形成される。
【0041】
接合部14に凹凸部14aを有する異形構造材15は、側面における接合部14に接する位置に、接合される他の異形構造材15の接合角度を直角に規制する直角三角形の直角矯正部材16を一体に有している。
【0042】
直角矯正部材16は、図5に示したように、角材61と板材62を結合して構成されている。板材62は直角二等辺三角形状であり、この板材62の表裏両面における全周に角材61が固定され、板材62が角材61で挟まれた構造である。板材62の外周の端面と角材61の外側面は、主要な部分において面一である。主要な部分とは、直角をなす2辺x,yを有する面であり、たとえば45度をなす角において板材62の端が突出するのはかまわない。
【0043】
直角矯正部材16の直角をなす2辺x,yの長さは等しく、高さzは、異形構造材15の平板部51の幅wに等しい。
【0044】
直角矯正部材16は、水平材13としての異形構造材15については、妻側水平材31と内部水平材33における両端の接合部14に接する位置に備えられている。直角矯正部材16が固定される面は、桁側水平材32が接続される側の面である。垂直材12としての異形構造材15については、すべての垂直材12、つまり出隅部垂直材21と中間部垂直材22における両端の接合部14に接する位置に備えられている。直角矯正部材16が固定される面は、妻側水平材31と桁側水平材32が接続される側の面である。中間部垂直材22には、内部水平材33が接続される側の面にも、直角矯正部材16を備えてもよい。
【0045】
接合部14に接する位置について、具体的に説明する。接合部14は、前述のように、異形構造材15どうしが互いに接合しあう部分であるので、直角矯正部材16は異形構造材15に対して、その接合部14との境界に接する部分に直角矯正部材16の90度をなす角を位置させて固定される。図6にいくつかの例をあげる。図6の(a)に示した妻側水平材31では、その端部における〈3・t〉の長さの範囲が接合部14である。図中、一点鎖線が接合部14との接合部14以外の部分の境界を示す線(境界線L)である。このため、直角矯正部材16は、直角をなす角が境界線Lに接するように固定される。同じく、(b)の内部水平材33では、その端部における〈1・t〉の長さの範囲にある〈1・t〉厚で突出する突片部が接合部14である。直角矯正部材16は、直角をなす角が境界線Lに接するように固定される。(c)の出隅部垂直材21では、その端部における〈2・t〉の長さの範囲が接合部14である。直角矯正部材16は、直角をなす角が境界線Lと同じ位置に位置するように固定される。
【0046】
なお、これらの図にも示したように、添え木53は、直角矯正部材16の一体化にも資するものであり、添え木53の長さは、少なくとも直角矯正部材16の直角をなす2辺の長さよりも長く設定される。
【0047】
以上のような構成の異形構造材15からなる躯体構造11の構築方法を、必要に応じて凹凸部14aの形状の説明をしながら、次に説明する。
【0048】
構築方法は、まず、下枠組み部11aを構成する。すなわち、上下方向における下に位置する水平材13としての異形構造材(妻側水平材31と桁側水平材32と内部水平材33)の接合部14どうしを接合する。このとき、異形構造材15に固定されている直角矯正部材16で互いの直角を出す。その後、垂直材12としての異形構造材15(出隅部垂直材21と中間部垂直材22)の下端における接合部14を下枠組み部11aの接合部14に接合して、垂直支持部11bを構成する。このとき、異形構造材15に固定されている直角矯正部材16で互いの直角を出して、垂直材12としての異形構造材15を真っすぐに立てる。つづいて、上下方向における上に位置する水平材13としての異形構造材(妻側水平材31と桁側水平材32と内部水平材33)の接合部14どうしを接合するとともに垂直支持部11bの上端の接合部14に接合して、上枠組み部11cを構成する。このときも、異形構造材15に固定されている直角矯正部材16で互いの直角を出す、というものである。
【0049】
図7は下枠組み部11aを構成した状態を示し、図8は、垂直支持部11bの構成途中を示している。下枠組み部11aの構成に際しては、図9に示したように基礎等の平らな設置面Gの上に、妻側水平材31と内部水平材33を平行に並べるとともに、それらの両端の接合部14に、桁側水平材32の両端の接合部14を接合する。
【0050】
妻側水平材31と桁側水平材32の接合については、平板部51を下にして使用し、図9図10に示したように妻側水平材31の凹凸部14a(図4(a))を、桁側水平材32の凹凸部14a(図4(b))に突き合わせる。このとき、両者の平板部51における斜めの端面同士が当接しあい、桁側水平材32における平板部51の端面よりも突出している内側の添え木53の角部が、妻側の水平材31におけるリブ部52と内側の添え木53との間の二等辺三角形状の部分に嵌まる。そして、妻側水平材31の直角矯正部材16が桁側水平材32の側面に当接して、桁側水平材32の向きを妻側水平材31に対して直角にする。妻側水平材31と桁側水平材32の接合部14には、図10に示したように、横が〈3・t〉、縦が〈1・t〉の長方形に一辺が〈1・t〉の正方形が組み合わされた平面視「凸」字状、換言すればT型の凹凸部14aができる。
【0051】
このようにして組み合わせた水平材13に対して、出隅部垂直材21を組み合わせるには、図11に示したように出隅部垂直材21の下端の凹凸部14a(図4(e))を水平材13の接合部14に向けて下ろして、凹凸部14aどうしを組み合わせる。すると、妻側水平材31と桁側水平材32の凹凸部14aが構成する平面視「凸」字状、換言すればT型の凹凸部14aに、出隅部垂直材21の平板部51とリブ部52とからなる突出した凹凸部14aが嵌まる。添え木53の端面は水平材13の接合部14の上面に当接する。このとき、出隅部垂直材21に固定した直角矯正部材16が水平材13の上面に接して、出隅部垂直材21は起立する。
【0052】
図12は、妻側水平材31と桁側水平材32と出隅部垂直材21の凹凸部14aが組み合わされた状態における、出隅部垂直材21の接合部14との境界位置で切断した状態を示している。図中、仮想線が示すのは出隅部垂直材21の断面形状である。
【0053】
このように、3本の異形構造材15の接合部14からなる接合部分A1(図1参照)は、立方体形状をなし、忠実な構造となる。
【0054】
桁側水平材32どうしと内部水平材33との接合では、同じく平らな設置面G上において、図13に示したように、桁側水平材32と内部水平材33を置いて、凹凸部14aどうしを組み合わせる。図14に示したように、2本の桁側水平材32における接合しあう凹凸部14a(図4(c))の形は互いに同一である。これらの凹凸部14aが組み合わされてできる凹凸部14aは、平板部51どうしが当接しあい、リブ部52どうしの間には長さが〈1・t〉の間隔を有し、添え木53どうしの間には長さ〈3・t〉の間隔を有するH型である。添え木53どうしの間の空間のうち、内側に位置する部分に、内部水平材33の凹凸部14aが嵌まる。その状態を示す平面図が図14である。2本の桁側水平材32と1本の内部水平材33が組み合わされることによって、前述した妻側の角の接合部14の場合と同様に、平面視「凸」字状(T型)の凹凸部14aができる。
【0055】
このように組み合わせた3本の水平材13に対して、中間部垂直材22を組み合わせるには、図15に示したように中間部垂直材22の下端の凹凸部14a(図4(e))を桁側水平材32と内部水平材33からなる接合部14に向けて下ろす。そして、お互いの凹凸部14aどうしを組み合わせる。すると、3本の水平材13の凹凸部14aが構成する平面視「凸」字状、換言すればT型の凹凸部14aに、中間部垂直材22の平板部51とリブ部52とからなる突出した凹凸部14aが嵌まり、添え木53の端面が水平材13の接合部14の上面に当接する。このとき、出隅部垂直材21に固定した直角矯正部材16が水平材13の上面に接して、出隅部垂直材21は起立する。
【0056】
図16は、桁側水平材32と内部水平材33と中間部垂直材22の凹凸部14aが組み合わされた状態における、中間部垂直材22の接合部14との境界位置で切断した状態を示している。図中、仮想線が示すのは、中間部垂直材22の断面形状である。
【0057】
このように、4本の異形構造材15の接合部14からなる接合部分A2(図1参照)は、立方体形状をなし、忠実な構造となる。
【0058】
図17に、垂直支持部11bを構成した状態を示している。このように、下枠組み部11aの凹凸部14aに組み合わせた垂直材12は、凹凸部14aでかみあって互いに位置規制されるとともに、垂直材12の下端部に備えた直角矯正部材16の作用によって、下枠組み部11aの上に起立する。この状態は留め具なしに維持される。
【0059】
このあと、図18に示したようにして上枠組み部11cを垂直支持部11bの上に組み立てて、接合部14の固定を行う。上枠組み部11cを構成する異形構造材15は、下枠組み部11aと同じ構成であるので、上枠組み部11cの接合作業は下枠組み部11aと同様に行える。ただし、異形構造材15は平板部51を上にして使用する。接合部14の固定は、図示しない、ねじや釘、適宜の接合金物で行う。これによって、すべての接合部14を固定すると、軸材としての異形構造材15が互いに接合されて、躯体が完成する。
【0060】
このような構築方法は、いわゆるプラットフォーム工法であり、図19に示したように、前述の躯体構造11の構築方法が下から上へ繰り返し実行されると、2階建て等の躯体も構成できる。
【0061】
以上のように構成される躯体構造11は、垂直材12および水平材13となる異形構造材15の接合部14に、接合しあうと互いに補完しあう形の凹凸部14aが形成されているので、異形構造材15は固定せずとも組んだ状態が得られる。特に、垂直材12と必要な水平材13には直角矯正部材16が一体に備えられており、異形構造材15どうしを組むことによって、お互いの位置を正しい状態に定めることになる。つまり、水平方向においても垂直方向においても正しく直角を出せるので、垂直に延びる垂直材12や、水平にまっすぐ延びる水平材13が容易に得られる。このため、枠組み壁工法で必要とされている頭つなぎのような作業は不要である。この結果、異形構造材15の接合作業が行いやすい。しかも、凹凸部14aは互いに補完しあうものであるため、隙間なしに密な接合ができ、高い接合強度が得られる。
【0062】
さらに、接合部14の接合には特定の接合金物を用いる必要がない。つまり、接合部14に凹凸部14aがあれば、接合金物に応じた木材加工が不要であり、この点からも、接合作業の簡素化をはかれる。
【0063】
そして、軸材として、一定幅の平板部51の一部に平面から直角に突出するリブ部52を一体化するとともに、横断面形状を補い凹凸部14aの形成に寄与する添え木53を一体化した構成の異形構造材15を用いている。その接合部14における凹凸部14aについて、平板部51とリブ部52の厚さtを単位長さとして互い補完しあう形状としている。このため、接合箇所に応じた凹凸部14aを規則的に得ることができ、所望の異形構造材15が容易に製造できるうえに、異形構造材15の規格化・部品化が可能である。この結果、素人でも構成できる躯体やそのための部品を提供できる。
【0064】
特に、異形構造材15は、横断面形状がT型であることを基本構造として、必要な箇所に添え木53を備えた構造であるので、木材の使用量を低減することができる。このため、たとえば車庫や倉庫、物置などのような比較的簡易な建築物の躯体を構成するのに適している。
【0065】
基本構造の横断面形状が正方形や長方形ではないものの、異形構造材15は、平板部51と、平板部51の平面から直角のリブ部52で構成されているので、比較的高い強度を得られる。そのうえ、異形構造材15の接合部14における凹凸部が互い補完しあう形であるので、隙間なしにすべての異形構造材15を接合できる。構成された躯体において、異形構造材15を構成する平板部51とリブ部52は共に、図20図21の概略図に示すように、方形状をなす複数の環状部を有することになる。図20は、図21に示した躯体構造11のうちの組み立てられた異形構造材15の基本構造を妻側から見た垂直材12間の断面の概要であり、図21はそれを桁側から見た垂直材12間の断面の概要である。このように、すべての異形構造材15における平板部51とリブ部52は、互いに接合しあっている。この点からも、躯体の強度を確保できる。
【0066】
以上の例においては、異形構造材15の基本の横断面形状がT型である例を示したが、その他の形状であってもよい。その一例を次に説明する。この説明において、前述の構成と同一の構成については同一の符号をしてその詳しい説明を省略する。
【0067】
図22は、他の例に係る異形構造材15の基本構造を示す斜視図である。この異形構造材15は、一定幅wの平板部51における表裏両面の平面から直角に突出するリブ部52が一体化された構成を有している。リブ部52は、平板部51の幅方向の中間位置に形成されており、異形構造材15の横断面形状は十字状である。平板部51とリブ部52の厚さtは同一であり、リブ部52の高さhは、平板部51とリブ部52の厚さtの「1」以上の整数倍にするとよい。
【0068】
この異形構造材15に付される添え木53は角柱状であり、平板部51とリブ部52の間を埋めるよう設けられる。
【0069】
このような構成の異形構造材15を軸、すなわち垂直材12および水平材13として使用する躯体構造の接合部について、図23図31を用いて説明する。なお、平板部51の幅wは〈3・t〉で、2本のリブ部52の高さhは〈1・t〉としている。
【0070】
図23は、妻側水平材31と桁側水平材32の平面図である。この図に示すように、両者の接合部14の端は、縦横長さをtとする直角二等辺三角の両端をつなぐ角度、つまり45度に切り落とした形状にしている。つまり、妻側水平材31と桁側水平材32の端面同士を突き合せると、互いの角度が直角になる。添え木53は、斜めの端面よりも後退した位置で、かつ接合部14に接する位置に設けられている。なお、このように付される添え木53は、妻側水平材31と桁側水平材32における垂直材21が接続される側の面のみであって、その反対側の面については、斜めの端面に面一に設けられてもよい。
【0071】
図24に、それら妻側水平材31と桁側水平材32を妻側水平材31の方向から見た状態の側面図を示している。これらは設置面G上に並べられて、出隅部垂直材21が接合される。図25が出隅部垂直材21の凹凸部14aを示す斜視図である。出隅部垂直材21の凹凸部14aは、平面視L字型をなし、深さが〈1・t〉である凹所を有する形状である。凹所以外の部分は面一であり、一辺の長さが〈1・t〉の平面視正方形の小凸部と、一辺の長さが〈3・t〉の平面視L字状の大凸部を有する形状である。
【0072】
このような凹凸部14aを有する出隅部垂直材21は、図26に示したように、小凸部を妻側水平材31と桁側水平材32の突き合わせてできる平板部51の内側の凹所に、大凸部をそれよりも外側にできる外側の凹所に嵌められる。
【0073】
図27は、I型に接続される2本の桁側水平材32と、これらに対して直角に接続される内部水平材33の平面図である。この図に示すように、桁側水平材32の接合部14の端は、長手方向に対して直角であり、垂直材21が接続される側に、所望形状の凹凸部14aができるように添え木53が設けられている。その凹凸部14aは、内部水平材33が接続される側に、長さ〈3・t〉の凹所を、その反対側に長さ〈1・t〉の凹所を備える形状である。このため、添え木53は、それぞれ端面から〈1.5・t〉、〈0.5・t〉の長さ後退させて備えている。
【0074】
内部水平材33は、凹凸部14aが厚さtで幅〈3・t〉の突片部で構成されている。この突片部は、図28に示したように上下に1個ずつ配設されている。
【0075】
図28に、内部水平材33と桁側水平材32を、桁側水平材32の長手方向から見た状態の側面図を示している。これらは設置面G上に並べられて、中間部垂直材22が接合される。図29が中間部垂直材22の凹凸部14aを示す斜視図である。中間部垂直材22の凹凸部14aは、平板部51の幅方向の一端に、一辺の長さを〈1・t〉とする立方体形の凸部を有する形状である。凸部以外の部分は面一である。図29においては、理解の便宜上、添え木53は仮想線で示した。
【0076】
このような凹凸部14aを有する中間部垂直材22は、図30の平面図に示したように組み合わされた3本の水平材13からなる接合部14の凹凸部14aに対して嵌められる。すなわち、中間部垂直材22の凹凸部14aを構成する立方体形の凸部を、図31に示したように、桁側水平材32同士の間の外側に位置する長さ〈1・t〉の凹所に嵌める。すると、中間部垂直材22における凹凸部14a(凸部)の周りの平面が、3本の水平材13からなる接合部14に当接する。
【0077】
図32は、さらなる他の例に係る異形構造材15の基本構造を示す斜視図である。この異形構造材15は、図22の例と同様に、一定幅wの平板部51における表裏両面の平面から直角に突出するリブ部52が一体化された構成であるが、リブ部52が設けられる位置が異なっている。つまり、リブ部52は、平板部51の幅方向の端に形成されており、異形構造材15の横断面形状はH字状である。平板部51とリブ部52の厚さtは同一であり、リブ部52の高さhは、平板部51とリブ部52の厚さtの「1」以上の整数倍にするとよい。
【0078】
この異形構造材15に付される添え木53は角柱状であり、平板部51とリブ部52の間を埋めるよう設けられる。
【0079】
このような構成の異形構造材15を軸、すなわち垂直材12および水平材13として使用する躯体構造の接合部について、図33図37を用いて説明する。なお、平板部51の幅wは〈3・t〉で、2本のリブ部52の高さhは〈1・t〉としている。
【0080】
図33は、妻側水平材31と桁側水平材32の平面図である。この図に示すように、両者の接合部14の端は、図23の例と同様に45度に切り落とした形状にしている。添え木53は、斜めの端面よりも後退した位置で、かつ接合部14に接する位置に設けられている。なお、平板部51の幅w方向を上下方向としている。
【0081】
図34に、それら妻側水平材31と桁側水平材32を妻側水平材31の方向から見た状態の側面図を示している。これらは設置面G上に並べられて、出隅部垂直材21が接合される。図35が出隅部垂直材21の凹凸部14aを示す斜視図である。出隅部垂直材21の凹凸部14aは、図25に示した凹凸部14aと同じ平面視形状である。ただし、深さが異なる。つまり、平面視L字型をなし、深さが〈2・t〉である凹所を有している。凹所以外の部分は面一であり、一辺の長さが〈1・t〉の平面視正方形の小凸部と、一辺の長さが〈3・t〉の平面視L字状の大凸部が形成されている。
【0082】
このような凹凸部14aを有する出隅部垂直材21は、図26での説明と同じく、図36に示したように、小凸部を内側の凹所に、大凸部を外側の凹所に嵌められる。
【0083】
図37は、I型に接続される2本の桁側水平材32と、これらに対して直角に接続される内部水平材33と、中間部垂直材22の斜視図である。直角矯正部材16の図示は省略している。この図に示すように、桁側水平材32の接合部14の端は、長手方向に対して直角であり、垂直材21が接続される側に、所望形状の凹凸部14aができるように、添え木53が欠けた形状とされるとともに、添え木53が設けられている。その凹凸部14aは、内部水平材33が接続される側とその反対側に、長さ〈3・t〉で深さ〈2・t〉の凹所を備える形状である。
【0084】
内部水平材33は、凹凸部14aが厚さ〈2・t〉で幅〈3・t〉の突片部で構成されている。この突片部は、桁側水平材32どうしが突き合わされてできる凹凸部のうち、内側の凹所に嵌まる部分である。
【0085】
中間部垂直材22の凹凸部14aは、桁側水平材32どうしが突き合わされてできる凹凸部のうち、内側の凹所に嵌まるように、高さが〈2・t〉で、幅が〈3・t〉の凸部で構成されている。
【0086】
このような凹凸部14aを有する内部水平材33と中間部垂直材22は、互いに突き合わされた桁側水平材32によってできる接合部14の凹凸部14aにそれぞれ嵌められる。すると、内部水平材33と中間部垂直材22における凹凸部14a(凸部)の周りの平面が、対向する接合部14に当接する。
【0087】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用するもできる。
【0088】
例えば、異形構造材15の添え木53を有する部分の横断面形状は長方形等であってもよい。
【0089】
異形構造材15の基本構造の横断面形状として、T型、十字型、H型を例示したが、このほかにも、たとえばL字型などであってもよい。
【0090】
凹凸部14aの形状は、異形構造材15の構成や所望の接続態様に応じて適宜設定され得る。
【0091】
躯体構造11に間柱や大引きなどを設ける場合には、相じゃくりなどで接合できるが、この場合も、平板部51とリブ部52の厚さtを基準にして接続部分を構成できる。
【符号の説明】
【0092】
11…躯体構造
12…垂直材
13…水平材
14…接合部
14a…凹凸部
15…異形構造材
16…直角矯正部材
51…平板部
52…リブ部
53…添え木
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
【手続補正書】
【提出日】2023-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直材と水平材における互い接合しあう接合部を組んで構成される木造建築物の躯体構造であって、
垂直材および水平材が、一定幅の平板部の一部に平面から直角に突出するリブ部が一体化された異形構造材で構成され、
前記異形構造材における前記平板部と前記リブ部の厚さが同一であり、
前記異形構造材の接合部に、他の前記異形構造材に接合するための凹凸部が添え木を付して形成され、
前記凹凸部のうちの、前記異形構造材を切り欠いた形状に形成される一部の凹凸部が、前記異形構造材における前記平板部または前記リブ部の少なくともいずれか一方を前記平板部と前記リブ部の厚さ単位の長さで切り欠いた形状であり、
互いに接合しあう前記凹凸部が互いに補完しあう形に形成された
木造建築物の躯体構造。
【請求項2】
前記異形構造材における前記リブ部が前記平板部の幅方向の中間位置に形成された
請求項1に記載の木造建築物の躯体構造。
【請求項3】
前記リブ部の高さが前記平板部の厚さの「1」以上の整数倍である
請求項1または請求項2に記載の木造建築物の躯体構造。
【請求項4】
前記異形構造材における前記平板部の幅と、前記リブ部を有する部分の高さが同一である
請求項1または請求項2に記載の木造建築物の躯体構造。
【請求項5】
前記異形構造材の側面における接合部に接する位置に、接合される他の前記異形構造材の接合角度を直角に規制する直角三角形の直角矯正部材が固定された
請求項1または請求項2に記載の木造建築物の躯体構造。
【請求項6】
請求項5に記載の木造建築物の躯体構造を構築する木造建築物の躯体構造の構築方法であって、
上下方向における下に位置する水平材としての前記異形構造材の接合部どうしを接合するとともに、一部の前記異形構造材に固定されている前記直角矯正部材で互いの直角を出して下枠組み部を構成したのち、
垂直材としての前記異形構造材の下端における接合部を前記下枠組み部の接合部に接合するとともに、一部の前記異形構造材に固定されている前記直角矯正部材で互いの直角を出して垂直支持部を構成し、
その後に、上下方向における上に位置する水平材としての前記異形構造材の接合部どうしを接合するとともに前記垂直支持部の上端の接合部に接合して、一部の前記異形構造材に固定されている前記直角矯正部材で互いの直角を出して上枠組み部を構成する
木造建築物の躯体構造の構築方法。
【請求項7】
垂直材としての前記異形構造材の上下両端の接合部に接する位置に、接合されるすべての水平材である前記異形構造材に接する前記直角矯正部材が固定された
請求項6に記載の木造建築物の躯体構造の構築方法。
【請求項8】
請求項6に記載の木造建築物の躯体構造の構築方法が、下から上へ繰り返し実行される
木造建築物の躯体構造の構築方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
そのために、この発明は下記の木造建築物の躯体構造を提供する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
すなわち、その木造建築物の躯体構造は、垂直材と水平材における互い接合しあう接合部を組んで構成される木造建築物の躯体構造であって、垂直材および水平材が、一定幅の平板部の一部に平面から直角に突出するリブ部が一体化された異形構造材で構成される。異形構造材における平板部とリブ部の厚さは同一であり、異形構造材の接合部に、他の異形構造材に接合するための凹凸部が添え木を付して形成される。凹凸部のうちの、異形構造材を切り欠いた形状に形成される一部の凹凸部は、異形構造材における平板部またはリブ部の少なくともいずれか一方を平板部とリブ部の厚さ単位の長さで切り欠いた形状である。そして、互いに接合しあう凹凸部は、互いに補完しあう形に形成されている。つまり、互い接合しあう凹凸部は、隙間なく、かつ過不足なく接合して、一定形状の中実な接合部分を構成する。