(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168050
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】荷役支援装置、荷役車両、荷役支援方法及び荷役支援プログラム
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B66F9/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084443
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183222
【氏名又は名称】住友ナコ フォ-クリフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄士
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE02
3F333FD11
3F333FD14
3F333FE05
3F333FE09
(57)【要約】
【課題】好適に荷役作業の自動化を図る。
【解決手段】フォークリフト1は、フォーク12の荷役対象を含む画像を取得する撮影部24と、制御部27と、を備えている。制御部27は、撮影部24が取得した画像に基づいて荷役対象を検出し、当該荷役対象の検出における、画像に基づく荷役対象の認識度合いを表す評価値を、表示部23に表示させる。これにより、オペレータによる評価値の視認によって、画像に基づく荷役対象検出の健全性を確認しながら、安全に荷役作業を実行できる。したがって、安全性を担保しながら、好適に荷役作業の自動化を図ることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役作業部の荷役対象を含む画像を取得する撮影部と、
前記撮影部が取得した画像に基づいて、前記荷役対象を検出する検出部と、
前記検出部による前記荷役対象の検出における、前記画像に基づく前記荷役対象の認識度合いを表す評価値を表示部に表示させる表示制御部と、
を備える荷役支援装置。
【請求項2】
前記評価値が正常か否かを判定する判定部と、
前記評価値が正常でないと前記判定部が判定した場合に、前記荷役作業部を有する荷役車両の動作を停止させる動作制御部と、
を備える、
請求項1に記載の荷役支援装置。
【請求項3】
前記検出部が検出した前記荷役対象を、その候補として前記表示部に表示させる第2表示制御部と、
オペレータの操作に基づいて、前記表示部に表示された前記荷役対象の候補のうちの1つを選択する選択部と、
を備える、
請求項1に記載の荷役支援装置。
【請求項4】
前記撮影部による前記画像の取得と、前記検出部による前記荷役対象の検出と、前記表示制御部による前記評価値の表示とは、前記荷役作業部を有する荷役車両が前記荷役対象に荷役作業を実行しているときに、逐次実行される、
請求項1に記載の荷役支援装置。
【請求項5】
前記荷役作業部を有する荷役車両の動作を制御する動作制御部を備え、
前記動作制御部は、オペレータの操作に基づいて、前記荷役車両による前記荷役対象に対する荷役作業の開始、継続及び中断を実行する、
請求項1に記載の荷役支援装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の荷役支援装置と、
前記荷役作業部と、
を備える荷役車両。
【請求項7】
制御部が、
荷役作業部の荷役対象を含む画像を取得する撮影工程と、
前記撮影工程で取得した画像に基づいて、前記荷役対象を検出する検出工程と、
前記検出工程による前記荷役対象の検出における、前記画像に基づく前記荷役対象の認識度合いを表す評価値を表示部に表示させる表示制御工程と、
を実行する荷役支援方法。
【請求項8】
コンピュータを、
荷役作業部の荷役対象を含む画像を取得する撮影部、
前記撮影部が取得した画像に基づいて、前記荷役対象を検出する検出部、
前記検出部による前記荷役対象の検出における、前記画像に基づく前記荷役対象の認識度合いを表す評価値を表示部に表示させる表示制御部、
として機能させる荷役支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役支援装置、荷役車両、荷役支援方法及び荷役支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、荷役作業を行うフォークリフト等の荷役車両では、自動(無人)運転化が進んでいる。例えば特許文献1に記載の技術では、フォークリフトが作業領域における自車の周囲を確認し、荷役作業を自律的に行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、荷役車両の自動化には、未だ技術的な課題が多い。
例えばパレットを計測して荷役作業を自動化する場合、光の影響等の計測状態によってはセンシングを好適に行えず、パレットを適正に認識できないおそれがある。パレットを適正に認識できていない状態で荷役作業が実行されてしまうと、車体や荷の破損等といった不具合が生じ得る。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、好適に荷役作業の自動化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る荷役支援装置は、
荷役作業部の荷役対象を含む画像を取得する撮影部と、
前記撮影部が取得した画像に基づいて、前記荷役対象を検出する検出部と、
前記検出部による前記荷役対象の検出における、前記画像に基づく前記荷役対象の認識度合いを表す評価値を表示部に表示させる表示制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、好適に荷役作業の自動化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るフォークリフトの荷棚への荷役作業(荷取り)時の側面図である。
【
図2】実施形態に係るフォークリフトの概略の制御構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る荷取支援処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係る荷取支援処理を説明するための図である。
【
図5】実施形態に係るフォークリフトの荷棚への荷役作業(荷置き)時の側面図である。
【
図6】実施形態に係る荷置支援処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態に係る荷置支援処理を説明するための図である。
【
図8】実施形態の変形例に係るフォークリフト及び遠隔操作装置の概略の制御構成を示すブロック図である。
【
図9】実施形態の変形例に係るフォークリフト及び撮影部の概略の制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[フォークリフトの構成]
図1は、本実施形態に係るフォークリフト1の荷棚40への荷役作業(荷取り)時の側面図である。
本実施形態に係るフォークリフト1は、本発明に係る荷役支援装置を具備することにより、荷棚40に荷L(パレット30)を置く荷置き作業又は荷棚40から荷Lを取る荷取り作業を含む各種の荷役作業を好適に行う。フォークリフト1は、本発明に係る荷役車両の一例である。
以下、「荷L(パレット30)を置く(又は取る)」とは、特に断りのない限り、荷棚40の棚板42に荷L(パレット30)を置く(又は取る)ことをいう。
【0011】
具体的に、フォークリフト1の車体10は、車両本体11、フォーク12、昇降体(リフト)13、マスト14、車輪15を備える。マスト14は車両本体11の前方に設けられ、図示しない駆動源によって駆動されて車両本体11の前後に傾斜する。昇降体13は、図示しない駆動源によって駆動され、マスト14に沿って昇降する。昇降体13には、荷Lやパレット30等を保持する左右一対のフォーク12が取り付けられている。一対のフォーク12は、マスト14及び昇降体13の駆動により、車両本体11に対する傾斜及び昇降等が可能となっている。フォーク12は、本発明に係る荷役作業部の一例である。
【0012】
パレット30は、荷Lが載置される荷受台であり、2つのフォークポケット32を側面33に有する短矩形板状に形成されている(
図4参照)。パレット30は、2つのフォークポケット32に一対のフォーク12が挿入されることにより、フォークリフト1に保持される。
【0013】
図2は、フォークリフト1の概略の制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、フォークリフト1は、上記構成に加え、駆動部21、操作部22、表示部23、撮影部24、記憶部26、制御部27を備える。本発明に係る荷役支援装置は、少なくとも撮影部24と制御部27を含む。
【0014】
駆動部21は、フォークリフト1の各種駆動源である走行モータ、操舵モータ及び荷役モータ(いずれも図示省略)を含む。走行モータは、車輪15のうちの駆動輪を駆動する。操舵モータは、車輪15のうちの操舵輪を回転(操舵動作)させる。荷役モータは、昇降体13の昇降とマスト14の傾倒との各動作を行わせる駆動源である。
【0015】
操作部22は、搭乗するオペレータ(運転者)が各種操作を行う操作手段である。操作部22は、例えばハンドルやペダル、レバー、各種ボタン等を含み、これらの操作内容に応じた操作信号を制御部27に出力する。
【0016】
表示部23は、例えば液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のディスプレイであり、制御部27から入力される表示信号に基づいて各種情報を表示する。なお、表示部23は、操作部22の一部を兼ねるタッチパネルであってもよいし、音声表示(出力)が可能なスピーカを含んでもよい。
【0017】
撮影部24は、フォークリフト1の前方を撮影してその画像情報を取得し、取得した情報を制御部27に出力する。本実施形態の撮影部24は、昇降体13の下部であって幅方向の中央部に配置され、前方向きに設置されている(
図1参照)。
なお、撮影部24が取得する画像種別等は特に限定されず、例えばRGB画像でもよい。また、撮影部24は、光や音波を走査して反射波を検出することで二次元形状又は三次元形状を取得するスキャナ装置であってもよい。あるいは、撮影部24は、距離情報(奥行き情報)を含む画像を取得可能なRGB-Dカメラ(デプスカメラ)、LiDAR(Light Detection And Ranging)、複眼カメラ等であってもよい。また、撮影部24の位置は特に限定されず、例えば、昇降体13の上部(撮影範囲がフォーク12上の荷Lと大きく被らない位置)やフォーク12の先端等でもよい。
【0018】
記憶部26は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等により構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部27の作業領域としても機能する。
本実施形態の記憶部26には、後述の荷取支援処理(
図3参照)及び荷置支援処理(
図6参照)を実行するための荷取支援プログラム260及び荷置支援プログラム261のほか、第1学習モデル262及び第2学習モデル263が予め記憶されている。
【0019】
第1学習モデル262は、画像からパレット30を検出するためのものである。第1学習モデル262は、例えば、フォークポケット32を有する側面33(
図4参照)等が付与された複数のパレット30のサンプル画像を教師データとした機械学習により、予め作成されて記憶部26に格納されている。
第2学習モデル263は、画像から荷棚40の棚板42を検出するためのものである。第2学習モデル263は、例えば、棚板42の上面(棚面)42a又は前面42b(
図7参照)等が付与された複数の荷棚40のサンプル画像を教師データとした機械学習により、予め作成されて記憶部26に格納されている。
第1学習モデル262及び第2学習モデル263は、深層学習されたニューラルネットワークを有するAI(Artificial Intelligence:人工知能)であってもよい。
【0020】
制御部27は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、フォークリフト1各部の動作を制御する。具体的に、制御部27は、操作部22の操作内容に基づいて駆動部21を動作させたり、記憶部26に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0021】
[荷取支援処理]
続いて、フォークリフト1が荷取支援処理を実行するときの動作について説明する。
図3は、荷取支援処理の手順を示すフローチャートであり、
図4は、荷取支援処理を説明するための図である。
【0022】
荷取支援処理は、荷役作業の一部を自動化してオペレータの操作を支援する処理である。具体的に、荷取支援処理は、フォークリフト1により荷棚40から荷L(パレット)を取るときに、フォークリフト1がパレット30を自動的に認識して荷取りを実行する処理である。この荷取支援処理は、オペレータ(運転者)の実行操作等に基づいて、フォークリフト1の制御部27が記憶部26から荷取支援プログラム260を読み出して展開することで実行される。
この荷取りでは、フォークリフト1が、パレット30上に置かれた荷Lを荷棚40の棚板42上から取り出す。ここでは、フォークリフト1は、荷棚40の前まで走行してきた状態であるものとする。
【0023】
図3に示すように、荷取支援処理が実行されると、まず制御部27は、オペレータの操作に基づいて、車体前方の荷棚40を撮影部24で撮影する(ステップS1)。
このとき、制御部27は、表示部23をファインダーとして撮影部24の映像を表示させておき、オペレータの実行操作に基づいて、そのときの撮影部24の撮影範囲内の画像データを取得する。オペレータは、表示部23を見ながら、フォーク12の昇降等により撮影部24を移動させ、荷役対象の荷Lとそのパレット30を撮影部24の撮影範囲内に収めた状態で撮影の実行操作を行う。制御部27は、取得された画像データを記憶部26に記憶させる。これにより、荷役対象の荷L(パレット30)を含む画像(画像データ)が取得される。
【0024】
次に、制御部27は、ステップS1で取得した画像データから、パレット30を検出する(ステップS2)。
具体的に、制御部27は、取得した荷棚40の画像データを第1学習モデル262に入力し、当該画像データに含まれるパレット30の画像部分を取得する。本実施形態では、
図4(a)に示すように、パレット30のうち、2つのフォークポケット32を含む側面33が検出される。
なお、パレット30の検出手法は、画像データ(点群データ等を含む)を用いたものであれば特に限定されず、例えばスライディングウィンドウや深層学習での推論等による検出であってもよい。
【0025】
次に、制御部27は、オペレータの操作に基づいて、荷役対象のパレット30を選択する(ステップS3)。
ここでは、制御部27は、ステップS2で複数のパレット30が検出されていた場合に、当該複数のパレット30をその(荷役対象のものの)候補として表示部23に表示させる。そして、制御部27は、オペレータの操作に基づいて、表示されたパレット30(の候補)のうちの1つを荷役対象のものとして選択する。このとき、制御部27は、ステップS2で用いた画像と、パレット表示部23a及び番号表示部23bとを、表示部23に表示させる。パレット表示部23aは、ステップS2で用いた画像上で、検出されたパレット30(側面33)を指示する部分である。番号表示部23bは、ステップS2で用いた画像上に、パレット表示部23aをナンバリングした番号を表示する部分であり、対応するパレット表示部23aに隣接表示される。
なお、ステップS2で1つのパレット30だけが検出されていた場合、制御部27は、オペレータの操作に基づいて、当該1つのパレット30が荷役対象であるかを確認してもよいし、当該ステップS3を省略してもよい。
また、荷役対象のパレット30が検出されていなかった場合、制御部27は、オペレータの操作に基づいて、ステップS1に戻って撮影をやり直してもよいし、処理を中断する等してもよい。
【0026】
次に、制御部27は、ステップS3で選択された荷役対象のパレット30を荷棚40から荷取りする荷役作業(荷取り作業)を開始する(ステップS4)。
具体的に、この荷取り作業では、まず制御部27は、最新のパレット30の画像からフォークポケット32を抽出し、その位置を特定する。そして、制御部27は、駆動部21を制御し、フォーク12をフォークポケット32に挿入する。
なお、当該荷役作業は、ステップS3でのパレット30の選択後に、自動的に開始されてもよいし、オペレータによる開始操作を受け付けた後に開始してもよい。
【0027】
次に、制御部27は、荷取り作業の実行中に、撮影部24によりパレット30の画像データを取得し、当該画像に基づいて荷役対象のパレット30を検出する(ステップS5)。
ここでは、上述したステップS1、S2と同様にして、パレット30の撮影と検出が行われる。なお、ステップS4の作業開始の直後は、上記ステップS1、S2のデータを利用することで、当該ステップS5の処理を省いてもよい。
【0028】
次に、制御部27は、パレット30の検出における、画像データに基づくパレット30の認識度合いを表す評価値を算出し、表示部23に表示させる(ステップS6)。
この評価値としては、例えば、認識結果の信頼度スコアや、取得された点群量等を用いることができる。信頼度スコアとは、抽出した矩形の中に対象としている物体(ここではパレット30)がどのくらいの確率で含まれているかを示す指標である。点群量とは、パレット30の認識のために取得された点群量であり、例えば側面33として認識された範囲内の点群量である。制御部27は、評価値を算出(取得)し、例えば
図4(b)に示すように、当該評価値の時系列を表示部23に表示させる。
またここでは、制御部27は、パレット30の認識に関する情報や作業ステータス(状態)を、評価値と併せて表示部23に表示してもよい。パレット30の認識に関する情報は、例えばパレット種やサイズ等である。作業ステータスは、開始指示待ち、自動運転中、中断中、完了等である。
このように、フォークリフト1の自動運転中には、評価値の時系列と作業ステータス等の情報が表示部23に表示される。そのため、オペレータは、表示部23を見ることで、評価値や作業ステータス等の情報を好適に認識できる。
【0029】
次に、制御部27は、評価値が正常であるか否かを判定する(ステップS7)。
ここでは、制御部27は、荷取り作業の実行中に、ステップS6で算出した評価値が、所定幅以上に大きく変動した場合や、予め設定された所定の閾値を下回った場合に、評価値が正常でないと判定する。これにより、例えば、点群量は不足していないか、パレット30の側面33を抽出するための点群は1つの面として適正に連なっているか等、画像に基づくパレット30検出の健全性が判定される。評価値が大きく変動した場合は、そもそも判断した時点から認識結果が異なっていた可能性がある。評価値が閾値を下回る場合は、自動運転のための計測が正確でない可能性がある。
そして、評価値が正常であると判定した場合(ステップS7;Yes)、制御部27は、後述のステップS9へ処理を移行する。
【0030】
一方、ステップS7において、評価値が正常でないと判定した場合(ステップS7;No)、制御部27は、フォークリフト1(車体10)の動作を停止させるとともに、異常の発生をオペレータに報知する(ステップS8)。
この場合の報知態様は特に限定されず、表示部23に警告表示を行ってもよいし、図示しないスピーカから警告音声を出力してもよい。
そして、制御部27は、オペレータの操作に基づいて、自動運転の中止(停止)又は継続を決定する(ステップS8a)。中止する場合には荷取支援処理を終了させる。
なお、オペレータは、荷取り作業の実行中に、操作部22の操作等により、随時作業に介入して自動運転を中断(停止)又は継続等できるようにしてもよい。
【0031】
次に、制御部27は、ステップS4で開始した荷取り作業が完了したか否かを判定する(ステップS9)。
そして、荷取り作業が完了していないと判定した場合(ステップS9;No)、制御部27は、上述のステップS5に処理を移行し、ステップS5~S9の処理を繰り返す。
これにより、車体10が荷L(パレット30)にアプローチする過程において、パレット30の認識度合いを表す評価値が逐次更新され、当該評価値の表示部23への表示とその正否判定とがリアルタイムに行われる。そのため、評価値の正否判定とオペレータによる視認によって、画像に基づくパレット30検出の健全性を常に確認しながら、安全に荷役作業を実行できる。
【0032】
ステップS9において、荷取り作業が完了したと判定した場合(ステップS9;Yes)、つまりフォーク12をパレット30のフォークポケット32に挿入したと判定した場合には、制御部27は、自動処理する他の作業を実行する(ステップS10)。
例えば、制御部27は、フォークポケット32に挿入されたフォーク12を上昇させてパレット30及び荷Lを棚板42から持ち上げた後、車体10を所定の位置まで後退させる。その後、制御部27は、荷取支援処理を終了させる。このとき、制御部27は、「完了」の作業ステータスを表示部23に表示させてもよい。
なお、自動処理する他の作業が特に設定されていない場合、ステップS10は省略してもよい。
【0033】
[荷置支援処理]
続いて、フォークリフト1が荷置支援処理を実行するときの動作について説明する。
図5は、フォークリフト1の荷棚40への荷役作業(荷置き)時の側面図であり、
図6は、荷置支援処理の手順を示すフローチャートであり、
図7は、荷置支援処理を説明するための図である。
【0034】
荷置支援処理は、荷役作業の一部を自動化してオペレータの操作を支援する処理である。具体的に、荷置支援処理は、フォークリフト1により荷棚40に荷L(パレット)を置くときに、フォークリフト1が荷棚40を自動的に認識して荷置き(棚置き)を実行する処理である。この荷置支援処理は、オペレータ(運転者)の実行操作等に基づいて、フォークリフト1の制御部27が記憶部26から荷置支援プログラム261を読み出して展開することで実行される。
この荷置きでは、フォークリフト1が、フォーク12で保持した荷L(パレット30)を荷棚40の棚板42上に載置する。ここでは、
図5に示すように、フォークリフト1は、フォーク12で荷L(パレット30)を保持したまま、当該荷L(パレット30)を置くべき荷棚40の荷置き先P(
図7参照)の前まで走行してきた状態であるものとする。「荷置き先P」とは、所定の棚板42の上面42aのうち、車体前方の所定範囲(例えば、パレット30のサイズに対応する所定幅×所定奥行きの範囲)の領域をいい、高さ又は棚板42の段数(何段目か)等の情報を含んでもよい。
【0035】
図6に示すように、荷置支援処理が実行されると、まず制御部27は、オペレータの操作に基づいて、車体前方の荷棚40を撮影部24で撮影する(ステップT1)。
このとき、制御部27は、表示部23をファインダーとして撮影部24の映像を表示させておき、オペレータの実行操作に基づいて、そのときの撮影部24の撮影範囲内の画像データを取得する。オペレータは、表示部23を見ながら、フォーク12の昇降等により撮影部24を移動させ、
図7に示すように、棚板42の上面42aのうち荷役対象の荷置き先Pを含む領域を撮影部24の撮影範囲内に収めた状態で、撮影の実行操作を行う。制御部27は、取得された画像データを記憶部26に記憶させる。これにより、荷役対象の荷置き先Pを含む画像(画像データ)が取得される。
【0036】
次に、制御部27は、ステップT1で取得した画像データから、棚板42(荷置き先P)を検出する(ステップT2)。
具体的に、制御部27は、取得した荷棚40の画像データを第2学習モデル263に入力し、当該画像データに含まれる棚板42の上面42aの画像部分を取得する。本実施形態では、棚板42のうち、略水平な上面42a(の所定範囲)が、荷置き先Pとして検出される。
なお、荷置き先Pの検出手法は、画像データ(点群データ等を含む)を用いたものであれば特に限定されず、例えばデプスデータを三次元点群に展開して水平面を抽出する等してもよい。
【0037】
次に、制御部27は、オペレータの操作に基づいて、荷役対象の荷置き先Pを選択する(ステップT3)。
ここでは、制御部27は、ステップT2において、荷置き先Pの候補として、複数の棚板42の上面42a(の所定範囲)が検出されていた場合に、オペレータの操作に基づいて、このうちいずれか1つを荷置き先Pとして選択する。
また、ステップT2で1つの上面42aだけが検出されていた場合、制御部27は、オペレータの操作に基づいて、当該1つの上面42aが荷役対象の荷置き先Pであるかを確認してもよいし、当該ステップT3を省略してもよい。
なお、荷役対象の荷置き先P(上面42a)が検出されていなかった場合、制御部27は、オペレータの操作に基づいて、ステップT1に戻って撮影をやり直してもよいし、処理を中断する等してもよい。
【0038】
次に、制御部27は、ステップT3で選択された荷役対象の荷置き先Pに対して、保持している荷L(パレット30)を置く荷役作業(荷置き作業)を開始する(ステップT4)。
具体的に、この荷置き作業では、制御部27は、駆動部21を制御し、車体10を前進させつつフォーク12を昇降させて、フォーク12で保持した荷L(パレット30)を荷置き先Pに載置する。
なお、当該荷役作業は、ステップT3での荷置き先Pの選択後に、自動的に開始されてもよいし、オペレータによる開始操作を受け付けた後に開始してもよい。
【0039】
次に、制御部27は、荷置き作業の実行中に、撮影部24により荷棚40の画像データを取得し、当該画像に基づいて荷役対象の荷置き先Pを検出する(ステップT5)。
ここでは、上述したステップT1、T2と同様にして、荷棚40の撮影と荷置き先Pの検出が行われる。なお、ステップT4の作業開始の直後は、上記ステップT1、T2のデータを利用することで、当該ステップT5の処理を省いてもよい。
【0040】
次に、制御部27は、荷置き先Pの検出における、画像データに基づく荷置き先Pの認識度合いを表す評価値を算出し、表示部23に表示させる(ステップT6)。
この評価値としては、例えば、評価値としては、上面42aの平面度、取得された点群量等を用いることができる。点群量とは、上面42aの認識のために取得された点群量である。制御部27は、評価値を算出(取得)し、当該評価値の時系列を表示部23に表示させる(
図4(b)参照)。
またここでは、制御部27は、荷置き先Pの認識に関する情報や作業ステータス(状態)を、評価値と併せて表示部23に表示してもよい。荷置き先Pの認識に関する情報は、例えば上面42aのサイズや平面度等である。作業ステータスは、開始指示待ち、自動運転中、中断中、完了等である。
このように、フォークリフト1の自動運転中には、評価値の時系列と作業ステータス等の情報が表示部23に表示される。そのため、オペレータは、表示部23を見ることで、評価値や作業ステータス等の情報を好適に認識できる。
【0041】
次に、制御部27は、評価値が正常であるか否かを判定する(ステップT7)。
ここでは、制御部27は、荷置き作業の実行中に、ステップT6で算出した評価値が、所定幅以上に大きく変動した場合や、予め設定された所定の閾値を下回った場合に、評価値が正常でないと判定する。これにより、例えば、点群量は不足していないか、棚板42の上面42aを抽出するための点群は1つの面として適正に連なっているか等、画像に基づく荷置き先P検出の健全性が判定される。評価値が大きく変動した場合は、そもそも判断した時点から認識結果が異なっていた可能性がある。評価値が閾値を下回る場合は、自動運転のための計測が正確でない可能性がある。
そして、評価値が正常である判定した場合(ステップT7;Yes)、制御部27は、後述のステップT9へ処理を移行する。
【0042】
一方、ステップT7において、評価値が正常でないと判定した場合(ステップT7;No)、制御部27は、フォークリフト1(車体10)の動作を停止させるとともに、異常の発生をオペレータに報知する(ステップT8)。
この場合の報知態様は特に限定されず、表示部23に警告表示を行ってもよいし、図示しないスピーカから警告音声を出力してもよい。
そして、制御部27は、オペレータの操作に基づいて、自動運転の中止(停止)又は継続を決定する(ステップT8a)。中止する場合には荷置支援処理を終了させる。
なお、オペレータは、荷置き作業の実行中に、操作部22の操作等により、随時作業に介入して自動運転を中断(停止)又は継続等できるようにしてもよい。
【0043】
次に、制御部27は、ステップT4で開始した荷置き作業が完了したか否かを判定する(ステップT9)。
そして、荷置き作業が完了していないと判定した場合(ステップT9;No)、制御部27は、上述のステップT5に処理を移行し、ステップT5~T9の処理を繰り返す。
これにより、車体10が荷置き先Pにアプローチする過程において、荷置き先Pの認識度合いを表す評価値が逐次更新され、当該評価値の表示部23への表示とその正否判定とがリアルタイムに行われる。そのため、評価値の正否判定とオペレータによる視認によって、画像に基づくパレット30検出の健全性を常に確認しながら、安全に荷役作業を実行できる。
【0044】
ステップT9において、荷置き作業が完了したと判定した場合(ステップT9;Yes)、つまり荷置き先Pにパレット30を載置したと判定した場合には、制御部27は、自動処理する他の作業を実行する(ステップT10)。
例えば、制御部27は、車体10を後退させてフォーク12をパレット30(フォークポケット32)から抜いた後、フォーク12を下降させる。その後、制御部27は、荷置支援処理を終了させる。このとき、制御部27は、「完了」の作業ステータスを表示部23に表示させてもよい。
なお、自動処理する他の作業が特に設定されていない場合、ステップT10は省略してもよい。
【0045】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、フォーク12の荷役対象(パレット30、荷置き先P等)を含む画像(画像データ)が撮影部24により取得され、この画像に基づいて荷役対象が検出される。そして、この荷役対象の検出における、画像に基づく荷役対象の認識度合いを表す評価値が、表示部23に表示される。
これにより、オペレータによる評価値の視認によって、画像に基づく荷役対象検出の健全性を確認しながら、安全に荷役作業を実行できる。したがって、安全性を担保しながら、好適に荷役作業の自動化を図ることができる。
ひいては、操作経験の浅いオペレータでも安全に作業を行うことができる。また、オペレータによる自動運転の監視により、自動化の際に実装する安全機器類の必要性を軽減でき、そのコストを低減できる。
【0046】
また、本実施形態によれば、評価値が正常でないと判定された場合に、制御部27がフォークリフト1の動作を停止させる。
これにより、荷役対象の検出エラーに起因する事故の発生を抑制できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、検出部が検出した荷役対象がその候補として表示部23に表示され、表示部23に表示された荷役対象の候補のうちの1つが、オペレータの操作に基づいて選択される。
これにより、オペレータは簡便に荷役対象を選択できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、フォークリフト1が荷役対象に荷役作業を実行しているときに、画像の取得と荷役対象の検出と評価値の表示とが逐次実行される。
これにより、荷役作業の実行中に、画像に基づく荷役対象検出の健全性をリアルタイムで確認しながら、安全に荷役作業を実行できる。
【0049】
また、本実施形態によれば、オペレータの操作に基づいて、フォークリフト1による荷役対象に対する荷役作業の開始、継続及び中断が実行される。
これにより、自動運転の実行や中断等をオペレータが判断できるため、より確実に安全性を担保できる。また、オペレータは、評価値の視認により自動運転の状態を監視できるため、荷役作業の開始,継続及び中断等の判断を下しやすい。
【0050】
[変形例1]
上記実施形態では、オペレータがフォークリフト1に搭乗することとしたが、オペレータはフォークリフト1を遠隔操作(遠隔操縦)してもよい。
具体的には、
図8に示すように、オペレータは、例えば通信ネットワークNWを通じてフォークリフト1と通信可能な遠隔操作装置50により、フォークリフト1を遠隔操作してもよい。遠隔操作装置50は、オペレータが各種操作を行う操作部52と、フォークリフト1からの映像等を含む各種情報を表示する表示部53と、記憶部56及び制御部57とを備える。操作部52及び表示部53は、少なくとも上記実施形態における操作部22及び表示部23と同様に機能する。なお、フォークリフト1と遠隔操作装置50での処理の分担度合いは特に限定されない。ただし、処理内容に必要なデータ(例えば、荷役対象検出用の学習モデルや各種プログラム等)を遠隔操作装置50の記憶部56に予め記憶させておく必要があるのは勿論である。
本発明は、荷取りや荷置き等の比較的に高い操縦技能を要する荷役作業を好適に自動化できるため、遠隔操作のフォークリフトにも好適に適用できる。
【0051】
[変形例2]
上記実施形態では、荷役対象の画像を取得する撮影部24がフォークリフト1に搭載されることとした。しかし、当該撮影部は環境(設備)側に設置されていてもよい。
具体的には、
図9に示すように、例えば荷棚40の周辺に設置した撮影部64により、荷役対象を含む画像を取得してもよい。この場合、撮影部64は、例えば荷棚40を前方斜め上方から撮影し、取得した画像(画像データ)を、通信ネットワークNWを通じてフォークリフト1に送信する。撮影部64の装置種別や取得する画像種別等は、上記実施形態の撮影部24と同様のものを適用できる。
【0052】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態(変形例含む)に限られない。
例えば、荷取支援処理では、第1学習モデル262によりパレット30を検出することとしたが、パレット30上に載置される荷Lも一緒に検出できるようにしてもよい。これは、荷Lが定型物等の場合に有用である。
【0053】
また、上記実施形態の荷置支援処理では、荷置き先Pとして、棚板42の上面42aを検出することとしたが、上面42aに代えて前面42b(
図7参照)を検出してもよい。棚板42(上面42a)上が空いているのはオペレータが目視で確認すればよい。ただし、この場合は、第2学習モデル263により、画像から荷棚40の前面42bを検出する。
【0054】
また、上記実施形態では、荷役作業として、荷棚40に対する荷取り及び荷置きを挙げて説明した。しかし、本発明に係る荷役作業は、画像により荷役対象(荷、パレット又は荷置き先)を検出可能であれば、荷棚に対するものに限定されず、例えば床に対する荷取り及び荷置き(平置き)等を含む。
【0055】
また、本発明に係る荷役車両は、荷役作業部を有して荷役対象に対する荷役作業を行うものであればフォークリフトに限定されず、例えば搬送車等を含む。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 フォークリフト(荷役車両)
10 車体
12 フォーク(荷役作業部)
22 操作部
23 表示部
23a パレット表示部
23b 番号表示部
24 撮影部
26 記憶部
27 制御部(検出部、表示制御部、判定部、動作制御部、第2表示制御部、選択部)
30 パレット(荷役対象)
32 フォークポケット
33 側面
40 荷棚
42 棚板
42a 上面
42b 前面
50 遠隔操作装置
52 操作部
53 表示部
64 撮影部
260 荷取支援プログラム
261 荷置支援プログラム
262 第1学習モデル
263 第2学習モデル
L 荷
P 荷置き先(荷役対象)