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特開2024-168052切削インサート、ボディ及び切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168052
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】切削インサート、ボディ及び切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/20 20060101AFI20241128BHJP
   B23C 5/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B23C5/20
B23C5/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084445
(22)【出願日】2023-05-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 篤
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022HH01
3C022HH05
3C022HH15
3C022LL01
(57)【要約】
【課題】計4つの切れ刃を切り換えて使用可能としながらも、厚さを抑制することのできる切削インサート、ボディ及び切削工具を提供する。
【解決手段】切削工具10のボディ20に取り付けられる切削インサート30であって、互いに対向する一対の端面110、120のうちの一方の端面110からなる六角形状の第1すくい面411と、第1すくい面411を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺111、114に沿って形成された一対の第1切れ刃311、312と、互いに対向する一対の側面210、220からなる台形状の第2すくい面421、422と、それぞれの第2すくい面421、422を区画する辺のうちの一辺210、220に沿って形成された第2切れ刃321、322と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具のボディに取り付けられる切削インサートであって、
互いに対向する一対の端面のうちの一方の端面からなる六角形状の第1すくい面と、
前記第1すくい面を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺に沿って形成された一対の第1切れ刃と、
互いに対向する一対の側面からなる台形状の第2すくい面と、
それぞれの前記第2すくい面を区画する辺のうちの一辺に沿って形成された第2切れ刃と、
を有する、
切削インサート。
【請求項2】
前記第1切れ刃を挟んで前記第1すくい面と隣り合う第1逃げ面を有し、
前記第1すくい面と前記第1逃げ面との間のなす角度が90度よりも小さい、
請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記第2切れ刃を挟んで前記第2すくい面と隣り合う第2逃げ面を有し、
前記第2すくい面と前記第2逃げ面との間のなす角度が90度よりも小さい、
請求項1または請求項2に記載の切削インサート。
【請求項4】
互いに対向する一対の端面のうちの一方の端面からなる六角形状の第1すくい面と、前記第1すくい面を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺に沿って形成された一対の第1切れ刃と、互いに対向する一対の側面からなる台形状の第2すくい面と、それぞれの前記第2すくい面を区画する辺のうちの一辺に沿って形成された第2切れ刃と、を有する切削インサートが装着されるボディであって、
切削時の切れ刃として前記第1切れ刃が使用可能な第1姿勢で前記切削インサートが装着される第1取付座と、
切削時の切れ刃として前記第2切れ刃が使用可能な第2姿勢で前記切削インサートが装着される第2取付座と、
を有する、
ボディ。
【請求項5】
前記第1取付座及び前記第2取付座が軸方向に配列されている、
請求項4に記載のボディ。
【請求項6】
互いに対向する一対の端面のうちの一方の端面からなる六角形状の第1すくい面と、前記第1すくい面を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺に沿って形成された一対の第1切れ刃と、互いに対向する一対の側面からなる台形状の第2すくい面と、それぞれの前記第2すくい面を区画する辺のうちの一辺に沿って形成された第2切れ刃と、を有する切削インサートと、
切削時の切れ刃として前記第1切れ刃が使用可能な第1姿勢で前記切削インサートが装着される第1取付座と、切削時の切れ刃として前記第2切れ刃が使用可能な第2姿勢で前記切削インサートが装着される第2取付座と、を有する、ボディと、
を備えた切削工具。
【請求項7】
前記切削インサートは、
前記第1切れ刃を挟んで前記第1すくい面と隣り合う第1逃げ面を有し、
前記第1すくい面と前記第1逃げ面との間のなす角度が90度よりも小さい、
請求項6に記載の切削工具。
【請求項8】
前記切削インサートは、
前記第2切れ刃を挟んで前記第2すくい面と隣り合う第2逃げ面を有し、
前記第2すくい面と前記第2逃げ面との間のなす角度が90度よりも小さい、
請求項6または請求項7に記載の切削工具。
【請求項9】
前記ボディには、前記第1取付座及び前記第2取付座が軸方向に配列されている、
請求項6に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサート、ボディ及び切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパイプ等の内面を切削するための切削工具として、回転するボディの外周側に、周方向に並ぶよう複数の切削インサートを備えた構成のものが知られている。それぞれの切削インサートは、ボディから取り外して交換することができる。例えば下記特許文献1に記載されているように、1つの切削インサートにおいて複数の切れ刃を設けておき、ボディに対する当該切削インサートの取り付け状態を変更することで、加工に用いられる切れ刃を切り換えることができるようなものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5779830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ボディの回転中心軸に対し垂直な軸の周りに、切削インサートを180度回転させることにより、加工に用いられる切れ刃を変更し得る構成においては、対角の位置にある2つの切れ刃を切り換えて使用することができる。
【0005】
更に、切削インサートを裏返して取り付けることも可能な構成とすれば、計4つの切れ刃を切り換えて使用することも可能となる。しかしながら、そのような構成においては、切削インサートが厚くなり過ぎて、小径の加工を行うことが難しくなってしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、計4つの切れ刃を切り換えて使用可能としながらも、厚さを抑制することのできる切削インサート、ボディ及び切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の切削インサートは、
切削工具のボディに取り付けられる切削インサートであって、
互いに対向する一対の端面のうちの一方の端面からなる六角形状の第1すくい面と、
前記第1すくい面を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺に沿って形成された一対の第1切れ刃と、
互いに対向する一対の側面からなる台形状の第2すくい面と、
それぞれの前記第2すくい面を区画する辺のうちの一辺に沿って形成された第2切れ刃と、
を有する。
【0008】
この構成の切削インサートによれば、一方の端面を第1すくい面とした2つの第1切れ刃が使用可能であり、互いに対向する一対の側面をそれぞれ第2すくい面とした2つの第2切れ刃が使用可能である。つまり、切削インサートをボディに取り付ける際の姿勢及び向き等を変更することで、計4つの切れ刃を切り換えて使用することが可能となっている。
【0009】
また、本発明の切削インサートは、
前記第1切れ刃を挟んで前記第1すくい面と隣り合う第1逃げ面を有し、
前記第1すくい面と前記第1逃げ面との間のなす角度が90度よりも小さい。
【0010】
この構成の切削インサートによれば、第1すくい面と第1逃げ面との間のなす角からなる第1切れ刃の刃物角が90度よりも小さいので、第1切れ刃を用いた切削時における切削抵抗を低減できる。
【0011】
また、本発明の切削インサートは、
前記第2切れ刃を挟んで前記第2すくい面と隣り合う第2逃げ面を有し、
前記第2すくい面と前記第2逃げ面との間のなす角度が90度よりも小さい。
【0012】
この構成の切削インサートによれば、第2すくい面と第2逃げ面との間のなす角からなる第2切れ刃の刃物角が90度よりも小さいので、第2切れ刃を用いた切削時における切削抵抗を低減できる。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のボディは、
互いに対向する一対の端面のうちの一方の端面からなる六角形状の第1すくい面と、前記第1すくい面を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺に沿って形成された一対の第1切れ刃と、互いに対向する一対の側面からなる台形状の第2すくい面と、それぞれの前記第2すくい面を区画する辺のうちの一辺に沿って形成された第2切れ刃と、を有する切削インサートが装着されるボディであって、
切削時の切れ刃として前記第1切れ刃が使用可能な第1姿勢で前記切削インサートが装着される第1取付座と、
切削時の切れ刃として前記第2切れ刃が使用可能な第2姿勢で前記切削インサートが装着される第2取付座と、
を有する。
【0014】
この構成のボディによれば、第1取付座に切削インサートを装着させることにより、切削インサートを第1姿勢として2つの第1切れ刃を使用でき、第2取付座に切削インサートを装着させることにより、切削インサートを第2姿勢として2つの第2の第2切れ刃を使用できる。つまり、切削インサートを計4つの切れ刃を切り換えて使用することが可能となっている。また、第1取付座及び第2取付座にそれぞれ切削インサートを装着させることにより、第1姿勢の切削インサートの第1切れ刃及び第2姿勢の切削インサートの第2切れ刃で同時に切削可能である。
【0015】
また、本発明のボディは、
前記第1取付座及び前記第2取付座が軸方向に配列されている。
【0016】
この構成のボディによれば、切削インサートを先端側及び後端側に装着させることができる。これにより、例えば、一度の切削加工によって、先端側の切削インサートで粗削り加工を行うとともに、後端側の切削インサートで仕上げ加工を行うことができる。また、前後に切削インサートを装着させることにより、工具全体としての切れ刃の刃長を長くでき、高切込みの加工に対応できる。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の切削工具は、
互いに対向する一対の端面のうちの一方の端面からなる六角形状の第1すくい面と、前記第1すくい面を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺に沿って形成された一対の第1切れ刃と、互いに対向する一対の側面からなる台形状の第2すくい面と、それぞれの前記第2すくい面を区画する辺のうちの一辺に沿って形成された第2切れ刃と、を有する切削インサートと、
切削時の切れ刃として前記第1切れ刃が使用可能な第1姿勢で前記切削インサートが装着される第1取付座と、切削時の切れ刃として前記第2切れ刃が使用可能な第2姿勢で前記切削インサートが装着される第2取付座と、を有する、ボディと、
を備える。
【0018】
この構成の切削工具によれば、ボディの第1取付座に第1姿勢で切削インサートを装着させて2つの第1切れ刃を使用できるとともに、ボディの第2取付座に第2姿勢で切削インサートを装着させて2つの第2切れ刃を使用できる。つまり、切削インサートを計4つの切れ刃を切り換えて使用することができる。また、ボディの第1取付座及び第2取付座にそれぞれ切削インサートを装着させることにより、第1姿勢の切削インサートの第1切れ刃及び第2姿勢の切削インサートの第2切れ刃で同時に切削可能である。
【0019】
また、本発明の切削工具は、
前記切削インサートは、
前記第1切れ刃を挟んで前記第1すくい面と隣り合う第1逃げ面を有し、
前記第1すくい面と前記第1逃げ面との間のなす角度が90度よりも小さい。
【0020】
この構成の切削工具によれば、切削インサートの第1すくい面と第1逃げ面との間のなす角からなる第1切れ刃の刃物角が90度よりも小さいので、第1切れ刃を用いた切削時における切削抵抗を低減できる。
【0021】
また、本発明の切削工具は、
前記切削インサートは、
前記第2切れ刃を挟んで前記第2すくい面と隣り合う第2逃げ面を有し、
前記第2すくい面と前記第2逃げ面との間のなす角度が90度よりも小さい。
【0022】
この構成の切削工具によれば、切削インサートの第2すくい面と第2逃げ面との間のなす角からなる第2切れ刃の刃物角が90度よりも小さいので、第2切れ刃を用いた切削時における切削抵抗を低減できる。
【0023】
また、本発明の切削工具は、
前記ボディには、前記第1取付座及び前記第2取付座が軸方向に配列されている。
【0024】
この構成の切削工具によれば、切削インサートを、ボディの先端側及び後端側に装着させることができる。これにより、例えば、一度の切削加工によって、先端側の切削インサートで粗削り加工を行うとともに、後端側の切削インサートで仕上げ加工を行うことができる。また、前後に切削インサートを装着させることにより、工具全体としての切れ刃の刃長を長くでき、高切込みの加工に対応できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、計4つの切れ刃を切り換えて使用可能としながらも、厚さを抑制することのできる切削インサート、ボディ及び切削工具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る切削インサートを備えた切削工具の斜視図である。
図2】本実施形態に係る切削インサートを備えた切削工具の正面図である。
図3】切削工具における切削インサートが装着された第1取付座及び第2取付座の側面図である。
図4】切削工具における切削インサートが装着された第1取付座及び第2取付座の平面図である。
図5】第1姿勢の切削インサートの斜視図である。
図6】(a)は第1姿勢の切削インサートの平面図、(b)は第1姿勢の切削インサートの側面図である。
図7】第2姿勢の切削インサートの斜視図である。
図8】(a)は第2姿勢の切削インサートの平面図、(b)は第2姿勢の切削インサートの側面図である。
図9】切削工具における切削インサートが装着された第1取付座及び第2取付座の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0028】
本実施形態について説明する。本実施形態に係る切削工具10は、回転しながらパイプ等の内面を切削するための転削工具であって、「プルカウンターボーリング工具」とも称されるものである。尚、以下に説明する切削工具10の構成は、他の転削工具に対しても適用可能である。
【0029】
図1は、切削工具10の外観を示す斜視図である。図2は、図1の切削工具10を、回転中心軸AX1に沿って先端側から見て描いた正面図である。図1及び図2に示されるように、切削工具10は複数の切削インサート30を備えており、これらがボディ20に取り付けられた構成を有している。
【0030】
ボディ20は、切削工具10の本体部分であって、例えばアーバ等の保持具に装着された状態で、当該保持具ごと、不図示の工作機械によって把持される。ボディ20は略円筒形状を有しており、その中心軸は回転中心軸AX1と一致している。加工中においては、工作機械の駆動力により、ボディ20が回転中心軸AX1の周りにおいて回転する。図1及び図2においては、その回転方向が矢印により示されている。
【0031】
図3及び図4に示すように、ボディ20は、複数の第1取付座610と、複数の第2取付座620とを有している。第1取付座610及び第2取付座620は、それぞれ周方向に等間隔で並ぶように配置されている。第1取付座610及び第2取付座620は、回転中心軸AX1に沿って配列されている。第1取付座610は、ボディ20の先端部に設けられ、第2取付座620は、第1取付座610に対してボディ20の後端側に設けられている。
【0032】
切削インサート30は、被削材を切削するための第1切れ刃311や第2切れ刃321等が形成された部材である。切削インサート30は上記のようにボディ20に複数設けられている。それぞれの切削インサート30の形状は互いに同一である。切削インサート30は、螺子50によってボディ20の第1取付座610及び第2取付座620に取り付けられている。切削インサート30は、第1取付座610において、第1姿勢でボディ20に装着され、第2取付座620において、第2姿勢でボディ20に装着されている。
【0033】
図5図8を参照しつつ必要に応じて図3および図4も参照しながら、切削インサート30の構成について説明する。切削インサート30は、端面110、120と、これら端面110、120間を繋ぐ第1側面210、220、第2側面230、240、第3側面250、260、および第4側面270、280とを有している。端面110は図5における紙面手前側の面であり、端面120は図5における紙面奥側の面である。端面110、120は、互いに対向した平行な面である。一方の端面110は、加工時において第1すくい面411として機能する面である。
【0034】
一方の端面110は概ね六角形状の面であり、6つの辺111、112、113、114、115、116によって区画されている。これらのうち、辺111及び辺114が互いに平行な一対の辺であり、辺112及び辺115も互いに平行な一対の辺であり、さらに、辺113及び辺116も互いに平行な一対の辺である。
【0035】
一方の端面110と同様に、他方の端面120も概ね六角形状の面であり、6つの辺121、122、123、124、125、126によって区画されている。これらのうち、辺121及び辺124が互いに平行な一対の辺であり、辺122及び辺125も互いに平行な一対の辺であり、さらに、辺123及び辺126も互いに平行な一対の辺である。
【0036】
これら辺111、112、113、114、115、116と、辺121、122、123、124、125、126は、端面110、120と、第1側面210、220、第2側面230、240、第3側面250、260、および第4側面270、280との交差稜線であるともいえる。
【0037】
第1側面210、220は、互いに対向した面であり、切削インサート30が第1取付座610に取り付けられたときは第1取付座610の取付面に当接する面の一部であり、かつ、切削インサート30が第2取付座620に取り付けられたときは加工時において第2すくい面421、422として機能する面である。一方の第1側面210は概ね台形状の面であり、4つの辺201、124、202、116によって区画されている。これらのうち、辺124及び辺116が互いに平行な辺である。一方の第1側面210と同様に、他方の第1側面220は概ね台形状の面であり、4つの辺204、121、205、113によって区画されている。これらのうち、辺121及び辺113が互いに平行な辺である。
【0038】
第2側面230、240は、互いに対向した面であり、切削インサート30が第1取付座610に取り付けられたときは加工時において第1逃げ面451、452として機能する面である。一方の第2側面230は概ね台形状の面であり、4つの辺202、123、203、111によって区画されている。これらのうち、辺123及び辺111が互いに平行な辺である。一方の第2側面230と同様に、他方の第2側面240は概ね台形状の面であり、4つの辺205、126、206、114によって区画されている。これらのうち、辺126及び辺114が互いに平行な辺である。
【0039】
第3側面250、260は、互いに対向した面であり、切削インサート30が第1取付座610に取り付けられたときは第1取付座610の取付面に当接する面の一部であり、かつ、切削インサート30が第2取付座620に取り付けられたときは加工時において第2逃げ面461、462として機能する面である。一方の第3側面250は概ね四角形状の面であり、4つの辺203、122、204、112によって区画されている。これらのうち、辺203及び辺204が互いに平行な辺であり、辺122及び辺112が互いに平行な辺である。一方の第3側面250と同様に、他方の第3側面260は概ね四角形状の面であり、4つの辺206、125、201、115によって区画されている。これらのうち、辺206及び辺201が互いに平行な辺であり、辺125及び辺115が互いに平行な辺である。
【0040】
第4側面270、280は、互いに対向した面であり、それぞれ切削インサート30がボディ20に取り付けられた際に第1取付座610の取付面および第2取付座620の取付面に当接する面の一部である。
【0041】
切削インサート30には、計4つの切れ刃(2つの第1切れ刃311、312と、2つの第2切れ刃321、322)が形成されている。
【0042】
切削インサート30に形成された計4つの切れ刃のうち、2つの第1切れ刃311、312は、いずれも第1端面110を区画する辺に沿って設けられている(図5参照)。具体的には、第1切れ刃311は辺111に沿って、辺111と同じ位置に設けられており、第1切れ刃312は辺114に沿って、辺114と同じ位置に設けられている。切削インサート30では、それぞれの第1切れ刃311、312の長さは互いに同じである。
【0043】
切削インサート30に形成された計4つの切れ刃のうち、2つの第2切れ刃321、322は、第1側面210、220を区画する辺に沿って設けられている。具体的には、第2切れ刃321は第1側面210の辺201に沿って、辺201と同じ位置に設けられており、第2切れ刃322は第1側面220の辺204に沿って、辺204と同じ位置に設けられている。それぞれの第2切れ刃321、322の長さは互いに同じである。
【0044】
尚、切削インサート30が有する複数の切れ刃のうち、加工中において実際に「切れ刃」として機能するのは1つだけである。第1切れ刃311、312、第2切れ刃321、322のうち、どれが「切れ刃」として機能するのかは、ボディ20に対する切削インサート30の取り付け状態によって変化する。
【0045】
切削インサート30は、ボディ20の第1取付座610に取り付けられた第1姿勢において、最も先端側にある第1切れ刃311または第1切れ刃312の一方が実際に「切れ刃」として機能する。切削インサート30は、第1切れ刃311が切れ刃として機能する場合、第1すくい面411となる端面110が実際に「すくい面」として機能し、第1逃げ面451となる第2側面230が実際に「逃げ面」として機能する。また、切削インサート30は、第1切れ刃312が切れ刃として機能する場合、第1すくい面411となる端面110が実際に「すくい面」として機能し、第1逃げ面452となる第2側面240が実際に「逃げ面」として機能する。
【0046】
ここで、第1切れ刃311を挟んだ第1すくい面411となる端面110と第1逃げ面451となる第2側面230とのなす角からなる刃物角、及び第1切れ刃312を挟んだ第1すくい面411となる端面110と第1逃げ面452となる第2側面240とのなす角からなる刃物角は、いずれも同一刃物角αとされおり、この刃物角αは90度よりも小さい角度とされている(図6(a)参照)。つまり、これらの第1切れ刃311,312は、90度よりも小さい刃物角αを有している。
【0047】
切削インサート30は、ボディ20の第2取付座620に取り付けられた第2姿勢において、最も先端側にある第2切れ刃321または第2切れ刃322の一方が実際に「切れ刃」として機能する。切削インサート30は、第2切れ刃321が切れ刃として機能する場合、第2すくい面421となる第1側面210が実際に「すくい面」として機能し、第2逃げ面461となる第3側面260が実際に「逃げ面」として機能する。また、切削インサート30は、第2切れ刃322が切れ刃として機能する場合、第2すくい面422となる第1側面220が実際に「すくい面」として機能し、第2逃げ面462となる第3側面250が実際に「逃げ面」として機能する。
【0048】
ここで、第2切れ刃321を挟んだ第2すくい面421となる第1側面210と第2逃げ面461となる第3側面260とのなす角からなる刃物角、及び第2切れ刃322を挟んだ第2すくい面422となる第1側面220と第2逃げ面462となる第3側面250とのなす角は、いずれも同一刃物角βとされており、この刃物角βは90度よりも小さい角度とされている(図8参照)。つまり、これらの第2切れ刃321,322は、90度よりも小さい刃物角βを有している。
【0049】
切削インサート30は、貫通孔500を有している。この貫通孔500は、一方の端面110から他方の端面120にわたって形成されている。この貫通孔500は、開口部501、502が形成された端面110、120に対して垂直に形成されている。そして、貫通孔500の開口部501、502は、端面110、120で開口している。また、貫通孔500は、開口部501、502側に、中間部へ向かって次第に縮径する縮径部501a、502aを有している。
【0050】
この貫通孔500は、切削インサート30をボディ20に固定する際に螺子50が挿通される孔であり、開口部501,502のいずれか一方から螺子50が挿し込まれる。貫通孔500に挿通される螺子50は、その頭部が、縮径部501a、502aのいずれかに係合する。つまり、開口部501から螺子50を挿し込んだ場合は、螺子50の頭部が、開口部501側の縮径部501aに係合し、開口部502から螺子50を挿し込んだ場合は、螺子50の頭部が、開口部502側の縮径部502aに係合する。
【0051】
図6及び図8に示される軸AX2は、貫通孔500の中心を通る軸である。この軸AX2は、切削インサート30の全体の外形の幾何中心を通っている。切削インサート30を軸AX2の周りに180度回転させると、回転後における切削インサート30の形状の全体が、回転前における切削インサート30の形状に重なる。切削インサート30の形状が、これまでに説明したような対称性を有していることにより、このような軸AX2が存在している。
【0052】
例えば、ボディ20の第1取付座610に装着されて第1姿勢とされて第1切れ刃311を実際の「切れ刃」として機能させている状態から、切削インサート30を軸AX2の周りに180度回転させた状態でボディ20の第1取付座610に取り付けた場合には、第1切れ刃312が実際の「切れ刃」として機能することとなる。
【0053】
同様に、例えば、ボディ20の第2取付座620に装着されて第2姿勢とされて第2切れ刃321を実際の「切れ刃」として機能させている状態から、切削インサート30を軸AX2の周りに180度回転させた状態でボディ20の第2取付座620に取り付けた場合には、第2切れ刃322が実際の「切れ刃」として機能することとなる。
【0054】
図3及び図4に示すように、ボディ20に設けられた第1取付座610及び第2取付座620は、回転中心軸AX1に沿って配列されている。第1取付座610は、ボディ20の先端部に設けられ、第2取付座620は、第1取付座610に対してボディ20の後端側に設けられている。これにより、第1姿勢で装着された切削インサート30に対して、回転中心軸AX1(図1)の後方側に、第2姿勢で装着された切削インサート30が配置される。また、第1取付座610は、第2取付座620よりもボディ20の径方向内方側に形成されている。したがって、ボディ20の先端側において第1姿勢で装着された切削インサート30に対して、回転中心軸AX1の後方側において第2姿勢で装着された切削インサート30が径方向の外方側に配置される。
【0055】
切削インサート30が第1姿勢で装着されるボディ20の第1取付座610は、第1取付面611、第2取付面612、第3取付面613、第4取付面614、第5取付面615を有している。第1取付面611は、第1取付座610における回転方向の後方側の取付面であり、この第1取付面611には、螺子50が螺合されるネジ穴(図示略)が形成されている。第2取付面612および第5取付面615は、第1取付座610における径方向の内方側の取付面である。第3取付面613及び第4取付面614は、第1取付座610における回転中心軸AX1の後方側の取付面である。なお、本実施形態の第3取付面613は、切削インサート30とは接しない面となっている。
【0056】
切削インサート30が第2姿勢で装着されるボディ20の第2取付座620は、第1取付面621、第2取付面622、第3取付面623、第4取付面624を有している。第1取付面621は、径方向の内方側の取付面であり、この第1取付面621には、螺子50が螺合されるネジ穴(図示略)が形成されている。第2取付面622は、第2取付座620における回転中心軸AX1の後方側の取付面である。第3取付面623及び第4取付面624は、第2取付座620における回転方向の後方側の取付面である。
【0057】
次に、ボディ20に対する切削インサート30の取り付けについて説明する。
【0058】
(第1取付座610への取り付け)
(1)第1切れ刃311を使用する場合
切削インサート30を第1取付座610に装着させて第1切れ刃311を実際の「切れ刃」として用いる場合、第1切れ刃311をボディ20の先端側へ向けて第1姿勢とした切削インサート30を第1取付座610に嵌め込む。これにより、切削インサート30の端面120を第1取付面611に当接させ、第3側面260および第4側面280をそれぞれ第2取付面612および第5取付面615に当接させ、第2側面240を第3取付面613に対向させ、第1側面220を第4取付面614に当接させる。
【0059】
この状態において、切削インサート30の貫通孔500に対して、その開口部501から螺子50を挿し込み、第1取付座610の第1取付面611のネジ穴にねじ込む。これにより、第1切れ刃311が実際の「切れ刃」として用いられる第1姿勢で切削インサート30がボディ20の第1取付座610に装着される。
【0060】
(2)第1切れ刃312を使用する場合
切削インサート30を第1取付座610に装着させて第1切れ刃312を実際の「切れ刃」として用いる場合、第1切れ刃312をボディ20の先端側へ向けて第1姿勢とした切削インサート30を第1取付座610に嵌め込む。これにより、切削インサート30の端面120を第1取付面611に当接させ、第3側面250および第4側面270をそれぞれ第2取付面612および第5取付面615に当接させ、第2側面230を第3取付面613に対向させ、第1側面210を第4取付面614に当接させる。
【0061】
この状態において、切削インサート30の貫通孔500に対して、その開口部501から螺子50を挿し込み、第1取付座610の第1取付面611のネジ穴にねじ込む。これにより、第1切れ刃312が実際の「切れ刃」として用いられる第1姿勢で切削インサート30がボディ20の第1取付座610に装着される。
【0062】
(第2取付座620への取り付け)
(1)第2切れ刃321を使用する場合
切削インサート30を第2取付座620に装着させて第2切れ刃321を実際の「切れ刃」として用いる場合、第2切れ刃321をボディ20の先端側へ向けて第2姿勢とした切削インサート30を第2取付座620に嵌め込む。これにより、切削インサート30の端面110を第1取付面621に当接させ、第4側面270を第2取付面622に当接させ、第1側面220を第3取付面623に当接させ、第2側面240を第4取付面624に当接させる。
【0063】
この状態において、切削インサート30の貫通孔500に対して、その開口部502から螺子50を挿し込み、第2取付座620の第1取付面621のネジ穴にねじ込む。これにより、第2切れ刃321が実際の「切れ刃」として用いられる第2姿勢で切削インサート30がボディ20の第2取付座620に装着される。
【0064】
(2)第2切れ刃322を使用する場合
切削インサート30を第2取付座620に装着させて第2切れ刃322を実際の「切れ刃」として用いる場合、第2切れ刃322をボディ20の先端側へ向けて第2姿勢とした切削インサート30を第2取付座620に嵌め込む。これにより、切削インサート30の端面110を第1取付面621に当接させ、第4側面280を第2取付面622に当接させ、第1側面210を第3取付面623に当接させ、第2側面230を第4取付面624に当接させる。
【0065】
この状態において、切削インサート30の貫通孔500に対して、その開口部502から螺子50を挿し込み、第2取付座620の第1取付面621のネジ穴にねじ込む。これにより、第2切れ刃322が実際の「切れ刃」として用いられる第2姿勢で切削インサート30がボディ20の第2取付座620に装着される。
【0066】
以上、説明したように、本実施形態に係る切削インサート30によれば、一方の端面110を第1すくい面411とした2つの第1切れ刃311、312が使用可能であり、互いに対向する一対の第1側面210、220をそれぞれ第2すくい面421、422とした2つの第2切れ刃321、322が使用可能である。つまり、切削インサート30をボディ20に取り付ける際の姿勢及び向き等を変更することで、計4つの切れ刃を切り換えて使用することが可能となっている。
【0067】
また、第1切れ刃311,312は、90度よりも小さい刃物角αを有している。したがって、第1切れ刃311、312を用いた切削時における切削抵抗を低減できる。
【0068】
同様に、第2切れ刃321,322は、90度よりも小さい刃物角βを有している。したがって、第2切れ刃321、322を用いた切削時における切削抵抗を低減できる。
【0069】
そして、本実施形態に係るボディ20及び切削工具10によれば、ボディ20の第1取付座610及び第2取付座620にそれぞれ切削インサート30を装着させることにより、第1姿勢の切削インサート30の第1切れ刃311、312及び第2姿勢の切削インサート30の第2切れ刃321、322で同時に切削可能である。
【0070】
特に、ボディ20には、第1取付座610及び第2取付座620が回転中心軸AX1に沿って前後に配列されているので、切削インサート30を先端側及び後端側に装着させることができる。これにより、例えば、一度の切削加工によって、先端側の切削インサート30で粗削り加工を行うとともに、後端側の切削インサート30で仕上げ加工を行うことができる。また、前後に切削インサート30を装着させることにより、工具全体としての切れ刃の刃長を長くでき、高切込みの加工に対応できる。
【0071】
本実施形態では、第1取付座610に装着された際の切削インサート30の第1姿勢は、切削インサート30を厚み方向が回転方向に沿う方向とされる平置き姿勢であり、第2取付座620に装着された際の切削インサート30の第2姿勢は、切削インサート30の幅方向が回転方向に沿う方向とされる縦置き姿勢である。これにより、図9に示すように、切削インサート30を縦置き姿勢である第2姿勢で装着させる第2取付座620では、第1取付面621と切削インサート30との間にシム板700を介在させてねじ止めすることにより、切削インサート30の装着位置をボディ20の径方向外方へ容易に移動させることができる。つまり、第1取付面621と切削インサート30との間にシム板700を介在させることにより、工具径を容易に調整できる。
【0072】
本実施形態では、切削インサート30は、端面110、120と直交する方向の厚みよりも、第1側面210、220と直交する方向の幅寸法が大きくされている。このため、ボディ20に対し、切削インサート30を縦置き姿勢の第2姿勢で装着させる第2取付座620を先端側に設け、切削インサート30を平置き姿勢の第1姿勢で装着させる第1取付座610を後端側に設けるようにすれば、より大きな切削抵抗を受ける先端側に、高い耐久性を持たせることができる縦置き姿勢の切削インサート30を配置して工具寿命を延ばすこともできる。
【符号の説明】
【0073】
10 切削工具
20 ボディ
30 切削インサート
110 端面
111,114 辺
201,204 辺
210,220 第1側面(側面)
311,312 第1切れ刃
321,322 第2切れ刃
411 第1すくい面
421,422 第2すくい面
451,452 第1逃げ面
461,462 第2逃げ面
610 第1取付座
620 第2取付座
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9