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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168057
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】車両異常検知装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 28/10 20060101AFI20241128BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241128BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20241128BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241128BHJP
【FI】
B60K28/10 Z
B60L3/00 N
B60K11/06
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084450
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】柳内 大紀
【テーマコード(参考)】
3D037
3D038
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D037FA23
3D038AB01
3D038AC22
3D235AA01
3D235BB02
3D235BB13
3D235BB36
3D235BB43
3D235BB45
3D235CC15
3D235HH12
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC23
5H125CD07
5H125DD02
5H125EE48
5H125EE70
(57)【要約】
【課題】車両の安全性を向上させることができる車両異常検知装置を提供する。
【解決手段】車両異常検知装置10は、冷却装置11と、バッテリ13と、補機21と、動力源である電力ユニット29と、処理装置33と、センサ35とを備える。冷却装置11は、車両1の動力源等を冷却するラジエーター(放熱器)と、ラジエーターに送風する第1送風機11a及び第2送風機11bとを備える。センサ35は、電力ユニット29の出力電流及び出力電圧の各々を検出する電流センサ及び電圧センサを備える。処理装置33は、補機21の消費電力の変動が所定変動未満と想定される場合、第1送風機11a及び第2送風機11bの状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力の変動に基づいて、第1送風機11a及び第2送風機11bの動作異常の有無を検知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源である蓄電装置と、
放熱器に送風する少なくとも1つの送風機を備える補機と、
前記補機の消費電力を検出する検出部と、
前記補機のうち前記少なくとも1つの送風機以外の消費電力の変動が所定変動未満と想定される場合、前記少なくとも1つの送風機の状態変更を指示した際に前記検出部によって検出される前記消費電力の変動に基づいて、前記少なくとも1つの送風機の動作異常の有無を検知する制御部と
を備える
車両異常検知装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記蓄電装置の充電時に前記動作異常の有無を検知する
請求項1に記載の車両異常検知装置。
【請求項3】
前記制御部は、
操作者による車両システムの停止指示後に前記動作異常の有無を検知する
請求項1に記載の車両異常検知装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記蓄電装置の充電時に動作中の前記補機の個数が所定数以上である場合に前記動作異常の有無の検知を禁止する
請求項2に記載の車両異常検知装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの送風機である複数の送風機と、
前記複数の送風機を電気的に直列接続又は並列接続に切り換える切換部と
を備え、
前記制御部は、前記切換部による前記直列接続又は前記並列接続の切り換えと、前記複数の送風機の各々の作動有無の切り換えとの組み合わせによって、前記複数の送風機の前記状態変更を指示する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両異常検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の冷却系の異常を診断する際に、内燃機関の運転停止後にウォータポンプ、ラジエータファン及びサーモスタットの各々を停止及び起動させた時の機関冷却水の温度変化を参照することによって、内燃機関の発熱及び走行風による冷却等の影響を排除する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-215183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両においては、異常検知の精度及び信頼性を向上させることで安全性を確保することが課題である。
例えば上記した従来技術の装置は、機関冷却水の温度変化によって異常を診断するので、異常検知の応答性を向上させることが困難であり、精度及び信頼性の良い診断を迅速に行うことができないおそれがある。
【0005】
本願は上記課題の解決のため、車両の安全性の向上を目的としたものである。そして、延いては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1):本発明の一態様に係る車両異常検知装置(例えば、実施形態での車両異常検知装置10)は、動力源である蓄電装置(例えば、実施形態での電力ユニット29)と、放熱器に送風する少なくとも1つの送風機(例えば、実施形態での第1送風機11a及び第2送風機11b)を備える補機(例えば、実施形態での第1送風機11a、第2送風機11b、補機21)と、前記補機の消費電力を検出する検出部(例えば、実施形態でのセンサ35)と、前記補機のうち前記少なくとも1つの送風機以外の消費電力の変動が所定変動未満と想定される場合、前記少なくとも1つの送風機の状態変更を指示した際に前記検出部によって検出される前記消費電力の変動に基づいて、前記少なくとも1つの送風機の動作異常の有無を検知する制御部(例えば、実施形態での処理装置33)とを備える。
【0007】
(2):上記(1)に記載の車両異常検知装置では、前記制御部は、前記蓄電装置の充電時に前記動作異常の有無を検知してもよい。
【0008】
(3):上記(1)に記載の車両異常検知装置では、前記制御部は、操作者による車両システムの停止指示後に前記動作異常の有無を検知してもよい。
【0009】
(4):上記(2)に記載の車両異常検知装置では、前記制御部は、前記蓄電装置の充電時に動作中の前記補機の個数が所定数以上である場合に前記動作異常の有無の検知を禁止してもよい。
【0010】
(5):上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の車両異常検知装置は、前記少なくとも1つの送風機である複数の送風機(例えば、実施形態での第1送風機11a及び第2送風機11b)と、前記複数の送風機を電気的に直列接続又は並列接続に切り換える切換部(例えば、実施形態での第1リレー15、第2リレー17及び第3(Hi/Lo)リレー19)とを備え、前記制御部は、前記切換部による前記直列接続又は前記並列接続の切り換えと、前記複数の送風機の各々の作動有無の切り換えとの組み合わせによって、前記複数の送風機の前記状態変更を指示してもよい。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)によれば、送風機以外の補機の消費電力の変動が所定変動未満と想定される場合に送風機の動作異常の有無を検知する制御部を備えることによって、検知精度及び信頼性を向上させることができる。制御部は、検出部によって検出される補機の消費電力の変動に基づいて送風機の動作異常の有無を検知するので、例えば各送風機に専用の各種センサ及び配線等を追加的に設ける必要無しに、装置構成が複雑になること及び構成に要する費用が嵩むことを抑制することができる。
【0012】
上記(2)の場合、例えば外部の電源等によって動力源である蓄電装置が充電される際には、操作者の操作等の不確定要素によって補機が新たに動作又は動作中の補機の状態が変化する可能性は低く、送風機以外の補機の消費電力の変動が所定変動未満と想定される。
【0013】
上記(3)の場合、操作者による車両システムの停止指示後には、操作者の操作等の不確定要素によって補機が新たに動作又は動作中の補機の状態が変化する可能性は低く、送風機以外の補機の消費電力の変動が所定変動未満と想定される。
【0014】
上記(4)の場合、蓄電装置の充電時であっても、動作中の補機の個数が所定数以上である場合には、送風機以外の補機の消費電力の変動が所定変動以上になる可能性があり、動作異常の有無の検知を禁止することによって誤検知の発生を抑制することができる。
【0015】
上記(5)の場合、例えば各送風機の電流、電圧及び回転数等を検出する必要無しに、消費電力の変動に基づいて、切換部の動作異常を精度良く検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態での車両異常検知装置の構成図。
図2】本発明の実施形態での車両異常検知装置の第1ファン及び第2ファンの直列接続(Lo指示)及び並列接続(Hi指示)の各状態を示す図。
図3】本発明の実施形態での車両異常検知装置の動作を示すフローチャート。
図4】本発明の実施形態での車両異常検知装置の第1リレーのOFF固着時におけるLo指示及びHi指示の各状態を示す図。
図5】本発明の実施形態での車両異常検知装置の第3リレーのOFF固着(Lo固着)時におけるLo指示及びHi指示の各状態を示す図。
図6】本発明の実施形態での車両異常検知装置の第2リレーのOFF固着時におけるLo指示及びHi指示の各状態を示す図。
図7】本発明の実施形態での車両異常検知装置の第3リレーのON固着(Hi固着)時におけるLo指示及びHi指示の各状態を示す図。
図8】本発明の実施形態での車両異常検知装置の第2リレーのON固着時におけるLo指示及びHi指示の各状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る車両異常検知装置について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態での車両異常検知装置10の構成図である。
実施形態の車両異常検知装置10は、例えば、電気自動車、ハイブリッド車両及び燃料電池車両等の電動車両(車両)1に搭載されている。電気自動車は、バッテリを動力源として駆動する。ハイブリッド車両は、バッテリ及び内燃機関を動力源として駆動する。燃料電池車両は、燃料電池を動力源として駆動する。
【0018】
図1に示すように、車両異常検知装置10を搭載する車両1は、例えば、冷却装置11と、バッテリ13と、第1リレー15、第2リレー17及び第3(Hi/Lo)リレー19と、補機21と、DC-DCコンバータ23と、ヒーター25と、負荷27と、電力ユニット29と、充電器31と、処理装置33と、センサ35とを備える。
冷却装置11は、例えば、車両1の動力源等を冷却するラジエーター(放熱器)と、ラジエーターに送風する第1送風機11a及び第2送風機11bとを備える。第1送風機11a及び第2送風機11bの各々は、例えば、ブラシ付きモータ等である各回転電機M1,M2が出力する回転力によって送風する。
【0019】
バッテリ13は、例えば低圧のバッテリである。バッテリ13は、例えば、各リレー15,17を介して第1送風機11a及び第2送風機11bの各々と、補機21とに接続される。バッテリ13は、例えば、DC-DCコンバータ23を介して電力ユニット29に接続される。
【0020】
第1リレー15は、第1送風機11aとバッテリ13との間に設けられ、通電のONとOFFとを切り換える。
第2リレー17は、第2送風機11bとバッテリ13との間に設けられ、通電のONとOFFとを切り換える。
第3(Hi/Lo)リレー19は、第1送風機11aと基準電位点及び第2送風機11bとの間に設けられ、第1送風機11a及び基準電位点の接続(Hi接続)と、第1送風機11a及び第2送風機11bの直列接続(Lo接続)とを切り換える。例えば、第3(Hi/Lo)リレー19では、ONの状態がHi接続に対応し、OFFの状態がLo接続に対応する。
【0021】
補機21は、例えば、車両1に搭載される表示器及び灯体等を備える。補機21は、例えば、冷却装置11の第1送風機11a及び第2送風機11b以外にバッテリ13の電力によって動作する低圧の電気機器である。
【0022】
DC-DCコンバータ23は、バッテリ13と電力ユニット29との間に設けられる。DC-DCコンバータ23は、例えば、電力ユニット29からバッテリ13への降圧と、バッテリ13又は外部のDC電源(直流の外部電源)Pdcから電力ユニット29への昇圧との双方向の電力変換を行う。DC電源Pdcは、例えば急速充電器等である。DC電源Pdcは、例えば、車両1の停止中の充電時にDC-DCコンバータ23に接続される。
【0023】
ヒーター25は、例えば、水加熱電気ヒーター等であって、電力ユニット29に接続される。
負荷27は、例えば、車両1の走行駆動力を発生させる回転電機及び回転電機を制御する電力変換デバイス等を備え、電力ユニット29に接続される。負荷27は、DC-DCコンバータ23及びヒーター25以外に電力ユニット29の電力によって動作する高圧の電気機器である。
【0024】
電力ユニット29は、例えば、車両1の動力源である高圧のバッテリ及び高圧のバッテリを制御する電力変換デバイス等を備える。
充電器31は、例えば、外部のAC電源(交流の外部電源)Pacと電力ユニット29との間に設けられ、外部のAC電源Pacから電力ユニット29の高圧のバッテリを充電する。AC電源Pacは、例えば電力系統に接続された商用電源等である。充電器31は、いわゆるオンボードチャージャーであって、例えば、力率改善回路を有するAC-DCコンバータ及び電力供給を制御するDC-DCコンバータ等を備える。充電器31は、例えば、車両1の停止中の充電時にAC電源Pacと電力ユニット29とを接続する。
【0025】
処理装置33は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECUである。なお、処理装置33の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0026】
例えば、処理装置33は、各リレー15,17,19の駆動を指示する信号を出力して、冷却装置11の第1送風機11a及び第2送風機11bの動作を制御する。
図2は、実施形態での車両異常検知装置10の第1送風機11a及び第2送風機11bの直列接続(Lo指示)及び並列接続(Hi指示)の各状態を示す図である。
図2に示すように、処理装置33は、例えば、Lo指示によって第1送風機11a及び第2送風機11bをバッテリ13に対して電気的に直列接続にする。Lo指示では、第1送風機11a及び第2送風機11bの消費電力及び駆動力は相対的に小さくなる。処理装置33は、例えば、Hi指示によって第1送風機11a及び第2送風機11bをバッテリ13に対して電気的に並列接続にする。Hi指示では、第1送風機11a及び第2送風機11bの消費電力及び駆動力は相対的に大きくなる。
Lo指示は、第1リレー15のON、第2リレー17のOFF及び第3(Hi/Lo)リレー19のLo接続を指示する。
Hi指示は、第1リレー15のON、第2リレー17のON及び第3(Hi/Lo)リレー19のHi接続を指示する。
【0027】
例えば、処理装置33は、補機21の消費電力の変動が所定変動未満と想定される場合、第1送風機11a及び第2送風機11bの動作異常の有無を検知する。補機21の消費電力の変動が所定変動未満と想定される場合は、例えば、操作者によるパワースイッチ又はイグニッションスイッチ等の操作によって車両1のシステム停止が指示された場合、又は、外部のAC電源Pacから電力ユニット29の高圧のバッテリへの充電(AC充電)の実行中などである。処理装置33は、例えば、車両1のシステム停止が指示された場合又はAC充電の実行中などでは、操作者の操作等の不確定要素によって補機21が新たに動作又は動作中の補機21の状態が変化する可能性は低いと想定する。
【0028】
処理装置33は、各送風機11a,11bの状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力の変動に基づき、各送風機11a,11bの動作異常の有無を検知する。センサ35は、例えば、電力ユニット29の出力電流及び出力電圧の各々を検出する電流センサ及び電圧センサを備える。処理装置33は、補機21の消費電力の変動が所定変動未満と想定されない場合、各送風機11a,11bの動作異常の有無の検知を禁止することによって誤検知の発生を抑制する。
なお、外部のDC電源PdcからDC-DCコンバータ23を介して電力ユニット29の高圧のバッテリへの充電(DC充電)の実行中では、センサ35によって検出される直流電力の変動が大きくなると想定されるので、処理装置33は各送風機11a,11bの動作異常の有無の検知を禁止する。
【0029】
以下に、実施形態での車両異常検知装置10の動作例について説明する。
図3は、実施形態での車両異常検知装置10の動作を示すフローチャートである。
図3に示すように、先ず、処理装置33は、操作者によって車両1のシステム停止が指示されたか否かを判定する(ステップS01)。
この判定結果が「NO」の場合、処理装置33は処理をステップS02に進める。
一方、この判定結果が「YES」の場合、処理装置33は処理をステップS05に進める。
【0030】
次に、処理装置33は、外部のAC電源Pacから電力ユニット29の高圧のバッテリへの充電であるAC充電の実行中であるか否かを判定する(ステップS02)。
この判定結果が「NO」の場合、処理装置33は処理をステップS03に進める。
一方、この判定結果が「YES」の場合、処理装置33は処理をステップS04に進める。
次に、処理装置33は、第1送風機11a及び第2送風機11bの動作異常の有無検知の実行を禁止する(ステップS03)。そして、処理装置33は処理をエンドに進める。
【0031】
次に、処理装置33は、動作中の補機21の個数が所定数未満であるか否かを判定する(ステップS04)。
この判定結果が「NO」の場合、処理装置33は処理をステップS03に進める。
一方、この判定結果が「YES」の場合、処理装置33は処理をステップS05に進める。
次に、処理装置33は、動作中の補機21の状態(負荷等)が所定時間内に安定したか否かを判定する(ステップS05)。
この判定結果が「NO」の場合、処理装置33は処理をステップS03に進める。
一方、この判定結果が「YES」の場合、処理装置33は処理をステップS06に進める。
次に、処理装置33は、第1送風機11a及び第2送風機11bの動作異常の有無検知を実行する(ステップS06)。そして、処理装置33は処理をエンドに進める。
【0032】
処理装置33は、例えば下記表1に示すように、各リレー15,17,19のOFF固着及びON固着の各々による異常を検知するために、第1送風機(第1ファン)11a及び第2送風機(第2ファン)11bに対して所定の状態変化を指示する。
【0033】
【表1】
【0034】
図4は、実施形態での車両異常検知装置10の第1リレー15のOFF固着時におけるLo指示及びHi指示の各状態を示す図である。
図4に示すように、第1リレー15のOFF固着時には、第1ファン11aは、通電が遮断されることに伴い、Lo指示又はHi指示にかかわらずにOFF(通電停止)状態になる。第2ファン11bは、Lo指示による直列接続では、第1ファン11aからの通電が遮断されることに伴い、OFF(通電停止)状態になる。
【0035】
これらにより、処理装置33は、各ファン11a,11bのOFF(通電停止)から直列接続(Lo指示)への状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力が変動せず、正常状態での想定よりも消費電力が小さい場合、第1リレー15のOFF固着が生じていると判定する。
同様に、処理装置33は、各ファン11a,11bの直列接続(Lo指示)から並列接続(Hi指示)への状態変更又はOFF(通電停止)から並列接続(Hi指示)への状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力が正常状態での想定よりも小さい場合、第1リレー15のOFF固着が生じていると判定する。
【0036】
図5は、実施形態での車両異常検知装置10の第3リレー19のOFF固着(Lo固着)時におけるLo指示及びHi指示の各状態を示す図である。
図5に示すように、第3リレー19のOFF固着(Lo固着)時には、Lo指示又はHi指示にかかわらずに各ファン11a,11bが直列接続に維持される。第1リレー15及び第2リレー17がONになるHi指示で各ファン11a,11bが直列接続の場合、第1ファン11aの正極及び負極間で電位差が生じず、第1ファン11aはOFF(通電停止)状態になる。
これにより、処理装置33は、各ファン11a,11bの直列接続(Lo指示)から並列接続(Hi指示)への状態変更又はOFF(通電停止)から並列接続(Hi指示)への状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力が正常状態での想定よりも小さい場合、第3リレー19のOFF固着が生じていると判定する。
【0037】
図6は、実施形態での車両異常検知装置10の第2リレー17のOFF固着時におけるLo指示及びHi指示の各状態を示す図である。
図6に示すように、第2リレー17のOFF固着時には、第2ファン11bは、第2リレー17からの通電が遮断されることに伴い、Hi指示にかかわらずにOFF(通電停止)状態になる。
これにより、処理装置33は、各ファン11a,11bの直列接続(Lo指示)から並列接続(Hi指示)への状態変更又はOFF(通電停止)から並列接続(Hi指示)への状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力が正常状態での想定よりも小さい場合、第2リレー17のOFF固着が生じていると判定する。
【0038】
図2に示す正常状態でのLo指示及びHi指示の各状態と、第1リレー15のON固着時でのLo指示及びHi指示の各状態とは同一である。ただし、第1リレー15のON固着時では、各ファン11a,11bのOFF指示の状態とLo指示の状態とが同一である。
これにより、処理装置33は、各ファン11a,11bのOFF(通電停止)から直列接続(Lo指示)への状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力が変動せず、正常状態での想定よりも消費電力が小さい場合、第1リレー15のON固着が生じていると判定する。
同様に、処理装置33は、各ファン11a,11bのOFF(通電停止)から並列接続(Hi指示)への状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力が正常状態での想定よりも小さい場合、第1リレー15のON固着が生じていると判定する。
【0039】
図7は、実施形態での車両異常検知装置10の第3リレー19のON固着(Hi固着)時におけるLo指示及びHi指示の各状態を示す図である。
図7に示すように、第3リレー19のON固着(Hi固着)時には、各ファン11a,11bの直列接続が禁止される。第2ファン11bは、第1ファン11aからの通電が遮断されることに伴い、Lo指示にかかわらずにOFF(通電停止)状態になる。
これにより、処理装置33は、各ファン11a,11bのOFF(通電停止)から直列接続(Lo指示)への状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力が正常状態での想定よりも小さい場合、第3リレー19のON固着が生じていると判定する。
また、処理装置33は、各ファン11a,11bの直列接続(Lo指示)から並列接続(Hi指示)への状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力が正常状態での想定よりも大きい場合、第3リレー19のON固着が生じていると判定する。
【0040】
図8は、実施形態での車両異常検知装置10の第2リレー17のON固着時におけるLo指示及びHi指示の各状態を示す図である。
図8に示すように、第2リレー17のON固着時には、第2ファン11bは、第2リレー17からの通電が維持されることに伴い、OFF指示又はLo指示にかかわらずにON(通電)状態になる。第1リレー15がON及び各ファン11a,11bが直列接続になるLo指示で第2リレー17がONの場合、第1ファン11aの正極及び負極間で電位差が生じず、第1ファン11aはOFF(通電停止)状態になる。つまり、第2リレー17のON固着時には、OFF指示の状態とLo指示の状態とは同一である。
【0041】
これらにより、処理装置33は、各ファン11a,11bのOFF(通電停止)から直列接続(Lo指示)への状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力が変動せず、正常状態での想定よりも消費電力が小さい場合、第2リレー17のON固着が生じていると判定する。
また、処理装置33は、各ファン11a,11bの直列接続(Lo指示)から並列接続(Hi指示)への状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力が正常状態での想定よりも大きい場合、第2リレー17のON固着が生じていると判定する。
また、処理装置33は、各ファン11a,11bのOFF(通電停止)から並列接続(Hi指示)への状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力が正常状態での想定よりも小さい場合、第2リレー17のON固着が生じていると判定する。
【0042】
上述したように、実施形態の車両異常検知装置10によれば、各送風機11a,11b以外の補機21の消費電力の変動が所定変動未満と想定される場合に各送風機11a,11bの動作異常の有無を検知する処理装置33を備えることによって、検知精度及び信頼性を向上させることができる。処理装置33は、センサ35によって検出される消費電力の変動に基づいて各送風機11a,11bの動作異常の有無を検知するので、例えば各送風機11a,11bに専用の各種センサ及び配線等を追加的に設ける必要無しに、装置構成が複雑になること及び構成に要する費用が嵩むことを抑制することができる。
【0043】
車両1のシステム停止が指示された場合又はAC充電の実行中などでは、操作者の操作等の不確定要素によって補機21が新たに動作又は動作中の補機21の状態が変化する可能性は低く、補機21の消費電力の変動が所定変動未満と想定される。
一方、AC充電の実行時であっても、動作中の補機21の個数が所定数以上である場合には、補機21の消費電力の変動が所定変動以上になる可能性があり、動作異常の有無の検知を禁止することによって誤検知の発生を抑制することができる。
【0044】
処理装置33は、各送風機11a,11bの状態変更を指示した際にセンサ35によって検出される消費電力の変動と、各リレー15,17,19が正常の場合に想定される消費電力の変動とを比較するので、例えば各送風機11a,11bの電流、電圧及び回転数等を検出する必要無しに、各リレー15,17,19の動作異常を精度良く検知することができる。
【0045】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
上述した実施形態では、処理装置33は、ステップS04にて、動作中の補機21の個数が所定数未満であるか否かを判定するとしたが、これに限定されない。例えば、処理装置33は、ステップS04にて、動作中の補機21の負荷が所定値未満であるか否かを判定してもよい。
【0046】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
10…車両異常検知装置、11…冷却装置、13…バッテリ、15…第1リレー(切換部)、17…第2リレー(切換部)、19…第3(Hi/Lo)リレー(切換部)、21…補機、23…DC-DCコンバータ、25…ヒーター、27…負荷、29…電力ユニット(蓄電装置)、31…充電器、33…処理装置(制御部)、35…センサ(検出部)。
図1
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図8