(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168065
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】推進装置、及び移動体
(51)【国際特許分類】
B63H 5/15 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B63H5/15 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084458
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】細野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓慶
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 茂樹
(57)【要約】
【課題】設計の自由度の向上を図ることができる推進装置、及び移動体を提供する。
【解決手段】推進装置は、水面下で軸線が前後方向に延びるように配置され、流路を形成する筒部と、筒部の内部に配置され、軸線方向に延びる軸部と、軸部に装着され、流路内で軸線の径方向に延びるとともに軸線の周方向に配列された複数のプロペラ翼を有し、軸線回りに回転可能なプロペラと、流路内でプロペラに対して前側及び後側の少なくともいずれか一方に設けられ、径方向に延びるとともに周方向に配列され、軸部を支持する複数のストラットと、を備え、複数のストラットは、上下方向に延びて軸線を通る対称線に対して左右対称に配置され、ストラット同士の角度間隔のうち少なくとも1つの角度間隔は、他のストラット同士の角度間隔と異なり、軸線を通るように水平方向に延在する水平面に対して、上下方向両側に少なくとも1つのストラットが配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面下で軸線が前後方向に延びるように配置され、前側を上流側とするとともに後側を下流側とする流路を形成する筒部と、
前記筒部の内部に配置され、前記軸線方向に延びる軸部と、
前記軸部に装着され、前記流路内で前記軸線の径方向に延びるとともに前記軸線の周方向に配列された複数のプロペラ翼を有し、前記軸線回りに回転可能なプロペラと、
前記流路内で前記プロペラに対して前側及び後側の少なくともいずれか一方に設けられ、前記径方向に延びるとともに前記周方向に配列され、前記軸部を支持する複数のストラットと、
を備え、
前記複数のストラットは、上下方向に延びて前記軸線を通る対称線に対して左右対称に配置され、
前記ストラット同士の角度間隔のうち少なくとも1つの角度間隔は、他の前記ストラット同士の角度間隔と異なり、
前記軸線を通るように水平方向に延在する水平面に対して、上下方向両側に少なくとも1つの前記ストラットが配置されている、推進装置。
【請求項2】
前記ストラット同士の角度間隔のうち1つの角度間隔のみが、他の前記ストラット同士の角度間隔と異なっている、請求項1に記載の推進装置。
【請求項3】
N本の前記ストラットのそれぞれが、前記軸線回りの領域を前記周方向に均等に分割する(N×2-1)本の分割線のいずれかに配置され、1以上N未満であるN’に対して、前記ストラット同士の角度間隔は、N’×360/(N×2-1)度のいずれかである、請求項1又は2に記載の推進装置。
【請求項4】
前記分割線の本数(N×2-1)と、前記プロペラ翼の数とは、互いに素である請求項3に記載に推進装置。
【請求項5】
前記分割線の本数(N×2-1)は、前記プロペラ翼の数と異なっている、請求項3に記載の推進装置。
【請求項6】
前記ストラットの数は、N=4である、請求項3に記載の推進装置。
【請求項7】
M≧Nとして、
N本の前記ストラットのそれぞれが、前記軸線回りの領域を前記周方向に均等に分割する(M×2-1)本の分割線のいずれかに配置されている、請求項1又は2に記載の推進装置。
【請求項8】
前記プロペラは、前後方向に並んで2つ設けられ、
前記2つのプロペラは、互いに逆向きに回転するように設けられ、
前記ストラットは、前記2つのプロペラに対して前側及び後側のそれぞれに複数設けられ、
後側の前記複数のストラットの配置は、前側の前記複数のストラットの配置を上下反転させた配置である、請求項1又は2に記載の推進装置。
【請求項9】
前記プロペラ翼の数と前記ストラットの数には、公約数が存在する、請求項1又は2に記載の推進装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の推進装置を備え、水上及び水中の少なくともいずれか一方で移動可能な移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、推進装置、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、船舶等に取り付けられるノズル付きの推進装置が開示されている。この推進装置では、プロペラ軸を支持するストラットがプロペラ翼の前後に設けられている。ストラットはプロペラ軸の周りに周方向に並んで角度間隔が均等となるように、複数設けられている。これら均等に配置された複数のストラットによって、プロペラ軸が強固に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の推進装置では、ストラットの本数の増加に伴い流体の抵抗が増加する。そのため、推進装置の効率が低下することが懸念される。また、プロペラの回転中に、プロペラ翼とストラットとが一度に重なる領域が大きいと、推力の変動が大きくなるため、プロペラ翼の枚数を考慮してストラットの本数を決めなければならない。さらに、推進装置の強度も考慮する必要があり、設計の自由度が大きく制限されてしまっていた。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、設計の自由度の向上を図ることができる推進装置、及び移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る推進装置は、水面下で軸線が前後方向に延びるように配置され、前側を上流側とするとともに後側を下流側とする流路を形成する筒部と、前記筒部の内部に配置され、前記軸線方向に延びる軸部と、前記軸部に装着され、前記流路内で前記軸線の径方向に延びるとともに前記軸線の周方向に配列された複数のプロペラ翼を有し、前記軸線回りに回転可能なプロペラと、前記流路内で前記プロペラに対して前側及び後側の少なくともいずれか一方に設けられ、前記径方向に延びるとともに前記周方向に配列され、前記軸部を支持する複数のストラットと、を備え、前記複数のストラットは、上下方向に延びて前記軸線を通る対称線に対して左右対称に配置され、前記ストラット同士の角度間隔のうち少なくとも1つの角度間隔は、他の前記ストラット同士の角度間隔と異なり、前記軸線を通るように水平方向に延在する水平面に対して、上下方向両側に少なくとも1つの前記ストラットが配置されている。
【0007】
本開示に係る移動体は、上記の推進装置を備え、水上及び水中の少なくともいずれか一方で移動可能である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の推進装置、及び移動体によれば、設計の自由度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る移動体の概略構成を示す模式図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る推進装置を左側から見た模式図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係るプロペラ翼の配置を前側から見た模式図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係るストラットの配置を前側から見た模式図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係るストラットの配置の別の一例を前側から見た模式図である。
【
図6】本開示の第2実施形態に係るストラットの配置を前側から見た模式図である。
【
図7】本開示の第3実施形態に係るストラットの配置を前側から見た模式図である。
【
図8】本開示の第4実施形態に係る推進装置を左側から見た模式図である。
【
図9】本開示の第4実施形態に係る前側のストラットの配置を示す模式図である。
【
図10】本開示の第4実施形態に係る後側のストラットの配置を示す模式図である。
【
図11】本開示の変形例に係る移動体の概略構成を示す模式図である。
【
図12】本開示の変形例に係る推進装置を左側から見た模式図である。
【
図13】本開示の変形例に係る推進装置を左側から見た模式図である。
【
図14】本開示の変形例に係るストラットの配置を前側から見た模式図である。
【
図15】本開示の変形例に係るストラットの配置を前側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
(移動体の構成)
以下、本開示の実施形態に係る移動体1について、
図1から
図4を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の移動体1は、水上で移動可能な船舶1aである。船舶1aは、船体2と、推進装置10と、を備える。
【0011】
(船体)
船体2は、水面W上に浮かぶように箱型に形成された構造体である。船体2は、水平面に沿う一方向に延びている。船体2は、船首3、船尾4と、船底5と、を有する。船首3は、船体2の長手方向一方側の部分である。船尾4は、船体2の長手方向他方側の部分である。船底5は、船体2の下側の部分を構成している。船底5は、船体2の長手方向延びて、船首3と船尾4とを接続している。
【0012】
以下では、鉛直上下方向を単に「上下方向Dv」と称して説明する。また、船体2の長手方向に沿う方向を前後方向Dsとし、船体2の船幅方向に沿う方向を左右方向Dwとする。上側には「Dvu」の符合をし、下側には「Dvd」の符合を付す。また、前側には「Dsf」の符合を付し、後側には「Dsb」の符合を付す。また、右側には「Dwr」の符合を付し、左側には「Dwl」の符合を付す。
【0013】
(推進装置)
推進装置10は、船底5に取り付けられている。なお、推進装置10の設置個所は、船底5に限られない。例えば船舶1aがモーターボート場合には、船尾4に搭載された船外機の一部として推進装置10が設けられてもよい。
図2に示すように、推進装置10は、筒部11と、固定装置12と、軸部13と、プロペラ20と、ハブ14と、ストラット15と、を備える。
【0014】
(筒部)
筒部11は、一般にノズル、又はダクトと呼ばれている。本実施形態の筒部11は、円筒状に形成されている。筒部11は、水面W下で軸線Oが前後方向Dsに延びるように配置されている。筒部11は、前側Dsfを上流側とするとともに後側Dsbを下流側とする流路Fを形成している。
【0015】
以下では、筒部11の軸線Oを単に「軸線O」と称し、軸線Oの径方向を単に「径方向」と称し、軸線Oの周方向を単に「周方向」と称する。また、特に説明の無い限り、軸線O方向は、前後方向Dsと一致し、上下方向Dv及び左右方向Dwと直交しているものとする。
【0016】
(固定装置)
固定装置12は、船体2に筒部11を固定している。固定装置12は、船底5から下方に延びる垂直軸12aを有する。垂直軸12aは、船底5と筒部11とを接続している。垂直軸12aは、船体2に対して回転可能に設けられている。垂直軸12aが回転することにより、筒部11は左右に旋回することができる。
なお、垂直軸12aは、船体2に対し固定されていてもよい。
【0017】
(軸部)
軸部13は、筒部11の内部に配置されている。軸部13は、軸線Oに沿って一方向に延びる柱状に形成されている。
【0018】
(プロペラ)
プロペラ20は、軸部13に装着され、軸線O回りに回転可能に取り付けられている。本実施形態では、筒部11内に1つのプロペラ20が配置されている。プロペラ20は、プロペラハブ21と、プロペラ翼22と、を有する。プロペラハブ21は、軸部13が挿通される円環状の部材である。プロペラ翼22は、流路F内でプロペラハブ21から径方向外側に延びている。プロペラ翼22は、周方向に配列されて複数設けられている。例えば本実施形態では、
図3に示すように、プロペラ翼22が6枚設けられている。
【0019】
(ハブ)
ハブ14は、軸部13の軸線O方向の前側Dsfの端部に設けられている。ハブ14には、複数のストラット15が設けられている。
【0020】
(ストラット)
ストラット15は、流路F内でプロペラ20に対して前側Dsfに設けられている。ストラット15は、ハブ14から径方向延びて筒部11に接続されている。ストラット15は、周方向に複数配列されている。ストラット15は、ハブ14を介して軸部13を支持している。
【0021】
ストラット15の姿勢は、適宜選択可能である。ただし、ストラット15は、プロペラ20の回転と逆向きに前後方向Dsに対して傾けて配置されることが望ましい。このようにストラット15を傾けて配置することにより、筒部11内の流れには、ストラット15によって、プロペラ20で生じる旋回流を打ち消す向きの旋回流が付与される。なお、ストラット15は、プロペラ20の回転と同じ向きに前後方向Dsに対して傾けて配置されていてもよいし、前後方向Dsに沿うように配置されていてもよい。
【0022】
(ストラットの配置)
複数のストラット15は、以下の3つのルールに則って設けられている。
第1に、複数のストラット15は、上下方向Dvに延びて軸線Oを通る対称線L1に対して左右対称に配置されている(第1条件)。
第2に、ストラット15同士の角度間隔のうち少なくとも1つの角度間隔は、他のストラット15同士の角度間隔と異なっている(第2条件)。
第3に、軸線Oを通るように水平方向に延在する水平面HSに対して、上下方向Dv両側に少なくとも1つのストラット15が配置されている(第3条件)。
上記ルール(第1条件、第2条件、第3条件)を満たせば、ストラット15の本数、及び配置を適宜変更することができる。
【0023】
これら3つのルールを満たした上で、設計指針の1つとして、本実施形態では、さらに以下のルールに則ってストラット15の配置が決定される。
【0024】
ここで、前後方向Dsから見て、径方向に延びるとともに、軸線O回りの領域を周方向に均等に奇数個に分割する複数本の分割線L2を考える。複数の分割線L2のうち1本の分割線L2を、対称線L1上に設定する。この対称線L1と一致して設定される分割線L2が、他の複数の分割線L2の設定の基準(0度)となる。さらに、これら複数の分割線L2を、対称線L1を基準として左右対称となるように設定する。
【0025】
分割線L2の本数は、ストラット15の本数に応じて設定される。
例えば、ストラット15の本数をN(自然数)本とすると、分割線L2は(N×2-1)本となる。なお、分割線L2の本数(N×2-1)は、プロペラ翼22の数と異なっている。ここで、分割線L2同士の角度間隔をθ1度とすると、
θ1=360/(N×2-1)となる。
【0026】
N本のストラット15のそれぞれが、前後方向Dsから見て、(N×2-1)本の分割線L2のいずれかに配置される。本実施形態では、軸線O方向から見て、ストラット15の径方向に延びる中心線が分割線L2と一致するように、各ストラット15が配置されている。この時、隣り合うストラット15同士の角度間隔について、1以上N未満であるN’に対して、ストラット15同士の角度間隔がN’×360/(N×2-1)度のいずれかとなるようにする。これにより、本実施形態では、ストラット15同士の角度間隔が均等にならないように、複数のストラット15が配置されている。
【0027】
以後、隣り合う1組のストラット同士の角度間隔についてのみN’が1であり、他の隣り合うストラット同士の角度間隔についてN’が2である場合を代表して説明する。
N本のストラット15のそれぞれが、前後方向Dsから見て、(N×2-1)本の分割線L2のいずれかに配置される。この時、隣り合うストラット15同士の角度間隔のうち、1つの角度間隔(以下、この角度間隔を第1角度間隔と称する場合がある。)のみθ1=360/(N×2-1)度とし、残りストラット15同士の角度間隔(以下、この角度間隔を第2角度間隔と称する場合がある。)は、θ2=2×θ1=2×360/(N×2-1)度となるようにする。これにより、本実施形態では、ストラット15同士の角度間隔のうち1つの角度間隔のみが、他のストラット15同士の角度間隔と異なるように、複数のストラット15が配置されている。
【0028】
本実施形態では、
図4に示すように、ストラット15がN=3本設けられている。この場合、分割線L2の本数は、N×2-1=5本となる。また、第1角度間隔θ1は、θ1=360/(N×2-1)=72度となり、第2角度間隔θ2は、θ2=2×θ1=2×360/(N×2-1)=144度となる。なお、
図4では、プロペラ20の図示が省略されている。
この時、5本の分割線L2のうち1本が上下方向Dvに延びる対称線L1上に設定される。図示の例では、この対称線L1上の1本の分割線L2は、軸線Oを通る水平面HSよりも上方に位置している。このようにして設定された分割線L2上に、第1角度間隔θ1と第2角度間隔θ2を満たすように、ストラット15を配置する。
なお、軸線Oを基準として複数のストラット15及び分割線L2を上下方向Dvに反転させてもよい。この場合、対称線L1上の1本の分割線L2は、軸線Oを通る水平面HSよりも下方に位置する。
【0029】
また、上述したように、本実施形態では、6枚のプロペラ翼22に対して、3本のストラット15が設けられている。すなわち、本実施形態では、プロペラ翼22の数とストラット15の数には、公約数が存在するように、推進装置10が設計されている。ただし、ストラット15の数をNとしたとき、プロペラ翼22の数と分割線L2の本数(N×2-1)とが互いに素であるように、推進装置10が設計されている。
【0030】
(作用効果)
本実施形態の推進装置10は、以下に示す作用効果を発揮することができる。
【0031】
本実施形態では、推進装置10は、筒部11と、軸部13と、プロペラ20と、複数のストラット15と、を備える。筒部11は、水面W下で軸線Oが前後方向Dsに延びるように配置され、前側Dsfを上流側とするとともに後側Dsbを下流側とする流路Fを形成している。軸部13は、筒部11の内部に配置され、軸線O方向に延びている。プロペラ20は、軸部13に装着され、流路F内で軸線Oの径方向に延びるとともに軸線Oの周方向に配列された複数のプロペラ翼22を有し、軸線O回りに回転可能とされている。複数のストラット15は、流路F内でプロペラ20に対して前側Dsfに設けられ、径方向に延びるとともに周方向に配列され、軸部13を支持している。そして、複数のストラット15は、上下方向Dvに延びる対称線L1に対して左右対称に配置されている(第1条件)。さらに、ストラット15同士の角度間隔のうち少なくとも1つの角度間隔は、他のストラット15同士の角度間隔と異なっている(第2条件)。また、軸線Oを通るように水平方向に延在する水平面HSに対して、上下方向Dv両側に少なくとも1つのストラット15が配置されている(第3条件)。
【0032】
本実施形態では、複数のストラット15が、上下方向Dvに延びる対称線L1に対して左右対称に配置されている。これにより、旋回時にストラット15に生じる力の左右の偏りを抑制することができる。よって、旋回時にストラット15に生じる力が左右同一となるため、左右どちらか一方への水流負荷の偏りが抑制され、旋回性能を十分に確保することができる。
【0033】
ところで、プロペラ20の回転中に、ストラット15とプロペラ翼22とが重なることにより、プロペラ翼22に流入する流れの流速が減速し、推力が変動するが、本実施形態では、ストラット15同士の角度間隔のうち少なくとも1つの角度間隔は、他のストラット15同士の角度間隔と異なっている。これにより、複数のストラット15と複数のプロペラ翼22とが、一度に重なる領域を少なくすることができる。このため、推力変動を低減することができる。また、プロペラ20の効率をより一層向上させることができる。
【0034】
さらに、少なくとも1つのストラット15が、軸線Oを通るように水平方向に延在する水平面HSに対して、上下方向Dv両側に少なくとも1つのストラット15が配置されている。これにより、ストラット15によって上下方向Dv両側から軸部13を支持することができる。よって、推進装置10の強度を向上させることができる。
【0035】
このため、本実施形態によれば、ストラット15の数を自由に設定しても、推進装置10は、要求される機能を十分に発揮することができる。すなわち、設計の自由度を向上させることができる。例えばプロペラ翼22の数等の構造によらず、強度の観点のみからストラット15の本数を自由に決定することができる。よって、どのようなプロペラ20に対しても、本実施形態のストラット15の配置を適用することできるので、設計の自由度を向上させることができる。このため、強度を確保する上で最低限必要なだけストラット15の本数を抑えつつ、推力変動を抑えることができる。ストラット15の本数が不必要に増加しないため、ストラット15自体による抵抗も低減させることができる。
【0036】
本実施形態では、N本のストラット15のそれぞれが、軸線O回りの領域を周方向に均等に分割する(N×2-1)本の分割線L2のいずれかに配置されている。1以上N未満であるN’に対して、ストラット15同士の角度間隔は、N’×360/(N×2-1)度のいずれかである。
【0037】
本実施形態によれば、分割線L2に基づいてストラット15の配置することができるので、ストラット15の位置決めが容易となる。よって、推進装置10を容易に設計することができる。
【0038】
本実施形態では、ストラット15同士の角度間隔のうち1つの角度間隔のみが、他のストラット15同士の角度間隔と異なる場合を代表して記述した。
【0039】
このように配置することで、上述したストラット15の配置条件(第1条件、第2条件、及び第3条件)を容易に満たすことができる。よって、設計効率を向上させることができる。また、角度間隔が異なる箇所を1つのみに抑えることができるので、ストラット15の間を流れる流量の制御が容易となる。
【0040】
本実施形態では、N本のストラット15のそれぞれが、軸線O回りの領域を周方向に均等に分割する(N×2-1)本の分割線L2のいずれかに配置されている。ストラット15同士の角度間隔のうち1つの角度間隔は、θ1=360/(N×2-1)度であり、残りの全てのストラット15同士の角度間隔は、θ2=2×360/(N×2-1)度である。
【0041】
本実施形態によれば、分割線L2を設定してその分割線L2上にストラット15を配置するだけで、上述したストラット15の配置条件を満たすことができる。すなわち、ストラット15同士の角度間隔のうち1つの角度間隔のみが、他のストラット15同士の角度間隔と異なるようなストラット15の配置を容易に実現することができる。よって、製造効率をより一層向上させることができる。
【0042】
本実施形態では、分割線L2の本数(N×2-1)は、プロペラ翼22の数と異なっている。
【0043】
本実施形態によれば、分割線L2とプロペラ翼22とが一度に重なる領域を少なくすることができる。ストラット15は、分割線L2上に配置されるため、ストラット15とプロペラ翼22とが一度に重なる領域を少なくすることができる。したがって、推力変動をより一層低減することができる。よって、より一層効果的にストラット15を配置することができる。
【0044】
本実施形態では、プロペラ翼22の数とストラット15の数には、公約数が存在しても構わない(ただし、ストラット15の数をNとしたとき、プロペラ翼22の数と分割線L2の本数(N×2-1)とが互いに素であるように、推進装置10が設計されている)。
【0045】
本実施形態によれば、例えば、プロペラ翼22の数とストラット15の数に公約数が存在しないことに限定した場合(プロペラ翼22の数とストラット15の数が互いに素の場合)と比較して、プロペラ翼22とストラット15の本数や配置の選択肢が多くなる。よって、設計の自由度をより一層向上させることができる。
また、分割線L2の本数(N×2-1)と、プロペラ翼22の数とは、互いに素であるため、プロペラ翼22と重なる分割線L2の本数を1本に抑えることができる。ストラット15は、分割線L2上に配置されるため、プロペラ翼22と一度に重なるストラット15の本数を1本に抑えることができる。したがって、推力変動をより一層低減することができる。
【0046】
上記第1実施形態では、ストラット15がN=3本設けられている場合について説明したが、これに限られない。
例えば、
図5に示すように、ストラット15がN=5本設けられていてもよい。この場合、分割線L2の本数は、N×2-1=9本となる。また、第1角度間隔θ1は、θ1=360/(N×2-1)=40度となり、第2角度間隔θ2は、θ2=2×θ1=2×360/(N×2-1)=80度となる。
この時、9本の分割線L2のうち1本が上下方向Dvに延びる対称線L1上に設定される。図示の例では、この対称線L1上の1本の分割線L2は、軸線Oを通る水平面HSよりも上方に位置している。このようにして設定された分割線L2上に、第1角度間隔θ1と第2角度間隔θ2を満たすように、ストラット15を配置する。
なお、軸線Oを基準として複数のストラット15及び分割線L2を上下方向Dvに反転させてもよい。この場合、対称線L1上の1本の分割線L2は、軸線Oを通る水平面HSよりも下方に位置する。
【0047】
なお、本変形例では、6枚のプロペラ翼22に対して、5本のストラット15が設けられている。すなわち、本変形例では、プロペラ翼22の数とストラット15の数には、公約数が存在しない。また、ストラット15の数をNとしたとき、プロペラ翼22の数と分割線L2の本数(N×2-1)とは異なるように、推進装置10が設計されている。
【0048】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態について
図6を参照して説明する。上記実施形態と同様の構成については、同一の符号・名称を付す等して説明を適宜省略する。以下で説明しない構成は、上記実施形態と同一であるものとする。
【0049】
本実施形態の推進装置110では、
図6に示すように、ストラット15の本数は、N=4本である。
図6は、第1実施形態の
図4に相当する図面である。
図6では、プロペラ20の図示が省略されている。
本実施形態でも、第1実施形態と同様のルールで複数本の分割線L2を設定し、分割線L2上にストラット15を配置する。
すなわち、分割線L2は、N×2-1=7本設定される。また、第1角度間隔θ1は、θ1=360/(N×2-1)≒51.4度となり、第2角度間隔θ2は、θ2=2×θ1=2×360/(N×2-1)≒102.8度となる。
この時、7本の分割線L2のうち1本が上下方向Dvに延びる対称線L1上に設定される。図示の例では、この対称線L1上の1本の分割線L2は、軸線Oを通る水平面HSよりも下方に位置している。このようにして設定された分割線L2上に、第1角度間隔θ1と第2角度間隔θ2を満たすように、ストラット15を配置する。
【0050】
(作用効果)
本実施形態の推進装置110は、以下に示す作用効果を発揮することができる。
【0051】
本実施形態では、ストラット15の数は、N=4である。
【0052】
プロペラ20では、プロペラ翼22の数が3から6枚のものが多い。最も一般的なプロペラ翼22の数が3から6枚の場合には、本実施形態のようにストラット15の数を4本とし、7本の分割線L2上に配置することが強度と推力を確保する上で適している。よって、多くのプロペラ20に対して本実施形態を適用することができ、汎用性を持たせることができる。
【0053】
ここで、例えば、1つの推進装置110につき、6枚のプロペラ翼22が、周方向に均等に(等間隔で)設けられている場合を想定する。この時、3本のストラットが周方向に均等に設けられているとすると、プロペラ20の駆動中に、6枚のプロペラ翼22のうち3本が、ストラットと一度に重なってしまい、推力が大きく変動する。また、4本のストラットが周方向に均等に設けられているとすると、プロペラ20の駆動中に、6枚のプロペラ翼22のうち2本が、ストラットと一度に重なるが、3本のストラットが周方向に均等に設けられる場合と比較して、プロペラ翼22と一度に重なるストラットの数を少なくすることができ、推力変動も抑制することができる。さらに、本実施形態のように、4本のストラット15を周方向に不均等に配置し、ストラット15同士の角度間隔のうち1つの角度間隔を、他のストラット15同士の角度間隔と異なるように配置することにより、プロペラ20の駆動中に、プロペラ翼22と一度に重なるストラット15の数を1つに抑えることができる。これにより、推力変動をより一層抑制することができる。
【0054】
さらに、上下方向Dvに延びる対称線L1に対して複数のストラット15を左右対称に配置することが容易となる。よって、旋回時にストラット15に生じる力の左右の偏りを抑制する設計が容易となるため、本実施形態は、構造設計の観点でも適している。
【0055】
<第3実施形態>
続いて、第3実施形態について
図7を参照して説明する。上記実施形態と同様の構成については、同一の符号・名称を付す等して説明を適宜省略する。以下で説明しない構成は、上記実施形態と同一であるものとする。
【0056】
本実施形態の推進装置210では、
図7に示すように、N本のストラット15に対し、M≧N(Mは自然数)として、(M×2-1)本の分割線L2が設定されている。これら(M×2-1)本の分割線L2は、上述した第1実施形態と同様に、軸線O回りの領域を周方向に分割する。分割線L2同士の角度間隔θ1は、θ1=360/(M×2-1)度となる。N本のストラット15のそれぞれが、(M×2-1)本の分割線L2のいずれかに配置されている。
【0057】
図7には、N=4、M=6として、ストラット15がN=4本、分割線L2が(M×2-1)=11本の場合が示されている。4本のストラット15は、第1条件、第2条件、第3条件を満たすように、11本の分割線L2上にそれぞれ配置されている。
【0058】
図示の例では、上の2本のストラット15同士のみ、1本の分割線L2が間に位置するように配置され、他のストラット15同士は、2本の分割線L2が間に位置するように配置されている。このため、上の2本のストラット15同士の角度間隔(第3角度間隔)θ3のみ、θ3=2×360/(M×2-1)=2×θ1≒2×32.7≒65.4度となり、他のストラット15同士の角度間隔(第4角度間隔)θ4は、θ4=3×360/(M×2-1)=3×θ1≒3×32.7≒98.1度となっている。
【0059】
(作用効果)
本実施形態の推進装置210は、以下に示す作用効果を発揮することができる。
【0060】
本実施形態では、M≧Nとして、N本のストラット15のそれぞれが、軸線O回りの領域を周方向に均等に分割する(M×2-1)本の分割線L2のいずれかに配置されている。
【0061】
本実施形態によれば、ストラット15の本数と配置の選択肢が多くなるため、ストラット15の配置の自由度をより一層向上させることができる。例えば、推進装置10の強度が不足する場合には、ストラット15の本数を増やして、推進装置10の強度を向上させることができる。なお、この場合、ストラット15は、上下方向Dvに延びて軸線Oを通る対称線L1を基準として偶数本増加するため、ストラット15の左右対称性が損なわれることがない。
【0062】
<第4実施形態>
続いて、第4実施形態について
図8から
図10を参照して説明する。上記実施形態と同様の構成については、同一の符号・名称を付す等して説明を適宜省略する。以下で説明しない構成は、上記実施形態と同一であるものとする。
【0063】
本実施形態の推進装置310では、
図8に示すように、推進装置310は、前後方向Dsに並んで2つ設けられたプロペラ20を有する二重構造に設計されている。2つのプロペラ20は、互いに逆向きに回転可能に設けられている。
【0064】
2つのプロペラ20のプロペラ翼22の数は、適宜選択可能である。例えば、前側Dsfのプロペラ20のプロペラ翼22の数をX、後側Dsbのプロペラ翼22の数をYとすると、(X,Y)の組として、例えば(X,Y)=(3,4)、(3,5)、(4,5)、(5,6)、(4,3)、(5,3)、(5,4)、(6,5)等の8パターンが想定される。このように各プロペラのプロペラ翼22の数を設定することにより、前後のプロペラ翼22同士が同時に重なる数が少なくなり、推力変動を低減する上で効果的である。
このように設計された2つのプロペラ20に対し、ストラット15が以下のように設けられている。
【0065】
ストラット15は、2つのプロペラに対して前側Dsf及び後側Dsbに設けられている。
図9、
図10に示すように、後側Dsbの複数のストラット15の配置は、前側Dsfの複数のストラット15の配置を上下反転させた配置である。
【0066】
以下では、ストラット15のうちプロペラ20よりも前側Dsfのストラット15を前側ストラット15aと称し、後側Dsbのストラット15の後側ストラット15bと称して説明する。
【0067】
まず、前側ストラット15aの配置について説明する。
前側ストラット15aは、例えば
図9に示すように4本設けられている。本実施形態でも、第1実施形態と同様のルールで複数本の分割線L2を設定し、分割線L2上に前側ストラット15aを配置する。
すなわち、分割線L2は、N×2-1=7本設定される。また、第1角度間隔θ1は、θ1=360/(N×2-1)≒51.4度となり、第2角度間隔θ2は、θ2=2×θ1=2×360/(N×2-1)≒102.8度となる。
この時、7本の分割線L2のうち1本が上下方向Dvに延びる対称線L1上に設定される。図示の例では、この対称線L1上の1本の分割線L2は、軸線Oを通る水平面HSよりも下方に位置している。このようにして設定された分割線L2上に、第1角度間隔θ1と第2角度間隔θ2を満たすように、前側ストラット15aを配置する。
【0068】
前側ストラット15aの姿勢は、適宜選択可能である。例えば、前側ストラット15aは前後方向Dsに対して傾けて配置されている。前側ストラット15aの傾きにより、プロペラ20には、旋回流が流入する。
【0069】
続いて、後側ストラット15bの配置について説明する。
後側ストラット15bは、例えば
図10に示すように、前側ストラット15aと同数の4本設けられている。本実施形態でも、第1実施形態と同様のルールで複数本の分割線L2を設定し、分割線L2上に後側ストラット15bを配置する。
すなわち、分割線L2は、N×2-1=7本設定される。また、第1角度間隔θ1は、θ1=360/(N×2-1)≒51.4度となり、第2角度間隔θ2は、θ2=2×θ1=2×360/(N×2-1)≒102.8度となる。
この時、7本の分割線L2のうち1本が上下方向Dvに延びる対称線L1上に設定される。図示の例では、この対称線L1上の1本の分割線L2は、軸線Oを通る水平面HSよりも上方に位置している。このようにして設定された分割線L2上に、第1角度間隔θ1と第2角度間隔θ2を満たすように、後側ストラット15bを配置する。
【0070】
後側ストラット15bの姿勢は、適宜選択可能である。例えば、後側ストラット15bは前後方向Dsに沿うように配置されている。これにより、プロペラ20から排出された旋回流れが、前後方向Dsの直流に転向される。
【0071】
(作用効果)
本実施形態の推進装置310は、以下に示す作用効果を発揮することができる。
【0072】
本実施形態では、プロペラ20は、前後方向Dsに並んで2つ設けられている。2つのプロペラ20は、互いに逆向きに回転するように設けられている。ストラット15は、2つのプロペラ20に対して前側Dsf及び後側Dsbに設けられ、後側Dsbの複数のストラット15の配置は、前側Dsfの複数のストラット15の配置を上下反転させた配置である。
【0073】
2つのプロペラ20は、互いに逆向きに回転するため、前側Dsfのプロペラ20から排出された旋回流を後側Dsbのプロペラ20で打ち消すことができる。よって、前側Dsfのストラット15(前側ストラット15a)を前後方向Dsに傾斜させることにより、水流に旋回流を付与する必要がなくなるため、必要な強度のみを考慮して、ストラット15の配置を設計することができる。よって、設計の自由度をより一層向上させることができる。
【0074】
また、通常、前後方向Dsに並ぶ2つのプロペラ20の前後にストラット15が配置される場合、要求される推進装置10の機能を十分に発揮するには、2つのプロペラ20の構造を考慮して、ストラット15の本数や配置を決定しなければならず、ストラット15の本数や配置の検討が複雑になる。しかしながら、本実施形態のように、後側Dsbのプロペラ20を、前側Dsfのプロペラ20の配置を上下反転させて配置するだけで、プロペラ20の前後の各ストラット15の配置条件を容易に満たすことができる。よって、製造効率を向上させることができる。
【0075】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、移動体1が水上を移動する船舶1aであるとしたが、これに限るものではない。例えば、
図11に示すように、移動体1は水中を移動可能な海洋調査艇1bであってもよい。また、推進装置10が搭載される移動体1は、水上及び水中の両方を移動可能に設計されたものであってもよい。
【0076】
上記実施形態では、プロペラ20、1つにつき、6枚のプロペラ翼22が設けられている場合について説明したが、これに限られない。プロペラ翼22の数は、適宜変更可能であり、プロペラ翼22は、例えば2、3、4、5、7、8…枚設けられていてもよい。
【0077】
また、第1実施形態では、ストラット15の本数が3本、5本であり、分割線L2の本数が5本、9本である場合について説明し、第2実施形態では、ストラット15の本数が4本であり、分割線L2の本数が7本である場合について説明し、第3実施形態では、ストラット15の本数が4本であり、分割線L2の本数が11本である場合について説明したが、これに限られない。ストラット15の本数、及び分割線L2の本数は適宜変更可能である。
【0078】
また、上記実施形態では、ストラット15が流路F内でプロペラ20に対して前側Dsfに設けられている場合について説明したが、これに限られない。
図12に示すように、ストラット15は、流路F内でプロペラ20に対して後側Dsbに設けられていてもよい。プロペラ20の後側Dsbにストラット15が配置される場合、ストラット15は、前後方向Dsに沿うように配置され、プロペラ20から流出した旋回流れを前後方向Dsの直流に転向させる。これにより、この後側Dsbのストラット15でも推力が発生し、推進装置10、110、210全体として推力が増大する。
【0079】
また、
図13に示すように、ストラット15は、流路F内でプロペラ20に対して前側Dsfと後側Dsbの両側に設けられていてもよい。
【0080】
上記実施形態では、「軸線O方向から見て、ストラット15の径方向に延びる中心線が分割線L2と一致するように、各ストラット15が配置されている」としたが、これに限れられない。ストラット15には周方向の厚みがあるため、軸線O方向から見て、ストラット15の少なくとも一部が分割線L2上に位置すれば、「ストラット15が分割線L2上に配置されている」としてもよい。すなわち、ストラット15同士の角度間隔が、対応する分割線L2同士の角度間隔に対して僅かにずれていてもよい。
【0081】
上記実施形態では、ストラット15が分割線L2上に配置されている場合について説明したが、これに限られない。ストラット15の配置が第1条件、第2条件、第3条件を満たせば、分割線L2上にストラット15が配置されていなくてもよい。例えば、
図14に示すように、前後方向Dsから見て、複数のストラット15のうち一部のストラット15が、分割線L2からずれた位置に配置されていてもよい。
図14の例では、0度、72度、144度、216度、288度、360度の分割線L2に対して、ストラット15が0度、約135度、約225度の位置に配置されている。
【0082】
上記実施形態では、ストラット15同士の角度間隔のうち1つの角度間隔のみが、他のストラット15同士の角度間隔と異なっている場合について説明したが、これに限られない。ストラット15の配置が第1条件、第2条件、第3条件を満たせば、例えば、
図15に示すように、前後方向Dsから見て、ストラット15同士の角度間隔のうち複数の角度間隔(θ1×2度)が、他のストラット15同士の角度間隔(θ1度)と異なっていてもよい。
【0083】
<付記>
各実施形態に記載の推進装置10、110、210、310、及び移動体1は、例えば以下のように把握される。
【0084】
(1)第1の態様に係る推進装置10、110、210、310は、水面W下で軸線Oが前後方向Dsに延びるように配置され、前側Dsfを上流側とするとともに後側Dsbを下流側とする流路Fを形成する筒部11と、前記筒部11の内部に配置され、前記軸線O方向に延びる軸部13と、前記軸部13に装着され、前記流路F内で前記軸線Oの径方向に延びるとともに前記軸線Oの周方向に配列された複数のプロペラ翼22を有し、前記軸線O回りに回転可能なプロペラ20と、前記流路F内で前記プロペラ20に対して前側Dsf及び後側Dsbの少なくともいずれか一方に設けられ、前記径方向に延びるとともに前記周方向に配列され、前記軸部13を支持する複数のストラット15と、を備え、前記複数のストラット15は、上下方向Dvに延びて前記軸線Oを通る対称線L1に対して左右対称に配置され、前記ストラット15同士の角度間隔のうち少なくとも1つの角度間隔は、他の前記ストラット15同士の角度間隔と異なり、前記軸線Oを通るように水平方向に延在する水平面HSに対して、上下方向Dv両側に少なくとも1つの前記ストラット15が配置されている。
【0085】
本態様では、複数のストラット15が、上下方向Dvに延びる対称線L1に対して左右対称に配置されている。これにより、旋回時にストラット15に生じる力の左右の偏りを抑制することができる。
【0086】
ところで、プロペラ20の回転中に、ストラット15とプロペラ翼22とが重なることにより、プロペラ翼22に流入する流れの流速が減速し、推力が変動するが、本態様では、ストラット15同士の角度間隔のうち少なくとも1つの角度間隔は、他のストラット15同士の角度間隔と異なっている。これにより、複数のストラット15と複数のプロペラ翼22とが、一度に重なる領域を少なくすることができる。このため、推力変動を低減することができる。また、プロペラ20の効率をより一層向上させることができる。
【0087】
さらに、少なくとも1つのストラット15が、軸線Oを通るように水平方向に延在する水平面HSに対して、上下方向Dv両側に少なくとも1つのストラット15が配置されている。これにより、ストラット15によって上下方向Dv両側から軸部13を支持することができる。よって、推進装置10、110、210、310の強度を向上させることができる。
【0088】
このため、本態様によれば、ストラット15の数を自由に設定しても、推進装置10、110、210、310は、要求される機能を十分に発揮することができる。すなわち、設計の自由度を向上させることができる。例えばプロペラ翼22の数等の構造によらず、強度の観点のみからストラット15の本数を自由に決定することができる。
【0089】
(2)第2の態様の推進装置10、110、210、310は、第1の態様の推進装置10、110、210、310であって、前記ストラット15同士の角度間隔のうち1つの角度間隔のみが、他の前記ストラット15同士の角度間隔と異なっていてもよい。
【0090】
本態様によれば、上述した第1の態様のストラット15の配置条件を容易に満たすことができる。また、角度間隔が異なる箇所を1つのみに抑えることができるので、ストラット15の間を流れる流量の制御が容易となる。
【0091】
(3)第3の態様の推進装置10、110は、第1又は第2の態様の推進装置10、110、210であって、N本の前記ストラット15のそれぞれが、前記軸線O回りの領域を前記周方向に均等に分割する(N×2-1)本の分割線L2のいずれかに配置され、1以上N未満であるN’に対して、前記ストラット15同士の角度間隔は、N’×360/(N×2-1)度のいずれかであってもよい。
【0092】
本態様によれば、分割線L2に基づいてストラット15の配置することができるので、ストラット15の位置決めが容易となる。
【0093】
(4)第4の態様の推進装置10、110は、第3の態様の推進装置10、110であって、前記分割線L2の本数(N×2-1)と、前記プロペラ翼22の数とは、互いに素であってもよい。
【0094】
本態様によれば、プロペラ翼22と重なる分割線L2の本数を1本に抑えることができる。ストラット15は、分割線L2上に配置されるため、プロペラ翼22と一度に重なるストラット15の本数を1本に抑えることができる。したがって、推力変動をより一層低減することができる。
【0095】
(5)第5の態様の推進装置10、110は、第3又は第4の態様の推進装置10、110、210であって、前記分割線L2の本数(N×2-1)は、前記プロペラ翼22の数と異なっていてもよい。
【0096】
本態様によれば、分割線L2とプロペラ翼22とが一度に重なる領域を少なくすることができる。ストラット15は、分割線L2上に配置されるため、ストラット15とプロペラ翼22とが一度に重なる領域を少なくすることができる。したがって、推力変動をより一層低減することができる。
【0097】
(6)第6の態様の推進装置110は、第3から第5の態様のいずれか1つの推進装置110であって、前記ストラット15の数は、N=4であってもよい。
【0098】
プロペラ20では、プロペラ翼22の数が3から6枚のものが多い。最も一般的なプロペラ翼22の数が3から6枚の場合には、本態様のようにストラット15の数を4本とし、7本の分割線L2上に配置することが強度と推力を確保する上で適している。よって、多くのプロペラ20に対して本態様を適用することができ、汎用性を持たせることができる。さらに、上下方向Dvに延びる対称線L1に対して複数のストラット15を左右対称に配置することが容易となる。よって、旋回時にストラット15に生じる力の左右の偏りを抑制する設計が容易となるため、本態様は、構造設計の観点でも適している。
【0099】
(7)第7の態様の推進装置210は、第1又は第2の態様の推進装置210であって、M≧Nとして、N本の前記ストラット15のそれぞれが、前記軸線O回りの領域を前記周方向に均等に分割する(M×2-1)本の分割線L2のいずれかに配置されていてもよい。
【0100】
本態様によれば、ストラット15の本数と配置の選択肢が多くなるため、ストラット15の配置の自由度をより一層向上させることができる。
【0101】
(8)第8の態様の推進装置310は、第1から第7の態様のいずれか1つの推進装置310であって、前記プロペラ20は、前後方向Dsに並んで2つ設けられ、前記2つのプロペラ20は、互いに逆向きに回転するように設けられ、前記ストラット15は、前記2つのプロペラ20に対して前側Dsf及び後側Dsbのそれぞれに複数設けられ、後側Dsbの前記複数のストラット15の配置は、前側Dsfの前記複数のストラット15の配置を上下反転させた配置であってもよい。
【0102】
2つのプロペラ20は、互いに逆向きに回転するため、前側Dsfのプロペラ20から排出された旋回流を後側Dsbのプロペラ20で打ち消すことができる。よって、前側Dsfのストラット15を前後方向Dsに傾斜させることにより、水流に旋回流を付与する必要がなくなるため、必要な強度のみを考慮して、ストラット15の配置を設計することができる。よって、設計の自由度をより一層向上させることができる。
【0103】
また、通常、前後方向Dsに並ぶ2つのプロペラ20の前後にストラット15が配置される場合、2つのプロペラ20の構造を考慮して、ストラット15の本数や配置を決定しなければならず、ストラット15の本数や配置の検討が複雑になる。しかしながら、本態様のように、後側Dsbのプロペラ20を、前側Dsfのプロペラ20の配置を上下反転させて配置するだけで、プロペラ20の前後の各ストラット15の配置条件を容易に満たすことができる。
【0104】
(9)第9の態様の推進装置10、110、210、310は、第1から第8の態様のいずれか1つの推進装置10、110、210、310であって、前記プロペラ翼22の数と前記ストラット15の数には、公約数が存在してもよい。
【0105】
本態様によれば、例えば、プロペラ翼22の数とストラット15の数に公約数が存在しない場合と比較して、プロペラ翼22とストラット15の本数や配置の選択肢が多くなる。
【0106】
(10)第10の態様の移動体1は、第1から第9の態様のいずれか1つの推進装置10、110、210、310を備え、水上及び水中の少なくともいずれか一方で移動可能である。
移動体1の例として、上述した船舶1aや、海洋調査艇1b等が挙げられる。
【符号の説明】
【0107】
1…移動体、1a…船舶、2…船体、3…船首、4…船尾、5…船底、10…推進装置、11…筒部、12…固定装置、12a…垂直軸、13…軸部、20…プロペラ、21…プロペラハブ、22…プロペラ翼、14…ハブ、15…ストラット、Dv…上下方向、Dvu…上側、Dvd…下側、Ds…前後方向、Dsf…前側、Dsb…後側、Dw…左右方向、Dwr…右側、Dwl…左側、F…流路、HS…水平面、L1…対称線、L2…分割線、O…軸線、W…水面、θ1…角度間隔(第1角度間隔)、θ2…角度間隔(第2角度間隔)
110…推進装置
210…推進装置、θ3…角度間隔(第3角度間隔)、θ4…角度間隔(第4角度間隔)
310…推進装置、15a…前側ストラット、15b…後側ストラット
1b…海洋調査艇