(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168066
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】組付け用支持装置
(51)【国際特許分類】
B62D 65/06 20060101AFI20241128BHJP
B23P 19/00 20060101ALI20241128BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B62D65/06 A
B23P19/00 302H
B23P21/00 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084460
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】矢田貝 諒一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 隆太
(72)【発明者】
【氏名】旭 彩子
【テーマコード(参考)】
3C030
3D114
【Fターム(参考)】
3C030CC02
3C030DA27
3C030DA35
3D114AA11
3D114AA14
3D114BA13
3D114DA17
(57)【要約】
【課題】組付け工程に使用するワークの支持装置の汎用化を図り、これにより支持装置の数を減らす。
【解決手段】この組付け用支持装置10は、ワーク1A,1Bを組付け時の姿勢で支持可能とするもので、ワーク1A,1Bを所定方向の一方側と他方側とでそれぞれ支持可能な第一支持部11及び第二支持部12と、各支持部11,12を所定方向に沿ってスライド可能とするスライド機構13と、各支持部11,12を所定方向に沿った軸線X1まわりに回転可能とする軸回転機構14とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを組付け時の姿勢で支持可能な組付け用支持装置であって、
前記ワークを所定方向の一方側と他方側とでそれぞれ支持可能な第一支持部及び第二支持部と、
前記各支持部を前記所定方向に沿ってスライド可能とするスライド機構と、
前記各支持部を前記所定方向に沿った軸線まわりに回転可能とする軸回転機構とを備えた、ワーク組付け用支持装置。
【請求項2】
前記ワークの前記所定方向両側に、先端が球形をなすピボット軸が設けられ、
前記各支持部は、前記ピボット軸をその軸方向に挿入して嵌合可能な筒状嵌合部と、前記筒状嵌合部の一端開口部から基端側に向けてスリット状に延び前記ピボット軸の首部と嵌合可能なスリット状嵌合部と、前記ワークの前記ピボット軸と異なる部位を受けるワーク受け部とを一体に有する、請求項1に記載の組付け用支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組付け工程に使用されるワークの支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用ボデーに対するバックドアの組付け工程では、重量物であるバックドアを所定の姿勢で支持して組付け作業を効率よく行うために、車種や仕様に応じて専用の台車を用いている。例えば特許文献1に記載のように、バックドアを幅方向両側で支持する構造の台車(バックドア搭載機)だと、バックドアの幅方向寸法やバックドアの組付け時姿勢(組付け角度)に応じて支持位置を変更する必要があるため、車種ごとに専用の台車を用いてバックドアを組付け工程に導入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した方法では、製造する車種の数だけ専用の台車が必要になるため、保全工数の増加や、設備スペースのひっ迫を招く懸念があった。
【0005】
上述した問題は何もバックドアの組付け工程に限ったことではなく、相応の大きさないし重量を有するワークの組付け工程全般に起こり得る。
【0006】
以上の事情に鑑み、本明細書では、組付け工程に使用するワークの支持装置の汎用化を図り、これにより支持装置の数を減らすことを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の解決は、本発明に係る組付け用支持装置によって達成される。すなわち、この支持装置は、ワークを組付け時の姿勢で支持可能な組付け用支持装置であって、ワークを所定方向の一方側と他方側とでそれぞれ支持可能な第一支持部及び第二支持部と、各支持部を所定方向に沿ってスライド可能とするスライド機構と、各支持部を所定方向に沿った軸線まわりに回転可能とする軸回転機構とを備えた点をもって特徴付けられる。
【0008】
このように、本発明に係る組付け用支持装置では、ワークを所定方向の一方側と他方側とでそれぞれ支持可能な第一支持部及び第二支持部を設けると共に、これら双方の支持部を所定方向に沿ってスライド可能とするスライド機構を設けたので、例えば所定方向の寸法が異なるワークが混流する場合であっても、ワークの所定方向両側を支持する第一及び第二支持部の所定方向位置をワークの所定方向寸法に合わせてスライド調整することによって、一台の支持装置で複数種類のワークを支持することができる。また、本発明に係る組付け用支持装置では、第一及び第二支持部を所定方向(スライド方向)に沿った軸線まわりに回転可能とする軸回転機構を設けたので、第一及び第二支持部で支持した状態のワークを軸回転させることができる。よって、例えば組付け時の姿勢が異なるワークがラインに混流する場合であっても、軸回転機構によりワークの種類に合わせて軸回転量を調整することで、各ワークを組付け時の姿勢にすることができる。よって、一台の支持装置で複数種類のワークを組付け可能な状態に支持することが可能となる。また、支持装置の汎用化により、従来よりも支持装置の数を減らすことができるので、支持装置の保管スペースを縮小した分だけ設備スペースや作業スペースの拡大を図るなど限られたスペースの有効活用を図ることが可能となる。もちろん、支持装置の数を減らした分だけコストダウンを図ることも可能となる。
【0009】
また、本発明に係る組付け用支持装置において、ワークの所定方向両側に、先端が球形をなすピボット軸が設けられている場合、各支持部は、ピボット軸をその軸方向に挿入して嵌合可能な筒状嵌合部と、筒状嵌合部の一端開口部から基端側に向けてスリット状に延びピボット軸の首部と嵌合可能なスリット状嵌合部と、ワークのピボット軸と異なる部位を受けるワーク受け部とを一体に有してもよい。
【0010】
上述したように、自動車用バックドアの組付け工程では、自動車用ボデーに対して跳ね上げた状態のバックドアをショックアブソーバなどの緩衝装置で支持するためのピボット軸がバックドアの幅方向両側に設けられることがある。この場合、ピボット軸の向きには二通りあり、一つは車体前後方向、もう一つは車体前後方向に直交する幅方向をそれぞれ指向した状態でバックドアに取付けられる。本構成は、このピボット軸を利用してバックドアを支持する場合に、ピボット軸の向きに関わらず共通の支持装置で支持可能とした。すなわち、本構成に係る組付け用支持装置では、第一及び第二支持部に、ワークの所定方向両側に設けられたピボット軸をその軸方向に挿入して嵌合可能な筒状嵌合部と、筒状嵌合部の一端開口部から基端側に向けてスリット状に延びピボット軸の首部と嵌合可能なスリット状嵌合部とを設けるようにした。このように各支持部を構成することで、所定方向に沿った向きを指向するピボット軸については筒状嵌合部で嵌合支持し、所定方向と直交する向きを指向するピボット軸についてはスリット状嵌合部で嵌合支持することができる。よって、一つの支持部でピボット軸の向きが異なる二種類のワークを支持することが可能となる。また、本構成では、ワークのうちピボット軸と異なる部位を受けるワーク受け部を筒状嵌合部と一体に設けたので、筒状嵌合部にピボット軸がその軸方向に挿入して嵌合支持されるワークの場合であっても、軸回転機構により筒状嵌合部がワーク受け部と一体に軸回転することで、ワークを受けながら軸回転させて組付け時の姿勢にすることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る組付け用支持装置において、スライド機構は、各支持部が取付けられたスライド部と、スライド部が摺動可能なレール部と、スライド部を手動でスライド操作可能なレバー部と、レバー部の軸回転操作によりスライド部を所定方向に沿った複数の位置でレール部に対してロック可能なロック部とを有してもよい。
【0012】
スライド機構を上述のように構成することで、作業者のタイミングでワークの支持動作を行うことができる。また、スライド動作の際と共通のレバー部の操作(軸回転操作)でスライド部(第一及び第二支持部)をワークごとに定められた所定位置にロックできるので、各支持部の接近動作と、ワークを支持した後のロック動作とを円滑に実施することが可能となる。また、スライド動作とロック動作に専用の駆動装置を用いずに済むため、支持装置の簡素化並びに低コスト化が可能となる。
【0013】
また、本発明に係る組付け用支持装置において、軸回転機構は、各支持部が先端に設けられ軸回転可能なシャフト部と、シャフト部の外周に設けられたカム部と、互いに異なる位相でカム部と当接可能な複数の規制部材とを有してもよい。
【0014】
軸回転機構を上述のように構成することで、機械的に支持部の軸回転量(位相)を制御することができる。そのため、例えば各支持部で支持した状態のワークを作業者が手に持って軸回転させることにより、ワークを所定の位相、すなわちワークに合った組付け時の姿勢で支持することが可能となる。また、手動で軸回転可能な構造であるから、軸回転のための駆動装置を用いずに済み、これによっても支持装置の簡素化並びに低コスト化が可能となる。
【0015】
また、本発明に係る組付け用支持装置において、第一及び第二支持部は、分岐したアーム部を介して昇降部と連結され、昇降部は、シリンダにより昇降可能に構成されてもよい。
【0016】
このように構成することで、第一支持部と第二支持部とを同期して昇降できるので、ワークを一定の姿勢に保った状態で組付け位置まで上昇あるいは下降させることが可能となる。また、シリンダを用いればワークごとに組付け位置(昇降位置)を容易に変更することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、組付け工程に使用するワークの支持装置の汎用化を図ることで支持装置の数を減らすことができ、これによりスペースの有効活用を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る組付け用支持装置の正面図である。
【
図3】
図2に示す支持部を矢印Aの向きから見た図である。
【
図4】
図3に示す筒状嵌合部のB-B断面図である。
【
図5】
図2に示すスライド機構を矢印Cの向きから見た図である。
【
図6】
図2に示すスライド機構のD-D断面図である。
【
図7】
図2に示す軸回転機構のE-E断面図である。
【
図8】(a)第一の種類に係るワークの正面図と、(b)第二の種類に係るワークの正面図である。
【
図9】(a)第一の種類に係るワークの組付け時の姿勢を示す側面図と、(b)第二の種類に係るワークの組付け時の姿勢を示す側面図である。
【
図10】第一の種類に係るワークを支持した状態を示す組付け用支持装置の拡大図である。
【
図11】第二の種類に係るワークを支持した状態を示す組付け用支持装置の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る組付け用支持装置の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明では、自動車用ボデーにバックドアを組付ける場合を例にとって説明する。また、本実施形態では、車体幅方向をX方向、車体前後方向をY方向、車体上下方向(鉛直方向)をZ方向として、以下に説明を行う。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る組付け用支持装置10の全体構成を示している。同図に示すように、本実施形態に係る組付け用支持装置10は、ワークとなる自動車用のバックドア1を自動車用ボデー(図示は省略)に対する組付け時の姿勢で支持可能とするもので、第一支持部11及び第二支持部12と、スライド機構13と、軸回転機構14と、昇降機構15とを備える。
【0021】
第一支持部11及び第二支持部12は、バックドア1をその幅方向(
図1では左右方向)一方側と他方側とでそれぞれ支持可能とするもので、本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、バックドア1の幅方向両側に設けられたピボット軸2の先端に設けられた球状部2a(
図2中、二点鎖線で示している)と嵌合可能な筒状嵌合部16と、ピボット軸2の球状部2aにつながる首部2b(
図3中、二点鎖線で示している)と嵌合可能なスリット状嵌合部17とを有する。また、本実施形態では、各支持部11,12はともに、バックドア1のピボット軸2と異なる部位を受けるワーク受け部18とを一体に有する。なお、
図2では、後述する第二の種類に係るバックドア1(1B)のピボット軸2を二点鎖線で示し、
図3及び
図4では、同じく後述する第一の種類に係るバックドア1(1A)のピボット軸2を二点鎖線で示している。
【0022】
ここで、筒状嵌合部16は円筒状をなし(
図3を参照)、その底部16aでピボット軸2の先端に設けられた球状部2aと嵌合可能な構造をなしている(
図2を参照)。筒状嵌合部16の内径寸法は底部16aに至るまで軸方向で一定であり、筒状嵌合部16の一端開口部16bから導入されたピボット軸2の球状部2aが底部16aまで導入可能に構成されている(
図2を参照)。
【0023】
スリット状嵌合部17は、筒状嵌合部16の円周方向所定位置に設けられ(
図3を参照)、筒状嵌合部16を半径方向に貫通するとともに、筒状嵌合部16の一端開口部16bから基端側(底部16a側)に向けてスリット状に延びている(
図4を参照)。ここで、スリット状嵌合部17の隙間寸法(直線寸法)は、ピボット軸2の首部2bが挿入可能な大きさに設定されている。これにより、ピボット軸2の首部2bをスリット状嵌合部17の一端開口部17aから基端側に向けて導入すると共に、球状部2aを筒状嵌合部16の一端開口部16bから底部16aに向けて導入可能としている(
図2中、二点鎖線で示す状態)。
【0024】
ワーク受け部18は、バックドア1のピボット軸2と異なる部位を例えば面接触で受けて支持可能とするもので、例えば
図3に示すように、バックドア1を略鉛直姿勢で支持する際、バックドア1の内面1aからわずかに離れた上下二箇所に配設される。これにより、第一及び第二支持部11,12を軸回転させてバックドア1を跳ね上げた姿勢とした際、バックドア1の自重を二箇所で受けながら筒状嵌合部16と一体に回転可能としている。
【0025】
スライド機構13は、各支持部11,12をバックドア1の幅方向に沿ってスライド可能とするもので、本実施形態では、バックドア1の幅方向両側に配設される。ここで、各スライド機構13は、第一支持部11又は第二支持部12が取付けられたスライド部19と、スライド部19が摺動可能なレール部20と、スライド部19を手動でスライド操作可能なレバー部21と、レバー部21の軸回転操作によりスライド部19を幅方向に沿った複数の位置でレール部20に対してロック可能なロック部22とを有する。
【0026】
なお、レバー部21の軸回転操作の中心となる第一軸線X1は、後述する筒状嵌合部16の軸回転の中心となる第二軸線X2と異なっている(
図6を参照)。
【0027】
ロック部22は、レール部20の側に固定された位置決め部材23の幅方向所定位置に設けられた複数の切欠き部23a,23bと、各切欠き部23a(23b)と嵌り合う嵌合部24とで構成される。
【0028】
切欠き部23a,23bは、
図5に示すように、バックドア1の幅方向両側における支持位置(ピボット軸2の球状部2aの幅方向位置)に応じて、幅方向の所定位置にそれぞれ配設されている。例えば
図8及び
図9に示すように、組付け対象となるバックドア1が二種類の場合、第一の種類に係るバックドア1(以下、単に第一のバックドア1Aと称する。)の幅方向両側に設けられたピボット軸2の球状部2aの幅方向位置に応じて、第一切欠き部23aの幅方向位置が設定される。同様に、第二の種類に係るバックドア1(以下、単に第二のバックドア1Bと称する。)幅方向両側に設けられたピボット軸2の球状部2aの幅方向位置に応じて、第二切欠き部23bの幅方向位置が設定される。
【0029】
嵌合部24は、
図6に示すように、スライド可能なレバー部21の長手方向一方側に設けられている。この場合、支持対象となるバックドア1の種類に応じた切欠き部23a(23b)と同じ幅方向位置まで嵌合部24をスライドさせた状態で、レバー部21の長手方向他方側に位置する把持部21aを作業者が把持して第一軸線X1まわりに回動させることで、嵌合部24が第一軸線X1まわりに回動し、嵌合部24が対応する切欠き部23a(23b)と嵌り合う。これにより、レバー部21と一体にスライドする筒状嵌合部16が幅方向の所定位置でロックされ、筒状嵌合部16に嵌合支持されるバックドア1が幅方向に位置決め固定された状態となる。
【0030】
なお、本実施形態では、各支持部11(12)が待機位置にある場合の切欠き部(第三切欠き部23c)が設けられており、バックドア1の支持動作を行わない状態(待機状態)では、第三切欠き部23cに嵌合部24を嵌合させることで、各支持部11(12)を支持位置から幅方向外側に離れた待機位置でロック可能としている(
図2を参照)。
【0031】
軸回転機構14は、各支持部11(12)を幅方向に沿った軸線(第二軸線X2)まわりに回転可能とするもので、本実施形態では、各支持部11(12)が先端に設けられ軸回転可能なシャフト部25と、シャフト部25の外周に設けられたカム部26と、互いに異なる位相でカム部26と当接可能な複数の規制部材27,28とを有する。
【0032】
ここで、カム部26は、
図7に示すように、円周方向の異なる位置に配設される第一カム面26aと第二カム面26bとを有する。一方、複数の規制部材(ここでは二つの規制部材27,28)のうち第一の規制部材27はカム部26と幅方向で同じ位置に配設され、カム部26と一体にスライドする。第一の規制部材27は、支持規制面27aと、第一組付け規制面27bとを有する。カム部26の第一カム面26aと支持規制面27aとが当接し、第二カム面26bと第一組付け規制面27bとが当接可能とされている。
【0033】
第二の規制部材28は、レール部20の側に設けられており、第二組付け規制面28aを有する。本実施形態では、各支持部11,12が第二のバックドア1Bの支持位置(第二切欠き部23bと嵌合部24とが嵌り合う幅方向位置)でロックされた状態で、カム部26の第二カム面26bと第二組付け規制面28aとが当接するようになっている。
【0034】
ここで、第一カム面26aと支持規制面27aとが当接した状態において、第二カム面26bと第一組付け規制面27bとがなす角度θ1と、第二カム面26bと第二組付け規制面28aとがなす角度θ2はそれぞれ、対応するバックドア1A,1Bの組付け時の姿勢(角度)に応じて適宜の大きさに設定される。
【0035】
また、第二支持部12と、第二支持部12側のスライド機構13、及び軸回転機構14の構成は、詳細な説明は省略するが、第一支持部11と、第一支持部11側のスライド機構13、及び軸回転機構14と同じである。
【0036】
上記構成の第一及び第二支持部11,12と、スライド機構13と、軸回転機構14とは、分岐した一対のアーム部29a,29bによって吊り下げ支持されている。これら一対のアーム部29a,29bは昇降部30と連結され、昇降部30は、昇降駆動部としてのシリンダ31により昇降可能に構成されている。この場合、昇降機構15は、一対のアーム部29a,29bと、昇降部30と、シリンダ31とで構成される。このように昇降機構15を構成することによって、左右の第一及び第二支持部11,12が同期して昇降可能とされるので、これら第一及び第二支持部11,12に支持された状態のバックドア1A,1Bは、支持された際の水平方向(幅方向)の姿勢を保った状態で昇降可能とされる。
【0037】
次に、上記構成の組付け用支持装置10を用いたバックドア1の組付け方法の一例を説明する。本実施形態では、二種類のバックドア(第一のバックドア1A、第二のバックドア1B)をそれぞれ対応する車種のボデー(第一のボデー2A、第二のボデー2B)に組付ける場合を例にとって説明する。
【0038】
ここで、ピボット軸2の向きに関し、第一のバックドア1Aでは、ピボット軸2は車体前後方向を指向している(
図8(a)を参照)。一方、第二のバックドア1Bでは、ピボット軸2は幅方向を指向している(
図8(b)を参照)。
【0039】
また、ピボット軸2の幅方向間隔Wに関し、第一のバックドア1Aにおける幅方向間隔WA(
図8(a)を参照)が、第二のバックドア1Bにおける幅方向間隔WB(
図8(b)を参照)よりも大きく設定されている。なお、ここでいう幅方向間隔W(WA,WB)とは、各ピボット軸2の球状部2aの中心間距離をいうものとする。
【0040】
また、各ボデー2A,2Bに対する組付け時の姿勢(搭載角度)に関し、第一のボデー2Aに対する第一のバックドア1Aの搭載角度(
図9(a)を参照)が、第二のボデー2Bに対する第二のバックドア1Bの搭載角度(
図9(b)を参照)よりも大きく設定されている。ここで、搭載角度を、支持時の姿勢から組付け時の姿勢までのバックドア1A,1Bの軸回転量であるとした場合、各バックドア1A,1Bの搭載角度は、それぞれ角度θ1,θ2に等しくなる(
図7を参照)。
【0041】
また、各バックドア1A,1Bの組付け時の高さ位置(搭載高さ)に関し、第二のボデー2Bに対する第二のバックドア1Bの搭載高さH2(
図9(b)を参照)が、第一のボデー2Aに対する第一のバックドア1Aの搭載高さH1(
図9(a)を参照)よりも高く設定されている。なお、ここでいう搭載高さH1,H2は、共通の床面から第一軸線X1までの鉛直方向距離の大きさに相当する。
【0042】
(第一のバックドア1Aの組付け工程)
まず、組付け対象となる第一のバックドア1Aを
図1に示す組付け用支持装置10の支持部11,12間に搬入する。搬入動作は、任意の手段で実施できるが、バックドア1が金属製と樹脂製とに関わらず重量物であることから、搬入用設備により搬入するのがよい。具体的には、例えば図示は省略するが、第一のバックドア1Aを搬入用設備でピックアップし、搬入位置(支持部11,12間)まで移動させる。この際、第一のバックドア1Aは、例えば第一のボデー2Aの後方開口部を閉塞した状態における姿勢(略鉛直姿勢)で搬入される。この時点では、各支持部11,12は、支持位置(
図10又は
図11に示す幅方向位置)から幅方向外側に離れた待機位置(
図2に示す幅方向位置)でロックされた状態にある。
【0043】
次に、作業者は、左右のレバー部21の把持部21aを把持して双方のレバー部21を幅方向中央に向けてスライド操作する。これにより、搬入した第一のバックドア1Aに向けて第一及び第二支持部11,12を幅方向中央にスライドさせて、各支持部11,12の筒状嵌合部16にバックドア1のピボット軸2先端の球状部2aを嵌合する。ここで、第一のバックドア1Aに対してピボット軸2は車体前後方向を指向している。そのため、筒状嵌合部16の一端開口部16bに球状部2aを導入した際、首部2bがスリット状嵌合部17に対する嵌合動作を開始し、スリット状嵌合部17の基端側端部までスライドさせることで、筒状嵌合部16の底部16aに球状部2aが嵌合した状態となる(
図10を参照)。これにより、第一のバックドア1Aがピボット軸2を介して第一及び第二支持部11,12により挟持された状態となる。
【0044】
また、球状部2aが筒状嵌合部16の底部16aと嵌合した状態で、作業者がレバー部21を第二軸線X2まわりに回動操作することにより、レバー部21の長手方向一方側に設けられた嵌合部24が、第一のバックドア1Aの支持位置に対応した位置に設けられた第二切欠き部23bと嵌合する(
図11を参照)。これにより、第一及び第二支持部11,12が第一のバックドア1Aの支持位置で幅方向にロックされ、第一のバックドア1Aが所定の幅方向位置に位置決めされた状態で第一及び第二支持部11,12により支持された状態となる。
【0045】
然る後、作業者は、第一及び第二支持部11,12に支持された状態の第一のバックドア1Aを把持して、第一軸線X1まわりにかつ第一のバックドア1Aが第一のボデー2Aに対して跳ね上がる向きに回動させる。ここで、第一のバックドア1Aの支持位置に第一及び第二支持部11,12が位置する場合、筒状嵌合部16と一体に軸回転するカム部26と、第一の規制部材27とが同一の幅方向位置に固定されている(
図10を参照)。よって、上述のように、第一のバックドア1Aを第一軸線X1まわりに軸回転(回動)させることで、カム部26の第二カム面26bと、第一の規制部材27の第一組付け規制面27bとが当接し、第一のバックドア1Aが組付け時の搭載角度(
図7でいう角度θ1だけ回動した状態)で支持された状態となる(
図9(a)を参照)。
【0046】
このようにして組付け時の姿勢で第一のバックドア1Aを支持した後、昇降機構15により、第一のボデー2Aに対する組付け時の高さ位置(搭載高さH1)まで第一のバックドア1Aを上昇させることで、組付け可能な位置及び姿勢に第一のバックドア1Aが保持される。これにより、第一のボデー2Aに対する第一のバックドア1Aの組付け作業が行われる。
【0047】
(第二のバックドア1Bの組付け工程)
この場合も、まず、組付け対象となる第二のバックドア1Bを
図1に示す組付け用支持装置10の支持部11,12間に搬入する。この際、第二のバックドア1Bは、例えば第二のボデー2Bの後方開口部を閉塞した状態における姿勢(略鉛直姿勢)で搬入される。この時点では、各支持部11,12は、支持位置(
図10又は
図11に示す幅方向位置)から幅方向外側に離れた待機位置(
図2に示す幅方向位置)でロックされた状態にある。
【0048】
次に、作業者は、左右のレバー部21の把持部21aを把持して双方のレバー部21を幅方向中央に向けてスライド操作する。これにより、搬入した第二のバックドア1Bに向けて第一及び第二支持部11,12を幅方向中央にスライドさせて、各支持部11,12の筒状嵌合部16にバックドア1のピボット軸2先端の球状部2aを嵌合する。ここで、第二のバックドア1Bに対してピボット軸2は幅方向を指向している(
図8(b)を参照)。そのため、筒状嵌合部16の一端開口部16bに球状部2aを導入した後も、各支持部11,12のスライド動作を継続することで、球状部2aが筒状嵌合部16の基端側に向けて導入され、筒状嵌合部16の底部16aに球状部2aが嵌合した状態となる(
図11を参照)。これにより、第二のバックドア1Bがピボット軸2を介して第一及び第二支持部11,12により挟持された状態となる。
【0049】
また、球状部2aが筒状嵌合部16の底部16aと嵌合した状態で、作業者がレバー部21を第二軸線X2まわりに回動操作することにより、レバー部21の長手方向一方側に設けられた嵌合部24が、第二のバックドア1Bの支持位置に対応した位置に設けられた第一切欠き部23aと嵌合する(
図11を参照)。これにより、第一及び第二支持部11,12が第二のバックドア1Bの支持位置で幅方向にロックされ、第二のバックドア1Bが所定の幅方向位置に位置決めされた状態で第一及び第二支持部11,12により支持された状態となる。
【0050】
然る後、作業者は、第一及び第二支持部11,12に支持された状態の第二のバックドア1Bを把持して、第一軸線X1まわりにかつ第二のバックドア1Bが第二のボデー2Bに対して跳ね上がる向きに回動させる。ここで、第二のバックドア1Bの支持位置に第一及び第二支持部11,12が位置する場合、筒状嵌合部16と一体に軸回転するカム部26と、第二の規制部材28とが同一の幅方向位置に固定されている(
図11を参照)。よって、上述のように、第二のバックドア1Bを第一軸線X1まわりに軸回転(回動)させることで、カム部26の第二カム面26bと、第二の規制部材28の第二組付け規制面28aとが当接し、第二のバックドア1Bが組付け時の搭載角度(
図7でいう角度θ2だけ回動した状態)で支持された状態となる(
図9(b)を参照)。
【0051】
このようにして組付け時の姿勢で第二のバックドア1Bを支持した後、昇降機構15により、第二のボデー2Bに対する組付け時の高さ位置(搭載高さH2)まで第二のバックドア1Bを上昇させることで、組付け可能な位置及び姿勢に第一のバックドア1Bが保持される。これにより、第二のボデー2Bに対する第二のバックドア1Bの組付け作業がお行われる。
【0052】
以上述べたように、本実施形態に係る組付け用支持装置10では、バックドア1を幅方向の一方側と他方側とでそれぞれ支持可能な第一支持部11及び第二支持部12を設けると共に、これら双方の支持部11,12を所定方向に沿ってスライド可能とするスライド機構13を設けたので、幅方向の寸法が異なるバックドア(第一のバックドア1Aと第二のバックドア1B)が混流する場合であっても、第一及び第二支持部11,12の幅方向位置を各バックドア1A,1Bの幅方向間隔WA,WBに合わせてスライド調整することによって、一台の支持装置10で複数種類のバックドア1A,1Bを支持することができる。また、この組付け用支持装置10では、第一及び第二支持部11,12を幅方向(スライド方向)に沿った軸線(ここでいう第一軸線X1)まわりに回転可能とする軸回転機構14を設けたので、第一及び第二支持部11,12で支持した状態のバックドア1を軸回転させることができる。よって、組付け時の姿勢が異なるバックドア1A,1Bがラインに混流する場合であっても、軸回転機構14によりバックドア1の種類に合わせて軸回転量(角度θ1,θ2)を調整することで、各バックドア1A,1Bを組付け時の姿勢にすることができる。よって、一台の支持装置10で複数種類のバックドア1A,1Bを組付け可能な状態に支持することが可能となる。また、支持装置10の汎用化により、従来よりも支持装置10の数を減らすことができるので、支持装置10の保管スペースを縮小した分だけ設備スペースや作業スペースの拡大を図るなど限られたスペースの有効活用を図ることが可能となる。もちろん、支持装置10の数を減らした分だけコストダウンを図ることも可能となる。
【0053】
また、本実施形態では、バックドア1の幅方向両側に、先端が球形をなすピボット軸2が設けられている場合、各支持部11,12が、ピボット軸2をその軸方向に挿入して嵌合可能な筒状嵌合部16と、筒状嵌合部16の一端開口部16bから基端側に向けてスリット状に延びピボット軸2の首部2bと嵌合可能なスリット状嵌合部17と、バックドア1のピボット軸2と異なる部位を受けるワーク受け部18とを一体に有する構成とした。このように各支持部11,12を構成することによって、幅方向に沿った向きを指向するピボット軸2(
図8(b)を参照)については筒状嵌合部16で嵌合支持し、幅方向と直交する向きを指向するピボット軸2(
図8(a)を参照)についてはスリット状嵌合部17で嵌合支持することができる。よって、一つの支持部11(12)でピボット軸2の向きが異なる二種類のバックドア1A,1Bを支持することが可能となる。また、本構成では、各バックドア1A,1Bのうちピボット軸2と異なる部位を受けるワーク受け部18を筒状嵌合部16と一体に設けたので、筒状嵌合部16にピボット軸2がその軸方向に挿入して嵌合支持されるバックドア1(第二のバックドア1B)の場合であっても、軸回転機構14により筒状嵌合部16がワーク受け部18と一体に軸回転することで、バックドア1を受けながら軸回転させて組付け時の姿勢にすることが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、スライド機構13を、各支持部11,12が取付けられたスライド部19と、スライド部19が摺動可能なレール部20と、スライド部19を手動でスライド操作可能なレバー部21と、レバー部21の軸回転操作によりスライド部19を所定方向に沿った複数の位置でレール部20に対してロック可能なロック部22とで構成したので、作業者が任意のタイミングでバックドア1の支持動作を行うことができる。また、スライド動作の際と共通のレバー部21の操作(軸回転操作)で第一及び第二支持部11,12をバックドア1A,1Bごとに定められた所定位置にロックできるので、各支持部11,12の接近動作と、バックドア1を支持した後のロック動作とを円滑に実施することが可能となる。また、スライド動作とロック動作に専用の駆動装置を用いずに済むため、支持装置10の簡素化並びに低コスト化が可能となる。
【0055】
また、本実施形態では、軸回転機構14を、各支持部11,12が先端に設けられ軸回転可能なシャフト部25と、シャフト部25の外周に設けられたカム部26と、互いに異なる位相でカム部26と当接可能な複数の規制部材27,28とで構成したので、機械的に支持部11,12の軸回転量(位相)を制御することができる。そのため、上述のように各支持部11,12で支持した状態のバックドア1A,1Bを作業者が手に持って軸回転させることにより、各バックドア1A,1Bを所定の位相、すなわちバックドア1A,1Bに合った組付け時の姿勢で支持することが可能となる。また、手動で軸回転可能な構造であるから、軸回転のための駆動装置を用いずに済み、これによっても支持装置10の簡素化並びに低コスト化が可能となる。
【0056】
また、本実施形態では、昇降機構15を、第一及び第二支持部11,12を、分岐したアーム部29a,29bを介して連結する昇降部30と、昇降部30を昇降可能に駆動するシリンダ31とで構成したので、第一支持部11と第二支持部12とを同期して昇降できる。これにより、バックドア1を一定の姿勢に保った状態で組付け位置まで上昇あるいは下降させることが可能となる。また、シリンダ31を用いることでバックドア1A,1Bごとに組付け高さ位置(搭載高さ)を容易に変更することが可能となる。
【0057】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係る組付け用支持装置は、上記例示の構成に限られることなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能なことは言うまでもない。
【0058】
例えば上記実施形態では、異なる二種類のバックドア1A,1Bを、対応する自動車用のボデー2A,2Bに組付ける場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば図示は省略するが、異なる三種類以上のバックドアを、対応するボデーに組付ける場合に本発明に係る組付け用支持装置を用いてもよい。この場合、例えばロック部22であれば、各バックドアの幅方向の支持位置に応じて幅方向で互いに異なる三箇所以上に切欠き部を設ければよい。あるいは、軸回転機構14であれば、幅方向で互いに異なる三箇所以上に規制部材を設けて、カム部26との当接位置(位相)を各バックドアの搭載角度に応じた大きさに設定すればよい。
【0059】
また、以上の説明では、自動車用のボデー2A,2Bに、バックドア1A,1Bを組み付ける場合に本発明を適用した場合を例示したが、バックドア以外の自動車用部品(サブアセンブリを含む)の組付け工程に本発明を適用してもよい。もちろん、自動車用以外の部品の組付け工程に本発明を適用してもかまわない。
【符号の説明】
【0060】
1,1A,1B バックドア
1a 内面
2 ピボット軸
2A,2B ボデー
2a 球状部
2b 首部
10 組付け用支持装置
11 第一支持部
12 第二支持部
13 スライド機構
14 軸回転機構
15 昇降機構
16 筒状嵌合部
16a 底部
17 スリット状嵌合部
18 ワーク受け部
19 スライド部
20 レール部
21 レバー部
21a 把持部
22 ロック部
23 位置決め部材
23a,23b,23c 切欠き部
24 嵌合部
25 シャフト部
26 カム部
26a 第一カム面
26b 第二カム面
27 第一規制部材
27a 支持規制面
27b 第一組付け規制面
28 第二規制部材
28a 第二組付け規制面
29a,29bアーム部
30 昇降部
31 シリンダ
WA,WB 幅方向間隔
X1 第一軸線
X2 第二軸線
θ1,θ2 角度