(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168074
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】導電性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241128BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20241128BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20241128BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20241128BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20241128BHJP
C08L 25/18 20060101ALI20241128BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C08L101/00
H01B1/22 A
C08K5/17
C08K5/29
C08K3/08
C08L25/18
C08L33/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084471
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 公一朗
(72)【発明者】
【氏名】田上 安宣
(72)【発明者】
【氏名】久保田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】青野 竜也
【テーマコード(参考)】
4J002
5G301
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002AA021
4J002BG001
4J002BG071
4J002CC031
4J002CD001
4J002CF001
4J002CK021
4J002CM012
4J002DA077
4J002DA087
4J002EN036
4J002EN046
4J002ER008
4J002FB087
4J002FB237
4J002FD070
4J002FD117
4J002FD148
4J002FD152
4J002FD156
4J002FD170
4J002FD208
4J002GQ00
4J002GQ02
5G301DA03
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA10
5G301DA42
5G301DA51
5G301DA53
5G301DA60
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】例えばスクリーン印刷により形成された硬化前の印刷膜に気泡が生じにくく、硬化膜表面の凹凸が小さく、その端部のにじみが生じにくく、良好な導電性を有する硬化膜を形成可能な導電性組成物を提供すること。
【解決手段】(A)バインダー樹脂 1~30質量%、(B)エチレンジアミン骨格を有するアミン化合物 0.1~5質量%、(C)導電性粒子 50~98質量%、(D)ポリイソシアネート 0.5~15質量%、を含む導電性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダー樹脂 1~30質量%、
(B)エチレンジアミン骨格を有するアミン化合物 0.1~5質量%、
(C)導電性粒子 50~98質量%、
(D)ポリイソシアネート 0.5~15質量%、
を含む導電性組成物。
【請求項2】
前記(B)エチレンジアミン骨格を有するアミン化合物が、下記式(1)で表されるアミン、下記式(2)で表されるアミン及び分子量が100~10,000のポリエチレンイミンから選択される少なくとも1種である、請求項1記載の導電性組成物。
【化1】
(式(1)中、重合度nは1~5である。)
【化2】
(式(2)中、R
1は炭素数1~3の炭化水素基であり、R
2は炭素数1~5の炭化水素基である。)
【請求項3】
前記(A)バインダー樹脂が、下記式(3)で表されるモノマー(a1)に由来する構成単位が20~100モル%、前記モノマー(a1)と共重合可能なモノマー(a2)に由来する構成単位が0~80モル%で構成される重合体である、請求項1又は2に記載の導電性組成物。
【化3】
(式(3)中、R
3は単結合、アミド基又はエステル基であり、R
4は水素原子又はメチル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物に関し、特に、スクリーン印刷に適用される導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性組成物をスクリーン印刷で電子基板上に印刷した後、硬化させることで電子デバイス用配線を形成する方法が注目されている。この方法は、筐体等に直接配線を形成できるため部品数の低減や軽薄短小化ができるといった特徴がある。
【0003】
導電性組成物としては、銀や銅といった金属粒子やカーボンブラック等の炭素導電紛を主成分とし、バインダー樹脂や分散剤等を含むものが一般的である。導電性組成物に使用されるバインダーとしては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等がよく用いられるが、中でもアクリル系樹脂は共重合させるモノマーの種類によって耐衝撃性、熱可塑性、光反応性等さまざまな機能を付与することができる。例えば分散性の悪い酸化性金属粒子等も、親水性の官能基を有するモノマーを共重合させることで分散性を向上させることができ、導電性組成物の耐久性を低下させる分散剤量を減らすことも可能である。
【0004】
一方で、スクリーン印刷用のバインダーとしてアクリル系樹脂を用いた場合、糸ひき性と流動性の悪さから、スクリーン印刷時に空気を巻き込むことで印刷後硬化前の印刷膜中に気泡が多数存在するとともに、硬化膜の表面の凹凸が著しく大きく、数多く形成されるという問題がある。これを抑制する方法としては希釈剤を大量に添加する方法もあるが、この方法を実施する場合、チキソトロピー性(以下、チキソ性とも称する。)が悪化し印刷後の硬化膜の端部のにじみが発生するとともに導電性粒子の充填率が低下し導電性が悪化する問題がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、スクリーン印刷により形成された導体パターンの端部のにじみを抑制する方法が開示されている。特許文献1に開示された導電性組成物は、金属酸化物を含有することでチキソ性に優れており、導電性を損なうことなくにじみのない配線パターンを得ることができる。しかし、金属酸化物により導電性組成物の硬化膜表面に気泡の痕が存在し表面の凹凸が大きくなる可能性が高くなる恐れがある。
【0006】
また、特許文献2には、イソシアネート構造を持つバインダー樹脂と導電材、バインダー樹脂を溶解する溶剤からなる印刷用の導電性組成物が記載されている。この導電性組成物はバインダー樹脂中にカルボン酸金属塩部位を持っており、低いエネルギーで高い導電性をもつ印刷パターンを形成することが可能である。しかし、導電性組成物のチキソ性が悪く溶剤量が多い場合は印刷パターンの端部のにじみが生じるとともに導電性が悪化することがあり、溶剤量が少ない場合は硬化膜の表面の凹凸が大きくなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7―6623号公報
【特許文献2】国際公開第2017/163615号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決すべき課題は、例えばスクリーン印刷により形成された硬化前の印刷膜に気泡が生じにくく、硬化膜表面の凹凸が小さく、その端部のにじみが生じにくく、良好な導電性を有する硬化膜を形成可能な導電性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた。その結果、バインダー樹脂、導電性粒子、特定のアミン化合物、ポリイソシアネートを所定の比率で含有する導電性組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記[1]~[3]に関する。
【0010】
[1]
(A) バインダー樹脂 1~30質量%、
(B) エチレンジアミン骨格を有するアミン化合物 0.1~5質量%、
(C) 導電性粒子 50~98質量%、
(D) ポリイソシアネート 0.5~15質量%、
を含む導電性組成物。
【0011】
[2]
前記(B)エチレンジアミン骨格を有するアミン化合物が、下記式(1)で表されるアミン、下記式(2)で表されるアミン及び分子量が100~10,000のポリエチレンイミンから選択される少なくとも1種である、前記[1]記載の導電性組成物。
【0012】
【0013】
(式(1)中、重合度nは1~5である。)
【0014】
【0015】
(式(2)中、R1は炭素数1~3の炭化水素基であり、R2は炭素数1~5の炭化水素基である。)
【0016】
[3]
前記(A)バインダー樹脂が、下記式(3)で表されるモノマー(a1)に由来する構成単位が20~100モル%、前記モノマー(a1)と共重合可能なモノマー(a2)に由来する構成単位が0~80モル%で構成される重合体である、前記[1]又は[2]に記載の導電性組成物。
【0017】
【0018】
(式(3)中、R3は単結合、アミド基又はエステル基であり、R4は水素原子又はメチル基である。)
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、例えばスクリーン印刷により形成された硬化前の印刷膜に気泡が生じにくく、硬化膜の表面の凹凸が小さく、その端部のにじみが生じにくく、良好な導電性を有する硬化膜を形成可能な導電性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されない。
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限及び下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上かつ5以下を表す。更に、濃度又は量を特定した場合、任意のより高い方の濃度又は量と、任意のより低い方の濃度又は量とを関連づけることができる。例えば「2~10質量%」及び「好ましくは4~8質量%」の記載がある場合、「2~4質量%」、「2~8質量%」、「4~10質量%」及び「8~10質量%」の記載も包含される。
【0021】
本発明の実施形態に係る導電性組成物は、(A)バインダー樹脂1~30質量%、(B)エチレンジアミン骨格を有するアミン化合物、(C)導電性粒子50~98質量%、(D)ポリイソシアネート0.5~15質量%を含む。ここで、成分(A)~(D)の含有率は導電性組成物に溶剤などの溶媒成分が含まれる場合はこれを除いたものを基準とする。したがって、成分(A)~(D)に溶媒成分が含まれる場合、これを除いたものを基準とする。尚、成分(A)~(D)以外の後述する他の成分についても、溶剤を除き、同様である。以下、各成分について説明する。
【0022】
〔成分(A):バインダー樹脂〕
本発明の実施形態で用いられる成分(A)はバインダー樹脂であり、例えば回路形成に使用される公知のバインダー樹脂を採用することができる。このようなバインダー樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。このうち、エチレン性二重結合を有するモノマーで構成される重合体が好ましい。エチレン性二重結合を有するモノマーで構成される重合体としては、特に限定はないが、フェノール性水酸基を側鎖として有するビニル系重合体が好ましい。このようなビニル系重合体としては、例えば、下記式(3)で表されるモノマー(a1)又はモノマー(a1)と、当該モノマー(a1)と共重合可能なモノマー(a2)とに由来する構成単位を含む重合体が挙げられる。このうち、モノマー(a1)に由来する構成単位が20~100モル%、モノマー(a1)と共重合可能なモノマー(a2)に由来する構成単位が0~80モル%で構成される重合体(以下、重合体(A)と称する。)が好ましい。
【0023】
【0024】
(式(3)中、R3は単結合、アミド基又はエステル基であり、R4は水素原子又はメチル基である。)
【0025】
モノマー(a1)としては、式(3)で示される化合物であれば特に限定はない。式(1)中、R3は、前述のいずれでもよいが、導電性の観点からは、エステル基が好ましい。R4は、前述のいずれでもよいが、耐加水分解性の観点からはメチル基が好ましい。モノマー(a1)の具体例としては、例えば、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート、4-ヒドロキシスチレン、N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、4-ヒドロキシフェニルアクリレート等が挙げられる。式(3)で示される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
重合体(A)は、モノマー(a1)のみで構成される重合体でもよいし、モノマー(a1)と、これと共重合可能なモノマー(a2)との共重合体でもよい。モノマー(a2)との共重合体にすることで、モノマー(a2)に基づく特性を付与することができる。モノマー(a2)としては、モノマー(a1)と共重合可能なビニル系モノマーであれば特に制限されず、例えば、アニオン系、カチオン系等のイオン性単量体やノニオン性単量体、(メタ)アクリル酸エステル化合物(但し、モノマー(a1)に含まれるものを除く)、スチレン等の芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、アクリルアミド化合物、ビニルエステル、ビニルエーテル、マレート、フマレート、α-オレフィン等の公知の物質を挙げることができる。導電性の観点からは、メタクリル酸エステル化合物が好ましく、また、1級水酸基をもつものが好ましい。メタクリル酸エステル化合物の具体例としては、メタクリル酸メチル、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール-テトラメチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。モノマー(a2)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。導電性の観点からは、少なくとも1種は1級水酸基を有するものを用いるのが好ましい。また、一級水酸基を有するモノマー(a2)の構造は、特に限定はないが、スクリーン印刷時の導電性の観点から、(メタ)アクリル酸部位と水酸基部位のリンカー部は、アルキレン骨格の場合、炭素数1~6が好ましく、アルキレンオキサイド骨格の場合、繰り返し単位が1~10のものが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸と1級水酸基を少なくとも1つ含む2つ以上の水酸基を有する多価アルコールとのエステルが好ましく、当該多価アルコールとしては、アルキレン骨格を有するもの、アルキレンオキサイド骨格を有するものがより好ましく、アルキレン骨格を有する場合は、当該骨格の炭素数が1~6、アルキレンオキサイド骨格を有する場合は、当該骨格の繰り返し単位が1~10であるものがさらに好ましい。
【0027】
重合体(A)におけるモノマー(a1)及びモノマー(a2)に由来する構成単位のモル%は、前述の各比率であるのが好ましい。即ち重合体(A)は、モノマー(a1)に由来する構成単位が20~100モル%であり、モノマー(a2)に由来する構成単位が0~80モル%である。重合体(A)に含まれるモノマーに由来する構成単位の比率は、GC/MS分析により測定することができる。また、合成時のモノマーの配合比から算出することもできる。各構成単位の好ましいモル比は、モノマー(a1)が30~100モル%で、モノマー(a2)が0~70モル%である。モノマー(a2)を含む場合の各モノマーのより好ましいモル比は、モノマー(a1)が30~80モル%で、モノマー(a2)が20~70モル%である。成分(a2)のモル比が80%より多いと、導電性粒子の分散性が低下し、優れた導電性を示す硬化膜が得られ難くなることがある。
【0028】
重合体(A)には、モノマー(a1)及びモノマー(a2)以外のモノマー類に由来する構成単位を含むことができる。その場合、物性を損なわない程度の含有量が好ましく、例えば、重合体(A)全体中0~40モル%が好ましい。
【0029】
重合体(A)の重量平均分子量は、特に限定はないが、重合体(A)の強度や粘度の観点、溶媒溶解性や印刷適性の観点から、好ましくは1,000~1,000,000であり、より好ましくは2,000~800,000であり、さらに好ましくは3,000~300,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めることができる。
【0030】
重合体(A)が共重合体である場合、共重合体の構造はランダムでもブロックでもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
【0031】
重合体(A)は、例えば、モノマー(a1)又はモノマー(a1)及びモノマー(a2)を含有するモノマー液を調製し、各モノマーをラジカル重合させることにより得ることができる。重合は公知の方法で行うことができる。例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられるが、重合体(A)の重量平均分子量を所望の範囲内に調整しやすいという面で、溶液重合や懸濁重合が好ましい。溶液重合や懸濁重合では、例えば、前述のモノマー(a1)又はモノマー(a1)及びモノマー(a2)を、所定の条件で、重合開始剤の存在下、重合溶媒中で重合反応させることで得ることができる。
【0032】
前述のラジカル重合において使用可能な重合開始剤は、公知のものを使用することができる。例えば、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキサイドカーボネート等の有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤等を挙げることができる。これらの重合開始剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いるモノマーの組み合わせや、反応条件等に応じて適宜設定することができる。なお、重合開始剤を投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしてもよいし、一部を一括仕込みして残りを滴下してもよいし、全量を滴下してもよい。また、前記モノマーとともに重合開始剤を滴下すると、反応の制御が容易となるので好ましく、さらにモノマー滴下後も重合開始剤を添加すると、残存モノマーを低減できるので好ましい。
【0033】
また、ラジカル重合においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤は公知のものを用いることができ、例えば、n-ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル等のメルカプタン類;メルカプト酢酸やメルカプトプロピン酸のようなメルカプトカルボン酸とそれらのエステル;メルカプトエタノール;ハロゲン化化合物;2量体アルファメチルスチレン等が挙げられる。
【0034】
溶液重合の際に使用可能な重合溶媒としては、モノマーと重合開始剤が溶解するものを使用することができ、具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。重合溶媒に対する全モノマー(合計量)の濃度は、重合体(A)の重量平均分子量の調整の観点、重合反応時の発熱制御の観点から、10~60質量%が好ましく、より好ましくは20~50質量%である。
【0035】
溶液重合によりモノマーを反応させる際のモノマーの反応容器への投入の仕方としては、特に限定はなく、例えば、全量を一括仕込みしても良いし、一部を一括仕込みして残りを滴下しても良いし、あるいは全量を滴下しても良い。発熱の制御しやすさから、一部を一括仕込みして残りを滴下するか、又は全量を滴下するのが好ましい。
【0036】
重合温度は、重合溶媒の種類等に応じて適宜設定することができ、例えば、50℃~110℃である。重合時間は、重合開始剤の種類と重合温度に応じて適宜設定することができる。例えば、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシネオデカノエートを使用した場合、重合温度を70~80℃として重合すると、重合時間は4~9時間程度が適している。
【0037】
成分(A)の含有量は、1~30質量%であり、好ましくは2~20質量%である。成分(A)の含有量が1質量%より少ないと、導電性組成物を用いて印刷するときに十分な流動性を持たせることが難しくなることがある。成分(A)の含有量が30質量%より多いと、導電性組成物中における成分(C)の導電性粒子同士が接触し難くなり、優れた導電性を示す硬化膜が得られないことがある。
【0038】
〔成分(B):アミン化合物〕
本発明の実施形態で用いられる成分(B)はエチレンジアミン骨格を有するアミン化合物である。エチレンジアミン骨格を有するアミン化合物の中でも、下記式(1)で示される直鎖状のエチレンジアミン骨格を有するアミン、下記式(2)で示される環状のエチレンジアミン骨格を有するアミン及び分子量が100~10,000のポリエチレンイミンから選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0039】
【0040】
(式(1)中、重合度nは1~5である。)
【0041】
【0042】
(式(2)中、R1は炭素数1~3の炭化水素基であり、R2は炭素数1~5の炭化水素基である。)
【0043】
式(1)で表される直鎖状のエチレンジアミン骨格を有するアミンは、重合度nが1~5のものであれば特に限定はないが、導電性の観点からnが1~3のものが好ましい。
【0044】
ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミンである。
【0045】
式(2)で表される環状のエチレンジアミン骨格を有するアミンとしては、式(2)で表されるものであれば特に限定はなく、R1が、炭素数1~3の何れかの炭化水素基で、R2が、炭素数1~5のいずれかの炭化水素基であるものを適宜選択して採用することができる。より良好な導電性、硬化膜の端部のにじみをより良好に抑制する観点からは、R1は、炭素数1~2の何れかの炭化水素基で、R2は、炭素数1~2の何れかの炭化水素基であるのがより好ましい。R1を構成する炭化水素基は、2価の飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数が3の場合、その構造は直鎖でも分岐を有するものでもよいが、直鎖が好ましい。R2を構成する炭化水素基も、2価の飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数が3~5の場合、その構造は直鎖でも分岐を有するものでもよいが、直鎖が好ましい。
【0046】
式(2)で示されるアミンの具体例としては、例えば、2-アミノエチルイミダゾリジン、アミノメチルピペラジン、2-アミノエチルピペラジン、3-アミノプロピルピペラジン、4-アミノブチルピペラジン、5-アミノペンチルピペラジン、2-アミノエチルホモピペラジン等が挙げられる。
【0047】
ポリエチレンイミンは、-(CH2-CH2-NH)-を繰り返し単位として有する重合体であり、エチレンジアミン骨格を有するアミン化合物である。ポリエチレンイミンの構造は、直鎖であってもよいし、分岐を有する構造であってもよいが、より良好な導電性及び硬化膜表面の凹凸の小ささの観点で、第1級、第2級、第3級アミンを含む分岐を有するものが好ましい。また、ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、100~10,000が好ましい。このうち、硬化膜表面の凹凸の小ささの観点では、重量平均分子量が100~1,000のものが好適である傾向にある。また、導電性の観点では、100~5,000のものが好適である傾向にある。
【0048】
ポリエチレンイミンは、定法に従って合成してもよいし、市販のものを用いてもよい。市販のポリエチレンイミンとしては、例えば、分岐構造を有するポリエチレンイミンとして株式会社日本触媒製のエポミン(登録商標)SP-003、SP-006、SP-012等が挙げられる。
【0049】
成分(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよいが、特性の異なるアミンを組み合わせることで、優れた導電性、及びチキソを付与することができる。成分(B)を2種以上組み合わせる場合、例えば、前述の式(1)で表されるアミン、式(2)で表されるアミン及びポリエチレンイミンから選択される2種以上が好ましい。例えば、式(1)及び/又は式(2)で表されるアミンと、ポリエチレンイミンを組み合わせて用いるのが好ましく、その混合比率は、式(1)及び/又は式(2)で表されるアミンが50~80質量%であり、ポリエチレンイミンが20~50質量%であることが好ましい。具体的には、重合度nが1~2の式(1)で表されるアミン及び/又は炭素数1~2の炭化水素基であるR1及びR2の式(2)で表されるアミンと、重量平均分子量が100~1,000で分岐構造のポリエチレンイミンとを組み合わせて用いること等が挙げられる。特に、ジエチレントリアミン及び/又は2-アミノエチルピペラジンと、重量平均分子量が300で分岐構造のポリエチレンイミン(例えば、株式会社日本触媒製、エポミンSP-003)が好ましい。
【0050】
成分(B)の含有量は、0.1~5質量%であり、好ましくは0.5~3質量%である。成分(B)の含有量が0.1質量%より少ない場合、また、5質量%より多い場合、導電性組成物を用いて得られた硬化膜の体積抵抗率が増加する場合がある。
【0051】
〔成分(C):導電性粒子〕
本発明の実施形態で用いられる成分(C)は導電性粒子であり、例えば、銀、ニッケル、金、銅等の無機導電性粒子を用いることができる。導電性の観点からは、銀、銅が好ましく、耐マイグレーションの観点、デバイスの駆動等の高印加電圧領域での使用の観点からは、銅が好ましい。銅粒子は、銅のみからなっていてもよいが、銀や白金等の銅以外の金属、金属酸化物、金属硫化物を更に含有していてもよい。銅粒子が銅以外の金属、金属酸化物、金属硫化物を更に含有する場合、銅粒子中の銅の質量比率は50質量%以上とすることが好ましい。また、銅粒子は表面層や突起物が形成された形状であってもよい。
【0052】
導電性粒子は市販のものをそのまま用いても良いが、耐酸化性の向上等を目的に、表面を被覆した表面被覆導電性粒子を用いることが好ましい。中でも、アミン化合物により表面を被覆した表面被覆導電性粒子を用いることが好ましく、下記式(4)で表されるアミン化合物により表面を被覆した表面被覆導電性粒子を用いることがより好ましい。
【0053】
【0054】
(式(4)中、mは0~3の整数、nは0~2の整数であり、n=0のとき、mは0~3のいずれかであり、n=1又はn=2のとき、mは1~3のいずれかである。)
【0055】
上記式(4)で表されるアミン化合物等で表面を被覆した表面被覆導電性粒子は、より良好な耐酸化性を得る観点から、脂肪族モノカルボン酸でさらに被覆された表面被覆導電性粒子とすることが好ましい。これにより導電性粒子表面は、アミン化合物により形成された第1被覆層と、脂肪族モノカルボン酸により形成された第2被覆層とで被覆される。好ましくは、第1被覆層は導電性粒子表面に形成され、第2被覆層は第1被覆層上に形成される。
【0056】
第2被覆層を形成する脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数8~24の脂肪族モノカルボン酸が好ましい。該脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸、直鎖不飽和脂肪族モノカルボン酸、分岐飽和脂肪族モノカルボン酸、分岐不飽和脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
【0057】
炭素数8~24の直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸等が挙げられる。炭素数8~24の直鎖不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸等が挙げられる。炭素数8~24の分岐飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、2-エチルヘキサン酸等が挙げられる。上記脂肪族モノカルボン酸として、上記化合物から選ばれる1種を単独で使用し、又は2種以上を併用することもできる。
【0058】
表面被覆導電性粒子を製造する方法は特に限定されない。アミン化合物で表面を被覆した表面被覆導電性粒子を得る方法としては、例えば、導電性粒子を塩化アンモニウム水溶液等により洗浄した後、該洗浄後の導電性粒子をアミン化合物の溶液中に添加し、必要に応じて加熱する方法、導電性粒子を例えば塩化アンモニウムとアミン化合物を含む溶液に添加し、必要に応じて加熱する方法等が挙げられる。
【0059】
アミン化合物により形成された第1被覆層と、脂肪族モノカルボン酸により形成された第2被覆層とで被覆された表面被覆導電性粒子の製造方法としては、例えば、アミン化合物で表面を被覆した表面被覆導電性粒子を、脂肪族モノカルボン酸の溶液に添加する方法が挙げられる。なお、脂肪族モノカルボン酸の溶液に添加した後に、必要に応じて、加熱してもよい。
【0060】
導電性粒子の平均粒径(D50)については、特に限定されないが、成分(C)としての導電性粒子を含有する導電性組成物をディスペンサー印刷やスクリーン印刷等の各種印刷方法において良好に印刷可能とするためには、導電性粒子の平均粒径(D50)を制御することが好ましい。具体的には、導電性粒子の平均粒径(D50)は、5nm~20μmであることが好ましく、10nm~10μmであることがより好ましい。なお、導電性粒子の平均粒径(D50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3000II)により測定することができる。
【0061】
また、導電性粒子のBET比表面積は0.05~400m2/gであることが好ましく、0.1~200m2/gであることがより好ましい。なお、導電性粒子のBET比表面積は、比表面積測定装置(例えば、ユアサアイオニクス株式会社製、モノソーブ)を用いてBET1点法により測定することができる。
【0062】
導電性粒子の形状やアスペクト比(粒子の長径と短径との比)に特に制限はなく、球状、多面体状、扁平状、板状、フレーク状、薄片状、棒状、樹枝状、ファイバー状等の各種形状のものを用いることができる。導電性粒子は、構成成分、平均粒径、形状、アスペクト比等の異なるもの中から選ばれる1種を単独で使用し、又は2種以上を併用することもできる。
【0063】
成分(C)の含有量は、50~98質量%である。成分(C)の含有量の下限は、好ましくは70質量%であり、より好ましくは80質量%である。成分(C)の含有量が50質量%より少ないと硬化時に導電性粒子同士の接触が難しくなり、優れた導電性を示す硬化膜が得られないことがある。また、成分(C)の含有量の上限は、流動性の観点から93質量%が好ましい。
【0064】
〔成分(D):ポリイソシアネート〕
本発明の実施形態で用いられる成分(D)はポリイソシアネートである。ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート及びこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。導電性の観点では、脂肪族ジイソシアネート及びこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体が好ましい。密着性の観点からは脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体がより好ましい。
【0065】
また、ポリイソシアネートはブロック剤によってブロック化されていてもよい。ブロック化されることで可使用時間が伸びるとともに印刷安定性にも好適に働く。ブロック剤としては、イソシアネートと反応する活性水素(酸素、硫黄又は窒素に結合された水素)を含有し、その生成物は可逆性であり、すなわち熱によりブロック解除するものであればどのようなものでも良く、代表的なブロック剤は、オキシム類、ラクタム類、フェノール類、活性メチレン類、ピラゾール類、メルカプタン類、イミダゾール類、アミン類、イミン類、トリアゾール類、ヒドロキシルアミン類及び脂肪族、脂環式又は芳香族アルキルモノアルコール類があげられる。なかでもピラゾール類は比較的解離温度が低く、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の加熱温度が高くできないプラスチック基板においては好適に働く。ピラゾール類としては、例えば、2,2-ジメチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等が挙げられる。イソシアヌレート骨格と、ヘキサメチレンジイソシアネート由来の骨格からなるイソシアネート基を3つ持ち、3,5-ジメチルピラゾールでブロックされたポリイソシアネートの市販品として、例えば、旭化成株式会社製、デュラネートSBN-70D等を挙げることができるが、これに限定されるわけではない。
【0066】
上記のポリイソシアネートは1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。成分(D)の含有量は、0.5~15質量%であり、好ましくは1~10質量%であり、より好ましくは1.5~7質量%である。
【0067】
〔その他成分〕
実施形態に係る導電性組成物は、上記の成分(A)~(D)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、溶剤、酸化防止剤、滑剤、分散剤、硬化剤、硬化促進剤、粘度調整剤、発泡剤、消泡剤等の各種添加剤を含有していてもよい。また、導電性組成物は、原料成分及び製造過程の装置等から不可避的に混入し得る不純物を含んでいてもよい。尚、これらの成分の何れかを含む場合は、その含有量は、0質量%より多く50質量%以下とすることができ、30質量%以下が好ましい。尚、溶剤の含有量は後述する。
【0068】
(溶剤)
実施形態に係る導電性組成物は、塗工性の改善や粘度の調節を目的に、溶剤を含有していてもよい。溶剤の種類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のエーテル系アルコール類;プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等の非エーテル系アルコール類;シクロヘキサノールアセテート、メチルメトキシプロピオネート、エチルエトキシプロピオネート、1,6-ヘキサンジオールアセテート等のエステル類;イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピニルアセテート、イソボルニルシクロヘキサノール等のテルペン類;オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、炭酸プロピレン等のその他の炭化水素類等が挙げられるが、これらに限定されない。溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合の混合比率は特に制限されない。
【0069】
溶剤の種類としては、上記エーテル系アルコール類、上記エステル類及び上記テルペン類から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。これらの溶剤を2種以上混合する場合の混合比率も特に制限されない。
【0070】
実施形態に係る導電性組成物が溶剤を含有する場合、溶剤の含有量は、導電性組成物全体中、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは1~20質量%である。尚、成分(A)~(D)及びこれら以外の他の成分が溶剤を含む形態の場合は、これを考慮した含有量である。
【0071】
(酸化防止剤)
実施形態に係る導電性組成物は、保管中に生じる各成分の性能維持を目的に、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤の種類としては、特に制限はなく、用途等に応じて、様々な酸化防止剤を用いることができる。例えば、2,2-ビピリジル、1,10-フェナントロリン等の含窒素複素環化合物類;N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-フェニレンジアミン等のシッフ塩基類;1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル1,4-フェニレンジアミン、N,N-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,N’N’-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-1,4-フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン類;p-メトキシフェノール、ヒドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン、カテコール、4-tert-ブチルカテコール、ピロガロール、オイゲノール、没食子酸プロピル等のフェノール類;L-アスコルビン酸、6-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸、6-O-ステアロイル-L-アスコルビン酸、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル等のアスコルビン酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合の混合比率は特に制限されない。
【0072】
前述の酸化防止剤の具体例のうち、2,2-ビピリジル、N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、p-メトキシフェノール、ヒドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、6-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸及び6-O-ステアロイル-L-アスコルビン酸から選択される1種又は2種以上を用いることが好ましい。これらの酸化防止剤を2種以上混合する場合の混合比率は特に制限されない。
【0073】
実施形態に係る導電性組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量は、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.1~6質量%である。
【0074】
(滑剤)
実施形態に係る導電性組成物は、成分(C)の導電性粒子の分散性調節を目的に、滑剤を適宜添加することができる。滑剤の種類としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪酸類;ナトリウム、カリウム、バリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、スズ等の金属と前記脂肪酸類とから形成された脂肪酸金属塩類;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル類;パラフィンワックス、流動パラフィン等のワックス類;エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びこれらの変性物からなるポリエーテル類;シリコーンオイル等のポリシロキサン類;フッ素系オイル等のフッ素化合物が挙げられる。滑剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を用いる場合の混合比率は特に制限されない。
【0075】
これらの滑剤の中で、分散性の観点から脂肪酸類及び脂肪酸金属塩類から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましく、更に、ステアリン酸マグネシウム及びラウリン酸から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0076】
実施形態に係る導電性組成物が滑剤を含有する場合、滑剤の含有量は、好ましくは0.01%~10質量%であり、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは0.2~3質量%である。
【0077】
(分散剤)
実施形態に係る導電性組成物は、成分(C)の導電性粒子の分散性調節を目的に、分散剤を適宜添加することができる。分散剤の種類としては、例えば、ラウロイルザルコシン、ミリストイルザルコシン、パルミトイルザルコシン、ステアロイルザルコシン、オレオイルザルコシン等のザルコシン化合物類;高分子アミン系化合物類;高分子ポリカルボン酸系化合物類が挙げられる。高分子アミン系化合物類としては、市販のものを用いることができ、例えば、日油株式会社製のフィラノールPA-075F、PA-085C、PA-107Pや、エスリーム(登録商標)AD-3172M、AD-374M、AD-508E等が挙げられる。高分子ポリカルボン酸系化合物類としては、市販のものを用いることができ、例えば、日油株式会社製のマリアリムAKM-0531、AFB-1521、AAB-0851、AWS-0851、SC-0505K、SC-1015F、SC-0708A等が挙げられる。分散剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を用いる場合の混合比率は特に制限されない。
【0078】
これらの分散剤の中で、ザルコシン化合物類から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましく、更に、オレオイルザルコシンを用いることがより好ましい。
【0079】
実施形態に係る導電性組成物が分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.2~5質量%、さらに好ましくは0.3~3質量%である。
【0080】
前述の導電性組成物は、前述の各成分を所定量配合し、定法に従い混錬することで得ることができる。また、導電性組成物を定法に従いスクリーン印刷等により基材表面に所望のパターンを印刷して印刷膜を作製した後、加熱処理等を施すことで硬化膜を得ることができる。導電性組成物は前述の成分(A)~(D)を所定の比率で含有するため、良好なチキソ性を有する。そのため、特にスクリーン印刷による印刷膜は、バインダー樹脂がアクリル樹脂である場合であっても、印刷時は適度の流動性を有し、気泡を巻き込むことを抑制可能である。なお、用いるメッシュの目が細かいほど気泡の巻き込みが起こりやすい傾向にあるが、メッシュに特に制限はなく、例えばメッシュ数が300以上の高メッシュスクリーンで印刷する場合にも、本発明の効果を得ることができる。また、導電性組成物は良好なチキソ性により、大量の溶剤(希釈剤)で希釈する必要がなく、従来技術のように無機組成物の粉末を使用する必要もなく、例えばスクリーン印刷により形成された印刷膜の端部のにじみの発生を抑制可能で、印刷膜の内部及び表面の気泡の形成を抑制することができる。また、印刷基板との界面にも気泡の形成が抑制され、ひいては印刷膜やその硬化膜の印刷基板への密着性が向上され得る。その結果、得られる硬化膜も、表面の気泡や気泡等に起因する凹凸、端部のにじみの発生が抑制されており、膜内部及び表面(印刷基板との界面を含む)の気泡が少ないため、電子デバイスの配線形成材料に最適である。したがって、前述の導電性組成物は、スクリーン印刷による回路形成に、即ち、スクリーン印刷用として好適である。なお、導電性組成物の印刷膜の表面の気泡の有無、並びに、印刷膜を硬化した硬化膜の導電性、硬化膜の端部のにじみ(導電性組成物のチキソ性)、及び、硬化膜表面の凹凸は、例えば後述する実施例の欄において行う方法で評価することができる。
【実施例0081】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。
【0082】
〔合成例1〕
(重合体(A)の製造)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び窒素導入管を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、重合溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテルを90gとモノマー(a2)としてヒドロキシエチルメタクリレート84gを仕込み、セパラブルフラスコ内を窒素置換して、窒素雰囲気下にした。モノマー(a1)として4-ヒドロキシフェニルメタクリレート196gをジエチレングリコールモノエチルエーテル267gに溶解させたモノマー溶液、及び、t-ブチルパーオキサイドカーボネート43gとジエチレングリコールモノエチルエーテル43gを混合した重合開始剤溶液をそれぞれ調製した。次いで、セパラブルフラスコ内を75℃まで昇温し、モノマー溶液及び重合開始剤溶液を同時にそれぞれ2時間かけて滴下した。その後、75℃で3時間反応させ4-ヒドロキシフェニルメタクリレート(a1)とヒドロキシエチルメタクリレート(a2)の共重合体(モル比:a1/a2=61/39)である重合体(A)(アクリル樹脂)のジエチレングリコールモノエチルエーテル溶液(固形分40%)を得た。
【0083】
(重量平均分子量の測定)
得られた重合体(A)の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件により求めた。その結果、重量平均分子量は、26,000であった。
装置:東ソー(株)社製、HLC-8220
カラム:shodex社製、LF-804
標準物質:ポリスチレン
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0084】
〔合成例2〕
(銅粒子(1):表面被覆銅粒子(1)の製造)
水100gに対し塩化アンモニウム5gを溶解した塩化アンモニウム水溶液を調製した。銅粒子a[三井金属鉱業(株)製「1200Y」;粒径(D50)2μm、BET比表面積0.40m2/g、形状:球状]50gを、塩化アンモニウム水溶液に添加し、窒素バブリング下、30℃で60分間攪拌した。撹拌は、メカニカルスターラーを使用し、回転数150rpmで実施した。以下、撹拌は同様の撹拌装置を使用して同じ回転数で行なった。撹拌終了後、5C濾紙の桐山ロートを用いて減圧濾過にて銅粒子を濾別し、つづいて、桐山ロート上で150gの水により銅粒子の洗浄を2回行なった。
洗浄した銅粒子を、40質量%のジエチレントリアミン水溶液250gに添加し、窒素バブリンクをしながら60℃下で1時間加熱撹拌を行なった。
撹拌を止めて5分間静置した後、上澄み液約200gを抜き取って除去した。つづいて、沈殿物に洗浄用溶剤としてイソプロパノール200gを添加し、30℃で3分間撹拌を行なった。撹拌を止めて5分間静置した後、上澄み液約200gを抜き取って除去し、その後、2質量%のラウリン酸イソプロパノール溶液250gを添加した後、30℃で30分間攪拌した。
撹拌終了後、5C濾紙の桐山ロートを用いて減圧濾過にて銅粒子を濾別した。得られた銅粒子を25℃で3時間減圧乾燥することにより、表面被覆銅粒子(1)(銅粒子(1))を得た。
【0085】
〔合成例3〕
(銅粒子(2):表面被覆銅粒子(2)の製造)
銅粒子aを銅粒子b[三井金属鉱業(株)製「1400YP」;粒径(D50)6μm、BET比表面積0.60m2/g、形状:板状]に変更した以外は合成例2と同様にして、表面被覆銅粒子(2)(銅粒子(2))を得た。
【0086】
〔実施例1〕
(導電性組成物の製造)
成分(A)として合成例1で得られた重合体(A)(アクリル樹脂)を0.7g(固形分40質量%、溶剤ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、成分(B)としてジエチレントリアミン(アミン化合物B-1)を0.08g、成分(C)として合成例2で得られた表面被覆銅粒子(銅粒子(1))を7.0g及び合成例3で得られた表面被覆銅粒子(銅粒子(2))を3.0g、成分(D)としてピラゾールブロックポリイソシアネート[旭化成株式会社製、デュラネートSBN-70D、固形分70質量%、溶剤:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル]を0.3g、酸化防止剤としてシッフ塩基類であるN,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミンを0.05g及びフェノール類であるハイドロキノンを0.3g、滑剤としてラウリン酸を0.1g、溶剤としてエーテル系アルコール類であるジエチレングリコールモノエチルエーテルを0.3g混合した。次に、プラネタリーミキサー[ARV-310、株式会社シンキー製]を用いて、室温下、回転数2000rpmで60秒間撹拌し、1次混練を行なった。次に、3本ロールミル[EXAKT-M80S、株式会社永瀬スクリーン印刷研究所製]を用いて、室温、ロール間距離5μmの条件下で5回通すことで、2次混練を行なった。2次混練で得られた混練物を、プラネタリーミキサー[ARV-310、株式会社シンキー製]を用いて、室温、真空条件下、回転数1000rpmで90秒間撹拌し脱泡混練することにより導電性組成物を製造した。導電性組成物の配合割合を表4に示す。尚、導電性組成物全体中の全溶剤の配合割合は6.8質量%である。
【0087】
〔導電性(体積抵抗率)の評価〕
(硬化膜の形成)
得られた導電性組成物をメタルマスク(パターン:幅×長さ×厚み=1.0mm×30mm×50μm)を用いてポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製、カプトン500H)上に塗布した。導電性組成物を塗布したポリイミドフィルムを対流オーブンにて大気下130℃で30分間加熱することにより硬化膜を作製した。
【0088】
(体積抵抗率の評価方法)
得られた硬化膜の膜厚を針触式膜厚計(DektakXT 、Bruker 製)により3点測定し、平均値を求めた。得られた硬化膜に低抵抗率計(Loresta-GP MCP-T610、日東精工アナリテック株式会社製)の測定プローブを押し当てることで膜厚を30μmに換算した硬化膜の体積抵抗率を測定した。上記方法で測定された膜厚の平均値及び体積抵抗率の測定値から硬化膜の体積抵抗率を下記式から算出した。
体積抵抗率(Ω・cm)=体積抵抗率の測定値(Ω・cm)×{膜厚平均値(μm)/30(μm)}
【0089】
下記の評価基準により硬化膜の導電性を判定した。体積抵抗率の値が小さいほど、硬化膜に電流が流れやすく導電性が優れていることを示す。
◎: 体積抵抗率の値が30μΩ・cm未満である。
〇: 体積抵抗率の値が30μΩ・cm以上、60μΩ・cm未満である。
×: 体積抵抗率の値が60μΩ・cm以上である。
【0090】
〔スクリーン印刷物の硬化膜の端部のにじみの評価〕
得られた導電性組成物を、スクリーン印刷機(MT-320T、マイクロ・テック株式会社製)とスクリーン版(SONOCOM製、メッシュサイズ:400メッシュ、乳剤厚:20μm)を用いてポリイミドフィルム上に印刷し、スクリーン印刷物を得た。印刷パターンは、幅×長さ×厚み=2.0mm×100mm×20μmの細線とした。導電性組成物を印刷したポリイミドフィルムを対流オーブンにて大気下130oCで30分間加熱することでスクリーン印刷物の硬化物(細線の硬化膜)を得た。細線の硬化膜をデジタル顕微鏡(DINOAM3103、サンコー株式会社製)で観察し(倍率50倍)、細線の硬化膜の線幅を、細線の長さ方向の両端部、中央部の3カ所にて測定し、平均値を測定値とした。下記の評価基準によ硬化膜の端部のにじみを判定した。印刷パターンと細線の硬化膜との線幅のずれが小さいほど導電性組成物のチキソトロピー性が良好で、硬化膜の端部のにじみが少ないことを示す。
◎: 線幅の測定値が1.9mm以上、2.1mm未満である。
○: 線幅の測定値が2.1mm以上、2.3mm未満である。
×: 線幅の測定値が2.3mm以上である。
【0091】
〔スクリーン印刷物の硬化膜の表面の凹凸(表面粗さRa)の評価〕
得られた導電性組成物を、スクリーン印刷機(MT-320T、マイクロ・テック株式会社製)とスクリーン版(SONOCOM製、メッシュサイズ:400メッシュ、乳剤厚:20μm)を用いてポリイミドフィルム上に印刷し、スクリーン印刷物を得た。印刷パターンは、幅×長さ×厚み=30mm×30mm×20μmのベタ膜とした。導電性組成物を印刷したポリイミドフィルムを対流オーブンにて大気下130oCで30分間加熱することでスクリーン印刷物の硬化膜を得た。硬化膜の表面の凹凸の大小を表す指標として表面粗さRaを、針触式膜厚計(DektakXT、Bruker社製)を用いて測定した。下記の評価基準により、硬化膜の表面の凹凸の大きさを判定した。Raが小さいほど硬化膜の表面の凹凸が少ないことを示す。
◎: Raが1.5μm未満である。
○: Raが1.5μm以上2.0μm未満である。
×: Raが2.0μm以上である。
【0092】
〔スクリーン印刷物(印刷膜)の表面の気泡の有無の評価〕
「スクリーン印刷物の硬化膜の表面の凹凸(表面粗さRa)の評価」と同様の方法でスクリーン印刷物(印刷膜)を得た。印刷膜の表面の気泡の有無を、デジタル顕微鏡(DINOAM3103、サンコー株式会社製)を用いて目視で確認した(倍率50倍、観察面積1.4cm2)。印刷膜表面に気泡が確認された場合、硬化膜にした時の表面の凹凸が大きくなるとともに、硬化膜中に気泡痕として空隙が存在し導電性の低下に繋がることを示す。
【0093】
〔実施例2~17、比較例1~6〕
実施例2~17、比較例2~6では所定のアミン化合物として表1~3に示したものを用い、実施例2~17、比較例1~6において、配合割合を表4、5に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物を製造した。また、実施例14、15、比較例1、2の導電性組成物全体中の全溶剤の配合割合はそれぞれ6.7質量%、18.0質量%、6.9質量%、6.5質量%である。得られた導電性組成物を用いて各評価を行った。結果を表4、5に示す。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
実施例1~17では、体積抵抗率が最大で58μΩ・cmで良好な導電性を有し、細線の線幅がいずれも1.9mm~2.2mmで印刷パターンとの差が小さく、端部のにじみが良好に抑制されていることが確認された。また、表面粗さRaがいずれも最大で1.9μmであり、硬化膜表面の凹凸が小さいことが確認された。また、エチレンジアミン骨格を有するアミン化合物により導電性粒子の分散性が高く、導電性組成物の流動性に優れるため印刷膜表面の気泡は確認されなかった。
【0100】
成分(B)を配合せずに導電性組成物を調製した比較例1では、体積抵抗率が89μΩ・cmと導電性が悪く、印刷膜表面に気泡が見られたため、硬化膜の表面粗さRaが2.0μmで硬化膜表面の凹凸が十分に抑制されていないことが分かった。成分(B)の含有量を6.0質量%として導電性組成物を調製した比較例2では、表面に気泡はみられなかったものの、体積抵抗率が5,000μΩ・cm以上と導電性が極端に悪く、細線の線幅が2.4mmと大きく端部のにじみの発生が十分に抑制されておらず、硬化膜表面の粗さが2.4μmと大きく硬化膜表面の凹凸が十分に抑制されていないことが分かった。所定のアミン化合物以外のアミンを用いて導電性組成物を調製した比較例3~6では、体積抵抗率が極端に大きいか、細線の線幅が印刷パターンからのずれが大きいか、硬化膜表面粗さRaが大きく、印刷膜表面に気泡が見られ、導電性、端部のにじみ、硬化膜表面の凹凸の全てを実用可能なレベルで実現できるものはなかった。
【0101】
以上のように、所定の成分(A)~(D)を所定の比率で含有する導電性組成物は、良好なチキソ性を有する。また、当該導電性組成物を用いることで、例えばスクリーン印刷により形成された印刷膜表面及び内部に気泡が生じにくく、印刷膜の硬化膜は、導電性が良好であり、表面の凹凸の発生が抑制され、端部のにじみも抑制されていることが分かる。したがって、当該導電性組成物は、電子デバイスの配線形成材料に好適であることが分かる。