(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168082
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】蓄電装置用外装材及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/105 20210101AFI20241128BHJP
H01M 50/126 20210101ALI20241128BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20241128BHJP
H01M 50/117 20210101ALI20241128BHJP
H01M 50/122 20210101ALI20241128BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20241128BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20241128BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241128BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/126
H01M50/119
H01M50/117
H01M50/122
H01M50/121
H01M50/131
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084484
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】村田 光司
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA02
5H011AA03
5H011CC02
5H011CC05
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD14
5H011KK00
5H011KK01
5H011KK02
5H011KK04
5H029AJ12
5H029AM11
5H029BJ04
5H029DJ02
5H029EJ01
5H029EJ03
5H029EJ12
(57)【要約】
【課題】蓄電装置において外装袋として加熱及び加圧状態で使用される場合でも、優れた絶縁性を有する蓄電装置用外装材及び蓄電装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも基材層、金属層を含むバリア層、接着層、及び、シーラント層をこの順に備える蓄電装置用外装材であって、接着層が、疎水性絶縁無機フィラーを含む蓄電装置用外装材。疎水性絶縁無機フィラーの含有率は0.5~20質量%であってよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層、金属層を含むバリア層、接着層、及び、シーラント層をこの順に備える蓄電装置用外装材であって、
前記接着層が、疎水性絶縁無機フィラーを含む、蓄電装置用外装材。
【請求項2】
前記接着層が、前記疎水性絶縁無機フィラー、樹脂及び多官能イソシアネート化合物を含み、
前記樹脂が、変性ポリオレフィン樹脂である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項3】
前記シーラント層のMFRが20g/10分以下である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項4】
前記シーラント層の融点が160℃以上である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項5】
前記疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径が1~20μmである、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項6】
150℃、3MPaの条件で24時間加熱及び加圧を行った場合における絶縁破壊電圧が100V以上である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項7】
前記変性ポリオレフィン樹脂が酸変性ポリオレフィン樹脂である、請求項2に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項8】
前記多官能イソシアネート化合物がイソシアヌレート型多官能イソシアネート化合物を含む、請求項2に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項9】
前記接着層中の前記疎水性絶縁無機フィラーの含有率が0.5~20質量%である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項10】
前記バリア層が、前記金属層の一方又は両方の面に腐食防止処理層をさらに備える、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項11】
前記蓄電装置が全固体電池である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項12】
正極、電解質及び負極をこの順に有する電池セルと、
前記電池セルを収容する外装袋とを備え、
前記外装袋が、請求項1~10のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材を有する、蓄電装置。
【請求項13】
全固体電池である、請求項12に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置用外装材及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の二次電池は、携帯電子機器や、電気を動力源とする電気自動車及びハイブリッド電気自動車等に広く用いられている。リチウムイオン電池は一般的には、正極及び負極を含む電池セルと、その電池セルを収容する外装袋とを備えており、外装袋は、外装材を用いて得られる。
このようなリチウム二次電池では、電池容量及び使用電流が大きくなることがあるため、外装材には、より高い安全性を確保するためにより良好な絶縁性が求められる。
例えば下記特許文献1では、絶縁性に優れた電池用外装材を得るために、耐熱性樹脂フィルムを含む外層と、金属箔層と、接着層と、熱可塑性樹脂フィルムを含む内層とが積層されてなる電池用外装材において、接着層に絶縁性粒子を含有させ、絶縁性粒子を、平均粒径0.1μm~4μmの無機系粒子、平均粒径0.1μm~4μmの有機系粒子のいずれか一方またはこれらの混合物とし、かつ、接着層中の絶縁性粒子の添加量を1~30質量%とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リチウム二次電池には、電解質を固体電解質とした全固体電池があり、このような全固体電池等の蓄電装置は、正極、固体電解質及び負極を含む電池セルの表面に垂直な方向に外装材を介して加圧状態で拘束されることがある。これは、正極又は負極と固体電解質との密着性を高めることで、正極又は負極と固体電解質との間の抵抗を低下させ、蓄電装置の十分な電池性能を発現させ維持するためである。
しかし、上記特許文献1に記載の外装材は、電池セルの外装袋として使用していると、電池セルが加熱することがあり、長時間の加熱状態で外装材が加圧されると、シーラント層が押し潰されてさらに流動し、その結果、外装材の金属層と電池セルの正極又は負極とが短絡するおそれがある。したがって、上記特許文献1に記載の外装材は、蓄電装置において外装袋として加熱及び加圧状態で使用される場合の絶縁性の点で改善の余地を有していた。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、蓄電装置において外装袋として加熱及び加圧状態で使用される場合でも、優れた絶縁性を有する蓄電装置用外装材及び蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、少なくとも基材層、金属層を含むバリア層、接着層、及び、シーラント層をこの順に備える蓄電装置用外装材であって、前記接着層が、疎水性絶縁無機フィラーを含む、蓄電装置用外装材を提供する。
【0007】
上記外装材によれば、蓄電装置において外装袋として加熱及び加圧状態で使用される場合でも、優れた絶縁性を有する。
上記効果が得られる理由について本開示の発明者らは以下のように推測する。
すなわち、本開示の外装材では、接着層は、長時間の加熱及び加圧状態では一般に粘性流体となるが、接着層は、金属層を含むバリア層に隣接するため、バリア層との摩擦によりシーラント層よりも流動しにくくなる。また、疎水性絶縁無機フィラーが疎水性を有するため、接着層中の他の成分との親和性が増し、接着層の凝集力が向上する。このため、接着層が加熱及び加圧された状態でも、接着層が流動しにくくなる。さらに、接着層が疎水性絶縁無機フィラーを含むことで、接着層のシーラント層側の表面に凹凸が生じやすくなり、接着層とシーラント層との間の接触面積が増加し、接着層とシーラント層との間の密着性が向上するため、シーラント層が加熱及び加圧されても流動しにくくなる。その結果、外装材が加熱及び加圧されても、接着層及びシーラント層が流動しにくくなる。さらに疎水性絶縁無機フィラーは、絶縁性有機フィラーである場合に比べて、長時間の加熱及び加圧状態でも変形しにくくなり、接着層が加熱及び加圧により圧縮されても、接着層及びシーラント層(以下、これらをまとめて「絶縁層」ともいう)は、少なくとも疎水性絶縁無機フィラーの大きさ分の厚さを確保できる。また、疎水性絶縁無機フィラーに、電気伝導性を有する水分が付着しにくくなるため、接着層における電気抵抗の低下を抑制し、接着層の絶縁性の低下を抑制することができる。
以上のことから、外装材が蓄電装置の電池セルの外装袋として加熱及び加圧状態で使用されても、優れた絶縁性を有するのではないかと本開示の発明者らは推測する。
【0008】
上記蓄電装置用外装材において、前記組成物が、前記疎水性絶縁無機フィラー、樹脂及び多官能イソシアネート化合物を含み、前記樹脂が、変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
この場合、組成物に含まれる変性ポリオレフィン樹脂及び多官能イソシアネート化合物が反応することで、組成物を用いて得られる接着層が、さらに長時間の加熱及び加圧状態でも流動しにくくなり、接着層を含む絶縁層が潰れることをより十分に抑制できる。そのため、外装材は、蓄電装置の電池セルの外装袋として加熱及び加圧状態で使用されても、より優れた絶縁性を有することが可能となる。
また、接着層が変性ポリオレフィンを含む組成物を用いて得られることで、バリア層及びシーラント層に対する接着層の接着性がより向上する。
さらに、上記組成物が多官能イソシアネート化合物をさらに含むことで、シール強度をより向上させながら、水分バリア性をさらに向上させることができる。
【0009】
上記蓄電装置用外装材において、前記シーラント層のMFRが20g/10分以下であることが好ましい。
シーラント層のMFRを20g/10分以下にして加熱及び加圧状態でもシーラント層を流動しにくくすることで、外装材が加熱及び加圧状態で外装袋として使用されても、シーラント層が潰れにくくなり、シーラント層を含む絶縁層の厚さを十分に確保でき、より優れた絶縁性を有することが可能となる。
【0010】
上記蓄電装置用外装材において、前記シーラント層の融点が160℃以上であることが好ましい。
シーラント層の融点を160℃以上とすることで、加熱及び加圧状態でもシーラント層の流動を十分に抑えることができる。このため、接着層を含む絶縁層が潰れることをより十分に抑制できる。そのため、外装材は、蓄電装置の電池セルの外装袋として加熱及び加圧状態で使用されても、より優れた絶縁性を有することが可能となる。
【0011】
上記蓄電装置用外装材において、前記疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径が1~20μmであることが好ましい。
この場合、疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径が1μm未満である場合に比べて、外装材は、蓄電装置の電池セルの外装袋として加熱及び加圧状態で使用されても、より優れた絶縁性を有することが可能となる。また、組成物中で疎水性絶縁無機フィラーが良好な分散状態を維持することができ、接着層の凝集力が低下しにくくなり、バリア層及びシーラント層に対する接着層の密着強度やシーラント層のシール強度が低下しにくくなる。
【0012】
上記蓄電装置用外装材において、150℃、3MPaの条件で24時間加熱及び加圧を行った場合における絶縁破壊電圧が100V以上であることが好ましい。
この場合、加熱及び加圧条件が過酷な条件であっても、外装材は、蓄電装置の電池セルの外装袋として加熱及び加圧状態で使用される場合に、より優れた絶縁性を有することが可能となる。
【0013】
上記蓄電装置用外装材において、上記変性ポリオレフィン樹脂が酸変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
この外装材によれば、バリア層に対する接着層の密着性が向上し、外装材が加熱及び加圧されても、接着層がより流動しにくくなる。またバリア層への接着層の密着性が向上することで耐熱性も向上する。
【0014】
上記蓄電装置用外装材において、上記多官能イソシアネート化合物がイソシアヌレート型多官能イソシアネート化合物を含むことが好ましい。
この外装材によれば、多官能イソシアネート化合物がイソシアヌレート型多官能イソシアネート化合物を含むことで、接着層が、優れた密着性及び耐熱性を有することが可能となり、高いシール強度及び耐熱性を有し、優れたバリア性を有することが可能となる。
【0015】
上記蓄電装置用外装材においては、上記組成物中の前記疎水性絶縁無機フィラーの含有率が0.5~20質量%であることが好ましい。
この場合、組成物中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率が0.5質量%未満である場合に比べて、外装材が、蓄電装置の電池セルの外装袋として加熱及び加圧状態で使用されても、接着層を含む絶縁層の厚さを均一に維持しやすくなる。また、組成物中のフィラーの含有率が20質量%を超える場合に比べて、接着層の凝集力の低下が抑制され、シール強度及び密着性の低下がより抑制される。また、接着層の脆性の低下をより抑制することもできる。
【0016】
上記蓄電装置用外装材は、上記バリア層の一方又は両方の面に腐食防止処理層を備えてもよい。
この外装材によれば、腐食防止処理層に対する接着層の密着性が向上し、接着層の流動を抑制できるため、外装材が、蓄電装置の電池セルの外装袋として加熱及び加圧状態で使用されても、より優れた絶縁性を有することが可能となる。
【0017】
上記蓄電装置用外装材において、前記蓄電装置が全固体電池であってよい。
【0018】
また、本開示は、正極、電解質及び負極をこの順に有する電池セルと、前記電池セルを収容する外装袋とを備え、前記外装袋が、上述した蓄電装置用外装材を有する、蓄電装置を提供する。
本開示の蓄電装置によれば、外装材が外装袋として加熱及び加圧状態で使用される場合でも、優れた絶縁性を有するため、当該蓄電装置が電池セルと外装材との界面に垂直な方向に加圧した状態で加熱される場合でも、電池セル内の正極又は負極と外装材の金属層とが短絡することを抑制できる。
【0019】
上記蓄電装置が全固体電池であってよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、蓄電装置において外装袋として加熱及び加圧状態で使用される場合でも、優れた絶縁性を有する蓄電装置用外装材及び蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の蓄電装置用外装材の第1実施形態を示す断面図である。
【
図2】本開示の蓄電装置用外装材の第2実施形態を示す断面図である。
【
図3】本開示の蓄電装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図5】実施例及び比較例において用いられるシール強度測定用の試験片を切り出す前の折り畳まれたカット片を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
[蓄電装置用外装材の第1実施形態]
まず、本開示の蓄電装置用外装材の第1実施形態について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本開示の蓄電装置用外装材の第1実施形態を示す断面図である。
図1に示される蓄電装置用外装材(以下、単に「外装材」ともいう)10は、蓄電装置に用いられる外装材であり、基材層11と、第1接着層12aと、バリア層14と、接着層としての第2接着層12bと、シーラント層16とをこの順に備える。
【0024】
第2接着層12bは、疎水性絶縁無機フィラーを含む。第2接着層12bは、疎水性絶縁無機フィラーを含む組成物としての接着剤を用いて得られる。
【0025】
バリア層14は、金属層14cの両面にそれぞれ第1の腐食防止処理層14a及び第2の腐食防止処理層14bを有する。第1の腐食防止処理層14aは、基材層11と金属層14cとの間に配置され、第2の腐食防止処理層14bは、金属層14cと第2接着層12bとの間に配置されている。
なお、
図1では、金属層14cの両面に腐食防止処理層14a,14bが設けられている場合が示されているが、腐食防止処理層14a,14bのいずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0026】
外装材10において、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電装置の外部側、シーラント層16を蓄電装置の内部側に向けて使用される。
【0027】
外装材10によれば、蓄電装置において外装袋として加熱及び加圧状態で使用される場合でも、優れた絶縁性を有する。
【0028】
以下、外装材10を構成する各層について具体的に説明する。
【0029】
<基材層>
基材層11は、蓄電装置を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。特に大型用途の蓄電装置の外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。
【0030】
基材層11は、絶縁性を有する樹脂により形成された層であることが好ましい。樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、アセチルセルロース樹脂等を使用することができる。
【0031】
これらの樹脂の中でも、基材層11としては、成型性に優れることから、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,ナイロン9T、ナイロン10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
【0032】
基材層11は、必要に応じて、例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、脱水剤、結晶核剤並びに粘着付与剤等の添加剤を含有してもよい。
【0033】
基材層11は、延伸又は未延伸のフィルム形態でも、コーティング被膜としての形態のどちらでも構わない。また。基材層11は単層でも多層でもよく、多層の場合は異なる樹脂を組み合わせて使用できる。基材層11がフィルムである場合には、基材層11としては、複数の層を共押し出ししたもの、もしくは複数の層を、接着剤を介して積層したものが使用できる。基材層11がコーティング被膜である場合は、基材層11としては、コーティング液を積層回数分コーティングしてなるものが使用でき、フィルムとコーティング被膜を組み合わせて多層としたものを使用することもできる。
【0034】
これらの樹脂をフィルム形態で使用する場合は、基材層11は二軸延伸フィルムであることが好ましい。基材層11が二軸延伸フィルムである場合における延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、チューブラー二軸延伸法、同時二軸延伸法等が挙げられる。二軸延伸フィルムは、より優れた深絞り成型性が得られる観点から、チューブラー二軸延伸法により延伸されたものであることが好ましい。
【0035】
基材層11の厚さは、6~40μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。基材層11の厚さが6μm以上であることにより、外装材10の耐ピンホール性及び絶縁性を向上できる傾向がある。基材層11の厚さが40μm以下とすることにより、外装材10の総厚を小さくすることができる。
【0036】
基材層11の融点は、シール時の基材層11の変形を抑制するため、シーラント層16の融点より高く、さらにはシーラント層16の融点よりも30℃以上高いことが好ましい。
【0037】
<第1接着層>
第1接着層12aは、基材層11と金属層14cとを接着する層である。第1接着層12aは、第1接着層形成用組成物(接着剤)を用いて得られる。第1接着層形成用組成物は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤と、2官能以上のイソシアネート化合物(多官能イソシアネート化合物)とを含む。上述した各種ポリオールは、外装材10に求められる機能や性能に応じて、単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、第1接着層12aを形成する第1接着層形成用組成物としては、上記第1接着層形成用組成物以外にも、エポキシ樹脂などの主剤と、硬化剤とを含む第1接着層形成用組成物も使用可能であるが、第1接着層形成用組成物は、これに限らない。
【0038】
第1接着層形成用組成物は、第1接着層12aに求められる性能に応じて、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、脱水剤、結晶核剤並びに粘着付与剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0039】
第1接着層12aの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1~10μmが好ましく、2~7μmがより好ましい。
【0040】
<バリア層>
(金属層)
金属層14cは、水分が蓄電装置の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、金属層14cは、深絞り成型をするために延展性を有していてもよい。金属層14cとしては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔、あるいは、金属蒸着膜、この蒸着膜を設けたフィルムなどを用いることができる。蒸着膜を設けたフィルムとしては、例えば、アルミニウム蒸着フィルムを使用することができる。金属層14cとしては、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、金属箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。
【0041】
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いるのがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1~9.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。アルミニウム箔としては、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、耐腐食性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いることが好ましい。アルミニウム箔に脱脂処理を施す場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。
【0042】
金属層14cの厚さは、特に限定されるものではないが、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9~200μmとすることが好ましく、15~100μmとすることがより好ましい。
【0043】
(第1の腐食防止処理層及び第2の腐食防止処理層)
第1の腐食防止処理層14a及び第2の腐食防止処理層14bは、金属層14cの腐食を防止するために設けられる層である。また、第1の腐食防止処理層14aは、大気中に含まれる腐食性ガスによる金属層14cの腐食を防ぐと共に、金属層14cと第1接着層12aとの密着力を高める役割を果たす。また、第2の腐食防止処理層14bは、電解質や、電池内部から発生するガス(例えば硫化水素ガス)による金属層14cの腐食を防ぐことにより電解質や電池内部から発生するガスに対する耐性をより向上させると共に、金属層14cと第2接着層12bとの密着力を高める役割を果たす。第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bによって、外装材10の信頼性をより長期間にわたり維持することができる。第1の腐食防止処理層14a及び第2の腐食防止処理層14bは、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b(以下、単に「腐食防止処理層14a,14b」ともいう)は、例えば、金属層14cを構成する金属箔に対して脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれらの処理の組み合わせにより形成される。
【0044】
脱脂処理としては、酸脱脂及びアルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸を単独で使用する方法、又はこれらの混合液を使用する方法などが挙げられる。また、酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウムなどのフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いる処理を行うことが好ましい。この処理によれば、特に金属層14cにアルミニウム箔を用いた場合に、アルミニウムの脱脂効果が得られるだけでなく、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成させることができる。このため、この処理は耐腐食性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウムなどを使用する方法が挙げられる。
【0045】
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理するベーマイト処理が挙げられる。陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。
【0046】
化成処理としては、浸漬型、塗布型が挙げられる。浸漬型の化成処理としては、例えばクロメート処理、セリアゾル処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合相からなる各種化成処理が挙げられる。一方、塗布型の化成処理としては、腐食防止性能を有するコーティング剤を金属層14c上に塗布する方法が挙げられる。
【0047】
これら腐食防止処理のうち、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理のいずれかで腐食防止処理層の少なくとも一部を形成する場合は、事前に上述した脱脂処理を行うことが好ましい。なお、金属層14cとして焼鈍工程を通した金属箔など脱脂処理済みの金属箔を用いる場合は、腐食防止処理層14a,14bの形成において改めて脱脂処理する必要はない。
【0048】
塗布型の化成処理に用いられるコーティング剤は、好ましくは3価クロムを含有する。また、コーティング剤には、後述するカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーが含まれていてもよい。
【0049】
また、上記処理のうち、特に熱水変成処理、陽極酸化処理では、処理剤によってアルミニウム箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れるアルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト)を形成させる。そのため、アルミニウム箔を用いた金属層14cから腐食防止処理層14a,14bまで共連続構造を形成した形態が得られるので、上記処理は化成処理の定義に包含される。一方、後述するように化成処理の定義に含まれない、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14a,14bを形成することも可能である。この方法としては、例えば、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、且つ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。この方法を用いることで、一般的なコーティング方法でも、アルミニウム箔などの金属箔に腐食防止効果を付与することが可能となる。
【0050】
上記希土類元素酸化物のゾルとしては、例えば、水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系などの各種溶媒を用いたゾルが挙げられる。中でも、水系のゾルが好ましい。
【0051】
上記希土類元素酸化物のゾルには、通常その分散を安定化させるために、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸又はその塩、酢酸、りんご酸、アスコルビン酸、乳酸などの有機酸が分散安定化剤として用いられる。これらの分散安定化剤のうち、特にリン酸は、外装材10において、(1)ゾルの分散安定化、(2)リン酸のアルミキレート能力を利用した金属層14cとの密着性の向上、(3)アルミニウムイオンを捕獲(不動態形成)することよる腐食耐性の付与、(4)低温でもリン酸の脱水縮合を起こしやすいことによる腐食防止処理層(酸化物層)14a,14bの凝集力の向上などが期待される。
【0052】
上記希土類元素酸化物ゾルにより形成される腐食防止処理層14a,14bは、無機粒子の集合体であるため、乾燥キュアの工程を経ても層自身の凝集力が低くなるおそれがある。そこで、この場合の腐食防止処理層14a,14bは、凝集力を補うために、アニオン性ポリマー、又はカチオン性ポリマーにより複合化されていることが好ましい。
【0053】
腐食防止処理層14a,14bは、前述した層には限定されない。例えば、公知技術である塗布型クロメートのように、樹脂バインダー(アミノフェノールなど)にリン酸とクロム化合物を配合した処理剤を用いて形成してもよい。この処理剤を用いれば、腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。また、塗液の安定性を考慮する必要があるものの、希土類元素酸化物ゾルとポリカチオン性ポリマーあるいはポリアニオン性ポリマーとを事前に一液化したコーティング剤を使用して腐食防止処理層14a,14bを腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。
【0054】
腐食防止処理層14a,14bの単位面積当たりの質量は、多層構造、単層構造いずれであっても、0.005~0.200g/m2が好ましく、0.010~0.100g/m2がより好ましい。上記単位面積当たりの質量が0.005g/m2以上であれば、金属層14cに腐食防止機能を付与しやすい。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/m2を超えても、腐食防止機能はあまり変らない。一方、希土類元素酸化物ゾルを用いた場合には、塗膜が厚いと乾燥時の熱によるキュアが不十分となり、凝集力の低下を伴うおそれがある。なお、腐食防止処理層14a,14bの厚さについては、その比重から換算できる。
【0055】
腐食防止処理層14a,14bは、シーラント層16とバリア層13との密着性を保持しやすくなる観点から、例えば、酸化セリウムと、該酸化セリウム100質量部に対して1~100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含む態様であってもよく、金属層14cに化成処理を施して形成されている態様であってもよく、金属層14cに化成処理を施して形成されており、且つ、カチオン性ポリマーを含む態様であってもよい。
【0056】
<第2接着層>
第2接着層12bは、金属層14cとシーラント層16とを接着する層である。第2接着層12bは、疎水性絶縁無機フィラーを含む組成物(接着剤)を用いて得られる。組成物は樹脂を含んでもよい。
【0057】
(疎水性絶縁無機フィラー)
疎水性絶縁無機フィラーは、疎水性を有する絶縁性無機フィラーであり、非疎水性の絶縁無機フィラーを、有機ケイ素化合物で表面処理することにより得られるフィラーである。非疎水性の絶縁無機フィラーを、有機ケイ素化合物で表面処理することにより、非疎水性の絶縁無機フィラーの表面が疎水化されて非疎水性の絶縁無機フィラーに疎水性が付与される。フィラーを無機フィラーとするのは、有機フィラーと比べて長時間加熱及び加圧された状態でも変形しにくくなるためである。
【0058】
非疎水性の絶縁無機フィラーとしては、シリカ及びタルクが挙げられる。中でも、絶縁性及び粒径の管理の観点から、シリカが好ましい。
【0059】
有機ケイ素化合物としては、例えばアルコキシシランが挙げられる。アルコキシシランは、メチル基等のアルキル基を有してもよい。この場合、非疎水性の絶縁無機フィラーとアルコキシシランとが反応しやすくなる。
【0060】
疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は、特に制限されるものではないが、1μm以上であることが好ましい。
この場合、疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径が1μm未満である場合に比べて、外装材10は、蓄電装置の電池セルの外装袋として加熱及び加圧状態で使用されても、より優れた絶縁性を有することが可能となる。
疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は、より好ましくは3μm以上であり、さらに好ましくは5μm以上である。
【0061】
疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は、20μm以下であることが好ましい。この場合、組成物中で疎水性絶縁無機フィラーが良好な分散状態を維持することができ、第2接着層1bの凝集力が低下しにくくなり、バリア層13及びシーラント層16に対する第2接着層12bの密着強度やシーラント層16のシール強度が低下しにくくなる。
疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は、より好ましくは15μm以下であり、特に好ましくは10μm以下である。
【0062】
なお、疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は、電子顕微鏡により、複数個の疎水性絶縁無機フィラーを拡大した写真を撮影し、その後、画像解析により各疎水性絶縁無機フィラーの粒径を求め、これらの粒径の平均値を算出することで求められる。ここで、各疎水性絶縁無機フィラーの粒径は、具体的には画像解析により求められる各疎水性絶縁無機フィラーの面積Sを円の面積とし、この円の面積Sから求められる半径r(r=(S/π)1/2)を2倍した値である。
【0063】
上記第2接着層形成用組成物において、全固形分中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率、すなわち第2接着層12b中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率は特に限定されるものではないが、好ましくは0.5質量%以上である。
この場合、全固形分中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率が0.5質量%未満である場合に比べて、外装材10が、蓄電装置の電池セルの外装袋として加熱及び加圧状態で使用されても、第2接着層12bを含む絶縁層の厚さを均一に維持しやすくなる。
全固形分中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率は、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上である。
【0064】
全固形分中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率は、好ましくは20質量%以下である。
この場合、全固形分中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率が20質量%を超える場合に比べて、第2接着層12bの凝集力の低下が抑制され、シール強度及び密着性の低下がより抑制される。また、第2接着層12bの脆性の低下をより抑制することもできる。
全固形分中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率は、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0065】
(樹脂)
樹脂は特に制限されるものではないが、変性ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。変性ポリオレフィン樹脂は、疎水性絶縁無機フィラーをより良好に樹脂中に分散させることができる。また樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含むことで、第2接着層12bは、バリア層13及びシーラント層16に対して高い密着性を有することができ、外装材10のラミネート強度を向上させることができる。
変性ポリオレフィン樹脂としては、水酸基変性ポリオレフィン樹脂、グリシジル変性ポリオレフィン樹脂及び酸変性ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。中でも、バリア層13及びシーラント層16に対する密着性の点から、酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物及び不飽和カルボン酸のエステルなどから導かれる不飽和カルボン酸誘導体により、グラフト変性されたポリオレフィン樹脂である。
【0066】
不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0067】
不飽和カルボン酸の酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸の酸無水物などが挙げられる。
【0068】
不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマール酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロ無水フタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0069】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE又はLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-αオレフィン共重合体等のポリエチレン系樹脂;ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。中でも、耐熱性の点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0070】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、バリア層13と第2接着層12bとの間で優れた密着性が得られる観点から、無水マレイン酸により変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂には、例えば、三井化学株式会社製の「アドマー」、三菱ケミカル株式会社製の「モディック」、東洋紡株式会社製の「トーヨータック」、三洋化成工業株式会社製の「サンスタック」などが適している。このような変性ポリオレフィン樹脂は、各種金属及び各種官能基を有するポリマーとの反応性に優れるため、該反応性を利用して第2接着層12bに密着性を付与することができる。
【0071】
ポリオレフィン樹脂としては、シーラント層16を形成するシーラント層形成用樹脂組成物が樹脂としてポリオレフィン樹脂を含む場合には、そのポリオレフィン樹脂と同様のポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。例えばシーラント層形成用樹脂組成物が樹脂としてポリプロピレン系樹脂を含む場合には、第2接着層形成用組成物の酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸変性ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。この場合、第2接着層12bは、シーラント層16に対して高い密着性を有することができるとともに、外装材10の耐熱性を向上させることもできる。
【0072】
樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含む場合、第2接着層形成用組成物は、硬化剤として多官能イソシアネート化合物をさらに含むことが好ましい。この場合、第2接着層12bが多官能イソシアネート化合物をさらに含むことで、第2接着層12bが、優れた密着性及び耐熱性を有することが可能となり、高いシール強度及び耐熱性を有し、優れたバリア性を有することが可能となる。
多官能イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート又はその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート又はその水素添加物、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート類;あるいはこれらのイソシアネート類を、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと反応させたアダクト体、水と反応させることで得られたビューレット体、あるいは三量体であるイソシアヌレート体(イソシアヌレート型多官能イソシアネート化合物)等のポリイソシアネート類;あるいはこれらのポリイソシアネート類をアルコール類、ラクタム類、オキシム類等でブロック化したブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。
中でも、多官能イソシアネート化合物は、イソシアヌレート体(イソシアヌレート型多官能イソシアネート化合物)を含むことが好ましい。多官能イソシアネート化合物がイソシアヌレート体を含むことで、第2接着層12bが、優れた密着性及び耐熱性を有することが可能となり、外装材10が、高いシール強度及び耐熱性を有することが可能となる。
【0073】
多官能イソシアネート化合物の配合量は、例えば変性ポリオレフィン樹脂(固形分)100質量部に対して3質量部以下でよい。
【0074】
樹脂が、変性ポリオレフィン樹脂として酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合、硬化剤としてカルボジイミド化合物をさらに含むことが好ましい。上記第2接着層形成用組成物がカルボジイミド化合物をさらに含むことで、上記第2接着層形成用組成物がカルボジイミド化合物を含まない場合に比べて、外装材10の耐熱性をより向上させることができる。これは、カルボジイミド化合物と酸変性ポリオレフィン樹脂とが反応することにより、架橋密度が増加するためである。
カルボジイミド化合物としては、例えば、N,N’-ジ-o-トルイルカルボジイミド、N,N’-ジフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ジオクチルデシルカルボジイミド、N-トリイル-N’-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,2-ジ-t-ブチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N’-フェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
カルボジイミド化合物の配合量は、例えば変性ポリオレフィン樹脂(固形分)100質量部に対して3質量部以下でよい。
【0076】
上記第2接着層形成用組成物は、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、脱水剤、結晶核剤等の各種添加剤を必要に応じてさらに含んでもよい。
【0077】
また、第2接着層12bを形成する第2接着層形成用組成物として、例えば、水添ダイマー脂肪酸及びジオールからなるポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートと、疎水性絶縁無機フィラーとを配合したポリウレタン系接着剤を用いることもできる。第2接着層形成用組成物として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、二官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂や、エポキシ基を有する主剤にアミン化合物などを作用させたエポキシ樹脂等が挙げられ、これらは耐熱性の観点から好ましい。
【0078】
第2接着層12bは単層で構成されてもよく、多層で構成されてもよい。第2接着層12bが多層で構成される場合、すべての層が、疎水性絶縁無機フィラーを含んでもよく、一部の層のみが、疎水性絶縁無機フィラーを含んでもよい。
【0079】
第2接着層12bの厚さは、特に限定されるものではないが、0.2~30μmであることが好ましい。この場合、第2接着層12bの厚さが0.2μm未満である場合に比べて、十分な接着性が得られる。また、第2接着層12bの厚さが30μmを超える場合に比べて、蓄電装置の体積エネルギー密度をより高めることができる。
第2接着層12bの厚さは、0.2~10μmであることよりが好ましい。
【0080】
<シーラント層>
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層であり、蓄電装置の組み立て時に内側に配置されてヒートシール(熱融着)される層である。シーラント層16は、樹脂を含むシーラント層形成用樹脂組成物を用いて得られる。
【0081】
(シーラント層形成用樹脂組成物)
(樹脂)
上記シーラント層形成用樹脂組成物に含まれる樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂が挙げられる。これらのシーラント層16を構成する樹脂(以下、「ベース樹脂」ともいう)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE又はLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)又は高密度のポリエチレン(HDPE)、エチレン-αオレフィン共重合体等のポリエチレン系樹脂;ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ポリブテン等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂は、耐熱性及び柔軟性の観点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、特に融点の高い、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレンが好ましい。
【0083】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂、及び、それらの共重合体等が挙げられる。
【0084】
(疎水性絶縁無機フィラー)
シーラント層形成用樹脂組成物は、疎水性絶縁無機フィラーを含んでいても含んでいなくてもよいが、含んでいることが好ましい。
【0085】
疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は、特に制限されるものではないが、1μm以上であることが好ましい。
この場合、疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径が1μm未満である場合に比べて、外装材10は、蓄電装置の電池セルの外装袋として加熱及び加圧状態で使用されても、より優れた絶縁性を有することが可能となる。
疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は、より好ましくは3μm以上であり、さらに好ましくは5μm以上である。
【0086】
疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は、20μm以下であることが好ましい。この場合、組成物中で疎水性絶縁無機フィラーが良好な分散状態を維持することができ、シーラント層16の凝集力が低下しにくくなり、第2接着層12bに対するシーラント層16の密着強度やシーラント層16のシール強度が低下しにくくなる。
疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は、より好ましくは15μm以下であり、特に好ましくは10μm以下である。
【0087】
上記シーラント層形成用樹脂組成物中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率は特に限定されるものではないが、好ましくは0.5質量%以上である。
この場合、シーラント層形成用樹脂組成物中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率が0.5質量%未満である場合に比べて、外装材10が、蓄電装置の電池セルの外装袋として加熱及び加圧状態で使用されても、シーラント層16を含む絶縁層の厚さを均一に維持しやすくなる。
シーラント層形成用樹脂組成物中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率は、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上である。
シーラント層形成用樹脂組成物中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率は、好ましくは20質量%以下である。
この場合、シーラント層形成用樹脂組成物中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率が20質量%を超える場合に比べて、シーラント層16の凝集力の低下が抑制され、シール強度及び密着性の低下がより抑制される。また、シーラント層16の脆性の低下をより抑制することもできる。
シーラント層形成用樹脂組成物中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率は、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0088】
シーラント層16は、単層フィルム及び多層フィルムのいずれであってもよい。
シーラント層16が多層フィルムである場合、すべての層が疎水性絶縁無機フィラーを含んでいてもよく、一部の層のみが疎水性絶縁無機フィラーを含んでいてもよい。例えばシーラント層16が2層フィルムである場合、2層フィルムのいずれもが疎水性絶縁無機フィラーを含有していてもよく、2層フィルムのうちの第2接着層12b側の層のみが疎水性絶縁無機フィラーを含有してもよく、2層フィルムのうちの第2接着層12bと反対側の層のみが疎水性絶縁無機フィラーを含有していてもよい。
【0089】
また、シーラント層16は、例えば、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、脱水剤、粘着性付与剤、結晶核剤等の添加剤を含んでいてもよい。
これらの添加剤の含有量は、シーラント層16の全質量を100質量部とした場合、5質量部以下であることが好ましい。
【0090】
シーラント層16のMFRは特に限定されるものではないが、20g/10分以下であることが好ましい。
シーラント層16のMFRを20g/10分以下にして加熱及び加圧状態でもシーラント層16を流動しにくくすることで、外装材10が加熱及び加圧状態で外装袋として使用されても、シーラント層16が潰れにくくなり、シーラント層16を含む絶縁層の厚さを十分に確保でき、より優れた絶縁性を有することが可能となる。
シーラント層16のMFRは、好ましくは18g/10分以下であり、より好ましくは15g/10分以下である。
シーラント層16のMFRは、0.1g/10分以上であってもよく、0.3g/10分以上であってもよい。
MFRは、シーラント層16について、メルトフローレート測定器(東洋精機製作所社製、測定温度:230℃)によりJIS K7210に準じて測定して得られる。
【0091】
シーラント層16の融点は特に制限されるものではないが、160℃以上であることが好ましい。
シーラント層16の融点を160℃以上とすることで、加熱及び加圧状態でもできるだけシーラント層16の流動を抑えることができる。このため、第2接着層12bを含む絶縁層が潰れることをより十分に抑制できる。そのため、外装材10は、蓄電装置の電池セルの外装袋として加熱及び加圧状態で使用されても、より優れた絶縁性を有することが可能となる。
融点とは、シーラント層16について示差走査熱量(DSC)測定を行う場合に、シーラント層16の融点に対応するピークが1本出現する場合にはそのピーク頂点における温度をいい、シーラント層16の融点に対応するピークが複数本出現する場合には、その複数本のピークのうちピーク頂点の強度が最大であるピーク(メインピーク)のピーク頂点における温度をいう。
シーラント層16の融点は、より好ましくは161℃以上であり、特に好ましくは162℃以上である。
【0092】
シーラント層16の厚さは、特に限定されるものではないが、20~150μmの範囲であることが好ましく、30~150μmの範囲であることがより好ましく、40~100μmの範囲であることが更に好ましい。
シーラント層16の厚さが20μm以上であると、外装材10のシール強度がより向上する。シーラント層16の厚さが150μm以下であると、蓄電装置の体積エネルギー密度をより高めることができる。
【0093】
<外装材>
外装材10においては、150℃、3MPaの条件で24時間加熱及び加圧を行った場合における絶縁破壊電圧は、好ましくは100V以上であり、より好ましくは0.5kV以上であり、特に好ましくは1kV以上である
この場合、加熱及び加圧条件が過酷な条件であっても、外装材10は、蓄電装置の電池セルの外装袋として加熱及び加圧状態で使用される場合に、より優れた絶縁性を有することが可能となる。
150℃、3MPaの条件で24時間加熱及び加圧を行った場合における絶縁破壊電圧は、5kV以下であってよい。
【0094】
[蓄電装置用外装材の第2実施形態]
次に、本開示の蓄電装置用外装材の第2実施形態について
図2を参照しながら説明する。
図2は、本開示の蓄電装置用外装材の第2実施形態を示す断面図である。
図2に示されるように、本実施形態の外装材20は、バリア層13とシーラント層16との間に接着層として、樹脂、及び、疎水性絶縁無機フィラーを含む接着性樹脂層形成用樹脂組成物を用いて得られる接着性樹脂層15を備える点で、接着剤を用いて得られる第2接着層12bを備える第1実施形態の外装材10と相違する。
なお、
図2に示す外装材20は、バリア層13と接着性樹脂層15との間に第2接着層12bをさらに備えてもよい。
【0095】
接着性樹脂層15は、単層フィルム及び多層フィルムのいずれであってもよい。接着性樹脂層15が多層フィルムである場合、すべての層が疎水性絶縁無機フィラーを含んでもよく、一部の層のみが、疎水性絶縁無機フィラーを含んでもよい。
【0096】
接着性樹脂層15の厚さは、特に限定されないが、5~30μmであることが好ましい。接着性樹脂層15の厚さが5μm以上であると、十分な接着性が得られる。接着性樹脂層15の厚さが30μm以下であると、外装材10の総厚が小さくなり、外装材10を用いて電池を作製したときの電池の体積エネルギー密度の低下を抑制することができる。
接着性樹脂層15の厚さは、応力緩和や水分透過の観点から、シーラント層16と同じ又はそれ未満であってもよい。
【0097】
[外装材の製造方法]
次に、
図1に示す外装材10の製造方法の一例について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0098】
外装材10の製造方法は、金属層14cの両面に腐食防止処理層14a,14bをそれぞれ積層してバリア層13を形成する工程と、第1接着層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせて第1積層体を得る工程と、第1積層体のバリア層13に対し、第2接着層12bを介してシーラント層16をさらに積層して第2積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた第2積層体をエージング処理する工程とを含む。
【0099】
(金属層への腐食防止処理層の積層工程)
本工程は、金属層14cの両面に対して、腐食防止処理層14a,14bをそれぞれ形成してバリア層13を形成する工程である。その方法としては、上述したように、金属層14cに脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理を施したり、腐食防止性能を有するコーティング剤を塗布したりする方法などが挙げられる。
【0100】
また、腐食防止処理層14a,14bが多層の場合、腐食防止処理層14a,14bは、例えば、下層側(金属層14c側)の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)を金属層14cに塗布し、焼き付けて第一層を形成した後、上層側の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)を第一層に塗布し、焼き付けて第二層を形成し、必要に応じて、第一層及び第二層を形成する操作を繰り返すことにより形成することができる。
【0101】
脱脂処理は、スプレー法又は浸漬法にて行うことができる。熱水変成処理及び陽極酸化処理は、浸漬法にて行うことができる。化成処理は、化成処理のタイプに応じて、浸漬法、スプレー法、コート法等を適宜選択して行うことができる。
【0102】
腐食防止性能を有するコーティング剤の塗布法については、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコート等の方法を用いることが可能である。
【0103】
上述したように、各種処理は、金属層14cを構成する金属箔の両面又は片面のどちらでも構わないが、片面処理の場合、その処理面はシーラント層16を積層する側に施すことが好ましい。なお、要求に応じて、基材層11の表面にも上記処理を施してよい。
【0104】
また、第一層及び第二層を形成するためのコーティング剤の塗布量はいずれも、0.005~0.200g/m2、又は0.010~0.100g/m2であってもよい。
【0105】
また、乾燥キュアが必要な場合は、乾燥は、用いる腐食防止処理層14a,14bの乾燥条件に応じて、母材温度として60~300℃の範囲で行うことができる。
【0106】
(基材層とバリア層との貼り合わせ工程)
本工程は、バリア層13と基材層11とを、第1接着層12aを介して貼り合わせて第1積層体を得る工程である。貼り合わせの方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーション等の手法を用い、上述した第1接着層12aを構成する第1接着層形成用組成物にて両者を貼り合わせる方法が挙げられる。第1接着層12aは、ドライ塗布量として1~10g/m2の範囲、又は2~7g/m2の範囲で設けてもよい。
【0107】
(第2接着層及びシーラント層の積層工程)
本工程は、第1積層体の第2の腐食防止処理層14b側に、第2接着層12bを介してシーラント層16を貼り合わせて第2積層体を得る工程である。貼り合わせの方法としては、ウェットラミネーション、ドライラミネーション等が挙げられる。
【0108】
例えばドライラミネーションでシーラント層16の貼り合わせを行う場合、第2接着層12bを形成するための第2接着層形成用組成物を、第2の腐食防止処理層14b上に塗工し、所定の温度で溶媒を飛ばして乾燥させた後、シーラント層16を積層する。第2接着層形成用組成物の塗工方法としては、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコート等の方法が挙げられる。第2接着層形成用組成物の好ましいドライ塗布量は、第2接着層12bの厚さに応じて適宜設定すればよい。
【0109】
また、第2接着層形成用組成物は、溶剤に、樹脂、疎水性絶縁無機フィラー等を溶解又は分散させることにより得ることができる。なお、第2接着層形成用組成物は、まず溶剤に疎水性絶縁無機フィラーを分散させ、その後に樹脂や硬化剤を配合することが好ましい。
【0110】
上記第2接着層形成用組成物は分散剤をさらに含むことが好ましい。この場合、分散剤により疎水性絶縁無機フィラーの分散性を高めることができると共に、第2接着層12bの機能(例えば、密着強度等)の低下を抑制し易くなる。
分散剤としては、例えば金属石鹸(ステアリン酸亜鉛等)などの界面活性剤が用いられる。樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含む場合には、変性ポリオレフィン樹脂が分散剤として機能することも可能である。疎水性絶縁無機フィラーの分散性を高める観点から、疎水性絶縁無機フィラーは、ビーズミル等の分散装置を用いて分散させることが好ましい。
【0111】
上記第2接着層形成用組成物中の疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は特に制限されるものではないが、20μm以下であることが好ましい。疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径が20μm以下であることで疎水性絶縁無機フィラーの分散状態を良好に維持することができ、製膜後の第2接着層12bの塗膜としての凝集力の低下も抑制することができる。また、第2接着層12bから疎水性絶縁無機フィラーが脱落しにくくなる。さらに、第2接着層12bの表面からの凸部の高さが大きくなりすぎず、シーラント層16の貼り合わせの際にシーラント層16と第2接着層12bとの間に気泡が入りにくくなる。
疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は1μm以上であることが好ましい。この場合、疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径が1μm未満である場合に比べて、粒子間で凝集が進みにくくなり、また分散中にも凝集体を形成しにくく、平均粒径がより安定する。
【0112】
上記第2接着層形成用組成物において、全固形分中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率は、好ましくは20質量%以下である。
この場合、第2接着層形成用組成物において、全固形分中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率が20質量%を超える場合に比べて、第2接着層形成用組成物の粘度(チキソトロピー性)が上昇しすぎず、第2接着層形成用組成物が、より塗工に適した状態となる。
【0113】
また、シーラント層16は、例えば、上述したシーラント層16を形成するためのシーラント層形成用樹脂組成物を用いて、Tダイを用いた溶融押出成形機により製造することができる。溶融押出成形機では、生産性の観点から、加工速度を80m/分以上とすることができる。
【0114】
疎水性絶縁無機フィラーを含むシーラント層16を形成する際には、予め樹脂と疎水性絶縁無機フィラーとを混合してマスターバッチを用意し、このマスターバッチを押出ラミネート等を行う際に上述したベース樹脂と混ぜ合わせて得られるシーラント層形成用樹脂組成物を用いてもよい。
このとき、ベース樹脂としては、例えばマスターバッチに含まれる樹脂とMFR等の特性が同程度の樹脂が用いられる。
マスターバッチを用意する際に疎水性絶縁無機フィラーと混合される樹脂は、変性ポリオレフィン樹脂であってよい。変性ポリオレフィン樹脂としては、ベース樹脂に対する分散性を向上させる観点から、特に酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
さらに、シーラント層形成用樹脂組成物中のマスターバッチの濃度は、例えば5~50質量%とすればよい。シーラント層形成用樹脂組成物中のマスターバッチの濃度が5質量%以上であると、マスターバッチをシーラント層16中に十分に分散させることができる。また、シーラント層形成用樹脂組成物中のマスターバッチの濃度が50質量%以下であると、押出時の混練で分散が十分に行われ、膜切れ等の不具合が発生しにくくなる。
【0115】
また、シーラント層16を形成する際には、上記シーラント層形成用樹脂組成物は分散剤をさらに含むことが好ましい。この場合、分散剤により疎水性絶縁無機フィラーの分散性を高めることができると共に、シーラント層16の機能(例えば、密着強度やシール強度等)の低下を抑制し易くなる。
分散剤としては、例えば金属石鹸(ステアリン酸亜鉛等)などの界面活性剤が用いられる。樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含む場合には、変性ポリオレフィン樹脂が分散剤として機能することも可能である。
【0116】
上記シーラント層形成用樹脂組成物中の疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は特に制限されるものではないが、20μm以下であることが好ましい。疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径が20μm以下であることで疎水性絶縁無機フィラーの分散状態を良好に維持することができる。
疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径は1μm以上であることが好ましい。この場合、疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径が1μm未満である場合に比べて、粒子間で凝集が進みにくくなり、また分散中にも凝集体を形成しにくく、平均粒径が安定する。
【0117】
(エージング処理工程)
本工程は、第2積層体をエージング(養生)処理する工程である。第2積層体をエージング処理することで、金属層14c/第2の腐食防止処理層14b/第2接着層12b/シーラント層16間の接着を促進させることができる。エージング処理は、室温~100℃の範囲で行うことができる。エージング時間は、例えば、1~10日である。
【0118】
このようにして、
図1に示す外装材10を製造することができる。
【0119】
次に、
図2に示す外装材20の製造方法の一例について説明する。なお、外装材20の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0120】
外装材20の製造方法は、金属層14cの両面に腐食防止処理層14a,14bをそれぞれ形成してバリア層13を形成する工程と、第1接着層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせて第1積層体を得る工程と、第1積層体のバリア層13に対し、接着性樹脂層15及びシーラント層16をさらに積層して第2積層体を得る工程と、必要に応じて、得られた第2積層体を熱処理する工程とを含む。
なお、基材層11とバリア層13とを貼り合わせて第1積層体を得る工程までは、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。
【0121】
(接着性樹脂層及びシーラント層の積層工程)
本工程は、先の工程により形成された第1積層体の第2の腐食防止処理層14b上に、接着性樹脂層15及びシーラント層16を形成して第2積層体を得る工程である。その方法としては、押出ラミネート機を用いて接着性樹脂層15をシーラント層16とともにサンドラミネーションする方法、接着性樹脂層15とシーラント層16とを押し出す共押出等の熱ラミネート法が挙げられる。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成では、例えば、上述した接着性樹脂層形成用樹脂組成物及びシーラント層形成用樹脂組成物が用いられる。
【0122】
接着性樹脂層15を形成する際には、予め樹脂と疎水性絶縁無機フィラーとを混合してマスターバッチを用意し、このマスターバッチを、上述したベース樹脂と混ぜ合わせて得られる接着性樹脂層形成用樹脂組成物を用いてもよい。
このとき、ベース樹脂としては、例えばマスターバッチに含まれる樹脂とMFR等の特性が同程度の樹脂が用いられる。
マスターバッチを用意する際に疎水性絶縁無機フィラーと混合される樹脂は、変性ポリオレフィン樹脂であってよい。変性ポリオレフィン樹脂としては、ベース樹脂と混合しやすく、バリア層13と接着性樹脂層15との密着性を向上させる点から、特に酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
さらに、接着性樹脂層形成用樹脂組成物中のマスターバッチの濃度は、例えば5~50質量%とすればよい。接着性樹脂層形成用樹脂組成物中のマスターバッチの濃度が5質量%以上であると、マスターバッチを接着性樹脂層15中に十分に分散させることができる。また、接着性樹脂層形成用樹脂組成物中のマスターバッチの濃度が50質量%以下であると、押出時の混練で分散が十分に行われ、膜切れ等の不具合が発生しにくくなる。
【0123】
また、接着性樹脂層15を形成する際には、上記接着性樹脂層形成用樹脂組成物は分散剤をさらに含むことが好ましい。この場合、分散剤により疎水性絶縁無機フィラーの分散性を高めることができると共に、接着性樹脂層15の機能(例えば、密着強度等)の低下を抑制し易くなる。
分散剤としては、例えば金属石鹸(ステアリン酸亜鉛等)などの界面活性剤が用いられる。樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含む場合には、変性ポリオレフィン樹脂が分散剤として機能することも可能である。
【0124】
シーラント層16の形成方法については、外装材10の製造方法におけるシーラント層16の形成方法と同様である。
【0125】
本工程により、
図2に示すような、基材層11/第1接着層12a/第1の腐食防止処理層14a/金属層14c/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16の順で各層が積層された第2積層体が得られる。
【0126】
(熱処理工程)
本工程は、第2積層体を熱処理する工程である。第2積層体を熱処理することで、金属層14c/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16間での密着性を向上させることができる。熱処理の方法としては、少なくとも接着性樹脂層15の融点以上の温度で処理することが好ましい。
【0127】
このようにして、
図2に示す外装材20を製造することができる。
【0128】
[蓄電装置]
次に、本開示の蓄電装置の一実施形態について
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は、本開示の蓄電装置の一実施形態の斜視図、
図4は、
図3の電池セルを示す断面図である。
図3に示されるように、蓄電装置50は、電池セル52と、金属端子53を挟持し、電池セル52を収容する外装袋54とを備える。蓄電装置50は、電池セル52から延在し、電流を外部に取り出すための2つの金属端子(電流取出し端子)53をさらに備えてもよい。
【0129】
図4に示されるように、電池セル52は、正極52a、電解質52c及び負極52bをこの順に有する。
【0130】
外装袋54は、外装材10を有している。外装材10では、基材層11が最外層であり、シーラント層16が最内層である。外装袋54は、基材層11を蓄電装置50の外部側、シーラント層16を蓄電装置50の内部側となるように、1つの外装材10を2つ折りにして周縁部を熱融着することにより、又は、2つの外装材10を重ねて周縁部を熱融着することにより形成される。
金属端子53は、外装袋54の周縁部によって挟持されている。金属端子53は、タブシーラントを介して、外装材10によって挟持されていてもよい。
【0131】
蓄電装置50によれば、外装材10が外装袋54として加熱及び加圧状態で使用される場合でも、優れた絶縁性を有するため、蓄電装置50が電池セル52と外装材10との界面に垂直な方向に加圧した状態で加熱される場合でも、電池セル52内の正極52a又は負極52bと外装材10の金属層14cとが短絡することを抑制できる。
【0132】
電解質52cとしては、例えば固体電解質が用いられる。この場合、蓄電装置50は全固体電池となる。固体電解質としては、酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質が挙げられる。
【0133】
金属端子53は、集電体の一部が外装材10の外部に取り出されたものであり、銅箔やアルミ箔等の金属箔からなる。
なお、蓄電装置50では、外装材10に代えて外装材20を用いてもよい。
【実施例0134】
以下、実施例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0135】
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
<基材層>
厚さ15μmのナイロン(Ny)フィルム(東洋紡社製)を用いた。
【0136】
<第1接着層形成用組成物>
第1接着層形成用組成物としては、ポリエステルポリオール系主剤と、トリレンジイソシアネートのアダクト体系硬化剤とを含むポリウレタン系接着剤(東洋インキ株式会社製)を用いた。
【0137】
<第1の腐食防止処理層(基材層側)及び第2の腐食防止処理層(シーラント層側)の形成用材料>
第1の腐食防止処理層(基材層側)及び第2の腐食防止処理層(シーラント層側)の形成用材料としては、以下の(CL-1)及び(CL-2)を用いた。
(CL-1):溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度が10質量%になるように調整して得られる「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」
なお、ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルは、酸化セリウム100質量部に対して、リン酸のNa塩を10質量部配合して得た。
(CL-2):溶媒として蒸留水を用い固形分濃度が5質量%になるように調整して得られる「ポリアリルアミン(日東紡社製)」90質量%と、「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)」10質量%からなる組成物
【0138】
<金属層>
焼鈍脱脂処理した、厚さ40μmの軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を用いた。
【0139】
<接着層形成用組成物>
接着層形成用組成物として、第2接着層形成用組成物(接着剤)及び接着性樹脂層形成用樹脂組成物(接着性樹脂)を以下のようにして用意した。
(第2接着層形成用組成物)
第2接着層形成用組成物は、メチルシクロヘキサン及びメチルエチルケトンからなる溶剤中に、下記疎水性絶縁無機フィラーを必要に応じて分散させた後、下記の酸変性ポリオレフィン樹脂含有液、多官能イソシアネート化合物含有液及びカルボジイミド化合物含有液を添加することにより用意した。
【0140】
(接着性樹脂層形成用樹脂組成物)
二軸押出機を用いて、接着性樹脂(ランダムポリプロピレン(PP)ベースの酸変性ポリプロピレン樹脂組成物、三井化学社製)に、下記疎水性絶縁無機フィラーを必要に応じて分散させて接着性樹脂層形成用樹脂組成物を用意した。
【0141】
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂含有液
日本製紙株式会社製、製品名:150S、酸変性ポリオレフィン樹脂:無水マレイン酸変性ポリプロピレン
(2)多官能イソシアネート化合物含有液
東ソー株式会社製、製品名:コロネートHXR、多官能イソシアネート化合物:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアヌレート樹脂
(3)カルボジイミド化合物含有液
日清紡ケミカル株式会社製、製品名:V-03
(4)疎水性絶縁無機フィラー
A:疎水性シリカフィラー(商品名「サイロホービック100」、富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径:2.7μm、有機ケイ素化合物で表面処理)
B:疎水性シリカフィラー(商品名「サイロホービック704」、富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径:6.2μm、有機ケイ素化合物で表面処理)
C:疎水性シリカフィラー(商品名「サイロホービック4004」、富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径:8.0μm、有機ケイ素化合物で表面処理)
【0142】
<シーラント層形成用樹脂組成物>
二軸押出機を用いて、ポリプロピレン-ポリエチレンランダム共重合体(プライムポリマー社製、商品名:F744NP)を含むシーラント層形成用樹脂組成物を用意した。
【0143】
[外装材の作製]
(実施例1及び3~4)
まず金属層の両面に、第1及び第2の腐食防止処理層をそれぞれ以下の手順で形成した。すなわち、金属層の両面に上記(CL-1)を、ドライ塗布量として70mg/m2となるようにマイクログラビアコートにより塗布し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施し、第一層を得たた。次いで、得られた第一層上に(CL-2)を、ドライ塗布量として20mg/m2となるようにマイクログラビアコートにより塗布し、第二層を得た。こうして、第一層と第二層で構成される複合層を第1の腐食防止処理層及び第2の腐食防止処理層として、金属層の両面にそれぞれ形成し、バリア層を得た。この複合層は、(CL-1)と(CL-2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。
【0144】
次に、上記のようにして得られバリア層の第1の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、第1接着層形成用組成物(ポリウレタン系接着剤)を用いて基材層に貼り付けた。具体的には、バリア層と基材層との積層は、第1の腐食防止処理層のうち金属層と反対側の面上にポリウレタン系接着剤を、硬化後の厚さが5μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、その上に基材層をラミネートし、60℃で72時間エージングすることで行った。こうして、バリア層及び基材層を含む第1積層体を得た。
【0145】
次いで、上記のようにして得られた第1積層体を押出ラミネート機の巻出部にセットし、第2の腐食防止処理層上に、第2接着層形成用組成物の全固形分中の疎水性絶縁無機フィラーの種類、含有率及び平均粒径を表1に示すとおりとした第2接着層形成用組成物を、硬化後の厚さが20μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥した後、シーラント層とラミネートし、40℃、72時間エージングした。このシーラント層は、シーラント層形成用樹脂組成物を270℃、100m/minの加工条件で押出加工することで作製した。
【0146】
こうして外装材(基材層/第1接着層/第1の腐食防止処理層/金属層/第2の腐食防止処理層/第2接着層/シーラント層)を作製した。
【0147】
(実施例2)
実施例1と同様にして、バリア層及び基材層を含む第1積層体を得た。
【0148】
次いで、上記のようにして得られた第1積層体を押出ラミネート機の巻出部にセットし、第2の腐食防止処理層上に、疎水性絶縁無機フィラーの種類、含有率及び平均粒径を表1に示すとおりとした接着性樹脂樹脂組成物。及び、シーラント層形成用樹脂組成物を、270℃、100m/minの加工条件で共押出しすることで、接着性樹脂層(厚さ20μm)及びシーラント層(厚さ60μm)をこの順で積層し、第2積層体を得た。
【0149】
このようにして得られた第2積層体を、該第2積層体の最高到達温度が190℃になるように、熱処理を施した。こうして、外装材(基材層/第1接着層/第1の腐食防止処理層/金属層/第2の腐食防止処理層/接着性樹脂層/シーラント層)を作製した。
【0150】
(実施例3~4)
第2接着層形成用組成物において、全固形分中の疎水性絶縁無機フィラーの種類、含有率及び平均粒径を表1に示すとおりとし、第2接着層形成用組成物において、酸変性ポリオレフィン100質量部に対する多官能イソシアネート化合物の配合量を表1に示すとおり1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして外装材(基材層/第1接着層/第1の腐食防止処理層/金属層/第2の腐食防止処理層/第2接着層/シーラント層)を作製した。
【0151】
(比較例1)
第2接着層形成用組成物において、全固形分中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率を表1に示すとおり0質量%とし、第2接着層形成用組成物において、酸変性ポリオレフィン100質量部に対する多官能イソシアネート化合物の配合量を表1に示すとおり0質量部とし、シーラント層のMFRを表1に示すとおり30g/10分としたこと以外は実施例1と同様にして、外装材(基材層/第1接着層/第1の腐食防止処理層/金属層/第2の腐食防止処理層/第2接着層/シーラント層)を作製した。
【0152】
(比較例2)
接着性樹脂樹脂組成物中の疎水性絶縁無機フィラーの含有率を表1に示すとおり0質量%とし、第2接着層形成用組成物において、酸変性ポリオレフィン100質量部に対する多官能イソシアネート化合物の配合量を表1に示すとおり0質量部とし、シーラント層のMFRを表1に示すとおり30g/10分としたこと以外は実施例2と同様にして、外装材(基材層/第1接着層/第1の腐食防止処理層/金属層/第2の腐食防止処理層/接着性樹脂層/シーラント層)を作製した。
【0153】
<評価>
(1)ヒートシール性
(1-1)試験片の作製
実施例1~4及び比較例1~2で得られた外装材を50mm(TD方向)×100mm(MD方向)のサイズにカットしてカット片を得た。このカット片を、50mm×50mmのサイズにカットした化成処理済みアルミニウム箔を挟み込むように2つに折り畳み、折り畳んだ部分とは反対側の端部を180℃/0.6MPa/10秒で幅10mmにわたってヒートシールした。その後、ヒートシール部の長手方向(TD方向)における中央部を含むようにMD方向に沿って15mm幅で切り出し(
図5を参照)、試験片を作製した。
(1-2)シール強度(室温)
上記のようにして作製した試験片に対し、室温(25℃)環境下で、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて、外装材と化成処理済みアルミニウム箔とを剥離するT字剥離試験を行い、シール強度(バースト強度)を測定した。
(1-3)評価
上記(1-2)で得られたシール強度(バースト強度)から、下記の基準に基づいてヒートシール性について判定した。シール強度及び評価の結果を表1に示す。
(基準)
A:シール強度が20N/15mm以上
B:シール強度が15N/15mm以上、20N/15mm未満
C:シール強度が15N/15mm未満
【0154】
(2)密着性
実施例1~4及び比較例1~2で得られた外装材を、幅15mm×長さ120mmにカットして試験片を用意した。そして、この試験片について、金属層とシーラント層との間で剥離するT字剥離試験を、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用い、室温環境下、引張速度50mm/分の条件にて行い、ラミネート強度を測定した。そして、得られたラミネート強度から、下記の基準に基づいて金属層とシーラント層との間の密着性を判定した。ラミネート強度及び判定の結果を表1に示す。
(基準)
A:ラミネート強度が10N/15mm以上、又は、剥離不可
B:ラミネート強度が3N/15mm以上10N/15mm未満
C:ラミネート強度が3N/15mm未満
【0155】
(3)加熱加圧後の絶縁性
実施例1~4及び比較例1~2で得られた外装材を100mm×100mmサイズに切断して試験片とした。この試験片を、20mm×20mmのサイズの2つの電極で挟み、150℃、3MPaの条件で24時間加熱及び加圧を行った後、試験片の表面に垂直な方向の絶縁破壊電圧を測定した。測定された絶縁破壊電圧から下記の基準に基づいて加熱加圧後の外装材の絶縁性について判定した。結果を表1に示す。
(基準)
〇:絶縁破壊電圧が50V以上である
×:絶縁破壊電圧が50V未満である
【0156】
【0157】
表1に示す結果より、実施例1~4では、加熱加圧後の絶縁電圧が100Vより高くなっていたのに対し、比較例1~2では、加熱加圧後の絶縁電圧が10Vより低くなっていた。
【0158】
以上のことから、本開示の蓄電装置用外装材は、蓄電装置において外装袋として加熱及び加圧状態で使用される場合でも、優れた絶縁性を有することが確認された。
【0159】
なお、本開示の概要は以下のとおりである。
[1]少なくとも基材層、金属層を含むバリア層、接着層、及び、シーラント層をこの順に備える蓄電装置用外装材であって、前記接着層が、疎水性絶縁無機フィラーを含む、蓄電装置用外装材。
[2]前記組成物が、前記疎水性絶縁無機フィラー、樹脂及び多官能イソシアネート化合物を含み、前記樹脂が、変性ポリオレフィン樹脂である、[1]に記載の蓄電装置用外装材。
[3]前記シーラント層のMFRが20g/10分以下である、[1]又は[2]に記載の蓄電装置用外装材。
[4]前記シーラント層の融点が160℃以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の蓄電装置用外装材。
[5]前記疎水性絶縁無機フィラーの平均粒径が1~20μmである、[1]~[4]のいずれかに記載の蓄電装置用外装材。
[6]150℃、3MPaの条件で24時間加熱及び加圧を行った場合における絶縁破壊電圧が100V以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の蓄電装置用外装材。
[7]前記変性ポリオレフィン樹脂が酸変性ポリオレフィン樹脂である、[2]に記載の蓄電装置用外装材。
[8]前記多官能イソシアネート化合物がイソシアヌレート型多官能イソシアネート化合物を含む、[2]に記載の蓄電装置用外装材。
[9]前記接着層中の前記疎水性絶縁無機フィラーの含有率が0.5~20質量%である、[1]~[8]のいずれかに記載の蓄電装置用外装材。
[10]前記バリア層が、前記金属層の一方又は両方の面に腐食防止処理層をさらに備える、[1]~[9]のいずれかに記載の蓄電装置用外装材。
[11]前記蓄電装置が全固体電池である、[1]~[10]のいずれかに記載の蓄電装置用外装材。
[12]正極、電解質及び負極をこの順に有する電池セルと、前記電池セルを収容する外装袋とを備え、前記外装袋が、[1]~[10]のいずれかに記載の蓄電装置用外装材を有する、蓄電装置。
[13]全固体電池である、[12]に記載の蓄電装置。
10,20…外装材(蓄電装置用外装材)、11…基材層、12b…第2接着層(接着層)、13…バリア層、14c…金属層、15…接着性樹脂層(接着層)、16…シーラント層、50…蓄電装置、52…電池セル、52a…正極、52b…負極、52c…電解質、54…外装袋。