(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168084
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】把持装置および把持方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/12 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B25J15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084489
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 侑
(72)【発明者】
【氏名】池内 宏樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707ES03
3C707ES10
3C707EU08
3C707EU12
3C707EV13
3C707HS27
3C707KS34
3C707LV10
3C707MT09
(57)【要約】
【課題】密集してばら積みされた物品の中から対象物を把持することができるロボットシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】基部と、前記基部から延び、前記基部から先端までの剛性を変更可能な複数の把持部と、対象物を把持するように前記複数の把持部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記対象物と前記把持部との相対位置に応じて、前記複数の把持部のうちの少なくとも1つの剛性を制御する、把持装置および把持方法。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、前記基部から延び、前記基部から先端までの剛性を変更可能な複数の把持部と、対象物を把持するように前記複数の把持部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記対象物と前記把持部との相対位置に応じて、前記複数の把持部のうちの少なくとも1つの剛性を制御する、把持装置。
【請求項2】
前記把持部に、把持部の曲げを検出する手段を具備した、請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記把持部に、把持部の力を検出する手段を具備した、請求項1に記載の把持装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記把持部と前記対象物との相対位置を計測し、前記相対位置の計測情報に基づいて前記把持部の位置を制御する、請求項1に記載の把持装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記力を検出する手段の計測情報に基づいて前記把持部の力があらかじめ入力された指令値になるよう制御する、請求項3に記載の把持装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記把持部と前記対象物との相対位置を計測し、前記相対位置の計測情報に基づいて前記把持部の力を制御する、請求項3に記載の把持装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記把持部の前記曲げ計測情報に基づいて、前記把持部が塑性変形しないように前記把持部を制御する、請求項2に記載の把持装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記把持部の前記曲げ計測情報に基づいて、前記把持部が塑性変形する曲げが印加された場合、把持動作をやり直す、請求項2に記載の把持装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記対象物の計測情報に基づいて、前記対象物の近傍の空間において、前記把持部が進入可能な位置を推定する、請求項1に記載の把持装置。
【請求項10】
前記基部を支持し、前記基部および前記複数の把持部を移動させるロボットアームをさらに備え、前記把持部が進入可能な位置に、前記対象物を把持可能な位置まで前記基部および前記複数の把持部を進入させるように前記ロボットアームを制御する、請求項2に記載の把持装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記複数の把持部が前記対象物を把持した後、前記複数の把持部のうちの少なくとも1つの前記剛性を制御する、請求項1に記載の把持装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記複数の把持部が前記対象物を把持する前は低剛性で、前記対象物を把持した後、前記複数の把持部のうちの少なくとも1つの前記剛性を高剛性になるよう制御する、請求項1に記載の把持装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記複数の把持部が前記対象物を把持する前は低剛性で、前記対象物を把持した後、前記複数の把持部のうちの少なくとも1つの前記剛性を高剛性になるよう制御し、前記基部に接続されるロボットアームで前記基部を上昇させる、請求項2または請求項3に記載の把持装置。
【請求項14】
前記把持部に、断面形状を変更する断面形状変更部を具備した、請求項13に記載の把持装置。
【請求項15】
基部と、前記基部から延び、前記基部から先端までの剛性を変更可能な複数の把持部と、を備える把持装置の把持方法であって、
対象物と隣り合う物品あるいは環境との隙間の位置に応じて、前記複数の把持部のうちの少なくとも1つの前記把持部を制御するステップと、
前記対象物を把持するように前記複数の把持部を前記隙間に挿入するステップと、
前記複数の把持部を硬化させるステップと、を有する、把持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、把持装置および把持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の工場を取り巻く環境は、人口減少による労働不足の影響で非常に厳しい状況にある。そのため製造工程の自動化が進められているが、容器内に密集してばら積みされた複数の部品の中から、隣り合う部品や環境と接触しながら対象物を把持する作業を、ロボットで行うのは挑戦的な課題である。特許文献1には、把持部が柔らかく弾性変形して対象物の形状に倣うことで、対象物のサイズや形状の違いを吸収でき、周囲の部品や環境との接触も許容できる把持装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された装置の指先には、環境や対象物の形状に倣うことができるための柔らかさに加え、対象物を安定的に把持するために必要な硬さも要求されるため、指先が太くなり、密集状態でばら積みされた多くの物品の隙間に指先を挿し込むことに失敗し、対象物を把持できないことがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本開示に係る把持装置は、基部と、前記基部から延び、前記基部から先端までの剛性を変更可能な複数の把持部と、対象物を把持するように前記複数の把持部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記対象物と前記把持部との相対位置に応じて、前記複数の把持部のうちの少なくとも1つの前記剛性を制御する。
【0006】
本開示に係る把持方法は、基部と、前記基部から延び、前記基部から先端までの剛性を変更可能な複数の把持部と、を備える把持装置の把持方法であって、対象物と隣り合う物品あるいは環境との隙間の位置に応じて、前記複数の把持部のうちの少なくとも1つの前記把持部を制御するステップと、前記対象物を把持するように前記複数の把持部を前記隙間に挿入するステップと、前記複数の把持部を硬化させるステップと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本開示の把持装置によれば、密集してばら積みされた物品の中から対象物を把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本実施の形態1におけるロボット装置が適用されたロボットシステムの概略構成を示す図である。
【
図1B】本実施の形態1におけるロボット装置が適用されたロボットシステムが対象物を把持した状態の概略構成を示す図である。
【
図2】本実施の形態1におけるロボットハンドの概略図である。
【
図3A】本実施の形態1におけるロボットハンドの、把持部が硬い状態である時のリンク部と把持部の概略図である。
【
図3B】本実施の形態1におけるロボットハンドの把持部の板ばねの概略図である。
【
図3C】本実施の形態1におけるロボットハンドの把持部の板ばねの、
図3Bにおける断面A-Aにおける概略図である。
【
図3D】本実施の形態1におけるロボットハンドの、把持部が柔らかい状態である時のリンク部と把持部の概略図である。
【
図4A】本実施の形態1におけるロボット装置における把持制御の動作例を示すフローチャートである。
【
図4B】本実施の形態1におけるロボット装置における把持制御の動作例を示すフローチャートである。
【
図5A】本実施の形態1におけるロボット装置が適用されたロボットシステムの、カメラ情報によって対象物と隣接物の隙間の位置を検出することについて説明するための側概略図である。
【
図5B】本実施の形態1におけるロボット装置が適用されたロボットシステムの、ロボットハンドの把持部が対象物と隣接物の隙間に進入していくことについて説明するための側面概略図である。
【
図5C】本実施の形態1におけるロボット装置が適用されたロボットシステムの、ロボットハンドの把持部が対象物を把持可能な位置に到達したことについて説明するための側面概略図である。
【
図5D】本実施の形態1におけるロボット装置が適用されたロボットシステムの、ロボットハンドの把持部が対象物に力を加えて挟み込むことについて説明するための側面概略図である。
【
図5E】本実施の形態1におけるロボット装置が適用されたロボットシステムの、ロボットハンドが対象物を把持した状態で把持部を硬化させることについて説明するための側面概略図である。
【
図5F】本実施の形態1におけるロボット装置が適用されたロボットシステムの、ロボットハンドが対象物を把持して持ち上げていくことについて説明するための側面概略図である。
【
図5G】本実施の形態1におけるロボット装置が適用されたロボットシステムの、ロボットハンドが対象物を完全に持ち上げることについて説明するための側面概略図である。
【
図6A】本実施の形態2における、把持部が硬い状態である時のリンク部と把持部の概略図である。
【
図6B】本実施の形態2における、把持部が柔らかい状態である時のリンク部と把持部の概略図である。
【
図7】本実施の形態3における、把持部が柔らかい状態である時のリンク部と把持部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1Aおよび
図1Bは、本実施の形態1によるロボット装置1が適用されたロボットシステム2の概略構成を示す図である。
【0011】
図1Aにおいて、ロボットシステム2は、ロボット装置1を用いて容器3内の対象物4を把持して、容器3外の場所に搬送するためのシステムである。ロボットシステム2は、ロボット装置1と、カメラ13とを具備する。
【0012】
ロボット装置1は、ロボットハンド6と、ロボットアーム7と、制御装置11とを具備する。
【0013】
ロボットハンド6は、基部8と、リンク部9と、把持部10と、を有する。基部8は、図示されない力検出手段を有し、リンク部9および把持部10に印加される力を検出する。把持部10は、図示されない曲げ検出手段を有し、把持部10の曲がりの大きさを検出する。
【0014】
制御装置11は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および入出力回路を備えている。制御装置11は、ロボットアームケーブル12を介してロボットハンド6とロボットアーム7に制御信号を送信し、前記力検出手段と曲げ検出手段から計測信号を受信する。
【0015】
容器3の内部には、対象物4と、隣接物5aと5bおよびその他の物体が配置されている。
【0016】
カメラ13は、容器3と、対象物4と、隣接物5aと、隣接物5bと、把持部10と、把持部10の周囲と、を撮影し、画像データをカメラケーブル14を介して制御装置11に送信する。
【0017】
図1Aは、対象物4を把持するために、基部8がリンク部9および把持部10を開いている状態を示す図である。
図1Bは、基部8がリンク部9および把持部10を閉じて対象物4を把持した状態を示す図である。
【0018】
ロボットハンド6は、この例では2指ハンドであるが、これに限らず、例えば4指ハンドであってもよい。
【0019】
ロボットアーム7は、この例では垂直多関節ロボットであるが、これに限らず、例えばスカラロボットであってもよい。
【0020】
図2はロボットハンド6の概略構成を示す図である。ロボットハンド6は基部8と、リンク部9と、把持部10とを具備する。基部8は、リンク部9を開閉駆動するとともに、ロボットアーム7に接続される。リンク部9は、把持部10を備え、把持部10を開閉する。把持部10は対象物4を把持する。基部8には、図示しない力検出手段を具備する。力検出手段は、リンク部9および把持部10に印加される力の大きさを計測する。把持部10には、曲げ検出手段21を具備する。曲げ検出手段21は、把持部10の曲げの大きさを計測する。
【0021】
リンク部9は、ベースプレート15、柔剛切替手段17を具備する。柔剛切替手段17は、モータ18、カム19、直動スライダ20を備え、直動スライダ20は板ばね16と接続される。モータ18がカム19を回転させると、直動スライダ20が上下動する。
【0022】
図3Aは、本実施の形態1におけるロボットハンドの、把持部10が硬い状態である時のリンク部9と把持部10の概略図である。
【0023】
図3Bは、板ばね16の斜視概要図である。16aは板ばねの長さ、16bは板ばねの幅、16cはリンク部9側の一端における板ばね高さである。
【0024】
図3Cは、
図3Bの断面A-Aにおける板ばね16の断面概要図である。16dは前記断面A-Aのおける板ばね高さである。前記断面A-Aに平行な任意の断面において、板ばね高さを定義できる。
【0025】
板ばね16は、断面形状が円弧状に成形された板ばねであり、リンク部9に近い側がより板ばね高さが大きい円弧形状になっており、リンク部9からの距離が遠くなるにしたがって板ばね高さが小さくなっている。
【0026】
図3Aにおいて、直動スライダ20がベースプレート15と最も遠い位置にあり、板ばね16は任意の断面における板ばね高さが最も大きい円弧形状になり、把持部10の剛性は最も高くなる。
【0027】
図3Dは、本実施の形態1におけるロボットハンドの、把持部10が柔らかい状態である時のリンク部9と把持部10の概略図である。直動スライダ20がベースプレート15と最も近い位置にあり、板ばね16はベースプレート15と直動スライダ20に挟まれて最も平坦に近くなり、把持部10の剛性は最も低くなる。
【0028】
板ばね16は、ベースプレート15と直動スライダ20に挟まれて変形しても、塑性変形を起こさない形状、材料でなければならない。寸法は例えば、板ばね長さ16aが80mm、板ばね幅16bが30mm、リンク部側の一端の板ばね高さ16cが4mm、板ばねの厚みが0.15mmである。材料は例えば、SUS304-CSPである。
【0029】
板ばね16は、直動スライダ20がベースプレート15から最も遠い位置にある時、対象物4を安定把持できるだけの高い剛性を備えた形状、材料であり、かつ、直動スライダ20がベースプレート15から最も近い位置にある時、対象物4と隣接物5a、5bとの隙間に進入できるだけの低い剛性を備えた形状、材料でなければならない。
【0030】
板ばね16の形状は、この例では、リンク部9の側の一端は円弧形状で、反対側の一端は平坦形状すなわち板ばね高さが0mmであるが、これに限らず、両端が円弧形状であってもよい。
【0031】
板ばね16の断面形状は、この例では円弧状であるが、これに限らず例えば、サインカーブ形状でもよい。
【0032】
前記力検出手段は、この例では基部8に具備されているが、これに限らず例えば、リンク部9や把持部10に具備されていてもよい。
【0033】
次に、ロボット装置1の動作例について説明する。
図4Aおよび
図4Bは、ロボット装置1における把持制御の動作例を示すフローチャートである。
【0034】
図4Aに示すように、準備動作として、制御装置11は、把持部10を柔らかい状態にする(ステップS101)。
【0035】
制御装置11は、対象物4の位置と、隣接物5a、5bと対象物4との隙間の位置の情報を、カメラ13から取得する(ステップS102)。
図5Aは、ステップS102においてカメラ13で撮影する、容器3の底面と、対象物4と、隣接物5aと5bと、ロボットハンド6と、の位置関係を示す側面概略図である。
図5Aにおける、対象物4と隣接物5aの境界22aと、対象物4と隣接物5bの境界22bと、がカメラ13により検出される。
【0036】
次に、制御装置11は、ロボットハンド6とロボットアーム7を制御して、前記境界22aと22bの位置に、把持部10の位置を合わせる(ステップS103)。
【0037】
制御装置11は、ロボットハンド6を下降させ、把持部10を前記境界22aと22bに進入させる(ステップS104)。
図5Bは、ロボットハンド6が前記境界22aと22bに進入していくことを示す側面概略図である。
【0038】
制御装置11には、板ばね16が塑性変形する曲げ量が予め入力されている。ロボットハンド6が下降中に、把持部10の曲げの大きさが前記曲げ量(例えば、上限値)に達したと、制御装置11が判定した場合、ロボットハンドを上昇させ、ステップS102からやり直す(ステップS105)。境界22aと22bの位置は、カメラ13により改めて計測し、前回と異なる位置にする。
【0039】
ロボットハンド6が下降している間、制御装置11はカメラ13によって計測された画像情報を監視し、対象物4が把持部10で挟まれる空間から逸脱したと判定した場合、ロボットハンドを上昇させ、ステップS102からやり直す(ステップS106)。これは、把持部10を境界22aと22bに挿入した結果、隣接物5aと5bが移動したり、容器3内に積まれた物体が崩れたりして、対象物4が転がり落ちた場合などが考えられる。
【0040】
制御装置11は、カメラ13によって計測された画像情報により、把持部10が対象物4を把持可能な位置まで下降したと判定すると、ロボットハンド6の下降を停止する(ステップS107)。
図5Cは、把持部10が対象物4を把持可能な位置まで下降したことを示す側面概略図である。
【0041】
次に、リンク部9を閉じて、把持部10で対象物4を把持する。制御装置11には、把持力の目標値が予め入力されていてもよく、制御装置11は、基部8に具備された前記力検出手段の計測結果と比較し(ステップS108)、リンク部9の力を制御する(ステップS109)。
図5Dは、リンク部9が閉じて、把持部10が対象物4を把持したことを示す側面概略図である。
【0042】
把持力が目標値と一致したと判定したら、制御装置11は、柔剛切替手段17により、把持部10を硬い状態にする(ステップS110)。
図5Eは、把持部10が硬化したことを示す側面概略図である。このとき、変曲点23aと23bよりリンク部9側は硬化するが、リンク部9とは反対側は柔らかい状態のままになる。
【0043】
次に、
図4Bに示すように、制御装置11は、ロボットハンド6を上昇させる(ステップS111)。前記の把持力の目標値と、基部8に具備された前記力検出手段の計測結果とを比較し(ステップS112)、リンク部9の力を制御する(ステップS113)。
図5Fは、ロボットハンドが上昇していくことを示す側面概略図である。このとき、把持部10が隣接物5aと5bから離れていくことにより、変曲点23aと23bは、リンク部9から離れていき、把持部10が硬化する範囲が、リンク部9の反対側の一端に向かって増大していく。
【0044】
制御装置11は、カメラ13によって計測された画像情報により、対象物4と把持部10の相対位置が変化していないかを監視し(ステップS114)、相対位置が変化していると判定すると、対象物4が滑り落ちていると判断し、前記把持力の目標値をより大きな値に書き換える(ステップS115)。対象物4を破壊しないため、前記把持力の上限値は、制御装置11に予め入力されており、把持力の増大は前記上限値を超えない範囲に限られる。
【0045】
制御装置11は、カメラ13によって計測された画像情報により、把持部10が対象物4以外と接触していないと判定するまで、ロボットハンド6を上昇させる(ステップS116)。
【0046】
制御装置11が、把持部10が対象物4以外と接触していないと判定すると、把持部10が容器3および容器3の内容物から取り出されたと判断し、ロボットハンド6を所定の位置に移動させる(ステップS117)。このとき、変曲点23aと23bは、リンク部9から最も離れるか、あるいは無くなり、把持部10の剛性は最大となる。
図5Gは、ロボットハンドが対象物を容器3の中から取り出すことについて説明するための側面概略図である。
【0047】
前記所定の位置に把持部10が移動すると、基部8がリンク部9を開くことで、把持部10が開いて、対象物4が前記所定の位置に解放され(ステップS118)、本制御は終了する。
【0048】
把持部10が板ばね16を具備することにより、把持部10を薄く構成することができ、対象物4と隣接物5a、5bの境界22aと22bの隙間、および、対象物4と容器3との隙間に、容易に進入することができる。
【0049】
把持部10が柔らかい状態では、対象物4と隣接物5a、5bの境界22aと22bの隙間に把持部10を容易に進入させることができるが、対象物4を安定して把持し所定の位置まで搬送することが難しい。対象物4を把持した後に、把持部10を硬い状態にすることで、ロボットハンド6は対象物4を安定して所定の位置まで搬送できる。
【0050】
(実施の形態2)
図6Aは、本実施の形態2における把持部が硬い状態である時のリンク部24と把持部25の概略図である。
図6Bは、本実施の形態2における把持部が柔らかい状態である時のリンク部24と把持部25の概略図である。
【0051】
実施の形態2におけるリンク部24と把持部25は、実施の形態1と同様に、板ばね16を具備し、その変形によって剛性が変化する。しかし、実施の形態2における柔剛切替手段27は、実施の形態1と異なり、板ばね16は板ばね固定部材30によってベースプレート26に固定されて動かず、板ばね押し込み部材31の動きによって板ばね16を変形させる。板ばね押し込み部材31は、リンク機構29を介して直動アクチュエータ28によって駆動される。直動アクチュエータ28はベースプレート26に固定されている。直動アクチュエータ28の出力軸の長さが短くなると、板ばね押し込み部材31が板ばね16に押し付けられ、板ばね16の形状はより平坦に近くなって剛性が低くなる。直動アクチュエータ28の出力軸の長さが長くなる方向に動くと、板ばね押し込み部材31が板ばね16から離れていき、板ばね16は弾性力によってより板ばね高さの大きな円弧形状に復元し剛性が高くなる。
【0052】
なお、実施の形態2におけるリンク部24、および把持部25は、実施の形態1にて例示したロボットシステムに適用することが可能である。
【0053】
(実施の形態3)
図7は、本実施の形態3における把持部が柔らかい状態である時のリンク部32と把持部25の概略図である。
【0054】
実施の形態3におけるリンク部32と把持部33は、実施の形態1と同様に、板ばね16を具備し、その変形によって剛性が変化する。しかし、実施の形態1における柔剛切替手段35は、実施の形態1と異なり、板ばね16を平坦にするのではなく、下向き矢印37の方向に凸な円弧形状に変形させる。ベースプレート34と板ばね16との接触部、と、直動スライダ36の板ばね16との接続部と、は直動スライダ36がベースプレート34との距離が最も近くなった時、板ばね16が下向き矢印37の方向に凸な円弧形状になるよう、下向き矢印37の方向に凸な円弧形状になっている。
【0055】
板ばね16の形状や材料によっては、実施の形態1のリンク部9と把持部10では、直動スライダ20がベースプレート15と最も近い位置になり、板ばね16がベースプレート15と直動スライダ20に挟まれて最も平坦に近くなっても、板ばね16が十分に平坦にならず、対象物4と隣接物5a、5bとの隙間に進入できるまで剛性が低下しない場合がある。実施の形態3では、板ばねを下向き矢印37の方向に凸な円弧形状に変形させることにより、円弧形状残存部38の板ばね高さがより小さくなる。そのため板ばね16全体で平均すると、より平坦な形状に変形し、剛性を低下させることができる。
【0056】
なお、実施の形態3におけるリンク部32、および把持部33は、実施の形態1にて例示したロボットシステムに適用することが可能である。
【0057】
なお、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。本開示はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示のロボットシステムは、剛性可変な薄い指先を搭載したハンドを具備することで、密集してばら積みされた対象物をピックアップして把持する効果を有し、多品種少量生産等のFAの用途の他、配達ロボットなどサービスロボットにも適用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 ロボット装置
2 ロボットシステム
3 容器
4 対象物
5a,5b 隣接物
6 ロボットハンド
7 ロボットアーム
8 基部
9,24,32 リンク部
10,25,33 把持部
11 制御装置
12 ロボットアームケーブル
13 カメラ
14 カメラケーブル
15,26,34 ベースプレート
16 板ばね
16a 板ばね長さ
16b 板ばね幅
16c リンク部側の一端の板ばね高さ
16d 断面A-Aにおける板ばね高さ
17,27,35 柔剛切替手段
18 モータ
19 カム
20、36 直動スライダ
21 曲げ検出手段
22a,b 対象物と隣接物の境界
23a,b 変曲点
28 直動アクチュエータ
29 リンク機構
30 板ばね固定部材
31 板ばね押し込み部材
37 下向き矢印
38 円弧形状残存部